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マイケル・ハリソン(Michael Harrison) の「Seven Sacred Names」というヒーリングミュージック



マイケル・ハリソン
(Michael Harrison, b. 1958)
ニューヨーク在住の米現代音楽家ですね。ピアニストで作曲家ですが、その影響は学生時代から師事したドローンw/ミニマルでヒンドゥ音楽や次数の高い倍音知られるラ・モンテ・ヤング(La Monte Young)にありそうです。

インド音楽に精通しいて、独自のハーモニックピアノ(Harmonic Piano, オクターブ24音を出す)の設計と製作しています。

その音律は調性の2倍、本人は純正律をベースにしているそうですから、平均律の様なオクターブ波長を均等割にしているのではなく高次の倍音構成なのでしょう。L.M.ヤングとの関係性の深さを感じますね。ヤング拘りのカスタムベーゼンドルファーの唯一の調律師でもあり、ピアニストとしてヤングの6時間の"The Well-TunedPiano"の唯一の演奏者でもありますから。



Seven Sacred Names
イスラム神秘主義"Sufism"をベースに…、とありますがよくわかりませんw
楽曲は霊的・瞑想的で、自分の中の隠された真実を覗き見るそうです。まぁ、インド音楽とドローンの様な音、それも純正律の美しさ、ならば何となく想定範囲の気もしますね。

ジャケットとライナーノートにはフィボナッチ数の図形が乗っています。数学的な構成要素もあるのかはわかりませんが、インドのHemachandraが音律研究で発見していますね。

演奏は Roomful of Teeth (vocal ensemble), Ina Filip (vocal), Ashley Bathgate (cello), Tim Fain (violin), Caleb Burhans (violin), Ritvik Yaparpalvi (tabla percussion) そして ピアノはご本人 Michael Harrison です。








Seven Sacred Names (2021?)
  1. Kalim: Prologue - 2. Hayy: Revealing the Tones - 3. Alim: Polyphonic Raga Malkauns - 4. Qadr: Etude in Raga Bhimpalasi - 5. Mureed - 6. Sami: The Acoustic Constellation - 7. Basir - 8. Kalim: Epilogue

スローのゆるい反復の1. 純正律pfソロの美しい響きの2. インド系エレクトロニカ風の3. pfとperc.のリズム感の4. 冷たく優しい高音域のpfとvnの5. 倍音を生かした美しいvoiceの6. 透明感あるロングトーンの7. 優しさのpfとvcの8.
いずれもスローで美しい旋律の反復で確かにミニマルw/ドローン的ですね。能力と感性不足でそれ以上の事がコメントできないのが残念です。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2021-6/30のイベントの模様でハリソンの話も聞けます
  CDよりも少しだけ抑揚を感じますね



純正律pfらしい美しい音の響き、そして緩やかな旋律反復、倍音を生かした音色、そこに聴けるのは癒しそのもののヒーリング&アンビエントです。バックグラウンドの理論がどうであれ、聴くと言うよりもかけておくお洒落BGMですね。

"Bang On a Can"のCantaloupeレーベルからのリリースで期待したのですが、個人的な嗜好方向ではありませんでした。




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【追悼】ルイ・アンドリーセン(Louis Andriessen):「Gigantic Dancing Human Machine」Bang On a Can All-Stars

先週(2021-7/1)亡くなられたルイ・アンドリーセンさんを悼み。


ルイ・アンドリーセン
(Louis Andriessen, 1939-2021)
オランダの現代音楽家L.アンドリーセンは所謂(いわゆる)欧エクスペリメンタリズムとは一線を画しますね。時代はセリエルの真っ只中だったので当初はその方向性でしたが、1970年台に米現代音楽ミニマルの影響を受け方向転換しています。そこからがアンドリーセンでしょう。

楽器編成を含めてジャズ方向、ポップや米管弦楽方向が明確でした。米アンサンブルの"Bang On a Can All-Stars"や"eighth blackbird"が楽曲を採用していたり、ロス・フィル100周年記念の委嘱も受けていましたね。



