2018年5月22日 下野竜也/都響「コリリアーノ:ミスター・タンブリンマン - ボブ・ディランの7つの詩」日本初演 at サントリーホール

今日は都響があまり取り上げない、それが残念ですが、現代音楽を楽しみに六本木に行って来ました。いつも六本木一丁目から行くので六本木と言っていますが住所的には赤坂一丁目、目の前カラヤン広場は六本木一丁目という微妙な場所ですね。

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米現代音楽家のコリアーノ(John Corigliano)はこのブログでは「ディラン・トーマスの三部作(Trilogy) 」をインプレしていますが、技術的には前衛ではありません。また詩人の作品を元にする事も多いですね。今回もボブ・ディランの原曲を一切聴かずに詩を元に作品を作っているそうです。また歌はアンプ使用でオケと伍するそうです。(理由はオペラの様に歌って欲しくないからだとか)
ちなみに七つの詩は「ミスター・タンブリンマン」「物干し」「風に吹かれて」「戦争の親玉」「見張りからずっと」「自由の鐘」「いつまでも若く」で、コリリアーノの描くストーリーに対応しています。

子供の頃にディランのレコード(CDではないですよ)を初めて買ったのは "Like a Rolling Stone"の入った「Highway 61 Revisited」をソニー買収後のCBS(ソニー)再発盤でした。ノーベル文学賞受賞もありディランは後年になるにつれ詩人としての評価が高まった行くのでしょうか、違和感もありますが…




メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 op.56《スコットランド》

ロマン派と古典派の折衷で曲調はいかにもイギリス風、メンデルスゾーンはドイツ人ですが、の印象が強い曲です。所有しているマリナー盤と比べると出し入れの強さが少しマイルドでメンデルスゾーンぽいかなという気がしましたが、退屈興味の範疇の外側の曲でよくわからなかったのが本音です。


コリリアーノ:ミスター・タンブリンマン ─ボブ・ディランの7つの詩 (2003年)

調性は薄く歌も尖って音や声の跳躍があるので前衛"的"現代音楽です。とはいえ技法・技術の大きな冒険はなく、歌もシュプレッヒゲザングの様な狂気性は低い、それがJ.コリリアーノですね。(個人的印象です)
でもピアノ伴奏版の印象よりも遥かに色彩感溢れる作品になっていました。一つには打楽器群を生かした鳴りの良さかもしれません。チャイム(チューブラーベル)をバンダとして2F席左右に配置していましたね。コリリアーノ得意のオケ作品で広がりのある音が楽しめました。調性感もより強く感じられましたが。
ヒラ・プリットマン(Hila Plitmann)も舞台を広く使い表現主義的なソプラノを聴かせてくれましたね。
歌詞が重要な位置づけですが都響webの月刊都響PDFには載っていないのが残念。(配布版にはありました)


機能和声に寄りかかった現代音楽ですが、これがヴァレーズやアイヴスを源流とする今の米現代音楽の一端かと思います。コリリアーノを得意とする下野さんと都響の広がりある演奏も良かったですね。
今後チャンスがあれば欧前衛系現代音楽を取り上げて欲しいですね。期待しないで待ちましょうw




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グロリア・コーツ(Gloria Coates) の「String Quartet No.9, Sonata for Violin Solo, Lyric Suite for Piano Trio」を聴く


グロリア・コーツ (Gloria Coates, 1938/10/10 - )
ミュンヘンで活躍する米女性現代音楽家で、カノン(十二音技法以降で逆行・反行が技法的に復活)を用いたポスト・ミニマルと言われています。技術的な特徴は四分音(#のまた#, 半音の半分。これを進めると微分音に)とグリッサンドの多用でしょうね。交響曲を得意としていますが、弦楽四重奏曲も多く書いています。


String Quartet No.9, Sonata for Violin Solo, Lyric Suite for Piano Trio
コーツの室内楽アルバムですが、2CDに分けた弦楽四重奏曲の#1-8のアルバムに入らなかった#9をフィチャーしたものですね。コーツは現在まで第10番(少々別扱い的)まで書いています。
演奏はKreutzer Quartet(vn-soloはメンバーのPeter Sheppard Skærved), とpfはRoderick Chadwickになります。



