メシアン 歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」のストーリーと音楽。カンブルラン/読響の本邦初演を前に…

オリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908/12/10 - 1992/4/27)の唯一のオペラで大作『アッシジの聖フランチェスコ (Saint François d'Assise, 1975-83年)』全3幕8景で4時間半かかります。
音楽だけでなく台本もメシアンになりますね。


11月のカンブルラン/読響のコンサートを前に予習です。
アッシジの聖フランチェスコ 読響


ストーリー

聖フランチェスコの人生を3幕(8場)にしています。1,2幕でフランチェスコの逸話(レプラ患者*の奇跡、鳥への説教)を、最後に自身の昇華へとたどり着く様になっています。

【第1幕】3場で1時間10分
①「La Croix, 十字架」
 perfect joyを求めるブラザー・レオーネとのシーンです。フランチェスコは十字架に答えがあるといいます。
②「Les Laudes, 賛歌」
 The leper(レプラ患者)*を愛する為の出会いと試練へ向けてのフランチェスコが祈ります。
③「Le Baiser au Lépreux, レプラ患者への接吻」
 第一幕の山場です。病と怒りのThe leperに愛を伝えるフランチェスコ、天使も現れて神の心を伝えます。フランチェスコが接吻で病を直し奇跡を起こします。(ちょっとグッときます)

【第2幕】も3場で2時間!!
④「L’Ange voyageur, 旅する天使」
 旅人に姿を隠した天使がヴェルナの森の修道院を訪れて"Predestination (救済の予定説)"を問います。ブラザー達は答えられず、最後に旅人が天使だったのではと思います。
⑤「L'Ange musicien, 音楽家たる天使」
 天使はフランチェスコの前にも現れ、viol(古楽器)を奏でて答えは音楽にあると諭します。
⑥「Le Prêche aux oiseaux, 鳥への説教」
 言わずと知れた緑のオーク林の鳥達のシーンです。鳥たちに説教を施すと、世界中の鳥たちが合唱で応えます。

【第3幕】は2場で1時間10分 (一部YouTubeで観れます)
⑦「Les Stigmates, 聖痕」
 聖フランチェスコの前に現れた巨大十字架、そして五つの光。それによりキリストと同じ五つの傷痕、聖なる証が残されます。
⑧「La Mort et la Nouvelle Vie, 死と新しい生命」
 死に瀕するフランチェスコの周りに天使やThe leper、小鳥たちが集まりる中フランチェスコが最後の神への言葉を口にします。死を迎え、合唱が復活を歌い上げてエンディングとなります。



Saint François d'Assise / Olivier Messiaen
  
左がメッツマッハーのDVD。右はケント・ナガノのCDです。
(DVDはmac標準DVDplayerではうまくいかずVLCで再生しました)

彼方の閃光」でも素晴らしい演奏を残しているメッツマッハーのDVDを観てインプレしておきましょう。CDはケント・ナガノ盤を所有しています。


音楽

ラスト作品『彼方の閃光』に近いメシアンの最終の姿です。特徴的な三つ、透明感のある美しい旋律、鳥の声にも使われれるパルス的な打音、短旋律の速い展開、いずれもホモフォニーやモノフォニーが多く 混沌ポリフォニーの比率は低いです。そこに声楽が抑揚を抑えて入ります。第3幕では合唱パートが厚くなり、ラストは壮大で展開が少し違います。
静的な中にディナーミクが表出するパートは宗教色を抑えめに後期メシアンらしいカラフルな色彩音が溢れて素晴らしいです。

前衛現代音楽家でも宗教曲を書くとその色合いが強くなる事が多いですがそれも弱く、初期の音列配置でもなく、安心してメシアンを楽しめますね。(第3幕合唱パートは若干宗教色が感じられますが)


歌詞と歌唱

神への言葉と祈りに近い宗教色の強さが目立ち、いわゆるオペラのストーリー展開とは異なります。歌い方も表情は薄く、表情の強弱 ディナーミクは演奏側がメインですね。(レプラ患者のThe leperだけは感情が強いですが)


