ダンツィ管楽五重奏団, ホリガー(Heinz Holliger) の Zeitgenössische Musik für Bläser を聴く

ダンツィ管楽五重奏団(Danzi-Quintett)の管楽室内現代音楽集ですね。1968年と古い録音で、時代背景から行くと5曲とも混迷も含めて前衛現代音楽絶頂期の作品という事ですね。当時はもちろんLP、今思うととても興味深い感じです。

「Zeitgenössische Musik für Bläser, 管楽器のための現代音楽」演奏は以下のメンバーになります。当時29歳の天才オーボエ奏者ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger, 1939/5/21 - )がシュトックハウゼンのツァイトマーセでイングリッシュホルンで入ります。

Danzi-Quintett
・Bassoon – Brian Pollard
・Clarinet – Piet Honingh
・Flute – Frans Vester
・Horn – Adriaan Van Woudenberg
・Oboe – Koen Van Slogteren

・English Horn – Heinz Holliger (No. 5: Zeitmasse)

Zeitgenössische Musik für Bläser / Holliger・Danzi-Quintett
(Malipiero/Fortner/Henze/Stockhausen/Becker)
DanziQuintett-Holliger_ZeitgenössischeMusikFürBläser

Musica Da Camera (1959年) for wind quintet
 イタリア人現代音楽家リッカルド・マリピエロ(Riccardo Malipiero, 1914/7/24 – 2003/11/27)は、私も好きなジャン・フランチェスコ・マリピエロ(Gian Francesco Malipiero)に作曲を師事しています。
十二音技法ですが、「室内音楽」四楽章の通りの古典構成で旋律や動機が存在して機能和声的展開です。ジャン・フランチェスコ・マリピエロに通じる心地よさがあります。技法は現代音楽の新古典主義ですね。

Five Bagatelles (1960年) for wind quintet
 ドイツの現代音楽家ヴォルフガング・フォルトナー(Wolfgang Fortner, 1907/10/12 - 1987/9/5)はダルムシュタット夏季現代音楽講習会でも講師を勤め、教え子にはH.W.ヘンツェやB.A.ツィンマーマン等のビッグネームがいますね。
「五つのバガテル」ですから5小曲作品です。所々で音の跳躍が存在して音列配置の残影はありますが点描構成ではなく動機が存在します。カノンの様な機能和声方向で前衛ではありません。新古典と言うほどではありませんが、聴きやすいです。

Quintett (1952年) for wind instruments
 ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)の初期作品で十二音技法の作品です。
三楽章楽曲「五重奏曲」です。初期のヘンツェらしく調性感を残しながらの移調・転調風の楽風です。上記二曲よりは前衛に近いとはいうものの、時代とした折衷的に聴こえたと思います。足枷から逃れた今の時代の前衛とすれば逆に違和感が少ないかもしれませんね。

No. 5: Zeitmasse (1956年) for five wind-wood instruments
 カールハインツ・シュトックハウゼン(Karlheinz Stockhausen, 1928/8/22 - 2007/12/5)については割愛w
ホリガーがコーラングレ(コール・アングレ,仏語 cor anglais またはイングリッシュホルン, english horn)で入っています。
「ツァイトマーセ」は、かの「グルッペン, Gruppen」と同じ時期・スタンスのポスト・セリエル楽曲で、基本セリエルで「群作法」です。この後「モメント形式」へ移るわけですね。
一楽章13’強の楽曲です。上記楽曲に比べると当然ながら前衛で点描的、音の跳躍が明確な音列技法の色合いが強い曲です。そしてポリフォニーパートがあり混沌が存在します。ただ、動機やユニゾンもあってシュトックハウゼンと、この時期の流れを味わえると思います。特にホリガーを意識する必要はなさそう...かな。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Quinteto de Maderasによる演奏です。


Serpentinata (1968年) for wind quintet
 ドイツの現代音楽家ギュンター・ベッカー(Günther Becker, 1924/4/1 - 2007/1/24)は上記のヴォルフガング・フォルトナーに師事し、同じくダルムシュタット夏季現代音楽講習会で講師を務めました。
この「セルペンティナータ」は短い動機の反復と変奏がベースで、基本は点描で音列配置の感が強い前衛楽風になります。クラスターやノイズの様な音色で表情変化も豊か、ポスト・セリエリズムから出てきた今の時代に通じる前衛ですね。