String Quartet No. 9 (2007年)
三曲の中では一番新しい作品で、幽玄な旋律を持つ無調の弦楽トリル, グリッサンドの四重奏曲です。特殊奏法の様な音色も入り、主に対して追従するホモフォニー的な展開はベースをカノンにしている事がわかります。四分音・微分音の違和感、そして反復も明確に存在してポスト・ミニマルの様相ですね。混沌ポリフォニーとは異なる方向性の、欧米合体的な現代音楽でしょうか。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Sonata for Violin Solo (2000年)
四楽章のvn-soloです。ここでもパワーやハイスピードを排したグリッサンドの積み重ねが基本です。楽器が一本になった分、より幽玄さを感じますね。面白さは弦楽四重奏曲の方が上でしょうが、美術館で四枚の絵画をみている様な気配です。

Lyric Suite for Piano Trio, 'Split the Lark - and you'll find the Music' (1996年)
7パートの小曲からなる楽曲です。調性感の強い弦楽器の旋律とpfの和音、そしてトリル。pfの和音がクラスター的に響くパートがあるのも一味違いますね。一見フラットにも感じる流れに美しさを感じる幽玄さ、その中に表情がうまく表されています。なぜか「展覧会の絵」が浮かびます。


幽玄な気配のポスト・ミニマルで技法は微分音を入れたグリッサンド主体のカノン展開、と言ったG.コーツらしさが全開です。無調ですが存在する旋律、単調に感じる流れの中に表情を作るのは彼女の特徴でしょう。




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エクサン・プロバンス音楽祭2017 ビゼーの歌劇「カルメン」をNHKプレミアムシアターで観る

昨シーズンのエクサン・プロバンス音楽祭(Festival d'Aix )から人気のCarmen。今回はカルメンをセラピー劇にした演出ですね。

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(写真はweb上からお借りしました)


演出

演出チェルニャコフは、演劇セラピーに訪れた倦怠期夫婦(ドン・ホセとミカエラ)が「カルメン」に入り込む設定にしています。近年よくある本編前後に新枠挿入パターンですが、夢とかにするのでなくセラピーとして「カルメン」を演じる、という流れですね。そう思えば、途中でもセラピストが入ってきたりするのも上手い味付けに感じました。カルメンが脱走するシーンなどに工夫がありますね。("脱走"の設定自体がありませんw)
ラストもドン・ホセが演技にのめり込み狂気を見せるのをうまく生かしています。

舞台・衣装

従って設定は現代。広いロビー、衣装はごくありきたりのスーツやインフォーマルです。どちらもアヴァンギャルドさはありません。この設定も今の時代のオペラに多いですね。

配役

突出のキャストはなかったと思いますが、まずは女性陣。カルメンのドゥストラックは声も演技も線が細かった気がします。ミカエラのドライシヒのsopは綺麗な歌声で聴かせてくれましたね。
男性陣、ドン・ホセのファビアーノはボチボチ熱演、闘牛士エスカミーリョのシンプソンは声、聴かせ処の"闘牛士の歌, Toreador Song"は軽いのですが容姿は決まりましたね。
ミカエラとエスカミーリョのラヴシーンには驚きましたが、ドン・ホセとカルメン二人がラストに向けて狂気を増していくのは上手かったです。

音楽

カサドw/パリ管の演奏は始めはソロ・パートの弦楽器も今ひとつで、やや重心が高い軽さを感じましたね。その後はバランスが良くなりました。(オペラの演奏は練習を重ねるという事はないので当然?!)


