オスモ・ヴァンスカ(Osmo Vanska) の マーラー交響曲第六番 を聴く


オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä, 1953/2/28 - )
フィンランドの指揮者ヴァンスカというとラハティ響を育て上げた事が浮かびますね。
そして近年では昨年発売のマーラー第五番2015年来日のシベリウス「フィンランディア」(w/読響)を思い出します。(両インプレあり)
現在音楽監督を務めるミネソタ管弦楽団(Minnesota Orchestra)とのマーラー5番はややクセ者的な印象もあったのですが、チクルス第二弾の6番はどうでしょう。

『交響曲 第6番 30CD 聴き比べ』には次回追記予定です。



第一楽章
スローで抑えめの第一主題、モットーは美しくアルマの主題ではそれを広げる様に華やかですがスローのアゴーギクが気になりますね。反復後の展開部も力強さはあっても冷静さが常に背後にいます。再現部では少し躍動感が感じられるかもしれません。
第二楽章
アンダンテを持ってきました。主要主題・副主題ともにごく普通の優美さ、中間部も流れは同じですが明るさが現れますね。美しい緩徐楽章ですが個性は薄いです。
第三楽章
スケルツォですね。主要主題は客観的で迫力や興奮を否定しているかの様です。クールとは違いますね。トリオは優美なスケルツォですが、それ以上でもありません。
第四楽章
序奏は緊張感の漂う素晴らしい流れかと思いきやスローモッソリに落ち込みがっかり。長い序奏から提示部の第一主題と経過句は勇壮ですがアゴーギクを殺して抑え込み、第二主題も同様です。展開部は序奏と同じく揺さぶりの効いた前半パートとフラット単調さの行進曲以降の組合せです。再現部も同じですが、それでもこの楽章が一番良いかもしれません。

よそよそしく掴みどろこの薄いマーラー6番です。この曲は興奮かクールさかですが、はっきりしないのはどうも…好みの問題になるかもしれませんね。
シベリウス・アカデミー同期生サロネンやサラステのマーラーの様にはいかない様です。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ブラガ・サントス(Braga Santos) の 交響曲第3番, 第6番 を聴く


ブラガ・サントス (Joly Braga Santos, 1924/5/14 - 1988/7/18)
ポルトガルの現代音楽家サントスは、後期ロマン派から民族音楽や調性感の低い音楽に変異していますね。もちろん前衛ではありません。


Symphonies No.3 and 6
6曲の交響曲を書いていて、後期ロマン派と調性を逃れるまでの変化の2曲が楽しめますね。
演奏はアルヴァロ・カッスート(Alvaro Cassuto)指揮、ポルトガル交響楽団(Portuguese SO)です。



■ 交響曲第3番 (1949年)
第三楽章にスケルツォを配した四楽章形式です。後期ロマン派ですが、ちょっとブリテンを思わせる様な風景感のある流れで英国音楽的な臭いがしますね。絶対音楽というよりも標題音楽風です。20世紀中盤としては凡庸ですが米国あたりで受けそうな展開の明瞭さです。ラストはストラヴィンスキーのバレエ曲の大団円的w

■ 交響曲第6番 (1972年)
六楽章で最後の二つの楽章にはソプラノのアナ・エステル・ネヴェスとカルロス国立劇場合唱団が入ります。歌詞は16世紀のポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイス(Luis de Camoes)の船乗りの男と女のお話です。
気配だけは現代風ですが調性範囲で多少の不協和音でしょう。パルス的な強音や旋律・動機の不明瞭化でそれらしく聴こえます。それ以上ではない様な。合唱とソプラノのラスト二楽章は多少色合いが変化しますね。


平和でやや退屈な第三番、現代風の衣をまとった第六番、いずれも残念ながら興味の対象外ですね。
似ているのは両曲ともに楽章間の変化に乏しいことでしょう。




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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オヌーテ・ナルブタイテ (Onute Narbutaite) の「No Yesterday, No Tomorrow」を聴く


オヌーテ・ナルブタイテ (Onutė Narbutaitė, 1956/6/12 - )
リトアニアの女性現代音楽家ナルブタイテはリトアニア国立音楽院(Lithuanian State Conservatory)で習い、また教鞭をとっています。


No Yesterday, No Tomorrow
裏ジャケットに"鉄のカーテン"云々と書いてありますが、ナルブタイテの活躍はそれ以降の方が長くなり、作風も大編成化していますね。今回もそんな作品集です。
指揮はクリストファー・リンドン=ギー(Christopher Lyndon-Gee)、リトアニア国立交響楽団(Lithuanian National Symphony Orchestra)による演奏です。



La barca (2005年)
いきなりのクラスターから緊張感のある静の流れ。管楽器によるテンションの張った静の'うねり'は不安と煌めきが同居します。楽風は調性感が強い動機の組合せで、前衛ではありませんね。印象的にはフィルム・ミュージック的な現代のクラシック系かと。

kein gestern, kein morgen (2012/2015年):世界初録音
リルケの詩を元にしたメゾソプラノとテノールの歌が入ります。詩人的な二人の愛の歌で二人の世界には「There is no yesterday, no tomorrow. (英訳)」だそうです。
楽風は似て表情変化や展開感は薄く煌めきと緊張感の静的な暗さがベースですが、調性感は薄くなります。歌い方も調性は薄く幻想的、前衛歌曲的で面白いですね。

krantas upe simfonija (2007年):世界初録音
同じ展開、共鳴する様な音色を静音で流します。そこに一曲目の様な管楽器の動機が重なりますが、調性を強く感じますね。トランス状態に成れれば面白そうですが、やっぱり何か不安要素映像のバック風…

静的で暗く管楽器の陰鬱な煌めきが延々と続く面白さがあります。ただ調性感が強く映画音楽的な印象です。
歌のあるタイトル曲は良いですね。




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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 65CD聴き比べ! [#5 / CD:51-65]

第5回目は好きなノット盤や発売されたばかりのハーディング盤からベテラン勢、15CDのインプレ追加です。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.9の聴き比べです (現在#5回 65CDまで)
 #5:15CD 本投稿
 #4:10CD
 #3:10CD
 #2:20CD
 #1:10CD


ジョナサン・ノット, Jonathan Nott
★☆
Bamberger Symphoniker
[Tudor] 2008-9/15-19

(ノットのマーラーは全集で買って後悔しませんね)

