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藤倉大 オペラ「アルマゲドンの夢」2020年11月18日 at 新国立劇場 under COVID-19


ボンクリで現代音楽を楽しませてくれる藤倉大さんの新作オペラです。そして新国立劇場は昨年の西村朗さんと芸術監督の大野和士さんの「紫苑物語」が素晴らしく、行かない理由が見つかりませんでした。大野さんは昨年 都響との素晴らしい「グレの歌」でも演出力を披露してくれましたね。


18nov2020Armageddon.jpg
"A Dream of Armageddon"


全9場, 1時間40分, インターミッションなし, 英語(日英字幕)上演。コロナ禍の東京、海外メンバーも揃って来日、オーディエンスは40%ほどでした。





音楽
藤倉さんの音楽ですから調性の薄さを生かした洗練ですね。前衛実験系とは距離を置く藤倉さんらしさで、楽曲が心象風景にとても合っている感じです。トリル・トレモロ反復変奏が多かった事、四拍子の行進曲があった事など意外性もありましたね。
やや調性色が強まって エレクトロニクスが無くなったのは少し残念だったかもしれません。(先進性を軸足にライヴエレクトロニクスを入れたら更に面白かった様な)

演奏も大野さん(東京フィル)は予想通りのメリハリ、間違いなくステージを盛り立てましたね。


演出
初演ですから、今の時代のオペラ演出で まず気になる原作からの読み替えや逸脱は当然ありませんね。

グロテスクや理解不能な前衛性は無く、時代設定は現代(20世紀中盤?)になるでしょうか。プロジェクション・マッピング(PM)や暗さを中心とした今の時代らしい設定で、モノトーンからカラフルまで色彩を生かしています。テーマとなる"現実と夢"も、通勤電車の具体風景とPMやミラーといった対比にしていましたね。

素晴らしかったのはラストの少年のアーメン。ややせわしない流れから、最後はミサの様に鎮めてこれでとどめを打った感じでした。神が語られても救済感がないのは不思議?!


舞台・衣装
舞台はシンプルながら巨大な衝立が設定されてスクリーンやミラーとなっていました。全面スクリーンも時折使われて大きなプロジェクションマッピングが印象的でしたね。ついついそちらに目が行ってしまうくらいに使われていましたが邪魔にはなっていませんでした。舞台の奥行き感が生かされた上手さもありましたね。

衣装は前述の近現代風、合唱団メンバーには全身真っ白やファンタジーな非現実的衣装が配されます。これも今の時代らしい設定でしょうか。


配役
【男性陣】テノールのP.タンジッツ(クーパー・ヒードン役)は声も良く出て演技も映えましたが、やや一本調子的な感じがしました。S.カリコ(ロスコー/イーヴシャム)は思いのほか出番が少なかったです。
望月さん(歌手/冷笑者)はなんといっても"柳の歌"での存在感でしたね。間違いなく一つのハイライトシーンでした。女装の歌手はピンときませんでしたがw

【女性陣】J.アゾーディ(ベラ・ロッジア役)はテノールのタンジッツのミラーの様な印象でした。加納さんのインスペクターが声量も素晴らしく聴かせてくれましたね。テノールとソプラノがやや変化に乏しい感じがしたので、日本人二人が頑張った印象でした。

新国立劇場合唱団も存在感を見せましたね。いきなりのアカペラに愕きましたし、多メンバーでサークル(兵士)の存在感もよかったです。



【後日記】当日(11/18)のダイジェストです



今の時代のオペラを舞台いっぱいに楽しめました。ディストピア時代への警鐘と言った本オペラの主題・主張、それを表現する音楽・舞台。ストーリーと表現力がフィットして、すぐに惹き込まれてしまいました。

少し残念なのは100分と言う短い中に内容が濃いので慌ただしく感じた事でしょうか。また、ディストピア的な恐ろしさをパロディっぽくしていたのは、最後に神を歌う深慮な文面があったから?!