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Gigantic Dancing Human Machine
(Bang On a Can All-Stars)
そんなわけで、今回は長くリレーションのあった米音楽組織Bang On a Can(以下BOAC)のCantaloupeレーベルからリリースされた作品をインプレするのはピッタリかと。もちろん演奏のメインはBOAC All-Starsです。

1970年台のミニマル初期の作品(1. 2.)が2曲と、1990年台の楽曲1曲(3.)ですね。2.は"pan-pipes, alto saxophone, bass guitar, pianos and congas"の2編成アンサンブル。3.は本人曰く"ジャズも包括したアヴァンギャルドなミニマル"だそうですが、聴くと1.の方がそう感じるかも。







1. Worker's Union, for chamber ensemble (1975)
基本はミニマル大御所をトレースしますが、もう少しBOAC寄りと言っていいのかもしれません。バスクラやE-ギターと言ったBOAC編成と、その個性を生かす様なジャジーなサウンドのミニマルですね。音の煌びやかさと自由度っぽさを見せるサウンドで、後半の攻撃的な流れは魅力的です。
演奏難度も高そうなハードジャジーな面白いミニマルでBOACにフィットしてますね。LIVE録音の興奮が伝わります。

 ★試しにYouTubeでLIVEを観てみる?
  こちらは"eighth blackbird"メインの演奏で、どんどんメンバーが増えてきます
  始めから後半の様なハイテンションで中盤からは暴力的魅力で必見です!!



2. Hoketus, for mixed ensemble (1976)
左右のチャンネルから二つのアンサンブル音が交錯します。そこに反復が繰り込まれていて三次元的な音の広がりが楽しめます。二・三音反復の様な超短旋律の反復が執拗にリズムを変えながら続きます。テンポが上がると陶酔的ミニマルになり、リズムを左右均等からずらすと不安定な面白さが発生しますね。後半に向けてテンションを上げていますが、そこだけは1.と同じです。
1.とほぼ同年代の作品ですがこちらのキーはリズムで、個性はかなり異なります。この時点でアンドリーセンがミニマルの色々な可能性を推測っていた事が感じられますね。


3. Hout, for tenor saxophone, marimba, guitar & piano (1991)
ハイテンポで複雑な旋律を基本に変奏・反復のミニマルになっています。ホモフォニーですが、色合いの異なる旋律に聴こえる色彩感あるミニマルですね。上記2曲に比べるとミニマル本道に近い流れを感じますが、煌びやかさが光る興味深い作品です。



アンドリーセンとBOACが作り出す素晴らしいミニマルサウンドです。緊迫感や変則性、そしてカラフルさと言った異なる方向性を聴かせてくれますね。

一人の音楽家のミニマルとしては変化度が大きく、聴き応えも十分です。ミニマルに興味がある方にはオススメの一枚ですね。




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オーケストラ・アンサンブル金沢 / 岩城宏之『武満徹 | メシアン | 一柳慧 | 高橋悠治』で聴く前衛全盛から停滞

懐かしいアルバムを聴いてみたいと取り出しました。

武満徹 | メシアン | 一柳慧 | 高橋悠治
(岩城宏之 cond. オーケストラ・アンサンブル金沢)
日本を代表する現代音楽の指揮者、岩城さん(1932-2006)ですね。奔放なイメージでクラシック以外でもタクトを振っている印象が残っています。日本の現代音楽の初演マニア?でしたよねw

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の音楽監督で、同楽団では日本ではあまり聞かない"Composer In Residence"を取り入れていました。海外では若手・中堅の現代音楽家がそのポジションに就いて楽曲提供している事が多いですよね。

本アルバムは岩城さん没後に、OEKから編集されてリリースされていたと思います。各作曲者はいずれもビッグネームですから、個別の紹介は無用ですね。武満さんとメシアンは前衛全盛期の、一柳さんと高橋さんは前衛停滞に入ってからの作品と言うのも面白いチョイスです。後者のお二人は今でもお元気なのが嬉しいですね。一柳さんと言うと、どうしてもオノ・ヨーコさんが奥様だった事が浮かんでしまいますが。