シュトックハウゼンが入っている事もあって、この時代の前衛現代音楽の流れを楽しめるアルバムでおすすめです。前衛の衰退に入る、その間際の時代が味わえますね。
とても残念なのは入手が難しそうで、アマゾンでは再入荷見込みなし になっています。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ZOFO の ZOFORBIT A Space Odyssey を聴く

米でグラミー賞ノミネートされたりと人気ピアノ・デュオ ZOFO のアルバムです。ZOFOは "20 Finger Orchestra" の略との事ですね。(二人4handsで指が20→ZOと、Finger Orchestra→FOでZOFO)
スイス人女性ピアニストのエヴァ・マリア ツィンマーマン(Eva-Maria Zimmermann)と男性ピアニストの中越啓介(Keisuke Nakagoshi)の二人で2009年から活動しています。

特徴的なのは、近現代音楽の連弾という所でしょう。このアルバムでも好きなG.クラムやD.ラングが取り上げられています。
アルバムのテーマは「音楽を通して惑星から銀河を旅して帰る」事だそうです。

A Space Odyssey / ZOFO

The Milky Way, Piano Sonata Op.24 for Four-Hands (1990年)
エストニアの現代音楽家 ウルマス・シサスク(Urmas Sisask, 1960/9/9 - )は、音楽性の基本はグレゴリオ聖歌とバロック音楽に培われ、作曲技法として太陽系惑星の軌道計算を使った音階を持っています。
2partの曲で、単純音階をベースにして低音鍵盤のズシーンとして響と合わされて神秘的です。印象的にも空間と星間物質の天の川銀河を思わせるかもしれません。一部特殊奏法はありますが、明確な機能和声の楽曲です。

The Planets, Op.32 (1916年)
お馴染み7パートからなるグスターヴ・ホルスト(Gustav Holst, 1874/9/21 - 1934/5/25) の"惑星"、ピアノ連弾版です。ピアノ連弾版は以前Len Vorster / Robert Chamberlainで聴いていますね。

残念ながら全体的にフラットで機械的な感がします。アゴーギクに感情移入が弱いからでしょうか、一音一音の粒立ちがモヤッとしているからでしょうか。個人的嗜好から行けば、もっと豊かな表現とシャキッとした切れ味がこの曲らしさを感じられる気がしました。それでも土星(Saturn)の情感的な美しさや天王星(Uranus)の躍動感は良いですね。

Celestial Mechanics, (Makrokosmos IV) Cosmic Dances for Amplified Piano, Four-Hands (1979年)
 I. Alpha Centauri - II. Beta Cygni
ジョージ・クラム(George Crumb, 1929/10/24 - )は音楽教授や神秘主義的・悪魔主義的な作風で有名ですが、個人的には円形楽譜がすぐに浮かびますね。代表作「マクロコスモス」はピアノ曲で、「天界の力学, Celestial Mechanics」は、その第4巻で連弾パートです。今回は第4巻黄道十二宮12曲の内の2曲「ケンタウルス座α」「はくちょう座β」になりますね。
ここでは切れ味のある連弾を見せてくれます。ピアノの持つ打楽器と鍵盤楽器の性格をよく表して、クラムの微妙な調性感での空間世界を見せてくれますね。特殊奏法も含めて静音パートも透明感のある音色です。

試しにYouTubeで観てみる?
 II. Beta Cygniになります


Gravity (2005年)
デヴィッド・ラング(David Lang, 1957/1/8 - )については、Bang On A Can他このブログではお馴染みで個人的に大ファンです。
この「重力」では音数の少ない静的アルペジオです。「重力」と言うよりも、真空の世界に散らばる光の様な澄んだ世界ですね。



近現代曲と言っても無調無拍混沌の様な前衛は取り上げられていません。難解度が高いのはクラムかもしれませんが、それでも旋律的は流れは存在しています。最初と最後に空間性の強い曲を持ってきていて、宇宙を旅して帰る感じですね。
ZOFOの演奏はクラムでは面白かったですが、他の三曲に共通する調性感のある曲では今ひとつ表現が伝わらない気がしました。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マグヌス・グランベルイ(Magnus Granberg) の How Deep is the Ocean, How High is the Sky? を聴く

