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マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 60CDを聴き比べてみました [#3 / CD:41-60]

テンシュテットの4CDを中心に20CDほど聴いてみました。これで60CDになりますね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています。(普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #3回 60CD
 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x2 ★☆], アバド[x4 ★☆], カラヤン[x2 (★)☆], ハイティンク[x2 ★], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2 ☆], プレートル[㊟], ワールト
 #2:20CD
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x2 ☆], P.ヤルヴィ[☆], N.ヤルヴィ[x2 ㊟], ジークハルト, セーゲルスタム, パッパーノ, ザンダー, ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット[☆], J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD 本投稿
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス, ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]


クラウス・テンシュテット, Klaus Tennstedt (4録音)

マーラー振りと言われた時に個人的にまず浮かぶ好きな一人ですね。亡くなって今年で20年とは本当に早いものです。1983年から1991年の8年間に四つの正規録音を残しています。手兵ロンドンフィル(LPO)と1983年のセッションとライヴ。その三年後1986年のニューヨーク・フィル客演ライヴと1991年LPOのライヴです。密度が高くライヴが多いので興味深いですね。



(#1)
London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1983-4/28,29 5/4,9


(右は1983年のセッションと1991年のライヴを含めたマーラー全集16CD)

まずはLPO首席指揮者に就任した年のセッションです。

第一楽章
インテンポ(多分)で勇壮な第一主題からパッセージで鎮めてアルマの主題を華やかに奏でます。揺さぶりを適度に入れて快感ですね。展開部もキレのある第一楽章変奏を中心にして静を奏でるスローな挿入部、その後もコントラストが強い分、好みは分かれるでしょう。スローパートはもっそり感があるかもしれません。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は一楽章第一主題の写し的に入ります。トリオでスローながら弾む様に感じるのはスケルツォらしさを生かしたのでしょうね。ここでも強いコントラストです。
第三楽章
主要主題は予想通りスロー、副主題もスローをキープしますが哀愁も弱めです。表情が薄いスローで間延びした感じがしますね。中間部もややギクシャクですが山場は壮大です。
第四楽章
スロー陰影の強い序奏から第一主題で切れ上がり、パッセージで盛り上げると第二主題は爽快に駆け抜けます。展開部以降はスローで山場を引っ張るのでくどさがあるかもしれません。行進曲や騎行のスローは厳しいですね。


強調されたスロー多用が好みの分岐点となるマーラー6ですね。アゴーギクとディナーミクで、スローの静と勇猛、速い勇壮が強いコントラストを描きますが重心はスロー。個人的には少々スローやり過ぎの様な…





(#2)
London Philharmonic Orchestra
[LPO] 1983-8/22


セッションの約四ヶ月後のライヴですから興味は尽きませんね。LPOレーベルから後年(2009年)に発表されました。

第一楽章
セッションと似た提示部ですが揺さぶりは減り、速めになってスッキリとしたキレを感じます。展開部の挿入部の静も適度なスローになり、その後再現部にかけてもスローを抑えて速さに重心を移しシャープになりましたね。なんとセッションよりも1'30"以上速くなっていました。
第二楽章
スケルツォは速めの主要主題からトリオは控えめスローで優美になりましたね。コントラストはありますが、速め軸足で軽快です。
第三楽章
主要主題・副主題ともスローですが、副主題では哀愁が感じられる様になりました。感情が現れて聴きやすくはなりましたが、この楽章だけは強いスロー傾向のアンダンテです。
第四楽章
少しスローを抑え刺激的序奏、テンポアップして第一主題を快速に飛ばし第二主題で軽快さに広がりを見せます。展開部以降もスローの気になる揺さぶりはありますが、速さに軸足を移しているので聴きやすなりましたね。セッションより2'も速くなっていますw


セッションより軽快シャープなマーラー6になりました。速さに軸足を移して、落ち着かないスロー揺さぶりはあっても印象は正反対かもしれません。演奏時間は大きく短縮され、色々と試していたのかもしれませんね。





(#3)
New York Philharmonic
[MEMORIES] 1986-10/23


上記3年後、LPO音楽監督時代(1983-1987)のNYP客演Liveですね。NYPはズービン・メータが首席指揮者時代です。

第一楽章
勇壮な第一主題の少し速めのテンポに違和感はありません。第二主題も広がりのある優美さを見せて王道的提示部です。'83年ライヴに似た速めパターンですが重心が低い感じです。
第二楽章
スケルツォ主要主題も速めの中に落ち着きを見せる良い流れになりました。スローに落とすトリオは美しさです。このコントラストは良いですね。テンポ変化も自然です。
第三楽章
主要主題にも美しさが感じられる様になり、'83ライヴに似たスローな流れですがブラッシュアップされたアンダンテですね。
第四楽章
序奏から提示部、再現部以降、流れは'83ライヴに似ていますがNYPの音の華やかさと まとまりが一枚上手でワクワク感があります。


速め主体にスローの対比が落ち着いた流れのマーラー6です。基本は'83ライヴと同じですがNYPとの顔合せが吉と出たのかもしれません。
MEMORIESなので録音は大幅値引きして聴く必要がありますがw





(#4)

London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1991-11/4,7


(右は1983年のセッションと1991年のライヴを含めたマーラー全集16CD)

NYPの5年後の手兵LPOとのライヴです。1987年に首席指揮者を退き癌との闘病中でしたね。(桂冠指揮者になっています)

第一楽章
提示部第一主題からの流れは揺さぶりも'83セッションに戻った感じですが、演奏も練れて心地よいですね。展開部からも'83セッションに戻ったスロー揺さぶりですが、締まりがあって"もっそり感"はありません。元々勇壮パートは良いので、これぞライヴならではの緊張感の賜物でしょうか。スローはより強調され演奏時間はセッションよりも1'くらい長くなっています。
第二楽章
スケルツォも流れは'83セッションに近いですが、切れ味の主要主題にスローで弾むトリオの対比に磨きがかかった様です。
第三楽章
一貫してスローを通したアンダンテですが、主要主題の美しさはこれが一番でしょう。副主題の哀しみや中間部の明るさとの対比も聴かせてくれ、スローが生きました。
第四楽章
スロー主体にコントラストの強い序奏、切れ味の第一主題からパッセージ、軽快な第二主題はいつもの通り。展開部以降でスローの揺さぶりを取り戻しますが、ここでは広がりを感じてスケールの大きな演奏になっています。突撃しない行進曲も同様です。コンサート会場なら素晴らしかったでしょうね。


スローを最大限生かして勇壮さと対比させた個性的マーラー6ですね。色々試して最後は'83セッション回帰のスローに戻っています。(演奏時間はさらに長くなっています)

テンシュテットが拘った姿がここに結実したのでしょう、今まで違和感の強かったスローが生きていますね。LPOの演奏も見事です。(最終楽章展開部の行進曲をスローに振ってくる演奏は超個性的で他に聴いた事がありません。テンシュテットは悲劇的の何を表現したかったのでしょう)




リッカルド・シャイー, Riccardo Chailly (2録音)

1953年生まれ65歳、脂の乗り切った人気指揮者の一人ですね。同じイタリア・ミラノ生まれの指揮者C.アバドの元 ミラノ・スカラ座管の副指揮者として研鑽し、コンセルトヘボウとゲヴァントハウスで名を挙げましたね。現在はルツェルン祝祭管とミラノ・スカラ座の音楽監督を務めています。もちろん私も好きな指揮者の一人ですね。
二回の録音で、アバドやバルビローリ同様に中間楽章のスケルツォとアンダンテを入替えていますね。



(#1)
Royal Concertgebouw Orchestra
[DECCA] 1989-10


1988-2004年まで常任指揮者を務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管と行ったマーラー・チクルスから第6番ですね。

第一楽章
とてもスローなリズムで始まる第一主題は重厚ですが、第二主題はテンポアップで軽快な優美さです。展開部・再現部もスローを基本としていて必要以上の重さも避け、イメージはスロー&シンプル軽量です。コーダは華やかですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は第一楽章の延長線上の気配で殊更な重厚さは避けて、テンポも急ぎません。トリオもスローでシンプルですね。
第三楽章
主要主題は優美、決して甘美に溺れませんね。副主題(第一トリオ)も流れに逆らわず哀愁にトーンを変えています。中間部(第二トリオ)向かい優しさが溢れますね。美しく心地よいアンダンテです。(山場のパーカッションにクセが強いですが)
第四楽章
序奏は揺さぶり少なくスローに落ち着いて、第一主題も慌てずに締めてかかります。経過句も興奮は抑え第二主題もクールな軽快さですね。展開部も興奮よりも華やかさを感じる流れですね。再現部もテンポアップはしながら軸足は優雅です。


スロー基調で洗練された華やかなマーラー6です。スローな流れをどう見るかで好みは変わって来るかもしれませんね。個人的には前半もう少しノーマルテンポだったら素晴らしかったかと。
上品な華やかさを感じるのコンセルトヘボウならではかもしれませんね。





(#2)
Gewandhausorchester Leipzig
[accentus DVD] 2012-9/6,7,9


2005-2016年(任期途中退任)までカペルマイスターを務めた時代、映像付き(DVD, BD)音源でシャイーのマーラーが楽しめます。その中の第6番ですね。

第一楽章
一転して軽快で切れ味の第一主題になりました。アルマの主題もテンポは速めで情感は控えめです。展開部も締まりの良い流れと挿入部のスローとコントラストをうまく作っています。再現部は切れ味増した流れで、コーダもビシッとした流れです。なんと演奏時間は3'も短くなっていますね。
第二楽章
アンダンテに入替えてきました。主要主題は柔らかく でも硬質です。副主題も流れは同じで哀愁の表情変化は薄め、中間部の光が差し込む様な流れはいいですね。流れはコンセルトヘボウに似ていますが、ドイツオケらしい生真面目さを感じます。
第三楽章
スケルツォになりますね。主要主題は切れ味よく速いです。トリオは若干落として優美さを見せます。印象はシャープで速め、ここでも1'20"ほど短くなっていますね。ややフラットさを感じるかもしれません。
第四楽章
序奏はここでも揺さぶりは少なめですがスローは排しています。第一主題も流れに乗って、経過句から第二主題の流れも似ていますが基調はシャープさ。展開部・再現部は少々暴れていいと思うのですが、常に冷静なる緊張感です。(ちなみにこの第四楽章の演奏時間表記はアプローズ付きなので、実際にはコンセルトヘボウより短いです)


速めで冷静な切れ味のマーラー6です。ドイツオケらしい締まりのある演奏ですね。欲を言えば何か+α、興奮や情熱、があれば好かったでしょうね。
華やかなコンセルトヘボウ、シャープなゲヴァントハウス、オケの違いが楽しめましたね。共通しているのクールさ、それがシャイーという事でしょうか。




マリス・ヤンソンス, Mariss Jansons (2録音)

ムラヴィンスキーの助手を務めていたラトビア人指揮者、今や人気ベテラン指揮者の一人ですね。もう一枚オスロ・フィルとの正規録音(2009)があるのですが見た事がありません。



(#1)
London Symphony Orchestra
[LSO Live] 2002-11


LSO(ロンドン交響楽団)を振ったマーラー6。LPO(ロンドン・フィル)では首席客演指揮者を務めていましたが録音は残していませんね。

第一楽章
軽快な第一主題、アルマの主題もさっぱりとこなしています。展開部も勇壮さは弱めで平和的パート重視ですね。
第二楽章
アンダンテです。主要主題、副主題(第一トリオ)共に沈んだ気配でだるい感じが強いです。中間部も印象に残りません。
第三楽章
主要主題はさっぱりと流し、トリオも何気なくテンポダウンしてきます。気持ちが入っている感じが伝わりませんね。
第四楽章
序奏は少しモヤモヤ、それでも第一主題は何とか勇壮さを見せますが流れは今ひとつシャキッとしません。展開部以降もそんなバランスで、時折元気さいっぱいですが時すでに遅し。


淡白あっさりのマーラー6です。何か元気もなく魂の抜けた様な…
ハンマーの音色もこもって、録音も一因?





(#2)
Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2005-8/22,9/7,8


2004-2015年首席指揮者を務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を振ったマーラー6です。オリジナルレーベル「RCO Live」はヤンソンスが着任した年から始まりました。

第一楽章
第一主題は抑揚がありメリハリが付きました。アルマの主題でも情感を感じさせる様になっていますね。その後も流れはLSOと同じだと思いますが明確な表情付けになりました。
第二楽章
アンダンテです。LSOの沈没気配から一般的な情感になって中間部も山場も明瞭です。基本的に抑え気味なのは変わりません。
第三楽章
切れ味が良くなった主要主題、トリオでもトーン変化を効かせていますね。
第四楽章
序奏の陰影付けは弱めですが、提示部は第一主題とパッセージを心地良く第二主題の穏やかさに繋ぎます。展開部・再現部では広がりの良い響きを奏でますね。


程よい抑揚で表情の伝わる、安心して聴けるマーラー6です。クセを感じないのはアゴーギクよりもディナーミク主体での色付けだからでしょう。(ベースはLSOと同じで色付けだと思います)
演奏も録音もこちらが上ですが、うまくまとまり過ぎですかね。それがヤンソンス/RCO?!




マイケル・ティルソン・トーマス, Michael Tilson Thomas

San Francisco Symphony
[SFS] 2001-9/12-15


MTTが1995年から長く音楽監督を務めるサンフランシスコ交響楽団とのお馴染み自主制作盤マーラー6ですね。過去の来日でも良いマーラーを聴かせてくれました。

第一楽章
第一主題から第二主題は感情移入を抑えテンポをうまく効かせたクールさ、展開部も適度な抑揚でパッセージの表現は心地良いですね。
第二楽章
スケルツォです。ここでも適度な揺さぶりで主要主題とトリオを組合わせています。興奮や優美よりもクール。特にトリオでのテンポの変化はうまいですね。この辺りがMTTでしょう。
第三楽章
主要主題は全体の流れに合って美しさ、副主題はスローに哀愁を醸して中間部は明るさを見せてほっとさせてくれます。スロー基本に緩徐らしさを全面に打出していますね。
第四楽章
序奏は基本的スローで抑えています。提示部はコントロールの効いた第一主題からパッセージ、第二主題と繋ぎます。展開部もうまく抑揚を付けて心地良い広がりを感じます。再現部も普通は目立たない第一主題回帰前のスローがいいですね。


興奮や切れ味とは一味違う落ち着いたクールなマーラー6です。ディナーミクは抑えて落ち着いたアゴーギクの味付けが絶妙です。アンダンテが緩徐抑えめなら絶対ですね。
私はゲイではありませんがw好みのMTTです。




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR KLASSIK] 2014-3/20-22


第9・10番では素晴らしいCDを残したハーディングですが、何回も行っているコンサートでは未だに当たった事がなく相性の良くないマエストロ代表です。(笑)
バイエルン放送交響楽団(首席指揮者はヤンソンス)を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題をやや速めに、モットーからアルマの主題は優美、コントラストをうまく付けています。展開部も速め基調で緩急よく見晴らしの良い流れですが、全体的には個性に欠けるのが残念な気がします。
第二楽章
アンダンテを持って来ましたね。主要主題から第一トリオはテンポにもクセのない優雅さで、中間部(第二トリオ)も同じ流れの延長上にあり、大きな流れです。
第三楽章
ここでもクセのない主要主題にトリオで重心の低い腰の座ったスケルツォです。
第四楽章
個性的な序奏も捻りよりどっかり重厚さ。提示部はややスローの堂々たる第一主題から経過句、自然なつながりの第二主題です。この曲のピーク展開部は出し入れの明確な大きな流れを見せてくれます。


重心の低い独オケ教科書的なマーラー6です。悪くないのですが何かワクワクするオリジナリティで楽しませて欲しい気がします。


実はFM放送録音に同年(2014年)の12/5にベルリンフィルを振ったマーラー6のLiveがあります。個性に乏しい教科書から王道へ。重心の低さを上回る地響きの様な重圧感と切れ味を示し、アンダンテでは哀愁を引き出す、表情の豊かさと強力なオケの一体感です。我儘軍団の好き嫌いは別にしてBPOサウンドでしょう。ハーディングも指揮していて楽しかったのではw
ふとカラヤン/BPOのシャンゼリゼ6番(非正規盤)を思い浮かべました。




朝比奈 隆, Takashi Asashina (2録音)

朝比奈さんといえばブルックナーでしょうが、創設者であり54年間手兵であった大阪フィルハーモニー交響楽団と2枚のLive録音を残していますね。いずれも大フィルレーベルから出ています。



(#1)

Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1979-9/7


大フィル東京定期演奏会、71歳の時のライヴですね。今ほどマーラーが演奏されなかった1970年代のLiveです。

第一楽章
第一主題は速めで落ち着きに欠けるきらいがあります。モットーは強音で切替てあっさりと、アルマの主題は速めながら優美です。展開部も基本は速く、ディナーミクともに挿入部で落とされるくらいです。とにかく速いです!
(実は演奏時間表記25'32"は大間違いで、実際は20'56"ほど。これは提示部再現有りでは世界最速のN.ヤルヴィに迫りますね。Kaplan Foundation表記も間違っています。)
第二楽章
スケルツォです。主要主題は標準的でくせがありません。トリオで穏やかさを見せて、後半はこのコントラストが明瞭になりますね。
第三楽章
アンダンテですが、主要主題は抑揚を抑えて副主題のobも流れは感情をあまり見せません。静かに流れますが演奏に今ひとつ落ち着きがありません。後半はここでも盛り上げてきます。(気になるのはテンポはそれほど速くないのに演奏時間が12'53"少しと短いです。ここでも表記12'08"は間違いですね)
第四楽章
序奏は出し入れは強めですが、もやっとした感じです。第一主題はリズムよく力感を見せ駆け抜け、第二主題で晴れ晴れとした表情に変えて良い気配です。残念なのはオケの技量が少し… ところがこの曲のメインの展開部になると荒れた中に情熱が溢れて炸裂します。見事に気持ちは伝わりました。