1. 地平線のドーリア =武満徹= (1966)
2群17弦楽奏です。それぞれが一声部を受け持つマイクロ・ポリフォニーの楽曲で、[半音を含む4音]x2のドリア旋法のオクターヴ種を使っています。
無調の静空間にロングトーンを中心とした弦の音色が交錯します。調性回帰的な時期と相まって武満さんらしい細く美しい旋律が時折現れるのが印象的ですね。そこにドリアが使われている様に聴こえます。


2. 異国の鳥たち =オリビエ・メシアン= (1956)
メシアン得意の鳥の鳴き声のピアノと管楽器・打楽器の曲で、代表作の一つですね。
よく飛び跳ねて、煌びやか、五つのピアノのカデンツァも鳥の動きを感じます。カラフルでキラキラとしていて、いかにもメシアンと言った感じです。ポリフォニーでの生き生きとした流れもOEKの演奏が雰囲気を上手く作っている感じです。このカラフルさをブーレーズも引き継いでいる気がしますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  コンスタンティア・グルズィ指揮のこちらの方が音が厚いですね
  個人的にはOEKの繊細な色合いの方がこの曲にフィットしているかと



3. インタースペース =一柳慧= (1987)
弦楽奏曲です。幽玄・神秘的で多様性時代らしいクラシック音楽ですね。調性感が強くて突飛な音階は無く、スローで暗鬱な印象が支配しています。また、動機からの変奏的な流れも感じます。


4. 鳥も使いか =高橋悠治= (1993)
三味線をリードとして、ポリフォニーになって和の唄いが入って来ます。邦楽和声、機能和声、それぞれが混沌と組み合わされたポリ和声楽曲です。反復や行進曲のリズムも入って来ますから徹底したごちゃ混ぜ風の面白さがありますね。何でもありの、この時代の前衛現代音楽を代表しているのかもしれません。B.A.ツィンマーマンに聴かせたかったですね。



個々の作品の素晴らしさもさることながら、1956-1993と言う20世紀後半の前衛音楽の変遷も味わえる楽しい一枚でしたね。

以前は中途半端な印象だったのですが、時代が作品に追いついて来たのかもしれません。今やセリエルの呪縛から解き放たれて、モードや調性との折り合いを付けるのが前衛の主流の一つに違いありませんから。



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ダニエル・ハーディング指揮 / ベルリンフィル の「マーラー 交響曲 第1番 "Titan"」は王道ですね



ダニエル・ハーディング Daniel Harding
(Berliner Philharmoniker, 2019-3/29 Live rec.)
残念ながらコンサートでは相性の良くない指揮者の一人、D.ハーディング。2年前の2019年にベルリンフィルを振ったマーラー1 "巨人" です。
ベルリンフィルとのマーラーはFM放送録音に2014年12月5日のマーラー6のLiveがあるのですが、それは素晴らしいですね。ハーディングのスタンスと言うよりもBPO色を感じますが…




マーラー 交響曲 第1番「巨人」


(BPOリリースの豪華マーラー全集。右は本録音のみのデジタル配信です)


第一楽章
序奏は陰鬱さの下降動機にカッコウ動機やtp, hrが明るく乗ってコントラストが明瞭。チェロの第一主題は明るい歩みの様に、対位的な第二主題はその流れに寄り添う様に落ち着いていますね。展開部は静を鬱に彩って、hr動機で明るい日差しに切り替え、山場は華やかさが際立ちます。短い再現部はコーダの様に見晴らしよくまとめ上げていますね。落ち着いた中にまとまりがある第一楽章です。

第二楽章
主部主題は重厚さあるスケルツォで、転調パートは表情を付けて進めています。歯切れの良さを感じますね。トリオの弦レントラーは優美な舞踏曲風。主部回帰では締まりの良いスケルツォで重心は低いですね。

第三楽章
主部主題の短調『グーチョキパーで…』は重さを避けつつ入って、カノンの流れも落ち着きがあります。木管の二つの動機は心地良さにチェンジペースですね。中間部は緩やかでアレグロ風に美しく。陰影を程良く表現する第三楽章です。