全体としては大野さんカラーを感じましたね。


近年作で比べると、見栄えする舞台とストーリー性なら「紫苑物語」の方が素晴らしく、訴えかける心象なら細川俊夫さんの「松風」「Stilles Meer 海、静かな海」が心に沁みると思います。方向性が違うと言ってしまえば、それだけの事でしょうが…
コロナとは言えカーテンコールが、あまりにもあっさりと静まってしまったのは驚きでした。



【出 演】
 ・クーパー・ヒードン:ピーター・タンジッツ [Peter Tantsits]
 ・フォートナム・ロスコー/ジョンソン・イーヴシャム:セス・カリコ [Seth Carico]
 ・ベラ・ロッジア:ジェシカ・アゾーディ [Jessica Aszodi]
 ・インスペクター:加納悦子 [Etsuko Kano]
 ・歌手/冷笑者:望月哲也 [Tetsuya Mochizuki]

【台 本】ハリー・ロス [Harry Ross]
【作 曲】藤倉大 [Dai Fujikura]
【芸術監督/指揮】大野和士 [Kazushi Ono]
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 [Tokyo Philharmonic Orchestra]
【合 唱】新国立劇場合唱団
【演 出】リディア・シュタイアー [Lydia Steier]


2020年11月18日 新国立劇場

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





R.シュトラウス『ツァラトゥストラはかく語りき』2020リリース2CD(ウルバンスキ, ダウスゴー)と鉄板カラヤン聴き比べ


Also sprach Zarathustra Op. 30 [1896]
(Richard Strauss, 1864-1949)
リヒャルト・シュトラウスの交響詩ですと個人的にはストリー性が明確な"ドン・キホーテ", "英雄の生涯"の方が好きですね。"ティル"や"ドン・ファン"は短いですし、"死と変容"が本作品の位置づけと似ているかもしれません。最近では"ツァラトゥストラはこう語った"と訳すんですね。

今年(2020)リリースされた2CD、若手指揮者①ウルバンスキ(NDRエルプフィル, 2016 rec.)と、中堅の②ダウスゴー(シアトル響, 2019 rec.)、そして頭で鳴っているマスターピース③カラヤン(BPO, 1983 rec.)も入れて聴き比べしておきましょう。






クシシュトフ・ウルバンスキ
(Krzysztof Urbański)
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 (NDR Elbphilharmonie Orchester)


やや弱めの印象の"ツァラトゥストラ"です。力強さと優しさを対比させている感じですが、バランスは優しさになっていますね。

その優しさが弱々しく感じる事、処々で主題・動機が薄いのが気になります。




トーマス・ダウスゴー
(Thomas Dausgaard)
シアトル交響楽団 (Seattle Symphony)


濃厚な色合いの"ツァラツストゥラ"です。テンポは速め、音厚高く強音強調、と言った方向性を強く感じます。

ラストを繊細な流れにして落ち着かせたのは上手いな、って言う感じです。そんな静美とのコントラストが全体にあれば、もっと素晴らしい"ツァラツストゥラ"になったのではないでしょうか。




ヘルベルト・フォン・カラヤン
(Herbert von Karajan)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (Berliner Philharmoniker)


コントラストと見晴らしが素晴らしい"ツァラトゥストラ "です。緩急・静と烈・繊細さと華やかさ・心地良さと刺激、全てのバランスが揃えられています。

R.シュトラウスと言えばカラヤン、そう言う人も多いのではないでしょうか。私もその一人な訳ですがw




【全体インプレ】
少し弱々しいウルバンスキ、力感に拘るダウスゴー、見晴らしの利いたカラヤン、三者三様ですがやっぱりカラヤンが頭一つ抜きん出ている感じです。

新しい録音を楽しみにしつつ、名盤と言われるカラヤン/BPO(1983)がマスターピースと言う事になるのは仕方ないでしょうか。




パート別インプレ
1. 序奏
① かの「自然の動機」"ド・ソ・ド"はともかく、ティンパニーが弱めですが、続く長和音は大きく鳴らします。
② 「自然の動機」はいじりようがありませんw その後の長和音も同じですね。多少のメリハリ感程度がある感じでしょう。
③ 序奏はほとんど変化のさせ様がないのでコメントは付けよう無しですw あえて言うなら"タメ"の上手さを感じるかもしれません。

