スティーヴ・ライヒ(Steve Reich) の Duet をクリスチャン・ヤルヴィで聴く

昨年発売と同時に購入、この3月1,2日のライヒ80歳記念来日コンサートの前にインプレを書こうと思っていました。
米ミニマル音楽は然程得意ではありませんでしたが、ライヒだけはなぜかこのブログでも度々紹介済みですし、以前発売された全集(Nonesuch 10CDs)他も所有しています。好きなBang On A Canとの関係が強い事も要因です。

そして米国生まれで現代音楽を得意としいているクリスチャン・ヤルヴィ(Kristjan Järvi)ですね。本アルバム発売前の2016年5月18日に都響とのコンサートで、収録曲"Duet"と"The Four Sections"を聴きました。特に後者は素晴らしく、記憶に新しいです。

演奏はK.ヤルヴィが首席指揮者を務めるMDR交響楽団(MDR Leipzig Radio SO)、後半2曲はMDR合唱団(MDR Leipzig Radio Choir)が入りオーケストラ版世界初録音になります。お馴染み"Clapping Music"のオマケ付きw、ライヒ本人とヤルヴィになりますね。

Duet / Steve Reich (Kristjan Järvi:cond.)

Duet for two Solo Violins and String Orchestra
 (Dedicated to and written for Yehudi Menuhin)
昨年の都響とのコンサートでは、その美しさが記憶にあります。ここでも第一第二vnの音色とミニマル弦楽のリズムの美しい対比を聴く事ができますね。このCDの方がいいかな…
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の演奏です


Clapping Music
お馴染み二人の手拍子クラッピング・ミュージックです。お約束で良し悪しありません、この二人がライヴでやっている楽しさです。
来日公演の演目にもなり、一曲目にライヒ自身と指揮者コリン・カリーでやります。盛り上がること間違いなしですね。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Steve Reich と Wolfram Winkel になりますね。


The Four Sections
 I. Strings - II. Percussion - III. Winds and Brass (with Strings) - IV. Full Orchestra
都響とのコンサートで素晴らしい演奏だった曲ですね。以下コンサートのインプレ流用です。『大編成オケにWピアノandキーボード、Wヴィブラフォン、Wマリンバのミニマルです。
三つの鍵盤打楽器が入るパートでの色彩感の凄さは格別。二台のピアノの上にそれぞれ置かれたキーボードが一つの和音をループ処理する様な感じで長音処理した音も厚みを生み出して素晴らしいです。最後はラベルのボレロ風で盛り上がります』
これは都響の方が良かった感じがしますが、この曲のヴァリエーション展開の素晴らしさは変わりませんね。

Daniel Variations
 I. I Saw a Dream - II. My Name is Daniel Pearl - III. Let the Dream Fall Back on the Dreaded - IV. I Sure Hope Daniel Likes My Music, When the Day Is Done
第一第三楽章は聖書のダニエルの啓示から、第二第四楽章は2002年にパキスタンで誘拐殺人された米ユダヤ人ダニエル・パールのテキストによる楽曲です。ヴァリエーション変化よりも陶酔系ミニマルですが、サウンド的には宗教曲でしょう。ライヴなら凄い抑揚感が味わえそうです。(基本的に宗教曲はコメントしづらいです)

You Are Variations
 I. You Are Wherever Your Thoughts Are - II. Shiviti Hashem l'negdi - III. Explanations Come to an End Somewhere - IV. Ehmor m'aht, v'ahsay harbay
ライヒらしい鍵盤打楽器主役のミニマルで、ヘブライ語(パートII, IV)と英語(パートI, III)の哲学的瞑想テキストを使った楽曲です。Fast-Slow-Slow-Fastで、こちらの方がライヒのミニマルを素直に堪能できます。パートIVは前曲Danielの長音コーラスパターン(オーグメンテーション)と似ています。
テヒリームやデザート・ミュージックとの類型を指摘される事も多いですね。Fastパートの印象はこちらの方がテヒリームより明瞭でしょう。



CD2枚組でライヒを味わえるのは嬉しいですね。それを越えるものは弱いですが、CD2のVariationsの2曲、特にYou Are、は一度ライヴで味わいたいものです。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

