米現代音楽パーカッション・カルテット "So Percussion" を聴く

ここで米現代音楽、ポストミニマル系(と括っていいのか、Classical Crossover の方が合っているかw?)、の演奏グループをインプレしておきたいと思います。まずはN.Y.で活躍中の打楽器アンサンブルのソー・パーカッション(Sō Percussion)ですね。

N.Y.というとN.Y.ミニマルということになりますが、Sō Percussionも Bang On a Can(以下BOAC) のレーベル"Cantaloupe"から全てのアルバムを出していますね。これでスタイル等々がほぼわかるのでは。

コラボしているミュージシャンもスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)のDrummingは本人とのライヴも含めて二回CD化されていますし、お馴染みのデイビット・ラング(David Lang)やブライス・デスナー(Bryce Dessner)との共作もありますね。

本アルバムはタイトルもSō Percussion(2004年)のデビューアルバムで、楽曲はBOAC All-Starsのメンバーであるエバン・ジポリン(Evan Ziporyn)とD.ラングの作品です。

メンバーはAdam Sliwinski*, Doug Perkins, Jason Treuting*, Todd Meehanですが、現在でも在籍しているのは*二人になりますね。

Sō Percussion

Melody Competition (2000年, by Evan Ziporyn)
ジポリンらしいバリのガムランをベースにした音楽ですね。鍵盤打楽器とカラフルな音色の打楽器類が、時にメロディーラインを、また打楽器音を中心に変化させながら進みます。その響はバリや東南アジア系の民族音楽を思わせます。ラスト4分は細切れにミニマル的アイディア違いの楽風が出て面白いですね。

the so-called laws of nature (2002年, by David Lang)
 part I, II, III
So Percusson他の委嘱作品でSo Percussionに献呈されている三部構成のラングらしい美しいポスト・ミニマル系音楽です。
part I はシロフォンの様な硬い木琴系の音で構成されていて、細かいトリル・トレモロが連打されています。基本音C, C#(多分)がミニマル的にベース音として存在していますね。part II はチューブベル系の音色です。ここでもトリル・トレモロ系の連打で金属音の残響と共鳴が発生して、背景音となっています。後半は音程を変えたドラムセットの音が主役に入替ります。part IIIは鍵盤打楽器を使ったポスト・ミニマルですね。トレモロの上に単純音階が乗る構成で、透明感があります。

試しにYouTubeで観てみる?
 part II になります。




個人的にはラングの作品の方が面白いです。一曲目はブラインドで聴いても "もしかしてジポリンかな?" って答えるかもしれません。
この後、So Percussionはオリジナリティーも出していくわけですが、次回は2012年リリースの素晴らしい作品をインプレしますね。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

エクサン・プロバンス音楽祭 2016 オペラ「ペレアスとメリザンド」を NHKプレミアムシアターで観る

クロード・ドビュッシー唯一のオペラ(全五幕)「ペレアスとメリザンド, Pelléas et Mélisande」、昨年放映されたのですが見逃していました。オンデマンドにあったので観ようかと思っていたので嬉しい限りです。

個人的見所は何と言ってもバーバラ・ハンニガンですね。現代音楽を得意とする彼女のファンですからw

THE-FESTIVAL-DAIX-EN-PROVENCE-2016_Pelléas-et-Mélisande

演出
 前衛ではありませんが、とても奇抜な設定です。いきなりメリザンドがステージにいたり、二人出てきたりするので戸惑いますがストーリー全体をメリザンドの夢にしています。一人のメリザンドは人形の様に振る舞い、存在していないかの様に動きます。(周囲の人には見えないかの様に非存在です。ゴローやペレアスも同様にその他のシーンに非存在的に現れます。メリザンドの心の投影?!)
今回は映像ではなく二人のメリザンドを採用した英女性演出家ケイティ・ミッチェルですが、ロールを二重映しにするのは同じテクですね。
 また、幕毎に衣装を脱がされて下着姿になったり、ペレアスに対して積極的なセクシャルな動きを見せたりと、エロティックなメリザンドにもしています。その辺りはK.ミッチェルらしさでしょうか。