舞台・演技

今回は音楽メインのインプレなので舞台演出等々については記述を控えますが、いずれもシンプルです。オケは舞台奥に位置取り、演技舞台は広くありません。演技も動きの強さは抑えられていますね。


オペラと言うよりも、煌めきと色彩感のある晩年のメシアンらしい素晴らしい音楽です。メシアンの傑作と呼ばれるにふさわしいのですが、いかんせん5時間近くかかります。CDで音楽だけを楽しむにはキツイですね。
やっぱり映像付きの方が字幕(英文)がついてストーリーがわかりやすく楽しめるのでDVD盤がオススメです。

メッツマッハーはディナーミクの切れ味を強くしながらカラフルでキラキラしたメシアンの素晴らしさを掘り深く表現していますね。
ケント・ナガノもディナーミクを生かしますが、煌びやかさよりシャープさです。鋭い切れ味で音楽が突き刺さります。個人的には色彩感のメッツマッハーに軍配です。
両者ともに録音がよく、ダイナミックレンジが広いので楽しめますね。


【後日記】行けなくなっちゃいました…残念 T_T



*レプラ患者とはハンセン氏病患者の事ですね。そのThe leperを黒と黄色の衣装にしている事に違和感を覚えます。今の時代の演出なら配慮があってしかるべきと思いますが、作曲当時の時代反映の結果かもしれません。読響は重い皮膚病としているようですね。




♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧

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フィリップ・グラス(Philip Glass) の The Complete Piano Etudes を 滑川真希 のピアノで聴く

前回に続きフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )のピアノ曲、今回はエチュードですね。エチュード(練習曲)というとピアノを得意とする作曲家がパートごとに技巧・技術を織り込んだテクニカルな小曲集をイメージしますよね。P.グラスのEtudesはどうでしょうか。

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コンプリートとある様に全20曲の内No.1-10を第1集、後に残り10曲を第2集として完成させています。第1集は自分自身の新しいソロ・ピアノ曲の提供と演奏技術の価値を高め広げる事、第2集はテクニカルとは異なりリズムとハーモニーの表現だそうです。
そして最後のEtude20は米映画監督ゴッドフリー・レッジョ(Godfrey Reggio)のドキュメント作品"Visitors" (2013年, 音楽はグラス)直後に書かれて似たコンセプトだそうです。

ピアノはドイツ在住の滑川真希(Maki Namekawa)さんで、国立カールスルーエ音楽大学のピアノ科講師を務めながら演奏活動をされています。現代音楽ではダルムシュタット国際現代音楽セミナーにも参加して、このブログでもお馴染みのジョルジュ・クルタークにも習ってもいますね。

これも以前P.グラス来日で全曲演奏の日本公演がありましたよね。

The Complete Piano Etudes / Philip Glass

Etudes for piano, Volume 1 (No.1-10, 1994–1995年), Etudes for piano, Volume 2 (No.11-20, 2012年)
 多少なりとエチュードらしさを感じたのはNo.1, 3, 6, 13, で後は2パターン。シンプルなミニマルの美しさでフラットに終始するか、Vol.2に多い映画音楽的な叙情性です。(譜読みが出来なければ 込められた物はわからないのかもしれませんが)
演奏技術向上を目指したというVol.1でさえも、個人的なエチュードのイメージとは正反対の感じです。Vol.2でもハイスピードの旋律が多用されていますが反復であり技巧とは言えない気がします。

曲として面白いと感じたのは少し色合いの異なるNo.10でした。室内楽にしても面白いポスト・ミニマルかも。えっ、ライヒに似ている?!w



いずれも単純反復のミニマル色が強く表情変化が薄いです。ミニマルと括ってしまうとまずいでしょうね。どこを突ついても似た様な調性感と甘さで出来ているフィリップ・グラスの"映画音楽風マニエリスム・ミニマル"です。

例えばショパンのエチュードの様に技巧的パートが色濃く、ピアニストの技巧表現聴き比べが楽しめるかと言えば…さてどうでしょうか。"グラス的美の表現"聴き比べなら良いかもしれませんが。