突進する第一楽章の速さと最終楽章の情熱という異色のマーラー6です。オケの力量も十分ではありませんし これを名盤とする事もないでしょうが、最終楽章は指揮者とオケが一体となった気持ちが伝わりグッと来ます。





(#2)
Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1992-2/18


その13年後、大阪定期公演での演奏で84歳でのタクトです。

第一楽章
第一主題はバランスが向上しているのがわかります。モットーからアルマの主題でも落ち着いていますね。処々速いですがテンポもより一般化してその分特徴が薄まっている気もします。全体の演奏レベルが格段に上がってるのはわかります。
第二楽章
主要主題は速めで切れ味があり、トリオでは適度に穏やかになります。全体的には速いスケルツォになっていますね。
第三楽章
主要主題は美しさを増して副主題も哀愁を奏でます。演奏レベルも安定し、美しいアンダンテですが没個性といえなくもありません。中間部の揃いは今ひとつかも。
第四楽章
序奏は適度にコントラスト付けて第一主題はテンポアップ、第二主題でスッキリ感を出していますが提示部としてはキレがあまり良くありませんね。展開部もスローのアゴーギクがもっそり感を作り、パワーパートでも演奏の一体感にやや欠けて見晴らしがあまり良くありません。この楽章は少々残念です。


欠点も大きく減った代わりに'79年の様な個性・情熱も薄まったマーラー6ですね。演奏レベルの向上は明白ですが凡百に埋もれそうで、心に残るのは'79年盤になるでしょうか。
(録音に一部ノイズが入りますが、未発表音源なのでご愛嬌w)




エフゲニー・スヴェトラーノフ, Evgeny Svetlanov (2録音)

ロシア人作曲家の交響曲を得意としていましたね。英名記述はYevgeny表記もあります。またこの2録音の他にUSSR SOと1989年の録音も残しています。



(#1)

Russian State Symphony Orchestra
[Russian Season] 1990


ロシア国立交響楽団の音楽監督(1965 - 2000)を務めていた時代のマーラー6ですね。

第一楽章
第一主題は抑揚を付けたスロー、モットーの後の静音は大きく落としアルマの主題は華やか、スヴェトラーノフらしい揺さぶりです。展開部以降も揺さぶりは強く、勇壮なパートは素晴らしのですが間をとったパートはぼんやりです。
第二楽章
とんでもなく速いスケルツォ主題、強烈です。そしてトリオでは素っ気なくスローで凄いコントラストです。冗談としか思えない面白さ!
第三楽章
穏やかな主要主題と副主題は適度なスローで流れて美しさと哀しみを感じ、中間部では広がり山場は見事です。長いスローパートは気になりますが。
第四楽章
序奏はコントラストが生きています。流れに乗って第一主題から経過句は強烈高速ですっ飛び、第二主題も軽妙ながら速く強烈な提示部です。展開部も緩急がここではメリハリになっていますね。騎行は爆速、行進曲は山場は力技が溢れ、麻薬の様な危ない魅力があります。


パワーパートは暴れて爆速も見せるクセ者マーラー6です。嫌いじゃありませんねぇ。一部気になるスロー、録音にも問題?、には目を瞑りましょうw
スヴェトラーノフ節炸裂で、好みは明確に分かれるでしょうが曲者好きにオススメです。





(#2)
NHK Symphony Orchestra
[キング] 1999-2/11


上記9年後、N響を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
スロー堂々葬送行進曲風の第一主題、アルマの主題は優美、アクの強さは減った提示部です。展開部からも遅め堂々が基本となって揺さぶりは大きく減り、挿入部の間延び感も避けられています。
第二楽章
速いスケルツォには変わりませんが驚くほどではなくなりました。トリオのスロー加減も削られて、全体として速めという感じになりましたね。
第三楽章
主要主題・副主題共にスローでクセもありません。弱点に感じたスローも大丈夫ですが、中間部も平均化です。山場はスヴェトラーノフらしいですね。
第四楽章
序奏はスロー主体、第一主題も適度な速さ、第二主題も自然に流れます。展開部・再現部もクセはなくなり、まとまりが良くなってはいますね。山場もちゃんと盛上げています。


落ち着いた大人のマーラー6です。スーツをスマートに着こなした感じ?!
ロシア国立響から大きく揺さぶりを削り去ってしまい、クセがない代わりに平凡な一枚になってしまったのは残念です。決して悪い着こなしではありませんが。(客演であの演奏は難しいでしょうね)




ジョージ・セル, George Szell (2録音)

第二次大戦勃発と共に米国に定住しましたが、欧州時代にR.シュトラウスに指揮を師事していますね。クリーブランド管弦楽団の音楽監督(1946-1970年)を20年以上努めてローカル・オケから全米ビッグ・ファイヴにしたのは有名な話ですが、マーラーとなると印象は薄い気がしますね。



(#1)
The Cleveland Orchestra
[Sony (Columbia)] 1967-10


セルの手足ともなった20年目の手兵クリーブランド管を振ったマーラー6のLiveですね。

第一楽章
第一主題はテンポもしっかり勇壮そのもの、経過句で落としてアルマの主題はテンポを上げ甘美さを避けています。切れ味優先の提示部で、反復はカットされていますね。展開部もキレのある第一主題を中心にここでも挿入部を落としてうまくコントラストを付けています。全体速めでシャープさの効いた第一楽章です。
第二楽章
テンポ抑え目怒涛の重厚主要主題、トリオは虚飾を廃止たシンプルさで変拍子の表情変化を生かします。見晴らしの良いスケルツォですね。
第三楽章
アンダンテ。主要主題は優美に、第一トリオは哀愁を、第二トリオでは広がりを。やや速めで、甘美さ情感よりも折り目正しい緩徐楽章になっています。
第四楽章
序奏も過度の揺さぶりは排して、快速勇壮な第一主題へ突入します。経過句を切れ味良く、第二主題で緩やかな対比を見せますが流れは速いですね。展開部も速めで締まった流れを保持して、再現部は強烈な快速で陰影付け、コーダで大きく暗転しフィニッシュします。


速めで無用な揺さぶりを排し、芯の通った硬派のマーラー6です。妥協を許さないセルの本領発揮でしょう。無機質・機械的?、かもしれませんが好きな演奏ですね。ですかねぇ...





(#2)
The Cleveland Orchestra
[virtuoso] 1967-10/12

SzellMahler6Virtuoso96007.jpg
(amazonに登録が無い様です)

上記Sony盤の正式録音"日"は不明*ですが、これは後に発行された上記演奏の同年同月のLive盤になります。同月Liveなのに第三楽章の演奏時間の違いが大きいですね。(*Kaplan Foundation 確認)

      [Sony] [virtuoso]
 第一楽章 :17'45" → 17'44" (提示部反復なし)
 第二楽章 :13'11" → 13'43"
 第三楽章:13'32" → 15'48"
 第四楽章 :28'58" → 29'22"

第一楽章
Sony盤同様に勇壮な第一主題からの流れでよく似た速くてシャープな第一楽章です。もちろん提示部の反復はカットですね。
第二楽章
スケルツォも似ていて重厚さの主題と、変拍子を生かす中間部です。
第三楽章
アンダンテは主要主題がよりスローな流れになり、第一トリオもその流れを引き継ぎます。第二トリオは山場の様な流れを作っています。この楽章では情感の強い甘美さを感じる流れに変化していますね。
第四楽章
hrが怪しいのを除けばよく似た速さと切れ味の流れに感じますw。再現部では第一主題のスローと騎行の快速がより強調されて迫力が増していますね。


楽章間の立ち位置を明確にしたマーラー6ですね。同月録音のSony盤と違うのは第三楽章で、スロー化で表情を付た甘美な緩徐楽章になっています。

全体を通した印象ではSony盤の方がセルらしい統制感があり好きですね。最終楽章はこちらの方がパワー漲り好きですが。

同じ様な咳がノイズで入っていたり、演奏直後に同じ様にアプローズなのがちょっと気になりますね。




ルドルフ・バルシャイ, Rudolf Barshai

読売日本交響楽団
[読響アーカイブ] 1989-11/25


日本のオケに度々客演していたバルシャイが読響を振ったマーラー6ですね。

第一楽章
行進曲の第一主題はスローでやや緩く、アルマの主題も情感は抑えめです。展開部もややギクシャクした感じの中で第一主題を奏でスローな挿入部へと流れますが、シャキッとした感じに欠ける気がします。音はmixingにも問題があるかもしれませんが。
第二楽章
スケルツォは第一楽章の延長の流れの主要主題で荒々しいのは良いのですが締まりに欠けます。トリオは音量を落としますがテンポはキープされ優美さが薄いですね。
第三楽章
主要主題は速いく、緩徐の美しさはあっさり風味でしらばっくれているみたいです。副主題も同様ですが、中間部では明るさを見せてくれますね。全体速く「とにかく演奏したゾ」みたいな感じですw
第四楽章
序奏はモヤモヤ。第一主題は暴れて第二主題は表情変化が薄いです。展開部・再現部も強音パートは無闇に荒れて面白いですが静音パートは薄い情感。締まりは今ひとつですが、それでもこの楽章の苛立ちの様な狂乱パワーは面白いです。


掴み所がなく見晴らしの良くないマーラー6です。荒れるけれど締まらず、あっさりそっけない速い緩徐、最終楽章以外 やる気のなさに溢れています。最終楽章は一転何かにうなされた様な錯乱状態。最終楽章だけならでしょう!!




井上 喜惟, Hisayoshi Inoue

Japan Gustav Mahler Orchestra
[JMO] 2001-11/25


井上 喜惟さんのマーラー6番が出てきました。もちろん手兵のジャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラです。第5番では理解を超えた世界を覗きましたが、ここにも驚きの発見が…

第一楽章
異様なほど遅い第一主題、ゆっくりとテンポを上げて経過句へ繋ぎアルマの主題は優しさ溢れる流れです。展開部でも流れの基本はスロー、再現部もスロー。スローの間延び感はなく、安定感があります。これは個性的!!
第二楽章
スケルツォ主題をまたもやスロー強調、でも第一主題ほどではありません。似ているのは抑揚を抑えたスローである事でしょう。それが全編通している訳ですね。トリオも当然のスローです。
第三楽章
アンダンテは緩徐なので流石にややスロー程度です。もちろん主要主題も副主題も陰影付けは薄くですが、中間部は明るく色付けされ山場もスローを生かしました。
clが一度素っ頓狂な音を出しましたが、演奏の破綻もそのくらいです。
第四楽章
序奏は流石にもっさり。第一主題はアレグロ・エネルジコからの流れなのでテンポは少し戻していますね。ところが跳躍進行の経過句で大スロー化。第二主題は標準的に鳴らし、この曲のメイン展開部は通常のテンポとディナーミクに近づけてきます。一部スロー回帰しますが、そうなると中途半端になってしまいます。そこが残念!!


抑揚を殺したスローなのに安定感、個性的で不思議なマーラー6です。フラット間延び感で最悪と思いきやしっかり流れが出来ています。第5番にあった不成立なくらい酷い演奏も十分聴けるレベルです。残念なのは最終楽章で、ここもフラット・スローで構築してくれたら興味深かったでしょう。

本オケは現在は活動はない様です。




山田和樹, Kazuki Yamada

日本フィルハーモニー交響楽団
[EXTON] 2016-3/27


人気の若手指揮者さんですが、残念ながらコンサートでの相性が良くない代表で近年全く行っていません。おしゃべりはとても魅力的ですけど。
まぁ駄耳なのでw このチクルスも一回も行っていないのですが、手頃な価格で見つけたので入手してみました。

第一楽章
速めの第一主題は切れ味良く経過句は自然に、アルマの主題も殊更に甘美にはしませんね。展開部も速め基本でシャープな心地よさがありますね。挿入部では適度に落としてコントラストを付けています。再現部は一層の締まりの良さを見せて、ラストの暴れ方も良いですね。
第二楽章
主要主題は速めで第一楽章の延長の流れを作っています。トリオでも流れを切らない旨さがあり、通して清涼感のあるスケルツォです。
第三楽章
主要主題はアンダンテらしいテンポ設定で甘美よりもクール、副主題(第一トリオ)の哀愁感もクールです。中間部(第二トリオ)では雲の切れ間からの光の様に、ラスト山場は大きく。過度のディナーミク/感情を抑えた流れですね。
第四楽章
長い序奏はスローに流れ、アレグロ・エネルジコからの歯切れの良い第一主題・行進曲を奏でて経過句から第二主題を清涼感高く入れてきますね。展開部・再現部は大きく緩やかなアゴーギクで整然とした流れを作り興奮は排しています。


ライトウェイトながら心地よい切れ味のマーラー6です。揺さぶりを抑えて、山場も適度に荒れて粘らないからでしょうか。何か一つスパイスがあったら良かった感じです。
20年後のチクルスは行って観ましょうか、生きていたらw




テオドール・クルレンツィス, Teodor Currentzis


MusicAeterna
[Sony] 2016/7/3-9


ギリシャ人指揮者でテミルカーノフのアシスタントから、2004年に本CDのムジカエテルナを創設し音楽監督となっていますね。この9月から南西ドイツ放送交響楽団(SWR Sinfonieorchester)の首席指揮者も務めています。

第一楽章
第一主題は切れ味鋭く、モットーで約束通りに落とすとアルマの主題を情感強く奏でます。見晴らしの良い提示部です。展開部も挿入部のスロー静と前後の速い切れ味のコントラスト付けを明確にしていますね。チェンジペースの際にしゃくる様な妙な揺さぶりを付けているのは気になりますが。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はここでも速く切れ味、中間部は少し落として優美さを色付け。チェンジペース時の揺さぶりはしっくりきませんが。
第三楽章
主要主題は少し揺さぶりを感じますね。細かなアゴーギクとディナーミクを組合せた感じです。違和感が… 副主題は楽譜指示通り情感を高めます。中間部は明るさと広がりを付けています。濃い味付けですね。
第四楽章
気になる序奏は緩やかさ主体です。第一主題は対比させる様に締まった流れを作ります。決して暴れません。第二主題はテンポ変化を抑えて軽妙です。展開部・再現部も強音パートにアゴーギクを振って波をうまく作っています。勇壮な行進曲や騎行は締まって見事ですね。パワーが心地良い最終楽章になっています。


計算づくのマーラー6ですが、聴き終わった全体印象は少々くどいかも。

強音パートも型崩れはしませんし、スローも退屈に落ちる事もありません。静はスロー、強音パートは切れ味でファスト、アゴーギク主体のコントラストをピシッと付けています。時折気になる細かな揺さぶりもスパイス。
でも何かクルレンツィス(w/ムジカエテルナ)特有のメリハリが強く個人的には…
(評論家の先生方や発行元・招聘元が大はしゃぎ、数年前のJ.プレートルが頭をよぎりました)







まだまだコンドラシンなど変わったのもありますので、徐々にアップしたいと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョナサン・ノット/東京交響楽団 の「マーラー:交響曲第10番アダージョ」を聴く


コンサートとCD
本年2018年4月14日のサントリーホールでのコンサートで録音していたのは知っていましたが、こんなに早くリリースされるとは思っていませんでした。コンサートのインプレとの違いはあるでしょうか。ブルックナーの9番は別途インプレしますね。→ こちら


マーラー交響曲第10番アダージョ
以下コンサートインプレと同じです。『ソナタ形式ですが個人的印象は①序奏主題、第一主題、第二主題がロンド形式の様に展開する前中盤、②まるでトリオ(中間部)の様なコラールから和音、③緩徐の長いコーダですね。』



序奏主題はコンサートより鬱に沈んだ印象、第一主題と反行形主題は暖かな美しさに感じました。特に暖色系の気配が印象的になっています。第二主題はコンサートの印象と同じく個性的な旋律が生きました。
中間部の様な管楽器主役の和音は迫力は抑え気味、コーダの緩徐は静美的印象が薄く感じたのもコンサート同様ですね。


調性の妖しさよりも温もりと力強いアダージョですね。コンサートで感じた通りのコントラストでしたが、スパイス不足の感は無くより明快に感じました。鬱的な、例えばD.ハーディングの様な、方向とは対極になる演奏でしょう。

出来ればノットには全曲を一度やってほしいです。







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

【CD+BD化決定】サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルのフェアウェル・コンサート『マーラー交響曲第6番』NHKプレミアムシアター

先月2018年6月19・20日のサイモン・ラトル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(BPO)常任指揮者としてのラスト・コンサートですね。ラトルはBPOとの初ライヴ(1987年客演)もこのマーラー第6番で、CD化されていています。(ラトルのマーラーの6番はもう一枚あり、その2年後1989年に手兵だったバーミンガム市響との録音を残していますね)

このブログでは『マーラー交響曲第6番 40CD聴き比べ』でラトルの二枚のCDもインプレしています。



マーラー 交響曲 第6番「悲劇的」 / ラトル・BPO

【第一楽章】
第一主題は切れ味良く重厚さは抑え気味、アルマの主題では少しスローにして優美さを見せますね。展開部・再現部でも切れ味重視で過度の色付けをしていません。重厚さや華美を控えてクールなラトルらしからぬ第一楽章ですね。

【第二楽章】
アンダンテです。主要主題は抑えた優しさを感じ、副主題のobとclも静かな哀しみを表現しました。中間部も抑えられた流れを継承しまして、ラスト前山場の溢れ出す哀愁は見事でしたね。

