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クリスティアン・ウィンザー・クリステンセン の『Almost in G』を聴く:現在のデンマークの現代音楽ですね


クリスティアン・ウィンザー・クリステンセン
(Christian Winther Christensen, 1977 - )
デンマーク音楽アカデミーでベント・セアンセンやハンス・エブラハムセンらに習い、その後パリ音楽院でフレデリック・デュリユーにも師事しています。長編のアンサンブル作品や管弦楽を得意としていますね。本人曰く、"ラッヘンマンやリゲティらの旧世代からの影響もあるが, 同時代の音楽家の影響はより大きい" そうです。
これを聞いても楽風は欧エクスペリメンタリズムの影響を受けている事がわかりますね。

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Almost in G
"... the embrace of the everyday ..."
C.W.クリステンセンの最新室内楽アルバムになります。ライナーノートには"私達の耳の聴き直し"と言うコラムがあり、サミュエル・ベケットの"Watt"を引用して、物というのは常に居場所を変えるものだ、とあります。ポケットで溶けたチョコが再び固まって形を変える様に、とも。演奏者のSCENATET*(セナテット)と共に我々の耳に新たな聴き直し(再構築)の楽しみを与えてくれた、のだそうです。
要は遠回しに"普通の音楽じゃないですよ"って言う事ですね。(爆)

* デンマークのオーフス・フェスの音楽監督であるアナ・ベーリト・アスプ・ クリステンセン(Anna Berit Asp Christensen)が設立したデンマークのアンサンブルですね。今回はエレキギターやエレクトロニクス(事前録音)といった多岐にわたるパターンで対応しています。





(D/L版はこちら)


Almost in G (2016年)
ト長調(tonality G)を主体として、テープと最後は全音音階を使っているそうです。
打楽器の様な弦楽器(多分w)の特殊奏法、"バチバチ・バシバシ・ゴシゴシ"とハジけまくります。次は細〜ぃロングボウイングにパルス的に凶暴な短旋律反復が割込みます。最後は砂漠の中の風と小生物みたいな… 完全にエクスペリメンタリズム、ノイズ実験音楽です。ノコギリの"ゴシゴシ"音が面白いですが、Gのキーに拘るのがもっと面白い?!


Sextet (2010, 2014年)
初期ルネッサンスの賛美歌を元にしているそうです。
これまたノイズ系で蒸気機関車の様なノコギリ音の様を背景に置いて、奇妙に美しい旋律とリズムが薄っすらと乗ります。そこにギ〜ッとノイズが。不気味に美しい面白さ!!


Chorale (2006, 2016-2017年)
事前録音のピアノにピアノを合わせながら、アコースティックギターとエレキギターを対比させているそうです。
ノイズのポリフォニーですね。それ以前に特殊奏法がキツイので楽器本来の音が不明ですw 勝手に即興的な演奏をしている様な。全部打楽器に聴こえますねぇ。


String Trio (2008-2009年)
これも古い曲をモチーフにしているそうです。
弦のグリッサンド音がちゃんと聴こえます。なんだかエフェクターの様な歪みがありますが、エレクトロニクス処理ではないでしょうね。ベートーベンの第9の引用もあったりして新しい展開かと思いきや、実はこれが一番古い曲だそうです。ここから病状悪化したんですねw


Nachtmusik (2010-2011年)
細かく静な背景音を作り、そこにキャンバスにペイントを投げつける様に音が乗ってくるのは一つのパターンですね。その時のノイズ音が年代毎に変化・進化している様です。後半は等拍的な強音連打になりますが、これもパターンの様です。
ここでは僅かに旋律感が残留物の様に残っていますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  "SPOR festival 2014" でのLiveで演奏もSCENATETですね。
  CDとはやや印象が異なります。



Being Apu Sarkar (2009年)
これも背景静音パターンですが、その中に例のノコギリ"ギコギコ"が登場します。これも等拍なんですね。そしてペイント投げ付け音がありません。最後はハミングの様な音も。


Four Hyper-Realistic Song (2014-2015年)
ノイズのポリフォニーです。無音の"間"を入れながら、若干の旋律感を残していますね。いずれゴシゴシゴシ…的ですがw その後はまた静音背景にペイント投げ付けパターンとノイズのポリフォニーが展開されます。



どう聴いてもH.ラッヘンマンの影響が大きとしか言えませんねぇ。バリバリの特殊奏法ノイズ実験音楽で、黙って聴いたら欧エクスペリメンタリズムです。ライナーノートにスコアのサンプルを載せて欲しかったですね。

この世界を垣間見たい人には是非おすすめしたいですね。楽器の演奏法に懐疑的になる事間違いなし。エッ、目から鱗ですか?!



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ノルウェーの現代音楽:A.ヌールハイム/O.マトレ/J.O.ネス「Snarks In The Kitchen」は、おすすめの一枚ですね


Snarks In The Kitchen
A.Nordheim / J.Ø.Ness / Ø.Matre
3人のノルウェーの現代音楽家の作品集ですね。魁(故人)、中堅、若手によるトロンボーン作品集で、ソロからトリオそして室内楽や電子音楽とヴァリエーション豊かに並んでいます。それぞれ色々な分野の作品からインスパイアされているそうです。

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メインのトロンボーン演奏はノルウェーのスヴェッレ・リース(Sverre Riise)になります。







アルネ・ノールヘイム
(Arne Nordheim, 1931/6/20- 2010/6/5)
ノルウェーの現代音楽家ビッグ・ネームですね。日本語表記がヌールハイムだったりと不確定なのが困りますが。ノルウェー国立音楽アカデミーで学び、デンマーク(コペンハーゲン)でヴァン・ホルンボーに師事し、その後フランスに渡りパリで電子音楽を学んだ 北欧電子音楽の草分けです。
本作品はルイス・キャロルの「スナーク狩り」をもとにしていますね。伝説の生物スナークを探します。

The Hunting of the Snark, for trombone solo (1976年)
 トロンボーンのソロです。いきなりグリッサンドのTbで生物感を作って意表を突きます。もっそりとした生き物の息遣いや存在感、Tbのミュートや技巧、音色を使い分けて面白い世界を表現していますね。面白いです!!