第四楽章
序奏は少し神経質に、提示部第一主題は切れ味を強めた行進曲風に出ます。vnの第二主題はスローに抑揚を着けてと王道の流れですね。
展開部第一主題導入部で切れ味に激しさを少しトッピング、落ち着いた流れからピークを派手やかに築きます。
厄介な再現部前半は落ち着いて、va動機で鋭い音を出して第一主題を切れ味よく奏でます。ラスト山場は緊張感を与えて、コーダは発散させる様に華やかに大きく広げて終わります。



見晴らしの良い王道のマーラー1 "Titan"ですね。この落ち着き払った流れはBPOらしさと見ていいのではないでしょうか。

奇を衒ったパートはなく、最後のコーダに向けてフォーカスした気持ち良さが味わえますね。ただ、どこかに興奮か炸裂の様な刺激があったらもっと良かったかもしれません。




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ペア・ノアゴー(Per Norgard)の「Singing Secrets」ソプラノと小編成音楽で



ペア・ノアゴー
(Per Nørgård, b. 1932)
今年で89歳になるデンマーク現代音楽家の重鎮ですね。欧エクスペリメンタリズムが停滞する中、注目度が上がる若手デンマーク前衛の源となるキーの音楽家です。(勝手な個人的イメージかもw)

元々はシベリウス, ニールセン, ホルンボー, と言った北欧ロマン派的な音楽で、ホルンボーやパリでブーランジェに師事していました。
前衛への変化は1960年に欧エクスペリメンタリズムのポスト・セリエルの流れを受けて、独自の無限セリー(infinity series)を作り出した事になりますね。その手法を作品に使った'60-'70年代は欧前衛の停滞期と重なります。その後は多様性から調性回帰が強くなり、新古典主義的な楽風になっています。



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Singing Secrets
ソプラノと極小編成の室内楽です。それでも1953-2004年の作品が並んで、51年間に渡るノアゴーの楽風の変化が味わえるでしょう。ジャケット裏面にも"some of the distinctive steps of his musical journey"と書いてあります。(他にも楽風変化を味わえるアルバムはありますが…)

ソプラノ独唱、独奏、重奏、そして五重奏と言った編成の楽曲です。メンバーは、Signe Asmussen (sop), Irena Kavčič (fl), Helge Slaatto (vn), Anette Slaatto (va), John Ehde (vc), Erik Kaltoft (pf)
インプレは作曲年代順になっています。(曲No.がCDの並び順です)







1. 五重奏曲 Op.1 "シャガールへのオマージュ" (1952-52)
三楽章形式で"作品番号 1"の初期作品、クインテット(fl, vn, va, vc, pf)です。
 flのソロが冷たく荒涼な景色を奏でてvnが対位的に登場、そしてホモフォニー的に発展します。時折ポリフォニーも覗かせて、展開部(中間部)?では情景が荒れる様なアレグロ風になりますね。この第一楽章がメインで、調性にあって北欧風景的ロマン派音楽です。これが世界初録音とは驚きですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Kvintet, Op. 1: I. Tempo giusto です



5. フラグメント 5 (1961)
2分を切るvnソロで まさにフラグメント。年代的には無限セリーのはずですが、旋律が明確で1.の様な印象を残します。ダブルストップを上手く使っているのが特徴的ですね。


2. Vintersalme part 1 (1976)
4. Vintersalme part 2
独唱曲ver.です。ここでも北欧ロマン派の様な透明感を聴かせてくれます。ちょっと教会音楽の気配もありますね。part 1, 2 はまるで繋がった一つの曲の様です。


3. 信子のための本 I.ソナタ "秘密の旋律" (1992)
タイトル通り今井信子さんの為に書かれた5パートのヴィオラ独奏曲"Libro per Nobuko"です。本当は今井さんの演奏で聴きたいですね。
 幽玄な旋律を鳴らしながら流れの良い調性楽曲で、ここでもダブルストップを効かせていますね。パート毎の落差は小さめで、タイトルに表現記号はありません。パートIII.では表情を少し厳しく、パートIV.はスケルツォ的です。極端な技巧パートはありませんが、vaらしい低音もしっかり響かせます。V.で中華和声を感じる?!、それが"The Secret Melody"??!!