スウェーデンの現代音楽家マグヌス・グランベルイ(グランバーグとも, Magnus Granberg, 1974 - )は室内楽系を得意として、即興系のパフォーマーでもありますね。若くしてサキソフォニストでエーテボリやニューヨークでも活動していたそうです。
その後、ensemble "Skogen" を結成して自らの音楽の演奏活動に入っています。Skogenは11人編成でエレクトロニクスも含んだり、日本人メンバーによる和楽器"笙(sho)"の採用もありますね。

本アルバムは以下の10人編成で、古楽器やプリペイド・ピアノ、エレクトロニクスの混成音楽となります。スコアは全てのパートを厳密に譜面化してはおらず、裁量の余地を残している様です。

 Magnus Granberg - prepared piano, composition
 Cyril Bondi - objects, percussion
 d’incise - objects, electronics
 Teresa Hackel - bass recorder
 Wolfgang Hillemann - chitarrone
 Anna Lindal - baroque violin
 Hans Jürg Meier - bass recorder
 Anna-Kaisa Meklin - viola da gamba
 Eric Ruffing - analogue synthesiser
 Christoph Schiller - spinet, objects


How Deep is the Ocean, How High is the Sky? / Magnus Granberg
Magnus-Granberg-HowDeep.jpg
(英音響系インディペンデント・レーベルanother timbreからリリースされています)

1曲1パートの約1時間で、音の密集度の低い瞑想感、ノイズ(特殊奏法、電子ノイズ)、の空間音響系の現代音楽です。旋律や動機、それが無調であれ、はほぼ存在しません。当然ミニマルの様な反復やポリフォニーも存在しません。またサウンドの強弱は薄く、テンポ変化もほぼ無いドローン風です。
それが後半近くで音密度が少し上がり、動機の様な流れがカノンの様相を呈しますね。その後ノイズを強めにして音を少し強めますが、最後は元の流れに回帰して終わります。
作曲技法に特殊性があるのかは不明ですが、プレイヤーに即興演奏の余地を残しているので偶然性の前衛でもありますね。

試しにYouTubeで聴いてみる
 お試しver.の6'です




ドローンではないのですが、その様なサウンド傾向ですから静かにかけておくのに最適です。音に浸る、そんな音楽ですね。全体の構成感もあって悪くありません。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze) の交響曲第9番を聴く

先日 第1番(1947年)と第6番(1971年)を紹介したドイツの現代音楽家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27) の後期の交響曲である第9番(1997年)を聴きましょう。
略歴等はその際の紹介にありますので、よろしければご参考に。
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze) の交響曲第1番・第6番を聴く

ヘンツェは10の交響曲を作っています。1番6番は三楽章形式でしたが、ここでは反ナチズムの独小説家アンナ・ゼーガース(Anna Seghers) の「第七の十字架, The Seventh Cross」 7人の囚人の脱獄の話, を元にドイツ学者で詩人のハンス-ウルリッヒ・トライヒェル(Hans-Ulrich Treichel) がテキスト化して7パートの合唱付の交響曲になっています。(ヘンツェの政治的背景やアンチ・ファシズムの話には、ここでは触れません。歌詞の内容についても同様です)

初演は1997年のベルリン・フェスティバル(同委嘱)で、インゴ・メッツマッハー(Ingo Metzmacher)指揮 ベルリンフィル(BPO)で行われています。いかにヘンツェが大物だったかわかりますね。

WEAGO盤なので演奏は前回紹介と同じ、マレク・ヤノフスキ(Marek Janowski)指揮、ベルリン放送交響楽団(Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin) に合唱のベルリン放送合唱団(Rundfunkchor Berlin)が入ります。

sinfonia n.9 / Hans Werner Henze
1.Die Flucht (Escape) - 2.Bei den Toten (Among the Dead) - 3.Bericht der Verfolger (The Persecutors' Report) - 4.Der Platane spricht (The Plane Tree Speaks) - 5.Der Sturz (The Fall) - 6.Nachts in Dom (Night in the Cathedral) - 7.Die Rettung (The Rescue)
 オペラやバレエを得意とするヘンツェらしさが楽しめます。タイトルロールのないヘンツェの現代音楽オペラという感じですね。(パート6では宗教音楽的でもあります)
静音と吐出するクラスター音になりますが、極端な音の跳躍の繰り返しや即興的混沌はありません。後年のヘンツェらしく明瞭な旋律は減っています。そこにvocalの旋律が乗る感じになります。オケとのポリフォニーの様相を見せます。時折見せる美しい旋律、それもヘンツェですね。
パート毎に楽風は、雰囲気ですが、変わりますが基本の構成感は同じです。いずれ標題音楽になりますから、歌詞が必須ですが英訳付です。