一にも二にもチェルニャコフ演出ですね。舞台設定を現在に置き換えただけではなく、賛否のありそうなチェルニャコフ独自展開が加わりカルメンのストーリーを利用したセラピーに徹底している処は新鮮です。
多少の中だるみはありましたが、ビゼー原作チェルニャコフの『カルメン』が楽しめました

こういった楽しみもエクサン・プロバンスらしさかもしれませんね。



<出 演>
・カルメン:ステファニー・ドゥストラック [Stéphanie d'Oustrac]
・ドン・ホセ:マイケル・ファビアーノ [Michael Fabiano]
・ミカエラ:エルザ・ドライシヒ [Elsa Dreisig]
・エスカミーリョ:マイケル・トッド・シンプソン [Michael Todd Simpson]

<合 唱> エデス合唱団 / ブーシュ・デュ・ローヌ少年少女合唱団
<管弦楽> パリ管弦楽団 [Orchestre de Paris]
<指 揮> パブロ・ヘラス・カサド [Pablo Heras-Casado]
<演 出> ドミートリ・チェルニャコフ [Dmitri Tcherniakov]


収録:2017年6月30日、7月6日 プロバンス大劇場(フランス)


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クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)と ポホヨネン(Kimmo Pohjonen)、コスミネン(Samuli Kosminen)の「UNIKO」を聴く


クロノス・クァルテット, Kronos Quartet
前回の「Black Angels」に続きクロノス4ですね。クロノスとフィンランドの音楽家二人のコラボ作品になりますが、実はこの二人が面白いので今回インプレを載せることにしました。


UNIKO
前衛バンドのKTU(発音はK2)を組むフィンランド人アコーディオン奏者のキンモ・ポホヨネン(Kimmo Pohjonen*)、同じくフィンランド人打楽器奏者で電子音楽/サンプラーのサムリ・コスミネン(Samuli Kosminen**)が2004年にフィンランドでクロノス4と共演のために書いたクロノス委嘱の全7パートの楽曲です。(本スタジオ録音/2007年)
興味深い二人のサウンドも下のYouTube(*&**)を観て下さいね。

演奏は上記二人とクロノスですが、チェロはジェフリー・ゼイグラー(Jeffrey Zeigler, 2005年–2013年Kronos4メンバー)になっていて、voiceはもちろんポホヨネンになります。



Uniko (2004年), for accordion, voice, string quartet, and accordion and string samples
I. Utu - II. Plasma - III. Särmä - IV. Kalma - V. Kamala - VI. Emo - VII. Avara

ベースに響く電子パーカッションと電子ノイズ、サンプリング・サウンドと思われる細い弦楽音、そこに弦楽四重奏とアコーデオンが乗ってきます。
クロノスの弦楽は調性の美しい音色(I. Utu)で米ミニマルのP.グラスを思わせる処もあります。一番違うのは重く響くパーカッションですね。処理された重低音はポップな印象を与えています。それはIII. Särmäで明確になりアコーデオンの音と唸る様なvoiceで彼らのサウンドとなります。米前衛ポップ系の様なノリで面白いのはここから、IV. Kalmaでは特殊奏法を含むノイズ&風民族音楽の展開に、V. Kamalaは弦の特殊奏法を強めて前衛+ミニマル風、VI. Emoは電子ノイズが脳に響く緩徐、VII. Avaraはサンプリング音楽主役、多分w、で華々しいです。とにかく表情豊かで楽しさいっぱいの楽曲です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Kalma(part IV)になります。Kimmo Pohjonen official websiteです。
  Helsinki festival september 2004 ライヴでクロノスのチェロはJ.ジャンルノーです。
  電子音の重低音がここでは薄くて、本来の迫力に欠けるのがちょっと残念。



ポスト・ミニマルでポップです。無調混沌の欧前衛とは違い、米現代音楽的サウンドだと思います。
始めのミニマル二曲は無い方が落ち着きますね。その後のサンプラーの電子ノイズ・ベースのポップや民族音楽は素晴らしく、ポホヨネンのサウンドにコスミネンの電子処理の威力を感じます。好きですね。^^v



* ポホヨネンの強烈な前衛アコーディオン協奏曲(合唱付き)です
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=kqGHoIaVGKY
** コスミネンのサンプラーと打楽器の演奏です
▶︎ https://www.youtube.com/watch?v=eMVwAwnuRHw
(現状でこの二人は「現代音楽CD(作曲家別)一覧」には載せていません)



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クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)の「Black Angels」を聴く


クロノス・クァルテット, Kronos Quartet
今更のクロノスですが、1973年デイヴィッド・ハリントン(David Harrington, #1vn)が創設した米現代音楽四重奏団ですね。チェロ以外は現在もオリジナル・メンバー(John Sherba, #2vn / Hank Dutt, va)です。このアルバムはオリジナル・メンバーなのでチェロは紅一点ジョーン・ジャンルノー(Joan Jeanrenaud)です。