現東京交響楽団の音楽監督を務めるノットが16年間首席指揮者だったバンベルク響とのチクルスからですね。
第一楽章
スロー緩やかな第一主題から第二主題も流れはスロー、そこから金管の下降を経て大きく反復と第三主題を奏します。展開部もスローな暗さと激しい山場の対比が葛藤を描くようです。山場の後は必ず落ち込む鬱も生きています。
第一楽章に欲しい"暗さ"がスローのテンポの中息づいて素晴らしいですね。
第二楽章
主要主題と第一トリオはテンポよく穏やかな優美さで、第二トリオも流れよくスケルツォを奏でます。優美さが引き立ち一楽章からの対比がきれいですね。
第三楽章
主要主題と副主題は速めの流れで、第二楽章ラストの狂奏からの繋がりがあります。中間部のターン音型で徐々に流れを穏やかに落とします。これは最終楽章の中心をなすターンへの流れにピッタリで、前後楽章との連携が見事ですね。ラスト山場も見事な狂乱です。
第四楽章
スローで哀しみの強いアダージョの主題。第一エピソードも沈んだ流れから弦楽緩徐の哀しみ溢れる美しさが大きく広がります。その後もスローなターン音型の浮遊感を最大限生かしながら透明な哀しみと美しさをラストの消え入る動機まで繋げます。この楽章に欲しい"死"を前にした澄んだ世界が感じられます。素晴らしいですね。
・・・・・
この曲の真髄とも言える第一楽章の"暗"と第四楽章の"哀"の美しさが伝わるマーラー9です。
スローで情感深い第一四楽章、明瞭な第二三楽章、その楽章構成が見事ですね。個人的ベスト5の一枚です!




ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Swedish Radio Symphony Orchestra
[harmonia mundi] 2016-9/8-10
ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。
第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。
・・・・・
重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。コンサートでは相性の良くないハーディングですが、期待を裏切る素晴らしさでしたw おすすめの一枚ですね。


本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、翌2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。
Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)
流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。




ミヒャエル・ギーレン, Michael Gielen (2録音)
個人的には現代音楽の擁護者といった指揮スタイルも含めて興味の尽きないギーレンですが、マーラー9番は首席指揮者を務めた現南西ドイツ放送交響楽団(SWR Sinfonieorchester)との録音が2枚正規盤として残されています。


(#1)

SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden
[Intercord] 1990-Apr. Aug.
バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団の首席指揮者時代のマーラー9ですね。
第一楽章
第一主題から第三主題までをディナーミク強く情感を高めた提示部。展開部も静のスローを鬱と哀に、強音パートをスピード感と切れ味にコントラストを付けて素晴らしいです。処々で細かな癖があるのもギーレンらしい?!
第二楽章
主部主題はなんともスロー、第一トリオは程よいテンポに戻して心地よく鋭いレントラーです。そこから穏やかに第二トリオへ入ります。スローの主題が特徴的ですね。
第三楽章
主要主題と副主題は刺激的にやや刺々しく絡んで流れ、中間部でテンポを大きく落としてコントラストをつけます。
第四楽章
主要主題はナチュラルに弦楽の美しさを讃えます。第一エピソードは細い静音から情感を込めつつも速めの流れで展開しラストでスローに持ってきます。第二エピソードも速めで入りスロー静音に落としてコーダへ向かううまさです。
・・・・・
表現的揺さぶりとメリハリのマーラー9です。静音パートは大きくスローにハイテンポを交えて、そこに一癖と好みは分かれるかもしれません。でも好きな演奏です。




(#2)
SWF-Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[Hanssler Classics] 2003-6/27-7/4
1996年にバーデン=バーデンからフライブルク・コンツェルトハウスへ本拠地を移しバーデン=バーデン・フライブルク南西ドイツ放送交響楽団に名称変更。ギーレンは1996年まで首席指揮者を努めていましたね。(その後2016年にシュトゥットガルト放送交響楽団と統合されて現在に至っています)
第一楽章
第一第二主題を緩やか厚めに、第三主題で大きく波を立てます。展開部はコントラストを強く付けて重厚です。クセはなくなり堂々の風貌です。
第二楽章
主部主題はやっぱりスロー、第一トリオもややスロー気味ですがレントラー感はあります。第二トリオでスローに落とし後半をアップテンポで切れ味を見せますが全体としてスロー感が強くなっています。
第三楽章
主要主題と副主題はややスローになり絡みも刺激は減りました。テンポアップ後の中間部で再びスローにします。基本はスローですね。
第四楽章
主要主題は微妙なアゴーギクを振った美しさになっています。第一エピソードは細い静音から速めに流れて情感を戻すのは同じです。第二エピソードも流れは変わりません。ディナーミクを抑えた事で厚みを感じますね。
・・・・・
クセはあるものの堂々としたマーラー9です。極端な静音ディナーミクを減らし重厚さが出ましたね。とはいえスロー中心のアゴーギクは個性的です。
ならば昔のクセ者の流れに心惹かれるものを感じますが。(汗)




小澤征爾, Seiji Ozawa (2録音)

(#1)
Boston SO
[Philips] 1989-10
言わずと知れたボストン響の音楽監督時代のマーラー9番です。
第一楽章
第一主題と第二主題を抑えて冷静な流れから展開部へ入ります。展開部もクールで静的パートと激情パートのコントラストがコントロールされています。再現部も"計算尽く"を感じます。
第二楽章
主要主題はややスロー穏やかに絡んで第一トリオでシャキッと気配を変え心地よいスケルツォになります。第二トリオは緩やか穏やかです。後半の山場も暴れる事なく全体として穏やかさのスケルツォですね。
第三楽章
主題と副主題は心地よい勇壮感と軽快感で絡んで進み、中間部では穏やか伸びやかで山場へ繋ぎます。ラストもマーラーの指示通りに荒々しく、見晴らしの良い楽章です。
第四楽章
序奏・主題の美しい広がりは第三楽章からの対比が心地よいですね。第一エピソードは暗い静音パートと弦楽緩徐パートの広がりが美しです。第二エピソードもうまくアゴーギク・ディナーミクを振って哀愁ある美しさが際立ちます。この流れからのラストの静的美しさはマッチしています。
・・・・・
全て小澤さんコントロール下、ライヴとしてはマイルドでまとまりすぎのマーラー9です。
ただ、第三楽章から最終楽章は素晴らしく全体この流れだったら絶対☆ですね。