Vevnad (The Tapestry) (1993年)
 トロンボーン、チェロ、電子音楽のトリオです。どう聴いてもピアノが聴こえますが、それがエレクトロニクスでしょうか? 曲は静的で調性を軸とした反復動機がホモフォニーに絡みます。ラストはポリフォニーのカオスです。

The Return of the Snark (1987年)
 トロンボーンとテープ(事前録音, Sverre Riise)のコラボです。背景に渦巻く様な電子ノイズ、そこにI.の様なTbが乗ってきます。TbはI.よりもストイック混乱的で、背景音と合わせて混沌ノイズですね。テープは様々な音を包括して空間音響的でもあります。ディレイやサンプリングの気配も感じますが…
流れに構成感やストーリー感があって面白いですね。




オーヤン・マトレ
(Ørjan Matre, 1979/11/6 - )
ノルウェーの若手現代音楽家で、ノルウェー国立音楽アカデミーで学んでいます。室内楽や管弦楽を得意としていますが、欧州のエクスペリメンタリズムとの直接的な関わりはなく北欧をメインの活躍の場としている様ですね。

"… but I must have said this before", for trombone, cello and piano (2010年)
 単音(低音)アルペジオのピアノの残響、協調するグリッサンドのチェロとトロンボーン、スロー無調の旋律に乗って共鳴する不思議な音空間です。残響と共鳴、反復とTb特殊奏法の織りなす空間ですね。これも楽しいです。




ヨン・オイヴィン・ ネス
(Jon Øivind Ness, 1968/3/30 - )
ノルウェー国立音楽アカデミーで学び、複調多調から始まり四分音符から微分音の方向を持っていますね。楽曲は米・欧でも取り上げられています。

Moray (The Piece Formerly Known as Phekph Piphtolph)
 トロンボーン、チェロ、ピアノ三重奏曲です。低音でテンポの速い反復が三者で協調します。前半は低音響くポスト・ミニマル的陶酔音楽です。中盤スローテンポ化(中間部か展開部?)でTbとVcに微分音が入って、等拍の様にも展開して面白い流れを作ります。後半は再現部的変装ですね。

The Dangerous Kitten, for trombone and sinfonietta (1998年)
 ネスを特徴付ける楽曲「危険な子猫」だそうで、cl三本がオケとは別に陣取っているそうです。タイトルはフランク・ザッパ(Frank Zappa)の"The Dangerous Kitchen"(子猫誕生からの日記)から、また"イパネマの娘"やノルウェーで子供達が歌う"The Animals of Africa"からもヒントを得ているとか。
オケ/トロンボーン/クラリネットの無調ポリフォニーの入りから、ホモフォニーに変化してきます。いずれ飛び跳ねる跳躍音階が特徴的です。調性ベースの旋律と言う北欧系の流れを汲みつつ前衛に軸足を移す、新しいノルウェー現代音楽を感じますね。旧来の静的広がりではないカラフルな音高密度です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




実験的なヌールハイム、前衛らしいマトレ、カラフルなネス。なんとも素晴らしい三者三様のノルウェー現代音楽です

いずれも共通しているのは、ただの混沌に陥らずにストーリー性や構成感を持っている事でしょう。多様性現代音楽の必聴おすすめの一枚ですね。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

デンマークの現代音楽:「ゲットストリング, getString」をシレジアン弦楽四重奏団で聴く


getString
Silesian String Quartet
6人のデンマーク現代音楽家の作品集ですね。全10曲ですが、モーテン・リースの小曲5曲(電子音楽)は他の5人の弦楽四重奏曲の間奏曲(とラスト曲)として挟まれています。コンセプトは "String quartet meets electronica - the result is effortless, virtuoso and colourful music" だそうです。

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演奏はポーランドのシレジア弦楽四重奏団になります。以前ヘレナ・トゥルヴェの楽曲でも紹介していますね。








モーテン・リース
(Morten Riis, 1980- )
電子音楽を得意とするデンマークの現代音楽家で、現在はエレクトロニクスとコンピューターの音楽のエレメントをプログラミンング化し実行する為に力を注いでいるそうです。バリバリの電子音楽系ですね。

getString - fromString - useString - toString - quitString
 間奏曲的位置付け5曲ですから、各曲の後にインプレを付けますね。




イェンス・ヴォイト=ルンド
(Jens Voigt-Lund, 1971 - )
残念ながらプロフィールが不明です。

Circuitous, Mountains (1999年)
 特殊奏法構成の前衛です。ノイズ系で"グリグリ・キュルルル〜"で、まさに欧エクスペリメンタリズム標準仕様ですね。面白いのはノイズの中にグリッサンドの旋律感が乗っている処でしょう。欧前衛を聴き慣れていると安心感?がありますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



getString (2009年)
 こちらの電子音楽もノイズです。静的空間に電波ノイズの様な複数の音が静音で反復しています。1'43"。



クリスティアン・ウィンザー・クリステンセン
(Christian Winther Christensen, 1977 - )
デンマーク音楽アカデミーでベント・セアンセンらに習い、その後パリ音楽院でフレデリック・デュリユーにも師事しています。長編のアンサンブル作品や管弦楽を得意としていますね。

String Quartet (2002-03年)
 間奏曲の響きに続く様に静的なノイズ空間を引き継ぎますね。より無音空間を生かします。そしてその中に刺激を与える様に特殊奏法を交えた弦音が混じります。空間に漲らせた緊張感が良いですね



fromString (2009年)
 ノイズですが弦楽器の特殊奏法でも出せそうな音色が密集度高く重なります。音飽和空間的ですね。1'12"。



イェクスパー・ホルメン
(Jexper Holmen, 1971/2/16 - )
ロイヤル・デンマーク音楽院でイブ・ノルホルム(Ib Nørholm)に学んでいます。インスタレーション系を得意としている様ですね。

ntend/Ascend (2000/02年)
 ここでも間奏曲を前奏曲的にして繋がります。と言う事で弦楽音の密集が高いですね。それも単音の反復で同期するリズムで、同期合奏的なモノフォニーです。特殊奏法も使い、旋律(引用かもしれません)を使ったホモフォニー的に変化させたりしますが同期リズムは崩しません。パターン変化の区切れ目は、特殊奏法ノイズを入れるので明確ですね。
強音チックで、ちょっとウストヴォーリスカヤを思い出しますがこれは素晴らしいです



useString (2009年)
 弦楽トリルに旋律が被った様な電子ノイズです。1'21"。



シモン・ステーン=アナセン
(Simon Steen-Andersen, 1976/4/24 - )
本ブログ一押しの前衛現代音楽家の一人で、コペンハーゲンで習った後 デンマーク国内のオケで在籍作曲家として活躍しています。現在ベルリン在住で、2018年からはスイスのベルン芸術大学で作曲の教授職にもついています。2017年の来日に気がつかなかったのは大失敗でした。(汗)

