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ピエール・アンリ(Pierre Henry) の「La Dixième Symphonie - Hommage à Beethoven」ベートーヴェン再構築



ピエール・アンリ
(Pierre Henry, 1927/12/9 - 2017/7/5)
フランスの現代音楽家で、N.ブーランジェやO.メシアンに師事しています。年代的にはブーレーズやシュトックハウゼンと同じ前衛先端と同じ'20年代生まれですが、セリエルではなく電子音楽とミュージック・コンクレート方向です。特にミュージック・コンクレート*、ヴァレーズのサイレンが最も知られる処ですが基本は電子処理された音、に関してはP.シェフェールと共に開発者の一人とされていますね。

*1951年にフランス国営放送にGRMCを設立し、ラジオ放送を通して影響力を増したそうです。今は広義ではライヴ・エレクトロニクスを含む電子音楽全般を指す事が多いですね。個人的には楽器以外の音を使う事を指すイメージで、少々違和感がありますが。


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La Dixième Symphonie - Hommage à Beethoven
タイトル「第10交響曲 - ベートーベンへのオマージュ」の通りベートーヴェンの交響曲の再構築、トランスクリプション、コラージュ、と言った作品ですね。

オリジナルは1979年に12楽章のテープ作品として完成、1988年にはエレクトロニクス&アコースティクver.が出て、1998年にはそのリミックスver.の"Remixe Sa Dixieme Symphonie"(10楽章)がCD化されていますね。

今回は楽章を減らしてエレクトロニクスを排除、8楽章のアコースティック(生楽器)ver.として録音・リリースされました。P.アンリらしさが減っている様な懸念を感じなくもありませんが…

演奏パターンも凝っていて、三群のオケと合唱団を配置して指揮者も三人(パスカル・ロフェ、ブルーノ・マントヴァーニ、マルゼーナ・ディアクン)と言う、前衛最盛期に見られた構成ですね。演奏はフランス放送フィルハーモニー管弦楽団, パリ音楽院管弦楽団、最終楽章に僅かですが声楽(Benoît Rameau, tenor)があるので、パリ青年合唱団, フランス放送合唱団, が入ります。







I. Allegro con brio - II. Scherzo - III. Allegro molto - IV. Andante - V. Rondo - VI. Presto - VII. Comme une fantaisie - VIII. Finale
クラシックの交響曲らしい速度表記名の楽章が並びますね。その通りに構成はされています。ベートーヴェンの動機を繋ぎ合わせ、変奏して、再構築した、ただの古典交響曲風です。詳細インプレ不要でしょう。

II. Scherzo, やV. Rondo のコラージュ・ポリフォニーで少しリズムが錯綜する様な微々たる面白さか、ベートーヴェンの再構築を楽しめる方には聴く価値を見出せるかもしれません。

三部のポリフォニーに貢献するくらいしか三群の配置の面白さも伝わりませんし、エレクトロニクスを排除した事で一気に前衛的面白さも排除されてしまいましたね。もしかしたらB.A.ツィンマーマンの様な壮大なコラージュが楽しめるかと思いましたが、楽しみが見い出せない残念な一枚でした



ベートーヴェンの動機コラージュによるポリフォニーですが、前衛性は極低いです

ベートーヴェン好きの前衛ファンなら、新しい耳触りで楽しめるかもしれません。でも、真面目なベートーヴェン好きの方が聴いたら怒っちゃうかも…w



蛇足ですが、一つ前のエレクトロニクスも入ったver. "Remixe Sa Dixieme Symphonie" は前衛色が濃いので面白いですよ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第6番』 «ネット配信» ユッカ=ペッカ・サラステ指揮/パリ管弦楽団 2020年4月3日

過去の来日公演でもCDでもマーラーは期待外れだったパリ管。一方サラステは2019年まで首席指揮者を務めたケルンWDR交響楽団とは素晴らしいマーラー5, 9番のCDを残しています。6番もネット配信で見事な演奏を聴かせてくれました。さて結果は?!