【第三楽章】
スケルツォは主要主題はやや速めの流れで切れ味良く、トリオは抑えながら変拍子を活かしました。最終楽章へはアタッカで繋げましたね

【第四楽章】
キーの一つ序奏はオケの個々の楽器の鳴りが澄んで見事でした。提示部第一主題は切れ味そのもの、パッセージを大きく奏でて第二主題をのどかに。展開部・再現部はバランスの良いアゴーギクとディナーミクでコントラストと見晴らしの良さが際立ちました。この楽章は素晴らしい出来でした。


クールで緊迫感のあるマーラー6でした。もっと大袈裟に来るかと思っていましたが、予想を裏切る抑えの効いた締まりの良い演奏で驚きました。白眉は最終楽章でしたね。

既発CDとの比較ではバーミンガム市響よりもBPOとの初ライヴに近く更に落ち着きと切れ味を増した感じでしょう。侮れない演奏ですね。


BPOのメンバーのセリフはまさに我儘天狗軍団で笑えましたね。





CD+BDでの発売になりましたね。




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ジャンル : 音楽

オスモ・ヴァンスカ(Osmo Vanska) の マーラー交響曲第六番 を聴く


オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä, 1953/2/28 - )
フィンランドの指揮者ヴァンスカというとラハティ響を育て上げた事が浮かびますね。
そして近年では昨年発売のマーラー第五番2015年来日のシベリウス「フィンランディア」(w/読響)を思い出します。(両インプレあり)
現在音楽監督を務めるミネソタ管弦楽団(Minnesota Orchestra)とのマーラー5番はややクセ者的な印象もあったのですが、チクルス第二弾の6番はどうでしょう。

『交響曲 第6番 30CD 聴き比べ』には次回追記予定です。



第一楽章
スローで抑えめの第一主題、モットーは美しくアルマの主題ではそれを広げる様に華やかですがスローのアゴーギクが気になりますね。反復後の展開部も力強さはあっても冷静さが常に背後にいます。再現部では少し躍動感が感じられるかもしれません。
第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題・副主題ともにごく普通の優美さ、中間部も流れは同じですが明るさが現れますね。美しい緩徐楽章ですが個性は薄いです。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は客観的で迫力や興奮を否定しているかの様です。クールとは違いますね。トリオは優美なスケルツォですが、それ以上でもありません。
第四楽章
序奏は緊張感の漂う素晴らしい流れかと思いきやスローモッソリに落ち込みがっかり。長い序奏から提示部の第一主題と経過句は勇壮ですがアゴーギクを殺して抑え込み、第二主題も同様です。展開部は序奏と同じく揺さぶりの効いた前半パートとフラット単調さの行進曲以降の組合せです。再現部も同じですが、それでもこの楽章が一番良いかもしれません。

よそよそしく掴みどろこの薄いマーラー6番です。この曲は興奮かクールさかですが、はっきりしないのはどうも…好みの問題になるかもしれませんね。
シベリウス・アカデミー同期生サロネンやサラステのマーラーの様にはいかない様です。






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マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 100CD聴き比べです [#5 / CD:51-70]

第5回目は好きなノット盤や発売されたばかりのハーディング盤からベテラン勢、20CDのインプレ追加です。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 100CD
 #1:10CD
バーンスタイン[x5 ★☆], アバド[x2 ★☆], ラトル[x2 ★], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x3], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆], 小林研一郎
 #3:10CD
インバル[x3], ドゥダメル, サラステ[☆], バルビローリ[☆], ジュリー二, ドラティ[㊟], ムント, 朝比奈隆
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[★☆], ジンマン, バルシャイ, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD 本投稿
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:10CD
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x2 ☆㊟], ノリントン, エルダー, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ



ジョナサン・ノット, Jonathan Nott

★☆
Bamberger Symphoniker
[Tudor] 2008-9/15-19


(ノットのマーラーは全集で買って後悔しませんね)

現東京交響楽団の音楽監督を務めるノットが16年間首席指揮者だったバンベルク響とのチクルスからですね。

第一楽章
スロー緩やかな第一主題から第二主題も流れはスロー、そこから金管の下降を経て大きく反復と第三主題を奏します。展開部もスローな暗さと激しい山場の対比が葛藤を描くようです。山場の後は必ず落ち込む鬱も生きています。
第一楽章に欲しい"暗さ"がスローのテンポの中息づいて素晴らしいですね。
第二楽章
主要主題と第一トリオはテンポよく穏やかな優美さで、第二トリオも流れよくスケルツォを奏でます。優美さが引き立ち一楽章からの対比がきれいですね。
第三楽章
主要主題と副主題は速めの流れで、第二楽章ラストの狂奏からの繋がりがあります。中間部のターン音型で徐々に流れを穏やかに落とします。これは最終楽章の中心をなすターンへの流れにピッタリで、前後楽章との連携が見事ですね。ラスト山場も見事な狂乱です。
第四楽章
スローで哀しみの強いアダージョの主題。第一エピソードも沈んだ流れから弦楽緩徐の哀しみ溢れる美しさが大きく広がります。その後もスローなターン音型の浮遊感を最大限生かしながら透明な哀しみと美しさをラストの消え入る動機まで繋げます。この楽章に欲しい"死"を前にした澄んだ世界が感じられます。素晴らしいですね。


この曲の真髄とも言える第一楽章の"暗"と第四楽章の"哀"の美しさが伝わるマーラー9です。
スローで情感深い第一四楽章、明瞭な第二三楽章、その楽章構成が見事ですね。個人的ベスト5の一枚です!




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding


Swedish Radio Symphony Orchestra
[harmonia mundi] 2016-9/8-10


ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。

第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。


重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。コンサートでは相性の良くないハーディングですが、期待を裏切る素晴らしさでしたw おすすめの一枚ですね。


本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、翌2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。
Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)
流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。




ミヒャエル・ギーレン, Michael Gielen (2録音)

個人的には現代音楽の擁護者といった指揮スタイルも含めて興味の尽きないギーレンですが、マーラー9番は首席指揮者を務めた現南西ドイツ放送交響楽団(SWR Sinfonieorchester)との録音が2枚正規盤として残されています。



(#1)

SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden
[Intercord] 1990-Apr. Aug.


バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団の首席指揮者時代のマーラー9ですね。

第一楽章
第一主題から第三主題までをディナーミク強く情感を高めた提示部。展開部も静のスローを鬱と哀に、強音パートをスピード感と切れ味にコントラストを付けて素晴らしいです。処々で細かな癖があるのもギーレンらしい?!
第二楽章
主部主題はなんともスロー、第一トリオは程よいテンポに戻して心地よく鋭いレントラーです。そこから穏やかに第二トリオへ入ります。スローの主題が特徴的ですね。
第三楽章
主要主題と副主題は刺激的にやや刺々しく絡んで流れ、中間部でテンポを大きく落としてコントラストをつけます。
第四楽章
主要主題はナチュラルに弦楽の美しさを讃えます。第一エピソードは細い静音から情感を込めつつも速めの流れで展開しラストでスローに持ってきます。第二エピソードも速めで入りスロー静音に落としてコーダへ向かううまさです。


表現的揺さぶりとメリハリのマーラー9です。静音パートは大きくスローにハイテンポを交えて、そこに一癖と好みは分かれるかもしれません。でも好きな演奏です。





(#2)
SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[Hanssler Classics] 2003-6/27-7/4


1996年にバーデン=バーデンからフライブルク・コンツェルトハウスへ本拠地を移しバーデン=バーデン・フライブルク南西ドイツ放送交響楽団に名称変更。ギーレンは1996年まで首席指揮者を努めていましたね。(その後2016年にシュトゥットガルト放送交響楽団と統合されて現在に至っています)

第一楽章
第一第二主題を緩やか厚めに、第三主題で大きく波を立てます。展開部はコントラストを強く付けて重厚です。クセはなくなり堂々の風貌です。
第二楽章
主部主題はやっぱりスロー、第一トリオもややスロー気味ですがレントラー感はあります。第二トリオでスローに落とし後半をアップテンポで切れ味を見せますが全体としてスロー感が強くなっています。
第三楽章
主要主題と副主題はややスローになり絡みも刺激は減りました。テンポアップ後の中間部で再びスローにします。基本はスローですね。
第四楽章
主要主題は微妙なアゴーギクを振った美しさになっています。第一エピソードは細い静音から速めに流れて情感を戻すのは同じです。第二エピソードも流れは変わりません。ディナーミクを抑えた事で厚みを感じますね。


クセはあるものの堂々としたマーラー9です。極端な静音ディナーミクを減らし重厚さが出ましたね。とはいえスロー中心のアゴーギクは個性的です。
ならば昔のクセ者の流れに心惹かれるものを感じますが。(汗)




小澤征爾, Seiji Ozawa (2録音)


(#1)
Boston SO
[Philips] 1989-10

言わずと知れたボストン響の音楽監督時代のマーラー9番です。

第一楽章
第一主題と第二主題を抑えて冷静な流れから展開部へ入ります。展開部もクールで静的パートと激情パートのコントラストがコントロールされています。再現部も"計算尽く"を感じます。
第二楽章
主要主題はややスロー穏やかに絡んで第一トリオでシャキッと気配を変え心地よいスケルツォになります。第二トリオは緩やか穏やかです。後半の山場も暴れる事なく全体として穏やかさのスケルツォですね。
第三楽章
主題と副主題は心地よい勇壮感と軽快感で絡んで進み、中間部では穏やか伸びやかで山場へ繋ぎます。ラストもマーラーの指示通りに荒々しく、見晴らしの良い楽章です。
第四楽章
序奏・主題の美しい広がりは第三楽章からの対比が心地よいですね。第一エピソードは暗い静音パートと弦楽緩徐パートの広がりが美しです。第二エピソードもうまくアゴーギク・ディナーミクを振って哀愁ある美しさが際立ちます。この流れからのラストの静的美しさはマッチしています。


全て小澤さんコントロール下、ライヴとしてはマイルドでまとまりすぎのマーラー9です。
ただ、第三楽章から最終楽章は素晴らしく全体この流れだったら絶対☆ですね。





(#2)
サイトウキネン・オーケストラ
[Sony] 2001-1/2-4


BSOとの12年後、これまた言わずもがなの創設者であり総監督を務めるサイトウキネンを振った演奏です。

第一楽章
タメの効いた第一主題と揺らぎを持った第二主題、金管の半音下降からの反復と第三主題の緊張感が素晴らしいですね。展開部・再現部共に緊張感とオケの漲るパワーを感じられます。ただこの楽章としては厳つい気配が強すぎの気がします。
第二楽章
主要主題は穏やかな流れ、第一トリオでピシッとするのはBSOと同じですね。その後も良く似ていますが演奏の切れ味はこちらが上。
第三楽章
主題と副主題は切れ味よく絡み、伸びやかな中間部以降ですが前半がややフラットに感じます。ラストのパワーは見事。
第四楽章
序奏・第一主題は重厚感、第一エピソードも重さが際立ちます。第二エピソード緩徐パートもそっけない感じです。ラストに向けても線の細さより朗々と鳴る気配です。


この曲に感じる哀しみや美しさが弱いマーラー9ですね。通して重厚、緩徐パートも厚い音色だからかもしれません。
演奏が素晴らしいのでコンサートで聴いたら賞賛してしまうかもしれませんね。(汗)




ジュゼッペ・シノーポリ, Giuseppe Sinopoli (2録音)

シノーポリと言えば学研肌でスローという印象でしょうか。それと指揮中に倒れて亡くなった事。個性的ですが音楽的な好印象が残っていません。



(#1)
Philharmonia Orchestra
[DG] 1993-12


シノーポリが首席指揮者を努めていたフィルハーモニア管を振ったマーラー9です。

第一楽章
緩やかで甘美な第一主題、第二主題で曇らせますがテンポはキープされます。そこから揺らぎを入れて反復、第三主題から派手に盛上げます。展開部も"静音=スロー強調"の定義?で、強音パートとコントラストが明確です。
第二楽章
主要主題と第一トリオは適度なテンポ設定、第二トリオでも特異性はなくレントラーらしさはあるものの印象は薄めです。長い…
第三楽章
マーラーの言う"きわめて反抗的に"とまでは行かないかもしれませんが、前楽章より切れ味はあります。
第四楽章
主要主題は暖色系のややスローで哀愁ではないでしょう。第一エピソードは静音パートも含め速めになります。第一楽章での流れの設定とは全く異なります。ラストのvaの動機(F♯,G,A,G)だけ音が大きめなのも不自然さを感じます。


第一楽章のスローと強音パートの印象は第四楽章で崩されたり、統一感に欠けるマーラー9です。





(#2)

Staatskapelle Dresden
[PROFIL] 1997-4/6


上記4年後、シュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者として振ったマーラー9ですね。スロー化が全楽章で進み、82分から93分を超える演奏になっています。特に第一楽章は世界最遅演奏(32'57")です。

第一楽章
第一第二主題はさらに遅くなり気配も薄くなっています。強音もスロー化して反復、第三主題も大スロー化。何でもかんでもスローになってます。スロー再生で聴いているみたいです。世界最遅の第一楽章ですからね。
第二楽章
一部パートを極端にスロー化しり変な揺さぶり構成になっています。ディナーミクの弱側がスッと消えたり、流れを遮る様な奇妙なアゴーギクを振ったり。立派なクセ物楽章です。
第三楽章
ありきたり印象の主要主題と副主題はやや速めに…あれっ普通??…ところが中間部で一転大スロー化!! ここからはディナーミクも加わってクセ物と化します。
第四楽章
第一主題はスローが増して甘美ですが、乗っけから揺さぶってきます。第一エピソードは速め繊細、ですが、弦楽の山場からは昂ぶりを否定する様なスローと煽りが入ります。第二エピソードは平穏な流れで1回目の山場を迎えますが、ターン音型からスローになり2回目の山場は抑え目の大スローです。その後は超静音スローでコンサートなら素晴らしいでしょう。


スローで揺さぶりのクセ物マーラー9です。特に第一楽章のフラットスローは密度が希薄になって窒息しそうですw その後はアクの強い?流れがたっぷりと味わえますね。なんとラストは美しいです。
クセ物マニアの貴方におすすめです!!




クルト・ザンデルリンク, Kurt Sanderling (4録音)

日本でもお馴染みの父ザンデルリング。マーラーの9番は4枚も正規録音を残しています。(もう一枚フィルハーモニア管との非正規盤がありますが…)



(#1)
Berlin SO
[Deutsche Schallplatten] 1979-2/28,3/2,8


鍛え上げた手兵 ベルリン交響楽団(東独)の芸術監督/首席指揮者を1977年に退いた2年後の録音ですね。

第一楽章
スローな序奏と第一主題、第二主題から反復で大きな波を奏でます。第三主題の激しさから暗転して展開部に入りますが少しモヤモヤした感じですね、山場はパワフルですが。再現部は落ち着いた流れで悪くありません。
第二楽章
主要主題と第一トリオは硬派なレントラーとスケルツォ。第二トリオはやや緩めて流れる様なスケルツォです。後半は情感を上げますが真面目過ぎかも。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みは教科書的で変化に乏しく、中間部やラストでも変化量が不足気味です。
第四楽章
序奏・第一主題は厚めの音で入ります。第一エピソードは細く入って厚くなりますが没個性的です。第二エピソードも生真面目で、流れにアゴーギク・ディナーミクの個性が感じられません。


破綻の無い、落ち着いて計算された真面目なマーラー9です。何か一味足りません。





(#2)
BBC Philharmonic
[BBC Legends] 1982-7


ベルリン響の3年後、BBCフィルハーモニックを振った演奏です。

第一楽章
スローな出だしは変わりません。第三主題から展開部も同様ですが、自然体の流れと程良いコントラストがありますね。
第二楽章
ここでも主要主題から第二トリオまで穏やかさのレントラーとスケルツォになっています。全体としてやや緩さが強くダレますが。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みはフラット、中間部も変化が薄いです。ラストはもっと強烈さが欲しいです。
第四楽章
序奏・第一主題は緩徐色を強めていますね。第一エピソードも第二エピソードもその流れで緩徐的です。ただ単調で感情移入は薄くフラットさが拭えません。


特徴が薄く緩いマーラー9です。特に第二第三楽章にマーラーの指示する「粗野」や「反抗的」が欠ける感じですね。





(#3)
NDR Symphonieorchester Hamburg
[Profil] 1987-11/7


BBC-Pとの5年後、北ドイツ放送交響楽団(現:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)との演奏です。非正規盤から昨年正規盤となって話題になりましたね。

第一楽章
序奏から第一主題は適度にスローですが第二主題と反復も含めて緊張感があります。第三主題も緊迫感がいいですね。展開部、再現部共に適度な揺さぶりと荒れが締まりのある演奏にしています。
第二楽章
主要主題はカッチリ、そこから流れを作り第一トリオは表情変化させて明確なリズムを刻みます。スローダウンの第二トリオも全体の流れを生き生きさせていますね。後半は約束通りに荒れ気味に。
第三楽章
主要主部と副主題は落ち着いた絡みから軽妙さを見せ、中間部で牧歌調にチェンジします。ラストはコントロールが効き過ぎかも。
第四楽章
第一主題は大きく優美さを見せます。そして第一エピソードも重心の低い豊かな表情を見せてくれます。第二エピソードも哀愁漂う表情を見せながら山場を作り、『亡き子をしのぶ歌』引用の浮遊感から消え入ります。


適度な揺さぶりと興奮、安心して聴ける王道的マーラー9です。初めて聴くのにもオススメですね。
指揮者よりもドイツオケならではのパターンの気がします。この演奏だけ色合いが違うのが明白ですから。(同じ事はマーラー5番でも感じてインプレしています)