試しにYouTubeで聴いてみる?
 多分メインとなる、パート6になります。



vocalパートの占める存在比率が、音楽・内容ともに高く交響曲と言う感じではありませんね。表題音楽であり、自由形式の単一楽章と考え合わせると交響詩の方がぴったりでしょう。
前回紹介の交響曲二曲と合わせて聴くと、CD2枚でヘンツェの音世界が垣間見えると思います。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

パーヴォ・ヤルヴィ/ HNK交響楽団で聴く「マーラー交響曲第6番 悲劇的」NHKプレミアムシアター

パーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvi)とN響の本年2017年2月28日のベルリン・フィルハーモニーでの演奏で、NHKプレミアムシアターの録画になります。

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(リハーサルの様子:N響ホームページより)

実は、明日のエサ=ペッカ・サロネン(Esa-Pekka Salonen) w/フィルハーモニア管弦楽団の同曲を前におさらいですね。

マーラー交響曲第6番 「悲劇的」 イ短調
第一楽章
 行進曲の第一主題は緩めに入ります。第一主題の流れは抑え気味で、続くアルマの主題である第二主題も控えめ。反復後の展開部も同様で牧歌調の流れはちょっと間延び感、でも再現部でこの曲らしい激しさと歯切れよさが感じられます。
全体的にややモッタリですが、再現部が締りがあっていい感じですね。 実はここから目を覚ますんですね。

第二楽章
 標準的にスケルツォを採用です。主部は第一楽章再現部からの良い流れで、第一トリオは牧歌的のどかさにもキレがあります。回帰する主部では重さを増してきますね。第一楽章からのつながり感がいいです。

第三楽章
 三部形式の始まり第一主題は穏やかな中にもうねりの様な波を見せ、暗くスロー。第2主題も隠的です。中間部は穏やかに入り山場向けて盛り上げていきます。緩徐楽章的な位置づけですが、切れ味があります。

第四楽章
 間を十分にとった序奏から入り、提示部第一主題行進曲は華やか切れ味よく、第二主題は軽やかに入ります。序奏再現からカウベルの展開部は静かに進みながら締まった迫力で山場を迎え、そのまま突き進みます。再度序奏再現する再現部では、スローパートをうまく使いながらスピード感に変化を与えて緊張感のある良い流れを作りました。もちろんラストのトゥッティは見事に決まります。
ちなみにハンマーは標準的な二発でした。



やっぱり管楽器が弱く全体もっさりかな…という入りでしたが、第一楽章後半の再現部からは目を覚まして切れ味ある迫力の演奏でした。持っているN響のイメージと違いましたね。
父ネーメの突撃ハイスピードのマーラー6番とは違うパーヴォ・ヤルヴィのタクト。このマーラー6番ではコントラストでしょうか、アゴーギクと出し入れを効果的に使った締りと緊張感のある演奏になりました。ベルリンのオーディエンスの反応も悪くはありませんでしたね。


さて、明日のサロネン/ フィルハーモニア管はどんなマーラー6番を聴かせてくれるでしょうか、揺さぶりの強いイメージのあるサロネンですから楽しみです。


テーマ : クラシック
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シェーンベルクの 浄夜 (Verklarte Nacht) を 個性派で聴き比べ:アルデッティ、ストコフスキー、マデルナ

言わずと知れたアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)の初期、後期ロマン派時代の名曲「浄夜」(浄められた夜, Verklärte Nacht Op.4) です。

原作は独詩人リヒャルト・デーメル(Richard Dehmel)の同名の「精神的・形而上学的なエロスによる救済願望」を表す詩で、単一楽章5パートからなっています。
半音階技法や不規則な楽節(小節)が用いられている様ですが情感的で美しい後期ロマン派作品に違いなく、その後の無調〜十二音技法に至る現代前衛音楽を切り開く気配は見えませんね。

コンサートでもよく演奏されますし、今までも超有名盤のカラヤンとラサール そして好きなツェートマイアー(Thomas Zehetmair)を紹介しています。
他にも所有CDはありますが、ここは三人の個性派を揃えて聴き比べて見ましょう。