米クロノスといえば殆どの方が欧アルディッティ、1974年創設のアルディッティ・クァルテット(Arditti Quartet)を思い浮かべるでしょう。同じ前衛現代音楽クァルテットですが、クロノスは古典からミニマル、ロック・ジャズ・民族音楽までとレパートリーは広いですね。アルディッティは欧前衛系を主体にしている点で異なりますが、これは米現代音楽シーンとの違いでしょう。
アルディッティQ.は昨年来日でも感じましたが、先鋭から円熟に舵を切っている様です。クロノスがどうなのか?、興味があるところですね。


Black Angels
本アルバムは興味深い点がいくつかありますね。一つはアイヴズの"They are there!"で、テープに残された本人の演奏との共演、もう一つはショスタコーヴィチ"Quartet No.8"という話題性の強い(興味のある方はググって下さい)の採用ですね。個人的には表題曲のクラム"Black Angels"が最大ポイントです。



Black Angels (1970年) / George Crumb
米現代音楽家ジョージ・クラム(1929/10/24 - )の代表作「ブラック・エンジェルズ1970-暗黒界からの13のイメージ」です。特殊奏法から引用まで、技法を駆使したベトナム戦争に触発された作品ですね。
エレクトリック弦楽の切れるような弦のトリル、ノイズ、そしてゴング、叫び(数字の13を各国語で。数字のカウントアップのつぶやきもあります。共に日本語あり)、等々。「電気昆虫の夜(Night of the electric insects)」といったパート・タイトルも含めて先鋭的表現は実に魅力的です。
大作ピアノ曲集「マクロコスモス」も早いところインプレしないといけませんねぇ。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  スコア付きでどうぞ。
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)の演奏もあります!!


Spem in alium / Thomas Tallis
16世紀の音楽家トマス・タリスの全40声部の作品で、クロノスのアレンジ版。一部パートを事前録音しておき演奏しています。技法的には面白いですがSacred Song(聖歌)ですね。

Doom. A Sigh (1989年) / Istvan Marta
ハンガリーの現代音楽家イシュトヴァン・マルタ(1952/6/14 - )の作品「運命、嘆息」です。
マルタがルーマニアの小村を訪れた際に録音した二人の女性の歌を元にしていますが、なんとも陰湿で不気味な流れです。その歌も入ります*1が不完全な録音と合わせてまるで泣き声の様、それに弦楽が哀しみの音色を薄く・失望を濃く合わせます。恐怖を覚えます
この後二人の女性は曲の元を追った独裁政権からの迫害に遭い、マルタは「二度と来ないで」と電報を受けたそうです。

They are there! (1917/1942) / Charles Ives
米現代音楽の父チャールズ・アイヴズ(1874/10/20 - 1954/5/19)がテープに残した演奏との共演です。アメリカンな陽気さで歌うアイヴズとピアノ。よく聴くとクラスターと不協和音が絡んでいます。ヒスノイズだらけの音に乗って時代背景も含めての演奏ですね。弦楽は薄いですがw

Quartet for Strings no 8 in C minor, Op. 110 (1960年) / Dmitri Shostakovich
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の代表作ですね。時代背景と作曲の関係の話題性以外、曲に関しては特にコメントはありません…


個人的には次の二曲です。
一つはクラムの代表作「Black Angels」を聴くために所有しているアルバムで、その先鋭な曲を楽しみたいですね。もう一つはマルタの「Doom. A Sigh」で、この様な不気味で恐ろしい現代音楽は他に聴いたことがありません。
興味の尽きないアルバムです



*1 人が口ずさむ歌のテープをメインに曲を被せたパターンですとギャヴィン・ブライアーズ(Gavin Bryars)の名曲『イエスの血は決して私を見捨てたことはない, Jesus' Blood Never Failed Me Yet 』を思い浮かべます。よく似たパターンですが、こちらの方が先の1971年作、そして心に染みます。



