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ストラヴィンスキーの『春の祭典』四手ピアノ版 聴き比べ || バヴゼ&ギィ、ラベック姉妹、マルカンドレ・アムラン&アンスネス

ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882/6/17 - 1971/4/6)の『春の祭典, Le sacre du printemps, The rite of spring』前回はオケ版でインプレしましたが、今回は 4-hands piano版ですね。注目の顔ぶれ3CDの聴き比べです。

以前アシュケナージとガブリーロフのピアノでもインプレしていますね。


ジャン・エフラム・バヴゼ(Jean-Efflam Bavouzet)
フランソワ・フレデリック・ギィ(François-Frédéric Guy)
個人的に好きなピアニストの一人バヴゼですね。フランス人音楽家のピアノ曲ならバヴゼが一番です。相方もフランス人ピアニストのギィですね。


序奏は繊細さが光ります。繊細スマートの「春のきざし - 誘拐」でも強音は爆裂的ではなく切れ味です。「敵の部族の遊戯」の躍動感もいいですね。第二部の序奏、そこから続く繊細なタッチのパートもこのDuoの聴かせ処でしょう。一転「選ばれし生贄への賛美」のパワーも光りますね。「生贄の踊り」のリズムの組合せも切れ味を感じます。

興奮を排した繊細さがバヴゼらしいスマートな春祭ピアノ版ですね。あくまでも冷静沈着クールなスタイルです。

同時収録されているバルトーク:2つの映像、ドビュッシー:遊戯(2台ピアノ版バヴゼ編曲)も素晴らしく、おすすめ盤ですね。




ラベック姉妹 (Marielle et Katia Labèque)
フランス人カティアとマリエルの姉妹ピアノDuo、2016年のシェーンブルンでも楽しい演奏を披露してくれましたね。
アルバム「Invocations」からです。


序奏ではソフトで柔らかさを感じますね。不協和音も生きています。「春のきざし - 誘拐」では強音パートと弱音パートのコントラストが見事です。ディナーミクとアゴーギクの組合せがうまく、パワー主体に美しさが同居しますね。「春の輪舞」の影のある緩やかさも聴き処でしょう。「生贄の踊り」では厄介なリズムが見事に表現されます。でも印象はなんといってもパワープレイのピアノでしょうね。

カラフル迫力の春祭ピアノ版です。楽しさとパワーの組合せは得意のパターン。
見方を変えると大向こうを唸らせるショーマン的タイプかもしれませんが、それが彼女たちの個性ですよね。




マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)
レイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes)
6月に久々の来日を控えたM.A.アムラン、ノルウェーのアンスネスという強力布陣ですね。


序奏から硬質な響きで、音の粒立ちの良さが明瞭です。「春のきざし - 誘拐」でもこれ見よがしの表情を見せずに細かく速いアルペジオを聴かせます。この切れ味こそが まさにアムラン(主導)でしょう。「春の輪舞」の沈んだ気配も美しいです。全体として揺さぶる様なアゴーギクを振らずに流れるのも印象的で「大地の踊り」ではそこにパワーが発揮されます。

印象は硬質、とにかく個々の音の粒立ちが明瞭でキレキレ・シャープな春祭ピアノ版です。まさにヴィルトゥオーゾなDuoピアノ。
いつものアムランよりも弾けて(はじけて)いる?!




ホールでじっくり味わうバヴゼ&ギー、フェスティバル向き熱狂のラベック姉妹、ヴィルトゥオーゾに酔うアムラン&アンスネス。
それぞれ個性際立つ楽しい3枚ですね。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ストラヴィンスキーの『春の祭典』クルレンツィス、ロト、シャイーで聴き比べ

古楽器を使った演奏で高評価のロトとクルレンツィスのストラヴィンスキー(Igor Stravinsky, 1882/6/17 - 1971/4/6)『春の祭典 (Le sacre du printemps, The rite of spring)』ですが、発売元や評論家の先生方の思惑が渦巻いていそうなので買ってそのままでしたw 今回シャイー盤が出たので聴き比べをしてみました。


テオドール・クルレンツィス (Teodor Currentzis, 1972/2/24 - )
ギリシャ生まれでロシアの指揮者、ロトよりも三ヶ月若いクルレンツィスと自ら創設したムジカエテルナ(MusicAeterna)ですね。2019年2月来日が決まって大騒ぎしていますが、この曲以外でクルレンツィスを知らないのでなんとも…