アルデッティ四重奏団
前衛現代音楽四重奏団の雄 アーヴィン・アルデッティ(Irvine Arditti)率いる Arditti Quartetによる演奏です。弦楽六重奏曲なので+2名(ヴィオラ、チェロ)を入れています。
 美しさよりも濃厚で刺激的なエロスを感じます。そういう意味ではこの後の作品「ペレアスとメリザンド」に似た気配を感じさせてくれる演奏です。(特にパート3までは) 各弦楽器が個別の表情を強く現していて、そこにディナーミクとアゴーギク振られています。感情の起伏が強く ストーリー性を感じる演奏ですね。
美しいパート4でも、オーケストラver.(例えばカラヤンBPO)の様な甘美さは全くありません。硬派の演奏です。


ストコフスキー
w/ レオポルド・ストコフスキー交響楽団
米で活躍した個性派指揮者ストコフスキーによるオケ編成、1957年演奏です。実は弦楽合奏版ではなく、弦楽六重奏曲をストコフスキーが編曲したver.になります。(録音当時はヒューストン響の指揮者) ストコフスキーは数多くの米国初演をこなし、また独自の編曲版を作っていますね。
このCDがamazonで見つからないのが不思議ですが、古い事と新星堂企画盤だからでしょうか。
VerklarteNacht-LeopoldStokowski.jpg
 全体の流れに不自然さは全くなく、スットコストコフスキー節は感じられません。細かなヴィブラート等のほどはよくわかりませんが、クセのある響きはありませんね。パート4からの美しさもナチュラルで、例えばマーラー5のアダージェットの様な甘美さではありません。素晴らしいのはパート5、入りからラストに向けての持って行き方ですね。澄んだ美しさにグッときます
編曲も含めてあまりにスマートな展開が意外ですが、"どうだ参ったか!!?" の裏をかかれたという意味では流石のストコフスキーですw 古い録音ですが音は悪くありません。(録音に関してストコフスキーは先見性がありましたね)


マデルナ
w/ Sinfonieorchester des Südwestfunks Baden-Baden
個性派指揮者といえば、このブログではお馴染み ブルーノ・マデルナ(Bruno Maderna, 1920/4/21 - 1973/11/13)でしょう。現代音楽家としても活躍は素晴らしく、kokotonPAPAご贔屓の音楽家です。指揮はシェルヘンに師事しているので強烈です。
レア盤なので入手は難しいかも知れませんね。「ペレアスとメリザンド」他もカップリングされたシェーンベルク曲2CDですからマデルナ・ファンなら必携?! ただし1960年mono録音で、音はARKADIAですから劣悪w
VerklarteNacht-BrunoMaderna-ARKADIA.jpg
 強烈に濃い味です。例によってアゴーギクとディナーミクは強烈。ただ音の強弱だけでなく、そこに微妙なアゴーギクを入れ込み感情の爆発を見せてくれます。静的パートは緩やかに、テンポアップして強音パートは揺さぶり強く、息つく暇を与えません。
それでもパート4〜5で見せる美しさは、この曲の持つ後期ロマン派譜面のなせる技でしょう。激情と静的美しさのバランス、その強烈なコントラストがマデルナですね



個性派の演奏は面白いですね。感情が剥き出しの様なアルデッティ、予想を裏切る展開の独自編曲ストコフスキー、極端な揺さぶりのマデルナ。
刺激的なアルデッティも大好きですが、個人的には何と言ってもマデルナの醸し出す強烈な激情さですね。



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カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho) の Trios を聴く

前回に続きフィンランドの女性現代音楽家 カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho, 1952/10/14 - )、好きな現代音楽家の一人です。
印象は物静かな大女(失礼!!)、サーリアホの室内楽集です。前回紹介の「Let The Wind Speak」はフルートをフィーチャーしたソロ、デュオ曲集でしたが、今回はタイトル通り三重奏曲のアルバムになりますね。

演奏は以下です。
 ・Alto Flute – Mikael Helasvuo
 ・Cello – Anssi Karttunen
 ・Percussion – Florent Jodelet
 ・Piano – Tuija Hakkila
 ・Soprano Vocals – Pia Freund
 ・Viola – Steven Dann
 ・Violin – Ernst Kovacic

