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ミラノ・スカラ座2017/18シーズン開幕公演 ジョルダーノの歌劇『アンドレア・シェニエ』をNHKプレミアムシアターで観る

ウンベルト・ジョルダーノのオペラ『アンドレア・シェニエ』、フランス革命を基にした悲劇ですね。1896年3月の初演もミラノ・スカラ座でした。
今回は何と言ってもエイヴァゾフとネトレプコの夫妻がタイトルロールと歌姫を演じた事が話題でしたが、NHKプレミアムシアターはネトレプコ好きですねw

TeatroAllaScala-AndreaChénier-2017-2018
(画像はオフィシャルサイトより)



演出

マリオ・マルトーネはイタリアオペラ保守本流の演出でしょうか。クセはなく個性もなく…的ですが。大人数の団員を配した舞台が目を引いたくらいかもしれません。


舞台・衣装

時代背景的な衣装と舞台で、今や古臭い感じもする設定ですね。ただ暗さに照明の設定は今らしさでしょう。配置された額縁のミラーが大きくて歪みがあって特徴的でした。何かを映し出す意図なのでしょうか。


配役

見飽きた感もあるネトレプコちゃんはますます育ってご立派な体格、マッダレーナの可愛い仕草に違和感がありますw もちろん歌声は艶やか太いsop、文句無しですが。個人的にはベルシ役のストロッパのmezoの方が尖ってクールに思いました。
男性陣ではタイトルロールのエイヴァゾフが思いの外、失礼、良かったですね。朗々とした声と役作りでした。ジェラールのルカ・サルシも期待したほどではなかった感じでしたしね。


音楽

シャイーだったのでもう少しオケが前に出るかと思いましたが、控えめだった気がしますね。各幕毎のラストは押し出しが効いていましたが。


全体として地味な印象を受けました。もちろんアヴァンギャルドには無縁で、古臭さを感じてしまいました。
その中で、エイヴァゾフの良さが光ったのが楽しめましたね。映像用のカメラワークにも力を入れていた感じです。


<出 演>
・アンドレア・シェニエ:ユシフ・エイヴァゾフ (Yusif Eyvazov)
・マッダレーナ:アンナ・ネトレプコ (Anna Netrebko)
・カルロ・ジェラール:ルカ・サルシ (Luca Salsi)
 ・ベルシ:アンナリーザ・ストロッパ (Annalisa Stroppa)
 ・コワニー伯爵夫人:マリアーナ・ペンチェヴァ (Mariana Pentcheva)
 ・ルーシェ:ガブリエレ・サゴーナ (Gabriele Sagona)
 ・フーキエ・ダンヴィル:フーキエ・ダンヴィル (Gianluca Breda)
 ・マチュー:フランチェスコ・ヴェルナ (Francesco Verna)
 ・無信仰者:カルロ・ボシ (Carlo Bosi)
 ・シュミット:ロマーノ・ダル・ゾーヴォ (Romano Dal Zovo)


<合 唱> ミラノ・スカラ座合唱団
<管弦楽> ミラノ・スカラ座管弦楽団
<指 揮> リッカルド・シャイー (Riccardo Chailly)
<演 出> マリオ・マルトーネ (Mario Martone)


収録:2017年12月7日 ミラノ・スカラ座(イタリア)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

英国ロイヤル・オペラ2017 ヴェルディの歌劇「オテロ」を NHKプレミアムシアターで観る

今年6月の英国ロイヤル・オペラ(ROH)、ヴェルディの「オテロ (全4幕)」です。もちろん原作はシェイクスピアの悲劇『オセロ』 で、おどろおどろしい嫉妬劇ですね。
注目は初タイトルロールのヨナス・カウフマン。古〜ぃデル・モナコwのイメージが重なる「オテロ」となると.....どうだったのでしょう。2008年ザルツブルクのアントネンコが良かった記憶がありますね。

RoyalOpera2017Otello.jpg
(写真はオフィシャルサイトより)



演出

演出はローレンス・オリヴィエ賞を受賞のキース・ウォーナーですが、一捻り的な演出の印象がありますね。冒頭のヤーゴが仮面の一つを叩きつけるのは本性を現す予告で、その仮面を第三幕最後にオテロに被せる当たりがウォーナーらしいのでしょう。
ただ、オテロ一人に異常な狂気を与える演出はいただけません。一人浮いてしまった感じでした。ラストのドロドロ流れる血みどろ も今流ですが唐突で不自然ですね。


舞台・衣装

舞台は真っ暗、照明がスポット的に当たり影と光で心理戦を象徴しているかの様でした。衣装は時代的な印象を残した現代風ですね。
前衛性はありません。今の時代のオペラらしいシンプルさでした。


配役

タイトルロールのカウフマン、声は素晴らしく熱演でした。ただ、オテロらしいテノール・ドラマティコとするとやや重心が高い様な、気になる見た目の小粒感も…
もう一人の主役ヤーゴのマルコ・ヴラトーニャ、憎々しい役回りなのですが卑劣さが弱く憎めませんw
端役ですがカッシオのアントゥーンは役にぴったりの洒脱な声と姿が生きていましたね。デズデモナのアグレスタは第三幕のオテロとのやりとりが素晴らしかったです。ただ中低音域が弱く地声が顔を出しましたね。


