クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)の「Black Angels」を聴く


クロノス・クァルテット, Kronos Quartet
今更のクロノスですが、1973年デイヴィッド・ハリントン(David Harrington, #1vn)が創設した米現代音楽四重奏団ですね。チェロ以外は現在もオリジナル・メンバー(John Sherba, #2vn / Hank Dutt, va)です。このアルバムはオリジナル・メンバーなのでチェロは紅一点ジョーン・ジャンルノー(Joan Jeanrenaud)です。

米クロノスといえば殆どの方が欧アルディッティ、1974年創設のアルディッティ・クァルテット(Arditti Quartet)を思い浮かべるでしょう。同じ前衛現代音楽クァルテットですが、クロノスは古典からミニマル、ロック・ジャズ・民族音楽までとレパートリーは広いですね。アルディッティは欧前衛系を主体にしている点で異なりますが、これは米現代音楽シーンとの違いでしょう。
アルディッティQ.は昨年来日でも感じましたが、先鋭から円熟に舵を切っている様です。クロノスがどうなのか?、興味があるところですね。


Black Angels
本アルバムは興味深い点がいくつかありますね。一つはアイヴズの"They are there!"で、テープに残された本人の演奏との共演、もう一つはショスタコーヴィチ"Quartet No.8"という話題性の強い(興味のある方はググって下さい)の採用ですね。個人的には表題曲のクラム"Black Angels"が最大ポイントです。



Black Angels (1970年) / George Crumb
米現代音楽家ジョージ・クラム(1929/10/24 - )の代表作「ブラック・エンジェルズ1970-暗黒界からの13のイメージ」です。特殊奏法から引用まで、技法を駆使したベトナム戦争に触発された作品ですね。
エレクトリック弦楽の切れるような弦のトリル、ノイズ、そしてゴング、叫び(数字の13を各国語で。数字のカウントアップのつぶやきもあります。共に日本語あり)、等々。「電気昆虫の夜(Night of the electric insects)」といったパート・タイトルも含めて先鋭的表現は実に魅力的です。
大作ピアノ曲集「マクロコスモス」も早いところインプレしないといけませんねぇ。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  スコア付きでどうぞ。
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)の演奏もあります!!


Spem in alium / Thomas Tallis
16世紀の音楽家トマス・タリスの全40声部の作品で、クロノスのアレンジ版。一部パートを事前録音しておき演奏しています。技法的には面白いですがSacred Song(聖歌)ですね。

Doom. A Sigh (1989年) / Istvan Marta
ハンガリーの現代音楽家イシュトヴァン・マルタ(1952/6/14 - )の作品「運命、嘆息」です。
マルタがルーマニアの小村を訪れた際に録音した二人の女性の歌を元にしていますが、なんとも陰湿で不気味な流れです。その歌も入ります*1が不完全な録音と合わせてまるで泣き声の様、それに弦楽が哀しみの音色を薄く・失望を濃く合わせます。恐怖を覚えます
この後二人の女性は曲の元を追った独裁政権からの迫害に遭い、マルタは「二度と来ないで」と電報を受けたそうです。

They are there! (1917/1942) / Charles Ives
米現代音楽の父チャールズ・アイヴズ(1874/10/20 - 1954/5/19)がテープに残した演奏との共演です。アメリカンな陽気さで歌うアイヴズとピアノ。よく聴くとクラスターと不協和音が絡んでいます。ヒスノイズだらけの音に乗って時代背景も含めての演奏ですね。弦楽は薄いですがw

Quartet for Strings no 8 in C minor, Op. 110 (1960年) / Dmitri Shostakovich
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の代表作ですね。時代背景と作曲の関係の話題性以外、曲に関しては特にコメントはありません…


個人的には次の二曲です。
一つはクラムの代表作「Black Angels」を聴くために所有しているアルバムで、その先鋭な曲を楽しみたいですね。もう一つはマルタの「Doom. A Sigh」で、この様な不気味で恐ろしい現代音楽は他に聴いたことがありません。
興味の尽きないアルバムです



*1 人が口ずさむ歌のテープをメインに曲を被せたパターンですとギャヴィン・ブライアーズ(Gavin Bryars)の名曲『イエスの血は決して私を見捨てたことはない, Jesus' Blood Never Failed Me Yet 』を思い浮かべます。よく似たパターンですが、こちらの方が先の1971年作、そして心に染みます。