舞台・衣装
 領地から家に置き換えられた舞台は、初めの森と泉は部屋、盲の泉はプール、といった設定です。塔の長い髪のシーンも部屋です。メイン舞台は上下に区分され、左サイドに各場のセットを入れ替え時の螺旋階段の舞台があります。衣装は現代風ですね。

配役
 メリザンドのB.ハンニガン、抑え気味に作られたソプラノに演技でストイックさを感じさせてくれました。K.ミッチェルの演出を最大限生かしていますね。
ゴローのナウリとペレアスのドゥグーも好演でした。なんとなく似た気配と声質でしたが。

音楽
 度々の来日でも良い演奏を聴かせてくれるサロネンとフィルハーモニア管、ここでも明瞭な音出しで陰影の強いサウンドを鳴らしてくれます。ドビュッシーらしい幽玄さの中に煌めく色合いも感じましたね。



全体 としてはケイティ・ミッチェルの描くメリザンド像を、バーバラ・ハンニガンが見事に演じた作品になりました。

始めと終わりはベッドのメリザンドがウェディングドレス姿で、マリッジブルーの夢から覚める設定だそうです。新しい環境に入る不安を鬱的な動きで、その一方ではエロティックな女性を演じる。そんな二面性の新しいメリザンド像を楽しませてもらいました。

<出 演>
 メリザンド : バーバラ・ハンニガン [Barbara Hannigan]
 ペレアス : ステファヌ・ドゥグー [Stéphane Degout]
 ゴロー : ローラン・ナウリ [Laurent Naouri]
 アルケル : フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ [Franz Josef Selig]
 ジュヌヴィエーヴ : シルヴィ・ブリュネ・グルッポーゾ [Sylvie Brunet-Grupposo]
 イニョルド : クロエ・ブリオ [Chloé Briot]
 医師 : トマス・ディアー [Thomas Dear]

<演 出> ケイティ・ミッチェル [Katie Mitchell]
<合 唱> ケープタウン・オペラ合唱団
<管弦楽> フィルハーモニア管弦楽団
<指 揮> エサ・ペッカ・サロネン [Esa-Pekka Salonen]


収録:2016年7月7日 プロバンス大劇場(フランス)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

オランダ国立歌劇場公演 2017 オペラ「サロメ」を NHKプレミアムシアターで観る

リヒャルト・シュトラウスのオペラ、全一幕(4場)の「サロメ (Salome Op.54)」です。交響詩を得意としたR.シュトラウスが最後に「英雄の生涯」を書き上げた後、初めに評判になったオペラですね。この後、「エレクトラ Op.58」「ばらの騎士 Op.59」「ナクソス島のアリアドネ Op.60」とヒット作を飛ばします。

このエログロ風の作品をトネールフループ・アムステルダム(劇団)芸術監督のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ*による新演出でどうなるのかが個人的な楽しみです。
*本年11月に「オセロー」の東京公演を行いますね。

RichardStrauss-Salome-DutchNationalOpera2017.jpg


演出
 I.V.ホーヴェは2012年にリヨンで大野和士さんの元、マクベスも演出してします。ここでも現代風のコスメティックに誇張された表現が生きています。ヤン・ファンデンハウエのドラマトゥルグも合っていましたね。ラストは生首のはずのヨカナーンが血みどろで現れてサロメが絡むのはまさにグロテスク。

舞台・衣装
 舞台はシンプルで黒、暗くスポットライトで浮かび上がる設定です。衣装は当然現代に置き換えられています。近現代風といった感じですが。

配役
 タイトルロールのサロメ役に尽きるオペラですから、マリン・ビストレムですね。素直な声はもっと狂気を感じたかった気もしますが、演技と表情は素晴らしく楽しませてくれました。"7つのヴェールの踊り"もビストレム本人が演じました。
ヨカナーンのニキーチンは声も体格も大柄すぎですw、だいたい肌も白くないし全身刺青で髪も黒くないですから。