トリスタン・ミュライユ(Tristan Murail)の代表作 Winter Fragments を聴く

スペクトル楽派創始者の一人、フランスの現代音楽家トリスタン・ミュライユ(Tristan Murail, 1947/3/11 - ) は好きな現代音楽家です。同じく創始者の故グリゼーの即興性に比べると空間音響性が明確で聴きやすいのも事実ですね。

このアルバムは印象的な代表作「Winter Fragments 冬の断章」が入っている事でしょう。早世したグリゼーの代表作「空間音響」のモチーフを用いて作られました。
一曲を除きスタイルが確立された1980年以降、2000年前後の作品になります。
演奏は、指揮:Michel Galante, フルート:Erin Lesser, 室内楽:Argento Chamber Ensemble です。

Winter Fragments / Tristan Murail

Winter Fragments (2000年), for ensemble & electronics
グリゼーの「空間音響」ミの自然倍音の第3倍音のシを基音として同じモチーフで作られているそうで、煌めきと共鳴の空間音響音楽です。細やかな各楽器の旋律が、空間に広がるように響ます。pfは打音と残響音です。そして何と言ってもミュライユらしいキラキラとした音がいいですね。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Unanswered Questions (1995年), for flute
フルートのソロ曲ですが、ここでも展開は同様ですね。幽玄幻想の響です。能の笛、能管のイメージに近いでしょうか。

Ethers (1978年), for flute & ensemble
この曲だけが古く、転機となった1980年のIRCAMでの情報理論の研修以前の作品になります。音数がやや多く、各楽器間の絡みもポリフォニー的で密度が高いです。間や空間を感じられる余地がまだ少ないですね。明らかに作風が異なります。

Feuilles a travers les cloches (1998年), for flute, violin, cello & piano
各楽器が緩い音階を奏で、空間を音で形作る様です。密度の薄めな音と対照的に緊張感は高く、それも空間を意識させますね。

Le Lac (2001年), for ensemble
一曲目の Winter Fragments はこの曲で完全な締めとなる、とライナーノートにあります。それは自然界の音の音響解析と、それらのelementsによるスコアのアイディアにあるそうです。
曲は煌めきを抑えて、やや暗めの印象です。間と響の空間に変わりはありません。音数による表情とクラスター的な音は増えています。音響解析からの鳥の鳴き声風な音もここで出てきますね。
乱暴な言い方をすれば、メシアン - ブーレーズ からの流れを感じられますね。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
 英国初演。John Stringer指揮、Chimera Ensemble による演奏で、楽器構成が見られます。




個人的には一二曲目の静的世界が好きですね。何がここまで空間を印象付けるのでしょう。ふと日本の能の世界を思いましたね。そんな音と空間の関係を感じます。最後のLe Lacも興味深いです。
やっぱり良いですね



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös)の SNATCHES を聴く

ペーテル・エトヴェシュ(Peter Eötvös, 1944/1/2 - ) はハンガリーの現代音楽家ですが、日本では指揮者としての顔の方が知名度が高いでしょうか。
特殊奏法と電子音楽をベースにして声楽も絡めますね。オペラも得意としていて、もちろん紹介済みの好きな現代音楽家の一人です。今の時代のらしい前衛でしょう。

このアルバムはジャズをモチーフにした2000-2002年作品のアルバムになりますね。

SNATCHES / Peter Eötvös

Snatches of a Conversation (2001年) for Double-Bell Trumpet Solo, Speaker and Ensemble
 Marco Blaauw | double-bell trumpet, Omar Ebrahim | speaker, Ensemble Musikfabrik, Peter Eötvös | conductor
Double-Bell Trumpetはラッパ部分(ベル)が二つのトランペットですね。それと語りの二人を絡めたジャジーな曲です。面白いですよ。avant-gardeジャズと言っても全く問題ありません。要は無調無拍混沌ノイズの様な難解さではありません。語りは英語ですが内容は特別なものはない様な「なんていいやつなんだ...何か言えよ...」みたいなレベルです。