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デュッセルドルフ・パーカッション・アンサンブル(Düsseldorfer Schlagzeug Ensemble) の「Denhoff Vlachopoulos Roderburg Chavez」を聴く


Düsseldorfer Schlagzeug Ensemble
英語名にするとわかりやすいですね。Düsseldorfer Percussion Ensembleは1987年に結成されて、このアルバムが第一弾、1900年代半ば以降のヴィルトゥオーゾ性の高い前衛パーカッション音楽を取り上げています。
メンバーは以下になります。
Albert Detmer, Karl Hausgenoss, Rolf Hildebrand, Karl-Josef Kels, Christian Roderburg, Wolfgang Wölke, Thomas Meixner(Toccata)


Denhoff Vlachopoulos Roderburg Chavez
タイトルは以下四人の現代音楽家の名前。各パーカッション作品です。

Michael Denhoff (ミハエル・デンホフ, 1955/4/25 - )
 ドイツ人現代音楽家でチェリスト、H.W.ヘンツェに師事していますね。メシアン、フェルドマン、クルターク、そしてB.A.ツィンマーマンをルーツにしていると言われています。
Iannis Vlachopoulos (ヤニス・ブラホープロス, 1939 - )
 ギリシャ人現代音楽家でメシアンにも師事しています。そして興味深いのはkokotonPAPA一押しのB.A.ツィンマーマンに一番影響を受けてる事でしょう。
Christian Roderburg (クリスティアン・ローデルブルク, 1954 - )
 マリンバ奏者としての方が著名かもしれませんね。本アンサンブルを見つけ出した一人でもあります。
Carlos Chavez (カルロス・チャベス, 1899/6/13 - 1978/8/2)
 メキシコ人現代音楽家で、ポリリズム、クロスリズム、シンコペーションと言った拍子変化を特徴とするので、今回の楽曲はまさにぴったりでしょう。



Bacchantic Tanzszenen (1983年) by Michael Denhoff
始めは所謂(いわゆる)ドラムセット+α的です。ロックのドラムソロにタムタム等の鳴り物を混ぜた感じでしょうか。途中から鍵盤打楽器が入り緩急の表情が付いて現代音楽らしくなります。その辺りから面白くなりミニマル的要素も見せます。先鋭的な展開はありませんが面白ですね。

Psalmen (1988-89年) by Iannis Vlachopoulos
鍵盤打楽器のポスト・ミニマルです。従って旋律が存在し、煌めく音色が空間を埋めながらスロートーンとファストトーンの両方で響きます。調性音楽でホモフォニー、心地よい響きですね。この二人のB.A.ツィンマーマンとの接点がピンと来ませんが…

4 Ensemblestücke (1991年) by Christian Roderburg
特殊奏法も交えた暗闇、嵐、狂気、の表情が幻想空間を作ります。閑と烈、遅と速、といったコントラストの強さが生かされていますね。和太鼓的反復要素やアフリカ系リズムといった民族音楽系パートも存在しますが鍵盤打楽器は入りません。

Toccata (1942年) by Carlos Chavez
前曲と少し似た方向ですが変拍子主体で、ポリリズム指向が感じられますが混沌ではありませんね。リズム変化追求型ですが鍵盤楽器展開も単純音反復になります。三楽章で第二楽章は緩徐的展開、最後は再現的で打楽器ソナタの様です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ted Atkatz指揮、The CSULB Percussion Ensembleの演奏です



パーカッションと一括りにしても、打音だけのリズム楽器と鍵盤楽器では全く表情が違いますよね。尖った前衛はありませんが、その両者を楽しめるアルバムです。




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プロコフィエフ(Sergei Prokofiev) の「十月革命20周年のためのカンタータ」を聴く


セルゲイ・プロコフィエフ (Sergei Prokofiev, 1891/4/23 - 1953/3/5)
このブログではプロコフィエフやショスタコーヴィチを現代音楽に入れていません。多分一般的にもそうだと思います。この時代のロシア音楽らしい新古典主義と民族音楽、そして独特のリズム感は特徴的で今更の紹介文は不要ですね。