全曲で約二時間、やっぱり美的感性とセンスの薄いkokotonPAPAにはバッハと同じくらい難しい音楽ですねぇ。
隣でkokotonMAMAいわく「私はかけておいても大丈夫だよ」だそうです。







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フィリップ・グラス(Philip Glass) の Beauty and the Beast をピアノ曲で聴く

続けてフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )、今回と次回はピアノ曲をインプレしようと思います。

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『美女と野獣 (La Belle et la Bête) 』ですね。本作品は1994年のP.グラスの同名シネ・オペラ(ジャン・コクトーの1946年の映画に声楽パートと演奏を合わせた)をピアノ・ソロ版にした組曲作品で、商人の三女が野獣の屋敷に行くところからになる様です。
余談ですが、先日インプレした交響曲「ヒーローズ」も原作のデヴィッド・ボウイ版ではこの話が一曲目に使われていますね。(グラスは不採用ですが)

ピアニストはマイケル・リースマン(Michael Riesman)で、フィリップ・グラス・アンサンブル(Philip Glass Ensemble)の音楽監督でもあります。同アンサンブルで本シネ・オペラの日本公演をやった様な…

Beauty and the Beast / Philip Glass
01. Overture - 02. Beauty Goes to the Castle - 03. Dinner at the Castle - 04. A Walk in the Garden - 05. The Beast's Confidence - 06. Avenant's Passion - 07. The Mirror - 08. The Pavillon - 09. The Metamorphosis

 ピアノ曲としては大した事を感じませんが、明確に標題音楽ですね。ミニマル・ベースのピアノ版映画音楽でテクニカル・パートはありません。ディナーミクとアゴーギクを揺らさないのでミニマルと相まって単調な流れを感じますが、各シーンをイメージしながら聴くと良いのかもしれません。



絶対音楽のピアノ曲としたらつまらない掴み所のはっきりしないミニマルで、聴いていてやっぱり飽きるでしょうね。
P.グラスは標題音楽としてストーリーと合わせて楽しむのが良いと思いますが、それでもフラットな感じが…
なるほど、それこそがフィリップ・グラスのオリジナリティ!!という事ですね。





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フィリップ・グラス(Philip Glass) の 交響曲第3番を聴く

前回に続きフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )の管弦楽曲を何とか頑張ってもう一枚聴きましょうw 前回は1番と4番を聴いたので、その間の3番ですね。その楽曲の構成等々興味は薄いのでカットです。

指揮は前回同様ミニマルそしてP.グラスを得意とするデニス・ラッセル・デイヴィス(Dennis Russell Davies)です。オケは首席指揮者を務めた二つ、シュトゥットガルト室内管弦楽団(Stuttgart Chamber Orchestra) と ウィーン放送交響楽団*(Vienna Radio SO) ですね。

Symphony No.3 / Philip Glass

Symphony No.3 for string orchestra (1995年)
19人の弦楽合奏による四楽章構成です。細かいことは抜きにすると映画音楽風、ベースはミニマルでロマン派的な管弦楽曲です。多少の波風はありますが、弦楽の心地よさが終始し平和すぎですねw

Interlude No.1 from the CIVIL warS (1984年)
美しく穏やかな管弦楽曲です。

Mechanical Ballet from the voyage* (1992年)
個人的には映画音楽風に感じるのがこのパターンです。ミニマルベースで表情変化の流れの良さがあるのですが、それ以上でもそれ以下でもありません。BGMとして流すには五月蝿い感じでしょうか。

Interlude No.2 from the CIVIL warS (1984年)
No.1に同じく。

The light* (1987年)
上記楽曲のいずれかに似ていますw



いずれもひたすら美しく そのままという流れでその手の管弦楽曲を好む方向けでしょう。一方それを退屈と感じる方には音楽理論がどうであれ興味の薄い全て同じ様な楽曲です。まぁそれがP.グラスなのですが。

個人的には後者であり、これならば後期ロマン派作品の方が遥かに楽しめるかも。^^;
P.グラスを固めてインプレしようと決めたのですが前回今回で腹いっぱい、でも頑張って次はピアノ曲をw