「春のきざし - 誘拐」の切れ味、冒頭ゆるい「春の輪舞」のコントラストは素晴らしいですね。その後も突撃的なパートをストラヴィンスキーらしい動機を生かすような激しさで展開しています。激か静かの演奏です。個人的注目の「生贄の踊り」、しばしば現代音楽で三つの変拍子を動機としている事でアナリーゼ対象となりますね、はそのリズムを切れ味よく聴かせます。
バレエ音楽としたら濃すぎる感じがします。

強烈なメリハリの春祭ですね。コンサート受けは間違いなし的な展開です。特に古楽器がどうの といった印象は受けません。(駄耳だから?!)
弱音パートでの神秘的表情が薄い気がしてしまいます。





フランソワ=グザヴィエ・ロト (François-Xavier Roth, 1971/11/6 - )
2016年来日で都響との「ペトルーシュカ」「火の鳥」を観ましたが、素晴らしかったですね。→インプレです
そういう事からもレ・シエクル(Les Siècles)とのCDが際物ではないことは感じますね。今回の来日公演には行きませんが。
ちなみに1911年初版を使っています。


「春のきざし - 誘拐」ではメリハリよりも序奏からの流れを生かしています。静の中から表情展開は舞台を彷彿させてくれますね。湧き立つ激しさも突出ではなく、静音パートでも表情は豊かです。「生贄の踊り」ではそれぞれのリズムにディナーミクの差別化を配して激しさに陥らない客観視をしています。
コンサートで聴いた「火の鳥」の様なバレエ曲らしい完成度を感じます。

ストーリーを感じる表情のある春祭ですね。アゴーギクとディナーミクのバランスの良さが心地よい感じがします。





リッカルド・シャイー (Riccardo Chailly, 1953/2/20 - )
今や円熟の年代に入ったシャイーとルツェルン祝祭管(Lucerne Festival Orchestra)ですから期待は大きいですね。
2014年のゲヴァントハウスとの来日で聴いたマーラーの第7番は素晴らしかったですね → インプレです


序奏から色の濃い展開です。「春のきざし - 誘拐」への繋がりも同じですが、唐突的な大音響展開はありません。全体的に濃厚な演奏で静音と強音とに落差をあまり付けませんね。「生贄の踊り」でもリズムが突出することはありませんでした。
バレエの姿を想像するのは難しいかもしれませんが、本来の"大規模な管弦楽"らしさは一番かもしれません。

バレエ音楽というよりも管弦楽曲的春祭です。楽器の鳴りも朗々として微妙な表情よりも祝典(Celebration)的明瞭さですね。




ドンシャン的なクルレンツィス、情景浮かぶバレエ音楽のロト、管弦楽風のシャイー、それぞれの楽風で楽しめます。
個人的には 煮詰めたロトの完成度に一票でしょうか。


次回はM.A.アムランやバヴゼらの四手ピアノ版でインプレ(聴き比べ)します。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré) の The Music for Cello & Piano を聴く


ガブリエル・フォーレ (Gabriel Faure, 1845/5/12 - 1924/11/4 )
フォーレの印象といえば、優しく美しい楽曲でフランスらしい音楽でしょうか。古典でもロマン派でもないその微妙な後期の和声はフランス印象派の黎明音楽家と言われていますね。


The Music for Cello & Piano
1880年から1921年までのチェロ&ピアノ小曲集で、主に中期のフォーレらしい美しい旋律の曲が並んでいます。
・チェロ:アンドレアス・ブランテリド (Andreas Brantelid)
・ピアノ:ベングト・フォシュベリ (Bengt Forsberg)
'6.Morceau de lecture' のみもう一人のチェリスト:フィリップ・グラデン(Filip Graden)とのDuoになります。



1.Romance (1894) - 2.Papillon (1884) - 3.Sérénade (1908) - 4.Berceuse (1879?) - 5.Sonata for Cello and Piano No.1 (1917) - 6.Morceau de lecture (1897) - 7.Berceuse, form Dolly (1864/1893) - 8.Sicilienne (1893/98) - 9.Elégie (1880) - 10.Sonata for Cello and Piano No. 2 (1921) - 11.Andante (1894)