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デュッセルドルフ・パーカッション・アンサンブル(Düsseldorfer Schlagzeug Ensemble) の「Denhoff Vlachopoulos Roderburg Chavez」を聴く


Düsseldorfer Schlagzeug Ensemble
英語名にするとわかりやすいですね。Düsseldorfer Percussion Ensembleは1987年に結成されて、このアルバムが第一弾、1900年代半ば以降のヴィルトゥオーゾ性の高い前衛パーカッション音楽を取り上げています。
メンバーは以下になります。
Albert Detmer, Karl Hausgenoss, Rolf Hildebrand, Karl-Josef Kels, Christian Roderburg, Wolfgang Wölke, Thomas Meixner(Toccata)


Denhoff Vlachopoulos Roderburg Chavez
タイトルは以下四人の現代音楽家の名前。各パーカッション作品です。

Michael Denhoff (ミハエル・デンホフ, 1955/4/25 - )
 ドイツ人現代音楽家でチェリスト、H.W.ヘンツェに師事していますね。メシアン、フェルドマン、クルターク、そしてB.A.ツィンマーマンをルーツにしていると言われています。
Iannis Vlachopoulos (ヤニス・ブラホープロス, 1939 - )
 ギリシャ人現代音楽家でメシアンにも師事しています。そして興味深いのはkokotonPAPA一押しのB.A.ツィンマーマンに一番影響を受けてる事でしょう。
Christian Roderburg (クリスティアン・ローデルブルク, 1954 - )
 マリンバ奏者としての方が著名かもしれませんね。本アンサンブルを見つけ出した一人でもあります。
Carlos Chavez (カルロス・チャベス, 1899/6/13 - 1978/8/2)
 メキシコ人現代音楽家で、ポリリズム、クロスリズム、シンコペーションと言った拍子変化を特徴とするので、今回の楽曲はまさにぴったりでしょう。



Bacchantic Tanzszenen (1983年) by Michael Denhoff
始めは所謂(いわゆる)ドラムセット+α的です。ロックのドラムソロにタムタム等の鳴り物を混ぜた感じでしょうか。途中から鍵盤打楽器が入り緩急の表情が付いて現代音楽らしくなります。その辺りから面白くなりミニマル的要素も見せます。先鋭的な展開はありませんが面白ですね。

Psalmen (1988-89年) by Iannis Vlachopoulos
鍵盤打楽器のポスト・ミニマルです。従って旋律が存在し、煌めく音色が空間を埋めながらスロートーンとファストトーンの両方で響きます。調性音楽でホモフォニー、心地よい響きですね。この二人のB.A.ツィンマーマンとの接点がピンと来ませんが…

4 Ensemblestücke (1991年) by Christian Roderburg
特殊奏法も交えた暗闇、嵐、狂気、の表情が幻想空間を作ります。閑と烈、遅と速、といったコントラストの強さが生かされていますね。和太鼓的反復要素やアフリカ系リズムといった民族音楽系パートも存在しますが鍵盤打楽器は入りません。

Toccata (1942年) by Carlos Chavez
前曲と少し似た方向ですが変拍子主体で、ポリリズム指向が感じられますが混沌ではありませんね。リズム変化追求型ですが鍵盤楽器展開も単純音反復になります。三楽章で第二楽章は緩徐的展開、最後は再現的で打楽器ソナタの様です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ted Atkatz指揮、The CSULB Percussion Ensembleの演奏です



パーカッションと一括りにしても、打音だけのリズム楽器と鍵盤楽器では全く表情が違いますよね。尖った前衛はありませんが、その両者を楽しめるアルバムです。




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フィリップ・マヌリ(Philippe Manoury) の「Fragments pour un portrait・Partira I」を聴く


フィリップ・マヌリ (Philippe Manoury, 1952/6/19 - )
好きな仏現代音楽家の一人マヌリはブーレーズ、シュトックハウゼン、クセナキスと言ったダルムシュタットのポスト・セリエルのエクスペリメンタリズムからスタートして初期1972–76年頃はセリエルの点描的音楽(Punctualism)でした。1980年代に入ってからは主流となる電子音楽に向かいIRCAMをベースにライヴエレクトロニクスでは米数学者Miller PucketteのソフトMax/MSP(ver.4, ver.5以降は映像用Jitterも取込み現製品名はMAX)を使っています。
その後は機能和声を同期させる様な多様性も見せる様になりましたね。