2. 後の世の人々について
①「あこがれの動機」は控えめ、ホルンのクレド動機も弱めに出て美しい弦楽はややスローに入ります。エモーショナルさを強めながらクレシェンドしていくのですが、優しさを強く感じます
② 「あこがれの動機」は鬱が強め、ホルンのクレド動機は落ち着いています。そこからの弦楽奏は明瞭な音を少し揺さぶりをかけながら進めています。音は厚めで濃厚さを感じます。
③ ファゴットの「あこがれの動機」は繊細、クレド動機は穏やかさが光ます。その流れに乗って弦楽奏が現れると、緩やかさから切れ味へと美しさを変化させて聴き応えある見事さになっています。

3. 大いなる憧れについて
①「あこがれの動機」と木管による「自然の動機」静で優しく絡みます。「マニフィカト」パッセージからの高揚感は弱めです。
②「あこがれの動機」は速めで明瞭に、木管による「自然の動機」が淡々と入り美しさと緊迫感を対比させます。力感が増してパッセージが出ると激しさの山場へ。
③「あこがれの動機」が美しくテンポ良く出て、木管の「自然の動機」がクールに絡み合います。徐々に上げてオルガンの「マニフィカト」パッセージからは高揚させて良い流れですね。

4. 喜びと情熱について
① 二つの動機を力感付けながら上げて、山場のトロンボーンのV字音階「嫌悪の動機」は表情が薄いですね。
② 新たな二つの動機は深刻な印象を強く鳴らし、激しさを増して行きます。山場でのトロンボーンの「嫌悪の動機」は朗々と鳴らされますね。
③ 表情豊かに切れ味よく動機を作り込んで進めて見晴らしがいいですね。クライマックス付近のトロンボーンが「嫌悪の動機」も力強いです。

5. 墓場の歌
① オーボエの「墓場の歌」弱く、上昇音階の「あこがれの動機」と下降音階の絡みは淡々としています。
② オーボエが奏でる「墓場の歌」は弦楽と絡んで濃い色合いです。「あこがれの動機」と下降音階の絡みは進むにつれて淡々と静まらせています。
③ オーボエの「墓場の歌」は繊細に現れ落ち着いた流れを作っています。中盤からの「あこがれの動機」は少し鬱を見せ下降音階の弦流れとコントラスト良く絡みます。

6. 学問について
①「暗鬱なフーガ」は弱々しい印象で、木管が加わると色合いが出ます。「舞踏の動機」でテンポを上げて軽妙な明るさに、「自然の動機」「嫌悪の動機」の木管パッセージが木管楽器は緩やかさで、最後はなんとか締めます。
②「暗鬱なフーガ」は静鬱なクールさで、木管が入ると力感を少し増します。「舞踏の動機」は少しテンポアップでの美しさにしていますね。tpが出るとパッセージの木管楽器を落ち着いて絡ませ、最後は力感を上げます。
③ コントラバスとチェロの「暗鬱なフーガ」を静暗スローに鎮め、木管が加わると少し光を感じます。幸福感ある「舞踏の動機」はvnの繊細な美しさと木管の明るさの対比が見事ですね。カデンツァ的流れを静に、最後は大きく盛り上げます。コントラストが見事なパートです。

7. 病より癒えゆくもの
① トロンボーン動機は揺さぶり気味に進んで、山場はテンポアップで怒涛に鳴らします。管楽器の「暗鬱なフーガ」は鬱ですがしっかりと鳴らして来ます。トランペットの信号音が出てテンポを上げると「嫌悪の動機」と表情強く絡みながら安定的な流れにして行きます。この楽章は切れ味とメリハリの良さを感じます。
② トロンボーン動機は速めで鋭く好戦的に上げて、山場は激しくキレキレです。ゼネラルパウゼを大きく取って「暗鬱なフーガ」は暗い影を強め、鋭いトランペットの信号音が「嫌悪の動機」と速く切れ味よく絡み、最後は明るい色合いで華やかにしています。派手なパートになりました。
③ トロンボーン動機は落ち着いて入ってテンポを上げつつ派手さを増します。ド派手なピークの後のゼネラルパウゼは短め。「暗鬱なフーガ」を陰鬱に進め、トランペットの信号音が砕けて登場すると「嫌悪の動機」と変則的に絡み合いながら、明るく楽しげに力強く変化させて行きます。