年代順になっていないのが残念ですが、初期から後期までのフォーレが楽しめます。
古典やロマンの香り漂う優しさと美しさの初期作品4.Berceuseや7.Berceuse, form Dolly、フォーレらしい和声の中期作 2.Papillonの洒脱なvcのトリルや3.Sérénade、8.Sicilienne、11.Andanteの旋律ですね。ちなみにSicilienneは名作「ペレアスとメリザンド」に転用されている有名な旋律です。

 試しにYouTubeで「Sicilienne」を観てみる?
  David Louwerseのチェロと François Daudetのピアノです。


素晴らしいのは半音階的で調性感の薄くなる後期作品。5.Sonata for Cello and Piano No.1の第二・三楽章、10.Sonata for Cello and Piano No. 2の第三楽章は、まさに仏印象派の音色でドビュッシーやラヴェルにつながる事が明白です。

ブランテリドのvcは暖色系で表情豊かな音色と演奏ですね。全体としてはもう少しクールに弾いてもらった方が好みかもしれません。ベストトラックは9.Elégieでしょう。


フォーレをただの美しいサロンミュージックと聴くのか、時代を反映させた和声を楽しむのかで違うかもしれません。個人的には後期作品の洗練に一票ですが。
もちろんリビングルームでゆったりとした時間を過ごすのには最高の音楽でしょう。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

R.シュトラウスの『町人貴族』聴き比べ:テンシュテット / ライナー / シュトラウス


リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864/6/11 - 1949/9/8)
今更のドイツ後期ロマン派最後の大物ですね。マーラーと時代を共にしてお互いに指揮者としても敏腕を振った二人、違うのはオペラと交響詩を得意とした事でしょうか。


町人貴族, Le bourgeois gentilhomme Op.60 (1917年)
モリエールの戯曲『町人貴族』のフーゴ・フォン・ホーフマンスタール改作時付随音楽から9曲にした組曲ですね。貴族になりたい金持ち町人ジョルダン、その娘リュシルが策略を巡らせて結婚をする喜劇です。
実はバロック調の曲構成でほぼ聴かないのですが、今回は明後日(2018-1/10)の大野和士/都響のコンサートを前に聴きなおしてみました。

1.Ouverture - 2.Minuet - 3.The Fencing Master - 4.Entry and Dance of the Tailors - 5.Lully's Minuet - 6.Courante - 7.Entry of Cléonte - 8.Intermezzo - 9.The Dinner
それぞれ1'から5'ほどの小曲(9.The Dinnerは10')なので、パート別の印象は不要かと思います。



クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)が音楽監督を務めた時代のロンドンフィル(LPO)との演奏です。
序曲の入りから優美です。通して洒落た古典っぽさを感じさせてくれる演奏で、テンシュテットの個人的な印象とは違って軽やかさが感じられます。とは言え「9.宴会」では交響詩の様な流れを切れ味のある演奏で聴かせてくれました。




フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)が鍛え上げた手兵シカゴ響(CSO)を振った演奏です。ライナーはシュトラウス本人との交流もあり、得意としていましたね。ここでは2曲(5,6)がカットされています。
序曲から切れ味のある演奏でテンポも速め全体が重心の低い流れです。もちろんメヌエットやバロック調の曲では優美さも見せますが陰影がありますね。1956年の録音とは思えないほど音もいいです。また曲構成から2曲が欠けても印象に影響ありませんね。華々しく表情豊かで流石はシュトラウスを得意とするライナーです。




リヒャルト・シュトラウス本人の指揮でも聴いておきましょう。オケは音楽総監督を務めたベルリン国立歌劇場附属オーケストラのシュターツカペレ・ベルリン(Staatskapelle Berlin)、1930年の録音です。
バロック感もそれほど強くなく、アゴーギクで流れを作っています。メヌエットでも優美さの中に交響詩の様な動機を感じさせてくれます。印象は一番シャープでシュトラウスの曲らしい表情です。(笑)
ただ古いspからのmonoですから、それ以上の素晴らしさを聴き取るのは難しいですね。


ライナー盤が、重心の低い流れでバロック的な印象を後期ロマン派的なものにしていいですね。あまりにバロック色が濃いのはシュトラウスさに欠ける気がします。
シュトラウス本人は、想像以上にシュトラウスらしさが感じられて(笑)録音の問題がなければ"これ"でしょう。
テンシュテットは軽すぎる感じです。