音楽

ロイヤル・オペラの音楽監督アントニオ・パッパーノはマーラーで音の鳴らしが良い印象があります。この舞台でもメリハリの効いた音の鳴らしを聴かせてくれました。強音パートの迫力は舞台を食うほど?! 今回の主役は音楽だったかも。


オテロが一人芝居の様な狂気の熱演でした。後半のオテロとデズデモナのシーンは良かったです。ただ、オテロ役というともっと"どっしり"とした風貌と声が浮かんでしまいますね。
一番残念だったのは、ウォーナー演出のオテロの狂気を超えた狂人。全体の中でよそよそしさを感じてしまいました。どうせやるなら、丸ごとドロドロにしてしまった方が良かったかもw



<出 演>
 オテロ:ヨナス・カウフマン (Jonas Kaufmann)
 デズデモナ:マリア・アグレスタ (Maria Agresta)
 ヤーゴ:マルコ・ヴラトーニャ (Maria Agresta)
  カッシオ:フレデリック・アントゥーン (Frédéric Antoun)
  ロデリーゴ:トーマス・アトキンス (Thomas Atkins)
  エミーリア:カイ・ルーテル (Kai Rüütel)
  モンターノ:ユシフ・エイヴァゾフ (Simon Shibambu)

<合 唱> 英国ロイヤル・オペラ合唱団
<管弦楽> 英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
<指 揮> アントニオ・パッパーノ (Antonio Pappano)
<演 出> キース・ウォーナー (Keith Warner)


収録:2017年6月24日 英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ザルツブルク音楽祭2017 ヴェルディの歌劇「アイーダ」をNHKプレミアムシアターで観る

今年の夏のザルツブルク(Salzburger Festspiele)、ヴェルディのスペクタクル・オペラ『アイーダ, Aida』(全4幕) が茶の間で楽しめましたね。(もちろん深夜ではなく録画ですw)
注目は初のタイトル・ロールを演じる まん丸ネトレプコちゃんですね。

SalzburgerFestspiele2017-Aida.jpg
オフィシャルサイトより

演出

注目の演出はニューヨークで活躍するインスタレーション系の女性映像作家シリン・ネシャット。白と黒メインに一人アムネリスにシグナルカラーの配色、大きく単純な舞台装置にプロジェクションマッピングという演出は、シンプルな中に今の時代らしい「アイーダ」になりましたね。
"勝って帰れ"等、アイーダの独唱シーンでのPMは気持ちが生かされていました。またバレエだけは前衛っぽかった?!、でも生きていました。


舞台・衣装

舞台は大きな壁の様な装置がメインで光と影のシンプルさ。そこに投影される特大映像が浮き立ちました。衣装も時代考証や、殊更の現代性でもない抽象的シンプルなもので、舞台とのマッチが良かったですね。


配役

・タイトル・ロールのネトレプコ、言われている様に今や声の艶や太さと繊細さは声量と共に素晴らしいですね。46歳という年齢から言っても絶頂期でしょうか。
・ラダメスのフランチェスコ・メーリはネトレプコとのコンビが多いですが、ザルツブルグ音楽祭2014 同じヴェルディの「トロヴァトーレ」ではハイCがイマイチだったのが記憶にありますw でも、いつもながらのハリのあるテノールでしたね。
・アムネリスのエカテリーナ・セメンチュクのmezもネトレプコのsopとの重唱で幅広い声域を聴かせて、演技と共に良さが光りました。実質 今回のベストアクトレスでしょう。
・バス・バリトン陣では突出はいませんが、名脇役的な存在感がありバランスの良さを感じました。


音楽

リッカルド・ムーティとVPOは太い音色を響かせました。VPOというよりも、ムーティの印象でしょうか。バレエ曲ではVPOらしいスマートさを感じました。


屋外ステージの様なスケールの大きさが浮かぶアイーダですが、現代的シンプルさで従来とは異なったアイーダになった感じです。売りの一つであるスペクタクル感には欠けたのは残念ですが、仕方ないかもしれません。
配役はネトレプコだけでなくバランスの良い顔ぶれでアイーダらしい多重唱も楽しませてくれました。それにしても、毎度書いていますが、今やコロコロしてしまったネトレプコも今回はセメンチュクが居て良かったかもw


<出 演>
 王ファラオ  : ロベルト・タリアヴィーニ (Roberto Tagliavini)…エジプト国王
 王女アムネリス: エカテリーナ・セメンチュク (Ekaterina Semenchuk)
 アイーダ   : アンナ・ネトレプコ (Anna Netrebko)…エチオピア王女で今は奴隷
 ラダメス   : フランチェスコ・メーリ (Francesco Meli) …指揮官
 ラムフィス  : ディミトリ・ベロセルスキー (Dmitry Belosselskiy)…祭司長
 アモナスロ  : ルカ・サルシ (Luca Salsi)…エチオピア王