作風の基本は対比(shallow and deep, melodic and dissonant, placating and strident, stasis and progress, simplicity and complexity)と流れ(run-up—stop—tighten—burst—relax)と言われますが、印象は強音ポリフォニーでもあります。
ちなみに来年のコンポージアム2019(武満徹作曲賞選考員含む)はフィリップ・マヌリなのでとても楽しみです。


自画像のための断章 / パルティータ I
構成パートが多いアンサンブルと電子音響の作品になります。演奏はスザンナ・マルッキ (Susanna Mälkki)指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain, 現首席指揮者はピンチャー Matthias Pintscher)、にIRCAM。説明無用の仏現代音楽ユニットです。



Fragments pour un portrait, 7 Pieces for ensemble of 30 instruments (1998年)
 1. Chemins - 2. Choral - 3. Vagues paradoxales - 4. Nuit (avec turbulences) - 5. Ombres - 6. Bagatelle - 7. Totem
室内楽のポリフォニーで即興的なのですがありげなカオスではなく、その中に協調と空間音響の響きがあります。全体的に音密度は濃く、静より刺激とクラスター風の音楽です。音にキラメキを感じさせるのはメシアン→ブーレーズから流れる仏現代音楽ならではの気がしますね。やっぱり素晴らしいですね。スコアからは細かな昇音階・降音階が各所に見られますが、ト音記号・ヘ音記号・ハ音記号で各声部が構成されて譜面上での前衛性はありません。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  指揮はDavid Robertsonになります。アンサンブル三方配置が現代音楽らしいですね。
  CDよりrec.レベルがやたらと低く音が沈んでしまっているのが残念です。


Partita I for viola and live electronics (2006年)
 I - II - III - IV - V - VI - VII - VIII - IX
ヴィオラとライヴエレクトロニクス曲で、vaはクリストフ・デジャルダン(Christophe Desjardins)、電子音響はマキシム・ル・ソー*(Maxime Le Saux)が担当しています。
vaの音色が脳に蔓延する様なコンプレックスさ。もちろんライヴエレクトロニクスで合成されてvaポリフォニーになっていますが、それがMax/MSPでループやテープ(事前録音)他の何をどう駆使しているのかは不明です。(スコアには山型昇降音階音符の他に弦楽の秒数指定付きの波形が入っていますね)
無調ですが旋律が存在して互いに不協和音交錯にならないのはこの時代のマヌリらしい調性との融合でしょう。刺激的な音空間が味わえます。ボリュームを上げられない時はヘッドホンが良いかもしれませんね。


本流の欧エクスペリメンタリズム現代音楽でしょう。強音主体のポリフォニー即興風なのに煌めきと刺激のある(電子)空間音響系で個性的です。おすすめの一枚です。



*ル・ソーは本年8月の現代音楽の恒例祭「サントリーホール サマーフェスティバル 2018」にP.マヌリの「Le temps, mode d’emploi, 時間、使用法」日本初演で来日します。フェスティバルではJ.ヴィトマンのフィーチャーや、第28回芥川作曲賞選考演奏会では岸野末利加さんの参加もあり連日通う予定です。^^v



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アルヴォ・ペルト(Arvo Pärt) の「交響曲集 The Symphonies」を聴くと、背景にあるのが前衛の衰退とわかりますね


アルヴォ・ペルト (Arvo Pärt, 1935/9/11 - )
現代音楽家としては日本でも最も人気がある一人なのでは? 何回かインプレしているペルトですが、前衛とは対極のマニエリスムの現代音楽家です。ペルトは初期の1970年くらいにそれまでの無調や新古典主義的な楽風から、plainsong(単旋律聖歌)ベースのミニマルであるティンティナブリに推移します。1984年からはECMから作品リリースされている事でも楽風がわかるのではないでしょうか。(ECM New Seriesはペルトからスタートしていますね)

このブログであまり取り上げていないのは初期ロマン派以前のクラシック、そして現代音楽では宗教系と旧来の流れを汲むマニエリスムです。ペルトはその全てをバックボーンにするので恐ろしくハードルが高いですね。
どこかでペルトくらい聴かないと、と言った脅迫概念wが脳裏にある様で再チャレンジです。(もちろん何回かインプレしていますが、途中で聴くのを諦めたりとか…笑)

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The Symphonies
今回見つけた新譜は初期の二曲、転換点と現在までそれぞれ一曲づつ四つの交響曲を一枚で聴き比べられるのであえて購入してみました。初期作品が二曲入っているのがポイントですね。