String Quartet (1999年)
 間奏曲とは少し異なり音の重なりは多くなく、ロングトーンと特殊奏法ノイズです。空間系のサウンドでしょう。そしてピチカート・グリッサンド等々で色合い付をして変化を与えます。至る処 緊張感が空間に張り詰めている感じがいいですね。
前回紹介に続き本作品も少々古いのですが、欧州エクスペリメンタリズム王道的な弦楽四重奏曲です。



toString (2009年)
 弦楽器のロングトーンにノイズが絡む様な音。1'33"。



シモン・クリステンセン
(Simon Christensen, 1971 - )
デンマーク音楽アカデミーとパリ音楽院で習っています。デンマーク国立交響楽団や本シレジアン弦楽四重奏団からの委嘱も受けていますね。米映画作品とのコラボも多い様です。

Towards Nothingness (2008年)
 無調ですが明確な旋律を持つ四つの弦楽器のポリフォニーです。それぞれは短旋律反復で、ポスト・ミニマル的かもしれません。時折、異なる旋律が飛び込んできますが流れは陶酔的です。後半はグリグリの反復ノイズ系に変貌して終わります。独特の和声さえも感じる面白さがありますね。



quitString (2009年)
 タイトル通り最後の曲は少し長い4'38"です。静的な信号ノイズがクレシェンドし、ポツポツとしてノイズも入ってきます。静的混沌系でピークになってからディミヌエンドします。ふぅ〜ん、って言う感じでしょうか。




前衛弦楽四重奏曲とその間奏曲にノイズ系エレクトロニクスを挟んでいます。その企画はどこかにあった様な気もしますが、前衛らしい素晴らしさを生かして楽しめるアルバムに仕上がっていますね。

特に弦楽四重奏、こりゃヤバイですね。この顔ぶれが今後どんな活躍をするのか目が離せません。強力おすすめの一枚です!!





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

デンマークの現代音楽:デュオ・カポウ!(Duo KAPOW!) の「バースト, Burst」を聴く


Burst
Duo KAPOW!
本アルバムは6人のデンマーク人現代音楽家の作品集です。以前は北欧系の音楽は欧州前衛とは異なるスタンスが多かった気がしますが、今では新しい世界を展開して注目が上がっていますね。

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デュオ・カポウ!は、サックス(saxophone)のクラウス・ウールセン(Claus Olesen)とパーカッションのヘンリク・クナルボリク・ラーセン(Henrik Knarborg Larsen)二人のデンマークDuoですね。ライナーノートには短い紹介しかなく、二人はデンマークの王立音楽アカデミー(Royal Academy of Music)の学生時代から新しい音楽を目指していたそうです。また、ラーセンは現在Royal Academy of Music Aarhus/Aalborgの教職についているそうです。








ニールス・マルティンセン
(Niels Marthinsen, 1963 - )
マルティンセンはデンマークのオーフス王立音楽アカデミー(Royal Academy of Music in Aarhus)でペア・ノアゴー(Per Nørgård)の下学んでいます。

Burst (1990年)
 マルティンセンは楽曲イメージを呼び起こす様なタイトルをよく付けるそうですが、ここではそれほど強烈な印象ではありません。即興的前衛ですが、ズバリ "フリー・ジャズ"です。構成もややフラットに感じますね。演奏者のスクリームもありますが、あまり先端性も感じません。




シモン・ステーン=アナセン
(Simon Steen-Andersen, 1976/4/24 - )
本ブログ一押しの前衛現代音楽家の一人で、コペンハーゲンで習った後 デンマーク国内のオケで在籍作曲家として活躍しています。現在ベルリン在住で、2018年からはスイスのベルン芸術大学で作曲の教授職にもついています。本作品は少々古いですが、現在の楽風は過激なインスタレーション系ですね。

Study for alto saxophone and percussion (1998年)
 "Can percussion and saxophone play in unison - that is, the same note?"と本人が言っている通り、ユニゾンの曲です。途中までは完全にリズム同期させてわかり易いユニゾンを狙っていますが、変拍子やディレイを使い始めるとユニゾンっぽく聴こえません。"どこがユニゾンか?!"などと耳をそばだてて聴く事になるわけですが、そこが面白い!! 一本取られましたね。




イェクスパー・ホルメン
(Jexper Holmen, 1971/2/16 - )
ロイヤル・デンマーク音楽院でイブ・ノルホルム(Ib Nørholm)に学んでいます。インスタレーション系を得意としている様ですね。

Oil, for alto saxophone and percussion (1996年)
 スローで陰鬱な旋律感のあるサックスとヴィブラフォンのDialogueです。奇妙な和声を感じ、不気味な空間を作ってきます。サックスは時に無調即興的な演奏もし、打楽器は音程のない他の楽器も交えます。独特な音空間で面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




モーテン・ラデホフ
(Morten Ladehoff, 1978 - )
オーフス王立音楽アカデミーでオルガンと作曲を学んでいます。作曲はカール・ラスムセン(Karl Aage Rasmussen)他に師事し、その後シュトゥットガルトでも学んでいます。