Trios / Kaija Saariaho

Mirage, for soprano, cello & piano (2007年 Chamber version)
女性自身を歌うTextはメキシコ人シャーマンの祈祷師、Maria Sabinaのトランス状態の言葉を元にしているそうです。
この年代のサーリアホらしい楽風で、チェロとピアノは主従の関係から対位的位置づけになりポリフォニカルです。トリル&トレモロの反復は、その旋律と響で空間音響系音楽に感じられます。激情性も絡み、面白いですね。もちろん一時期の調性感はなく無調です。
オーケストラ版ではピアノがオケに変わります。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  ちなみにオーケストラ版はこちら



Cloud Trio, for violin, viola & cello (2009年)
1. Calmo, meditato, 2. Sempre dolce, ma energico, sempre a tempo, 3. Sempre energico, 4. Tranquillo ma sempre molto espressivo
弦楽三重奏曲でノイズ系になります。グリッサンド、トリル、反復が基本で "ギロギロギロ..." 系です。三つの楽器は対位的であったり主従(旋律vs伴奏)であったり、曲風は幻想的であったり早いペースであったりと様々です。

Cendres, for alto flute, cello & piano (1998年)
唯一の20世紀作品で得意のフルートが入ります。基本はノイズ系でポリフォニー、静的な流れの混沌無調の中に旋律や刺激が挟まれます。サーリアホらしい作品と言う感じがしますね。好きなパターンです

 ★試しにYouTubeで観てみる?


Je sens un deuxième coeur, for viola, cello & piano (2003年)
1. Je dévoile ma peau, 2. Ouvre-moi, vite!, 3. Dans le rêve, elle l'attendait, 4. Il faut que j'entre, 5. Je sens un deuxième coeur qui bat tout près du mien
ノイズ系ピアノ三重奏曲です。基本的な構成は一つ前の「Cendres」似ていてバリエーションは広く表情変化が楽しめますね。ただ基本に流れるのは静的ではなく、part.2や4の様な徹底した反復クラスターの強烈さを見せてくれるのが特徴的です。

Serenatas, for percussion, cello & piano (2008年)
1.Delicato, 2.Agitato, 3.Dolce, 4.Languido, 5.Misterioso
パーカッションが入る事で色彩鮮やかになりますね。反復強音パートもあり、前曲の進化系的な音楽です。鍵盤打楽器を駆使していますが、現代音楽にマッチしていると思います。



電子音楽から調性感へ、そしてサーリアホが無調に回帰?した混沌の中に強音パートや旋律が存在する今の音楽が楽しめますね。
欧州エクスペリメンタリズムを楽しむなら、この辺から聴き始めるのも"あり"かと思いますね。



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カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho) の Let The Wind Speak を聴く

このブログでもお馴染みの女性現代音楽家、カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho, 1952/10/14 - )は、フィンランドらしからぬ欧エクスペリメンタリズム系ですね。(過去記事で紹介済みです)

2015年来日時のカリ・クリーク(fl)によるフルート協奏曲は印象深かったですね。フルート現代曲は彼女の得意とする分野であり、このアルバムも1982年コラボから付合いの長いカミラ・ホイテンガ(Camilla Hoitenga, fl)をフィーチャーしたフルート曲集になります。

他演奏者は楽曲により以下のメンバーです。
 アンッシ・カルットゥネン,Anssi Karttunen (cello) - 2, 8, 9, 11
 ダニエル・ベルチャー,Daniel Belcher (bariton) - 4, 5, 6
 エロイーズ・ドトリー,Héloïse Dautry (harp) - 1
 ダ・カメラ・オブ・ヒューストン,Da Camera of Houston - 4, 5, 6

Let The Wind Speak / Kaija Saariaho

01. Tocar (2010年)
ハープとのデュオですね。独特な和声、日本的?、を感じる曲で旋律が存在します。特殊奏法は感じませんが、フルート:主、ハープ:従 の関係が成立ち、フルートは和笛の様に流れてハープはオブリガート的です。

02. Mirrors I (1997年)
パートI, II, III が分割されて収録されているチェロとのデュオです。ここでも近年につながるサーリアホらしさが明確ですね。旋律の存在(フルート)と伴奏(チェロ)、そのせめぎ合いです。ややノイズ風でチェロはグリッサンドを多用します。

03. Couleurs du vent (1998年)
フルートのソロです。旋律は01ほど民族和声ではありませんが、その方向性です。ここでも実は伴奏があり、ホイテンガの吹きながらの呟きが入ります。テクニカルでスピード感と鋭利性が感じられますね。