8. 舞踏の歌
① ソロ・ヴァイオリンによるウィーン舞踏風動機は繊細弱め、絡む木管もですが、そこから穏やかに優美さを増して行きます。ホルンの動機が優しく出ると澄んだ音色で動機群を奏で、華やかな音色を強くしながらラストの山場は大きく作ります。
② 明るい「自然の動機」から入り、ソロ・ヴァイオリンによるウィーン舞踏風動機は鋭く出て来ます。その流れが優美さになって濃くなると、ホルン動機からは主題群がシンプルに溶け合いながら濃厚さを増してラスト山場は派手に。
③ ソロ・ヴァイオリンのウィーン舞踏風動機はスロー&シャープ、静な流れから色合いを強めて大きな舞踏曲する上手くて安心感ある構成で見事です。中盤でホルンが出ると流れはシンプルになってから華やかさを増して山場を派手に鳴らします。

9. 夜のさすさい人の歌
① 深夜を告げる鐘が弱いですね。鎮まってロ長調で表情は安定、「あこがれの動機」と「舞踏の動機」は穏やかです。最後の高音長和音と低弦C音の対比は静的です。
② 山場が徐々に鎮まってロ長調が顔を出すと、「あこがれの動機」と「舞踏の動機」を緩やかに上手く落ち着かせています。ハープ上昇音階からはシンプルになって、ラストの高音長和音と低弦C音は繊細さを表現する良い流れです。
③ 深夜を告げる鐘はハッキリと打たれて、徐々に鎮まります。やっぱりこのパターンでないと… ロ長調に変わると流れは落ち着いて「あこがれの動機」と「舞踏の動機」が繊細さと穏やかを満たします。ハープが顔を出すと静を強めて、ラストは低弦C音が困惑の表情を見せて終わります。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





フェルッチョ・ブゾーニ(Ferruccio Busoni) の「ピアノ協奏曲, Piano Concerto」


フェルッチョ・ブゾーニ (Ferruccio Busoni, 1866-1924)
イタリア生まれの作曲家でピアニスト、ブゾーニの印象はイタリア/ドイツ, 後期ロマン派/新古典主義, ピアノ曲/トランスクリプション, と言った錯綜感がありますね。

ピアノに関してはリスト - アルカン - ブゾーニ - ソラブジと言ったヴィルトゥオーゾpf超絶技巧作曲家の系譜の一人になるでしょうか。



Piano Concerto in C major, Op. 39 (1904)
Garrick Ohlsson, pf
ブゾーニの唯一のピアノ協奏曲で、特徴的な作品です。協奏曲なのに70'で最終楽章に合唱が入ると言うのは当時としては異質作品でしょう。

合唱TEXTはアダム・エーレンスレーヤー(Adam Oehlenschläger, 1779-1850)の「アラジン」からでドイツ語になっていますが、曲構想は全くトレースされていません。

この曲はJ.オグドンやM.A.アムランと言った名だたるヴィルトゥオーゾが演奏レパートリーに入れていますが、ギャリック・オールソンも18歳でブゾーニ国際ピアノコンクール優勝と言う経歴の持ち主。バックはクリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団, 同男声合唱団です。







第一楽章 (Allegro dolce e solenne)
独ロマン派的なアレグロで、導入部は軽妙に入りつつ第一主題?で派手な動機をピアノで鳴らします。動機の変奏を経てカデンツァ風のパートでは繊細ながら指のよく転がる技巧曲になっています。全体的にpfは出番が多く和音と速いアルペジオで派手ですね。


第二楽章 (Vivacemente ma senza fretta)
スケルツォになるでしょうか。いきなり速い主題をpfが走らせます。すぐに異なる動機のpfが出現しますが、これも速いです。オケも激しい音で進んで、テンポの緩い動機で展開部?になると変奏しながら曲調を変化させます。pfは地味ながら技巧性が高そうです。後半はやや半端な印象を受けますが。