<合 唱> ウィーン国立歌劇場合唱団
<管弦楽> ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> リッカルド・ムーティ (Riccardo Muti)
<演 出> シリン・ネシャット (Shirin Neshat)


収録:2017年8月9・12日 ザルツブルク祝祭大劇場(オーストリア)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

グラインドボーン音楽祭2017 ブレット・ディーンのオペラ「ハムレット」の初演を NHKプレミアムシアターで観る

グラインドボーン音楽祭(Glyndebourne Festival Opera)委嘱作品になるブレット・ディーン(Brett Dean, 1961/10/23 - ) の全二幕の歌劇「ハムレット」ですね。もちろん世界初演です。

台本はカナダで活躍中のマシュー・ジョスリン(Matthew Jocelyn)、演出は映画Candyで知られるニール・アームフィールド(Neil Armfield)になります。ストリーはシェークスピアの原作に忠実ですから不安はありませんね。

GlyndebourneFestivalOpera2017-NHKpremiumTheater.jpg
(写真はオフィシャルサイトより)
[演出]
今風で特異性はありません。アヴァンギャルドさはなく、深淵的なダークな舞台といったところでしょうか。新作オペラですからこれが基準となる訳ですね。

[舞台・衣装]
舞台は大きな壁の入替を中心としてセットは最低限、衣装は現代というありげな設定です。第二幕ではライティングの暗さで影を強調して異常性をうまく強調していました。

[配役]
タイトルロールのクレイトンは声も演出上の設定でもボチボチでしょうか。太ったタイトルロールは舞台ではやっぱりイマイチかも。(CDなら声だけ勝負でOKですが)
なんといってもオフィーリア役のバーバラ・ハンニガン去年のエクサン・プロバンス音楽祭のタイトルロールでも大活躍でした、が演技ともに素晴らしかったですね。第二幕初めの狂気のシーンは真骨頂でした。(写真にはありませんが、またもやエロティック!) ハンニガンは普段から現代音楽を得意としていますから歌唱はバッチリですね。

[音楽]
現代音楽ベースの楽曲で複調多調的ですね。
まず感じたのは歌唱パートの難しそうなこと。調性の薄さで歌いづらそうです。そして有名な"To be or not to be"等は語りになります。

現代音楽ですが合唱・歌唱パートは極端な無調でもありませんしシュプレッヒゲザングほどの狂気の語りでもありません。とはいえ耳馴染みの良い旋律やアリアは皆無ですから、それなりの許容が必要かもしれませんね。歌詞は英語です。
楽曲にはピアノも含まれていて現代音楽感が生かされていますね。新作初演なので比較する演奏はありません。



全体としては現代音楽ですが前衛ではありませんから、今の時代のオペラですね。
ただ、第一幕と第二幕のギャップが大きいです。今ひとつ平凡な第一幕に比べて、脚本・演出ともに第二幕の方がおぞましさや狂気が舞台に感じられて良かったです。
第一幕に締まりがあったら、素晴らしいオペラになるでしょうね。

<出 演>
 ・ハムレット:アラン・クレイトン (Allan Clayton)
 ・ガートルード:サラ・コノリー (Sarah Connolly)
 ・オフィーリア:バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan)
 ・クローディアス:ロッド・ギルフリー (Rod Gilfry)
 ・父王の亡霊・墓掘人夫・他:ジョン・トムリンソン (John Tomlinson) 一人三役

<合 唱> グラインドボーン合唱団
<管弦楽> ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> ウラディーミル・ユロフスキ (Vladimir Jurowski)
<演 出> ニール・アームフィールド (Neil Armfield)


収録:2017年6月30日、7月6日 グラインドボーン音楽祭歌劇場(イギリス)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

エクサン・プロバンス音楽祭 2016 オペラ「ペレアスとメリザンド」を NHKプレミアムシアターで観る

クロード・ドビュッシー唯一のオペラ(全五幕)「ペレアスとメリザンド, Pelléas et Mélisande」、昨年放映されたのですが見逃していました。オンデマンドにあったので観ようかと思っていたので嬉しい限りです。

個人的見所は何と言ってもバーバラ・ハンニガンですね。現代音楽を得意とする彼女のファンですからw

THE-FESTIVAL-DAIX-EN-PROVENCE-2016_Pelléas-et-Mélisande

演出
 前衛ではありませんが、とても奇抜な設定です。いきなりメリザンドがステージにいたり、二人出てきたりするので戸惑いますがストーリー全体をメリザンドの夢にしています。一人のメリザンドは人形の様に振る舞い、存在していないかの様に動きます。(周囲の人には見えないかの様に非存在です。ゴローやペレアスも同様にその他のシーンに非存在的に現れます。メリザンドの心の投影?!)
今回は映像ではなく二人のメリザンドを採用した英女性演出家ケイティ・ミッチェルですが、ロールを二重映しにするのは同じテクですね。
 また、幕毎に衣装を脱がされて下着姿になったり、ペレアスに対して積極的なセクシャルな動きを見せたりと、エロティックなメリザンドにもしています。その辺りはK.ミッチェルらしさでしょうか。