音楽
 ダニエレ・ガッティにしては揺さぶりが弱かった感じです。このオペラには彼らしい起伏があっても良かったと思います。



全体としては今の時代の先鋭な"サロメ"が楽しめて素晴らしかったです。M.ビストレムもエロティックでグロテスクさを魅せてくれました。
一に演出、二にM.ビストレムでしたね。

<出 演>
 ヘロデ(ユダヤの領主): ランス・ライアン [Lance Ryan]
 ヘロディアス(領主の妻): ドリス・ゾッフェル [Doris Soffel]
 サロメ(ヘロディアスの娘): マリン・ビストレム [Malin Byström]
 ヨカナーン(予言者): エフゲニー・ニキーチン [Evgeny Nikitin]

<管弦楽> ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
<指 揮> ダニエレ・ガッティ [Daniele Gatti]
<演 出> イヴォ・ヴァン・ホーヴェ [Ivo van Hove]

収録:2017年6月12・27日 ミュージックシアター(アムステルダム)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ステファン・アルバート(Stephen Albert) の In Concordiam・TreeStone を聴く

前回に続いて米現代音楽家ステファン・アルバート(Stephen Albert, 1941/2/6 – 27 December 1992/12/27)です。今回はコンチェルトと室内楽、こちらの方が前回のSymphonyより楽しめます。

In Concordiam・TreeStone / Stephen Albert

In Concordiam (1983年)
 Ilkka Talvi : Violin, Seattle Symphony, cond. Gerard Schwarz
ヴァイオリン協奏曲です。この時代のS.アルバートらしく、静的な美しさと管楽器の響きの組み合わせになりますね。vnはその間を縫って先鋭的な音色を響かせます。後期ロマン派を感じる様な全体の流れですが、これは面白いですね。

 試しにYouTubeで聴いてみる?

TreeStone (1986年)
 [Part I] I am Leafy Speafing - A Grand Funferall - Sea Birds, [Part II] Tristopher Tristan - Fallen Griefs - Anna Livia Plurabelle
 Lucy Shelton : Soprano, David Gordon : Tenor, New York Chamber Symphony, cond. Gerard Schwarz
声楽付きの室内楽です。S.アルバートは作家ジェイムズ・ジョイス(James Joyce)の作品を元にした作品が多く見られます。これもジョイスのフィネガンズ・ウェイク(Finnegans Wake)にインスパイアされ、悲劇の伝説トリスタンとイゾルデを掘り下げたそうです。
 幽玄さのある流れが主体で、調性の薄さが魅力的です。ちょっとバルトークを思わせる様な感じと言ったらいいでしょうか。声楽も音の跳躍が大きくやや前衛風、楽曲は調性の薄い鬱的流れになります。魅力的ですね。

 試しにYouTubeで聴いてみる?



前回紹介の交響曲は退屈なクラシカルでした。でも、この二曲は後期ロマン派の末裔的なコンチェルトと、微妙な調性感を生かした声楽室内楽で楽しめますね。
S.アルバートを聴くなら、絶対にこちらです!





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

米現代音楽家 ステファン・アルバート(Stephen Albert) の 交響曲第1番・第2番 を聴く

51歳で急逝したステファン・アルバート(Stephen Albert, 1941/2/6 – 27 December 1992/12/27) は、作曲をN.Y.のイーストマン音楽学校(Eastman School of Music)で学び、後にストックホルムでカール=ビリエル・ブロムダール(Karl-Birger Blomdahl)にも師事していますね。K.B.ブロムダールはこのblogでもお馴染みです。