大野/都響がこのバロック・古典の調べをどう演奏してくれるか興味がありますね。独奏vnにも興味が湧きますし、「9.宴会」は一番の聴かせ処でしょう。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ハンヌ・リントゥ/都響の公演を前に、シベリウスのクレルヴォ交響曲を聴いておきましょう

ジャン・シベリウス(Jean Sibelius, 1865/12/8 - 1957/9/20)の『クレルヴォ交響曲 Op.7』、明後日のコンサートを前に予習ですねw

北欧叙事詩『カレワラ (全50章)』の第31−36章がクレルヴォですが、シベリウスはクレルヴォと妹の近親相姦にメインテーマを入れ替えてある様ですね。(妹の死のシーン・詩の改変他)


あらすじ = 全五楽章

《第一・二楽章:演奏のみ》カレワラ 31-34章
一家殺害されたカレルヴォの息子クレルヴォは幼くして一人残され、仇敵ウンタモへの復習を誓います。生き延びたクレルヴォは鍛冶屋に売られますが、父の形見のナイフで鍛冶屋の妻を殺します。逃げ出したクレルヴォは、森の中で父カレルヴォと母が生きていた事と妹が行方不明である事を知ります。

《第三楽章:ソプラノ・バリトン・合唱》35章
メインパートです。租税納めの帰り道、クレルヴォは若い娘を誘惑し一夜を共にしますが、それが妹と知り絶望します。(妹は自害しますが、シベリウスはカットしています)

《第四楽章:演奏のみ》36章
全ての責をウンタモと捉えたクレルヴォは怒りに燃えウンタモ一家復讐へ向かいます。(両親の死も、ウンタモの復讐もカットされています)

《第五楽章:合唱》36章
ウンタモ一家に復讐を果たし、森を歩くクレルヴォは妹への呵責の念から自害します。


パーヴォ・ベルグルンド / ボーンマス交響楽団
 Paavo Berglund / Bournemouth Symphony Orchestra の古い全集にしか所有がありません。

KULLERVO / Jean Sibelius

【第一楽章】導入部 Johdanto (Allegro moderato)
 後期ロマン派的な明確な音と、初期から見られる北欧的な風景感のある流れの中に主題がに現れます。展開部・再現部もその流れの組み合わせですね。再現部後半は激く、全休符からのコーダは静けさで閉じられます。(鍛冶屋の妻の殺害と脱出でしょうか)

【第二楽章】クレルヴォの青春 Kullervon nuoruus (Grave)
 緩やかで美しい緩徐楽章でロンド形式、トリオでは表情を変えます。主部の回帰で激しさと静けさの組合せとなり、両親と再会の衝撃かもしれません。

【第三楽章】クレルヴォとその妹 Kullervo ja hänen sisarensa (Allegro vivace)
 女性を求める心踊る五拍子リズムから入り、合唱がクレルヴォの動きを歌い続けます。その間にクレルヴォと女性(2人)の出会いでは短くやりとりが交わされます。三人目の娘(妹)が金銀に惹かれクレルヴォの欲望に捉えられるシーンから合唱はリズムとトーンを落とし管弦楽が流れます。その後、静かなオケをバックに身の上話が独唱されていきます。妹が身の上を語るのが終わると(本来はここで川に身を投げます)、クレルヴォは激しい調子で後悔の念を歌い上げます。

【第四楽章】戦いに向かうクレルヴォ Kullervon sotaanlähtö (Alla marcia)
 スケルツォですが途中(トリオor展開部?)では戦闘モードの旋律に変わります。コーダからフィニッシュは雄々しく締めます。

【第五楽章】クレルヴォの死 Kullervon kuolema (Andante)
 悲しみのこもる合唱が森の中を歩き妹の最後の場所へたどる道を歌います。自らの剣に死を問い、死を迎えるまでを激しく、管弦楽の後で合唱が大きく死を歌い終息します。

シベリウスらしい北欧風景感のある流れと後期ロマン派的な明確な音の展開がありますね。標題音楽ですから、話の流れをイメージして聴くと楽しさが増します。(途中の勝手な解釈は大目に見てください)
第三・五楽章は歌詞*があり、特に第三楽章は素晴らしいので、しっかり目を通しておくのは大切になりますね。