ユッカ=ペッカ・サラステ | パリ管弦楽団
(Jukka-Pekka Saraste | Orchestre de Paris)
サラステが今年covid-19の中、パリ管に客演したマーラー6ですね。
クラシックとジャズに強いフランスの国立公共ラジオ局 "france musique radio" ウェブサイトからの配信です。



▶️ france musique radio (公開期限は短いと思われますのでお早めに)






«ネット配信»
マーラー 交響曲 第6番

mahler6_Sarraste2020.jpg

[Live at Philharmonie à Paris, 3 Apr. 2020]


第一楽章
第一主題は速めで重厚さは避けていますね。木管コラールのパッセージも割とスルッと流してアルマの主題も流れに沿った美しさです。濃厚さを嫌った提示部でしょう。展開部も第一主題をシャープに、第二主題で鎮めて挿入部の牧歌調の流れを強調します。チェレスタやソロ楽器が強調されている感じですね。再現部は標準的に両主題を再現します。音のまとまりに弱い感じもありますが、速めでシャープな第一楽章です

第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章パロディの流れで、速めでシャープです。トリオはスロー&シンプルですが、若干速めで変拍子を強調している感じですね。木管動機もあっさりとして哀愁感は低いです。

第三楽章
アンダンテ主要主題も速め、演奏に優美さが薄くギクシャク感じます。第一トリオobの哀愁も演奏の揃いが良くない感じで、hrも音が良くありません。中間部も一体感に欠ける流れです。大切に演奏しているのか疑問が湧く様な演奏です

第四楽章
序奏は陰影は薄めですが個々の音が冴えませんね。アレグロ・エネルジコから提示部第一主題は切れ味ある行進曲となって演奏の揃いも初めて気持ちの良さを感じます。hrのパッセージも上手く絡めますが、テンポは標準的になって締まりが弱いかも。第二主題は軽快ですが、まとまりに少し欠けるかもしれません。展開部チェロ動機も強調は程々にHrが怪しい音を出しますが、荒れ気味の演奏が行進曲では生きているのが皮肉ですね。再現部も序奏から第二主題は演奏が落ち着きませんが、騎行でまたもや元気を取り戻します。この楽章だけ荒れたオケの面白さが感じられたかもしれません


速めで一体感に欠けるマーラー6です。方向性は、重厚さを避けた切れ味勝負と言った処でしょうか。

問題は、流れに"間"が無く少々忙しないのと、パリ管の音が荒く揃いが良くない事でしょう。殺伐とした音で、パリ管はご機嫌斜めの様ですw 最終楽章だけは、それが生きて楽しめましたが。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管 の「マーラー "大地の歌"」は美しい表現力ですね

昨日のウラディーミル・ユロフスキに続いて"大地の歌"ですね。マーラーの交響曲の中では、1番, 4番 と並んであまり聴かない方のグループに入りますが…w


イヴァン・フィッシャー Iván Fischer
(Budapest Festival Orchestra, 2017-3)
言わずと知れたI.フィッシャーが創設(1983年)者の一人であり、今も音楽監督を務めるブダペスト祝祭管弦楽団を振った"大地の歌"ですね。長期をかけて進めているマーラー・サイクルから9作目になります。

テノールはロバート・ディーン・スミス(Robert Dean Smith)で、昨日インプレしたユロフスキ盤でも採用されていましたね。バリトンを採用する事もあるアルトはゲルヒルト・ロンベルガー(Gerhild Romberger)です。
R.D.スミスの2019年来日「グレの歌」のヴァルデマル王が素晴らしかったのは昨日書いた通りです。

「大地の歌」流れを少々荒っぽく言えば、テノール(男性)が歌う奇数番楽章は盃を重ねる詩、アルト(女性)が歌う偶数番楽章は人の心の詩、最後の長い第六楽章だけは自然と友を謳う訳ですが、全体として"人は死しても大地は残る"というお話ですね。個別の古い中国の詩の引用ですから、楽章間でストーリー展開がある訳ではありません。