調性音楽を中心とした楽風で、シアトル響のComposer-in-residenceを務めていたのは納得ですね。
ヨーヨー・マの力を借りて完成されたチェロ協奏曲が有名でしょうか。マによればアルバートの作曲はカタルシスだとの事。その時点でK.B.ブロムダールを感じますね。

本アルバムは二曲存在する交響曲のカップリングで、演奏はポール・ポリヴニック(Paul Polivnick)指揮、Russian POになります。

Symphony No.1 'RiverRun', Symphony No.2 / Stephen Albert

Symphony No.1 'RiverRun' (1983年)
四楽章形式で機能和声の標題音楽、雨が降って川の流れが終えるまでのタイトルが各楽章に付きます。
フィルムミュージックの様な堂々とした第一楽章、緩徐楽章となる第二楽章は陰的な静けさ、第三楽章は管楽器の響の良さ、最終楽章は緩徐主体でS.アルバートらしさかもしれません。

Symphony No.2 (1992年)
9年後の作品で、三楽章形式 allegro - adagio - allegroです。
並びの通りの落ち着いた展開の中に表情を豊かに付けています。メロディーラインが明瞭でストーリー展開を感じるのでフィルムミュージックと勘違いしそうです。



調性音楽の管弦楽曲で、米FilmMusicをベースとする様な正統的現代のクラシック音楽ですね。今の米国現代音楽の一つの明確な流れです。(本人はFilmMusicanではありませんが)
演奏はやや控えめな感じがします。
次回はもう少し調性の薄くて興味深い作品を紹介しますね。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ガブリエラ・リナ・フランク(Gabriela Lena Frank) の Compadrazgo を聴く

女性米現代音楽家では好きな一人、ガブリエラ・レーナ・フランク(Gabriela Lena Frank, 1972/9 - ) の2013年のアルバムです。
"Hilos (Threads)"でキャリア等の略歴を紹介済みで、南米系の民族音楽ベースと無調西洋和声の楽風が基本ですね。

このブログのG.L.フランクの関連投稿記事

室内楽でピアノ・ソロからDuo, Trio, そしてピアノ五重奏曲まであります。演奏はEnsemble Memeのメンバーになりますね。

Compadrazgo / Gabriela Lena Frank

Sonata Andina (2000年) for solo piano
 Molly Morkoski (Piano)
四楽章形式のピアノ・ソロです。第一楽章は強鍵的リズミカルさで表情豊か、"rumbling and thumping"なピアノが楽しめます。第二楽章は手拍子とピアノのパフォーマンスで単純反復の強いミニマルと刺激。第三楽章は宇宙空間的響の音数の少ない美しい緩徐楽章。第四楽章は不協和音的な西洋和声が古臭いです。
やや古い作品で、構成的な統一感のなさと特徴の薄さを感じますね。

Sueños de Chambi: Snapshots for an Andean Album (2002年) for flute and piano
 Molly Morkoski (Piano), Barry Crawford (Flute)
7パートの楽曲です。日本的な"笛"を感じたり、その他民族和声的な音色をフルートが奏でます。ピアノは時に美しく、またrumblingな響を聴かせジャジーでもあります。ただ、pfが不協和音的西洋和声になるのは中途半端でいただけません…

Canto de Harawi: "Amadeoso" (2005年) for flute, clarinet and piano
 Barry Crawford (Flute), Molly Morkoski (Piano), Michael Norsworthy (Clarinet)
一楽章形式で、二つの木管楽器の絡みが主役です。単純ですが不思議な和声で、ミニマルでもあります。ポスト・ミニマル的で、この辺りからG.L.フランクの楽しさが明確になって来る気がしますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  演奏はJessica Warren-Acosta (flute), Gregory Oakes (clarinet), Kuang-Hao Huang (piano)になります