Jet Stream (2002年) for Trumpet Solo and Orchestra
 Markus Stockhausen | trumpet, BBC Symphony Orchestra, Peter Eötvös | conductor
トランペットをフィーチャーした曲で、主席客演指揮者を務めた事があるBBC SOをエトヴェシュ本人が指揮します。ここでもtpの旋律にはジャズを感じます。オケの各楽器はポリフォニーで反復が基本ですが、低音はドローン的に管楽器は響きを効かせて時にクラスターになります。その共鳴はまさに空間音響音楽です。エトヴェシュの一つの姿ですね。21'以上あるのですが、短く感じます。
やっぱりヴァレーズを思い出します。悪い意味ではありません。

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Paris-Daker (2000年) for Tombone Solo and Big Band
 Lásló Göz | double-bell trombone with harmonizer, Budapest Jazz Orchestra, Gergely Vajda | conductor
ハーモナイザーを採用して重音を出すdouble-bell tromboneをフィーチャーした曲です。そこがポイントの楽曲で、ハーモナイザーの電子処理が面白ろく生きています。それ以外は軽快な現代版ビッグバンドジャズです。

Jazz Improvisations on Themes from Peter Eotvos' Opera le Balcon
pianoBéla Szakcsi | piano
エクサン・プロヴァンス音楽祭委託作品のエトヴェシュのオペラ『バルコン Le Balcon (2002年)』(ジャン・ジュネ原作)からピアノと、次のエレキ・ギターのジャズ即興曲ですね。
前衛色バップ系のジャズピアノ曲です。あまり興味が湧きませんね。

Jazz Improvisations on Themes from Peter Eotvos' Opera le Balcon
electric guitarGábor Gadó | electric guitar
こちらの方が面白いですね。テープ(事前録音)の音と当然ながら電子処理されて(ボリュームコントロールではないと思います)奇妙な微妙な揺らいだ神秘的音色を響かせます。エレキギターと現代音楽の相性の良さが見事にマッチして面白いですね。



物珍しくはありませんが、ジャズを弄ればもっと面白い事が出来そう。みたいな音楽的イディオムです。でもこの中では2曲目のJet Streamと最後の曲にエトヴェシュらしさが滲み出て楽しいですね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ラッヘンマン(Helmut Lachenmann)の Allegro Sostenuto, Pression 他を聴く

ビッグネームであり、好きな現代音楽家ヘルムート・ラッヘンマン(Helmut Friedrich Lachenmann, 1935/11/27/ - )です。何回もインプレ済みですから紹介は割愛です。

このアルバムはちょっと古い1960年代-80年代のソロとトリオ作品になりますね。

Allegro Sostenuto, Pression, Dal Niente, Interieur I / Helmut Lachenmann


Allegro Sostenuto (1986-88年)
 [Clarinet] Eduard Brunner, [Cello] Walter Grimmer, [Piano] Massimiliano Damerini
クラリネット演奏者のエドゥアルト・ブルンナーの委嘱作品で、チェロ・ピアノとのトリオになります。楽風と評価の安定した'80年代後半の作品で、例によって間を十分にとりながら音数の少ない各楽器のポリフォニー風で空間に漂う緊張感が好きですね。もちろん後半の一部では音数が増えて饒舌なポリフォニーも現れます。
特殊奏法への依存が少ない感じで、ノイズ気配は薄く楽器同士の語り合いを強く感じます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
 はじめ少し音が出ませんね。でも楽譜付です!

Pression (1969年)
 [Cello] Walter Grimmer
バリバリのチェロ特殊奏法曲で静音と強音の対比はありますが、グリグリギギギィィ.....的です。(笑) 年代からいってそういう楽風の作品が予想されるそのものですね。一曲目との対比でラッヘンマンの推移がよくわかります。ライナーノートには特殊奏法の楽譜があり、面白いです。
ここから3曲は前衛の衰退へ向かう時期でラッヘンマンの特殊奏法と無音・静音の世界が出来上がる時期でしょうか。

Dal Niente (Interieur III) (1970年)
 [Clarinet] Eduard Brunner
1年後のクラリネット独奏曲ですが、特殊奏法一辺倒ではありません。特殊奏法を絡ませながら流れる旋律を付けたり、弱音では特殊奏法で押したりと表情変化がありますね。

Interieur I (1966年)
 [Percussion] Johannes Beer
パーカッション・ソロでマリンバやヴィブラホーンといった鍵盤打楽器も入ります。数多い楽器の配置がライナーノートに書いてあります。楽風と構成は変わらず、個々の楽器での特殊奏法というよりも鍵盤打楽器に対してタムタムの様な打楽器がそれに対応する感じです。当然ラッヘンマンらしい無と静音が生きています。