舞台・衣装
 領地から家に置き換えられた舞台は、初めの森と泉は部屋、盲の泉はプール、といった設定です。塔の長い髪のシーンも部屋です。メイン舞台は上下に区分され、左サイドに各場のセットを入れ替え時の螺旋階段の舞台があります。衣装は現代風ですね。

配役
 メリザンドのB.ハンニガン、抑え気味に作られたソプラノに演技でストイックさを感じさせてくれました。K.ミッチェルの演出を最大限生かしていますね。
ゴローのナウリとペレアスのドゥグーも好演でした。なんとなく似た気配と声質でしたが。

音楽
 度々の来日でも良い演奏を聴かせてくれるサロネンとフィルハーモニア管、ここでも明瞭な音出しで陰影の強いサウンドを鳴らしてくれます。ドビュッシーらしい幽玄さの中に煌めく色合いも感じましたね。



全体 としてはケイティ・ミッチェルの描くメリザンド像を、バーバラ・ハンニガンが見事に演じた作品になりました。

始めと終わりはベッドのメリザンドがウェディングドレス姿で、マリッジブルーの夢から覚める設定だそうです。新しい環境に入る不安を鬱的な動きで、その一方ではエロティックな女性を演じる。そんな二面性の新しいメリザンド像を楽しませてもらいました。

<出 演>
 メリザンド : バーバラ・ハンニガン [Barbara Hannigan]
 ペレアス : ステファヌ・ドゥグー [Stéphane Degout]
 ゴロー : ローラン・ナウリ [Laurent Naouri]
 アルケル : フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ [Franz Josef Selig]
 ジュヌヴィエーヴ : シルヴィ・ブリュネ・グルッポーゾ [Sylvie Brunet-Grupposo]
 イニョルド : クロエ・ブリオ [Chloé Briot]
 医師 : トマス・ディアー [Thomas Dear]

<演 出> ケイティ・ミッチェル [Katie Mitchell]
<合 唱> ケープタウン・オペラ合唱団
<管弦楽> フィルハーモニア管弦楽団
<指 揮> エサ・ペッカ・サロネン [Esa-Pekka Salonen]


収録:2016年7月7日 プロバンス大劇場(フランス)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オランダ国立歌劇場公演 2017 オペラ「サロメ」を NHKプレミアムシアターで観る

リヒャルト・シュトラウスのオペラ、全一幕(4場)の「サロメ (Salome Op.54)」です。交響詩を得意としたR.シュトラウスが最後に「英雄の生涯」を書き上げた後、初めに評判になったオペラですね。この後、「エレクトラ Op.58」「ばらの騎士 Op.59」「ナクソス島のアリアドネ Op.60」とヒット作を飛ばします。

このエログロ風の作品をトネールフループ・アムステルダム(劇団)芸術監督のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ*による新演出でどうなるのかが個人的な楽しみです。
*本年11月に「オセロー」の東京公演を行いますね。

RichardStrauss-Salome-DutchNationalOpera2017.jpg


演出
 I.V.ホーヴェは2012年にリヨンで大野和士さんの元、マクベスも演出してします。ここでも現代風のコスメティックに誇張された表現が生きています。ヤン・ファンデンハウエのドラマトゥルグも合っていましたね。ラストは生首のはずのヨカナーンが血みどろで現れてサロメが絡むのはまさにグロテスク。

舞台・衣装
 舞台はシンプルで黒、暗くスポットライトで浮かび上がる設定です。衣装は当然現代に置き換えられています。近現代風といった感じですが。

配役
 タイトルロールのサロメ役に尽きるオペラですから、マリン・ビストレムですね。素直な声はもっと狂気を感じたかった気もしますが、演技と表情は素晴らしく楽しませてくれました。"7つのヴェールの踊り"もビストレム本人が演じました。
ヨカナーンのニキーチンは声も体格も大柄すぎですw、だいたい肌も白くないし全身刺青で髪も黒くないですから。

音楽
 ダニエレ・ガッティにしては揺さぶりが弱かった感じです。このオペラには彼らしい起伏があっても良かったと思います。



全体としては今の時代の先鋭な"サロメ"が楽しめて素晴らしかったです。M.ビストレムもエロティックでグロテスクさを魅せてくれました。
一に演出、二にM.ビストレムでしたね。

<出 演>
 ヘロデ(ユダヤの領主): ランス・ライアン [Lance Ryan]
 ヘロディアス(領主の妻): ドリス・ゾッフェル [Doris Soffel]
 サロメ(ヘロディアスの娘): マリン・ビストレム [Malin Byström]
 ヨカナーン(予言者): エフゲニー・ニキーチン [Evgeny Nikitin]

<管弦楽> ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
<指 揮> ダニエレ・ガッティ [Daniele Gatti]
<演 出> イヴォ・ヴァン・ホーヴェ [Ivo van Hove]

収録:2017年6月12・27日 ミュージックシアター(アムステルダム)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

バイロイト音楽祭2017 ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を NHKプレミアムシアター で観る