Pyr, ami spy, ram isp yra mis (2003年)
 奇妙なタイトルですが、三つの"Pyramis"(ピラミッドのラテン語)を不自然に区切っています。7つの単語の区切りを変えるの同様に、音楽のパラメーターを変えて意味を変化させるといったコンセプトがあるそうです。
それらしい打楽器とサックスは感じますね、解説を聞いているとw 基本的には無調のサックスとティンパニー他太鼓系のデュオです。単純な即興系でも特殊奏法でもなくて、表情を変える様にリズムと音色を変化させています。ステーン=アナセン同様コンセプトを聞いているので、なるほど感はありますが…




ニルス・レンスホルト
(Niels Rønsholdt, 1978 - )
レススホルトもオーフス王立音楽アカデミーでカール・ラスムセンに学んでいますね。その後ベルリンに渡り、前衛現代音楽フェスからの委嘱を受ける様になりました。前衛のオペラやインスタレーションを得意としている様で、声楽のアルバムが出ていますね。

Drink me, make me real (2002年)
 特殊奏法です。やっぱり楽器が単純構成なのでこう言ったテクがある方が楽しめます。と言う訳で当然ながらノイズ系になります。目新しさはありませんが、"これだよねっ!"的な楽しさは味わえますね。




カスパー・ヤルナム
(Kasper Jarnum, 1971/7/14 - 2011/4/5)
ラスムッセンやノアゴーに習い、パリでも学んでいます。ジャズや特殊奏法をベースとした前衛ですね。40歳を前に夭逝しています。

Der Totenschläger und der Rattenfänger (2001年)
 "ハーメルンの笛吹き男"を元にしたタイトルです。ネズミを除去した笛吹き男が、村人に裏切られて子供達を連れて行ってしまう恐ろしい話ですよね。曲はそのストーリーに沿って笛吹き男の変化を表しているそうです。
と言われても、です。打楽器が乱打される背景にサックスが潜んだ前半、後半は逆になります。ラストの静のコーダ?は面白いです。とはいえ両楽器の基本的な音は変化が薄くフラットです。無調前衛ではありますが、それ以上でもそれ以下でもない様な。水○橋あたりの実験音楽系ライヴハウスでも聴けるかも。




面白いのはJ.ホルメンの独特の和声とN.レンスホルトの特殊奏法ですが、突出感は低めです。サックスとパーカッションという制約だからかもしれませんね。
とは言えこれだけのヴァリエーションがデンマークのセットで聴けるのは嬉しいです。

Denise Burtのジャケットも不気味で面白いですねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

MUSICA VIVA 18 | エリオット・カーター「チェロ協奏曲」, ウド・ツィンマーマン「ある島の歌」を聴く


MUSICA VIVA 18
MUSICA VIVAシリーズに関して再記述しておきますね。
『ムジカ・ヴィヴァ・ミュンヘン (Musica Viva München)』シリーズはCol Legnoレーベルのヴルフ・ヴァインマン(Wulf Weinmann, owner and label manager)が、バイエルン放送局主宰の同音楽祭(設立は1945年Karl Amadeus Hartmann)の音源をリリースしたものです。
基本的には欧州エクスペリメンタリズムで、ダルムシュタットやドナウエッシンゲンと同列の音楽祭でお馴染みの顔ぶれとなります。現代音楽ファンには知られたシリーズですね。
MUSICA VIVA 15からはヴァインマンが新たに設立したNEOSレーベルに引き継がれています。


本アルバムは米・欧現代音楽家のチェロ協奏曲集で、チェリストはヤン・フォーグラー(Jan Vogler)、クリスチャン・ヤルヴィ(Kristjan Järvi)指揮/バイエルン放送響(Bavarian Radio SO)の演奏です。







エリオット・カーター
(Elliott Carter, 1908/12/11 - 2012/11/5)
103歳で亡くなるまで作曲活動を活動を続けた米現代音楽家ですね。頭でっかち系なので今までインプレを書いていなかったのかもw 本作品は後期なので中期のピッチクラスセット理論を用いた無調作品よりは聴きやすいでしょうね。初期は新古典主義からの出発で、詳細はまた次の機会(ピアノ協奏曲か"What Next?"インプレ時)に。

チェロ協奏曲 (2001年)
  Cello Concerto
 新古典主義を基本に調性の薄いチェロの独奏が奏でられる流れですね。オケはパルス的な衝撃音を挟み込んできます。チェロは無調であっても旋律的で、オケもホモフォニーの様な同調性を見せます。即興ポリフォニーの様な混沌はないので、聴き易い前衛現代音楽ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  タングルウッドでのボストンSOですね。





ウド・ツィンマーマン
(Udo Zimmermann, 1943/10/6 - )
ドイツ人現代音楽家でドレスデン音楽院で作曲と指揮を習って、後に教鞭もとっています。そして何よりこのMusica Vivaの音楽監督を務めました。ドレスデンを拠点としていて、オペラ関係ににも造詣が深いですね。
オペラ「白いバラ」の本邦初演が昨年(2018)5月に東響の演奏会形式で実施されています。行けなかったのですが、また後悔する時が来るでしょうねぇ。

チェロ協奏曲「ある島の歌」(2009年)
  »Lieder von einer Insel« Concerto Per Violoncello Ed Orchestra
[1]Ich hab im Traum geweinet [2]Reflexion [Come una Cadenza] [3]Versöhnung [quatuor canones et cantus firmus] [4]Aufbruch [5]Erinnerung
 コンチェルト的ではなく歌うというよりも囁く、とライナーノートにはあります。チェロは無調であっても旋律的です。そしてここでもオケがホモフォニー的に協調性を見せて、似た構成です。ツィンマーマンの方がより機能和声に近い旋律を奏でますね。その静的で暗い音色のvcは幽玄で美しく、無調である事を忘れてしまいそうです。




二曲とも似た構成です。旋律を持つチェロに、オケはホモフォニー的に寄り添う形です。違和感は弱く現代のクラシック音楽と言っていいでしょうね。特にU.ツィンマーマンの方は調性範囲のエレジーを感じます。(そう言ったシーンの映画音楽風かも)

個人的にはカーターの作品の方が好みで、K.ヤルヴィの鳴らすオケも切れ味を感じさせてくれましたね。




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マイケル・フィニスィー の「音で辿る写真の歴史 (History of Photography in Sound)」をイアン・ペースのピアノで聴く