(#2)
サイトウキネン・オーケストラ
[Sony] 2001-1/2-4
BSOとの12年後、これまた言わずもがなの創設者であり総監督を務めるサイトウキネンを振った演奏です。
第一楽章
タメの効いた第一主題と揺らぎを持った第二主題、金管の半音下降からの反復と第三主題の緊張感が素晴らしいですね。展開部・再現部共に緊張感とオケの漲るパワーを感じられます。ただこの楽章としては厳つい気配が強すぎの気がします。
第二楽章
主要主題は穏やかな流れ、第一トリオでピシッとするのはBSOと同じですね。その後も良く似ていますが演奏の切れ味はこちらが上。
第三楽章
主題と副主題は切れ味よく絡み、伸びやかな中間部以降ですが前半がややフラットに感じます。ラストのパワーは見事。
第四楽章
序奏・第一主題は重厚感、第一エピソードも重さが際立ちます。第二エピソード緩徐パートもそっけない感じです。ラストに向けても線の細さより朗々と鳴る気配です。
・・・・・
この曲に感じる哀しみや美しさが弱いマーラー9ですね。通して重厚、緩徐パートも厚い音色だからかもしれません。
演奏が素晴らしいのでコンサートで聴いたら賞賛してしまうかもしれませんね。(汗)




クルト・ザンデルリンク, Kurt Sanderling (4録音)
日本でもお馴染みの父ザンデルリング。マーラーの9番は4枚も正規録音を残しています。(もう一枚フィルハーモニア管との非正規盤がありますが…)


(#1)
Berlin SO
[Deutsche Schallplatten] 1979-2/28,3/2,8
鍛え上げた手兵 ベルリン交響楽団(東独)の芸術監督/首席指揮者を1977年に退いた2年後の録音ですね。
第一楽章
スローな序奏と第一主題、第二主題から反復で大きな波を奏でます。第三主題の激しさから暗転して展開部に入りますが少しモヤモヤした感じですね、山場はパワフルですが。再現部は落ち着いた流れで悪くありません。
第二楽章
主要主題と第一トリオは硬派なレントラーとスケルツォ。第二トリオはやや緩めて流れる様なスケルツォです。後半は情感を上げますが真面目過ぎかも。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みは教科書的で変化に乏しく、中間部やラストでも変化量が不足気味です。
第四楽章
序奏・第一主題は厚めの音で入ります。第一エピソードは細く入って厚くなりますが没個性的です。第二エピソードも生真面目で、流れにアゴーギク・ディナーミクの個性が感じられません。
・・・・・
破綻の無い、落ち着いて計算された真面目なマーラー9です。何か一味足りません。




(#2)
BBC Philharmonic
[BBC Legends] 1982-7
ベルリン響の3年後、BBCフィルハーモニックを振った演奏です。
第一楽章
スローな出だしは変わりません。第三主題から展開部も同様ですが、自然体の流れと程良いコントラストがありますね。
第二楽章
ここでも主要主題から第二トリオまで穏やかさのレントラーとスケルツォになっています。全体としてやや緩さが強くダレますが。
第三楽章
主要主題と副主題の絡みはフラット、中間部も変化が薄いです。ラストはもっと強烈さが欲しいです。
第四楽章
序奏・第一主題は緩徐色を強めていますね。第一エピソードも第二エピソードもその流れで緩徐的です。ただ単調で感情移入は薄くフラットさが拭えません。
・・・・・
特徴が薄く緩いマーラー9です。特に第二第三楽章にマーラーの指示する「粗野」や「反抗的」が欠ける感じですね。




(#3)
NDR Symphonieorchester Hamburg
[Profil] 1987-11/7
BBC-Pとの5年後、北ドイツ放送交響楽団(現:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)との演奏です。非正規盤から昨年正規盤となって話題になりましたね。
第一楽章
序奏から第一主題は適度にスローですが第二主題と反復も含めて緊張感があります。第三主題も緊迫感がいいですね。展開部、再現部共に適度な揺さぶりと荒れが締まりのある演奏にしています。
第二楽章
主要主題はカッチリ、そこから流れを作り第一トリオは表情変化させて明確なリズムを刻みます。スローダウンの第二トリオも全体の流れを生き生きさせていますね。後半は約束通りに荒れ気味に。
第三楽章
主要主部と副主題は落ち着いた絡みから軽妙さを見せ、中間部で牧歌調にチェンジします。ラストはコントロールが効き過ぎかも。
第四楽章
第一主題は大きく優美さを見せます。そして第一エピソードも重心の低い豊かな表情を見せてくれます。第二エピソードも哀愁漂う表情を見せながら山場を作り、『亡き子をしのぶ歌』引用の浮遊感から消え入ります。
・・・・・
適度な揺さぶりと興奮、安心して聴ける王道的マーラー9です。初めて聴くのにもオススメですね。
指揮者よりもドイツオケならではのパターンの気がします。この演奏だけ色合いが違うのが明白ですから。(同じ事はマーラー5番でも感じてインプレしています)




(#4)
Philharmonia O
[ERATO] 1992-1/24,25
NDR響の5年後、名誉指揮者を務めたフィルハーモニア管弦楽団を振った演奏です。
第一楽章
出だしは再びスローに戻って、第二主題への流れは変化が薄く反復もモッソリ。第三主題も見晴らしがよくありません。展開部・再現部もスローモヤモヤですね。
第二楽章
主要主題のtbが奇妙なヴィブラートですが、流れはレントラーが生きています。第一トリオはスロー、例によって落ち着かない変化です。第二トリオもスローの揺さぶりでモヤモヤ感が拭えません。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルですが変化に乏しく退屈、でも中間部では表情を一転させます。ラストは約束通りに少し乱舞して見せます。
第四楽章
入りは美しい緩徐ですね。第一エピソードは抑揚が抑えられてフラット、第二エピソードもその延長、通して長く感じてしまいます。
・・・・・
82年BBC-Pの延長線上にある、もどかしさ満点のマーラー9番です。モッソリ・モヤモヤ、体調不良かもw
結局ザンデルリンクはNDR主導の演奏だけという事に思えてしまいます。




キリル・コンドラシン, Kirill Kondrashin (2録音)