Mahler Symphony "Das Lied von der Erde"



第一楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」
ペザンテの印象は華々しくアレグロを陰影豊に、テノールは生き生きとしています。管弦楽の展開部は一呼吸入れる様な落ち着いた流れですね。この楽章らしいコントラストが心地良いですね。

第二楽章「秋に寂しき者」
導入部ではob-flが哀愁を美しく奏で、アルトが抑えた感情で入って来ます。展開部は少し穏やかさを見せて、再現部では哀愁から光を感じさせますね。歌詞にフィットした落ち着いて叙情的な緩徐楽章です。

第三楽章「青春について」
スケルツォは五音音階(中華和声)で軽快に弾む様にテノールとフィットさせます。中間部スローは少し影を見せながら、杯を上げる様な心地よい楽章になっていますね。

第四楽章「美について」
導入部コモド(乙女)のアルトは心地よい明るさを、それに合わせるオケの主要主題パートは五音音階を軽妙さで奏でます。中間部の馬で駆ける若者は派手な騎行風に鳴らしてコントラストが見事ですね。詩を上手く表現して聴き応えがあります

第五楽章 「春に酔える者」
アレグロの提示部テノールは雄々しく伸びやかに酔いを表現。展開部二回目の鶯のスローでは少し鬱を見せて重ねる杯を歌います。

第六楽章「告別」
導入部の低弦とobは暗闇を、提示部のアルトとフルートはその情景を静スローの透明感で、友を待つパートでは緩やかな優しさで幸福を表現しています。オケ・パートの展開部は落ち着いた流れから感情を込めると、再現部 王維の「告別」は緩やかに抑えながらも陰影を強く表現してラストの永遠"Ewig…ewig…"に繋げます。


程よいアゴーギクとディナーミクが見事にマッチして予想を上回る表現力で素晴らしい"大地の歌"になりました。

第一楽章と第二楽章のコントラストが素晴らしく、他の全ての楽章も詩を心地よく表現しています。全体としてはソフトな美しさでしょうか。

アルトの歌いは心持ち抑え気味の表現で、テノールも力強さの中にもコントロールの効いた良さを感じましたね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ウラディーミル・ユロフスキ/ベルリン放送響 の「マーラー 交響曲 "大地の歌"」

ウラディーミル・ユロフスキとイヴァン・フィッシャーの"大地の歌"が出ましたね。前回この曲をインプレしたのがお兄さんのアダム・フィッシャー盤でしたから約一年ぶりになります。


ウラディーミル・ユロフスキ Vladimir Jurowski
(Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin, 2018-10/14 Live rec.)
ユロフスキが2017年から首席指揮者を務めるベルリン放送交響楽団を振った2018年の録音がリリースされました。

テノールはロバート・ディーン・スミス(Robert Dean Smith)、アルトはサラ・コノリー(Sarah Connolly)です。R.D.スミスは2019年のカンブルラン/読響の「グレの歌来日で素晴らしいヴァルデマル王を演じてくれた事が記憶に新しいですね。次回インプレ予定のイヴァン・フィッシャー盤でも登場するので聴き比べ出来ますね。

「大地の歌」流れを少々荒っぽく言えば、テノール(男性)が歌う奇数番楽章は盃を重ねる詩、アルト(女性)が歌う偶数番楽章は人の心の詩、最後の長い第六楽章だけは自然と友を謳う訳ですが、全体として"人は死しても大地は残る"というお話ですね。個別の古い中国の詩の引用ですから、楽章間でストーリー展開がある訳ではありません。




Mahler Symphony "Das Lied von der Erde"



第一楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」
Hrペザンテは荒れ気味アンバランスでテノールは伸びやか、マッチングが今ひとつに感じます。管弦楽の展開部は神経質な表情、再現部は歌・演奏共に緊張感がありますね。