マイケル・フィニスィー
(Michael Finnissy, 1946/3/17 - )
フィニシーやフィニッシーとか日本語表記が曖昧ですが、イギリス人でロンドンの王立音楽大学で学んだ"新しい複雑性"の現代音楽家にしてヴィルトゥオーゾ・ピアニストですね。現代音楽の超絶技巧系ピアノ曲作曲家を代表する一人です。

楽風はポスト・セリエル。音の跳躍の大きいセリエルのヴィルトゥオーゾ初期(1960年代)から、静音パートを生かした聴きやすい方向性へと変化していますね。また過去の作曲家作品のトランスクリプションや民族音楽にも方向性を見出しています。教育にも熱心で、ニコラス・ハッジスやイアン・ペイス・他の現代音楽ヴィルトゥオーゾ・ピアニストを見出してもいますね。


音で辿る写真の歴史 (1995-2001年)
History of Photography in Sound
フィニスィーと言えば1972年から2005年にかけて作られた「ヴェルディ編曲集:全36曲 (The 36 Verdi Transcriptions)」になる訳ですが、並ぶ代表曲ですね。

CD5枚set/全11曲/5時間超のピアノ・ソロ曲集で音楽自叙伝です。5年間かけて演奏者のイアン・ペース(Ian Pace)の為に書かれ*、初演(2001年:英国王立音楽院)・初録音(本CD)されています。二人目の全曲演奏者マーク・ヌープ(Mark Knoop, クヌゥプとも)も出てきていますし、ペースの再演もある様です。

*ペースが1996年にフィニスィー50歳の誕生日を祝ってピアノ作品の全曲演奏会を行った事への返礼だった様で、当初は5books9曲だったそうです。






History of Photography in Sound

[CD1] 1. Le Démon De L'Analogie - 2. Le Réveil De L'Intraitable Réalité [CD2] 1. North American Spirituals - 2. My Parents' Generation Thought War Meant Something [CD3] 1. Alkan-Paganini - 2. Seventeen Immortal Homosexual Poets - 3. Eadweard Muybridge - Edvard Munch [CD4] 1. Kapitalisch Realisme [CD5] 1. Wachtend Op De Volgende Uitbarsting Van Repressie En Censuur - 2. Unsere Afrikareise - 3. Etched Bright With Sunlight

CD1-1は流麗な流れではありますが音の跳躍感も感じられ、セリエル的点描で静と強の組合せが明白です。opening-chapterとの事で初期のイメージを取込んでいるのでしょうか、-2では流れの良さが強まります。

CD2-1ではいきなり旋律感のある入りを見せ激しさも表現します。点描的表現は変わりませんが音の跳躍は明らかに減り、調性的コード和音が見られて、タイトル通りにアイヴズを始めとる米現代音楽への関連を見せているのかもしれません。途中で大きく休符を挟んだ演奏になるのも特徴的です。-2では旋律感と反復・変奏が強まりますね。

CD3-1はタイトルの二人を主に、シューマンやリストのフィルターも入れてあるそうです。アルカンの"Trois Grandes Etudes Op.76"を模した、左手・右手・両手の三部構成になります。イメージ以上に静的なセンスが強く、動機と変奏が一層感じられますね。-2では強fas・弱slowの対比が明確に、-3では静美な旋律が主導する新しい展開を感じます。

CD4-1は三部構成で、それぞれが間奏曲で繋がれているそうで3B(Beethoven, Bach and Busoni)のイメージとか。ブゾーニという処がフィニスィーですね。得意とする他音楽家のトランスクリプション(というか再構築)?、冒頭は明らかに"運命"を感じますが、流れはやや点描回帰かもしれません。長くて退屈?!

CD5-1は暗く静かで調性にさらに近づいた和声と音数の少なさで表情を作ります。とは言え耳馴染みの良い旋律は存在しませんし点描表現なのですが。-2も方向性は似ていますが途中で現れる民族音楽的な和声と調性旋律が印象的ですね。-3では点描反復(変奏)のキラメキと民族音楽和声を見せます。



フィニスィーのポスト・セリエル系のピアノ難曲の楽風推移が冒頭の紹介通り伝わります。
言えるのは点描的表現から抜け出さないという事で、それが"前衛の停滞"の証だと感じます。インスタレーションや多様性を中心とした現在の主流から行くと古典的な現代音楽の印象は免れませんね。

この系譜を多様性に至る現在までCD7枚組に大きくまとめたのが「Darmstadt Aural Documents Box 4・Pianists」という事になるでしょう。

英文のみで100ページ近いライナーノートにフィニスィーに関して1/3ページほどの簡易紹介しかありません。殆どがイアン・ペースによるもので、曲の詳細解説さえフィニスィー本人でないという不思議さです。(現役なのに?)



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望月京(Misato Mochizuki) の「エテリック・ブループリント三部作」を聴く


望月 京
(Misato Mochizuki, 1969/1/31 - )
前回に続き望月さんです。東京芸大卒業後にフランスへ渡って学んだ欧州エクスペリメンタリズム系前衛です。前回インプレを参照くださいね。
現在は国内や執筆でも活躍中で、明治学院大学で文学部芸術学科の教授を務めていらっしゃいます。本アルバムには「明治学院大学学術振興基金」のサポートと日本語で明記され、NEOSレーベルでは稀な日本語訳が載っていますね。


Etheric Blueprint
望月さんが影響を受けている邦楽から笙の古曲二曲と、天空の青写真(エテリック・ブループリント)で室内楽作品と言っていいでしょう。タイトル曲は三部作で三曲目はアンサンブルにエレクトロニクスが入ります。

笙の古楽二曲は演奏者である宮田まゆみさん、古楽演奏のみならず現代音楽奏者として世界で活躍、による選曲だそうです。
タイトル曲の演奏は杉山洋一指揮, mdi ensembleの演奏になります。エレクトロニクスはChristophe Mazzellaですが、残念ながらライナーノートを見ても経歴や具体的な使われ方には触れられていませんね。






盤渉調調子, Banshikicho no choshi (笙雅楽:10世紀以前)
"冬・水・北・黒"を象徴する曲だそうです。ロングローンの笙曲で音階変化は少ないです。この時代から空間を意識する曲だったという事ですね。