Cantata for twentieth anniversary of the october revolution
プロコフィエフが1936年にソ連に帰国してすぐ書かれた異色作品ですね。ロシア革命20周年(1937年)の為に書かれた、合唱付大編成、軍楽隊、バヤン(ロシア式アコーデオン)合奏、レーニンのアジーテション、のソ連社会主義礼讃音楽です。2016年のゲルギエフ来日公演で取り上げられましたね。

演奏は以下の豪華布陣です。
◻︎アジテーター:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(Gennady Rozhdestvensky)
◻︎指揮:ネーメ・ヤルヴィ(Neeme Järvi)
◻︎演奏・混成合唱:フィルハーモニア管/フィルハーモニア合唱団



Cantata for twentieth anniversary of the october revolution, Op.74 (1936-37年)
I. Prelude » II. The Philosophers » III. Interlude » IV. A tight little band » V. Interlude » VI. Revolution » VII. Victory » VIII. The Oath » IX. Symphony » X. The Constitution
爆裂音から入り静的な流れを見せながら、合唱や1917年のレーニンの演説(アジテーション)を入れ込み、サイレンが鳴り常に激しい山場を作る。カンタータなので歌唱パートが多く、英文を見ればわかりますが勝利を歌い上げ、音楽構成と合わせて極端なプロパガンダ祭典音楽そのものですね。
炸裂クラスターに混沌があったりもしますが、プロコフィエフのロシア新古典的な音楽です。前衛を否定していたソ連は満足だったでしょう。凄い迫力とパワーです。

 ★ 試しにYouTubeで観てみる?
  ゲルギエフとロッテルダム・フィルのLIVEです!

Excerpts from 'The stone flower', Op.118 (1949年)
その12年後、一転してプロコフィエフが共産党ジダーノフ批判(1948年に始まった前衛芸術を拒否し芸術様式の統制を図る)を受けた時代のバレエ音楽「石の花の物語」からの抜粋ですね。演奏会用組曲Op.126-129もありますが、ここではバレエ曲の抜粋ですね。
民族音楽の色合いが新古典主義に加わり派手なサウンドもプロコフィエフらしい音楽になっています。一部はストラヴィンスキーのバレエ曲を思わせますね。政策的背景も含めて何が前衛拒否に当たったのか不明ですが、個人的には上記カンタータと楽風の相違はありません。今なら全く違和感はないでしょう。


カンタータはもの凄いパワーと迫力が迫って来ます。ただ音楽的には特別な事はないかもしれません。N.ヤルヴィらしい明瞭さは生きていると思いますが、速いテンポの揺さぶりは無いようですね。プロコフィエフ・ファン、時代背景を思い浮かべたり、大音響曲を聴きたい方は満足感が高いと思います。




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フィリップ・マヌリ(Philippe Manoury) の「Fragments pour un portrait・Partira I」を聴く


フィリップ・マヌリ (Philippe Manoury, 1952/6/19 - )
好きな仏現代音楽家の一人マヌリはブーレーズ、シュトックハウゼン、クセナキスと言ったダルムシュタットのポスト・セリエルのエクスペリメンタリズムからスタートして初期1972–76年頃はセリエルの点描的音楽(Punctualism)でした。1980年代に入ってからは主流となる電子音楽に向かいIRCAMをベースにライヴエレクトロニクスでは米数学者Miller PucketteのソフトMax/MSP(ver.4, ver.5以降は映像用Jitterも取込み現製品名はMAX)を使っています。
その後は機能和声を同期させる様な多様性も見せる様になりましたね。

作風の基本は対比(shallow and deep, melodic and dissonant, placating and strident, stasis and progress, simplicity and complexity)と流れ(run-up—stop—tighten—burst—relax)と言われますが、印象は強音ポリフォニーでもあります。
ちなみに来年のコンポージアム2019(武満徹作曲賞選考員含む)はフィリップ・マヌリなのでとても楽しみです。


自画像のための断章 / パルティータ I
構成パートが多いアンサンブルと電子音響の作品になります。演奏はスザンナ・マルッキ (Susanna Mälkki)指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain, 現首席指揮者はピンチャー Matthias Pintscher)、にIRCAM。説明無用の仏現代音楽ユニットです。