ラッヘンマンの楽風の変化がわかって面白いアルバムです。'80年代以降のダルムシュタットへ向かうラッヘンマンの進化を再確認できますね。いずれも無〜弱音での緊張感が素晴らしいです。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

バイエルン国立歌劇場公演 歌劇「ラ・ファヴォリータ」をNHKプレミアムシアターで観る

言わずと知れたイタリアのオペラ作曲家ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti, 1797/11/29 - 1848/4/8)、その後期(1840年)作品ですね。初演はその年の12月2日、パリ・スカラ座ですからいかに人気があったかわかります。
個人的には馴染みのない「ラ・ファヴォリータ La favorite (全4幕)」ですが、なんといってもレオノーラを演じるMSガランチャのファンですから これを観ない手はありません。

■超あらすじ
国王アルフォンソの愛人レオノーラに恋をした修道士フェルナンドは、修道院を出てレオノーラを射止める為に武勲をたてます。その褒賞として王からレオノーラとの結婚を得ますが、王の愛人である事を知りません。式で修道院長であるバルダッサーレに知らされ屈辱と失望で修道院に戻ります。
フェルナンドの元に瀕死の尼僧姿のレオノーラが現れ許しを請います。許されたレオノーラはフェルナンドの元で息を引き取ります。
BayerischeStaatsoper2016-LaFavorite.jpg

新演出 になり原作フランス語版で、時代は現代に置き換えられていますね。舞台は前衛ではありませんが、血まみれのキリストが蠢いたり、プロジェクションマッピングの使い方でそれなりの特異性が感じられます。ただ、ストーリー展開では知見がないのでニーアマイアが何か変化球を投げているかはわかりませんw

舞台・衣装 は現代的にシンプルに、これも今の時代の主流のパターンでしょう。
スーツが基本で派手な絵柄を排し、暗めの照明や具象的なもののない舞台と合わせて時代背景を排除していますね。その中でレオノーレの赤のコート、王のブルーのスーツでの色のコントラストや、暗い舞台に斜光のライティングは特徴的です。

配役 ではフェルナンド役のポレンザーニのテノールは悪くありません。表現ある演技と合わせて楽しませてくれました。ちょい役の二人、イネスのブノワのソプラノとガスパーロのミルズの声も良かったですね。
バルダッサーレ役のカレス、アルフォンソ11世のクヴィエチェンは声の表情が薄く感じましたね。
そして何と言ってもガランチャのメゾソプラノですね。声量があり伸びも素晴らしく、ちょっと臭い演技と合わせて楽しませてくれました。演技はドラマトゥルギーのカーリチェックの範疇かもしれませんが。

音楽 は特に違和感や主張を感じませんでした。同歌劇場2011年9月29日の来日公演の演奏でも奇をてらわない印象をインプレしてありますから、方向性は同じかもしれません。

気になった事 があるとすれば、フェルナンドの性格がおよそ修道士とは思えないほど激情的。最後に瀕死のレオノーラが現れるのがあまりに唐突。そしてオペラ内容とは違いますが、日本語字幕にかなり違和感を感じた事でしょう。



全体では舞台演出や重厚さのパートに目が行ってバイロイトのワグナーの様な気配を感じましたね。もちろん全体を流れる曲調は全く異なります。ただこのオペラ自体にも山場のメリハリや、王と神(ここではキリスト)との葛藤等、そして最後の救済で十分なストーリー展開があり楽しめました
40歳になったガランチャは艶やかな声に落ち着いた磨きがかかり素晴らしいのですが、思いの外出番が少なかったですね。


<出 演>
・レオノーラ (アルフォンソ11世の愛人):エリーナ・ガランチャ [Elīna Garanča]
・フェルナンド (レオノーラに恋する修道士):マシュー・ポレンザーニ [Matthew Polenzani]
・アルフォンソ11世 (カスティーリャ国王):マリューシュ・クヴィエチェン [Mariusz Kwiecień]
・バルダッサーレ (サンティアゴ・デ・コンポステーラ修道院長):ミカ・カレス [Mika Kares]
・ドン・ガスパーロ (廷臣):ジョシュア・オーウェン・ミルズ [Joshua Owen Mills]
・イネス (レオノーラの侍女):エルザ・ブノワ [Elsa Benoit]