第二楽章「秋に寂しき者」
導入部の木管は細い神経質な流れを作ります。アルトは切々とした歌いですね。展開部は優美さを聴かせますが、尖った音を感じます。再現部では広がりを大きく鳴らします。今ひとつ落ち着かないな緩徐楽章でしょうか。

第三楽章「青春について」
スケルツォは中華和声っぽく明るく跳ねる様に、テノールは朗々と。中間部スローは艶やかに歌います。この楽章と次の楽章はバランスの良さが光ります

第四楽章「美について」
導入部コモド(乙女)は美しく。それに合わせるオケの主要主題パートは中華和声で表情豊かです。中間部の馬で駆ける若者も五音音階で生き生きと、刺激ある流れを作ります。気持ち良い楽章になっていますね。

第五楽章 「春に酔える者」
アレグロの提示部テノールはシャキッと。展開部(中間部?)二回目のスローでの調性感の変化は大きめですね。

第六楽章「告別」
提示部のアルトの表現力と繊細なフルートの絡みは良かったですね。展開部ではオケが五音音階と機能和声を上手くマッチさせて神経質な流れを作っています。再現部は王維「告別」の感情溢れるアルトが聴き処になっていますね。


この曲にこのオケのパターンが合うかは別にして、緊張感ある演奏と鋭い歌唱が印象的ですね。

第一・二楽章は今ひとつですが、中華和声(五音音階)を生かした第三・四楽章の表現力は素晴らしいですね。

テノールは切れ味の鋭さと伸びの良さ、アルトは表現力があって、両者の力量を感じました。最終楽章のアルトは聴かせてくれましたね。




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オウティ・タルキアイネン(Outi Tarkiainen) の「The Earth, Spring's Daughter | Saivo」ラップランドの現代音楽

ノルドグレン, サッリネン, コッコネン, と歴代のフィンランドの現代音楽家を続けてインプレしたので、今回は若手(35歳)の女性音楽家を聴いてみましょう。


オウティ・タルキアイネン (Outi Tarkiainen, 1985/2/7 - )
シベリウス音楽院で習い、ロンドンやマイアミ大でも学んでいます。特徴的なのはジャズをベースにしている事と声楽に興味を持っている事だそうです。またラップランド生まれで、かの地の民族サーミに根差したテーマを用いている事もある様ですね。


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The Earth, Spring's Daughter | Saivo
歌曲と協奏曲の二曲セットです。"1. 大地, 春の娘"(Eanan, giđa nieida ) はサーミの詩人のTextを用いています。"2. サイヴォ"はサックス奏者のユッカ・ペルコ(Jukka Perko)のために書かれていて、ソプラノ・サックスにペダル・エフェクターを使っています。タイトル名はサーミ語で神聖なる土地を意味するそうです。

演奏は個人的に興味ある、来日公演にも行きましたね、ヨン・ストルゴーズ(John Storgårds)の指揮でラップランド室内管弦楽団です。







1. The Earth, Spring's Daughter (2014-15)
9パート構成です。冒頭サーミ語でしょうか全くわからない言語で語られるText、その背景は調性音楽で幽玄な音になっています。パート2以降は歌唱となって、ライナーノートには英訳があるのでストーリーはわかりますね。

音楽は明るい・暗い、強い・弱いと言った表情変化はありますが、前衛ではなく神秘主義的な音色で構成されて、一部は民族音楽和声を感じる事がありますね。トリル・トレモロをバックにロングトーンの音色が前に出てくる、そんな感じです。明確な主題の様な旋律は存在しませんが、パート毎に動機があってその変奏が主構成の様です。今の時代のクラシック音楽の歌曲的ですね。ラスト"Epilogue"のvcの演奏が良いです。