Tres Homanajes: Compadrazgo (2007年) for piano quintet
 Liuh-Wen Ting (Viola), Harumi Rhodes (Violin), Molly Morkoski (Piano), Austin Hartman (Violin), Caroline Stinson (Cello)
ソナタ形式三楽章の楽曲です。スケルツォやアレグロを展開して、無調ですが旋律とリズムが存在ます。そしてミニマルも流れに一役かう今の時代のクラシック音楽でしょうね。第二楽章のチェロはバルトークも感じます。第三楽章の激しい切れ味は、中途半端だった不協和音展開の進化系ですね。



二つの流れ、民族音楽をベースにした表情、そして無調基本のクラシカルは良いですね。やっぱり2005年以降辺りからがG.L.フランクの素晴らしさと実感します。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

バイロイト音楽祭2017 ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を NHKプレミアムシアター で観る

今年のバイロイト音楽祭の初日を飾った『ニュルンベルクのマイスタージンガー, Die Meistersinger von Nürnberg』ですね。新演出となり、前衛でならすカタリーナ・ワーグナー(R.ワグナーの孫で音楽祭総監督ですね)からバリー・コスキーの演出になりました。

BayreutherFestspiele2017-DieMeistersingerVonNürnberg

演出
ユダヤ系演出家B.コスキーが持ち込んだのは二つ。①ワーグナーの反ユダヤ主義と②ワーグナー家族・知人関係を配役に当てはめています。そこにはワーグナーやリスト(ワーグナーの妻であるコジマの父です)達が現れます。デフォルメされた張りぼて頭や大風船のワグナーも現れ、その頭にはユダヤの帽子が被されています。そんなネガティヴ・テーマを自虐的に登場させる演出はバイロイトならでは?!
ラストはザックスのドイツ芸術を讃える歌の後、前奏曲をザックス演じるワーグナーが舞台上のダミーオケを指揮をして終わります。

舞台衣装
前奏曲でピアノから何人ものワーグナーが出てきます。第一幕はそのままワーグナー家「ヴァーンフリート荘, Villa Wahnfried」で聖カタリーナ教会ではありません。第二幕は草原(背景は第三幕)、第三幕は1945年のWWIIのニュルベルク裁判法廷で、戦勝国の国旗が見えます。
衣装はアヴァンギャルドさはなく、マイスタージンガーの時代背景的?です。

配役
それぞれがワーグナーと、取り巻く人物になぞらられています。(下記<出演>を参考下さい)
そっくりさんショーを除けば、まずは同じみヘルデンテノールのフォークト演じるヴァルターですよね。その伸び伸びとした軽やかなテノールの第三幕第五場「朝はバラ色に輝いて」は感動的です。
光ったのはポーグナー役グロイスベックと役得ザックスのフォレのバス-バリトンで、演技も合わせて楽しさいっぱいでした。ほぼ主役のミヒャエル・フォレは楽しませてくれましたね。
それにしてもリスト役のポーグナーを演じる、グロイスベックはリスト(の写真)そっくりw

音楽
P.ジョルダンの指揮はかなり抑え目に感じてしまいましたが、いかがでしょう。



全体としては、リストやワーグナーそっくりさん等々に面白さはあったものの、この楽劇に感じる4時間をゆうに超える長さは払拭できませんでした。

問題の香りがするドイツ・芸術を讃えるザックスを最後に浮き立たせる様に反ユダヤ舞台展開をしたり、エヴァが愛した2人(ザックスとヴァルター)を共にワグナーにしたりと刺激のある演出ではありました。もっと視覚的にもアヴァンギャルドさを期待してしまいますね、バイロイトですからw