<合 唱> バイエルン国立歌劇場合唱団
<合唱指揮> ゼーレン・エックホフ
<管弦楽> バイエルン国立歌劇場管弦楽団
<指 揮> カレル・マーク・チチョン [Karel Mark Chichon]

<美 術> アレクサンダー・ミュラー・エルマウ [Alexander Müller-Elmau]
<衣 装> キルシュテン・デフォフ [Kirsten Dephoff]
<脚色・ドラマトゥルギー> ライナー・カーリチェック [Rainer Karlitschek]
<照 明> ミヒャエル・バウアー [Michael Bauer]
<演 出> アメリ・ニーアマイア [Amélie Niermeyer]


収録:2016年11月3日、6日 バイエルン国立歌劇場(ドイツ・ミュンヘン)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ヘレナ・トゥルヴェ(Helena Tulve)の Lijnen を聴く

エストニアの女性現代音楽家 ヘレナ・トゥルヴェ(Helena Tulve, 1972/4/28- )は、リゲディの夏季コースや、IRCAMでサーリアホやシェルシといったビッグネームに学んでいます。
グレゴリオ聖歌や東洋音楽の響きを元にするスペクトル楽派で、欧州エクスペリメンタリズムの若手という位置づけでしょうね。

本アルバムは2008年のECMでのデビューアルバムになります。

Lijnen / Helena Tulve

À travers (1998年) for ensemble
Conductor – Olari Elts, Ensemble – NYYD Ensemble
 空間音響音楽ですね。各楽器の響きと残響音を調和させて聴かせます。一部和声に中近東の様な音色も感じますね。全体の流れは澄んだ色合と強音反響の変化がありますが、強烈に残る印象はありません。

Lijnen (2003年) for voice & ensemble
Conductor – Olari Elts, Ensemble – NYYD Ensemble, Lyrics – Roland Jooris, Voice – Arianna Savall
 表題曲です。ここでも同展開ですが、小刻みな楽器の音色と切れ上がるsop.voiceが特徴的です。独特な民族音楽和声が感じられます。
 試しにYouTubeで聴いてみる?

Öö (1997年) for saxophone quartet
Alto Saxophone – Jörgen Pettersson, Baritone Saxophone – Per Hedlund, Ensemble – Stockholm Saxophone Quartet, Soprano Saxophone – Sven Westerberg, Tenor Saxophone – Leif Karlborg
 各サックスがロンドの様に音色を重ねるのが興味深いです。楽器構成が変わっただけではないとは思いますが。ただ全体の流れは、平板な静音パートと強音の組み合わせです。
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Abysses (2003年) for flutes & ensemble
Conductor – Olari Elts, Ensemble – NYYD Ensemble, Flute – Emmanuelle Ophèle-Gaubert, Mikhel Peäske
 フルートが特徴的、和楽の様な響きを感じますね。変化の少ない楽曲でちょっと眠くなります。特殊奏法もあるのですが、それが生きている様には思えませんね。

Cendres (2001年) for ensemble
Conductor – Olari Elts, Ensemble – NYYD Ensemble
 ここではカオスでクラスターな即興性のパートで入ります。中に煌めく音が潜んで緊張感のある楽曲です。面白いですが和声の特徴は無くなり何かの類型的です。

Nec ros, nec pluvia... (2004年) for string quartet
Ensemble – Silesian String Quartet, Viola – Lukasz Syrnicki, Violin – Arkadiusz Kubica & Szymon Krzeszowiec, Violoncello – Piotr Janosik
 前曲と似た構成です。ただ、より先鋭的で神経質な音の展開になっているので興味を惹かれます。これに独特な何かがあれば楽しいでしょうね。



民族音楽和声と空間音響系のコラボ音楽から刺激のある楽曲に変化していますね。でも何か突出するものが感じられず、結局印象に残りません。
近年は反復や緩いカオスを感じる作品もありますが、惹かれるものが薄いのは…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