04-06. Sombre: I - Canto CXVIII, Sombre: II - Canto CXX, Sombre: III - Fragment (2012年)
バリトンとアンサンブル(ダブルベース, ハープ, パーカッション)、そしてバス・フルートの曲で世界初録音。Da Camera Society of Houston 委嘱作品になります。Textは米詩人エズラ・パウンド(Ezra Pound)のCantosからになり、このアルバムでは最近年曲です。
音の響を生かした音響系で今のサーリアホらしい楽曲です。旋律と主従の関係から、空間音響系に推移しています。ドローン音に支配される様な単純な響ではなく、旋律と各楽器の音色や響の組合せで成立させていますね。とても興味深いサウンドです。
奏法や歌詞はこちらから確認する事ができます。(チェスター出版社のサンプルpdfです)

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2013年2月24日の世界初演の様子です。演奏はもちろんDa Camera of Houstonですね。


07. Dolce tormento (2004年)
フルートのソロでここでも呟きが入ります。旋律はより機能調性感が強まります。

08. Mirrors III (1997年)
part II の前に III がきます。基本スタンスは02の I と同じです。

09. Oi Kuu (1990年)
チェロとのデュオです。"Mirrors"との相違は電子処理がある事でしょう。その分音響系音楽であり、面白さは伝わりますね。

10. Laconisme de l'aile (1982年)
フルートのソロで、ここでも呟き語りありです。なにやら特殊奏法が入っていますが、旋律は機能調性的で透明感のある先鋭的幻想美です。

11. Mirrors II (1997年)
Mirrors の II です。同じ曲想になりますね。デュオでライヴ受けしそうな楽曲です。



近年に至るこの年代間のサーリアホの楽風変化、エレクトロニクス - 旋律と主従 - 空閑音響、が味わえますね。そして彼女が得意とするフルートで、メインは2012年の "Sombre I, II, III" でしょう。


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エリオット・シャープ(Elliott Sharp) の Tranzience を聴く

米現代音楽家エリオット・シャープ(Elliott Sharp, 1951/3/1 - )は前衛系で、特に電子音楽に関しては米国でも早くから取り入れていました。Terraplane, Carbon といったアンサンブルを率い、またギターを中心として自らのパフォーマンスも見せてくれますね。
現代音楽の作曲はモートン・フェルドマンらに師事しています。また作品はアンサンブル・モデルンやクロノスQ.にも取り上げられていますね。楽風はノイズでありノー・ウェーブ系(パンクロック・サブカルチャー)です。

本アルバムは2016年発売の室内楽集になります。エリオット・シャープ曰く、数学や科学は宇宙の生データを解析して秩序付けるものであり、自分の創作はそんな中に見る不合理や直感と合理性があるとの事です。

Tranzience / Elliott Sharp

Tranzience (2013年)
[JACK Quartet] Chris Otto, violin; Ari Streisfeld, violin; John Pickford Richards, viola; Kevin McFarland, cello
弦楽器のトリル、トレモロを徹底的に使ったノイズ系の前衛音楽です。もちろん長音もからみながら、アゴーギクを振っています。それに前衛ミニマルとでもいう様な反復が乗ってきます。28分ですが、ポリフォニーも組み込まれたりと表情変化はとても豊かです。

Approaching The Arches of Corti (1997年)
[New Thread Quartet] Geoffrey Landman, Kristen McKeon, Erin Rogers, Zach Herchen, soprano saxophones
ソプラノ・サックス四重奏曲です。ここでは極端な特殊奏法もなく、ミニマル的な反復を長音との組合せを生かしています。反復の中に楽器間の微妙なズレ(ライヒのフェイジングに様な?)も使っていますし、長音では共鳴音もある様です。ミニマル・ポリフォニーなパートもなかなかです。

Homage Leroy Jenkins (2008年)
Joshua Rubin, clarinet; Rachel Golub, violin; Jenny Lin, piano
クラリネット- ヴァイオリン - ピアノ三重奏曲です。旋律が多く感じられる音楽です。もちろん無調ですが、反復もなく旋律がからむパートは調性感さえあります。でも、その後は反復ノイズ系音楽&トリル・トレモロの波がやってきます。後半の民族音楽の様な音色は米現代音楽らしさを感じますね。