第三楽章 (Andante sostenuto pensoso)
この楽章が一番長く約23'あります。強いボウイングを見せる弦の暗い主題から木管が出ると落ち着いて来ます。pfがソロでアレグロらしく技巧性を抑えて入って来ます。次に現れるpfソロ(カデンツァではない?)では音厚を高めて、技巧性も見せる様になり山場を大きく響かせます。テンポはアンダンテですが、強音パートが多くうるさいですw


第四楽章 (Vivace in un tempo)
軽妙な速いテンポの主題にオケとpfが対位的に絡んで進みます。地味ですがpfの技巧性は高そうですね。すぐに強音パートとなってpfは激しい鳴りとなり激しい行進曲から騎行となって突き進みます。怒涛の流れで聴き疲れ間違いなしでしょう。


第五楽章 (Largamente)
静音パートから入りますが細かいアルペジオのpfが鬱陶しいです。vnが哀愁ある動機を奏でるとpfは退いて穏やかな流れとなり、男声合唱団が落ち着いた様相を呈します。テンションが上がるとpfが入って音圧も上がり、例によってクドくなりますね。それでもこの楽章が一番完成度が高いです。



やたらと強音パートを設定して、pfは終始技巧性の高いパートが並ぶ感じです。曲調は独ロマン派から新古典主義です。

各楽章で旧来的なテンポ設定がありますが、中身は類似的で変化の薄さが気になりますね。pfの技巧も同じです。どの楽章も強音主体で少しうるさいかもw

怒涛のパワープレイが好きな貴方にオススメです!!



 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2001年のM.A.アムラン(pf)です
  負けず劣らず大音響ですが、表情があります。pfの音の粒立ちもこちらが上でしょう



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジャチント・シェルシ(Giacinto Scelsi) のピアノ曲「suite 8 & 11 per pianoforte」


ジャチント・シェルシ (Giacinto Scelsi, 1905-1988)
実はエクスペリメンタリズムからするとシェルシは微妙な年代です。前衛三羽ガラス(ブーレーズ, シュトックハウゼン, ノーノ)は1920年代生まれ、新ウィーン楽派の三人は1970-80年代生まれで、十二音技法が1920年代に登場します。

1905年生まれのシェルシは1930年代中盤に十二音技法を身に付け、即興性や微分音といった方向へ向かうわけですが、1970年代にグリゼーとミュライユがシェルシの倍音共鳴の影響を受けて作ったスペクトル楽派が今の時代の前衛の一つの流れを創造したわけですね。

シェルシの作品は共同製作者ヴィエーリ・トサッティ(Vieri Tosatti)の存在があるわけですが、今回の二曲もピアノ曲という事と年代から行ってトサッティとの共同作品になるでしょう。


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧



suite 8 & 11 per pianoforte Sabine Liebner, pf
ピアノ・ソロ2曲です。"suite n. 8"にはサブタイトルに"bot-ba"とありますが、チベットの事だそうです。もっとも音楽的には関係なく、東洋哲学への信奉から来ているそうです。また"suite n. 11"は晩年になってシェルシによって全9パートが再構築されていて、今回はそのファイナルver.での初録音だそうです。

演奏の女性ピアニストザビーネ・リープナーは現代音楽を得意としていて、既に"suite n. 9"と"suite n. 10"をリリースしています。そちらもインプレしなければなりませんね。







1. suite n. 8 – bot-ba per pianoforte (1952)
6パート(I-VI)のピアノソロです。トリル・トレモロ風の流れから単音反復の(I)、微妙な残響音の面白さの(II)、仏印象派の様な(III)の前半、低音の音響空間的な(IV)、不協和音コードの(V)、神経質な和音からの展開(VI)。
とにかく色々な表情のピアノ曲を並べています。共通しているのは 強鍵でpfをズッシリ良く鳴らす事と残響でしょう。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  ピアノはMarianne Schroederです