交響曲第1番「ポリフォニック」(1963年)
時は前衛最盛期。二楽章形式で第一楽章は出し入れの強い新古典主義で4拍子旋律のショスタコーヴィチ感と静音パートの暗さはバルトーク印象と言った風です。第二楽章はバルトークぽさが濃い中、中間部?でショスタコ風行進曲に推移します。然程のポリフォニー感も特徴的な個性もありませんね。

交響曲第2番 (1966年)
前衛が衰退に向かい始めた時代です。ペルトの無調の前衛曲で具体的な旋律は存在せず、管弦楽器がそれぞれ共鳴音をポリフォニー的に響かせます。特別な技法技術、ノイズ系や空間音響と言った、はなく旋律と調性を排除しただけの様な構成ですね。ラストはちょっと面白く引用が入っているかもしれません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

交響曲第3番 (1971年)
前衛が衰退期に入った1970年代初頭。それと共にペルトは作風を変えています。その過渡期作品で静かで美しく響きの良い作品ですがまだ抑揚と表情の変化を付けて新古典主義が顔を出しています。明確に言えるのは前衛に背を向けた事でしょう。第三楽章では宗教曲風となり聴くのが難しくなってきましたw
(ペルトはこの時期に正教会に入信しているそうです)

交響曲第4番「ロサンゼルス」(2008年)
現在の作風に繋がるティンティナブリ作品、聖風ミニマル?、になります。音の密集のないスロー静的主体の美しいペルトの音楽、です。興味軌道から外れましたw
心の荒むジジイの駄耳にはやっぱり縁がない様です。m(_ _)m

 ★ 試しにYouTubeで聴いてみる?


ペルトの楽風推移が前衛現代音楽の時代変化と対応しているのが良くわかるアルバムです。
ペルトの一番の才能は時代の波を見抜く力だったのかもしれませんね。






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チン・ウンスク(陳銀淑, 진은숙)の「Unsuk Chin: 3 Concertos」を聴く


チン・ウンスク (Unsuk Chin, 1961/7/14 - )
韓国人女性現代音楽家で現在はドイツを活動拠点にしています。ハンブルグでリゲティに師事していて、その後電子音楽を経てアンサンブル・アンテルコンタンポランやケント・ナガノとのコラボで知られますね。インプレ済みですが、印象は前衛としては特異性は薄くどこかで耳馴染みのある現代音楽の聴きやすさを感じます。

コンポージアム2018、来月5月27日武満徹作曲賞(現代音楽オーケストラ作品)の審査員を務めます。チケットも安価、スコアも展示され、本選の作曲家もロビーに居て話しかけられ楽しいです。来年の審査員はフィリップ・マヌリなので楽しみです。

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Unsuk Chin: 3 Concertos
タイトル通り、ピアノとチェロと笙(sheng)の協奏曲になります。年代的にも90年台後半から2010年代までが揃って、チェロ協奏曲はコンポージアム2018でも日本初演予定ですね。

[演奏] Sunwook Kim (piano), Alban Gerhardt (cello), Wu Wei (sheng), Myung-Whun Chung (cond.), Seoul Philharmonic Orchestra



Piano Concerto (1996/1997年)
第一楽章は小刻みなpfアルペジオに、キラキラとしたオケ。第二楽章はそのままスローにした緩徐ですね。この楽章が一番長いのですが表情変化があります。第三楽章は一楽章と似たパルス的です。第四楽章は暗い音色背景ですが、パルス的なpfのアルペジオは変わりませんね。通して変化の薄さが気になります。

Cello Concerto (2008/2009, rev. 2013年)
オリジナルを知らないので2013年版の推移がわかりません。不協和音の機能和声の旋律を奏でるvc、オケの流れは抑揚をクレシェンド・デクレシェンドでつけています。(緩徐ではロングトーン) メリハリがあるので普通のコンサートの前半のコンチェルトでも受けそうです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Šu for sheng and orchestra (2009年)
上記チェロを中国笙に置き換えた様な楽曲です。タンギングの笙や打楽器を印象的に使ったりの変化はあり、三曲の中では一番面白いですね。ただ基本にある機能和声に寄り添う様な流れには個人的に違和感を拭えませんが。


機能和声に近い反復動機・旋律の流れ、静音や強音も徹底したものは無く、格別な個性がある現代音楽でないですね。今の時代の多様性の現代音楽なのでしょう。
現代音楽は作曲家の思想・技巧の楽譜展開なので、それを知らないとわからないかもしれません。コンポージアム初日の講演会「自作を語る」へ行く気力は残念ながらありませんが… (無料ですから5/23いかがですか?)