2. Saivo (2016)
5パートの楽曲です。曲構成的には同じで、トリル・トレモロを背景にして旋律が乗ってくる幽玄な流れですね。サックスがメインですが、他の楽器もソロ的に出て来ます。sop-saxのエフェクト音もあまり特徴的な音を出す事がありません。処々で面白いピチカートやパーカッションが使われますが、個性を感じるレベルでもありません。サックスの超絶技巧カデンツァか即興パートでもあると面白かったかもしれませんね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ご本人のYouTubeから抜粋ver.(4. Reflection - 5. Fissureから?)です
  Anna-Maria Helsing指揮、Tapiola Sinfoniettaの演奏です
  sop-saxはCDと同じJukka Perkoですね




機能和声の音楽で前衛ではありません。ジャズ和声もなく、今の時代に多い幽玄深淵さを感じさせる音楽でしょうか。出し入れの強さもありますしね。

興味深い個性・特徴が感じられないのは残念ですが、今の時代を楽しめます。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ヨーナス・コッコネン(Joonas Kokkonen)の 代表作オペラ「最後の誘惑, The Last Temptations」



ヨーナス・コッコネン (Joonas Kokkonen, 1921-1996)
P.H.ノルドグレン(b.1944), A.サッリネン(b.1935), と続けてインプレしましたが、二人が師事していたのがコッコネンですね。前衛実験音楽に進まなかったフィンランドの現代音楽家の源流、それがコッコネンですね。

コッコネン本人はシベリウス音楽院で学んではいますが、特に誰かに師事したという事もなく独学に近いそうです。楽風は新古典主義(1948-1958) → 十二音技法(1959-1966) → 新ロマン派(1967以降)、と言われていますね。もちろん十二音技法は、三度・五度や反復の否定といった前衛実験音楽方向は受容しませんでした。


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The Last Temptations (1975年)
以前インプレした"レクイエム"と並んでコッコネンの代表作で、フィンランド音楽を代表するオペラでもありますね。

フィンランドの18世紀末から19世紀の信徒伝道者(Lay Preacher)であるパーボ・ルオツァライネン(Paavo Ruotsalainen, 1777-1852)を題材としています。フィンランドの農家に生まれ宗教復興運動"Herännäisyys, 覚醒"のリーダーだったそうで、教会と州により裁判にかけれらています。それを元に劇作家のラウリ・コッコネン(Lauri Kokkonen)が台本を起こし、ヨーナス・コッコネンが音楽を付けました。

【超あらすじ】
死を前に床につくパーボが、復興運動により蔑ろにした家族や学問的な虚栄心を回想(フラッシュバック?)するストーリーです。
死んだ前妻のリータや二人の間の息子ユハナ、昔の家、二人の死を回想し自分が死に向かう事を浮かべます。そして最後にパーボを苦しめて来た者たちが誰(何?)であったかを理解し、賛美歌を聴きながら神を讃えて死を迎えます。







最後の誘惑
まず、後期作品なのでほぼ調性音楽だと言う事ですね。後期ロマン派の延長線上におある流れで、新ロマン派?になるのでしょう。そして北欧の風景感もあまり感じない旋律ですね。知らずに聴いたら北欧系やコッコネンに思えないかもしれません。多少の不協和音さえ存在しない感じで、チャイコフスキーあたりの歌劇を思い浮かべるかもしれません。

歌唱はトーキング・ソング的な箇所があってクラシックで言うメロドラマ風(台詞の背景に演奏を付けた音楽)になっているのも特徴的です。朗々と歌い上げる様な所謂(いわゆる)アリアはありませんね。

映像がないので歌いだけで聴くと配役にスペシャルな印象はありません。演技力はわかりませんね。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  第一幕第七場"Paavo's Monologue"、ピアノ伴奏のリート風です




フィンランドの近現代音楽を代表するオペラですが、その方向性はコンベンショナルな歌劇曲であり前衛のかけらも見当たりません。

純粋に人気オペラとして映像付きで楽しむ作品だと感じますね。入手できれば、再度インプレしたいと思います。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アウリス・サッリネン(Aulis Sallinen)のタンゴをイメージした「室内作品集」