7. カンティカ (1977, rev.2004)
チェロとピアノの重奏曲です。ここで初めて調性の薄い楽曲の登場です。オリジナルの'77は無限セリーにあったので、その流れを明確に残します。そしてそこにvcの幽玄旋律が被ってくる感じになっていますね。もちろんpfと逆の関係になる流れもあります。表現主義的な変化の厳しさも感じますが、セリエルと新古典主義の合体の様な曲で面白いです。2004年の改訂が生きているのでしょうね。


6. 2つの弦, 1つの声 (2004)
2分半のmezとvnの曲です。vnソロとメゾソプラノのソロを重ねた様な楽曲です。



作品番号1 から21世紀の曲まで、ノアゴーの音楽変遷を垣間見る事ができますね。ただ楽曲の選択に方向性がある感じで、全貌を聴くなら"ピアノ作品集"の方がオススメかも。

「1. 五重奏曲」と「7. カンティカ」が聴きどころで、共に世界初録音というのが驚きです。




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ステイングリームル・ローロフ(Steingrimur Rohloff)の「Medea-Lysistrata」多岐の技巧表現



ステイングリームル・ローロフ
(Steingrimur Rohloff, b. 1971)
アイスランド生まれのドイツの現代音楽家です。(Nationalityは両国) ケルン音楽大学で作曲を習った後、パリ国立高等音楽院でグリゼーやストロッパらに師事しています。電子音楽についてはIRCAMにも参加しているので造詣は深いでしょうね。

経緯から見るとバリバリの欧エクスペリメンタリズムという感じですが、近年は舞台音楽に傾倒しているそうで、今回の作品もそうですね。



Medea-Lysistrata
(Henrik Vagn Christensen, cond.)
メインとなる"Lysistrata"はデンマークの詩人Peter Laugesen(voiceでも参加)との協調で作られたオペラの抜粋版になります。タイトルロールを初演で演じたTuva Semmingsen(mez)と演奏のEsbjerg Ensembleが同じく対応していますね。
古代ローマの同名戯曲(悲喜劇)を元に作られていて、性を下敷きとして暴力や権力と言った古典的なストーリーです。

"Five songs by Medea"も古代ギリシャのエウリピデスの作品を下に、Peter Laugesenとの協調で作られた"王女メディア(Medea)"の不貞と復讐の物語です。ここでも上記と同じメゾソプラノとアンサンブルを前提に書かれているそうです。

聴く順番は例によって作曲年代順で楽風変化も聴きたいと思います。(曲No.がCDの並び順です)







3. Lysistrata (2015-16)
6パートで全て抜粋です。演奏は深淵で神秘的な深海の様な音色、それがいきなりポップなサウンドに入れ替わり、ジャジーなインプロビゼーション風に変化したりします。和声的には民族音楽的な流れも使われて、それにメゾソプラノがホモフォニー的に入ったり、僅かながら特殊奏法も展開していている様です。
メゾソプラノは語りも多く、時にシュプレッヒゲザングにもなります。その際のBGMも変化して無調的な流れになったりポリフォニーになったり。ラストは聖歌風の流れになって閉じます。
多岐に渡る技巧を配置して単純にして複雑なパッチワークの様な多様性で面白いですねぇ。オリジナルのオペラを観たいと思いました。


2. Five songs by Medea (2019)
5パート構成です。いきなり無調ポリフォニー混沌風で入って来ます。そこから哀愁と浮遊感の調性旋律へと変わるのは、まさにローロフ的な感じですね。ここでも歌い方は様々、前衛色濃い跳躍音階のシュプレッヒゲザングから朗々としたクラシカルさまで次から次へと変化します。反復もあれば変拍子もかなり使って変化を付けて来ます。
再現性なく極端に流れが変化するので焦点を絞りづらい感じもありますが、"また変わるんだろうなぁ"って感じになって慣れて新鮮味が麻痺しますね。


1. Quel prix de mon amour (2020)
機能和声で僅かに不協和音を感じる美しい歌曲ですね。ローロフは美しい旋律を作る事でも評価されて"B.A.ツィンマーマン賞"を受賞しているそうですが、この辺りがそれに当たるのかもしれません。興味の範疇ではありませんが…


 ★試しにYouTubeでちょっと覗いてみる?
  アルバムの公式Teaserです




なんでもありの多岐多様性の万華鏡的サウンドです。調性から無調へ、ホモフォニーからポリフォニーへ、民族音楽とジャジー、そして特殊奏法からシュプレッヒゲザングまで。いろんな顔を見せます。

全方位包括の新しい流れと見るのか、まとまりに欠けると見るのか、微妙なラインではあります。でも、ありそうで無かった新しさは嬉しい限りですね。もう少し聴いてみたいと思います。



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クラリス・ジェンセン(Clarice Jensen)『The Experience Of Repetition As Death』は単なるアンビエント?!