(#1)
Moscow Philharmonic Orchestra
[Meloydia] 1964-5
コンドラシンが15年間首席指揮者を務めた手兵モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団を振った演奏です。
第一楽章
美しく軽い第一主題、第二主題も重さは控え目に、反復でも重厚さより明るさを感じます。展開部も軽めながらスピード感と切れ味の山場です。再現部も速め軽量で胃もたれしない流れですね。
第二楽章
主要主題は落ち着きから優美に、第一トリオはややもったいぶっていますが良いスケルツォ感です。第二トリオも大きく変化はさせずに穏やかですね。
第三楽章
主要主題・副主題共に速め軽やかで中間部も速く変化量は少なめです。12'を切って流れは速いですね。
第四楽章
序奏・主題は透明感ある美しさで、第一エピソードは哀愁を感じる流れからhrが主題を美しく奏でていい緩徐パートです。第二エピソードも哀しみを感じる美しさから山場を作ります。この流れはラストの消え入るターン音型にベストマッチでこの楽章として好みですね。透明な美しい哀しみの音色は、静かな"ersterbend 死"のイメージに近い印象です。
・・・・・
やや速めライトウェイトの肩のこらないマーラー9番です。最終楽章の静的な美しさは好みですね。
コンドラシンにしては淡白でしょうか。




(#2)
Moscow Philharmonic Orchestra
[ALTUS] 1967-4/16
1967年東京文化会館でのマーラー9番本邦初演。記念すべき録音ですね。マーラー人気が近年の事であるのが今更ながら再認識されますね。
第一楽章
美しい緩やかさの第一主題から興奮を避けた第二主題、それを大きく構えた反復と第三主題の提示部です。展開部も落ち着きはらい緩やか優美からアレグロ・リゾルートで興奮の山場を作りコントラストの良い流れ。彫りが深く、美しさと暗い重さのバランス良い楽章です。
第二楽章
主要主題は優美ですが表情豊かです。第一トリオは派手め第二トリオを優美にと、濃厚なスケルツォ楽章です。
第三楽章
主要主題・副主題は切れ味と軽快さのバランスよく流れて中間部は速めです。緩やかな揺さぶりを感じます。
第四楽章
揺さぶりを感じる主題、第一エピソードは繊細な音色からマーラーらしい弦楽の美しい山場を作ります。第二エピソードも静音パートは素晴らくラストへの静的流れはいいのですが山場もクールです。
・・・・・
コンドラシンらしい陰影を付けた明快なマーラー9番です。山場強音パートに激情さや狂気があれば素晴らしかったでしょう。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos (2録音)
B.ワルターの跡を継ぎニューヨーク・フィルの音楽監督(1949-1958)を務めたミトロプーロスはL.バーンスタインにバトンを渡したわけですが、米国にマーラーを広げた功績も大きいですね。第9番は1960年にNYPとVPOの両オケを振った録音が残されていますが、その違いも驚きです。
今回紹介は両方ともCDセットでmonoになります。


(#1)
New York Philharmonic
[Music&Arts] 1960-1/23
バーンスタインが引き継いだ1958年に名称をニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団からニューヨーク・フィルハーモニックに改名した元手兵を振ったマーラー9番です。
第一楽章
第一主題は適度な揺らぎ、第二主題も大きくは表情を変えませんが第三主題前後からは大きく盛りたてます。展開部は静音パートでうまく間を使いながらNYPらしいパワフルさを活かしていますね。
第二楽章
主要主題は速く、テンポを下げた第一トリオでは切れ味を見せます。第二トリオはやや速めな優美さです。
第三楽章
主要主題は切れ味とリズミカルを合わせながらの重量級、副主題は軽やかに絡みます。中間部ではシンプルな美しさ、スローに落としてラストは見事なパワープレイです。
第四楽章
主要主題は緩やかに美しく入り、第一エピソードでは美しい哀しみの流れから情感を盛上げます。第二エピソードはスローで哀しみの回音音型を最大限生かします。山場を大きく、『亡き子をしのぶ歌』引用からコーダは美しく消え入ります。
・・・・・
速め主体の流れで一昔前のスタイル?ですが、パワーのマーラー9です。第四楽章の素晴らしさで、1960年のNYPの実力が味わえますね。




(#2)
Vienna Philharmonic Orchestra
[Memories] 1960-10/2
上記同年10月に親交の厚かったウィーンフィルを振ったマーラー9番ですね。逝去(1960-11/2)一ヶ月前の演奏です。
第一楽章
スローになった第一主題から第二主題へは表情を変えずに、反復後の第三主題で盛上げます。展開部は静音スローを鬱的に表し、対比よく切れ味と迫力を見せます。今風の展開になっていますね。
第二楽章
主要主題は一気にスロー化(標準的に)されました。歯切れよく流れ第一トリオでも遅めでシャープ、第二トリオは緩やか穏やかです。その後は緩急交えた流れです。
第三楽章
主要主題はここでも重量級、副主題はスローでモッソリになっています。中間部は美しさを演出して、ラストは派手ですが落ち着いています。
第四楽章
主要主題は変わらず美しい流れですが、第一エピソードは速めになり静的哀しみの表情が薄くなっている感じですね。第二エピソードも速めになって、この楽章の逆変化が不思議です。山場を大きく情感を付けるのは同じですが。
・・・・・
大きく変わって教科書的なマーラー9になってしまいましたいます。演奏時間は80分と6分ほど長くなってスローを生かした演奏ですが、これで標準的な時間でしょう。




エサ=ペッカ・サロネン, Esa-Pekka Salonen
Philharmonia Orchestra
[signum] 2009-3/22
元は現代音楽家で、M.リンドベルイやサーリアホと実験音楽合奏団Toimiiを組んでいたりしましたね。1983年にMTTの代役として急遽フィルハーモニア管弦楽団を指揮。2008年から同楽団の首席指揮者を努めていて、来日公演でも素晴らしいマーラーを聴かせてくれましたね。
第一楽章
第一主題は緩やか、第二主題へも適度な刺激で、そして大きく盛上げて反復に入ります。第三主題から見事に山場に向かいます。展開部もメリハリの強い大きな流れを作り見晴らしの良さを感じますね。
第二楽章
主要主題はスローに歯切れよく、第一トリオはテンポアップして良いリズムを刻みます。第二トリオでは穏やかな流れに転じて展開がスッキリとしていますね。その後もテンポ変化がうまいです。
第三楽章
主要主題と副主題はリズミカルで少々派手気味で、中間部でもやや速めに流れを作ります。その後緩やかに落として大きく山場を築き、ラストはハイスピードで派手に盛上げて終わります。見事!!
第四楽章
序奏から主要主題は情感の厚みを感じます。第一エピソードでは薄暗さや哀しみを感じますが、やや速め重心低めです。第二エピソードでも美しさが速めのテンポで今ひとつ生かされません。その辺りはサロネンの意図でしょう。その後ターン音型からは静的叙情性を間を使って高め、コーダからフィニッシュは静かに消え入ります
・・・・・
明瞭明快、見晴らし良いマーラー9ですね。ディナーミクとアゴーギクのバランスがとてもいいですが、第一第四楽章に澄みきった静的哀愁さがあればだったかも。