*コンサートで配られる月間都響No.338(10-11月号)の対訳はとても参考になりました
 (PDF版には入っていませんね)

コンサート当日一番不安で楽しみなのは『フィンランディア』がアンコールで準備されている事です。このコンサート受けする楽曲をアンコールでやるとメインが霞むのはいつもの事ですから…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ネマニャ・ラドゥロヴィチ の チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 / ロココの主題による変奏曲」を聴く

来日も含めてさほどの興味はなかったセルビア人ヴァイオリニストのラドゥロヴィチ(Nemanja Radulović)、見た目から派手で当たりの強そうなボウイングかなといったイメージだけでした。
チャイコのvnコンチェルトも特にこれといった演奏が脳裏にあるわけではありませんが、イメージと合わせて初めて聴くならこの辺りでどうでしょう。(メジャーデビューのパガニーニ*は避けましたw)
 *YouTubeで「24のカプリース」#24Quasi PrestoのLiveを観る限りではvnの鳴りも超絶技巧性もクセを感じるアゴーギクも、絶賛とはいかない感がありました

オケはサッシャ・ゲッツェル(Sascha Goetzel)指揮、音楽監督を務めるボルサン・イスタンブール・フィルハモニー管弦楽団(Borusan Istanbul PO)になります。

TCHAIKOVSKY Violin Concerto - Rococo Variations / Nemanja Radulović

ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35:チャイコフスキー
ラドゥロヴィチのvnは予想したよりも繊細な音色で驚きました。細く神経質な音色で、太く豪快に弾き倒す方向ではありませんね。第一楽章カデンツァではやや拍子抜けしたくらいです。第二楽章がまだ合う様な感じですが、クールさが強く情感は低めです。第三楽章でテクと力強さを見せますが、それでも強引さはありません。
この曲の好みからいくと豪快さも叙情も弱く今ひとつです。オケはよく知らないのですが、堂々とした正攻法で悪くありません。

ロココの主題による変奏曲 イ長調 作品33: チャイコフスキー
  (イヴァン・カッサールによるヴィオラ、弦楽アンサンブルとピアノのための編曲)
チェロ曲ですがヴィオラ編曲版をラドゥロヴィチがvaで弾きます。まぁこの曲は作曲出版時からチェリストのフィッツェンハーゲンが勝手な書き換えを行なって問題になっていますからね。
 むしろ興奮のないメロウなこの曲の方がvaの低めの音色とマッチしていいかもしれません。ラスト第7変奏を除き曲も演奏も退屈ですがw
ちなみに第7変奏が本CDのベストトラックですね。



ミキシングでvnを少し強めにしても良かったのでは…などと邪念してしまうほど、予想に反して繊細で冷徹な音色のネマニャ・ラドゥロヴィチです。もっとヴィジュアルに合わせた派手で強引さを想像・期待していましたが本CDではクールな技巧派に思えました。
実際には生で聴かなければわかりませんが、ここでは悪そうな気配を漂わせたお利口さんでしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ライヴ・フロム・ブエノスアイレス / M.アルゲリッチ & D.バレンボイム を聴く

久しぶりにアルゲリッチを聴いてみました。例年楽しみにしていた「Live from Lugano」も毎年リリースされて楽しめましたが、マンネリ化は避けられず今年は購入を見合わせました。2016年のラスト公演でしたが。

バレンボイムもさほど興味があるとは言えませんが、この二人のライヴが2014年4月と8月に行われて話題になったのは知っていました。何を思ったか2015年7月の第三弾を購入していたので、封を切って気分転換に聴いてみようと思いました。
昔の様にアルゲリッチがかつて演奏した事がある曲か調べたり、聴き比べたりする事もありません。

今更紹介も不要なアルゼンチン生まれの巨頭二人のデュオ、母国の首都ブエノスアイレスでのライブですね。

Live from Buenos Aires / Martha Argerich & Daniel Barenboim

シューマンカノン形式による6つの小品 (作品56) ドビュッシー編
 シューマンらしい優しさと美しさ。ただただソフトに美しく…そういう曲ですから、それ以上でも以下でもありません。後半曲の切れ味のあるパートで魅せてくれますが、突出した素晴らしさという事でもない様な。