双調調子, Sojo no choshi (笙雅楽:10世紀以前)
"春・木・東・青"を象徴する曲だそうです。曲調はほぼ変わりません。同じ曲の延長線上、というよりも同じ曲に聴こえますね。アンビエントの楽曲の様です。


エテリック・ブループリント三部作, Etheric Blueprint Trilogy
  ・4D, for 9 players (2003年)
  ・Wise Water, for 9 players (2002年)
  ・Etheric Blueprint, for 9 players and electronics (2005-06年)

1. 4Dは笙の曲の延長線にある音色とトーンで繋がっている様です。ロングトーンと電子音の様な高音、エレクトロニクスは未使用のはず、が空間にちりばめられます。弦楽器の特殊奏法も現れてノイズが加わりますが、楽器間の関係はポリフォニーですね。望月さんらしく途中で曲構成を変化させます。現れる雅楽風和声や等拍も望月さんらしいです。ご本人曰く、見えるもの(3D)と見えないもの(4D)の対比を空間に散在させる、感じです。空間音響系ですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

2. Wise Waterは4Dラストと水の滴り音で繋がります。エレクトロニクスだと思いますけどねぇ。ジャジーなベース、それに各楽器が絡みます。新しい展開が見えますね。ここでも構成は変化して、テンポを速めたり、反復性を強めたりします。
"水と波動で異なる結晶ができる"ことや水の状態変化の姿を現すそうで、滴り音は構成の変化点で必ず現れます。

3. Etheric Blueprintは背景にノイズを配したパルスな刺激で始まります。ノイズはエレクトロニクスで、一部は特殊奏法かもしれません。"神の御技とそれを検知させる空気を揺らがせる電波の様な介在"を表現しているのでしょう。もちろんリズムや構成変化を挟んだお約束の手法です。
ラストはバッハ・ブラームス・B.マーリーらの細切れな引用とノイズで構成されています。



"第六感やデジャ・ヴと言った時空や文化を超えた不可思議な謎への取組、科学・数学・天文学・哲学・宗教・芸術の様な学問、を音楽で一つにした総合表現が究極の目標" (意訳)とご本人は言っておられます。その通り科学者や哲学者の執筆からのインスパイア作品も多いですね。壮大な構想で、本三部作の解説だけで辿り着けるものではないでしょう。

望月さんらしい構成変化と対比的流れで、好きな前衛現代音楽です。今の時点で目指す理想の高みを覗くのは凡人には難しいかもしれませんが、この先の作品が楽しみですね。



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望月京(Misato Mochizuki) の「Si bleu, si calme; 他」を聴く


望月 京
(Misato Mochizuki, 1969/1/31 - )
日欧で活躍する現代音楽家ですね。フランス国立高等音楽院ではエマヌエル・ヌネスに、IRCAMの研究員としてトリスタン・ミュライユに師事し、クラウス・フーバーからも支持を受けています。その流れでしょうか、欧州前衛の拠点ダルムシュタットやドナウエッシンゲンで活躍があり、作品は欧州現代音楽の代表的レーベルKAIROSやNEOSからリリースされています。バリバリの欧州エクスペリメンタリズムですね。
楽風は対比によるストーリー(構成)を感じる流れで、日本の古楽(古楽器)展開もしていますね。


SI BLEU, SI CALME
少々古くなりますが、2000年前後の室内楽集です。10'前後の曲構成で聴き易いのも嬉しいです。

アンサンブルはベアト・フラー設立のクラングフォールム・ウィーン(Klangforum Wien), 指揮は現代音楽家でも紹介しているヨハネス・カリツケ(Johannes Kalitzke)、ソロはMarino Formenti (piano), Eva Furrer (flute), Sophie Schafleitner (violin), Bernhard Zachhuber (clarinet), ですね。






Si bleu, si calme (1997年) for ensemble
水と空気の流れを元に作られたそうです。
パルスな打撃音と蠢く混沌の対比で構成されています。パルスは単音打撃的で、混沌は静的なポリフォニーです。楽曲的には大編成オケ版があっても面白い気がしますね。


All that is including me (1996年) for bass flute, clarinet and violin
タイトルはバックミンスター・フラーの詩から引用し、雅楽の構成にインスパイアされているそうです。
フルートは横笛、クラリネットは尺八の様な音と奏法を模しています。そこにヴァイオリンの現代音楽的な、でも特殊奏法ではない、音が絡みます。そこも対比ですね。拍子変化も少なく、邦楽古楽的和声の現代音楽です。


Chimera (2000年) for ensemble
ギリシャの想像の動物キマイラ(頭はライオン、胴はヤギ、尾はヘビ)を元にしています。
アンサンブル・ポリフォニーですね。各楽器は反復やトリル・トレモロを主体としている様です。極端な強音や弱音は挟まず、リズム変化も薄めで流れていきます。そのズルズルとした感じの中に緊張感があって面白いですね。


Intermezzi I (1988年) for flute and piano
"Intermezzi"シリーズの#Iで、7つの小さなフラグメントで構成されているそうです。(#IIは琴ソロ曲だそうですが)
これも古典邦楽的流れです。フルートですが尺八的な"しゃくり"感がありますね。ピアノは打楽器的に音を出し特に和寄りではなく対比的。個人的には邦楽和声の現代音楽は好みではないのですが、望月さんの作品は一捻りあってイイですね。


La chambre claire (1998年) for ensemble
仏哲学者ロラン・バルトのタイトル同名本、撮影・写真をテーマとした、を元にしているそうです。
執拗な反復をベースにポリフォニーな音が入り乱れます。基本の流れは残しながら構成を変化させて行きますね。それまでの曲と同じく時に刺激的になるのもスパイスです。この構成感が望月さんの印象かもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  アニメバックのver.でCDと若干印象は異なりますが、面白いです。




対比・構成感があって聴きやすい前衛現代音楽でしょう。基本は反復変奏のポリフォニーで、特殊奏法は感じられません。もちろん旋律感はなく構成されていますが、即興的暴力性や混沌カオスでもありません。
突出した個性に欠けるのかもしれませんが、作曲技法や譜面などがわかればより興味深いと思いますね。