(#4)
Philharmonia O
[ERATO] 1992-1/24,25


NDR響の5年後、名誉指揮者を務めたフィルハーモニア管弦楽団を振った演奏です。

第一楽章
出だしは再びスローに戻って、第二主題への流れは変化が薄く反復もモッソリ。第三主題も見晴らしがよくありません。展開部・再現部もスローモヤモヤですね。
第二楽章
主要主題のtbが奇妙なヴィブラートですが、流れはレントラーが生きています。第一トリオはスロー、例によって落ち着かない変化です。第二トリオもスローの揺さぶりでモヤモヤ感が拭えません。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルですが変化に乏しく退屈、でも中間部では表情を一転させます。ラストは約束通りに少し乱舞して見せます。
第四楽章
入りは美しい緩徐ですね。第一エピソードは抑揚が抑えられてフラット、第二エピソードもその延長、通して長く感じてしまいます。


82年BBC-Pの延長線上にある、もどかしさ満点のマーラー9番です。モッソリ・モヤモヤ、体調不良かもw
結局ザンデルリンクはNDR主導の演奏だけという事に思えてしまいます。




キリル・コンドラシン, Kirill Kondrashin (2録音)


(#1)
Moscow Philharmonic Orchestra
[Meloydia] 1964-5


コンドラシンが15年間首席指揮者を務めた手兵モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団を振った演奏です。

第一楽章
美しく軽い第一主題、第二主題も重さは控え目に、反復でも重厚さより明るさを感じます。展開部も軽めながらスピード感と切れ味の山場です。再現部も速め軽量で胃もたれしない流れですね。
第二楽章
主要主題は落ち着きから優美に、第一トリオはややもったいぶっていますが良いスケルツォ感です。第二トリオも大きく変化はさせずに穏やかですね。
第三楽章
主要主題・副主題共に速め軽やかで中間部も速く変化量は少なめです。12'を切って流れは速いですね。
第四楽章
序奏・主題は透明感ある美しさで、第一エピソードは哀愁を感じる流れからhrが主題を美しく奏でていい緩徐パートです。第二エピソードも哀しみを感じる美しさから山場を作ります。この流れはラストの消え入るターン音型にベストマッチでこの楽章として好みですね。透明な美しい哀しみの音色は、静かな"ersterbend 死"のイメージに近い印象です。


やや速めライトウェイトの肩のこらないマーラー9番です。最終楽章の静的な美しさは好みですね。
コンドラシンにしては淡白でしょうか。





(#2)
Moscow Philharmonic Orchestra
[ALTUS] 1967-4/16


1967年東京文化会館でのマーラー9番本邦初演。記念すべき録音ですね。マーラー人気が近年の事であるのが今更ながら再認識されますね。

第一楽章
美しい緩やかさの第一主題から興奮を避けた第二主題、それを大きく構えた反復と第三主題の提示部です。展開部も落ち着きはらい緩やか優美からアレグロ・リゾルートで興奮の山場を作りコントラストの良い流れ。彫りが深く、美しさと暗い重さのバランス良い楽章です。
第二楽章
主要主題は優美ですが表情豊かです。第一トリオは派手め第二トリオを優美にと、濃厚なスケルツォ楽章です。
第三楽章
主要主題・副主題は切れ味と軽快さのバランスよく流れて中間部は速めです。緩やかな揺さぶりを感じます。
第四楽章
揺さぶりを感じる主題、第一エピソードは繊細な音色からマーラーらしい弦楽の美しい山場を作ります。第二エピソードも静音パートは素晴らくラストへの静的流れはいいのですが山場もクールです。


コンドラシンらしい陰影を付けた明快なマーラー9番です。山場強音パートに激情さや狂気があれば素晴らしかったでしょう。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos (2録音)

B.ワルターの跡を継ぎニューヨーク・フィルの音楽監督(1949-1958)を務めたミトロプーロスはL.バーンスタインにバトンを渡したわけですが、米国にマーラーを広げた功績も大きいですね。第9番は1960年にNYPとVPOの両オケを振った録音が残されていますが、その違いも驚きです。
今回紹介は両方ともCDセットでmonoになります。



(#1)
New York Philharmonic
[Music&Arts] 1960-1/23


バーンスタインが引き継いだ1958年に名称をニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団からニューヨーク・フィルハーモニックに改名した元手兵を振ったマーラー9番です。

第一楽章
第一主題は適度な揺らぎ、第二主題も大きくは表情を変えませんが第三主題前後からは大きく盛りたてます。展開部は静音パートでうまく間を使いながらNYPらしいパワフルさを活かしていますね。
第二楽章
主要主題は速く、テンポを下げた第一トリオでは切れ味を見せます。第二トリオはやや速めな優美さです。
第三楽章
主要主題は切れ味とリズミカルを合わせながらの重量級、副主題は軽やかに絡みます。中間部ではシンプルな美しさ、スローに落としてラストは見事なパワープレイです。
第四楽章
主要主題は緩やかに美しく入り、第一エピソードでは美しい哀しみの流れから情感を盛上げます。第二エピソードはスローで哀しみの回音音型を最大限生かします。山場を大きく、『亡き子をしのぶ歌』引用からコーダは美しく消え入ります。


速め主体の流れで一昔前のスタイル?ですが、パワーのマーラー9です。第四楽章の素晴らしさで、1960年のNYPの実力が味わえますね。





(#2)
Vienna Philharmonic Orchestra
[Memories] 1960-10/2


上記同年10月に親交の厚かったウィーンフィルを振ったマーラー9番ですね。逝去(1960-11/2)一ヶ月前の演奏です。

第一楽章
スローになった第一主題から第二主題へは表情を変えずに、反復後の第三主題で盛上げます。展開部は静音スローを鬱的に表し、対比よく切れ味と迫力を見せます。今風の展開になっていますね。
第二楽章
主要主題は一気にスロー化(標準的に)されました。歯切れよく流れ第一トリオでも遅めでシャープ、第二トリオは緩やか穏やかです。その後は緩急交えた流れです。
第三楽章
主要主題はここでも重量級、副主題はスローでモッソリになっています。中間部は美しさを演出して、ラストは派手ですが落ち着いています。
第四楽章
主要主題は変わらず美しい流れですが、第一エピソードは速めになり静的哀しみの表情が薄くなっている感じですね。第二エピソードも速めになって、この楽章の逆変化が不思議です。山場を大きく情感を付けるのは同じですが。


大きく変わって教科書的なマーラー9になってしまいましたいます。演奏時間は80分と6分ほど長くなってスローを生かした演奏ですが、これで標準的な時間でしょう。




エサ=ペッカ・サロネン, Esa-Pekka Salonen

Philharmonia Orchestra
[signum] 2009-3/22


指揮者の顔がありますが元は現代音楽家で、M.リンドベルイやサーリアホと実験音楽合奏団Toimiiを組んでいたりしましたね。1983年にMTTの代役として急遽フィルハーモニア管弦楽団を指揮。2008年から同楽団の首席指揮者を努めていて、来日公演でも素晴らしいマーラーを聴かせてくれましたね。

第一楽章
第一主題は緩やか、第二主題へも適度な刺激で、そして大きく盛上げて反復に入ります。第三主題から見事に山場に向かいます。展開部もメリハリの強い大きな流れを作り見晴らしの良さを感じますね。
第二楽章
主要主題はスローに歯切れよく、第一トリオはテンポアップして良いリズムを刻みます。第二トリオでは穏やかな流れに転じて展開がスッキリとしていますね。その後もテンポ変化がうまいです。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルで少々派手気味で、中間部でもやや速めに流れを作ります。その後緩やかに落として大きく山場を築き、ラストはハイスピードで派手に盛上げて終わります。見事!!
第四楽章
序奏から主要主題は情感の厚みを感じます。第一エピソードでは薄暗さや哀しみを感じますが、やや速め重心低めです。第二エピソードでも美しさが速めのテンポで今ひとつ生かされません。その辺りはサロネンの意図でしょう。その後ターン音型からは静的叙情性を間を使って高め、コーダからフィニッシュは静かに消え入ります


明瞭明快、見晴らし良いマーラー9ですね。ディナーミクとアゴーギクのバランスがとてもいいですが、第一第四楽章に澄みきった静的哀愁さがあればだったかも。




ゲルト・アルブレヒト, Gerd Albrecht (2録音)

4年前(2014年)に亡くなられた読響の常任指揮者としておなじみのドイツ人指揮者アルブレヒトは二つの録音を残していますが、両者異なる展開で好演! 残念なのは共に市場にでる事が少ないという事でしょう。



(#1)

Philharmonisches Staatsorchester Hamburg
[insider] 1991-9

albrecht-mahler9-hamburg.jpg
(聞いた事のないレーベルでamazonには登録が無い様です)

1988年1997年に音楽総監督を務めたハンブルク州立歌劇場、そこの管弦楽団であるハンブルク・フィルハーモニカーを振ったマーラー9です。

第一楽章
緩やか優美な第一主題、第二主題から反復そして第三主題ではうまく緊張を与えます。展開部以降もスロー基本で緩急良く堂々とした構えの王道演奏ですね。
第二楽章
ここでも緩やかな流れで構成されています。スローが強めの主要主題から第一トリオ、そして第二トリオと変化と締まりが良いですね。
第三楽章
主要主題はキレよく入り副主題も少し穏やかに、中間部でのシンプル&スローの落とし方がうまいですね。構えの大きさが響きます。ラストも気合の入った迫力です。
第四楽章
主要主題はスローに哀しみの美しさを奏でます。第一エピソードもその流れで沈んだ美しさから入り、終盤のターン音型を意識した素晴らしい流れです。もちろん第二エピソードは山場も含めて哀しみの美しさが見事に表現され、コーダから消え入ります。お見事!!


スロー基本で堂々としたマーラー9です。重心は低く鬱や哀の静的美しさと緊張はこの曲の本道でしょう。
入手難が問題ですがおすすめの一枚で、コンサートで出会えたら大喝采ものです。





(#2)
読売日本交響楽団
[YNSO] 1997-12/13

albrecht-yomikyo_mahler9.jpg
(会員配布盤の為amazonには登録が無い様です)


上記の9年後、読響の常任指揮者(1998-2007)を務めたアルブレヒトが就任の一年前に振ったマーラー9番です。(読響とのマーラー5番はいただけませんでしたが…)

第一楽章
序奏・第一主題はやや速めでシャープ、第二主題の表情変化は少なめですが金管で盛上げて反復し第三主題をビシッと決めます。展開部も速め基本で揺さぶりを含めて切れ味とテンションの張った流れです。キレキレのシャープな第一楽章ですね。
第二楽章
主要主題は抑揚を付け、第一トリオも流れに乗りリズミカルでシャープ。第二トリオで穏やかな色を見せますが後半の動機の絡みは速めの流れです。
第三楽章
主要主題は速めでテンションが張っています。副主題で軽やかになりますが絡んで速めで勢いを付けて進みます。中間部では穏やかに一休み? その後は揺さぶりを強めながらラストの速く切迫した強烈な山場を作ります。
第四楽章
主要主題は美しいのですが緊張した揺さぶりが強いです。第一エピソードは一転して暗く静かに落とし繊細さを見せつけ、山場は速めです。第二エピソードも速めに入りそのまま二度の山場を作り、その後はラストに向けたターン音型を揺らぎを付け美しく落とします。


緊張感みなぎるマーラー9です。速め設定*で揺らぎとテンションが強く、哀しみや美しさより緊迫さです。
初顔合わせがもたらしたのかこの張り詰めた空気は一聴の価値ありです。(非売品というのが残念!)


*演奏時間が81’から71'と大幅に短くなっています




クルト・マズア, Kurt Masur

New York Philharmonic
[TELDEC] 1994-4


3年前に亡くなった日本でもおなじみのマズアがニューヨークフィルの音楽監督時代のマーラー9です。

第一楽章
第一主題から第二主題への流れは一般的、その後半からは抑揚を強め反復は切れ味が良いです。第三主題で一転して展開部は暗いのですが速めで、小気味好い出し入れが良い流れを作ります。再現部は穏やかです。
第二楽章
主部主題レントラーは軽量、第一トリオは速いです。第二トリオで穏やかになり、後半は速め主体の出し入れから穏やかにまとめます。
第三楽章
主部主題は切れ味よく軽快に、第二トリオの静的動機が繰り返され中間部に入ると細かなやりとりからラストは激しい締めくくりです。
第四楽章
第一主題は情感強く入ります。第一エピソードでは静的暗転から叙情をたたえる流れになります。第二エピソードは哀愁、そこから山場を作るとコーダへ向かう準備になり、主要主題の変奏と『亡き子をしのぶ歌』引用からは美しさを見せてpppに終息します。


速めの流れに切れ味でコンパクトな印象が残ります。ライトウェイトのマーラー9です。
決して悪くはないのですが…







全集物を中心にまだ残っているようですので、また追記すると思います。^^;



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ダニエル・ハーディング / スウェーデン放送交響楽団 の マーラー交響曲第9番 は期待を裏切る素晴らしさ


ダニエル・ハーディング (Daniel Harding, 1975/8/31 - )
今や中堅どころとなったハーディングですが、個人的にはコンサートであまり当たった記憶がありません。一昨年のパリ管とのマーラー5番も今ひとつ。でもマーラー10番のCDは素晴らしいので、この9番にも期待して予約購入しました。

ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。

【後日記】『マーラー交響曲第9番 : 65CD聴き比べ』にも追記しました。




■ 第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
■ 第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
■ 第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
■ 第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。

期待を裏切る素晴らしさ。重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
近年ちょっとした でもクセの強いアゴーギク*が目立つ気がしていますが、ここでは違いましたね。一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。おすすめの一枚です。

*昨年発売のThe Wagner Projectや上記パリ管とのライヴ



本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、実は2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。

Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)

流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 60CDを聴き比べてみました [#2 / CD:21-40]

マーラーの6番、パワープレイが嵌れば言うことなしですね。一方で冷めたクールさもありで楽しめます。好きなので色々なパターンで気に入った演奏が多いかもしれません。
今回は変化球と魔球の二人、N.ヤルヴィとH.シェルヘンを含めた20CDのインプレです。ストックはそれほどありませんが、これで40CDになりますね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています。(普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #3回 60CD
 #0:4CD バルビローリ聴き比べ
バルビローリ[x4]
 #1:16CD
バーンスタイン[x2 ★☆], アバド[x4 ★☆], カラヤン[x2 (★)☆], ハイティンク[x2 ★], ゲルギエフ, 小澤征爾, 井上道義[x2 ☆], プレートル[㊟], ワールト
 #2:20CD 本投稿
ヴァンスカ, ダーリントン[☆], ラトル[x2 ☆], P.ヤルヴィ[☆], N.ヤルヴィ[x2 ㊟], ジークハルト, セーゲルスタム, パッパーノ, ザンダー, ショルティ[☆], ヴィト, シェルヘン[㊟], ズヴェーデン, ノット[☆], J.サイモン, アブラヴァネル, パク・ヨンミン
 #3:20CD
テンシュテット[x4 ☆], シャイー[x2], ヤンソンス[x2], MTトーマス, ハーディング, 朝比奈隆[x2 ㊟], スヴェトラーノフ[x2 ㊟], セル[x2], バルシャイ, 井上喜惟, 山田和樹, クルレンツィス[★]



【後日記】ヴァンスカのマーラー6が出たので追記です
オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä

Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-11


現在音楽監督を務めるミネソタ管弦楽団(Minnesota Orchestra)とのマーラー5番はややクセ者的な印象もあったのですが、チクルス第二弾の6番はどうでしょう。

第一楽章
スローで抑えめの第一主題、モットーは美しくアルマの主題ではそれを広げる様に華やかですがスローのアゴーギクが気になりますね。反復後の展開部も力強さはあっても冷静さが常に背後にいます。再現部では少し躍動感が感じられるかもしれません。
第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題・副主題ともにごく普通の優美さ、中間部も流れは同じですが明るさが現れますね。美しい緩徐楽章ですが個性は薄いです。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は客観的で迫力や興奮を否定しているかの様です。クールとは違いますね。トリオは優美なスケルツォですが、それ以上でもありません。
第四楽章
序奏は緊張感の漂う素晴らしい流れかと思いきやスローモッソリに落ち込みがっかり。長い序奏から提示部の第一主題と経過句は勇壮ですがアゴーギクを殺して抑え込み、第二主題も同様です。展開部は序奏と同じく揺さぶりの効いた前半パートとフラット単調さの行進曲以降の組合せです。再現部も同じですが、それでもこの楽章が一番良いかもしれません。


よそよそしく掴みどろこの薄いマーラー6番です。この曲は興奮かクールさかですが、はっきりしないのはどうも…好みの問題になるかもしれませんね。
シベリウス・アカデミー同期生サロネンやサラステのマーラーの様にはいかない様です。




ジョナサン・ダーリントン, Jonathan Darlington


Duisburger Philharmoniker
[Acousence] 2008-6/18.19


このブログで超ご贔屓の管弦楽セット、ジョナサン・ダーリントン(Jonathan Darlington)とデュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団(Duisburger Philharmoniker)です。マーラーは第5番でも素晴らしい演奏を残していますね。→ このブログ内のダーリントンの投稿記事

第一楽章
重厚オーソドックスな第一主題の行進曲、そしてアルマの主題(第二主題)は情熱溢れる美しさです。展開部の二つの主題は重厚ですが、挿入部では不安感を隠す様なスローの静寂さに。再現部も響の良い華々しさです。
第二楽章
アンダンテを採用しています。緩やかで優しさを感じる第一主題に哀しみをたたえる様な第二主題、中間部はその流れから山場へ向かいますが全体として穏やかさを重視した緩徐楽章です。
第三楽章
従ってスケルツォ、主部は第一楽章の回帰的で華やかさ。トリオはスケルツォらしい優美さになります。
第四楽章
序奏は極端な揺さぶりは使いませんがややスロー。提示部第一主題は跳ねる様なリズムで第二主題に続きます。この曲の難解パート展開部ではスローとコントロールの効いた激しさで落ち着いた表現です。再現部でも同様に過度の興奮を避けながら山場を盛り上げます。コーダは暗さ控え目、ラストの一撃は約束通りです。


重厚にして華々しい第一・四楽章、穏やかさと優美さの第二・三楽章、このコントラストの付け方がダーリントンの音楽ですね。Liveですが、録音も素晴らしくクールなマーラー6番でおすすめです。




サイモン・ラトル, Simon Rattel (2録音)

ラトルは1987年と1989年に同曲を振っていますが、あまりに落差が大きいです。



(#1)

Berliner Philharmoniker
[BPH] 1987-11/14.15


ラトルが初めてBPOを振ったライヴ、それがこのマーラー6番でした。その15年後にBPO主席指揮者・芸術監督に着いたわけですね。

第一楽章
切れ味と緊迫感の第一主題とモットー、そこからコントラストよく第二主題を華麗に奏でます。速めの流れと相まって締まりある演奏が爽快です。
第二楽章
アンダンテの主要主題は優美さが心地よく副主題も哀愁感がいいですね。スロー静音パートも透明感があり、中間部の広がりに心地よくつなげます。山場は哀しみが溢れ、グッと来ますね。
第三楽章
落ち着いた中に切れ味良い主部主題、変拍子を生かした洒脱なトリオはまさにスケルツォです。後半は出し入れが強くなり情熱が伝わりますね。
第四楽章
序奏は揺さぶり少なく、第一主題を王道的に締まり良く、経過句のhrも朗々と鳴らすと第二主題は軽快そのものです。展開部・再現部もこの楽章の持つ激しさと華々しさのコントラストがよく、大きな見晴らしが快感です。ラスト一撃ではフライングがありますがBPOのご愛嬌w


ピッと張ったテンションが心地よい流れを作るマーラー6。不要な揺さぶりを排した速めのテンポと切れ味がマッチしました。
初ライヴでラトル得意の陰影付けは薄まり、カラヤン呪縛のBPO色が強いかもしれません。好きな一枚です!!