今年のバイロイト音楽祭の初日を飾った『ニュルンベルクのマイスタージンガー, Die Meistersinger von Nürnberg』ですね。新演出となり、前衛でならすカタリーナ・ワーグナー(R.ワグナーの孫で音楽祭総監督ですね)からバリー・コスキーの演出になりました。

BayreutherFestspiele2017-DieMeistersingerVonNürnberg

演出
ユダヤ系演出家B.コスキーが持ち込んだのは二つ。①ワーグナーの反ユダヤ主義と②ワーグナー家族・知人関係を配役に当てはめています。そこにはワーグナーやリスト(ワーグナーの妻であるコジマの父です)達が現れます。デフォルメされた張りぼて頭や大風船のワグナーも現れ、その頭にはユダヤの帽子が被されています。そんなネガティヴ・テーマを自虐的に登場させる演出はバイロイトならでは?!
ラストはザックスのドイツ芸術を讃える歌の後、前奏曲をザックス演じるワーグナーが舞台上のダミーオケを指揮をして終わります。

舞台衣装
前奏曲でピアノから何人ものワーグナーが出てきます。第一幕はそのままワーグナー家「ヴァーンフリート荘, Villa Wahnfried」で聖カタリーナ教会ではありません。第二幕は草原(背景は第三幕)、第三幕は1945年のWWIIのニュルベルク裁判法廷で、戦勝国の国旗が見えます。
衣装はアヴァンギャルドさはなく、マイスタージンガーの時代背景的?です。

配役
それぞれがワーグナーと、取り巻く人物になぞらられています。(下記<出演>を参考下さい)
そっくりさんショーを除けば、まずは同じみヘルデンテノールのフォークト演じるヴァルターですよね。その伸び伸びとした軽やかなテノールの第三幕第五場「朝はバラ色に輝いて」は感動的です。
光ったのはポーグナー役グロイスベックと役得ザックスのフォレのバス-バリトンで、演技も合わせて楽しさいっぱいでした。ほぼ主役のミヒャエル・フォレは楽しませてくれましたね。
それにしてもリスト役のポーグナーを演じる、グロイスベックはリスト(の写真)そっくりw

音楽
P.ジョルダンの指揮はかなり抑え目に感じてしまいましたが、いかがでしょう。



全体としては、リストやワーグナーそっくりさん等々に面白さはあったものの、この楽劇に感じる4時間をゆうに超える長さは払拭できませんでした。

問題の香りがするドイツ・芸術を讃えるザックスを最後に浮き立たせる様に反ユダヤ舞台展開をしたり、エヴァが愛した2人(ザックスとヴァルター)を共にワグナーにしたりと刺激のある演出ではありました。もっと視覚的にもアヴァンギャルドさを期待してしまいますね、バイロイトですからw

ワグナー役のザックスが、憎まれ役ベックメッサーのユダヤ人指揮者レヴィをばかにした態度をとったり、本来の喜劇的演技はそのまま生かされて楽しめました。

ネットでの現地の印象、音楽と政治的背景の関連付けについての反応は様々な様です。




<出演>
ハンス・ザックス(靴屋):ミヒャエル・フォレ [Michael Volle]
 → 老ワーグナー
ファイト・ポーグナー(金細工師):ギュンター・グロイスベック [Günther Groissböck]
 → リスト
ジクストゥス・ベックメッサー(市役所の書記):ヨハネス・マルティン・クレンツレ [Johannes Martin Kränzle]
 → へルマン・レヴィ (指揮者Hermann Levi, 1882年パルジファル初演を振った)
  実はクレンツレもレーヴィ(の写真)にそっくり!!
ヴァルター・フォン・シュトルツィング(若い騎士):クラウス・フロリアン・フォークト [Klaus Florian Vogt]
 → 若きワーグナー
ダーヴィット(ザックスの従弟):ダニエル・ベーレ [Daniel Behle]
 → 前奏で現れたワーグナーの一人
エヴァ(ポーグナーの娘):アンネ・シュヴァーネヴィルムス [Anne Schwanewilms]
 → コジマ (ワグナーの奥さんで、リストの娘です)
マグダレーネ(エヴァの乳母):ヴィープケ・レームクール [Wiebke Lehmkuhl]
 → ポーグナー家の女中

<合 唱> バイロイト祝祭合唱団
<管弦楽> バイロイト祝祭管弦楽団
<指 揮> フィリップ・ジョルダン [Philippe Jordan]
<演 出> バリー・コスキー [Barrie Kosky]

収録:2017年7月25日 バイロイト祝祭劇場(ドイツ)

*例えば「barrie kosky Die Meistersinger」等で検索すると情報が色々出てきますね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ザルツブルク復活祭音楽祭2017 楽劇「ワルキューレ」を NHKプレミアムシアターで観る

7月の「ザルツブルク音楽祭」より前、4月に行われる「ザルツブルクイースター音楽祭 (Die Salzburger Osterfestspiele)」は、1967年にカラヤン(Herbert von Karajan, 1908/4/5 - 1989/7/16) によって設立され50周年を迎えましたね。
今回の「ワルキューレ (Die Walküre)」は、カラヤンが自ら演出も行った そのザルツブルク復活祭(イースター)音楽祭1967年公演の再演出ですね。