Venus & Jupiter (2012年)
[Either/Or] Stephanie Griffin, viola; Margaret Lancaster, alto flute; Chris McIntyre, trombone; Joshua Rubin, bass clarinet; David Shively, marimba; Alex Waterman, cello; Richard Carrick, piano, conductor; w/Elliott Sharp, electroacoustic guitar
こういう楽器編成が個人的には好きな米現代音楽ですね。曲風は同じですが、楽器の音色で表情の広がりがありますね。ポリフォニーでは楽器編成が広がった分の混沌が現れてきます。
 ★試しにYouTubeで観てみる?
 世界初演のステージです。もちろんEither/Orと本人のE.ギター&指揮です。




様々な楽器編成でエリオット・シャープの反復&トリル・トレモロのノイズ音楽が楽しめますね。その中に旋律が存在するのが米現代音楽と言う感じです。
即興的混沌や微分音の様な極端な不安定感は少なく聴きやすいノイズ音楽?!ですね。
ノイズ系現代音楽を聴いてみるにはおすすめですね。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ジョン・アダムズ(John Adams)のシェヘラザード2を聴く:都響公演(本邦初演)を前に

都響のコマーシャルが飛びまくるジョン・アダムズ(John Coolidge Adams, 1947/2/15 - )の昨年作品「シェヘラザード.2)」を聴いておきましょう。もちろん都響定期公演(A.ギルバート指揮)のチケットを持っている4月18日公演の予習ですね。
とはいえ、定期公演のチケットがなければ楽風から見て行く事は無いでしょう。また、個人的には2005年度武満徹作曲賞とコンポージアム2005を個人的な商業的理由からすっぽかした悪印象から逃れられませんが...(汗)

この作品は日本初演(Japan Premiere)ですね。騒がれていますが、ポイントは以下の様です。
1.今回指揮のアラン・ギルバート指揮による初演で2回の日本公演が45・46回目の話題曲である事 2.ヴァイオリンが主役のコンチェルト風(作品を献呈されたリーラ・ジョセフォウィッツが全ての演奏会でvn独奏) 3.ツィンバロンが使われている事(本ブログでは紹介済み)

シェヘラザードと言えばリムスキー=コルサコフですが、その関係や今の時代のシェヘラザードを描いた事は本人の語りでどうぞ。

Scheherazade.2 / John Adams

第1楽章:若く聡明な女性の物語 - 狂信者たちに追われて / I. Tale of the Wise Young Woman - Pursuit by the True Believers
 いきなりのツィンバロンとvnの音色で始まります。第一印象は現代音楽ではなく、映画音楽風の標題音楽という事ですね。各楽器が役割を持っていて、機能和声での旋律がアラビア風サウンドを奏でます。ツィンバロンの音色も一役買っています。
主役のvnは雄弁で語りの様な旋律です。

第2楽章:はるかなる欲望(愛の場面) / II. A Long Desire (love scene)
 楽章は変わりますが、構成感は変わりません。構成がソナタ形式を採用しているのかも一回目では主題やトリオ(曲調変化はわかりますが)は不明です。

第3楽章:シェヘラザードと髭を蓄えた男たち / III. Scheherazade and the Men with Beards
 ここでも同じです。緩徐楽章を入れてもよかったのではないかと思ってしまいますね。

第4楽章:脱出、飛翔、聖域サンクチュアリ / IV. Escape, Flight, Sanctuary
 最終楽章もアクの強いアゴーギクとディナーミクは変わりません。四楽章通して常時劇的シーンの様な流れは少々疲れる感が拭い切れません。(断片的に緩徐シーンはありますが...)
最後は静的に終了します。
ちなみに、vnのLeila Josefowiczは刺激的な演奏を見せてくれました。そこはコンサートが楽しみですね。



ヴァイオリンがシェヘラザードとなって語る千夜一夜物語音楽「劇的交響曲」ですね。そういう意味ではリムスキー=コルサコフの様な音楽性よりもストーリー性が濃厚です。同じストーリー性で言えばR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」の様な後期ロマン派音楽作品というよりも、より出し入れの強い映画音楽風でsolo-vnの出番も多いです。

今の時代のクラシック音楽 ヴァイオリン協奏曲風でしょうか。というよりも、コンサート受けを考えて作られている感じもしますね。オケはドンシャン風、vnもキレキレですからw



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1.このblogで言う現代音楽
2.マーラー交響曲第5番 150CD
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