【後日記】2018年6月19・20日のサイモン・ラトル、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団常任指揮者最後のコンサートの演目が「マーラー交響曲第6番」でした。この最終楽章は素晴らしく一聴の価値があると感じました。→ インプレです




(#2)
City of Birmingham SO
[EMI] 1989-12/14-16


上記BPOの2年後録音、ラトルが鍛え上げたバーミンガム市響とのマーラー6番です。

第一楽章
提示部第一主題は重厚、モットーで抑えてアルマの主題は優美ですが、反復でなぜか間延び感が残ります。展開部・再現部でもスローパートでの緩さが気になりますね。やや締まりに欠ける感が強いです。
第二楽章
アンダンテですね。主部の二つの主題はスローでふんわり・もわ〜っと穏やか、掴み所がわかりずらいです。中間部以降も同様の流れで、山場以外は強烈な間延び感です。(汗)
第三楽章
スケルツォ主要主題は切れ味よく、ここまでで一番良い流れです。トリオもスケルツォらしい優美さがいいですね。
第四楽章
長い序奏は混沌さよりシャープさで、アレグロ・エネルジコからは流れよく提示部第一主題に入ります。そこから経過句、第二主題は特出はありませんが安心感がありますね。ただ展開部への繋ぎで緩さを見せる様に、その後もスローの間延び感が顔を出してしまいます。アップテンポの騎行などは締まっているのですが。
コーダでは三発目のハンマーが聴こえます。


BPOとは打って変わったスロー基本。そのスローが靄った見晴らしの良くないマーラー6です。アゴーギクや管楽器も処々で今ひとつ感が残りますね。

この2年の大きな違いは?? こちらは手兵ですからラトルのマーラー6、2年前はBPOの個性が出たマーラー6ということになるでしょう。




パーヴォ・ヤルヴィ, Paavo Järvi


Frankfurt Radio Symphony Orchestra
[major BD] 2013-6/29,30


現N響首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィが、当時首席指揮者だったフランクフルト放送交響楽団(現:hr交響楽団, hr-Sinfonieorchester)を振ったBD盤(第5番とカップリング)です。

第一楽章
やや速めで、行進曲は落ち着いて、アルマの主題は広がりを大きく進みます。展開部の穏やかさと再現部の切れ味も良いですね。
第二楽章
主部主題はテンポを抑えて適度重厚さ、トリオは一転スローで抑えめのシンプル。パーヴォも踊るスケルツォです。
第三楽章
アンダンテは主部の二つの主題はスローで澄んだ美しさ、同じ流れで中間部を超えると叙情高く山場を盛り上げて静かに締めくくります。美しい緩徐楽章ですね。
第四楽章
序奏は鬱でスローの揺さぶりからアレグロ・エネルジコで走ると、提示部行進曲は切れ味良く経過句を含めて進み、第二主題もシャープです。キーとなる展開部はスローの美しさと切れ味の表情変化を見事に付けて、行進騎行ではアゴーギクを振って来ます。再現部も同様に出し入れの良い流れを作り、コーダを鎮めてラスト一撃です。


切れ味の鋭さと美しい穏やかさのコントラスト、見晴らしの良いマーラー6ですね。広がりがあるBDの録音の良さも大きく寄与しているでしょう。
(ダイナミックレンジの広い録音の良さでハンマーの音がこんなに良く聴こえたのは初めてですね。逆にラスト一撃が弱く感じて弱点に思えるくらいですw)

同じ放送局系であるN響をベルリンで振った(2017年2月28日)演奏より一枚上手ですね。




ネーメ・ヤルヴィ, Neeme Järvi (2録音)

息子パーヴォとは違う、速さとメリハリの父ヤルヴィの本領発揮のマーラー6ですね。
ネーメの二つの録音、第一楽章提示部(再現有り)は20'程度でとても速い演奏です。参考にその演奏時間を並べておきますね。
      RSNO 日フィル
 第一楽章 20:01 20:52
 第二楽章 11:32 11:41
 第三楽章 13:37 13:05
 第四楽章 27:07 27:29




(#1)

Royal Scottish National Orchestra
[CHANDOS] 1992-11/8,9


ネーメ・ヤルヴィが1988年にロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者を退いた後の演奏ですね。現在は桂冠指揮者を務めます。

第一楽章
第一主題の入りから驚きのハイスピードです。アルマの主題も速くて優しさよりもそっけなさです。(笑) 展開部の挿入部ではスローにテンポを落とし、再現部で再びハイスピードに激しさを加えます。
第二楽章
スケルツォ主部主題も速くてキレキレ、トリオでは美しさを見せ揺さぶりをかけながら小ロンドCパートへ入ります。激しい出し入れが切れ味を感じさせてくれます。
第三楽章
やや速めから標準的になり、緩徐楽章の色合いを残すように哀愁の音色を奏でます。山場の盛り上げも美しく見事ですね。
第四楽章
王道系です。序奏は程々の揺さぶり、提示部行進曲は華やかさと切れ味、経過句から軽妙な第二主題につなげます。展開部は出し入れと陰影強くメリハリの効いた、このパートらしい切れ味が光ります。再現部でもその良い流れをつなげてコーダからラスト一撃です。


第一楽章、こういう変化球は大好きですね。速さのN.ヤルヴィの面目躍如。そして全体を貫く切れ味と怒涛のマーラー6番です。
演奏の切れ味も素晴らしいですし、音質もCHANDOSですから☆の方が良かったかな!!
(☆と㊟は紙一重ですw 個性派・クセ者でも楽しめるものが㊟ですね)





(#2)
日本フィルハーモニー交響楽団
[JPS] 2000-6/23


RSNOとの8年後、ネーメ・ヤルヴィが現在 客員首席指揮者を務める日フィルを振った演奏です。RSNOとの比較で聴いてみました。

第一楽章
第一主題はRSNOよりはテンポは遅いですがそれでも速め、アルマの主題はやや速め程度の提示部、展開部も標準的な演奏で基本速め、再現部は迫力で暴れ気味になりラストは突っ走ります。再現部はこちらの勝ち!!
第二楽章
スケルツォ主部主題もやや速め程度になり、トリオ以降も特徴的な揺さぶりは減っています。
第三楽章
アンダンテは速めで感情移入を避けた淡白さです。もちろん後半山場は迫力ですが全体的に美しさや哀愁は弱いです。
第四楽章
序奏は所々で暴れます、そこから提示部行進曲から経過句へは疾走、第二主題は軽快ですが弱い感じ。展開部は揺さぶりを生かして、厄介なこのパートをコントラスト良く見晴らしを付けます。続く再現部が素晴らしく、適度に暴れながら盛り上げが見事です。コーダのスローは影を感じさせる流れからラストの一撃です。


RSNOに比べると前半楽章のテンポも"速め"くらいで、後半の王道さも不足気味です。それでも充分に一癖モノを楽しめるマーラー6。
日フィルも好演で、RSNO盤を知らなければ㊟印です。




マルティン・ジークハルト, Martin Sieghart

The Arnhem Philharmonic Orchestra
[EXTON] 1994-3/19


交響曲第5番では残念な演奏だったオーストリア人指揮者ジークハルトと常任揮者を務めていた時のアーネム・フィルです。

第一楽章
第一主題は重厚勇壮で、アルマの主題は情感深い良い流れの提示部です。展開部も締まりのある第一主題からスローの挿入部へ重厚さの余韻を残す様に入り平安な流れにつなぎます。再現部は提示部の回帰で、コーダからフィニッシュも素晴らしい見晴らしの良さです。
第二楽章
スケルツォ主部の主題は第一楽章第一主題の流れを汲んで締まりが良いですね。重厚さをベースにトリオで一息つく感じです。マーラーの指示通り「重々しく」です。
第三楽章
緩やかで穏やかな第一主題、哀しさ覚える第二主題、その緩徐の流れから後半の山場を盛り上げます。スローさで時折気がぬける様な気配は気になりますが。
第四楽章
あまり変化を付けない序奏で入ります。提示部第一主題は勇壮、第二主題では穏やかに流れます。展開部コントラストの強い演奏で、アゴーギク・ディナーミクを振って濃い演奏です。スローの流れが素直に受け入れられないパートもありますが。再現部もスローから迫力で山場へ進み、輝かしい管楽器パートからコーダへ入り、ラストの一撃を迎えます。


90'を超えるスローな重厚さを全面に押し出したマーラ−6番です。もう少しスローさを抑えれば全体が締まったかも。また、録音・ミキシングでの作品作りも強く感じ、それもオケを助けている気がしますね。




レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam

Danish National Radio Symphony Orchestra
[CHANDOS] 1990-9/24-26


フィンランドの怪人セーゲルスタムは個人的には現代音楽家の印象の方が勝ちますね。首席指揮者(1988–1995)を務めたデンマーク放送交響楽団(DR放送交響楽団)を振っています。第5番では素晴らしい演奏を見せてくれましたね。

第一楽章
行進曲主題はシャープに、アルマの主題はディナーミクで優しさを見せますが両者クセはありません。特徴的なのは展開部・再現部のスローパートを強調している事でしょう。
第二楽章
スケルツォ主部主題は第一楽章の印象を継続する様に進み、ここでもトリオをスローに明確に落として優美さを強調します。
第三楽章
第一主題は柔らかな音色で、第二主題では色合いを哀しみに変えます。優しさの中から山場を作るマーラーの緩徐楽章らしさに溢れたアンダンテになっています。セーゲルスタムは山場を押さえ気味でいいですね。
第四楽章
序奏は揺さぶりは少ないながら、不安感を掻き立てて提示部に流れ込みます。行進曲から経過句を経て第二主題まで冷静に奏で展開部へ。ここでもスローをうまく使い、過度の興奮や重厚さはありません。再現部もコーダも冷静です。気になったのはコーダでハンマーの様な音を感じた事、そうであればハンマー三発演奏ですが。


シャープさとスローの出し入れ(Agogik)がセーゲルスタムらしいですね。興奮と重厚さを排して、クールでスマートなマーラー6です。好きな盤ですね。
突撃型演奏が好きな方には向かないかも。




アントニオ・パッパーノ, Antonio Pappano

Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
[EMI] 2011-1/8,10,11


パッパーノが音楽監督を務める聖チェチーリア音楽院管弦楽団を振ったマーラー6です。

第一楽章
第一主題はスローにして重厚、モットーで抑えると第二主題アルマの主題を華やかに奏でます。展開部・再現部は強弱コントラストを生かして派手で壮大ですね。管楽器の華やかさが光ります。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は重厚、変拍子のトリオは優美でまさにスケルツォ。この二つの旋律が小気味好く、メリハリのある流れを作っていますね。
第三楽章
抑えの効いた主要主題はスローに美しく、イングリッシュホルンの副主題も同様に美しい流れを作ります。中間部以降も情感強い山場を含めて、美しい緩徐楽章になっていますね。
第四楽章
長い序奏は力強さと暗さのコントラストを付けて明瞭に、アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は抑え気味の行進曲から経過句で盛り上げると、軽快な第二主題へと見晴らしの良い流れを見せてくれます。展開部・再現部は行進曲や騎行を切れ味よく派手で劇的に、コーダは暗く沈みラストの一撃へ繋げます。


見事なライヴ、派手で華々しい明瞭なマーラー6。気持ち良さが欲しい人にはこれでしょう。☆を付けたくなります。




ベンジャミン・ザンダー, Benjamin Zander (2録音)

英国人指揮者ザンダーは1979年に自ら立上げたセミプロのオーケストラ、ボストン・フィルハーモニー管弦楽団(小澤征爾さんのいたボストン響 BostonSymphonyOrchestraとは違います)を率いてますね。コンサートの前にはプレトークで、毎回コンセプトを解説しているそうです。




(#1)
Boston Philharmonic Orchestra
[Carlton] 1994-3


その手兵ボストン・フィル(略ならBPO?笑)を振ったマーラー6です。

第一楽章
勇壮な第一主題ですがモットー弱音でスロー化、アルマの主題では広がりのよい美しさで対比がいいですね。展開部のスローパートを強調して間延び感、それ以外はややありきたりで少々退屈な第一楽章です。
第二楽章
スケルツォです。主要主題はキレはありますが重心が軽め、トリオもやや速めで軽量。あっさり過ぎかも。
第三楽章
主要主題、副主題共に適度に優美ですがフラット気味、ぬるま湯です。中間部以降も変化は薄いです。
第四楽章
陰鬱薄めの序奏から提示部第一主題は流れに乗りますが抑揚が不足気味、第二主題でも表情変化は適度ですね。展開部もモヤモヤしています。再現部の締まりが一番いいかもしれません。


モワッとしたマーラー6です。オケもイマイチで気持ちが入っていません、残念ながら。
ハンマー三発でしたね。





(#2)
Philharmonia Orchestra
[TELARC] 2001-5/22-25


上記の7年後、フィルハーモニア管を振ったマーラー6です。興味深いアルバムで、第四楽章はハンマー3発(初期稿)と2発(改定)の二つのヴァージョンを残しています。また全楽章の解説コメントCD付きで、どうも解説をしないと気が済まない?様ですw (マーラー5番でも同様に解説語りCD付きでしたね)

第一楽章
重厚な第一主題からアルマの主題は華々しくスロー重視の提示部です。展開部以降も演奏の締まりは良いのですが、全体のスロー感が今ひとつで集中力が途切れます。
第二楽章
スケルツォ主要主題は締まりを感じます。トリオ後半もうまく変化を付けていますね。堂々としています。
第三楽章
主要主題は少し抑揚を付け優美で前楽章とのコントラストがいいですね。副主題はスローを生かした哀愁さがうまいです。中間部以降も適度な揺らぎが生きた展開です。
第四楽章
序奏は陰影薄めアゴーギクは振っていますがスローが気になります。第一主題から第二主題への流れや展開部以降もボストンフィルと似ています。スローが気になるもののオケの締まりが全然上でその分が楽しめます。


スローが足を引っ張るマーラー6です。第二第三楽章は楽しめますが、特筆はと問われれば…??
何よりオケの差を感じましたね。




ゲオルク・ショルティ, Sir Georg Solti


Chicago Symphony Orchestra
[DECCA] 1970-3,4


言わずと知れたショルティが育て上げた手兵 シカゴ交響楽団とのマーラー6ですね。

第一楽章
速さで突き進む第一主題、派手に奏でるアルマの主題、乗っけからまさにショルティ/シカゴ響炸裂です。展開部も勇壮さメインに柔らかな響のコントラスト、激しさを増しながら再現部へ突入するとコーダを派手派手しく納めます。
第二楽章
第一楽章の流れをそのままに主要主題は速め迫力、怒涛の進撃です。トリオは優美なスケルツォに変化させコントラスト付けが上手いですね。
第三楽章
アンダンテらしい優美な流れの主部二つの主題、中間部では明るさと美しさから大きく山場を作ります。厚いアンダンテ。
第四楽章
序奏は陰鬱さは薄く重厚中心に変化を与えています。提示部第一主題と経過句は迫力の行進です。第二主題もその流れのまま続きます。展開部・再現部も緩急はありますが突撃性大重視です。3発目のハンマー?の様な音がしますが。


いかにもショルティ/シカゴ響、怒涛の迫力のマーラー6ですね。とにかく勇壮な戦闘シーンです。




アントニ・ヴィト, Antoni Wit

Polish National Radio Symphony Orchestra
[NAXOS] 1992-12/15-19


カラヤンの助手を務めていたポーランド人指揮者ヴィトですが、何と言ってもNAXOSで数多くの録音を残している事で知られていますね。そのヴィトが1983-2000年の間音楽監督を務めたポーランド国立放送交響楽団との録音です。

第一楽章
第一主題は勇壮、モットーで静まりアルマの主題は華やかです。展開部ではスローパートを強調しているのが特徴的ですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は抑えめで、トリオはスローに落とします。最後の主要主題では迫力を見せますが、楽章としては控えめの感じがしますね。
第三楽章
主部の二主題は穏やかそのもの、中間部もやや抑え気味に山場を作ります。
第四楽章
序奏は静的、第一主題は行進曲を明確にしていますがやや弱め。展開部・再現部共にコントラストは弱めです。


穏やかさが印象に残るマーラー6ですね。迫力もあるのですが強烈さは弱いですね。炭酸の弱いコーラみたい?!