今更のワーグナーの"指輪"ワルキューレに関しては案内は不要でしょうね。4時間近くかかりますが、豪華な主役陣を楽しみましょう。

SalzburgerOsterfestspiele2017-Walküre

はどこまでがカラヤンの再現で、ネミロヴァのオリジナリティが生かされたのかはわかりません。でも近年にはない時代を感じたのは衣装を含めてアヴァンギャルドさが低い事かもしれません。
今のバイロイトとはやっぱり違いますね。

台・は、トネリコの木を模した第一場やリングの第二・三場等、基本はオリジナルベースですが、バックに投影した手書きの絵は現代の技術に置き換えられているそうです。
衣装も今の時代の演出のようにスーツ姿やアヴァンギャルドさはありませんね。

、男性陣ではヴォータンのコワリョフはハマリ役の出来でしたね。お馴染みツェッペンフェルトのバスはバリトンよりで、重厚な役よりもフンディングの様な地味な役が合いますね。ジークムントのザイフェルトは演技・歌唱共に魅せてくれました。(体型と動きのモッサリ感は…w)
女性陣では、アニヤ・カンペは役得のブリュンヒルデを演じましたが、同じアニヤでもハルテロス演じるジークリンデの素晴らしさが光りました。名脇役?クリスタ・マイヤーも流石で、キーとなるヴォータンの妻フリッカを楽しませてくれましたね。

はもちろん注目のティーレマン。今やバイロイト音楽祭を牛耳り、ワーグナー振りの第一人者ですからねぇ。4管編成・弦5部16型で、ティーレマンの指揮は陰影強いディナーミクが感じられました。きっと生の舞台では凄かった事と思います。



全体としては、第三幕ブリュンヒルデとヴォータンのシーンは今ひとつだったかもしれませんが、いつ観ても楽しいワルキューレですね。ただ、ワグナーの楽劇は個人的にはアヴァンギャルド傾向が好みなので、目新しい刺激に欠け旧態さを感じてしまいました。
とは言え自宅で今年のザルツブルクイースター音楽祭「ワルキューレ」が観られるなんて素晴らしい事です。



<出 演>
 ジークムント : ペーター・ザイフェルト [Peter Seiffert]
 フンディング : ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
 ジークリンデ : アニヤ・ハルテロス [Anja Harteros ]
 ブリュンヒルデ : アニヤ・カンペ [Anja Kampe]
 ヴォータン:ヴィタリー・コワリョフ [Vitalij Kowaljow]
 フリッカ:クリスタ・マイヤー [Christa Mayer]
  ゲルヒルデ:ヨハンナ・ヴィンケル [Johanna Winkel]
  オルトリンデ:ブリット=トーネ・ミュラーツ [Brit-Tone Müllertz]
  ヴァルトラウテ:クリスティーナ・ボック [Christina Bock]
  シュヴェルトライテ:カタリーナ・マギエラ [Katharina Magiera]
  ヘルムヴィーゲ:アレクサンドラ・ペーターザマー [Alexandra Petersamer]
  ジーグルーネ:ステパンカ・プカルコヴァ [Stepanka Pucalkova]
  グリムゲルデ:カトリン・ヴントザム [Katrin Wundsam]
  ロスヴァイセ:ジモーネ・シュレーダー [Simone Schröder]


<管弦楽> ドレスデン国立管弦楽団 [Staatskapelle Dresden]
<指 揮> クリスティアン・ティーレマン [Christian Thielemann]

<演 出> ヴェラ・ネミロヴァ [Vera Nemirova]
<舞台美術> ギュンター・シュナイダー=ジームセン [Günther Schneider-Siemssen]
<舞台再構築> ジェンス・キリアン [Jens Kilian] 1967年の舞台再現者

収録:2017年4月5,8日 ザルツブルク祝祭大劇場


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

バーデン・バーデンのオペラ・ガラ(OPERA GALA live from Baden-Baden)を楽しむならやっぱり映像付きですね

当初CDで所有していた2007年盤ですが、2016年盤が映像オンリーだったので、合わせてDVDを購入して楽しみました。遅れてのインプレですw

オペラ・ガラ バーデン・バーデン

オペラはもちろん楽しいですが、この様なガラ・コンサートでは色々なアリアを舞台さながらに、またエンターテイメントを効かせて楽しめるので大好きですね。
バーデン・バーデンのホールは、オーケストラを周り囲むように舞台設定されています。2016年は舞台右側にも回り上がっていますね。



THE OPERA GALA live from Baden-Baden 2007
Anna Netrebko(soprano), Elīna Garanča(mezzo-soprano), Ramón Vargas(tenor), Ludovic Tézier(baritone), Marco Armiliato(cond.)