ゲルト・アルブレヒト, Gerd Albrecht
読売日本交響楽団
[YNSO] 1997-12/13
albrecht-yomikyo_mahler9.jpg
(会員配布盤の為amazonには登録が無い様です)

1998年から2007まで読響の常任指揮者を務め2014年に亡くなられたドイツ人指揮者アルブレヒト。常任指揮者就任の前年に振ったマーラー9番です。(読響とのマーラー5番はいただけませんでしたが…)
第一楽章
序奏・第一主題はやや速めでシャープ、第二主題の表情変化は少なめですが金管で盛上げて反復し第三主題をビシッと決めます。展開部も速め基本で揺さぶりを含めて切れ味とテンションの張った流れです。キレキレのシャープな第一楽章ですね。
第二楽章
主要主題は抑揚を付け、第一トリオも流れに乗りリズミカルでシャープ。第二トリオで穏やかな色を見せますが後半の動機の絡みは速めの流れです。
第三楽章
主要主題は速めでテンションが張っています。副主題で軽やかになりますが絡んで速めで勢いを付けて進みます。中間部では穏やかに一休み? その後は揺さぶりを強めながらラストの速く切迫した強烈な山場を作ります。
第四楽章
主要主題は美しいのですが緊張した揺さぶりが強いです。第一エピソードは一転して暗く静かに落とし繊細さを見せつけ、山場は速めです。第二エピソードも速めに入りそのまま二度の山場を作り、その後はラストに向けたターン音型を揺らぎを付け美しく落とします。
・・・・・
緊張感みなぎるマーラー9です。速め設定で揺らぎとテンションが強く、哀しみや美しさより緊迫さです。初顔合わせがもたらしたのかこの張り詰めた空気は一聴の価値ありです。(非売品というのが残念!)




クルト・マズア, Kurt Masur
New York Philharmonic
[TELDEC] 1994-4
3年前に亡くなった日本でもおなじみのマズアがニューヨークフィルの音楽監督時代のマーラー9です。
第一楽章
第一主題から第二主題への流れは一般的、その後半からは抑揚を強め反復は切れ味が良いです。第三主題で一転して展開部は暗いのですが速めで、小気味好い出し入れが良い流れを作ります。再現部は穏やかです。
第二楽章
主部主題レントラーは軽量、第一トリオは速いです。第二トリオで穏やかになり、後半は速め主体の出し入れから穏やかにまとめます。
第三楽章
主部主題は切れ味よく軽快に、第二トリオの静的動機が繰り返され中間部に入ると細かなやりとりからラストは激しい締めくくりです。
第四楽章
第一主題は情感強く入ります。第一エピソードでは静的暗転から叙情をたたえる流れになります。第二エピソードは哀愁、そこから山場を作るとコーダへ向かう準備になり、主要主題の変奏と『亡き子をしのぶ歌』引用からは美しさを見せてpppに終息します。
・・・・・
速めの流れに切れ味でコンパクトな印象が残ります。ライトウェイトのマーラー9です。
決して悪くはないのですが…




チョン・ミュンフン, Myung-Whun Chung
Seoul Philharmonic Orchestra
[DG] 2013-8/29,30
韓国生まれの米国人指揮者チョン・ミュンフン、ソウル・フィル(ソウル市立交響楽団)音楽監督時代のマーラー9番です。
第一楽章
第一主題はスローに続く第二主題も柔らかさ重視で、反復から第三主題で山場を作ります。展開部もスロー穏やかメインに山場を築くコントラストが明確ですね。好きな流れですが無表情的で、再現部はもやっとしてしまいます。
第二楽章
主部主題はややテンポを上げてリズムよく、第一トリオも大きくは変えずスケルツォらしいです。第二主題は静でスローに落とします。
第三楽章
主部主題・副主題はいきなりのアップテンポ、中間部で静で薄く展開します。ラストも盛り上げますが、なぜか訴えて来ません。
第四楽章
主要主題は弦楽器で大きく奏でます。第一エピソードは薄く良い流れですが無表情、ラストがコーダの様なのはやり過ぎでは。第二エピソードも早々と前半からエンディングに意識を持って行っている感じです。
・・・・・
第一・第四楽章の静を強調したマーラー9です。ただ、この曲に欲しい情熱や思い入れとは無縁ですね。





全集物を中心にまだ残っているようですので、また追記すると思います。^^;



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ダニエル・ハーディング / スウェーデン放送交響楽団 の マーラー交響曲第9番 は期待を裏切る素晴らしさ


ダニエル・ハーディング (Daniel Harding, 1975/8/31 - )
今や中堅どころとなったハーディングですが、個人的にはコンサートであまり当たった記憶がありません。一昨年のパリ管とのマーラー5番も今ひとつ。でもマーラー10番のCDは素晴らしいので、この9番にも期待して予約購入しました。

ハーディングが2007年から音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団(Swedish Radio Symphony Orchestra)との録音ですね。

【後日記】『マーラー交響曲第9番 : 65CD聴き比べ』にも追記しました。




■ 第一楽章
緩やかで美しい第一主題、不安を感じさせる第二主題、反復は大きく奏でます。提示部のラストを激しく、展開部も柔らかさと切れ味の出し入れのコントラストが見事に付いていますね。再現部も懐の広さを感じさせながら、うまく静的なコーダへ結びます。
■ 第二楽章
主部主題、第一トリオ、共にやや重さを感じます。第二トリオは緩やかですが、決して軽やかではありません。第二第三楽章では激しさがベースに存在しますね。
■ 第三楽章
主部主題は切れ味良く、副主題もそれに絡みます。重厚さと軽妙さの微妙なバランスです。中間部はやや速めに美しさと哀しみを合わせ大きな波を奏でます。ラストの暴れ方は見事!!
■ 第四楽章
主要主題は美しく、ファゴットのモノローグから第一エピソードは情感大きく盛り上げ繊細に納めます。第二エピソードもその流れです。「亡き子をしのぶ歌」の引用からコーダはpppスローの美しさを生かして消え入ります。