ドビュッシー白と黒で
 ドビュッシーの和声を生かし緩急生かしのカラフルな色合いを見せるところは流石ですね。アゴーギクとディナーミクを振るのも手の内です。ドビュッシーらしい美しさと、らしからぬ強鍵パートの組み合わせはまさにアルゲリッチ!!
ブラインドで聴いても強鍵パートは"アルゲリッチかな…"なんて言ってしまうかもしれません。

バルトーク2台のピアノと打楽器のためのソナタ (Sz.110)
 一番期待値の高かったバルトークですね。バルトークらしい陰鬱さにコントラストを付ける様なディナーミク。パーカッションも加えてリズムを自由に振るアゴーギク。スリルも迫力も情熱もあり素晴らしい演奏なのですが、何かもう一つ欲しい様な。(これ以上何が欲しい?!! って言われそうですね)
好みから行くと、暗く澱んだ陰鬱さも聴かせて欲しい曲です。



アルゲリッチといえばデュオでの丁々発止のやり取り、若手アンサンブルとの煽る様な攻撃性、等々パートナーを叱咤し演奏の完成度を高める印象がありますね。
でもここでも手慣れた見事さは味わえましたが、それ以上のワクワク感には出会えませんでした。もちろんアルゲリッチと知らなければ、絶対好印象に違いありません。

お馴染みの大好きなお店の料理をいただいた後、"やっぱりこの味だね" っていう感じです。それ以外のコメントは帰り道にありません。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

R.シュトラウスの「英雄の生涯」を カラヤンBPOの3CD + シュトラウス本人指揮で聴き比べ

リヒャルト・シュトラウス(Richard Georg Strauss, 1864/6/11 - 1949/9/8) の代表作の一つで最後の交響詩『英雄の生涯, Ein Heldenleben (作品40)』ですね。

次週(2017年8月24日) ファビオ・ルイージ/読響のコンサートがあるので予習です。
➡︎[後日記] コンサートのインプレです

R.シュトラウスといえば、やっぱりカラヤン(Herbert von Karajan, 1908/4/5 - 1989/7/16)とベルリンフィル(BPO)。3CD出していますので聴き比べしましょう。そしてR.シュトラウス本人の指揮も残っていますので参考に。全て第2稿を採用しているのでラストは盛り上げです。(ルイージは第1稿を採用)

この曲は途切れ目がないのでポイントは以下ですね。
[1. 英雄] ➡︎ 木管楽器で [2. 英雄の敵] ➡︎ ヴァイオリン・ソロで [3. 英雄の伴侶] ➡︎ トランペットのファンファーレで [4. 英雄の戦場] ➡︎ 4.の英雄の凱旋の後が [5. 英雄の業績] ➡︎ 5.の最後一呼吸の"間"、その後全休止で [6. 英雄の隠遁と完成]



Karajan BPO / 1959
[DG]
「1.英雄」は見通しの良い演奏、vnのBPOコンマスのミシェル・シュヴァルベ(Michel Schwalbé)が感情移入と切れ味を見せる「3.英雄の伴侶」は、オケの英雄との会話が素晴らしいですね。「4.英雄の戦場」は抑え気味、「5.英雄の業績」ではR.シュトラウス自身の曲の引用をスケール大きく奏でます。「6.英雄の隠遁と完成」は叙情性が高い演奏です。
・・・・・
切れ味と表情豊かな流れがスマートな「英雄の生涯」で好きな演奏です。古い録音ですがリマスターで音質が良くなったのは嬉しいですね。
iTunesに入れてあるのはこの演奏ですから一番馴染みがあります。




Karajan BPO / 1974
[EMI]
「1.英雄」で音に華やかさが増しました。抑揚は抑え気味になりましたが重厚です。「2.英雄の敵」では木管のヒソヒソ話の様な音色がよりそれらしく、流れは陰影が強くなっています。「3.英雄の伴侶」のvnは同じくシュヴァルベですが控え目軽めで、オケの英雄もややフラットに感じます。(録音上の問題?) 「4.英雄の戦場」はアゴーギクを強くしてより切れ味と激しさを追求、その後の2パートも彫りの深さが増しました。
・・・・・
華やかで重厚に、「4.英雄の戦場」も激情的になってカラヤンらしい展開になりました。ですが「3.英雄の伴侶」のフラットさは残念、「6.英雄の隠遁と完成」が憂いから見晴らし良くなったのは迷う処ですね。