曲目も四人のバランスの良さも楽しさいっぱいです。でもこの年は花のある女性陣二人エリーナ・ガランチャとアンナ・ネトレプコが主役でしょう。艶やかな声のネトレプコ(まだプロポーションも…w)と、個人的にファンのガランチャの透明感と切れ味の歌声ですね。そして重唱曲が多いのも楽しめます。


6曲目 ベッリーニ:『ノルマ』より「清らかな女神よ」ネトレプコ:前半はしっとりと、後半はコロラトゥーラ風に素晴らしいソプラノを聴かせてくれます。お見事!!の喝采です。
7曲目 ロッシーニ:『チェネレントラ』より「不安と涙のうちに生まれ」ガランチャ:続けてガランチャもテクニックを見せつけるような素晴らしい歌声披露です。もちろん大喝采
10曲目 ドリーブ:『ラクメ』より「花の二重唱」ネトレプコ、ガランチャ:澄んで美しい重唱です。ラストは舞台から去りながら遠ざかる歌声が静かに流れます。このデュエットの素晴らしさで、前半のハイライトですね。
 ★試しにYouTubeで観てみる?

11曲目 ビゼー:『真珠とり』より「神殿の奥深く」ヴァルガス、テジエ:続く男性人重唱も聴かせます。しっとりとした前半から風雲急を告げる変化に美しい調べ、男の友情で好きな楽曲でグッと来ます。前曲ドリープのラクメと似た同じ叙情的フランス・オペラで曲調もよく似ていますね。
16曲目 ヴェルディ:『リゴレット』より「愛する美しい乙女よ」ネトレプコ、ガランチャ、ヴァルガス、テジエ:全員登場です。選択曲も良く、特にガランチャとヴァルガスはバッチリ。この日のメインでしょう。
17曲目 レハール:『ジュディッタ』より「私のくちびるは熱いキスをする (私は自分自身が分からない)」ネトレプコ:歌って踊って、靴を脱ぎ飛ばす。観客に花を投げたり、コンマスに抱きついたりと大暴れのネトレプコちゃんエンターテイメントの舞台です。楽しさいっぱい、ガラならではの楽しさですね。大ブラボーです!!
20曲目 ビゼー:『カルメン』より「闘牛士の歌」テジエ:控えめながらテジエのバリトンは好みの声で、この曲らしさをスマートに楽しめます。やっぱりこの曲は大喝采です!!
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21曲目 ヴェルディ:『椿姫』より「乾杯の歌」ネトレプコ、ガランチャ、ヴァルガス、テジエ:全員ワイン片手で乾杯しながら歌います。手拍子も沸き、もぅ最高です!! これほどピッタリな曲はないでしょう。スタンディングオベーションです。最後の二曲は選曲がずるい!!

【演奏】マルコ・アルミリアート(指揮)、SWR南西ドイツ放送交響楽団
【収録】2007年7-8月、バーデン・バーデン祝祭劇場

試しにYouTubeで全部観てみる?
 なんと全編観られます!! 映像も良く、それも英訳付きです。


CDですと曲目は少なくなりますが、いい曲は全部入っていますね。




OPERA GALA live from Baden-Baden 2016
Anja Harteros(soprano), Ekaterina Gubanova(mezzo-soprano), Jonas Kaufmann(teno), Bryn Terfel(bass/baritone), Marco Armiliato(cond.)

2016年の主役はやっぱり男性陣ですね。女性陣二人もさることながら、情感と艶やかな歌声のヨナス・カウフマンと、表情豊かに演じ歌うブリン・ターフェルの二人は場をもたせますね。


4曲目 プッチーニ:『トスカ』より「星は光りぬ」カウフマン:実はあまり好きではないカウフマンですが、情感強いテノールはこの曲にぴったりです。声援も一番人気です。
5曲目 ボイト:『メフィストーフェレ』より「私は悪魔の精」ターフェル:演じるターフェルの楽しさいっぱい、会場と掛け合う指笛でも楽しませてくれます。
7曲目 マスカーニ:『カヴァレリア・ルスティカーナ』より「お前ここにいたのか、サントゥッツァ?」グバノヴァ、カウフマン:やっぱりガラの楽しみの一つはデュエットですね。オペラの舞台さながらのやり取りは素晴らしいです。グバノヴァの熱唱とカウフマンの艶やかな歌声が素晴らしいですね。前半の見せ場です。
11曲目 ヴェルディ:『ドン・カルロ』より「呪わしき美貌」グバノヴァ:グバノヴァの熱唱はやっぱり聴かせます。予定では好きなガランチャだったのですが、これなら変わっても納得感が高いですね。
16曲目 ジェリー・ボック:『屋根の上のバイオリン弾き』より「金持ちだったら」ターフェル:ターフェルの語りとダンスw付きですから最高ですね。この歌は英語版なので楽しめます。コミカルな曲調でターフェルの魅力に溢れてます。
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18曲目 レハール:『ほほえみの国』より「君こそわが心の全て」グバノヴァ、カウフマン、ハルテロス、ターフェル:お約束の全員揃いです。四人の仕草も含めて楽しさいっぱい、これが楽しくないわけがありませんね。ちなみにジャケットはこの歌のシーンです。