期待を裏切る素晴らしさ。重心の低い切れ味と見事な広がり、哀愁よりも嶮しさのマーラー9番です。
近年ちょっとした でもクセの強いアゴーギク*が目立つ気がしていますが、ここでは違いましたね。一四楽章vs二三楽章の対比が見事でした。おすすめの一枚です。

*昨年発売のThe Wagner Projectや上記パリ管とのライヴ



本アルバムは2016年9月8-10日のセッションですが、実は2017年7月24日のヴェルビエ祝祭管弦楽団(Verbier Festival Orchestra)とのLiveを聴く事ができます。

Mahler “Symphony No. 9” (Daniel Harding • Verbier Festival Orchestra, 24 Jul 2017)

流れとしては良く似た演奏になります。第一楽章は悪くありませんが、第二楽章が軽めで間伸び感を感じます。第三楽章は揃いは今ひとつですが激しさが良いですね。第四楽章は似た展開ですがやや緩いです。
結果的には煮詰めたセッションと言う事になるのでしょうが、それをライヴで聴きたいところですね。





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H.ラッヘンマン(Helmut Lachenmann)のピアノ曲集 2CD「„…Zwei Gefühle…“, Pression, Piano Works」と「Klaviermusik」本人のピアノとR.ケラーで聴き比べ


ヘルムート・ラッヘンマン (Helmut Lachenmann, 1935/11/27/ - )
何枚もインプレしている欧現代音楽ビッグネームの一人ラッヘンマン、昨年も来日していますね。紹介は割愛ですw

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ラッヘンマンのピアノ・ソロ曲集を2CD。■印の三曲(Weigenmusik, Guero, Ein Kinderspiel)が重なっていますので、本人とローランド・ケラーのピアノで聴き比べしてみましょう。
ラッヘンマンの楽曲は様々なCDでラップしていますが、とりあえずはこの二枚で。



„…Zwei Gefühle…“, Pression, Piano Works

ピアノはラッヘンマン本人です。


Weigenmusik (1963) for piano solo
ラッヘンマンが名付け親であるピアニスト/ヨースト・クレーマー(Jost Cramer)の娘スザンナの為に書いた"揺かごの曲"だそうです。
硬質で不協和音のシンプルな3'半ほどのピアノ曲です。静音と金属的な共鳴音が印象的ですね。

Guero (1970) for piano solo
バッタやコオロギの音をイメージするそうで、特殊奏法バリバリの小曲です。ギリギリギリ…ゴンゴッゴン…的なw 所謂(いわゆる)ピアノの音色はありません。おとなしめな演奏に感じますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  もちろん本人の演奏で特殊奏法が明瞭にわかります。


Ein Kinderspiel (1980) for piano solo
息子のデイヴィッドの為に書いた7曲からなる小曲集です。子供用練習曲とはいえラッヘンマンですから単純ながらの強烈な表現主義。基本は単純音階+和音+不協和音で、強烈なディナーミクの高音から低音までの展開です。タイトル「子供の遊び」の通り楽しさいっぱい、特に強音パートは子供が弾いて喜びそう?!

„…Zwei Gefühle…“, Musik mit Leonardo (1992) for speaker and ensemble
 ・Helmut Lachenmann, narrator, ・Ensemble Signal, ・Brad Lubman, conductor
室内楽と本人の語り、Textは本人の代表作"マッチ売りの少女"からになりますね。強烈な出し入れと特殊奏法で構成される1990年代後半のラッヘンマンそのものです。静と間の間にパルス的強音とノイズ、それが嵐の様に襲いかかってきます。刺激的な21'のやっぱりこの曲がメインでしょう。

Pression (1969-70) for cello solo
 ・Lauren Radnofsky, cello
特殊奏法のチェロ曲です。ほとんどチェロとは思えません。作曲年代も1970年で目一杯特殊奏法ですしね。その中に旋律が存在して、これぞラッヘンマンでしょう。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  チェロはJonathan Gotlibovichです。


本人のピアノは無機硬質で単純明快さが響きますね。"Guero"ではラッヘンマンらしい特殊奏法が印象的ですが、他二曲は子供の為の曲?、それでも"Ein Kinderspiel"ではラッヘンマンらしさを感じました。
でもやっぱり室内楽曲の„…Zwei Gefühle…“にはかなわないですね。Pressionもラッヘンマンらしさ炸裂で、おすすめのアルバムです





Klaviermusik

こちらは全曲ピアノ・ソロ、pfはローランド・ケラー(Roland Keller)です。
右は再発盤ですね。


Weigenmusik (1963) for piano solo
ラッヘンマンに比べると表情、アゴーギク、を感じます。その分無機的共鳴は低くなりますが、細く弱い抑揚が生きている感じですね。(M.A.アムランに弾かせたら、こうなりそうw)

Guero (1970) for piano solo
ライナーノートに特殊奏法の技法が写真入りで解説されています。より特殊奏法性が強く、強弱が明確もになります。演奏時間が1'以上長いのはどうしてでしょう? それほどスローには思えません。

Ein Kinderspiel (1980) for piano solo
ここでもアゴーギクで表情を付けています。子供が喜びながら弾く感じではなく、明らかに単純な表現主義からピアニストの曲になっている感じです。楽しさよりも単純さの裏にあるものを見せようという感じです。ただラストの"Schattentanz"は個性的で素晴らしかったですね。

Five variations on a theme of Franz Schubert (1956) for piano
ドイツ舞曲を元にしているそうですが、シューベルトは範疇外なので…^^; もろにシューベルトがヴァリエーション化によって動機を活かしながら不協和音と調性自体を崩して行きます。それはそれで面白いかも。ラッヘンマン本人が弾いたらどうなるのでしょう?!