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ベアト・フラー(Beat Furrer) の「Streichquartett Nr.3」を聴く


ベアート・フラー (Beat Furrer, 1954/12/6 - )
スイス生まれでウィーンで活動するご贔屓の現代音楽家フラー、代表作のNUUNも紹介済みですね。
ラッヘンマンの流れを本流にしつつ静の空間音響系にも渡る音が今の時代の現代音楽らしさを聴かせてくれます。指揮者としてはマーラーも振っているそうなので、一度聴いてみたいですね。
門下生の一人ベルンハルト・ガンダーも好きな現代音楽家です。

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String Quartet No.3 (2004年)
フラーの弦楽四重奏曲第3番ですね。21世紀に入っての作品なので無調破滅的展開から静寂と混沌になっています。ノイズ系・空間音響系にもなるかもしれませんね。
六楽章51分の作品で演奏はKNM Berlin*になります。
*Steffen Tast (vn), Angela Jaffé (vn), Kirstin Maria Pientka (va), Ringela Riemke (vc)



ライナーノートにあるスコアのサンプルからもわかりますが、変拍子や全休符、ppp, mpやpのクレシェンド・デクレシェンド、トリルと言った静音の変化構成がベースですね。その無音や微音の変化の流れにffの瞬発クレシェンドが刺激的に入ります。それは時に反復であり変奏であり、音色はパルスとノイズになります。
実は超微音(ppp)の"空(くう)"中に刺激的な音符が並んでいるのですが、それがまるで微かな揺らぎの様に感じるのが素晴らしいですね。特殊奏法と思われる音色もありますが、これ見よがしではありません。
フラーが主役の"空"のテンポに気を使っていたのは明白で速度記号の表記があります。

静かな水の流れに落ちる水滴、それら全てを緊張感で表現した様な音楽です。音数の少ない静音にパルスとノイズと言った世界。静音の流れに色々と隠れているのですが、そこがフラーらしさだと思います。おすすめの一枚ですね





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武満徹の「Orchestral Works III, Autumn, etc」を聴く


武満 徹 (Toru Takemitsu, 1930/10/8 - 1996/2/20)
亡くなられてから22年も経つんですねぇ。時が経つのは早いです。武満さんも前衛最盛期から衰退の時代を生きたので、前衛の縛りから始まり封じた調性を解き放つ自由度(多様性?)への音楽への変遷でしたよね。久しぶりに聴いてみました。


Orchestral Works III, Autumn, etc
名曲「カトレーン」と同じ中期1970年代の管弦楽曲「Autumn」をメインに、調性感が増した後期1980年代の弦楽曲やフルート協奏曲といったオケ作品集ですね。
演奏は沼尻竜典指揮、東京都交響楽団です。



Autumn - Into The Fall After A Little While (1973年), For Biwa, Shakuhachi & Orchestra
 Biwa – Kakujo Nakamura, Shakuhachi – Katsuya Yokoyama
名作『ノヴェンバー・ステップス』(1967年) と同じ"琵琶"と"尺八"の協奏曲です。よりスロー化して静vs烈vs間のコントラストが明確になって来ています。その分、深淵で官能的な美しさが増して奏でられますね。二つの和楽器が奏でるパートはかなり類似性を感じます。"空"の中に感じる存在は進化している様に思えます。
個人的にはこのAUTUMNの方が好みですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

A Way A Lone II (1981年), For String Orchestra
後期ロマン派からの延長線上を感じる弦楽曲、例えばシェーンベルクの浄夜やマーラーの弦楽緩徐楽章の様な、の流れですね。武満さんらしい"揺らぎ*"を残していますが、それを排除すると不協和音の少し加わった緩徐曲風かもしれません。でもこの幽美さは心地よいですね。
*短くてクイックなクレシェンドやデクレシェンドの様な

I Hear The Water Dreaming (1987年), For Flute And Orchestra
 Flute – Hiroshi Koizumi
独特の"揺らぎ"と武満和声の不協和音が減り、やや平板化して来ています。それでも弦楽器と管楽器の奏でる音色は美しい響きですね。

Twill By Twilight (1988年), For Orchestra
ここでも同傾向が見られます。緩やかな流れが強まり、深淵ながら平和さがより濃く感じられます。