【演奏】マルコ・アルミリアート(指揮)、バーデン・シュターツカペレ
【収録】2016年7月22, 24日、バーデン・バーデン祝祭劇場



価格からも絶対オススメですね。楽しさいっぱいですから。こんなのからオペラに入ってもいいですよね。
どちらか一本なら2007年盤の方。重唱シーンも多く、選曲が舞台受けするうまさもありますね。個人的には好きな曲も多いです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

バイエルン国立歌劇場公演 歌劇「ラ・ファヴォリータ」をNHKプレミアムシアターで観る

言わずと知れたイタリアのオペラ作曲家ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti, 1797/11/29 - 1848/4/8)、その後期(1840年)作品ですね。初演はその年の12月2日、パリ・スカラ座ですからいかに人気があったかわかります。
個人的には馴染みのない「ラ・ファヴォリータ La favorite (全4幕)」ですが、なんといってもレオノーラを演じるMSガランチャのファンですから これを観ない手はありません。

■超あらすじ
国王アルフォンソの愛人レオノーラに恋をした修道士フェルナンドは、修道院を出てレオノーラを射止める為に武勲をたてます。その褒賞として王からレオノーラとの結婚を得ますが、王の愛人である事を知りません。式で修道院長であるバルダッサーレに知らされ屈辱と失望で修道院に戻ります。
フェルナンドの元に瀕死の尼僧姿のレオノーラが現れ許しを請います。許されたレオノーラはフェルナンドの元で息を引き取ります。
BayerischeStaatsoper2016-LaFavorite.jpg

新演出 になり原作フランス語版で、時代は現代に置き換えられていますね。舞台は前衛ではありませんが、血まみれのキリストが蠢いたり、プロジェクションマッピングの使い方でそれなりの特異性が感じられます。ただ、ストーリー展開では知見がないのでニーアマイアが何か変化球を投げているかはわかりませんw

舞台・衣装 は現代的にシンプルに、これも今の時代の主流のパターンでしょう。
スーツが基本で派手な絵柄を排し、暗めの照明や具象的なもののない舞台と合わせて時代背景を排除していますね。その中でレオノーレの赤のコート、王のブルーのスーツでの色のコントラストや、暗い舞台に斜光のライティングは特徴的です。

配役 ではフェルナンド役のポレンザーニのテノールは悪くありません。表現ある演技と合わせて楽しませてくれました。ちょい役の二人、イネスのブノワのソプラノとガスパーロのミルズの声も良かったですね。
バルダッサーレ役のカレス、アルフォンソ11世のクヴィエチェンは声の表情が薄く感じましたね。
そして何と言ってもガランチャのメゾソプラノですね。声量があり伸びも素晴らしく、ちょっと臭い演技と合わせて楽しませてくれました。演技はドラマトゥルギーのカーリチェックの範疇かもしれませんが。

音楽 は特に違和感や主張を感じませんでした。同歌劇場2011年9月29日の来日公演の演奏でも奇をてらわない印象をインプレしてありますから、方向性は同じかもしれません。

気になった事 があるとすれば、フェルナンドの性格がおよそ修道士とは思えないほど激情的。最後に瀕死のレオノーラが現れるのがあまりに唐突。そしてオペラ内容とは違いますが、日本語字幕にかなり違和感を感じた事でしょう。



全体では舞台演出や重厚さのパートに目が行ってバイロイトのワグナーの様な気配を感じましたね。もちろん全体を流れる曲調は全く異なります。ただこのオペラ自体にも山場のメリハリや、王と神(ここではキリスト)との葛藤等、そして最後の救済で十分なストーリー展開があり楽しめました
40歳になったガランチャは艶やかな声に落ち着いた磨きがかかり素晴らしいのですが、思いの外出番が少なかったですね。


<出 演>
・レオノーラ (アルフォンソ11世の愛人):エリーナ・ガランチャ [Elīna Garanča]
・フェルナンド (レオノーラに恋する修道士):マシュー・ポレンザーニ [Matthew Polenzani]
・アルフォンソ11世 (カスティーリャ国王):マリューシュ・クヴィエチェン [Mariusz Kwiecień]
・バルダッサーレ (サンティアゴ・デ・コンポステーラ修道院長):ミカ・カレス [Mika Kares]
・ドン・ガスパーロ (廷臣):ジョシュア・オーウェン・ミルズ [Joshua Owen Mills]
・イネス (レオノーラの侍女):エルザ・ブノワ [Elsa Benoit]

<合 唱> バイエルン国立歌劇場合唱団
<合唱指揮> ゼーレン・エックホフ
<管弦楽> バイエルン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> カレル・マーク・チチョン [Karel Mark Chichon]

<美 術> アレクサンダー・ミュラー・エルマウ [Alexander Müller-Elmau]
<衣 装> キルシュテン・デフォフ [Kirsten Dephoff]
<脚色・ドラマトゥルギー> ライナー・カーリチェック [Rainer Karlitschek]
<照 明> ミヒャエル・バウアー [Michael Bauer]
<演 出> アメリ・ニーアマイア [Amélie Niermeyer]


収録:2016年11月3日、6日 バイエルン国立歌劇場(ドイツ・ミュンヘン)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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