Echo Andante (1961) for piano
初期作品で、間と音のピアノ曲です。音列配置的な印象で、古さを感じますね。

ピアニストとしての楽曲になっていますね。その割に今ひとつ強烈な印象が残らないのは残念です。
「ラッヘンマンのピアノ曲ね…ふぅ〜ん」的な。(汗)




やっぱりオリジナルw、ピアノはラッヘンマンの硬質で金属的な響きがいい感じです。特に"Ein Kinderspiel"の印象は、強烈な楽しさでやられました。
ケラーはピアニストとしての独自表現を出していますね。
アルバムとしては『„…Zwei Gefühle…“, Pression, Piano Works』が楽しめます。



最後にラッヘンマンが「猫踏んじゃった」を演奏するシーンをYouTubeで。

これを見ると「Ein Kinderspiel, 子供の遊び」の気持ちが伝わりますね。



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ブルーノ・マントヴァーニ(Bruno Mantovani) の La Sette Chiese, Streets, Éclair de Lune を聴く


ブルーノ・マントヴァーニ (Bruno Mantovani, 1974/10/8 - )
フランスの現代音楽で、作曲はもちろんの事 仏国内でアナリーゼから電子音楽までを学んでいますね。もちろんIRCAM出身でもあり、バリバリの仏現代音楽家です。


La Sette Chiese, Streets, Éclair de Lune
マントヴァーニの転換期作品、本人も語っている、となる「La Sette Chiese, 七つの教会」をメインとしたアンサンブル作品集ですね。
演奏はスザンナ・マルッキ(Susanna Mälkki)指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble InterContemporain)と最高の布陣です。



La Sette Chiese, for ensemble (2002年)
1.La piazza Santo Stefano - 2.L'église de Saint-Jean Baptiste - 3.La crypte - 4.La basilque du sépulcre - 5.Basilique des saints Vital et Agricola - 6.La cour de Pilate - 7.L'église du martyrium - 8.Le cloître - 9.La chapelle du bandeau
「七つの教会」はボローニャの複雑な教会をモチーフにしているそうです。二部に分かれていて、全9つの楽曲は教会とそのエリアに対比させています。アンサンブルを四編成に分けていて、第二部一曲目(5)はメシアンへの追悼、二曲目(6)はJ.ノットへ送られれています。
 ポリフォニックで反復、静音とクラスター、時折現れる旋律。9曲の表情は異なりますが特徴は同じです。静音パートには美しさも感じられます。アンサンブルを四部に別けている配置については書かれていませんが、前方四ヶ所でしょうか。オーディエンスを中心に配置しているとしたらライヴでないと広がりはわからないかもしれません。
即興的混沌やノイズ的特殊奏法はなく、ポリフォニーの音響系?です。ちょっとブーレーズを思い出しますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


Streets, for ensemble (2007年)
アンテルコンタンポラン委嘱のこの曲はピエール・ブーレーズに献呈されていて、ニューヨークを歩いている時に発想したそうです。
 トリルや細切れの音色が錯綜しているのはN.Y.の喧騒でしょうか。反復的で緊張感のある平坦なその流れをベースに打音やパルスが絡みます。前曲の7年後で、曲調は単純化して研ぎ澄まされている感じです。

Éclair de Lune, for 3 instrumental groups & electronics (2006年)
IRCAMとアンサンブル・イクトゥス(Ensemble Ictus)の共同委嘱作品で、アンサンブルとエレクトロニクスの音楽です。
 ピアノのトレモロ・トリルがベースラインに存在し、それ自身も変化しながら流れます。マントヴァーニ曰く"piano sonata"だそうです。そしてパーカッションが現れて、ノイズ的にも発展します。クラック音のノイズはエレクトロニクスのセバスチャン・ルー(Sébastien Roux)がやっていそうですが、それ以上は不明ですw 


細かく速い演奏にスローと単音が絡む強弱のポリフォニー、ライナーノートの楽譜からも明確です、が特徴的で美しさも感じられます。後年作品の方が表情変化のヴァリエーションは減っていますね。
ただ突出した前衛性は感じられません。その分、安心して聴くことができるのも事実でしょう。完成度が高く、IRCAMを中心とした今の仏現代音楽を楽しむには良い一枚ですね。




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ガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré) の The Music for Cello & Piano を聴く


ガブリエル・フォーレ (Gabriel Faure, 1845/5/12 - 1924/11/4 )
フォーレの印象といえば、優しく美しい楽曲でフランスらしい音楽でしょうか。古典でもロマン派でもないその微妙な後期の和声はフランス印象派の黎明音楽家と言われていますね。


The Music for Cello & Piano
1880年から1921年までのチェロ&ピアノ小曲集で、主に中期のフォーレらしい美しい旋律の曲が並んでいます。
・チェロ:アンドレアス・ブランテリド (Andreas Brantelid)
・ピアノ:ベングト・フォシュベリ (Bengt Forsberg)
'6.Morceau de lecture' のみもう一人のチェリスト:フィリップ・グラデン(Filip Graden)とのDuoになります。



1.Romance (1894) - 2.Papillon (1884) - 3.Sérénade (1908) - 4.Berceuse (1879?) - 5.Sonata for Cello and Piano No.1 (1917) - 6.Morceau de lecture (1897) - 7.Berceuse, form Dolly (1864/1893) - 8.Sicilienne (1893/98) - 9.Elégie (1880) - 10.Sonata for Cello and Piano No. 2 (1921) - 11.Andante (1894)

年代順になっていないのが残念ですが、初期から後期までのフォーレが楽しめます。
古典やロマンの香り漂う優しさと美しさの初期作品4.Berceuseや7.Berceuse, form Dolly、フォーレらしい和声の中期作 2.Papillonの洒脱なvcのトリルや3.Sérénade、8.Sicilienne、11.Andanteの旋律ですね。ちなみにSicilienneは名作「ペレアスとメリザンド」に転用されている有名な旋律です。

 試しにYouTubeで「Sicilienne」を観てみる?
  David Louwerseのチェロと François Daudetのピアノです。


素晴らしいのは半音階的で調性感の薄くなる後期作品。5.Sonata for Cello and Piano No.1の第二・三楽章、10.Sonata for Cello and Piano No. 2の第三楽章は、まさに仏印象派の音色でドビュッシーやラヴェルにつながる事が明白です。

ブランテリドのvcは暖色系で表情豊かな音色と演奏ですね。全体としてはもう少しクールに弾いてもらった方が好みかもしれません。ベストトラックは9.Elégieでしょう。


フォーレをただの美しいサロンミュージックと聴くのか、時代を反映させた和声を楽しむのかで違うかもしれません。個人的には後期作品の洗練に一票ですが。
もちろんリビングルームでゆったりとした時間を過ごすのには最高の音楽でしょう。