クラリス・ジェンセン (Clarice Jensen, b. ????)
以下前回インプレ「For This from That Will Be Filled」の案内文転用です。

ジュリアードで習いN.Y.ブルックリンで活動する女性現代音楽家でチェリストですね。このブログでもマックス・リヒターのアルバムでの参加で知りましたが、ヨハン・ヨハンソンとの共演もあって、その時点でポスト・クラシカル系の音楽家とわかりますね。
N.Y.ではACME(American Contemporary Music Ensemble)の芸術監督(artistic director)を努めているそうです。

と書きましたが、単なるヒーリング系ではなくてエクスペリメンタリズムも垣間見る面白さがありましたね。ドローン・アンビエントですが、エフェクトペダルを使ったチェロや多層化したループ、ライヴエレクトロニクス等の電子処理を駆使しています。



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The Experience Of Repetition As Death
タイトルは米女性詩人アドリエンヌ・リッチ(Adrienne Rich)の “A Valediction Forbidding Mourning” からの一文だそうです。テーマは人生に存在する"反復, repetition"と言う概念。え〜と…よくわかりませんね。演奏は本人のチェロとエレクトロニクス処理ですね。

音楽では常套手段の"反復"ですが、その主題(theme)は1. 2. 5.で使われているそうです。実際には二三音の構成なので主題や動機には感じません。







1. Daily
長さの異なる5つのループテープのレイヤで、重なりの偶然性を使っているそうです。
ロングトーンのvc音が重なるドローン系サウンドですね。上記の通り5つの演奏が重なっています。そしてそれぞれが反復で出来ていて、音の並びは機能和声の短旋律主題です。技巧的には興味深いですが、聴くだけですとヒーリング音楽です。組み合わせをテンポ変化を含めて極端にランダムにしたら面白そうですね。

2. Day Tonight
ガサガサしたvoiceの様なエフェクトで、短旋律の主題は1.で使われたものです。徹底反復でドローンに流れますが、そこにシンセの様な音が被ってライヴエレクトロニクス的な流れになっていますね。ガサガサのエフェクトは途中で消滅して後半はミニマル風になっています。

3. Metastable
病院で聞かれるビープ音にインスパイアされたそうです。
低音が響く単音の繰り返しグォーン・グォーンの上に細い単音もしくは二音反復が神経質に流れ込んで増幅して行きます。まさに信号音の重なりです。これはこれで面白い効果を見せてくれます。

4. Holy Mother
タイトルはチョモランマ(エベレスト)を指しているそうです。
澄んだ音色の高音反復旋律が静空間に存在、重厚な低音が覆い被さる様に重なります。途中からミニマル的な流れが強まりますが、ヒーリング的なアンビエントでもあります。この流れは平凡に感じるでしょうねェ。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  映像が付いていて一種のインスタレーションでしょうか


5. Final
"1. Daily"と同じループテープを使っていますが、様々な手法で劣化させているとの事。
vcの音色はしっかりと残した入りで、そのまま続きます。特に劣化の印象はありませんね。音質以外に何か劣化("degradation to erode"です)させてるのでしょうか? ピッチであればわからないでしょう、音質やテンポの歪みならわかるかもしれませんが。よくわかりませんね。



短旋律の徹底反復のドローンですね。そう言うとミニマルに思うかもしれませんが、主流はアンビエントです。

技巧的に凝っているのですが、今回は聴こえる範疇にその前衛的な部分が見えないのが残念。解説を調べずに聴いたら単なるアンビエント&ミニマルとしか感じられないのが気になりますね。




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