ワグナー役のザックスが、憎まれ役ベックメッサーのユダヤ人指揮者レヴィをばかにした態度をとったり、本来の喜劇的演技はそのまま生かされて楽しめました。

ネットでの現地の印象、音楽と政治的背景の関連付けについての反応は様々な様です。




<出演>
ハンス・ザックス(靴屋):ミヒャエル・フォレ [Michael Volle]
 → 老ワーグナー
ファイト・ポーグナー(金細工師):ギュンター・グロイスベック [Günther Groissböck]
 → リスト
ジクストゥス・ベックメッサー(市役所の書記):ヨハネス・マルティン・クレンツレ [Johannes Martin Kränzle]
 → へルマン・レヴィ (指揮者Hermann Levi, 1882年パルジファル初演を振った)
  実はクレンツレもレーヴィ(の写真)にそっくり!!
ヴァルター・フォン・シュトルツィング(若い騎士):クラウス・フロリアン・フォークト [Klaus Florian Vogt]
 → 若きワーグナー
ダーヴィット(ザックスの従弟):ダニエル・ベーレ [Daniel Behle]
 → 前奏で現れたワーグナーの一人
エヴァ(ポーグナーの娘):アンネ・シュヴァーネヴィルムス [Anne Schwanewilms]
 → コジマ (ワグナーの奥さんで、リストの娘です)
マグダレーネ(エヴァの乳母):ヴィープケ・レームクール [Wiebke Lehmkuhl]
 → ポーグナー家の女中

<合 唱> バイロイト祝祭合唱団
<管弦楽> バイロイト祝祭管弦楽団
<指 揮> フィリップ・ジョルダン [Philippe Jordan]
<演 出> バリー・コスキー [Barrie Kosky]

収録:2017年7月25日 バイロイト祝祭劇場(ドイツ)

*例えば「barrie kosky Die Meistersinger」等で検索すると情報が色々出てきますね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

R.シュトラウスの「英雄の生涯」を カラヤンBPOの3CD + シュトラウス本人指揮で聴き比べ

リヒャルト・シュトラウス(Richard Georg Strauss, 1864/6/11 - 1949/9/8) の代表作の一つで最後の交響詩『英雄の生涯, Ein Heldenleben (作品40)』ですね。

次週(2017年8月24日) ファビオ・ルイージ/読響のコンサートがあるので予習です。
➡︎[後日記] コンサートのインプレです

R.シュトラウスといえば、やっぱりカラヤン(Herbert von Karajan, 1908/4/5 - 1989/7/16)とベルリンフィル(BPO)。3CD出していますので聴き比べしましょう。そしてR.シュトラウス本人の指揮も残っていますので参考に。全て第2稿を採用しているのでラストは盛り上げです。(ルイージは第1稿を採用)

この曲は途切れ目がないのでポイントは以下ですね。
[1. 英雄] ➡︎ 木管楽器で [2. 英雄の敵] ➡︎ ヴァイオリン・ソロで [3. 英雄の伴侶] ➡︎ トランペットのファンファーレで [4. 英雄の戦場] ➡︎ 4.の英雄の凱旋の後が [5. 英雄の業績] ➡︎ 5.の最後一呼吸の"間"、その後全休止で [6. 英雄の隠遁と完成]



Karajan BPO / 1959
[DG]
「1.英雄」は見通しの良い演奏、vnのBPOコンマスのミシェル・シュヴァルベ(Michel Schwalbé)が感情移入と切れ味を見せる「3.英雄の伴侶」は、オケの英雄との会話が素晴らしいですね。「4.英雄の戦場」は抑え気味、「5.英雄の業績」ではR.シュトラウス自身の曲の引用をスケール大きく奏でます。「6.英雄の隠遁と完成」は叙情性が高い演奏です。
・・・・・
切れ味と表情豊かな流れがスマートな「英雄の生涯」で好きな演奏です。古い録音ですがリマスターで音質が良くなったのは嬉しいですね。
iTunesに入れてあるのはこの演奏ですから一番馴染みがあります。