正直な話をしますと、昔はこの辺りの曲が素晴らしいと思った時代があったのです。年を経ると共に嗜好性は大きく変わるものですね。
感性がどんどんと鈍り、シンプルな穏やかさは退屈さに直結しますw




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グラインドボーン音楽祭2017 ブレット・ディーンのオペラ「ハムレット」の初演を NHKプレミアムシアターで観る

グラインドボーン音楽祭(Glyndebourne Festival Opera)委嘱作品になるブレット・ディーン(Brett Dean, 1961/10/23 - ) の全二幕の歌劇「ハムレット」ですね。もちろん世界初演です。

台本はカナダで活躍中のマシュー・ジョスリン(Matthew Jocelyn)、演出は映画Candyで知られるニール・アームフィールド(Neil Armfield)になります。ストリーはシェークスピアの原作に忠実ですから不安はありませんね。

GlyndebourneFestivalOpera2017-NHKpremiumTheater.jpg
(写真はオフィシャルサイトより)
[演出]
今風で特異性はありません。アヴァンギャルドさはなく、深淵的なダークな舞台といったところでしょうか。新作オペラですからこれが基準となる訳ですね。

[舞台・衣装]
舞台は大きな壁の入替を中心としてセットは最低限、衣装は現代というありげな設定です。第二幕ではライティングの暗さで影を強調して異常性をうまく強調していました。

[配役]
タイトルロールのクレイトンは声も演出上の設定でもボチボチでしょうか。太ったタイトルロールは舞台ではやっぱりイマイチかも。(CDなら声だけ勝負でOKですが)
なんといってもオフィーリア役のバーバラ・ハンニガン去年のエクサン・プロバンス音楽祭のタイトルロールでも大活躍でした、が演技ともに素晴らしかったですね。第二幕初めの狂気のシーンは真骨頂でした。(写真にはありませんが、またもやエロティック!) ハンニガンは普段から現代音楽を得意としていますから歌唱はバッチリですね。

[音楽]
現代音楽ベースの楽曲で複調多調的ですね。
まず感じたのは歌唱パートの難しそうなこと。調性の薄さで歌いづらそうです。そして有名な"To be or not to be"等は語りになります。

現代音楽ですが合唱・歌唱パートは極端な無調でもありませんしシュプレッヒゲザングほどの狂気の語りでもありません。とはいえ耳馴染みの良い旋律やアリアは皆無ですから、それなりの許容が必要かもしれませんね。歌詞は英語です。
楽曲にはピアノも含まれていて現代音楽感が生かされていますね。新作初演なので比較する演奏はありません。



全体としては現代音楽ですが前衛ではありませんから、今の時代のオペラですね。
ただ、第一幕と第二幕のギャップが大きいです。今ひとつ平凡な第一幕に比べて、脚本・演出ともに第二幕の方がおぞましさや狂気が舞台に感じられて良かったです。
第一幕に締まりがあったら、素晴らしいオペラになるでしょうね。

<出 演>
 ・ハムレット:アラン・クレイトン (Allan Clayton)
 ・ガートルード:サラ・コノリー (Sarah Connolly)
 ・オフィーリア:バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan)
 ・クローディアス:ロッド・ギルフリー (Rod Gilfry)
 ・父王の亡霊・墓掘人夫・他:ジョン・トムリンソン (John Tomlinson) 一人三役

<合 唱> グラインドボーン合唱団
<管弦楽> ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> ウラディーミル・ユロフスキ (Vladimir Jurowski)
<演 出> ニール・アームフィールド (Neil Armfield)


収録:2017年6月30日、7月6日 グラインドボーン音楽祭歌劇場(イギリス)

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2017年10月8日 イブラギモヴァとティベルギアン の ベートーベン「クロイツェル」at 三鷹市芸術文化センター 風のホール ★★

今日はバスで15分のご近所、kokotonMAMAと二人でコンサートです。晴天の10月、昼のコンサートはいいですね。

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アリーナ・イブラギモヴァ(Alina Ibragimova / vn)とセドリック・ティベルギアン(Cedric Tiberghien / pf)のDuoコンサートは2013年9月20日王子ホール以来です。その時も「クロイツェル」がメインでしたね。