シモン・ヴァン・ホーレン(Simon Van Holen) の Pro Contra! を聴く

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)のコントラファゴット奏者シモン・ヴァン・ホーレン(Simon Van Holen, 1985 - )のアルバムですね。
なぜか管楽器のソロ、もしくは主役のアルバムは衝動買いの対象ですw 扱われている楽曲が特に現代音楽ではなくとも独特な世界が楽しめますよね。

ソロ、チェロとのDuo、ヴィオラx2とチェロとの四重奏、弦楽五重奏との共演と演奏形式が多彩です。また楽曲も古典から近代、現代に及びます。
バスーン曲のヴァリエーションを散りばめたアルバムで、バスーン以外はRCOのメンバーになります。

Pro Contra!: Works for Bassoon & Contrabassoon / Simon Van Holen

Divertissement for bassoon and string quintet (1942年)
フランスの新古典主義音楽家ジャン・フランセ(Jean Françaix, 1912/5/23 - 1997/9/25)の若き日の作品です。
四楽章で、軽妙洒脱なフランス曲です。弦楽とファゴットに違和感は全くなく、ちょっと洒落たBGMといった感じですね。作風から行けば後期ロマン派の流れも感じます。曲としたらこれが一番です。

Baßnachtigall for contrabassoon solo op.38 (1922年)
ナチスによる退廃音楽として知られる?ダダイズムのチェコ人音楽家エルヴィン・シュルホフ(Erwin Schulhoff, 1894/6/8 - 1942/8/18)の作品ですね。
コントラバスーンのソロです。陰鬱な気配が楽器の音色とあっています。個人的には第二楽章の技巧系がいい感じですね。でも、もっと尖っていてもいい気がします。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ライヴ演奏です。


Sonata for bassoon and cello KV292 (1775年)
KVを見れば一目でわかるモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756/1/27 - 1791/12/5)の作品ですね。曲もまんま宮廷音楽で、ヴァイオリンに変更してチェロとのデュオ曲としても印象は同じでしょう。どんな楽器でも良い感じで、バスーンである必要性は??

Quartet for bassoon, 2 violas and cello op.46 no.1 (1804年)
ボヘミア生まれの古典派フランツ・クロンマー(Franz Krommer, 1759/11/27/ - 1831/1/8)の作品です。
モーツァルトと同じです。楽器構成が変わっただけですね。これは思い切り退屈ですw

Concertino for contrabassoon and string quintet (2014年)
オランダ・アムステルダム生まれのバスーンニスト、現代音楽家のケース・オルトゥイス(Kees Olthuis, 1940/11/28 - )の作品になります。1970年から2005年までRCOのバスーンニストでした。
現代音楽とはいえ20'弱の機能和声の曲になります。曲調はミステリー的な映画音楽風というと分かりやすいでしょうか。要は表情を変化させますね。でもその色合いを演出しているのは弦楽団で、コントラバスーンではありませんが。



手広いパターンで曲を構成していますが、バスーン(ファゴット)ならではの鳴りや超絶テクを味わえません。あえて言うならシュルホフのソロ曲ですが、もっと特殊奏法も絡めてこの楽器の可能性を見たかった気がします。より先鋭な現代曲を入れた方が面白かったのでは。
全体通して退屈さがぬぐえません、残念




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

メシアン(Olivier Messiaen)の「彼方の閃光, Eclairs Sur L'Au-Dela…」聴き比べ

オリヴィエ・メシアン(Olivier Messiaen, 1908/12/10 - 1992/4/27)最後の管弦楽曲「彼方の閃光, Éclairs sur l’Au-Delà …」ですね。
この現代音楽のblogではビッグネームすぎて紹介の少ない一人です。でももちろん大好きな現代音楽家ですね。
本来なら紹介で『音価と強度のモード』から神学者・鳥類学者、そして『移調の限られた旋法 (Mode de transpositions limitées, MTL)』に触れながら、この曲に至るのですが 今更素人がとやかく書くのも無用でしょうw

今回聴き比べと言っても所有はチョン・ミュンフンインゴ・メッツマッハーの2枚です。
実はこの曲は私のBGMの一枚になります。何かやる時にかけておく、特に聴く物がない時に流す、といった大好きで耳に馴染んでいる曲ですね。

もちろん次週1/31日(火)のカンブルラン/読響の演奏の前にインプレしておこうと思ったわけです。(カンブルランもCDを出していますが、所有していません)