Karajan BPO / 1985
[DG]
「1.英雄」は より華やかで重厚に、「2.英雄の敵」では敵を密度高く、「3.英雄の伴侶」のヴァイオリンはBPOコンマスですがレオン・シュピーラー(Leon Spierer)になり、エモーショナルさを優先してオケ英雄とのバランスが良いですね。「4.英雄の戦場」「5.英雄の業績」も聴きごたえがあり、「6.英雄の隠遁と完成」では英雄の心を穏やかに描きます。
・・・・・
カラヤンの「英雄の生涯」完成形でしょうね。華やかさ・重厚・見通しの良さ、隙のない完成度にカラヤンらしさを感じるのは先入観?!



R.Strauss Bayerisches Staatsorchester / 1941
[DG]
R.シュトラウスが音楽監督(1894 - 1896)を務めたバイエルン国立管弦楽団との演奏です。このBox(Strauss Conducts Strauss, 7CDset)ですとドン・ファン、ドン・キホーテの他、ベートーベンの第5番や第7番・等で指揮者としても大活躍だったシュトラウスが楽しめますね。

「1.英雄」はモノラルながら出し入れの良い雄大さを感じ、「2.英雄の敵」は敵と英雄の不安さの対比を明確に感じます。「3.英雄の伴侶」のvnはプラチドゥス・モラーシェ(Placidus Morasch)で表現良くオケ英雄と絡みます。「4.英雄の戦場」「5.英雄の業績」録音音域の問題で迫力に欠けるの仕方ありませんが、キレのある演奏、一番気になった「6.英雄の隠遁と完成」の英雄の表現は "翳りはなく最後に静かな死を" の感じでした。
・・・・・
的確な表現と演奏のマッチングと流れが良く、聴き易い演奏です。もったいぶったタクトを剥がしてコアにした感じでしょう。なるほど、これが本人の「英雄の生涯」か!! といった感じです。
1941年録音としては音は良く、今から見れば当時の速さが再認識できる事ですね。(全てにおいて現在はスロー重厚化してのが事実ですね)






①オススメなら、最後のカラヤンBPO(1985年 DG)
②個人的好みは、最初のカラヤンBPO(1959年 DG)
一度は絶対聴いておきたい、シュトラウス本人指揮の演奏
という事になりますね。
^^

個人的には「3.英雄の伴侶」でのvnとオケの掛け合い、「6.英雄の隠遁と完成」の英雄の表現がポイントなのですが、さてルイージ/読響はどう楽しませてくれるでしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

NHKプレミアムシアターで観る ベルリン・フィル ワルトビューネ・コンサート2017 の素晴らしさ

前半のウィーン・フィル シェーンブルン夏の夜のコンサート2017 は今ひとつでしたが、ベルリン・フィル ワルトビューネ・コンサートは楽しめました。

メインにワーグナーの指輪のダイジェストを持ってきたのですが、何と言ってもアンコールの3曲が白眉でしたね。
トリスタンとイゾルデの「イゾルデの愛の死」はゾクゾクするものを感じました。ローエングリンの「第三幕前奏曲」も尻切れとんぼではありましたが、切れ味鋭い演奏でした。
そして最後のお約束、ワルトビューネはこれと決まってますね、パウル・リンケ作曲の「ベルリンの風」では指揮のG.ドゥダメルが、この日のコンマス ダニエル・シュタブラーヴァに変わってvnを弾きました。同じくBPOの第一コンマスを務める樫本大進ともこの笑顔。ボウイングもしっかりと合ってましたね。

WaldbühneBerlin2017

最高の盛り上がりで楽しめました。CD・映像化されたら絶対欲しいです。
そうそう、首席ヴィオラの清水直子さんもしっかり映ってましたね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

先月発売の アムラン と ブニアティシヴィリ で聴き比べるラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番

ここ近々で発売されたセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873/4/1 - 1943/3/28)のピアノ協奏曲第三番、注目の二枚を聴き比べてみようと思います。
言わずと知れた人気の超絶技巧ピアノ・コンチェルトですのでラフマニノフと曲の紹介は割愛ですね。
それにしてもジャケットもモノクロでタイトルが赤と似ていますよね。