Fragments pour un portrait, 7 Pieces for ensemble of 30 instruments (1998年)
 1. Chemins - 2. Choral - 3. Vagues paradoxales - 4. Nuit (avec turbulences) - 5. Ombres - 6. Bagatelle - 7. Totem
室内楽のポリフォニーで即興的なのですがありげなカオスではなく、その中に協調と空間音響の響きがあります。全体的に音密度は濃く、静より刺激とクラスター風の音楽です。音にキラメキを感じさせるのはメシアン→ブーレーズから流れる仏現代音楽ならではの気がしますね。やっぱり素晴らしいですね。スコアからは細かな昇音階・降音階が各所に見られますが、ト音記号・ヘ音記号・ハ音記号で各声部が構成されて譜面上での前衛性はありません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  指揮はDavid Robertsonになります。アンサンブル三方配置が現代音楽らしいですね。
  CDよりrec.レベルがやたらと低く音が沈んでしまっているのが残念です。


Partita I for viola and live electronics (2006年)
 I - II - III - IV - V - VI - VII - VIII - IX
ヴィオラとライヴエレクトロニクス曲で、vaはクリストフ・デジャルダン(Christophe Desjardins)、電子音響はマキシム・ル・ソー*(Maxime Le Saux)が担当しています。
vaの音色が脳に蔓延する様なコンプレックスさ。もちろんライヴエレクトロニクスで合成されてvaポリフォニーになっていますが、それがMax/MSPでループやテープ(事前録音)他の何をどう駆使しているのかは不明です。(スコアには山型昇降音階音符の他に弦楽の秒数指定付きの波形が入っていますね)
無調ですが旋律が存在して互いに不協和音交錯にならないのはこの時代のマヌリらしい調性との融合でしょう。刺激的な音空間が味わえます。ボリュームを上げられない時はヘッドホンが良いかもしれませんね。


本流の欧エクスペリメンタリズム現代音楽でしょう。強音主体のポリフォニー即興風なのに煌めきと刺激のある(電子)空間音響系で個性的です。おすすめの一枚です。



*ル・ソーは本年8月の現代音楽の恒例祭「サントリーホール サマーフェスティバル 2018」にP.マヌリの「Le temps, mode d’emploi, 時間、使用法」日本初演で来日します。フェスティバルではJ.ヴィトマンのフィーチャーや、第28回芥川作曲賞選考演奏会では岸野末利加さんの参加もあり連日通う予定です。^^v



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アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt) の「交響曲集 The Symphonies」を聴くと、背景にあるのが前衛の衰退とわかりますね


アルヴォ・ペルト (Arvo Pärt, 1935/9/11 - )
現代音楽家としては日本でも最も人気がある一人なのでは? 何回かインプレしているペルトですが、前衛とは対極のマニエリスムの現代音楽家です。ペルトは初期の1970年くらいにそれまでの無調や新古典主義的な楽風から、plainsong(単旋律聖歌)ベースのミニマルであるティンティナブリに推移します。1984年からはECMから作品リリースされている事でも楽風がわかるのではないでしょうか。(ECM New Seriesはペルトからスタートしていますね)

このブログであまり取り上げていないのは初期ロマン派以前のクラシック、そして現代音楽では宗教系と旧来の流れを汲むマニエリスムです。ペルトはその全てをバックボーンにするので恐ろしくハードルが高いですね。
どこかでペルトくらい聴かないと、と言った脅迫概念wが脳裏にある様で再チャレンジです。(もちろん何回かインプレしていますが、途中で聴くのを諦めたりとか…笑)

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The Symphonies
今回見つけた新譜は初期の二曲、転換点と現在までそれぞれ一曲づつ四つの交響曲を一枚で聴き比べられるのであえて購入してみました。初期作品が二曲入っているのがポイントですね。



交響曲第1番「ポリフォニック」(1963年)
時は前衛最盛期。二楽章形式で第一楽章は出し入れの強い新古典主義で4拍子旋律のショスタコーヴィチ感と静音パートの暗さはバルトーク印象と言った風です。第二楽章はバルトークぽさが濃い中、中間部?でショスタコ風行進曲に推移します。然程のポリフォニー感も特徴的な個性もありませんね。