Myung-Whun Chung (cond.)
Orchestre de l'Opéra de la Bastille


Ingo Metzmacher (cond.)
Vienna Philharmonic Orchestra

11のパートからなる、緩やかな・調性感のある・幽玄な・美しい、といった印象が強い曲です。二人の指揮者(とオケ)の違いは次のようになりますね。

1. 栄光あるキリストの出現 (Apparition du Christ glorieux)
 美しい主題でとても似た演奏です。メッツマッハー(以下Metz.)は時折微妙な音バランスを挟み、ミュンフン(以下Myun.)は終始美しいです。
2. 射手座 (La Constellation du Sagittaire)
 鳥の声が出てきます。主題はパート1の変奏で美しく、Metz.の方が速めで煌めき、鳥はMyun.が良いですね。
3. コトドリと結婚の街 (L'Oiseau-lyre et la Ville-fiancée)
 鳥の声を生かしたテンポのある曲で、よく似た演奏です。
4. 刻印された選ばれし者 (Les Élus marqués du sceau)
 鳥の声のポリフォニーで、Metz.の方が尖った演奏ですね。
5. 愛にとどまる (Demeurer dans l'Amour...)
 静的に美しい弦楽緩徐曲です。よく似ていますが、Myun.はより甘美です。
6. 7つのトランペットと7人の天使 (Les Sept Anges aux sept trompettes)
 打楽器と管楽器のパート。Myun.は抑え気味、Metz.は打楽器音が華やか。(録音バランスかもしれません)
7. そして神はことごとく涙をぬぐい去ってくださる (Et Dieu essuiera toute larme de leurs yeux...)
 鳥が入るパートです。似た演奏ですが。Metz.は鳥の管楽器音が明瞭です。
8. 星々と栄光 (Les Étoiles et la Gloire)
 差が感じられるパート。Metz.はディナーミクとアゴーギクを振り表情変化と切れ味を強調してきます。
9. 命の樹にやどる鳥たちの喜び (Plusieurs Oiseaux des arbres de Vie)
 鳥のパート。Metz.の鳥の方が騒がしく、Myun.の後半は"鳥たちの喜び"を感じます。
10. 神の道 (Le Chemin de l'Invisible)
 衝撃的なパート。Metz.の方が切れ味がありますが、でも意外な事に似ています。
11. キリスト、楽園の光 (Le Christ, lumière du Paradis)
 5第パートの回帰、美しい最終章です。似た演奏、似た差異ですね。

流れを緩徐的に捉えて終始美しく奏でるミュンフン。間をとりコントラストと華やかな管楽器で煌めきを加えたメッツマッハー。それが顕著に表れているのがパート8「星々と栄光」でしょう。
とはいえよく似た演奏です。特にアゴーギクでの差異は少なく、それだけメシアンの完成度の高い曲と言えるのかもしれません。



ひたすら美しさに溺れるならミョンフン/パリ・バスティーユ管、ブーレーズにもつながる仏現代音楽の色彩と煌めきを感じるならメッツマッハー/VPOでしょう。もちろんオススメは後者です。^^
カンブルラン/読響のコンサートではもちろん後者方向を期待しながら、全体の流れと管楽器・打楽器に注目ですね。頭に流れるのが長く聴き続けた甘口演奏のミュンフン/パリ・バスティーユ管なのが困ったことですが…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ブライアン・ファーニホウ(Brian Ferneyhough)の Complete Piano Works をニコラス・ハッジス(Nicolas Hodges)で聴く

もう一枚ブライアン・ファーニホウ(Brian Ferneyhough, 1943/1/16 - )を紹介しましょう。一昨年の発売でピアノ曲集です。
このアルバムのポイントは二つ。まずは演奏者が現代音楽のピアニストとして名声を博しているニコラス・ホッジス(Nicolas Hodges, 1970 - )である事。フィニスィーやシャリーノとのコラボで著名で、このブログでも度々紹介してきたピアニストです。
もう一つはファーニホウの若き日の曲が入っているピアノ曲全集である事ですね。 (*印:世界初録音)