正直言うとイブラギモヴァとティベルギアンのDuoには「クロイツェル」は合わないと思うのですが、時を経てどうなっているのか楽しみでした。もちろんその時も二人のクロイツェルCDを聴いて行きました。(←印象は今でも同じです)



普段は聴くことの稀な古典ばかり三曲。特にモーツァルトはオペラ以外は…^^;
(個人的な嗜好はリストやショパンといった19世紀生まれのロマン派以降になります。除くブラームス…笑)

モーツァルトヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調 K.379
 曲がフラットなので、演奏の冴えは分かりづらいですね。一楽章では柔らかさから適度なメリハリのvn。pfは硬めで、vnは鳴りが今ひとつに感じました。

シューベルト幻想曲 ハ長調 D934
 アンダンテ・モルトからアレグレットでは細く伸びの良い音色から小洒落た音色、そして切れ味の良さがありましたね。ラストのアレグロ・ヴィヴァーチェが良く、切れ味と鳴りの良いvnを聴かせてくれました。pfは全体的にやや角を感じましたね。

ベートーヴェン:『クロイツェル』ヴァイオリン・ソナタ第9番 イ長調 op.47
 まず感じたのは、この曲が二人の手の内に入っている事でした。演奏回数を重ねている事は明白で、二人の息はぴったり。ディナーミクの付け方からこの曲の魅惑的な旋律とその間の取り方まで隙がありません。ティベルギアンのpfも歯切れや情感も素晴らしく、vnとの駆け引きも楽しめました。CDはもちろん2013年のコンサートよりもユニットの完成度が明らかに高かったですね。
あとはもう好みの問題になるでしょうか。



東京のローカル・ホールでこれだけの演奏が楽しめた事に感謝しました。これ以上の二人のクロイツェルを望むならコンサートならではの感情の炸裂といった特別な世界になるでしょう。
ただ、今日一番はシューベルトの最終楽章だと思います。イブラギモヴァの音色の良さである繊細さが生きていました。クロイツェルは野太いvnが好みです。

個人的にはイブラギモヴァのDuoなら「Szymanowski:The Complete Music For Violin and Piano」とか好きですね。





PS:イブラギモヴァは丸くなりましたかねぇ、音じゃなくて顔とかw


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フィリップ・グラス(Philip Glass)の交響曲「ロウ」と「ヒーローズ」はオリジナルのデヴィッド・ボウイを超えられるか

米現代音楽を聴くシリーズwで続けていますが、ここでビッグネームのフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )をインプレしましょう。

このblogのフィリップ・グラス関連投稿記事

デヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバム「ロウ」と「ヒーローズ」をモチーフに作られた同名交響曲が二曲あります。その辺りをきっかけに何枚かインプレを残しておきたいと思います。(デヴィッド・ボウイのアルバムについては末尾の【追記 (続きを読む)】で触れておきますね)

ポイントは
ボウイの原曲と比べて
ヒーローズ・シンフォニー 聴き比べ (以下2CDで)

1枚目2003年リリース、デニス・ラッセル・デイヴィス(Dennis Russell Davies)が創設者で2002年まで音楽監督を務めたACOアメリカン・コンポーザーズ・オーケストラ(American Composers Orchestra)。Lowは1991–1996まで音楽監督を務めたブルックリン・フィルハーモニー管弦楽団(Brooklyn Philharmonic Orchestra)。

2枚目:指揮は同じD.R.デイヴィス、現在首席指揮者を務めるバーゼル交響楽団(Sinfonieorchester Basel)。上記の9年後、2012年録音。




Symphony No.1 "LOW" & Symphony No.4 "HEROES" / Philip Glass

ロウ・シンフォニー 交響曲第1番 (1993年)
 三楽章で各楽章でも旧来からの形式を尊重する様な展開が見受けられます。曲としてはアンビエントやミニマルが明確ですが、全体の流れに変化が乏しいのは否めません。