Karajan BPO / 1974
[EMI]
「1.英雄」で音に華やかさが増しました。抑揚は抑え気味になりましたが重厚です。「2.英雄の敵」では木管のヒソヒソ話の様な音色がよりそれらしく、流れは陰影が強くなっています。「3.英雄の伴侶」のvnは同じくシュヴァルベですが控え目軽めで、オケの英雄もややフラットに感じます。(録音上の問題?) 「4.英雄の戦場」はアゴーギクを強くしてより切れ味と激しさを追求、その後の2パートも彫りの深さが増しました。
・・・・・
華やかで重厚に、「4.英雄の戦場」も激情的になってカラヤンらしい展開になりました。ですが「3.英雄の伴侶」のフラットさは残念、「6.英雄の隠遁と完成」が憂いから見晴らし良くなったのは迷う処ですね。



Karajan BPO / 1985
[DG]
「1.英雄」は より華やかで重厚に、「2.英雄の敵」では敵を密度高く、「3.英雄の伴侶」のヴァイオリンはBPOコンマスですがレオン・シュピーラー(Leon Spierer)になり、エモーショナルさを優先してオケ英雄とのバランスが良いですね。「4.英雄の戦場」「5.英雄の業績」も聴きごたえがあり、「6.英雄の隠遁と完成」では英雄の心を穏やかに描きます。
・・・・・
カラヤンの「英雄の生涯」完成形でしょうね。華やかさ・重厚・見通しの良さ、隙のない完成度にカラヤンらしさを感じるのは先入観?!



R.Strauss Bayerisches Staatsorchester / 1941
[DG]
R.シュトラウスが音楽監督(1894 - 1896)を務めたバイエルン国立管弦楽団との演奏です。このBox(Strauss Conducts Strauss, 7CDset)ですとドン・ファン、ドン・キホーテの他、ベートーベンの第5番や第7番・等で指揮者としても大活躍だったシュトラウスが楽しめますね。

「1.英雄」はモノラルながら出し入れの良い雄大さを感じ、「2.英雄の敵」は敵と英雄の不安さの対比を明確に感じます。「3.英雄の伴侶」のvnはプラチドゥス・モラーシェ(Placidus Morasch)で表現良くオケ英雄と絡みます。「4.英雄の戦場」「5.英雄の業績」録音音域の問題で迫力に欠けるの仕方ありませんが、キレのある演奏、一番気になった「6.英雄の隠遁と完成」の英雄の表現は "翳りはなく最後に静かな死を" の感じでした。
・・・・・
的確な表現と演奏のマッチングと流れが良く、聴き易い演奏です。もったいぶったタクトを剥がしてコアにした感じでしょう。なるほど、これが本人の「英雄の生涯」か!! といった感じです。
1941年録音としては音は良く、今から見れば当時の速さが再認識できる事ですね。(全てにおいて現在はスロー重厚化してのが事実ですね)






①オススメなら、最後のカラヤンBPO(1985年 DG)
②個人的好みは、最初のカラヤンBPO(1959年 DG)
一度は絶対聴いておきたい、シュトラウス本人指揮の演奏
という事になりますね。
^^

個人的には「3.英雄の伴侶」でのvnとオケの掛け合い、「6.英雄の隠遁と完成」の英雄の表現がポイントなのですが、さてルイージ/読響はどう楽しませてくれるでしょうか。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

デヴィッド・ローゼンブーム(David Rosenboom) ウイリアム・ウィナント(William Winant) の Zones of Influence を聴く

ニューロフィードバック(Neurofeedback)のアルゴリズムで知られる米現代音楽家 デヴィッド・ローゼンブーム(ローゼンボーンとも, David Rosenboom, 1947/9/9 - )は以前から紹介済みですね。

このブログのD.ローゼンブームの関連投稿記事

本アルバム(2CD, 2014年)は米パーカッショニストのウイリアム・ウィナント(William Winant, 1953- )と組んだ作品で、ローゼンブームがエレクトロニクスを担当したDuoになります。
W.ウィナントはジョン・ケージやジョン・ゾーン他、著名なミュージシャンとのコラボが多数ありますね。