2. suite n. 11 per pianoforte (1956)
9パート(I-IX)のピアノソロです。傾向はますます偏重化しています。短い曲の連なりですが、ドカーンと多声的に和音で鍵盤を叩いてpfをグワワ〜ンと鳴らす方向性が強くなっています。その分、残響音も響き渡る訳ですね。繊細に入る(II)や(IV)でも十分に響かせて鳴らしますし、(VIII)や(IX)はかなり暴れます旋律や音と言うよりも音塊と残響です。



この時点(1950年代)でpfの響きからの倍音の唸りを強く感じます。それがこの先の"一つの音を聴き込む"技法になったのでしょうか。音塊と残響倍音が気になるピアノ曲ですね。

ズッシリとしたpfの鳴りは印象的で、ウストヴォーリスカヤを思い浮かべる感じでもあります。個性的で興味深いアルバムです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"』 «ネット配信» キリル・ペトレンコ指揮/ベルリンフィル 2020年1月25日

COVID-19が猛威をみせ始めた本年(2020)1月、ベルリンフィル(BPO)/首席指揮者のマーラー6です。


キリル・ペトレンコ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

(Kirill Petrenko | Berliner Philharmoniker)
2019年に首席指揮者・芸術監督 就任後ペトレンコ/BPO 初のマーラーがこの第6番でした。ちなみに前任者のサイモン・ラトルはBPO初タクト(就任前)と退任時ラストがマーラー6でしたね。(次のペトレンコ/BPOのマーラーは、2021-5/15の第9番です)
BPOのwebサイト、"デジタル・コンサートホール"からの配信です。


▶️ BPO Digital Concert Hall (会員サイト)





«ネット配信»
マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"

Mahler6-PetrenkoBPO-25Jan2020.jpg

[Live at Berliner Philharmonie, 25 Jan. 2020]


第一楽章
第一主題は落ち着いて低重心、木管コラールを静に アルマの主題は華やかですが加飾を避けた流れです。展開部第一主題は切れ味を増して、第二主題からの変奏スローは牧歌的で神秘的ですが流れは標準仕様。再現部もまさに一楽章再現、コーダも葬送は程々に鎮めて第二主題変奏とのコントラストを明確にしています。

第二楽章
アンダンテでした。#1vnの構えでタクト前からわかりましたね。主要主題はスローで柔らかく優美、第一トリオのコーラングレの哀愁も程よく、中間部(第二トリオ)も緩やかに明るさを奏でます。ラストの第一トリオからの山場は哀しみを大きく鳴らしましたが、全体は抑えたスロー静美のアンダンテでしたね。

第三楽章
スケルツォ主題は揃いの良い音でやや速め歯切れ良く、トリオのobは優美にメヌエットします。教科書的流れから、木管動機もややスロー気味ですが自然に入って違和感はありません。最後の主部回帰は力を込めますが標準的です。

第四楽章
個性の強い序奏は鐘の音が不自然で変ですが、アレグロ・エネルジコからはキッチリと締まりある行進です。パッセージも落ち着いて主題と絡むと、第二主題は約束通りの軽妙さ。展開部第二主題後半を大きく奏でて、通常より大きいハンマーからの行進曲は切れ味です。見せ場は再現部に訪れましたね。第一主題が出ると気持ち良く鳴らして、騎行は速め力感の素晴らしさ!! "初めからこれなら良かったのにねェ" と言った感じです。


完成度がハイレベルな標準仕様のマーラー6です。流石は一体感あるBPO、大ブラボーにスタンディングオベーションでした。

個人的には 光る個性とか、LIVEならではの怒涛の6番が聴きたかったですね。それを感じた最終楽章以外はセッションの様でした。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ザルツブルク音楽祭2020 モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を NHKプレミアムシアターで観る


"2020 Salzburger Festspiele"から、モーツァルトのオペラ「Così fan tutte」ですね。COVID-19の影響で、全二幕は同じですが休憩なしの2h20mの短縮版にしているそうです。単純なストーリーと配役なので大きな問題はなさそうな感じですが。

演出はモーツァルトを得意とするクリストフ・ロイなので楽しみです。とは言え、ミニマル主義的演出であまり冒険は無いですから前衛ステージにはならない予感です。



(公式Trailerです)