HamelinBuniatishvili.jpg



かつてハマっていたアムランのCDは10枚以上インプレ済みだと思いますが、近年は来日がありませんね。
マルク=アンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)と書きますが、発音はマルカンドレ・アムラン。そんな事は音楽に関係無いと思いますが、こだわる人もいて日本語化は面倒です。

Medtner Piano Concerto No.2, Rachmaninov Piano Concerto No.3 / Marc-Andre Hamelin

ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
 全体スローです。第一楽章の例のカデンツァ(長くなるのでオリジナルとオッシアの件は割愛w)は切れ味の効いた、これ見よがしの無いシャープさです。アムランらしいですね。第二楽章のエピソードなどもピアノの歯切れの良さは素晴らしいですね。通してピアノパートは派手さを抑えたアムラン・パターン、オケも控えめで落ち着いたコンビネーションです。pfはたとえ強音パートでも興奮より雄大さ。ユロフスキ指揮/ロンドンフィルも寄り添うように必要以上の盛上げを回避しています。全てで音の粒立ちの良さはアムランらしい さりげない超絶テク、まさにクール!
コンサートで熱狂を誘う様なあざとい演奏とは一線を画した、アムランのコンチェルトですね。

□ メトネル・ピアノ協奏曲第2番
 カップリングはメトネル(Nikolai Karlovich Medtner, 1880/1/5 - 1951/11/13)です。と言ってもアムランとイリーナ・メジューエワくらいしか浮かびません。アムランのアルバムで初めて聴いたのが正直なところです。ラフマニノフの7歳上、印象はロシア的ロマン派ですね。
まさにそんな曲ですが、ここでのアムランはラフマニノフよりも饒舌です。表情を強く出す様なディナーミクと見合ったpfの力を見せてくれますね。特別面白い曲でも無いのですが、打鍵の切れ味の良いアムランのpfが最大の魅力です。



見た目の肉感的(失礼!)な様相とは違うエモーショナルさが好きなピアニスト、ブニアティシヴィリ(Khatia Buniatishvili)です。この二曲は不安感でした。大向こうを唸らせる演奏が今のブニアティシヴィリの個性に合ってとは思えない気がするからですね、個人的にですが。

Rachmaninoff Piano Concertos Nos 2&3 / Khatia Buniatishvili

ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番
 速めでアゴーギクを振ります。第一楽章のカデンツァは濃い感じがブニアティシヴィリらしく無い気がします。速めな分、pfは技巧を見せつけたくなる展開ですがそこはブニアティシヴィリ、明るいパートやスローなパートでの情感あるエモーショナルさを聴かせます。この曲の持つ美しさを最大限表すブニアティシヴィリの良さですね。ただ、オケ(P.ヤルヴィ/チェコフィル)はもったいぶった陰影を付け過ぎのきらいが感じられます。強音パートでのpfのブニアティシヴィリも今ひとつ、そこでのネガティブ感が強いですね。プロデューサー、グロスの責任?w

□ ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番
 カップリングされたのは第2番、ここでも同じ事が感じられます。確かにこの二曲は重厚壮大さでコンサートでは大受けとなるわけですが、ブニアティシヴィリの良さを生かすのが本当にその王道でP.ヤルヴィ/チェコフィルの様なセットなのかなぁ、って思います。ブニアティシヴィリの感性を生かした解釈で新しいラフマニノフのピアノ協奏曲を作っても良かったのでは。今更リヒテルも無いでしょうし、アルゲリッチから脱却してもいいと思います。その手はラン・ランあたりに任せて、今の時代の新しい演奏が聴きたいですね。

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クールなヴィルトゥオーゾ、アムラン。際立つ超絶技巧を軽々と難なく見せつけるスタイルはやっぱり素晴らしく、買って損なし!!です。メトネルの情熱ある演奏も良いですね。久しぶりのアムランを楽しめました。
 一方ブニアティシヴィリは彼女らしい情感の高さを生かすも、重厚な興奮を求めたくなるパートでその良さが生かせず。もし、そのパートを音楽監督やプロデューサーが新しいオリジナリティを考えていたらもっと違った世界があったかもしれません。良い悪いはわかりませんが、期待したブニアティシヴィリではありませんでした。



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・2017年12月9日
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