ヘルマン・シェルヘン, Hermann Scherchen


Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[MEMORIES] 1960-10/4 =mono=


さてシェルヘン先生です。ライプツィヒ放送交響楽団(現:MDR交響楽団)を振ったマーラー6ですが、大カット短縮演奏です。よく言われるのは第5番ですが、こちらも負けず劣らずの狂気を味わえます。(MEMORIESから再発されましたね)

第一楽章
第一主題・第二主題共に猛烈なハイスピードで管楽器はもつれ気味。提示部の繰り返しはもちろんカット!! 展開部・再現部も早回しで聴いているみたいですw
第二楽章
アンダンテを持ってきました。ここでは特別大きな異常性を見せませんね、中間部入りと山場でいきなりテンポアップは凄いですがそのくらい。シェルヘンは緩徐楽章は猛スピード化させない傾向ですね。(第5番では逆に超スロー化しています)
第三楽章
爆速スケルツォです。小ロンド形式で主要主題とトリオを繰り返すわけですが、そんなかったるい事しません。当然カット!! あっという間に終了、演奏時間は約半分w
第四楽章
序奏はコントラスト良く、アゴーギクが強いくらいです。まぁ一般的には充分"変"ですが。提示部第一主題からスピードアップ、でも第二主題も含めてそれほど過激ではありません。展開部はテンポは揺さぶりの強い程度の感じですが、後半はカ〜ット!! なのでハンマーは一発になっちゃいますw。再現部も似た流れで中盤をカット!! でもコーダはごく普通ですね。


爆速、奇怪、カット短縮のマーラー6です!!
詳細は楽章インプレの通り。音は劣悪ですが、一度聴いてみてほしいですねw




ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン, Jaap van Zweden

Dallas Symphony Orchestra
[dsolive] 2013-3


オランダのズヴェーデンはコンセルトヘボウ管のコンマスから指揮者になっています。来年2018年からニューヨークフィルの音楽監督に就任が決まっていて、早くも3月には新たな手兵を率いて来日しマーラー5番を演奏しますね。(もちろんチケット購入済みですw)
これは音楽監督を務めたダラス交響楽団を振ったマーラー6になります。

第一楽章
第一主題は少々まとまりの悪さと管楽器も危なげですがクセはありません。モットーからアルマの主題は優美です。展開部も再現部もバランスの良い音出しを感じます。
第二楽章
スケルツォです。主部主題からトリオもクセはなく安心の流れで切れ味もありますね。見事ですが何か一つ個性が欲しい感じです。
第三楽章
静的で美しいアレグロ。主部の主題も透明感があり、中間部でも牧場の広がりの様なのびやかさを見せます。本流の演奏ですね。
第四楽章
序奏の揺さぶりや陰鬱感は弱めですが良い流れで、第一主題から経過句も行進曲らしい切れ味で進みます。その流れからの第二主題も爽やかですね。展開部・再現部でも処々で間延び感はありますが山場を大きく奏でて、行進曲や騎行を勇壮に進みます。特徴に欠けるのは残念ですが素晴らしい演奏です。


音も良く クセも無く きれいにまとまったマーラー6です。その分、指揮者の意図や個性を楽しみづらくワクワク感がありません。初めて聴くならおすすめでしょう。




ジョナサン・ノット, Jonathan Nott


Bamberger Symphoniker
[Tudor] 2008-10/27-31


現東響の音楽監督であるジョナサン・ノットが16年間首席指揮者を務めたバンベルク交響楽団とのマーラー・チクルスからのマーラー6です。ノットは現代音楽で著名なアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督も務めていた事もあり、現代音楽を積極的に取り上げるので好きですね。

第一楽章
速い第一主題、アルマの主題も優雅ですが速めです。展開部ではスローとのコントラストをうまく付け、再現部では激しさを増して来ます。コーダも第一主題を陰影強く、ラストは華々しさです。
第二楽章
スケルツォです。第一楽章の第一主題の流れを感じる主部主題で、切れ味抜群ですね。トリオでは一転させて優美そのもの、見晴らしと締まりの良さが感じられます。
第三楽章
アンダンテの主部二主題は緩やかな優しさの緩徐楽章です。マーラーの緩徐楽章につきものの山場も大きく奏でます。ただ、流れのキーになる中間部に明確さが欠けるのが気になり残念です。
第四楽章
個性が出やすい序奏はあまり弄りません。切れ味の行進曲から心地よい第二主題の提示部。展開部は落差の大きなコントラストが特徴的に付けられます。この辺りがノット節とでもいう感じでしょうか。再現部前半を緩く、第一主題再現からは一気に走り、コーダは暗く沈めます。


コントラストと切れ味のマーラー6です。指揮者とオケが流れの強弱・遅速表現を共有していることがわかります。陰影が強く好みが分かれるかもしれませんが主張が明確で好きですね。アンダンテ中間部は見逃しましょうw




ジェフリー・サイモン, Geoffrey Simon

Northwest Mahler Festival Orchestra
[NWMF] 1998-7/19
(自主制作盤の様で、残念ながらamazonでは見つかりません)


オーストラリア人指揮者J.サイモンは米国でチェロをシュタルケルに師事、指揮を英国で習って米オケで活動していました。現在は英国を活動拠点に、レオポルド・ストコフスキー協会の会長でもあります。
米アマチュアオケのノースウェスト・マーラー・フェスティヴァル管弦楽団の指揮者兼顧問時代の演奏で、同音学祭1998年のLiveです。

第一楽章
速い第一主題をモットーでスローダウンさせ、その流れにアルマの主題を乗せて行きます。ありそうで無いうまい流れですね。展開部では速い流れとスローを対比良く見せてくれます。
第二楽章
スケルツォも速めの主要主題で第一楽章との繋がりがいいですね。(議論と好みはあるでしょう) トリオは適度に落として美しくメリハリがあります。
第三楽章
主要主題と副主題では一転してスローで甘美です。中間部前で哀愁を見せて中間部では明るさを広げラストの山場を盛り上げます。が、この展開は楽器の実力が出るので厳しいかも…
第四楽章
序奏はスローで陰影の少ない、陰影深くは無理でしょうが、流れです。第一主題は落ち着いて適度なテンポですがHrは苦しい、第二主題はそのままのテンポで続きますが揺さぶりがうまく付けられていますね。展開部も王道的な抑揚を付けて表情豊かです。二発目ハンマーは壊れた様な音がしますw 重厚&パワー王道的流れですね。


基本は速さでスローとのコントラストを見せるマーラー6です。オケの技量はHrの酷さを頂点に次元は低いですが最終楽章は気持ちが伝わります。それがアマやユースのオケの楽しさですね。^^/
録音も今ひとつでrec.レベルが低く大きくヴォリュームを上げる必要がありましいた。




モーリス・アブラヴァネル, Maurice Abravanel

Utah Symphony
[Vanguard] 1974-5


(入手可能なら全集で持っていてもアブラヴァネルは面白いですね)

アブラヴァネルは第二次大戦でユダヤ迫害を逃れてオーストラリアに渡った後、米国ユタ州でユタ響の発展に寄与していますね。ユタ交響楽団を30年以上(1947–1979)に渡り磨き上げたアブラヴァネルのマーラー6です。

第一楽章
やや速めの第一主題はモットーでペースを落としてアルマの主題で広がりを見せます。現在では絶滅種の繰り返し無しの提示部です。それ以外はクセの少ない第一楽章ですね。
第二楽章
スケルツォも速く入り、約束通りにトリオで優美にスロー化させます。流れは自然体で肩が凝りません。
第三楽章
優美な主要主題から副主題は哀愁を感じて素晴らしい流れです。中間部で明るい光を照らして山場を盛上げて納めます。感情移入を避けているのですがグッとくるものを感じます。
第四楽章
序奏の陰影は少なめ、第一主題の適度な興奮から第二主題が穏やかな風を吹き込みます。展開部も適度なテンポ変化を付けて気持ち良いですね。過度の興奮を避けて流れ重視の最終楽章です。


アブラヴァネルらしいテンポ変化とナチュラルな演奏がマッチして心地良いマーラー6です。力む様な興奮を排してオケの馬脚を表さない流れかもしれませんが、アンダンテでは心を打たれるものがあります。

㊟印を付けた第5番の様な変化球とは対極にある自然体の演奏で興味深いですね。でも第一楽章提示部の反復無しver.は今や貴重かも。一聴の価値ありです。




パク・ヨンミン, Young Min Park

Bucheon Philharmonic Orchestra
[Sony] 2015-9/8,9


ギーレンに師事し、ラ・フォル・ジュルネ金沢でも来日経験のあるパクが2015年から音楽監督を務めるプチョン・フィルハーモニック・オーケストラ(1988年創設)を振ったマーラー6です。

第一楽章
第一主題は勇壮、アルマの主題は伸びやか優美な提示部です。基本は真正直な演奏ですが、展開部のスローは間延び感、再現部もキリッとした切れ味が欲しい感じです。
第二楽章
アンダンテを持って来ました。主部の二主題は穏やかですが、全体スローさの中に気持ちが伝わってこないもどかしさを感じます。
第三楽章
主部主題、トリオ共にまとまりは良いのですが、角を落とした様な何か一つ欲しい流れです。
第四楽章
序奏は派手さとコントラストが効いています。提示部第一主題行進曲は流れよく入るのですがスローの緩さが出ますね。第二主題も印象は薄いです。とは言えこの楽章の展開部・再現部が一番スパイスが効いています。まぁそう言う曲ですが。


スロー基本で安全運転のマーラー6。音も良くミスもクセもないのですが、情熱や個性といった訴えかける何かが感じられません。最終楽章展開部以降が元気になりますが、時すでに遅しかな。
(スローの揺さぶりはギーレン仕立て?!w)







次は数枚ストックしているテンシュテットをメインにインプレしようと思っています。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 100CD聴き比べです [#4 / CD:41-50]

第4回のマーラー9番インプレは、ヤンソンスやシャイー, ジンマンといった実力派、それにシェルヘンとマデルナの変化球師弟コンビで計10CDです。冒頭はコンサートにも行ったラザレフ/日フィル盤です。
これで聴き比べも50CDまで来ましたね。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 100CD
 #1:10CD
バーンスタイン[x5 ★☆], アバド[x2 ★☆], ラトル[x2 ★], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x3], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆], 小林研一郎
 #3:10CD
インバル[x3], ドゥダメル, サラステ[☆], バルビローリ[☆], ジュリー二, ドラティ[㊟], ムント, 朝比奈隆
 #4:10CD 本投稿
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[★☆], ジンマン, バルシャイ, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:10CD
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x2 ☆㊟], ノリントン, エルダー, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ



アレクサンドル・ラザレフ, Alexander Lazarev

日本フィルハーモニー交響楽団
[JPS] 2013-10/27


日フィル首席指揮者時代(現:桂冠指揮者兼芸術顧問)に東京芸術劇場で振ったマーラー9ですね。このコンサートには行っていました ▶︎▶︎ インプレです

第一楽章
第一主題はやや速め、第二主題後半盛上げて反復、テンポを上げて第三主題に繋げます。やや速めながら癖のない提示部です。展開部はやや速めの流れですがパワーパートと緩やかさとのコントラストを付けています。
第二楽章
主要主題・第一トリオはやはり速めでシャッキリ感があります。第二トリオはトーンダウンさせますが楽章としては速い流れに変わりありません。
第三楽章
主要主題は標準的テンポ・表現になり、副主題はやや穏やかに現れます。中間部は緩徐ですがややテンポを揺さぶっています。ラストはマーラーの言う通り「きわめて反抗的に」です。
第四楽章
主要主題は暖色の優しさですね。やっぱり速めで、第一エピソード以降も色濃く哀愁美ではありません。しかし第二エピソード後半からは一転スローダウン、ターン音型を美しく生かしながら消え入ります。


速さとコントラストでシャキッとしたマーラー9ですね。悪くありませんが箱庭的コンパクトにまとまった感じです。速めの設定がそうさせているかもしれません。

上記コンサートのインプレとのギャップが面白いですね。タクトが降ろされるまでの長〜ぃ"間"が残されているのは嬉しいです。(CDはエンジニアが音作りに参画しているのでホールの音構成とは違ってきて当然ですね)




マリス・ヤンソンス, Mariss Jansons (2録音)


(#1)
Oslo Philharmonic
[SIMAX] 2000-12/13,14


ラトビア人指揮者ヤンソンスがオスロフィルの首席指揮者最後の年にマーラー9を振った録音ですね。

第一楽章
第一第二主題と反復、第三主題は王道の流れで心地よく展開部に入ります。展開部は緩急のコントラストを強調してメリハリが効いていますね。再現部でも締まりのある流れですね。
第二楽章
主部主題、第一トリオ、第二トリオ、共にクセのない流れで構成されて安心感がありますね。レントラー的リズム感は弱いです。
第三楽章
主部の二つの主題はリズムよく、第二トリオから中間部は哀愁を漂わせて最後は激しく結びます。流れは本流的で安心感はありますね。
第四楽章
序奏・主要主題、第一エピソードは本流的、第二エピソードは速めです。速い流れから山場を作り、『亡き子をしのぶ歌』引用からコーダは静的美しさです。


安定傾向が強く引き換えにワクワク度が低いマーラー9です。演奏はやや速め主体、切れ味はありますね。





(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR-KLASSIK] 2016-10/20,21


オスロフィルの16年後、現在ヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団とのマーラー9、昨年の録音ですね。

第一楽章
第一主題は緩やかに変わっていますね。そして第二主題への変化が滑らかながら強調されます。第三主題も大きく奏でて、展開部は陰影の大きさを出し入れよく進みます。演奏時間も2'以上長くなって、緩急の"緩"を生かしたスケール感が感じられます。
第二楽章
ここでも細かなアゴーギクとディナーミクでコントラストを付けて奥行きのある演奏へと変化しています。リズムも良い感じです。
第三楽章
主部から第一トリオはリズムと切れ味がドイツ風に感じますw 第二トリオからも広がりのある流れですね。
第四楽章
主要主題も程よい揺らぎが広がりを感じます。第一エピソードでの哀愁度は低めで第二エピソードは大きく奏でます。ラストは思いの外 暖かめです。オスロフィルより1'半くらい短くなっているのですが、ラストに感じる速めの流れと消え入り感不足は残念かも…


緩急のコントラストをうまく生かした演奏です。感じるのは ほっこり暖かな流れのマーラー9。そこが好みを分けるでしょうか。




リッカルド・シャイー, Riccardo Chailly

★☆
Royal Concertgebouw Orchestra
[DECCA] 2004-6/14-18


シャイーがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 首席指揮者最後の年の録音ですね。

第一楽章
序奏・第一主題はスロー、第二主題で暗く落として反復では雄大になります。第三主題を大きく奏でると展開部で暗転・重厚に、そして変化の激しい展開を見せます。再現部は大きく優美に入り後半からコーダは静的に美しく消え入ります。
第二楽章
レントラー主部主題はスローで硬い動き、第一トリオはスケルツォの様にゆったりとリズミカル、第二トリオは優美です。全体を通す3/4のリズムが生かされて心地よい楽章ですね。
第三楽章
主部主題はリズミカルに、第二トリオからの中間部を懐広く穏やかに、ラストは迫力です。
第四楽章
「愛の死」引用の序奏からvn主要主題は弦楽の美しさです。第一エピソードも暗く淀んだ哀しみと美しさでラストを予感させるかの様です。第二エピソードから山場を大きく描き、『亡き子をしのぶ歌』引用からアダージッシモのコーダへのppp静的美しさは素晴らしいですね。


完成度の高いマーラー9です。緩急バランスが良く、全パートに心地よさを感じます。




デイヴィッド・ジンマン, David Zinman

Tonhalle Orchester Zürich
[RCA] 2009-9/28〜10/1


1995–2014年にジンマンが音楽監督を務めたトーンハレ管とのマーラー9ですね。

第一楽章
スローで緩やかな第一主題、第二主題の翳りも薄めにして第三主題を高らかに山場を作ります。長い展開部は陰鬱に入りスロー基準に揺さぶりながら再現部の静かなコーダを結びます。
第二楽章
主部主題レントラーは華やかに、第一トリオも切れ味よく優美、第二トリオは穏やかに流れます。全体優美ですね。
第三楽章
主部主題はハイテンポで軽快に、中間部からは穏やかさですが後半山場とラストは力があります。
第四楽章
第一楽章を思わせるスローで緩やかな主要主題。第一エピソードは広がりのある流れですが情感は弱め、第二エピソードも同様ですね。緩い揺さぶりを経て『亡き子をしのぶ歌』引用からはpppの指示通りに静かに結びます。このラスト静音はスローが生きましたね。