演出
超シンプルで費用を問題にする主催者側が喜びそうですw シンプルを通り越してリハ風景の様ですが、それが今風で違和感はありませんね。ゴテゴテとした時代考証的な方が引けるかもしれません、ロシア・オペラの様な…w
ストーリーには手をつけていません。今の時代、何をするかわかりませんが、それが魅力の一つでもあるのも事実ですね。


舞台・衣装
ミニマリスト演出ですから、白い壁一枚の様な超シンプルな舞台。そして現代服装で、モノトーナル主体のスーツとドレス。対比させる役には派手な色を使っています。シンプルな分、演技が映えるので実力が反映されそうです。


配役
【女性陣】フィオルディリージ役ドライシヒは表情で貞淑さを表現し、このオペラの聴かせ処の第二幕アリアの感情表現はちょっとグッと来ました。姉妹ドラベッラのクレバッサは感情的なキャラを上手く演じ、Mezも伸びやかでしたね。デスピーナのデゾンドレがもっと光ると、この舞台が映えたかもしれません。

【男性陣】グリエルモのシュエンは相変わらず見栄えがしましたが、フェランド役ヴォルコフのテノールはもう少し伸びやかさが聴きたかったです。ドン・アルフォンソのクレンツレは演技が冴えましたが、バス・バリトンらしさは薄かった感じですね。まぁそう言う役柄ですが。

突出した歌唱力はありませんでしたが、全員舞台映えしましたね。個人的には見栄えも重要だと思っています。多重唱が魅力に欠けたのは残念ですが。


音楽
女性指揮者のマルヴィッツに知見が無いのですが、ディナーミクを使って出し入れを感じる流れを感じました。微妙なアゴーギクもあってシンプルな舞台に合ったモーツァルトになった様な。ラストは派手に鳴らしましたね。


前半は淡々とした印象が残りましたが、後半は楽しめましたね。シンプルに拘った演出に一つはあるかもしれませんが、ゴチャゴチャした楽しさがもう少し有った方が好みです。

三大オペラ(フィガロの結婚, ドン・ジョヴァンニ, 魔笛)に比べるとどうしても地味に感じてしまうのは仕方がないのかもしれません。



<出 演>
 ・フィオルディリージ:エルザ・ドライシヒ [Elsa Dreisig]
 ・ドラベッラ:マリアンヌ・クレバッサ [Marianne Crebassa]
 ・グリエルモ:アンドレ・シュエン [Andrè Schuen]
 ・フェランド:ボグダン・ヴォルコフ [Bogdan Volkov]
 ・デスピーナ:レア・デゾンドレ [Lea Desandre]
 ・ドン・アルフォンソ:ヨハネス・マルティン・クレンツレ [Johannes Martin Kränzle]

<合 唱> ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> ヨアナ・マルヴィッツ [Joana Mallwitz]
<演 出> クリストフ・ロイ [Christof Loy]


収録:2020年7月28・30日、8月2日 ザルツブルク祝祭大劇場(オーストリア)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アンサンブル・アンテグラルのオーストリア前衛音楽家作品集「alpenglühen」と言う選択肢



alpenglühen, アルプスの夕映え
(Ensemble Intégrales, アンサンブル・アンテグラル)
オーストリアの現代音楽家5人の作品をピックアップした現代音楽を得意とするアンサンブル・アンテグラルのアルバムですね。アンサンブルがオーストリアのアイデンティティを得るために、同国の5人の音楽家に委嘱したそうです。

個人的には、このアルバムに興味を持ったのはベルンハルト・ガンダーの曲が入っているからですね。このブログでは一押しのエクスペリメンタリズム現代音楽家の一人になります。

Ensemble Integrales以外のメンバーは、Henning Kaiser (tenor), Karlheinz Essl (computer)です。








ヴォルフラム・シュリーク
(Wolfram Schurig, 1967/12/31 - )
オーストリアの現代音楽家でチューリッヒでH.ラッヘンマンに習っています。ダルムシュタットに招聘された事もある様ですね。