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古典邦楽と現代音楽のコラボ:琴とリコーダーのための作品集『3つの俳諧アンド・モア (three haikei and more) 』を聴く


three haikei and more
3つの俳諧アンド・モア
琴と尺八をベースにした、日本の古楽と現代音楽の楽曲を組合せた作品集ですね。尺八に代わりリコーダーを使い、箏の古楽(八橋検校/六段の調べ)、尺八の古楽(古典本曲/二曲)、三曲を採用しています。
演奏は箏が後藤真紀子(Makiko Goto)さん、リコーダーがジェレミアス・シュヴァルツァー(Jeremias Schwarzer)です。箏とリコーダーはそれぞれ音域違いのものを使い分けていますね。

古楽が途中に挟まられ曲の並びはランダムなのですが、インプレは作曲家ごとです。







古典邦楽
(八橋検校・古典本曲)
日本人なら聴いた事がある八橋検校(Yatsuhashi Kengyo, 1614-1685)の箏曲"六段の調べ"と、尺八古典の道曲から二曲が採用されています。

六段の調べ
  for recorder and koto
"六段の調べ"を理解しているわけではないのですが箏の旋律はオリジナル通りではないでしょう。ただリコーダーの音色は尺八的なので全体違和感がありません。この和声とシンプルさは海外では前衛に聞こえるのでしょうか。

山越え (道曲)
  for recorder solo
道曲二曲のアレンジはJ.シュヴァルツァーになります。原曲を知らないのですが、ただの静かな尺八の曲にしか聞こえませんw

打破 (道曲)
  for recorder solo
これも同じですね。アレンジはされているのですが、原曲の和声にならっていると思います。尺八曲です。




エルヴィン・コッホ=ラファエル
(Erwin Koch-Raphael, 1949 - )
ドイツ人現代音楽家でクセナキスやドナトーニに習っていますね。細川俊夫さんと共に尹伊桑の元でも習っています。このアルバムでは邦楽和声で曲を作ったそうです。

Composition No. 60 " shogo / noonday" I (2005年)
  for recorder and koto
和楽の歌が入ります。リコーダーはそのまま尺八の音色ですね。旋律は和的で、琴も入っている様です。極度にシンプルな小曲です。

Composition No. 60 " shogo / noonday" II & III (2005年)
  for koto
箏の爪引き音ですが音数は少なく静的空間を感じます。空間音響系と言ってもいいかもしれません。




アネッテ・シュリュンツ
(Annette Schlünz, 1964 - )
ドイツの女性現代音楽家で、ウド・ツィンマーマン、クセナキス、ラッヘンマンに師事しています。教育にも熱心で南米やアジアにも訪れていますね。

Light from the One (2006年)
  for recorder and 17-string bass koto
和楽器の横笛の様なリコーダーの音色と和声です。速い流れと緩やかな流れが共存して、そこに箏のアルペジオが絡んできます。そして凶暴な音色とDialogueも見せます。邦楽和声をベースに不協和音という感じですね。微分音的な音色も見せて不思議と言えば不思議ですが、機能和声を邦楽和声にしただけの現代音楽 と言ってしまえばそれまでかもしれません。




高橋悠治
(Yuji Takahashi, 1938 - )
言わずと知れた天才ピアニスト・現代音楽家ですね。紹介は割愛ですw

Koto nado asobi 箏など遊び (2000年)
  for koto, recorder and shamisen
静的な琴は音数少なく、かすかに絡むもう一つの弦は三味線なのでしょうか? そこに歌い、後藤真紀子さんと思われます、が入ります。歌いはおどろおどろしい気配も感じます。
(三味線のクレジットはありますが、楽器奏者の中に三味線記述はありません)

Recorder nado asobi リコーダーなど遊び (2000年)
  for recorder, bass koto and 21-string koto
全体に音数は少ないですね。歌いというよりも語り、男声です、が入ります。静的世界です。




望月京
(Misato Mochizuki, 1969 - )
ファーニホウやヌネスに影響を受け、クラウス・フーバーからも支持を受けています。その時点でダルムシュタットやドナウエッシンゲンでの活躍が想定できますね。楽風は音の変化にストーリー性があって面白い印象があります。

Toccata (2005年)
  for recorder and 21-string koto
箏もリコーダーも特殊奏法でしょうね。弾き爪弾く様な音色の箏、炸裂する様なリコーダーの音、それぞれが対位法的に絡みます。片方が叫ぶ時は片方が引きます。その流れが面白いです。楽器は和的ですが無調の現代音楽でこれは面白いですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?




細川俊夫
(Toshio Hosokawa, 1955 - )
細川さんの今回の曲は二曲間で27年もの開きがあります。soloとduoですが、その作風変化も今回の楽しみの一つですね。

Nocturne 夜想曲 (1982年)
  for bass koto
箏を使っていますが、邦楽和声ではありません。細川さんらしい静的で鬱美の和声の現代音楽です。極端な特殊技法はありませんが、本来の箏の音色にはない音を使っていますね。現代音楽として違和感はありません。

Schneeglöckchen 待雪草 (2009年)
  for recorder and koto
27年後、和声が明らかに邦楽に近づいています。面白いのかもしれませんが、個人的には邦楽和声を弄った方向性に興味が惹かれません。




丁々発止的な流れは皆無、静的空間と二つの楽器の音色が音数少なくDialogueする日本的な印象ですね。邦楽和声は調性ではないモードの世界ですから、そのままでも西洋では現代音楽でしょう。

楽曲組合せからいくと"邦楽古楽"、"邦楽和声曲"、"和楽器を使った現代音楽"の三つですね。面白かったのは望月京さんと細川俊夫さんの夜想曲で、"和楽器を使った現代音楽"でした。日本人だから他の二つは違和感がない古楽ですね。




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ドナウエッシンゲン音楽祭2017 (Donaueschinger Musiktage 2017 - NEOS) で味わう現在形現代音楽


Donaueschinger Musiktage 2017
ドナウエッシンゲン音楽祭2017
国内発売が毎年遅れる様になっている気がしますが、欧州前衛現代音楽の現在を楽しめるドナウエッシンゲン音楽祭の定例CD、NEOSレーベルから発売ですね。