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モートン・フェルドマン(Morton Feldman) の「バニタ・マーカスのために, For Bunita Marcus」を M.ヒンターホイザーとM.A.アムランのピアノで聴き比べ


モートン・フェルドマン (Morton Feldman, 1926/1/12 - 1987/9/3)
「ニューヨーク楽派」最後の米現代音楽家?フェルドマンと言えば、後期の静的平坦長舌な流れを思い浮かべる人も多いと思います。図系譜で知られていますが早々に放棄しており「新しい複雑性」の読譜の困難性と同じ様に前衛隆盛期に生まれた現代音楽の技法になりますね。
➡︎ このblogで言う現代音楽


For Bunita Marcus (1985年)
フェルドマン晩年の傑作「コプトの光」の前年に書かれた唯一の長いピアノ曲で、1'-3'ほどの小曲36パート切れ目なしの72'ほど、弟子の米女性現代音楽家Bunita Marcus(1976年から11年間作曲活動を共にした)に贈られています。彼女はこのブログではおなじみのBang On A Can all-stars等へ曲を書いていますね。



マルクス・ヒンターホイザー(Markus Hinterhäuser, 1958/3/30 - )はイタリア生まれのオーストリア人ピアニスト、現代音楽を得意とするヴィルトゥオーゾですね。Arditti Quartetとの共演、またフェルドマン他 J.ケージやG.ウストヴォーリスカヤの作品で知られています。
ペダルによる残響音が共鳴する様に残りながら静的アルベジオの音が流れます。もちろん無調で特徴的な旋律はなく、演奏は抑揚を排した音列配置的な単音の並びを無機的に奏でます。柔らかさと冷たさのバランスもありますが、印象は透明感の強い硬質さで氷の部屋の雫と反響の様、耳と脳に共鳴します。





このブログでも10CDくらいはインプレしているカナダ人ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト、マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin, 1961/9/5 - )ですね。今年(2018年)6月に久々の来日が決まって、私もヤマハホールのチケットを入手済みです。
まず表情があります。音の並びに速さ(アゴーギク)と休符の長さを付けています。タッチもより柔らかく繊細で譜面指示pppの気配が強いです。冷たいながら有機的な音色は、静寂な氷の世界の小生命体の様な気配です。その分聴きやすいのではないでしょうか。



静寂平坦な単音羅列のピアノの音、5/16拍子, 3/8拍子で一小節1音と2/2拍子の全休符がメイン、が一時間以上続くわけですから集中して全曲聴き通すが難解なのも事実でしょう。それが後期フェルドマンの音楽ですね。

それでも二人の演奏は明らかに異なり、ヒンターホイザーは硬質無機的アムランは表情有機的です。抑揚の異なる二人の演奏が♩= 63-66 指示でほぼ同じ72分強(数秒違い)というのも面白いですね。
個人的好みですと、作品(スコア)にタッチとアゴーギクで色付け(表情付け)したアムランに一票でしょうか。もしフェルドマン本人が聴いたらヒンターホイザー?、楽譜を演奏者の解釈で変えられるのが嫌いだったそうですからね。




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R.シュトラウスの『町人貴族』聴き比べ:テンシュテット / ライナー / シュトラウス


リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864/6/11 - 1949/9/8)
今更のドイツ後期ロマン派最後の大物ですね。マーラーと時代を共にしてお互いに指揮者としても敏腕を振った二人、違うのはオペラと交響詩を得意とした事でしょうか。


町人貴族, Le bourgeois gentilhomme Op.60 (1917年)
モリエールの戯曲『町人貴族』のフーゴ・フォン・ホーフマンスタール改作時付随音楽から9曲にした組曲ですね。貴族になりたい金持ち町人ジョルダン、その娘リュシルが策略を巡らせて結婚をする喜劇です。
実はバロック調の曲構成でほぼ聴かないのですが、今回は明後日(2018-1/10)の大野和士/都響のコンサートを前に聴きなおしてみました。

1.Ouverture - 2.Minuet - 3.The Fencing Master - 4.Entry and Dance of the Tailors - 5.Lully's Minuet - 6.Courante - 7.Entry of Cléonte - 8.Intermezzo - 9.The Dinner
それぞれ1'から5'ほどの小曲(9.The Dinnerは10')なので、パート別の印象は不要かと思います。



クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)が音楽監督を務めた時代のロンドンフィル(LPO)との演奏です。
序曲の入りから優美です。通して洒落た古典っぽさを感じさせてくれる演奏で、テンシュテットの個人的な印象とは違って軽やかさが感じられます。とは言え「9.宴会」では交響詩の様な流れを切れ味のある演奏で聴かせてくれました。




フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)が鍛え上げた手兵シカゴ響(CSO)を振った演奏です。ライナーはシュトラウス本人との交流もあり、得意としていましたね。ここでは2曲(5,6)がカットされています。
序曲から切れ味のある演奏でテンポも速め全体が重心の低い流れです。もちろんメヌエットやバロック調の曲では優美さも見せますが陰影がありますね。1956年の録音とは思えないほど音もいいです。また曲構成から2曲が欠けても印象に影響ありませんね。華々しく表情豊かで流石はシュトラウスを得意とするライナーです。




リヒャルト・シュトラウス本人の指揮でも聴いておきましょう。オケは音楽総監督を務めたベルリン国立歌劇場附属オーケストラのシュターツカペレ・ベルリン(Staatskapelle Berlin)、1930年の録音です。
バロック感もそれほど強くなく、アゴーギクで流れを作っています。メヌエットでも優美さの中に交響詩の様な動機を感じさせてくれます。印象は一番シャープでシュトラウスの曲らしい表情です。(笑)
ただ古いspからのmonoですから、それ以上の素晴らしさを聴き取るのは難しいですね。


ライナー盤が、重心の低い流れでバロック的な印象を後期ロマン派的なものにしていいですね。あまりにバロック色が濃いのはシュトラウスさに欠ける気がします。
シュトラウス本人は、想像以上にシュトラウスらしさが感じられて(笑)録音の問題がなければ"これ"でしょう。
テンシュテットは軽すぎる感じです。

大野/都響がこのバロック・古典の調べをどう演奏してくれるか興味がありますね。独奏vnにも興味が湧きますし、「9.宴会」は一番の聴かせ処でしょう。





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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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