■1. A.R.C.H.E., for Tenor Saxophone, Piano and Percussion (2000)
 ポリフォニーとホモフォニーが交錯する即興的な混沌です。ハードな流れとソフトな流れが入れ替わり立ち替わり現れます。無調でしょうが旋律感は存在していて、フリージャズ的な印象もありますね。音にセリエル的な跳躍点描が残っていてエクスペリメンタリズムとして新しいのか古いのか、良くわからない立ち位置かもしれません。少なくともラッヘンマンの様な特殊奏法ベースではありませんね。



ヴォルフガング・ズッパン
(Wolfgang Suppan, 1933/8/5 - 2015/5/4)
英語風にウルフギャング・スパンなのか例によって日本語表記での読み方は良くわかりませんね。オーストリアの現代音楽家で音楽学者、グラーツやウィーンで学んでいます。IRCAMにもいてエレクトロアコースティックには明るいそうです。

■2. Weiten und Male, for Tenor Voice, Violin, Gamepad and Live Electronics (2007)
 4パート構成でライヴエレクトロニクスを使っています。特殊奏法による"音"とvoiceで、旋律はありません。voiceも音の一つか独語の独白・ささやき。全体としてはノイズ系という事になるでしょうか。声とギリギリ・ギギギー・ボヨヨ〜ンみたいな…w
ライヴエレクトロニクスはvoiceに使われているのはわかりますが、他に使われているかは不明です。これはちょっと面白いですね。



カールハインツ・エッスル
(Karlheinz Essl, 1960/8/15 - )
オーストリアの現代音楽家でパフォーマー、F.チェルハに師事してIRCAMでも学んでいます。ソフトやライヴエレクトロニクスを使った電子音楽、他にE-Guitarで前衛ロックにも精通しているそうです。

■3. More or Less, for Violin, Saxophone, Piano, Percussion and Computer (2007)
 2パート構成です。虫の羽音や蠢く様なノイズが空間を暗躍します。ここでも"音"であり旋律はありません。そこにpfが速いアルペジオを投げ掛けて来ます。エレクトロニクスは背景音的に空間に風の流れや炸裂音を与えています。ロックの様なサウンドが入るのもエレクトロニクスでしょう。無調とか調性とかという外側にあるノイズ系で新しさを感じますね。パート2はポリフォニーの即興的反復混沌も登場します。エレクトロニクスもそこに絡んでこれまた興味深いです。



クリストフ・ディーンツ
(Christof Dienz, 1968 - )
オーストリアの現代音楽家で、音楽院ではバスーンを習っていてバスーン奏者としても活躍していました。

■4. Amplify, for Alto Saxophone, Violin, Double Bass (2007)
 ホワイトノイズの様な音のドローンから入ります。多分アコースティックで出しているのでしょうね。しばしすると旋律が現れて来ます。単純反復とロングトーンです。旋律は副次元的な印象ですから、空間音響系になるかと思いきや。エレクトロニクスのノイズや単純反復の洪水となってポスト・ミニマルの様相も呈します。それで終わりかと思うとジャズが出現し、ノイズになって行きます。超多様性エクスペリメンタリズムです!!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



ベルンハルト・ガンダー
(Bernhard Gander, 1969/11/29 - )
さてガンダーですね。タトゥーを纏って過激な容貌のオーストリア人現代音楽家で、このブログでは一押しの欧エクスペリメンタリズムの一人です。今更の紹介は割愛ですw

■5. king's message, for Tenor Voice, Tenor Saxophone, Violin, Double Bass and Piano (2007)
 無調前衛オラトリオです。(笑) 過激で荒っぽいアンサンブルは音塊となってテノールに襲いかかります。音は無調爆裂で即興的でも反復的でもあります。テノールも負けずにシュプレッヒゲザングで対応。時にホモフォニーの様に全て固めるのも意味不明?! 狂気を感じる爆裂, これぞガンダーです!!



1.を除けば全て個性的エクスペリメンタリズムで楽しめます。ノイズ系や変化の大きい多様、そしてお馴染みガンダーの爆裂です。

三人(2. 3. 4.)の他の作品を探して聴いてみたいと思います。



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