当時は和楽器が入ることに違和感を感じたものですが、AUTUMNは素晴らしいです。やっぱり武満さんは中期(1970年代)作品に魅力を感じてしまいますね。
美しい楽曲アルバムで、中期から後期への武満さんの変移もわかりますからオススメです。




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マルセル・ランドスキ(Marcel Landowski) の 協奏曲集を聴く


マルセル・ランドウスキ (Marcel Landowski, 1915/2/18 - 1999/12/23)
オネゲルに影響を受けたフランス人現代音楽家で、指揮はモントゥーに師事していますね。楽風的には仏近代音楽の流れを無調に展開した中庸さです。もちろん前衛ではありません。時代は前衛最盛期から衰退期に生きていますが。
経歴の派手さ、仏文化省の音楽・オペラ部局監督から仏国立アカデミー終身総裁、の方が象徴的かもしれません。


Concertos
協奏曲集になりますね。ピアノ、オンド・マルトノ、パーカッション、トランペット、電子音楽、といったバリエーション豊かなコンチェルトです。



■ Concerto No. 2 pour Piano et Orchestre (1963年)
ランドウスキの代表作の一つでしょう。三楽章形式で無調ですが旋律が主体で混沌の無調とは一線を画します。pfはソフト&スローからハード&クイックと幅広く、オケはより調性的です。この当時は前衛バリバリの時代、中途半端感が強烈だったでしょうね。

■ Concerto pour Ondes Martenot, Orchestre à cordes et percussions (1954年)
オンド・マルトノとパーカッションです。オンド・マルトノは例によって幽霊の様な音色、弦楽器群も調性薄めに幽玄な印象派的流れを作り、パーカッションが控えめに絡むといった様相です。第二楽章の冒頭は一瞬メシアン風?!

 ★試しにYouTubeで観てみる?

■ Concerto pour trompette, Orchestre et éléments électroacoustiques "Au bout du Chagrin, une fenêtre ouverte" (Paul Eluard) (1976年)
この時代らしくエレクトロニクスを使っています。流れは一曲目のピアノ協奏曲と似て、無調的tpに調性色のオケですが幽玄な流れを感じますね。とは言え前衛の衰退の時代背景にあっては難しい立ち位置の気がします。


ジョリヴェやオネゲルといった仏音楽の先達を思わせますね。前衛や実験とは無縁の無調で、不協和音や移調・転調的な話声です。特徴的なのはソロ楽器には無調を、オケは調性でといった構成でしょうか。
いずれ中途半端な退屈感は残りますが…




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エリーシャ・ネルソン(Eliesha Nelson) のヴィオラで聴く「Russian Viola Sonatas」


エリーシャ・ネルソン (Eliesha Nelson, ヴィオラ va )
アラスカ出身の女性ヴィオラ奏者エリーシャ・ネルソンが、ナイジェリア生まれで英国のピアニストのグレン・イナンガ(Glen Inanga)と組んだヴァイオラ・ソナタ集です。
取り上げた作曲家が旧ソ連の近現代音楽家というところがポイントですね。


三人の作曲家
バーバラ・ガイジェローワ (Barbara Gaigerova, 1903 - 1944)
女性作曲家で、カトワールやミヤスコフスキと共にモスクワ音楽院で学んでいます。楽風は時代を背景とした後期ロマン派と以降の流れです。

アレクサンダー・ウィンクラー (Alexander Winkler, 1865 - 1935)
ロシアで学んだ後にフランスやオーストリアに渡っていますね。後にプロコフィエフを教えてもいますが、グラズノフやリムスキー・コルサコフと共にサンクトペテルブルクの"ベリャーエフ・サークル, Belyayev Circle"の一員でもありました。

パウル・ユオン (Paul Juon, 1872 - 1940)
モスクワ出身のスイス系ロシア人で活躍したのはドイツになりますね。楽風はバリバリのドイツ・ロマン派になります。そういう意味では、このブログの対象ではないかもしれません。

 ("現代音楽CD[作曲家別]一覧" の対象はガイジェローワ一人ですね)



Suite for viola and piano, Op.8 : Barbara Gaigerova
四楽章で、ロマン派の香りが強い機能和声の楽章と、少し調性の薄い幽玄な緩徐楽章、そしてロシア民族音楽を感じるといった独特の構成です。va, pf共に鳴りの良い演奏ですが、特徴的な印象が残りません。緩徐楽章もvaなのでvnの様な細い音色は難しそうです。第三楽章のロシア風リズムや民族系が生きているかもしれませんね。