全5曲で異なるパーカッション組合せと、異なるアルゴリズムで構成されています。"Touché" と呼ばれるコンピューターアシスト・パーカッションを使い、エレクトロニクスはそれに関連づけされる様になっているそうです。

Zones of Influence / David Rosenboom

CD(左), mp3(右) になりますね

Part I
The Winding Of A Spring
The Stochastic Part - The Tripartite Structure
ポリリズムに電子(楽器)音ですが、同期したりいろいろです。ただ、どこまでがパーカッション(computer assistedですが)なのか、どの音色がelectronicsなのか良くわかりません。ギザギザしたフリージャズっぽい感じです。そう感じるのはスネア音が強いからかもしれません。音階楽器音はジグザグ跳躍音で古い無調の音列配置風な気配です。

Part II
Closed Attracting Trajectories
Melody Set 1 - Melody Set 2
マリンバが主役になり、機能和声風の旋律やトリル・トレモロが存在し、それにオンド・マルトノの様な電子音が薄く被ります。Set2ではその代わりに音数が増え、心地良さからポリリズムにシフトします。空間音響系かな。

Part III
Given The Senses The Real Pregeometry

ハイテンポで細切れの無調のパッチワークみたいな曲で、色とりどりの音色が交錯します。

Part IV
Epigenesis, Ontogenesis, Phylogenesis, Parthenogenesis

胴の長い民族打楽器の様な音色が主役です。そこに空き缶の様な音階が等拍リズムの音列配置的に入ります。その組合せが妙で面白いですね。

Part V
The Buckling Of A Spring

やっと出て来たローゼンブームのノイズ系サウンドでカオスです。ウィ〜ン・グルグルル・ギュ〜ン的w そして第一トリオ(笑)でvnの様な音色がトリルで主役に現れて、それにキラキラ音が絡みます。そこから再びvnのグリッサンド主体のノイズ系カオスになり、最後は電子ノイズが飛び交いながら静まります。
Study For 'Zones'
オルガンのバロック音楽風で入る変わった形から、民族音楽風打楽器音とフュージョンのシンセサイザーの様な音色の音階の絡みに変わります。パートVの二曲は面白いですね。



米現代音楽と言ってもニューヨーク・ミニマルの様な音楽ではなく、エクスペリメンタリズムの前衛です。D.ロゼンブームは欧エクスペリメンタリズムとの直接的接点はありません。
エレクトロニクス(含む,コンピューターアシストの打楽器)技法的には面白いのでしょう。Part I, IIIは無調音列配置的サウンド感が強く古臭い感じです。Part II, IVは面白いですが、楽しさはラストのPart Vでしょうね。
いずれも後半に向けてサウンドが複雑化して行くD.ローゼンブームの構成です。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団 の マーラー交響曲第5番を聴く

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)のマーラー第五番新録音が先月発売になりましたね。手兵のバイエルン放送交響楽団(Bavarian Radio Symphony Orchestra)を振っています。

既発売*のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)と聴き比べしましょう。
*他にもバイエルンの自主制作盤?と非正規録音盤が存在します



まずはRCOとのライヴ、ヤンソンスは2004年から2015年まで首席指揮者を務めました。「マーラー交響曲第5番 160CD 聴き比べ」でインプレ済みですが、再度聴き直しです。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17
第一楽章・第二楽章
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲、第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せ、第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの展開です。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けます。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。
第三楽章
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れ、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。
・・・・・
スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。
全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
ラストのとって付けた酷いアプローズは何?!w





今回発売のバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)との昨年のライヴです。2003年から現在までヤンソンスが首席指揮者を務めており、ほぼ同時期にRCOと二つのビッグネイム・オケの首席指揮者を務めていた事になりますね。RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じません。

バイエルン放送交響楽団
[BR Klassiks] 2016-3/10,11
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。
第三楽章
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォはよりリズミカル、レントラーは美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。
・・・・・
RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…
根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者**で聴いています。
**J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでした。





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