交響曲第2番 (1966年)
前衛が衰退に向かい始めた時代です。ペルトの無調の前衛曲で具体的な旋律は存在せず、管弦楽器がそれぞれ共鳴音をポリフォニー的に響かせます。特別な技法技術、ノイズ系や空間音響と言った、はなく旋律と調性を排除しただけの様な構成ですね。ラストはちょっと面白く引用が入っているかもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

交響曲第3番 (1971年)
前衛が衰退期に入った1970年代初頭。それと共にペルトは作風を変えています。その過渡期作品で静かで美しく響きの良い作品ですがまだ抑揚と表情の変化を付けて新古典主義が顔を出しています。明確に言えるのは前衛に背を向けた事でしょう。第三楽章では宗教曲風となり聴くのが難しくなってきましたw
(ペルトはこの時期に正教会に入信しているそうです)

交響曲第4番「ロサンゼルス」(2008年)
現在の作風に繋がるティンティナブリ作品、聖風ミニマル?、になります。音の密集のないスロー静的主体の美しいペルトの音楽、です。興味軌道から外れましたw
心の荒むジジイの駄耳にはやっぱり縁がない様です。m(_ _)m

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?


ペルトの楽風推移が前衛現代音楽の時代変化と対応しているのが良くわかるアルバムです。
ペルトの一番の才能は時代の波を見抜く力だったのかもしれませんね。






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チン・ウンスク(陳銀淑, 진은숙)の「Unsuk Chin: 3 Concertos」を聴く


チン・ウンスク (Unsuk Chin, 1961/7/14 - )
韓国人女性現代音楽家で現在はドイツを活動拠点にしています。ハンブルグでリゲティに師事していて、その後電子音楽を経てアンサンブル・アンテルコンタンポランやケント・ナガノとのコラボで知られますね。インプレ済みですが、印象は前衛としては特異性は薄くどこかで耳馴染みのある現代音楽の聴きやすさを感じます。

コンポージアム2018、来月5月27日武満徹作曲賞(現代音楽オーケストラ作品)の審査員を務めます。チケットも安価、スコアも展示され、本選の作曲家もロビーに居て話しかけられ楽しいです。来年の審査員はフィリップ・マヌリなので楽しみです。

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Unsuk Chin: 3 Concertos
タイトル通り、ピアノとチェロと笙(sheng)の協奏曲になります。年代的にも90年台後半から2010年代までが揃って、チェロ協奏曲はコンポージアム2018でも日本初演予定ですね。

[演奏] Sunwook Kim (piano), Alban Gerhardt (cello), Wu Wei (sheng), Myung-Whun Chung (cond.), Seoul Philharmonic Orchestra



Piano Concerto (1996/1997年)
第一楽章は小刻みなpfアルペジオに、キラキラとしたオケ。第二楽章はそのままスローにした緩徐ですね。この楽章が一番長いのですが表情変化があります。第三楽章は一楽章と似たパルス的です。第四楽章は暗い音色背景ですが、パルス的なpfのアルペジオは変わりませんね。通して変化の薄さが気になります。

Cello Concerto (2008/2009, rev. 2013年)
オリジナルを知らないので2013年版の推移がわかりません。不協和音の機能和声の旋律を奏でるvc、オケの流れは抑揚をクレシェンド・デクレシェンドでつけています。(緩徐ではロングトーン) メリハリがあるので普通のコンサートの前半のコンチェルトでも受けそうです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Šu for sheng and orchestra (2009年)
上記チェロを中国笙に置き換えた様な楽曲です。タンギングの笙や打楽器を印象的に使ったりの変化はあり、三曲の中では一番面白いですね。ただ基本にある機能和声に寄り添う様な流れには個人的に違和感を拭えませんが。


機能和声に近い反復動機・旋律の流れ、静音や強音も徹底したものは無く、格別な個性がある現代音楽でないですね。今の時代の多様性の現代音楽なのでしょう。
現代音楽は作曲家の思想・技巧の楽譜展開なので、それを知らないとわからないかもしれません。コンポージアム初日の講演会「自作を語る」へ行く気力は残念ながらありませんが… (無料ですから5/23いかがですか?)






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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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