感情移入を抑えゆったりとした、スローのマーラー9。薄味で緩さを感じてしまうかもしれません。




ルドルフ・バルシャイ, Rudolf Barshai

Moscow Radio SO
[BIS] 1993-4/13


イスラエル亡命後のバルシャイが初めてロシアに帰った時にモスクワ放送交響楽団を振ったマーラー9番です。

第一楽章
第一二主題は大きく、その後も緩急をうまく使い締まりの良い流れです。
第二楽章
マーラーの指示の様に粗野的なレントラー主題は重厚に進み、複合三部形式のBパートは力強い流れです。Cも穏やかですが強さを感じますね。山場は抑え気味ですね。
第三楽章
ここでも堂々たる前半を作り、中間部はやや速めに流します。ラストは重厚さを生かして迫力いっぱいです。
第四楽章
「愛の死」引用は重厚な美しさ、主要主題も重々しいです。第一エピソードも弦が重さを保ち、第二エピソードへは美しく繋ぎます。そこから大きく山場を作り、厚みのある流れからアダージッシモのコーダは静的で美しいです。アプローズは熱烈です。


威風堂々、コンサート受けしそうなマーラー9ですね。個人的には線の細さが欲しいきがしますが、この流れもありかもしれません。




ウィン・モリス, Wyn Morris

Symphonica of London
[IMP] 1978-5


マーラー解釈では名が知れた?くせ者の一人、好きなウィン・モリスです。オケは詳細が良く分からない「シンフォニカ・ロンドン」とのマーラー9ですね。

第一楽章
序奏・第一主題は違和感なく、第二主題も落差をあまり付けずに入ります。反復は穏やかから劇的に、重厚な展開部に入ります。再現部もバランスが良いです。クセのない代わりに特徴も薄い演奏ですね。
第二楽章
主部主題レントラーは正統に、切れ味良い第一トリオから穏やかな第二トリオにトーンを落とします。流れに少し緩さを感じます。
第三楽章
主部主題、第二トリオから中間部はここでも正統、ですが後半で少しスローになって暴れてくれます。間延び感は拭えませんがモリスの個性が垣間見れました。
第四楽章
主要主題、もちろん正統。第一エピソードは澄んだ音色を聴かせ、第二エピソードもその流れから大きな波に繋ぎます。『亡き子をしのぶ歌』引用からの美しさもキッチリ静音でコーダに繋げます。


正統ですが各楽章のパート構成にメリハリが薄く、何かスッキリしないマーラー9です。とてもW.モリスとは思えませんw
唯一の救いは第三楽章のラストですね。




ヘルマン・シェルヘン, Hermann Scherchen


Wiener Philharmoniker
[ORFEO] 1950-6/19


5番6番では本領を発揮したシェルヘン先生がウィーンフィルを振った盤です。9番はもう一枚BBC-SOとの録音(非正規盤)もありますね。

■ 第一楽章
とにかく速めのスタート。そしていつの間にかペースは戻ってきます。この独特のアゴーギク、シェルヘン教祖ならではでしょう。
■ 第二・三楽章
レントラーは全体的にもっそりですが、ここでも変化は激しいです。第三楽章はリズムよく流れ一般的な解釈で走り抜けますが、コーダは驚異のアッチェレランドを見せます。
■ 第四楽章
予想に反して標準的スローに入ります。微妙なアゴーギクを振ってはいますが王道的解釈でしょう。ラストも美しいです。


もちろん変則、よくもVPOをここまで手なずけたと言った感じでしょうか。とは言え5番6番に比べれば大した事はなく?、古いので音も最悪ですからシェルヘン先生に興味がなければ無用でしょう。私には大切なCDですw
ちなみにマーラー9番としては世界最速演奏(第一楽章単独も)になります。




ブルーノ・マデルナ, Bruno Maderna (2録音)

現代音楽家にして奇才指揮者マデルナのマラ9は3録音残されていますね。(所有は2CD)
指揮は上記H.シェルヘンに師事しています。師に倣ってARKADIA盤の第二楽章(13'21")は世界最速演奏になりますね。



(#1)

BBC SO
[BBC Legends] 1971-3/31


マデルナがBBC管を振ったマーラー9番です。

■ 第一楽章
提示部から感情の出し入れの激しさを見せます。長い楽章ですが出し入れの強さで聴かせますね。ラストは美しいです。
■ 第二楽章
テンポの速いレントラーで始まり、複合三部形式の各パートもアゴーギクやディナーミクも極端に振らずに軽快そのもの。山場はハイスピードです。
■ 第三楽章
ロンドも速めで入りメリハリのある演奏ですがやや落ち着きが足りない感じですね。中間部以降は緩やかな美しさも見せながら、ラストはハイスピード一体感をもって締めています。
■ 第四楽章
最終第四楽章も入りはやや速いですが不思議と違和感は感じません。第一エピソードも速く、第二エピソードは穏やかです。アゴーギクを細かく振って緩急を付けながら山場を盛り上げて、「太陽の輝くあの高みでの美しい日」引用を美しく奏でて消え入ります。(拍手の入りが早すぎ!)


Scherchenの影響を感じる緩急独特アゴーギク、それに追従するBBC-SOの演奏も良いですね。この流れもありで、好きな一枚。





(#2)
Orchestra Sinfonica di Torino della RAI
[ARKADIA] 1972-12/22


1年9ヶ月後、トリノ・イタリア放送交響楽団(現:RAI国立交響楽団, Orchestra Sinfonica Nazionale della RAI)を振ったマーラー9盤です。

■ 第一楽章
スローな入りですが、全体的には速くなりディナーミクも強めになっています。怪しげな雲行きといった気配でしょうか。
■ 第二楽章
テンポの速いレントラー、複合三部形式の各パートとも速くアゴーギクはその分薄くなっていますね。山場は強烈なハイスピードで、オケも着いて行くのがいっぱいです。
■ 第三楽章
ここでも速めでメリハリのある演奏ですが、忙しないのは同じですね。中間部はもったいぶった情感さを強く、その後スローにしてラストは強烈ハイスピード!!
■ 第四楽章
最終第四楽章も入りは穏やかに変わっていますね。実は演奏時間が1'半近く伸びています。「愛の死」引用テーマは速めに素っ気なくなっています。第一エピソードはやや遅くなり優美さから揺さぶり強い劇的山場へ向かいます。「太陽の輝くあの高みでの美しい日」引用を同じ様に美しく、そして静寂に消え入ります。


アゴーギクの振り幅が大きく揺さぶりの強い変化球マーラー9番です。でも抑え処はしっかり、ラストなどは王道そのもの。それが"どっちつかず"な印象を残しているかも。せっかくなら魔球にして欲しかったw
シェルヘン先生が上にいなければ、㊟印!!







全集物など見直すとまだまだありそうです。整理が悪い?!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

フランソワ=グザヴィエ・ロト(François-Xavier Roth) の マーラー交響曲第5番 は最終楽章ですね


本来なら「マーラー交響曲第五番・名盤珍盤 聴き比べ 170CD 」の方でインプレするのですが、先に単独インプレです。


フランソワ=グザヴィエ・ロト (François-Xavier Roth)
フランス人指揮者で、現在46歳。ケルン・ギュルツェニヒ管のKapellmeister (音楽監督でいいですよね) を務めています。またロンドン交響楽団(LSO)の首席客演指揮者も務めていますね。
個人的には現代音楽の指揮を得意としてドナウエッシンゲン音楽祭などに登場しているイメージがあります。昨年4月には東京文化会館で都響と素晴らしい「火の鳥」を演じてくれたのは記憶に新しいです。➡︎ インプレです


ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団(Gürzenich-Orchester Köln)
ケルン・ギュルツェニヒ管はマーラー5番の初演(1904年10月19日 マーラー本人指揮)オーケストラですね。CDケースの裏にもそれが謳われていて売り文句の様です。
(本CDは本年2017年2月20-22日録音)


第一楽章・第二楽章
 葬送行進曲は適度にアゴーギクとディナーミクを振り重厚さは控えめ、ファンファーレとのバランスも上手く取れていますね。第1トリオも過度の激しさよりも主題とのコントラストを押さえています。第二楽章もその流れを明確に繋ぎます。第1トリオを継ぐ様な第一主題、第2トリオからの第二主題です。激しさを押さえた見晴らしの良い第一部。
第三楽章
 ディナーミクを使った締まりあるスケルツォに、微妙なリズム感のレントラー主題、第三主題は間を生かしたスローで穏やかさです。全体的にマイルド、独特のディナーミクとアゴーギクを感じる第二部です。
第四楽章・第五楽章
 微妙なアゴーギクの中間部主題の前後を、スローで甘美な美しさで挟んだ個性的アダージェットです。第五楽章はスローな序奏からテンポの良い第一第二主題が絡みながら山場を目指します。展開部・再現部の山場を気持ちよく盛り上げてコーダからフィニッシュは迫力と大アッチェレランド。最終楽章では見事な王道に回帰!!

個性を見せながらも心地よいと思っていたら、最後に保守本流の展開が待っていました。どっちがロト!? のマーラー5です。
どちらも悪くないのですが、どっちかにしてねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 175CD聴き比べ! [#12 / CD:161-175]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べ#12。今回は次の15CD・他のインプレです。

① 新規CD (新譜中心、見落とし旧譜分あり)
② 1960年代以前の古い演奏

==資料的音源・他==
③ アダージェット#1 (マーラーと親交のあったメンゲルベルクとワルターの古いアダージェット)
④ アダージェット#2 (映画「ベニスに死す」のアダージェット)
⑤ ディスコグラフィー、スコア、書籍



【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #12回 175CDまで
 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン, プレートル[★], 小澤征爾, ジンマン[★], モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2]
 #2:20CD
M.T.トーマス[★☆], テンシュテット[x6 ★☆], ベルティーニ[x2], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4], ザンダー, シノーポリ, 飯森範親, 井上道義[☆]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ[㊟], スワロフスキー, レヴァイン, 戸山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 佐渡裕, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4CD ☆], ブーレーズ[x3 ★☆], メータ[x3], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★], デプリースト, バルビローリ, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, ホーレンシュタイン, スウィトナー[☆], 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ[☆], アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ, レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル[㊟], フェルツ, 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン
 #10:10CD
ゲルギエフ[x3 ☆], ラトル[★☆], ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, ヒルシェ, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト[☆], エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス[☆], スターン
 #12:15CD 本投稿
ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, 資料的音源(アダージェット)他



ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Swedish Radio Symphony Orchestra
[Harmonia Mundi] 2017/9-21-23


コンサートでは相性の悪い指揮者の一人、ハーディングです。この曲もコンサートでは新日フィルとパリ管で聴いていますが、パリ管ではとてもクセの強い演奏でした。このスウェーデン放送響との第9番のCDは良かったですが。
現在はパリ管と本CDスウェーデン放送響の音楽監督ですね。

第一楽章・第二楽章
第一楽章提示部主要主題はスローで揺らぎを入れていますがやや間延び気味。第一トリオでは激しさというより派手やかに、第二トリオも微妙な揺らぎを入れていますね。第二楽章第一主題は明瞭に、第二主題も揺らぎをなくして素直な響きです。再現部・展開部も激しさは控えめで、第二主題は緩め、弱めのコントラストに感じます。
第三楽章
スケルツォ主題は優美ですが揺らぎを入れて、レントラー主題はあっさり感ですね。再現のvnの方が優美です。第三主題はスローを強めにして落としています。展開部・再現部も刺激な抑えめで印象はスローが勝っている感じですね。obl.hrの鳴りは良かったです。コーダは異常な速さです!
第四楽章・第五楽章
アダージェットは速めで入り後半スロー化ですが終始物静かに。山場も控えめ中間部でも冷静で好きなクールな展開ですね。中間部の揺らぎは気になりますが。最終楽章は第一第二主題が心地よく絡んであげてゆき、コデッタ(第四楽章中間部の変奏)は軽快に現れます。展開部・再現部の山場からコーダは興奮は抑え気味に、フィニッシュでいきなりのアッチェレランドです。(第三楽章と似ていますね)


今ひとつスカッとしない、独特の揺らぎも気になるマーラー5ですね。抑えた強音パートとスローの印象が強く残りますね。
ふとパリ管との来日公演の同曲を思い浮かべました。




アダム・フィッシャー, Adam Fischer


Düsseldorfer Symphoniker
[avi-music] 2017-3/31 - 4/2


ハンガリー人指揮者でスワロフスキーに師事していますね。弟のイヴァン・フィッシャーの方が先にマーラーを出していますが、ここへきてチクルスをスタート(1,4,7を既発)させていますね。首席指揮者を務めるデュッセルドルフ交響楽団を振ったマーラー5です。

第一楽章・第二楽章
感情を押し殺した葬送行進曲とコントラストを明確に付けるファンファーレ、第一トリオも極端にテンポや揺らぎを変えず流れを壊しません。第二トリオでも情感は保ちつつ流れを重視している感じです。第二楽章第一主題は激しさを加えて第二主題を緩徐に落とし、この楽章らしい対比を付けていますね。特徴的なのは展開部の第二主題で大きくスロー&静に流れを変えてメリハリを付けていることでしょう。クールでコントラストの着いた第一部で見晴らしが良いですね。
第三楽章
締まりを効かせたスケルツォ主題からレントラー主題は優美に舞うように、ここでもコントラストを付けていますね。第三主題では揺らぎの中に朗々とHrを挟んでいます。展開部からも程よい揺らぎを付けて飽きさせませんね。コーダもビシッと決めます。
第四楽章・第五楽章
アダージェット主要主題は冷静な美しさで山場も抑えが効いています。最終楽章のコデッタにもなる中間部は緩やかにアゴーギクを使っていますね。この冷めた流れは好きです。最終楽章は第一主題と第二主題を軽快にまとめながらコデッタに結び、展開部・再現部は歯切れの良さで流れ二つの山場は華やか。コーダからフィニッシュはアッチェレランドで締めました。


洗練されたクールで心地よいマーラー5です。アゴーギクとディナーミクのバランスが良く、締めるところは〆、緩徐は美しく、クドさとかったるさを回避しています。を付けない理由が見つかりませんでした。

コンサートで出会えたら拍手喝采ですね。




フランソワ=グザヴィエ・ロト, François-Xavier Roth

Gürzenich-Orchester Köln
[Harmonia Mundi] 2017-2/20-22


フランス人指揮者で、現在46歳。Kapellmeister (楽長?, 音楽監督でいいですよね) を務めるケルン・ギュルツェニヒ管を振ったマーラー5です。ケルン・ギュルツェニヒ管はマーラー本人指揮で、この5番の初演を行っていますね。(1904年10月19日)

第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度にアゴーギクとディナーミクを振り重厚さは控えめ、ファンファーレとのバランスも上手く取れていますね。第1トリオも過度の激しさよりも主題とのコントラストを押さえています。第二楽章もその流れを明確に繋ぎます。第1トリオを継ぐ様な第一主題、第2トリオからの第二主題です。激しさを押さえた見晴らしの良い第一部。
第三楽章
ディナーミクを使った締まりあるスケルツォに、微妙なリズム感のレントラー主題、第三主題は間を生かしたスローで穏やかさです。全体的にマイルド、独特のディナーミクとアゴーギクを感じる第二部です。
第四楽章・第五楽章
微妙なアゴーギクの中間部主題の前後を、スローで甘美な美しさで挟んだ個性的アダージェットです。第五楽章はスローな序奏からテンポの良い第一第二主題が絡みながら山場を目指します。展開部・再現部の山場を気持ちよく盛り上げてコーダからフィニッシュは迫力と大アッチェレランド。最終楽章では見事な王道に回帰!!