Pieces for viola and Piano, Op.31 : Alexander Winkler
後期ロマン派的な楽曲です。美しい音色のpart1、リズミカルで技巧的なpart2の構成です。part2が個人的には楽しめました。

Sonata for viola and piano, Op.15 : Paul Juon
古典派の流れです。

Sonata Op.10 : Alexander Winkler
三楽章で第三楽章は主題のアンダンテと7つの変奏、そしてコーダの9小曲構成になっています。曲調は古典(〜ロマン)派的、第三楽章の変奏もこれといったパートはありません。


作曲家としては古典・ロマン派(〜後期ロマン派)の流れで、それ以上でも以下でもありません。それを飲み込んで楽しめるならヴィオラらしい音色の旋律が生きています。

しかし個人的嗜好はvaを生かした今の時代の楽曲演奏ですから、vnからvcの音色までカヴァーする貴重な楽器とはいえvnの切れる様な高音や朗々としたvcの胴の大きな音色は出ないわけで、バシュメットの様な楽曲選択、例えばカンチェリとか、が欲しい気がしますね。
もしくは先日インプレしたアントワン・タメスティの様に前衛現代音楽で突撃するか……そりゃ無理ですねw




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ダリボル・ブクヴィッチ(Dalibor Bukvić) の Hrvatski Suvremeni Skladatelji を聴く


ダリボル・ブクヴィッチ (Dalibor Bukvić, 1968/1/1 - )
クロアチア人現代音楽家ブクヴィッチ(ダリボール・ブビッチの方が近い?)は、ザグレブの音楽学校を出てダルムシュタットでシュトックハウゼンに師事しています。その後パリのCNSMやIRCAMで習い、スペクトル楽派の雄ジェラール・グリゼーとも親交がある様です。2008年からはクロアチアのザグレブで活躍中ですね。


Hrvatski Suvremeni Skladatelji
Cantusレーベルから出ているクロアチア現代音楽家(Croatian contemporary composers)シリーズの一枚ですね。タイトルはクロアチア語の同名になります。
ソロから管弦楽、電子音楽まで聴く事ができます。



(DL版になります)

Spatial - Danse Des Apparitions (1998年), for electronics
電子音楽で左右の位相を使ったノイズ系ドローンですが、アンビエントではありませんね。残響音を残しているのはブクヴィッチの習ってきた音楽を背景に感じます。目新しさはありません。

Prophéties (1991年), for piano
テーマと6変奏の7つのピアノソロ小曲集です。主題は調性に不協和音的、音列的な印象で静から強への移行です。そもそもが旧態然とした動機で、その繰り返しと変奏ですから面白さが感じられないのが残念です。

Fantasia (1994/2008年), for flute
フルートソロで、やはり調性感漂う流れにスローな静からハイテンポ化します。動機の繰り返しと変奏も似たパターンですね。唸る様な超絶的技巧を感じる訳でもありません。

Musica Pian E Forte (1992年), for brass quintet
華々しい管楽器五重奏曲ですね。展開は同じですが、古典的なフーガさえ使って中途半端さが強烈です。

Diptih (1991年), for piano and ten woodwinds
上記曲の規模を大きくしたピアノと10人の管楽器奏者のための曲です。それでもpfの4/8拍子的ホモフォニーが面白さを出しているかもしれません。後半にはメシアンの様な管楽器とpfのポリフォニーパートもあります。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きで、繰り返しの印象がわかります。


Actus (1992年), for orchestra
一曲目の電子音楽と似た流れです。トレモロ・トリルに木管が被る静音パート、ピアノや金管が絡みます。個々の声部に特徴は薄いですが、ポリフォニーの幽玄さとクラスター炸裂の"それっぽい"気配がありますw

Afrodizzyak (1996年), for bass clarinet and piano - one musician
バスクラとピアノ曲で、両者特殊奏法です。ノイズ系になりますね。ここまでの小編成曲としては一番面白いでしょうか。ただ、調性感が存在するのは奏法とミスマッチの気がしますね。


調性感+不協和音的な曲が並びます。特に小編成ではワンパターン、古さ、平凡さと言った印象が拭えませんね。4拍子ホモフォニーや大きな楽器編成の方が面白いかもしれません。




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Author:kokotonPAPA
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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