Brian Ferneyhough Complete Piano Works / Nicolas Hodges (pf)
[CD1]
Lemma-Icon-Epigram (1981年)
 点描音列配置的な曲ですが、そこに美しさが感じられるのはハッジスのpfかもしれませんね。難解ですが、繊細さが感じられます。間の取り方等々、ファーニホウの曲としてはアゴーギクが振られているからでしょうか。

Quirl* (2011-13年)
 このアルバムでは一番新しい曲になります。ファーニホウですから基本スタンスは変わりませんが、セリエルを引きずる様な音の飛躍から、旋律・動機らしきものも感じられるパートも出現しますね。それは静音パートで感じられます。ここでもピアニストの表現力を感じますね。

Opus Contra Naturam (2000年)
 I - II [Katabasis] - III [Kataplexy]
「話すピアニストのための影芝居」という題名ですから、ピアニストの語りが入ります。さすがに弾きながらは喋れない様で、多くは全休符か単純パートですね。
取り上げ方は現代音楽らしいですが、いつものピアノ曲にTextですから然程面白くありません。何か捻りが少し入ると面白かったのかも。

[CD2] 20代の作品集
Invention* (1965年)
Epigrams* (1966年)
 I - II - III - IV - V -VI
Three Pieces For Piano* (1966-1967年)
 I - II - III
Sonata For Two Pianos* (1966年) pf w/Rolf Hind

個々の楽曲にコメントはいらないと思います。ファーニホウがセリエルから進めてきた現代音楽家である事は今の曲を聴いても明確ですが、それを明かにしますね。出世作Epigramsを含め、表情をつけたヴェーベルンの様です。



ファーニホウの曲はポストセリエル的であまり面白いと思った事がないのですが、ピアニストの表現力で魅力が引き出されたと言って良いのではないかと思います。そして年代譜的に楽風変化が望める、そんなアルバムです。
ただ、音の飛躍と点描の現代音楽はどうしても古臭い印象が、個人的に拭えませんね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ブライアン・ファーニホウ(Brian Ferneyhough) の Funérailles を聴く

このブログの現代音楽の案内ページでも出てくるビッグネーム、ブライアン・ファーニホウ(Brian Ferneyhough, 1943/1/16 - )、久しぶりの紹介です。ここでは今更の『新しい複雑性(New Complexity)』については触れません。^^ゞ

今でも作品は少ないですが、2014年のドナウエッシンゲン音楽祭に楽曲を提供したりしていますね。これは第2期から3期の頃の作品で、コンピューターを本格的に採用した作曲作「Bone Alphabet」も入っています。

演奏は、おなじみEnsemble RechercheとArditti Quartet、vnソロはIrvine Arditti、パーカッションはChristian Diersteinになります。指揮はLucas Visです。
(ちなみに「Funerailles I, II」はEnsemble Intercontemporainの演奏で以前紹介しています。いずれも現代音楽アンサンブルの超有名どころですね)

Funérailles / Brian Ferneyhough

Funerailles I (1969-1977年) for 7 strings and harp
 グリッサンドやトリルを中心とした無調の現代音楽です。所謂(いわゆる)現代音楽のイメージだと思います。弦楽器の絡みは面白いものがありますが、全体構成はセリエリズムを引きずるポストセリエル的な古さを感じます。

Bone Alphabet (1991年) for percussion
 小刻みな打楽器類のリズムが静かにポリリズムで13分間絡み合います。ちんどん屋さんの"ちんどん太鼓"を静的な現代音楽風に仕立てた感じ?! 鯛👞death

Unsichtbare Farben (1999年) for violin
 現代音楽のヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾ曲ですね。それこそがファーニホウの楽曲です。楽譜のみならず演奏自体の難易度も高くキレキレの演奏がアーヴィン・アルデッティで楽しめます。
まぁFuneraillesをソロにしただけと言ってしまえばそれまでですが…

試しにYouTubeで聴いてみる?

Funerailles II (1969-1980年) for 7 strings and harp
 当然ながら一曲目と同じ展開です。こっちの方が緩急があって面白いかな。



"いかにも"といったファーニホウの現代音楽ですね。ただ、今や目新しさはありません。現代音楽としては古典的なアプローチで閉塞的です。(何を持って閉塞?w)
同年代のビッグネームなら、少し年上ですが、シャリーノやラッヘンマンの方が面白いでしょう。



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