個性を見せながらも心地よいと思っていたら、最後に保守本流の展開が待っていました。どっちがロト!? のマーラー5です。
どちらも悪くないのですが、どっちかにしてねw




エフゲニー・スヴェトラーノフ, Evgeny Svetlanov (2録音)

ロシア人作曲家の交響曲を得意としていましたね。英名記述はYevgeny表記もあります。今回発売になったN響との録音の他にUSSR SOとアダージェットのみの録音も残しています。



(#1)
Russian State Symphony Orchestra
[Russian Season] 1995-10


ロシア国立交響楽団の音楽監督(1965 - 2000)を務めていた時代のマーラー5ですね。

第一楽章・第二楽章
特徴的にスロー弱音の葬送行進曲、山場ディナーミク強めです。第一トリオは明瞭にテンポを変え激しさですがクセはありません。第二トリオもややスローの標準的です。第二楽章の第一主題は速く第二主題はスロー静の対比です。展開部以降も同様で、コントラストを明確にした第一部ですね。
第三楽章
スケルツォ主題は緩めでhrも弱点、レントラー主題も第三主題も緩く演奏の質にも難があってぼんやりとした感じです。展開部・再現部も同じ流れで、特にスローの間延び感でボケた第二部に思えます。
第四楽章・第五楽章
主要主題は甘美を避けクール、中間部でも澄んだ流れを作っていて好きなアダージェットですね。最終楽章は第一第二主題がうまく絡みテンポアップで上げていきコデッタを優美に仕上げます。展開部と再現部の流れもスローが少なく山場も気持ち良く盛上げますが、この曲のコーダからラストでスローに落としてしまってはアウト!ですね。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。
スヴェトラーノフ節で、アゴーギクとディナーミク共に大きく振っているのですがスローが締まらない感じです。演奏も少々…なのも事実でしょう。





(#2)
NHK Symphony Orchestra
[キング] 2000-9/28


スヴェトラーノフがN響を雄大に鳴らしたと逸話がある時代の遺産ですね。

第一楽章・第二楽章
葬送行進曲はやはりスローですがここでももっそりで何かが足りない感じです。第一トリオ・第二トリオ、展開部以降も第二楽章も5年前とよく似た第一部です。
第三楽章
ほぼ同じ構成、もやったスロー主体で見晴らしの悪さが印象に残ってしまいます。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは色合いは同じですが、スローになっていて残念です。最終楽章も気持ちの良いテンポ設定で流れて行って、コーダ・ラストも類似かと思いきやスローにはしませんでしたね。アッチェレランドは効いていませんでしたが悪くありませんでした。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。←1995年ロシア国立響と同じコメントです。(とにかくよく似ています)
スローで何をやりたいのか駄耳なのでわかりません、やっぱりこのスローは鬼門ですね。ラストが普通になっていたのが救いでした。




オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä

Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-6


オスモ・ヴァンスカが2003年から首席指揮者を務める、ミネソタ管弦楽団を振った2016年6月の録音です。ミネソタ管のゴタゴタは興味ある方はググってくださいね。

第一楽章・第二楽章
第一楽章ファンファーレからいきなりギクシャク感のスロー、おとなしい葬送行進曲、第一トリオでは表情を変えますが緩め、第二トリオは弱音で入り柔らかな印象で個性的。
第二楽章第一主題も抑え目でギクシャク、第二主題も静音,スロー&マイルドです。展開部から再現部もマーラーの「最大の激烈さを持って」とは無縁、切れ味排除の曲者第一部です。
第三楽章
スケルツォもスローでhrはモタモタ、レントラー主題も微妙な揺らぎ、それ以降もいきなりのテンポアップとか読めない見晴らしの悪い残念な第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは薄く細い流れで山場も抑える好みの演奏、間を取りすぎなのは別として冷たく澄んだ流れは良いですね。
最終楽章の入りのhrは間を取り過ぎ、その後は適度に主題を絡ませながら常識的に進んで(軽快感は低いですが)、展開部の山場を盛り上げ、再現部では山場・コーダを見事に〆てラストはあっさり風w。
とはいえこの第三部は1-3楽章より遥かにマシです。


スロー&マイルドと奇妙な揺さぶり、そして管楽器のギクシャク。咳払いでもして喉のつかえを振り払いたい様なマーラー5です。
一癖モノがお好きな通の貴方には一聴の価値ありですw




マリス・ヤンソンス, Mariss Yansons (2録音)

ラトビア人指揮者ヤンソンスは、ムラヴィンスキーの助手を務めレニングラード・フィルでデビューしています。その後ほぼ同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)とバイエルン放送交響楽団二つの人気オケの首席指揮者を務めていましたね。



(#1)

Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17


2004年から2015年までROCの首席指揮者を務めた時代のライヴです。

第一楽章・第二楽章
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲、第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せ、第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの展開です。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けます。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。
第三楽章
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れ、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。


スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
最後にとって付けた酷いアプローズは何でしょう?!w





(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR Klassiks] 2016-3/10,11


2003年からヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送響との2016年ライヴです。上記RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じませんね。

第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。
第三楽章
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォはよりリズミカル、レントラーは美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。


RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…
根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者*で聴いています。

*J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでした。







ここから1960年代以前の古い録音です。(録音はmono主体で、その良し悪しを問うのは意味がないでしょう)
圧倒的個性を放つシェルヘンの4CDは#2で紹介済みですw

ブルーノ・ワルター, Bruno Walter


New York Philharmonic
[Sony] 1947-2/10


(右はCBS録音のセット物です)

 マーラーがハンブルク歌劇場の音楽監督(1891年ー1897年)だった時代、その下で研鑽したブルーノ・ワルター(1876/9/15 - 1962/2/17 )が唯一残したマーラー5番全曲 ニューヨーク・フィルの音楽監督時代の録音です。

第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、テンポ速めでその変化も少なめです。第2トリオも叙情を感じさせながらもテンポ変化はありません。第二楽章第一主題は激しさを増し、第二主題で叙情性強く変化させます。まさに王道です。
第三楽章
軽快なスケルツォ、レントラーも速めですね。第三主題はマーラーの「より遅く、落ち着いて」が見事に展開されます。15'ちょっとで、今聴き直すととても速い感じです。
第四楽章・第五楽章
7'半と短いのですが速く感じる事はなく、ゆったりと冷静なアダージェットで好みですね。最終楽章は軽量軽快な第一主題と第二主題が絡みながら上げて行き、展開部と再現部の山場はキッチリ盛り上げてコーダからフィニッシュまでは迫力いっぱいです。アッチェレランドを強烈に決めます。


全体的に速めですが、まさに王道のマーラー5ですね。今の時代の指揮者が繰り出すアゴーギクとディナーミクを剥ぎ取れば、この演奏が現れます。真髄で一聴必須です。
久しぶりに聴きましたが、聴き終わってから心に余韻が残りますね。

ワルターはアダージェットのみですが1938年にVPOとの録音を残しています。最後にインプレしています。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos

New York Philharmonic
[delta] 1960-1/2


ワルターの後ニューヨークフィルの首席指揮者(1949-1958)だったミトロプーロスがその職責を退いた後の録音ですね。ワルターの13年後、バーンスタインの3年前のニューヨークフィルとのマーラー5です。

第一楽章・第二楽章
少し不思議な間のファンファーレとゆったりとした葬送行進曲、第1トリオは派手ですがテンポ変化は少なめ、第2トリオも情感的ですがテンポ変化は薄めです。第二楽章第一主題は速めで切れ味良く、一転第二主題で柔らかさを強調します。構えの大きな正統派第一部ですね。
第三楽章
速めで揺さぶりのスケルツォはオケが暴れ気味、レントラーでは優美さを見せます。速めで揺さぶりから第三主題もスローですがアゴーギク強めです。全体としても揺さぶりと華々しさの第二部です。
第四楽章・第五楽章
澄んだ音色のアダージェットは間をとって大きいスタンスです。第五楽章は提示部からスローに妙なアゴーギク、山場は派手に、コーダからフィニッシュはスローを交えながらのアッチェレランドです。


雄大で迫力の第二楽章は見事ですね。揺さぶりのクセが強めですが、パワーパートは華々しいマーラー5です。




ルドルフ・ケンペ, Rudolf Kempe

Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[ARCHIPEL] 1948-11/3


Rudolf Kempeとライプツィヒ放送交響楽団の古い演奏です。これもシェルヘンと同じ様にカット短縮盤です。シェルヘンの初録音(1953)よりさらに5年古く、当時の流れでしょう。

第一楽章・第二楽章
やたらスローなファンファーレと葬送行進曲、第1トリオもモッタリ、第2トリオは普通ですw 第二楽章第一主題はややテンポアップでコントラストが付きますが、いずれモタモタして長〜ぃ第一部です。
第三楽章
カットありの12分ですね。優美に入るスケルツォも同じ流れのレントラーも、その後も全体にもっさり。切れ味はありません。
第四楽章・第五楽章
ワルターと比べたら2分近く長いのですが、他の楽章が超スローなのでアダージェットは速く感じます。第五楽章ホルンがメタメタ、その後もスローで怪しげ、一部カットしながら山場とコーダ・フィニッシュは普通に炸裂させています。


演奏も怪しげ、モタモタとした少々退屈なマーラー5です。時代に関係なくこういった演奏が存在する証明ですねw 第三・五楽章カットもあり、怪しげマニアの貴方にはオススメ?!
アダージェットは悪くありません。




ハンス・ロスバウト, Hans Rosbaud

Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[ica] 1951-10/22


大戦前後に活躍した現代音楽が得意な指揮者ロスバウトが、ケルン放送響を振ったマーラー5ですね。

第一楽章・第二楽章
スロー重厚な葬送行進曲から第1トリオは激しさと強烈な速さに表情を一変させます。第二楽章第一主題は一楽章トリオの流れで厳しく、第二主題は緩やかなテンポに落としてきます。第一楽章の二つのトリオの印象を忠実に再現させている感じで、締まりのいい第一部です。
第三楽章
速め優美なスケルツォ、それ以降も全体16’弱と速めですが第三主題は見事に緩やかです。アゴーギクを大きく振った第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは少し速いのですが、甘美さが感じられます。最終楽章は締まりの良い前半から流れよく二つの山場を盛り上げます。コーダは壮大、ラストのアッチェレランドもビシッと決めます。


テンポや表情の変化を明確に打ち出した硬派のマーラー5ですね。特に第一部と第五楽章は素晴らしく、今の時代の録音なら☆です!




ポール・パレー, Paul Paray

Detroit SO
[TAHRA] 1959-11/12


フランス人指揮者ポール・パレーが音楽監督(1952-1963年)を務め鍛えた時代のデトロイト交響楽団とのマーラー5です。

第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、第二楽章も同じく、正攻法の第一部です。気持ち速めの演奏はややまとまりの弱さを見せますが。
第三楽章
速めで不安定なスケルツォと微妙な揺らぎのレントラー、その後も全体速い展開です。カットなし15'ですから。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはやや速く厚めです。第五楽章第一・二主題は荒々しいですが流れは標準的に進み、展開部・再現部も力技的に迎えます。コーダからラストは溜めを作ってアッチェレランドで飛ばし上げます。


演奏が荒いのですが、全体速めのテンポ以外は正攻法なマーラー5です。荒さは録音精度も問題ですがw
パレーの口ずさみがよく聞こえます。




ヤッシャ・ホーレンシュタイン, Jascha Horenstein

BPO
1961-8/31

非正規盤ですがフルトヴェングラーの助手を務めた事もあるホーレンシュタインが、1961年のエディンバラ国際フェスティバルでベルリンフィルを振った5番です。

第一楽章・第二楽章
スローでディナーミク強めの葬送行進曲、パワーとスピード感の第二主題でBPOらしさが出ています。第二楽章も同様の展開。
第三楽章
スケルツォも軽妙というよりも華麗で重厚です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは「ベニスに死す」w。最終楽章はやや飽きが来る展開(録音が悪すぎてフラットになってる?)ながらコーダは見事な...と言いたい処ですが、スローでモッソリ。なおかつ録音が乱れて尻切れとんぼ。


演奏は勿体ぶったBPOらしさ満点で悪くないのですが音質は劣悪超酷いです、仕方ありませんね。




エーリヒ・ラインスドルフ, Erich Leinsdorf

Boston SO
[RCA] 1963-11


ワルターやトスカニーニの助手を務めた辛辣さで知られるラインスドルフが音楽監督を務めた時代のボストン交響楽団とのマーラー5です。この二代後が小澤征爾さんですね。

第一楽章・第二楽章
哀しみと美しさを感じさせる葬送行進曲、テンポを上げてシャープな第1トリオ、憂いの第2トリオと流れの美しい第一楽章です。ラストのティンパニが変則ですね。第二楽章は一楽章の二つのトリオのイメージを再現します。バランスの良さと落ち着いた第一部です。
第三楽章
円舞曲的なスケルツォ、優美なレントラー、第三主題と大きなテンポ変化は避けながらも全体は美しさで通しています。
第四楽章・第五楽章
8'半とやや速めなアダージェット、アゴーギクで美しく奏でられます。第五楽章は軽やかに二つの主題を絡め上げていき、バランスよく山場を盛り上げてコーダからフィニッシュもアッチェレランドできれいにまとめます。


録音に3日かけていて、充分に作り込まれていますね。クセも破綻も過度の興奮も殺した、落ち着きのある完成度の高いマーラー5です。出来過ぎ感が気になりますが一聴の価値ありです。
現在の一部作品に見られる録音技術で作り込まれた不自然さがないのがいいですね。'63年録音ですがステレオでバランスも音も良いです。(ADDでD.リマスターされているでしょう)




カレル・アンチェル, Karel Ančerl

Toronto SO
[TAHRA] 1969-11/4


カレル・アンチェルが小澤征爾さんの後を継いでトロント交響楽団の常任指揮者に就任した年の録音ですね。

第一楽章・第二楽章
標準的な葬送行進曲から元気な第1トリオになり、憂いの第2トリオの第一楽章。第二楽章も取り立てて個性的ではありません。
第三楽章
やたらとスローなスケルツォと怪しげな管楽器、その後も"緩々と怪しげ"な流れで20'を超える演奏は長すぎです。ぼーっとしていて気がついたら、まだやってた…みたいな。
第四楽章・第五楽章
ここでも標準的で甘美でもクールでもないアダージェットです。第五楽章は緩めに二主題を絡めて行き、山場とラストは締まりよく納めます。


演奏も怪しく締まりに欠ける退屈なマーラー5です。
'69年録音ですがmonoでAAD、音もかなり残念。リマスタリングでヒスノイズは削減されてはいますが。










==資料的音源・他==


【アダージェット #1】

マーラーと親交のあった二人。11歳下のメンゲルベルク(1926年録音)と16歳下のワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレして当時を偲んでおきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg

アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5


メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的ですね。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう。
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15


メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また上記1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik

最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995


スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)







【アダージェット #2】

アダージェットと言えば映画「ベニスに死す」が取上げられる事が多々あるわけですから、インプレしておきましょう。

アダージェット, 映画「ベニスに死す」

フランコ・ マンニーノ(Franco Mannino)
Santa Cecilia Academy Orchestra
rec. 1971


(左:サントラ 右:DVD)

マンニーノはイタリア人指揮者、映画音楽を得意とする作曲家でもありましたね。


主要主題は繊細に入り、アゴーギクとディナーミクの抑揚を厚く付けてきます。中間部(トリオ)は透明感と繊細さですが、ここでも強い揺さぶりがあります。演奏時間は10'弱ですから、いまの時代のアダージェットの標準的テンポでしょう。濃淡の感情の強いアダージェットですね。これをもってクラシック畑の先生方は甘美でクラシックにふさわしくないとおっしゃっている訳ですね。まぁ、ここまで濃厚なアダージェットを交響曲第5番の中で聴くことは稀でしょうね。個人的にはあまり美しいアダージェットとは思えませんが。


「ベニスに死す」ではもう一曲マーラーが使われていますね。交響曲第3番 第四楽章「O MENSCH」で、ご存知の通り美しい歌曲パートです。(こちらは逆に硬派な演奏と歌唱です)

主役のイメージはマーラーというトーマス・マンの小説の映画化ですから、一度見ておくのも一興かと思います。(二人は親交がありました)






【ディスコグラフィー・スコア・書籍】

所有枚数が増えると同一アルバムの再発等々でダブりの確認が必要となりますのでディスコグラフィーは必携品ですね。スコア(総譜)も、持っていれば楽章や主題等の構成がわかりますので、ただ聴くより理解と楽しみは増えてきますね。またマーラーに関する書籍も一度は読んで、その背景や指揮者としての活躍も知っておくと楽しめると思います。

カプラン・ファウンデーション監修 / マーラー・ディスコグラフィ

Mahler Discography / Péter Fülöp / Kaplan Foudation


マーラー・ディスコグラフィーというよりも辞書ですね。重さは3kg弱もあります。マーラーの交響曲・他のディスクについての詳細が記されています。これが世界標準と言って良いと思います。

 ① 各音源(CD等)の 指揮者 / オケ、録音年月、レーベル
 ② 指揮者 / オケ / 演奏者別音源一覧
 ③ レーベル別、音源一覧
 ④ 全音源の楽章別演奏時間の一覧

①には間違った演奏者表記も正解が載っているので助かります。大きくて重いのは装丁・紙質が素晴らしいからでしょう。当初は¥10k以上しましたから激安ですね。

2010年増補改訂第2版ですので、2020年には第3版が出るのではと勝手に想定しています。



スコア・総譜

スコアによって印刷レベルが大きく異なります。パート譜は必要ないでしょうから総譜になるわけで小型版ですと余計です。おまけに小節番号のあるなし等々、気に入ったのを見つけるしかありません。所有はこれですね。




小型版(新書より少し大きいくらい)ですが、文字・音符はそれなりに見えます。そして楽曲解説と一部マーラーの注意書きに日本語訳があります。とはいえスコア上の細かい注意書きは全てドイツ語(演奏記号はイタリア語)ですから、わからないところは日本語を追記し、場所によって主題パートやパッセージの冒頭とかにも色付けしてあります。(日本語対訳は検索すると便利なものがいっぱいあります)
おかげでわかりやすくなり、第6番や第9番のスコアはそこまで汚さなくても大丈夫になりましたw

無料pdf譜をIMSLPからDLしてみるのが良いかもしれませんね。初めは面食らうでしょうが、見慣れてくると楽章の構成等がわかって楽しいですし、新たな楽しみになるかも。ただ、スコアには楽章構成、第一主題やトリオ等、の表記はありません。

 ① 楽曲を聴きながらスコア内容を読み解く楽しみ
  (込み入ったスコアの迷路を曲と共に解読するのも楽しいですね)
 ② スコアと演奏のギャップを眺める楽しみ
  (例えばアダージェットはクールが好きですが、スコア指示は情感です)

指揮者になるわけでも演奏者になるわけでもないので、スコアにならってインプレはしませんねw
(指揮者気分でスコアを眺めるのも楽しいですが)



書籍

マーラーに関する書籍は数多く出ています。時代背景や環境、指揮者としての活躍、アルマとの関係等々、色々読みましたね。でも個人的には一度頭に入れれば十分かなと。いずれその時代・その場所に戻れませんし、本人にさえわからないことも今や研究されて、本人逝去後のアルマの回想本などかなり怪しいでしょうねぇ。

➡️ というわけで、このブログではマーラー本人に関する背景記述は控えています

やっぱり曲として聴いてどうかが、素人の楽しむ王道かと思います。有名評論家の先生の書籍を一つだけあげておきますね。








そろそろ所有のマーラー第五番も先が見えてきました。次回のインプレで在庫クリアーになり、後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手になりそうです。



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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