アウリス・サッリネン (Aulis Sallinen, b. 1935)
前回インプレのP.H.ノルドグレン同様6年ぶりのインプレとなるフィンランドの現代音楽家A.サッリネンです。なぜ6年ぶりかと言うと北欧現代音楽ですが前衛ではないからですね。

ノルドグレンよりも9歳年上で、同じ様にJ.コッコネンに師事しています。新古典主義➡︎十二音技法➡︎調性を生かした新ロマン主義、と言った方向性は類型的になりますね。十二音技法も実験音楽的方向性(三度・五度や反復の否定といった)はとっていませんね。


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Chamber Musics III, IV, V Virtuosi di Kuhmo
興味深いタンゴにインスパイアされた作品集です。何やらフィンランドではタンゴが人気なのだそうです。サッリネンのタンゴと言う事で随分前に購入して、今回初めて聴きますw

演奏はヴィルトゥオージ・ディ・クーモ, 指揮とピアノはラルフ・ゴトーニ。チェロはアルト・ノラス、アコーディオンはミカ・ヴァユリュネンです。







1. Introduction and Tango Overture, Op. 74b (1997)
  for Piano & String Orchestra
無調点描音列配置的なpfから入って、弦楽が寄り添う様に現れます。弦楽は調性の薄さを生かした幽玄さですね。気がつくとpfも無調ながらも旋律感のある流れになっています。全体的に柔らかい幽玄さは新ロマン派的な流れを感じるでしょうか。進んで後半に入るとpfもオケもタンゴ和声を明らかにして、激情的な舞踏が浮かぶ感じです。流れの変化は楽風変化をトレースしている様ですね。


2. Chamber Music III, Op. 58 (1986)
  "The Nocturnal Dances of Don Juanquijote", for Violoncello solo & Strings
ドン・キホーテ(ドン・ファン)をモチーフにしていて、明らかに機能和声の標題音楽です。チェロがドン・キホーテを表してよく歌っていますが、どう聴いてもR.シュトラウスの"ドン・キホーテ"のパロディかオマージュで楽しい一曲になっています。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Amalie Stalheim のチェロですね



3. Elegy for Sebastian Knight, Op. 10 (1964)
  for Violoncello solo
ウラジーミル・ナボコフの「セバスチャン・ナイトの真実の生涯」を元にして作られた十二音技法をベースにした4'半のチェロ・ソロ曲です。その小説自体が前衛ですね。
一番古い29歳の作品で、調性の音楽です。十二音技法や初期セリエルに見られるパンクチャリズムはなく、ありげな無伴奏チェロ曲と言って良い感じです。


4. Chamber Music IV, Op. 79 (2000)
  "Metamophoses of Elegy for Sebastian Knight", for Piano solo & Strings
上記3.のメタモルフォーゼ(変身)ですね。36年の隔たりで混み入った音楽構成になっています。動機は生かされていて、それが変化していくのが"Metamophoses"という事でしょう。ポリフォニーというよりも各楽器が対位的な流れから入って、ホモフォニーに変化します。調性回帰はハッキリ明確で、ほぼ機能和声の音楽です。時折不協和音が感じられる程度でしょう。新ロマン主義と言って良い美しさと構成の見事さが印象的ですね。


5. Chamber Music V, Op. 80 (2000)
  "Barabbas Variations", for Accordeon solo & Strings
タイトルのキリスト教にまつわる話は割愛です。アコーディオンの鳴りが良く、一瞬オルガンかと思いました。新ロマン派というか、後期ロマン派というか、そんな流れですね。上記前作(#4)と構成感はよく似ていますが、処々でタンゴ和声が味わえるのが違いですね。(タンゴ色が味わえるのは1. 5.です)



全ての曲が標題音楽の様になっていますね。その中にサッリネンの楽風変化、十二音技法から調性回帰、を織り混ぜています。

北欧色を排除しつつサッリネンを味わえる楽しい一枚です。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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