ボウイ原曲対応パターンは二つに感じます。
【パターンA】原曲をグラス流に展開
【パターンB】原曲の一部を生かして展開

第一楽章 サブテラニアンズ (Subterraneans)
 原曲自体が変化の少ないアンビエント系です。提示部?は曲調自体が保持されてベース音の重量感をなくして弦楽で美しさを乗せた感じです。ソナタ形式か複合三部形式の様な展開で、中盤はテンポアップして違う曲調となり最後はコーダから締める流れです。
第二楽章 サム・アー (Some Are)
 原曲はアンビエントなヴォーカル曲です。ここでは冒頭から一楽章からの流れを受けてミニマルで始まり、原曲パートを管楽器がなぞります。原曲の一部だけを生かして典型ミニマルと映画音楽的な心地さのロンド形式風展開になっています。
第三楽章 ワルシャワの幻想 (Warszawa)
 原曲は同じ様にアンビエントですが、そこにミニマルを第二主題(第一トリオ?)で加えて流れは第一楽章と似ています。



ヒーローズ・シンフォニー 交響曲第4番 (1997年)
 六楽章の構成感は絶対音楽というよりも標題音楽(映画音楽)のストーリーを感じます。
第一楽章はリズミカルで軽快さがあり導入部としての心地よさがあります。第二楽章はメランコリック、第三楽章で原曲を生かし映画音楽のスリルシーンの様にチェンジします。第四楽章は一転のどかなシーンを思わせるスケルツォ楽章、第五楽章はアダージョ風、ラスト第六楽章はグラスのミニマル管弦楽全開です。

原曲との比較は次の様になりますね。
第一楽章 ヒーローズ, Heroes
 原曲はグラムロック+テクノ系、パターンBでソフトに入ります
第二楽章 アブドゥルマジード, Abdulmajid
 原曲はロックリズムのテクノ+アンビエント、パターンA
第三楽章 疑惑, Sense of Doubt
 原曲はダークなアンビエント系、パターンA
第四楽章 沈黙の時代の子供たち, Sons of the Silent Age
 原曲はロック系ヴォーカル曲、パターンBもしくはAを極度にソフト化
第五楽章 ノイケルン, Neukoln
 原曲はアンビエント系、パターンA
第六楽章 V-2シュナイダー, V2 Schneider
 原曲はパンク&グラム系、パターンAに近いB






Symphony No.4 "HEROES" / Philip Glass

ヒーローズ・シンフォニー 交響曲第4番 (1997年)
 比べると全体としてディナーミクとアゴーギクを抑え、控えめで透明感のある流れになっています。くどさは薄まりクール、ポイントではメリハリも残されて見晴らしもいいですね。研ぎ澄まされた感じです。





ボウイの原曲と比べて
 比較しても仕方のない全く異なる音楽です。ボウイ&イーノ原曲は曲ごとに表情が異なり、音楽の幅も広く、ロックからエレクトロニカ、そして現代音楽につながる音楽性も覗いて楽しめます。
グラスは今の時代の、特にアメリカのオケが委嘱しそうな、クラシカル管弦楽曲です。ボウイの曲をモチーフにする必要性が話題性以外にどこにあったのか不思議です。

Heroes Symphony 聴き比べ
 ACOは濃厚で楽章展開が強い標題音楽の色合いです。9年後のバーゼル響の方が冷静で映画音楽の完成形に感じられますね。

フィリップ・グラスというとまず浮かぶのは映画音楽、耳なじみの良いサウンドにミニマルがチラ見えするというイメージ。現代音楽でもこのブログの前衛とは対極にあるマニエリスムですね
S.ライヒやT.ライリーと比べるとやっぱり退屈ハードルが高いですw


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スティーヴ・ライヒ(Steve Reich) の Six Pianos、テリー・ライリー(Terry Riley) の Keyboard Study #1 をアハトブリュッケン音楽祭メンバーで聴く

機能和声時代の曲を2CD紹介して一休みの後は、再び米現代音楽に戻りましょう。もう少しだけ米現代音楽を続けます。
独WASのニュー・レーベルFilmで米ミニマルの両巨匠のピアノ作品が発売されましたね。スティーヴ・ライヒ(Steve Reich, 1936/10/3 - )とテリー・ライリー(Terry Riley, 1935/6/24 - )については今更なので割愛です。
ライヒはこの年代の米ミニマリストとしては好きな一人です。