前回に続きCD2枚組での発売になりました。CD1がアンサンブル、CD2が管弦楽の組合せも同じですね。ベテランから若手、といって40代半ばというのが少々寂しい?、を取り上げていますが 特徴的なのは2012年に亡くなったヌネスでしょう。それも初期作品ですから。






CD 1
エマヌエル・ヌネス
(Emmanuel Nunes, 1941 - 2012)
ポルトガルの現代音楽家で、ダルムシュタットでブーレーズに ケルンでシュトックハウゼンに師事しています。その後はダルムシュタットで長年に渡り講師を続けていますから、楽風はわかりますね。当然ダルムシュタット式のポスト・セリエルをベースとして空間音響やライブ・エレクトロニクス、ドローンといった様式を展開します。反復の拒否等のベースは変わらず、馴染みよい旋律はすべからず拒否のスタンスですね。

Un calendrier révolu, for 14 instruments (1968 / 1969年)
Remix Ensemble, Emilio Pomàrico(cond.)
 「過去のカレンダー」は若き日の作品でまさに前衛の停滞が叫び始められた時代そのものです。セリエル的で点描音列配置な音の並び、テンポ設定はありますが動機や楽器間の協調は存在しません。(ポリフォニーや対位法的と表現すれば、そうかもしれませんが) 基本はスロー&静の流れで、その中にアンサンブルの一つ一つの音の重なりが作り出す響の妙が感じられますね。Part IIでは等拍パルスも使われています。早くも空間音響系の音作り、後半ではドローンも感じますね。ヌネスらしいポスト・セリエルといった風情です。




アイヴィン・ビューエネ
(Eivind Buene, 1973 - )
ノルウェイの現代音楽家で、ノルウェー国立音楽アカデミーで作曲を習い室内楽を得意としている様です。

Lessons in Darkness, for ensemble (2017年)
Ensemble Musikfabrik (Enno Poppe, rehearsals)
 「闇の中のレッスン」の主展開はポリフォニーの混沌で、ノイズも採用して一部即興風でもあります。強音パートもありクラスター的にも展開しますし、静的なパートではロングトーンでドローン風でもあります。最後は動機の存在するホモフォニーも使います。なんとなくゴチャ混ぜ感が強いです。少し整理した方が面白さを感じられるかも。(スコア上の面白さはあるのかもしれません)

エンノ・ポッペがリハーサル指揮で音作りをしている様です。




CD 2
アンドレアス・ドーメン
(Andreas Dohmen, 1962 - )
ドイツ人現代音楽家で、作曲をF.ドナトーニに師事していますね。このSWR主催のドナウエッシンゲン音楽祭の他にも、WDRの関連音楽祭からも委嘱を受けています。

a doppio movimento, for electric guitar, harp, piano and large orchestra (2016 / 2017年)
Yaron Deutsch(electric guitar), Andreas Mildner(harp), Nicolas Hodges(piano), SWR Symphonieorchester, Ilan Volkov(cond.)
 「二重の動き」はエレキギター/ハープ/ピアノとオケの協奏曲で、ピアノは現代音楽ピアニストの雄ニコラス・ホッジスです。
トリル・トレモロの緊張感のある流れにパルス的にクラスターが割り込みます。独奏三人の細かく速い音が強弱を付けながら流れを作り、特殊奏法も使って絡みながら進んでいきます。オケ、特に管、のクラスター的絡みも生きていますね。後半はハープの特殊奏法(ペダルの足踏み音)も上手い使い方で面白く好きな流れです

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  当日のLive動画です!! 特殊奏法の様子もよくわかります。





マルトン・イレス
(Márton Illés, 1975 - )
ハンガリーの現代音楽家でピアニストです。ハンガリーでピアノと作曲を習った後、チューリッヒとハノーバーでピアノを主として習い、作曲をW.リームに師事していますね。

Ez-tér (Es-Raum), for orchestra (2014 / 2017年)
SWR Symphonieorchester, Pablo Rus Broseta(cond.)
 「それは宇宙」は4パート構成で一番長くても6'ほど。主役はトリル・トレモロや快速アルペジオの刻まれた音です。Part I.は管弦打楽器全てでそれが展開されて渦巻き・暴れ、II.では静的になりストレッチされた音も絡みます。III.では背景に金属系の残響の様な音を配して即興的混沌化します。ラストIV.は再び静的展開と混沌です。
緊張感のある流れは悪くありませんね。




ハヤ・チェルノヴィン
(Chaya Czernowin, 1957 - )
米在住のイスラエル人女性現代音楽家ですね。B.ファーニホウに師事した影響が大きく、"新しい複雑性"の流れを汲みます。譜面上の難読性というよりも特殊奏法によるノイズ系になります。日本でもおなじみですね。

Guardian, for violoncello and orchestra (2017年)
Séverine Ballon(violoncello), SWR Symphonieorchester, Pablo Rus Broseta(cond.)
 「ガーディアン」はチェロ協奏曲です。もちろんバリバリ特殊奏法ですから、耳馴染みの良い動機や旋律は存在しません。ギギギィ〜のノイズ系です。聴こえる音楽からいえばファーニホウというよりラッヘンマンのシュツットガルト楽派風でしょうね。ノイズ系サウンドが辺りを満たします。こういうのを聴くとドナウエッシンゲンだなぁ、って思いますね。




全体印象は無難な音楽を集めたという印象ですね。一番面白いのはA.ドーメンの「二つの動き」ですが、格別の展開があるわけでもありません。インスタレーションを思わせる曲がないのも要因かもしれませんね。
望月京(Misato Mochizuki)さんも出ていたので取り上げて欲しかったです。

今回の中ではマリナ・ローゼンフェルド*(Marina Rosenfeld)がインスタレーションだとカタログには記載されていますが、出来ればそれを入れて2014年盤の様にDVD付きの4枚組くらいが嬉しいですね。

*実際彼女はかなり奇抜でパフォーマーに近いかもしれませんね。




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プロフィール

kokoton

by kokoton
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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