□ このブログのスティーヴ・ライヒの関連投記事

独レーベルから出たのには明瞭な理由がありますね。独アハトブリュッケン音楽祭(ACHT BRÜCKEN. MUSIK FÜR KÖLN, 2016年5月ケルン)でアンビエントやミニマル・テクノ、ポスト・クラシックの注目グループ&メンバーによるライヒの「Six Pianos」が好評を博した事でCD化されているそうです。
以下の注目メンバーです。

・ピアノデュオ "GrandBrothers, グランドブラザーズ"の二人、エロルとハウシュカ
・人力ミニマルの"Brandt Brauer Frick, ブラント・ブラウアー・フリック"の二人、ブラウアーとフリック
・テリー・ライリーに師事した"John Kameel Farah, ジョン・カミール・ファラー"
・アレンジャーの"Gregor Schwellenbach, グレゴール・シュウェレンバッハ"

Six Pianos Steve ReichKeyboard Study #1 Terry Riley

Six Pianos (1973年) by Steve Reich
メンバー全員が個別に録音したものをブラント・ブラウアー・フリックのヤン・ブラウアーがミキシングしています。
 困りましたねぇ、特別な演奏ではありませんから。ライヒのSix Pianosを演奏している、という以上のものはありません。先入観が入って音の揃いとか共鳴とかが低めに感じられて陶酔域に入り辛いかと思いましたが、それもありません。(微妙なテンポ違いによるピッチの調整等々大変なのでしょうねぇ。放っておいた方がライヒ流"フィエズ・シフト"かもw)
高速ミニマルの主旋律に乗る処々の旋律は弱め(標準的?)で、グランド・ピアノの六重奏としては音が軽く感じます。その方がトランス状態に近いテクノっぽさかもしれませんが。

Keyboard Study #1 by Terry Riley
この曲はマリンバやその他楽器でも演奏されますが、ここでは電子処理されたピアノ曲でpfはグレゴール・シュウェレンバッハ、ディレイ処理はルーカス・フォーゲル(Lukas Vogel)が担当しています。
 ディレイだけでなくループ処理もされていますよね。単純音階が絡み合って複雑な音色を奏でる楽しさがありますね。オリジナリティが感じられてソロ・コンサートでも受けるのではないかといった感じに仕上がっています。
こちらの方が面白いかもしれません。とはいえソロは限界があり20'は長く感じますが。



クラブシーンで活躍中のミニマル・ユニットによる新解釈を期待していたのですが、若干の風は感じましたが期待していたほどの新しさや、Classical-Clossoverな展開はありませんでした。

やっぱりS.ライヒの曲はS.ライヒでした。T.ライリーはディレイ処理が面白く、やたらと手が多い様な面白さは味わえましたね。もちろん曲としてはSix Pianosの方が好きです。






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ネマニャ・ラドゥロヴィチ の チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 / ロココの主題による変奏曲」を聴く

来日も含めてさほどの興味はなかったセルビア人ヴァイオリニストのラドゥロヴィチ(Nemanja Radulović)、見た目から派手で当たりの強そうなボウイングかなといったイメージだけでした。
チャイコのvnコンチェルトも特にこれといった演奏が脳裏にあるわけではありませんが、イメージと合わせて初めて聴くならこの辺りでどうでしょう。(メジャーデビューのパガニーニ*は避けましたw)
 *YouTubeで「24のカプリース」#24Quasi PrestoのLiveを観る限りではvnの鳴りも超絶技巧性もクセを感じるアゴーギクも、絶賛とはいかない感がありました

オケはサッシャ・ゲッツェル(Sascha Goetzel)指揮、音楽監督を務めるボルサン・イスタンブール・フィルハモニー管弦楽団(Borusan Istanbul PO)になります。

TCHAIKOVSKY Violin Concerto - Rococo Variations / Nemanja Radulović

ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35:チャイコフスキー
ラドゥロヴィチのvnは予想したよりも繊細な音色で驚きました。細く神経質な音色で、太く豪快に弾き倒す方向ではありませんね。第一楽章カデンツァではやや拍子抜けしたくらいです。第二楽章がまだ合う様な感じですが、クールさが強く情感は低めです。第三楽章でテクと力強さを見せますが、それでも強引さはありません。
この曲の好みからいくと豪快さも叙情も弱く今ひとつです。オケはよく知らないのですが、堂々とした正攻法で悪くありません。

ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33: チャイコフスキー
  (イヴァン・カッサールによるヴィオラ、弦楽アンサンブルとピアノのための編曲)
チェロ曲ですがヴィオラ編曲版をラドゥロヴィチがvaで弾きます。まぁこの曲は作曲出版時からチェリストのフィッツェンハーゲンが勝手な書き換えを行なって問題になっていますからね。
 むしろ興奮のないメロウなこの曲の方がvaの低めの音色とマッチしていいかもしれません。ラスト第7変奏を除き曲も演奏も退屈ですがw
ちなみに第7変奏が本CDのベストトラックですね。



ミキシングでvnを少し強めにしても良かったのでは…などと邪念してしまうほど、予想に反して繊細で冷徹な音色のネマニャ・ラドゥロヴィチです。もっとヴィジュアルに合わせた派手で強引さを想像・期待していましたが本CDではクールな技巧派に思えました。
実際には生で聴かなければわかりませんが、ここでは悪そうな気配を漂わせたお利口さんでしょうか。




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ライヴ・フロム・ブエノスアイレス / M.アルゲリッチ & D.バレンボイム を聴く

久しぶりにアルゲリッチを聴いてみました。例年楽しみにしていた「Live from Lugano」も毎年リリースされて楽しめましたが、マンネリ化は避けられず今年は購入を見合わせました。2016年のラスト公演でしたが。

バレンボイムもさほど興味があるとは言えませんが、この二人のライヴが2014年4月と8月に行われて話題になったのは知っていました。何を思ったか2015年7月の第三弾を購入していたので、封を切って気分転換に聴いてみようと思いました。
昔の様にアルゲリッチがかつて演奏した事がある曲か調べたり、聴き比べたりする事もありません。

今更紹介も不要なアルゼンチン生まれの巨頭二人のデュオ、母国の首都ブエノスアイレスでのライブですね。

Live from Buenos Aires / Martha Argerich & Daniel Barenboim

シューマンカノン形式による6つの小品 (作品56) ドビュッシー編
 シューマンらしい優しさと美しさ。ただただソフトに美しく…そういう曲ですから、それ以上でも以下でもありません。後半曲の切れ味のあるパートで魅せてくれますが、突出した素晴らしさという事でもない様な。

ドビュッシー白と黒で
 ドビュッシーの和声を生かし緩急生かしのカラフルな色合いを見せるところは流石ですね。アゴーギクとディナーミクを振るのも手の内です。ドビュッシーらしい美しさと、らしからぬ強鍵パートの組み合わせはまさにアルゲリッチ!!
ブラインドで聴いても強鍵パートは"アルゲリッチかな…"なんて言ってしまうかもしれません。

バルトーク2台のピアノと打楽器のためのソナタ (Sz.110)
 一番期待値の高かったバルトークですね。バルトークらしい陰鬱さにコントラストを付ける様なディナーミク。パーカッションも加えてリズムを自由に振るアゴーギク。スリルも迫力も情熱もあり素晴らしい演奏なのですが、何かもう一つ欲しい様な。(これ以上何が欲しい?!! って言われそうですね)
好みから行くと、暗く澱んだ陰鬱さも聴かせて欲しい曲です。



アルゲリッチといえばデュオでの丁々発止のやり取り、若手アンサンブルとの煽る様な攻撃性、等々パートナーを叱咤し演奏の完成度を高める印象がありますね。
でもここでも手慣れた見事さは味わえましたが、それ以上のワクワク感には出会えませんでした。もちろんアルゲリッチと知らなければ、絶対好印象に違いありません。

お馴染みの大好きなお店の料理をいただいた後、"やっぱりこの味だね" っていう感じです。それ以外のコメントは帰り道にありません。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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