Bang On A Can の Classics を聴く

このブログではお馴染みの米現代音楽の雄 Bang On A Can(以下BOAC)のちょっと古いアルバムです。演奏はもちろんBang On A Can All-Starsになりますね。

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と言う訳でmarathonの活動等々割愛ですね。ちなみに当時(2002年リリース)のメンバーは以下、懐かしい顔ぶれです。[ ]内は現行メンバー(2017/7)になります。
・Bass – Robert Black
・Cello – Maya Beiser [Ashley Bathgate]
・Clarinet, Bass Clarinet, Soprano Saxophone – Evan Ziporyn [Ken Thomson]
・Electric Guitar – Mark Stewart
・Percussion – Steven Schick [David Cossin]
・Piano, Keyboards – Lisa Moore [Vicky Chow]

Executive Producer – David Lang, Julia Wolfe, Kenny Savelson, Michael Gordon


Classics / Bang On A Can

1. Cheating, Lying, Stealing – David Lang
 モード系の米現代音楽で、基本はミニマルですね。東南アジアの打楽器の様な音色を生かしてそこに色付けをしています。ミニマル感は打楽器音で強調されています。途中で中間部の様な展開があり、後半は陶酔感が強まりますね。

2. Lick – Julia Wolfe
 一曲目の延長の様な打音から入りますが、パルス的な音楽です。主張性が強く強音パートは即興的ポリフォニーの凶暴さも感じます。ポストミニマルでジュリア・ウルフらしい音楽ですね。惹かれます!!

3. The Manufacture Of Tangled Ivory - Annie Gosfield
 N.Y.で活躍するアニー・ゴスフィールド(Annie Gosfield, 1960/9/11 - )はビデオやダンスも包括するインスタレーション系現代音楽家です。
微分音と特殊奏法のpfを主役にした前衛でミニマル感ない流れから入ります。途中から激しいアフリカン・モード的打楽器連打がミニマルの方向を見せたり引用的な旋律が出ます。二曲目とは激しさつながりの様な展開です。ここでも後半は陶酔系ですね。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

4. Tsmindao Ghmerto – Evan Ziporyn
 ジポリンらしくバスクラの技巧的モード旋律から入ります。その旋律をミニマル展開しながら美しい音色を聴かせるのはさすがです。他の曲にある後半盛り上げ型ではありません。この人がBOACから抜けたのは痛いと個人的に思っています。
 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

5. Red Shift – Lois V Vierk
 米女性現代音楽家ロイス・V・バーク(Lois V Vierk, 1951/8/4 - )は紹介済みですね。
電子音ノイズ系音楽な音色のグリッサンド・ドローンです。それこそがバークの音楽ですね。ボワ〜ンとした音世界から打楽器他の楽器が入り混んできてテンポのあるミニマルになり、音の厚みをグイグイ増します。

6. Amalia's Secret – Nick Didkovsky
 現代音楽家のニック・ディドコフスキーは、電子音楽を得意として'Doctor Nerve'のリードギタリストでもあります。
ベースのジャジーな反復にクラが即興系に答えて入り、そのリズムに他の楽器群がストイックに絡みながら前衛ジャズの様な音楽になります。後半は音数の少ないベースとピアノのデュオにエレキギターと打楽器が狂気の様な音で流れ込みます。ベースのテープ(事前録音)も使われている様です。

7. Industry – Michael Gordon
 透明感のある弦の音色が時間をかけてクレシェンドしながら歪み、クライマックスから他楽器が入り等拍パルスからノイズへ、ラストは興奮です。もちろんBOAC創設メンバーの一人でジュリア・ウルフの夫ですね。



今やビッグネームになったBOAC創設メンバーと他3人の米現代音楽家の作品集で、欧州エクスペリメンタリズムとは一線を画す米現代音楽、モードとミニマル、を味わえますね。
後半盛り上げ系の曲が多く見られるのは今と違う時代感を感じるかも知れません。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

ヘンツェ(Hans Werner Henze)のレクイエム(REQUIEM)を聴く

前衛系現代音楽好みとしては少々方向性が異なりますが、ここで何枚か紹介しているハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)のREQUIEMです。

レクイエムとは言え合唱パートは無く、一曲目こそ「入祭唱(Introitus)」ですが曲数は少なく最後は「聖なるかな(Sanctus)」で終わっています。

指揮:メッツマッハー(Ingo Metzmacher)
室内楽:アンサンブル・モデルン(Ensemble Modern)
ピアノ: ウエリ・ヴィゲット(Ueli Wiget), Ensemble ModernメンバーでZappaのYellow Sharkにも参加
トランペット:ホーカン・ヘルデンベルゲル(Håkan Hardenberger), 言わずと知れたソリストですね

1993年Ensemble Modern初演の前に、各楽章は個別初演されていて V, VIII, IXは1992年に東京でN響により初演されていますね。

REQUIEM / Hans Werner Henze

REQUIEM (1993年) Nine Sacred Concertos for Piano Solo, Trumpet Concertante and Chamber Orchestra
 I. Introitus: Requiem - Il. Dies Irae - Ill. Ave Verum - IV. Lux Aeterna - V. Rex Tremendae - Vl. Agnus Dei - Vll. Tuba Mirum- VIll. Lacrimosa - IX. Sanctus
ヘンツェの後期作品らしく静音とクラスターの交錯が主流で、その中に幽玄な旋律が見え隠れする無調の音楽です。(全体の構成も、各パートの構成も)
その中で「2.怒りの日(Dies iræ)」は暴力的なTpと管群、「4.死者ミサの聖体拝領唱(Lux æterna)」から「5.恐るべき御稜威の王(Rex tremendæ)」のpfとtpの切れ上がるスリル、「7.奇しきラッパの響き(Tuba mirum)」それらはいずれも室内楽を超えた迫力が感じられます。それに対して初曲と終曲は静的です。
無調の現代音楽でありながら聴きやすさを感じるのは、混沌ポリフォニーでなく旋律感のあるホモフォニー風(和声構築はないので"主+伴"的)だからでしょう、か。

試しにYouTubeで観てみる?
「2.怒りの日(Dies iræ)」になります




ミサを元にする宗教曲の色合いは、ありません。交響曲第9番の方が宗教傾向を感じましたね。その分、後期ヘンツェの現代音楽として聴かせ処も多く含まれて楽しめます。コンサートで聴くと最高でしょう。
ただ問題は、いつもの事ですが、宗教的に理解できない部分があると思っているので単純に音楽として楽しんでいいのかが難しいです。





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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2017年6月30日 大野和士/都響, アルディッティ弦楽四重奏団 at 東京オペラシティ ★★★

梅雨で天気が今ひとつの中、第835回 定期演奏会Bで初台へ行ってきました。

20170630TokyoOperaCity.jpg

今回のポイントは明確ですね。
1) 先週に続くアルディッティSQの日本初演
2) 昨年(2016年6月9日)の大野/都響で演奏した以下二曲の延長戦
 ・歌劇『ピーター・グライムズ』「4つの海の間奏曲」
 ・スクリャービン / 法悦の詩 交響曲第4番
 (前回は迫力パートの素晴らしさと引き換えに静音パートの情感不足を感じましたが)



ブリテン:パッサカリア 歌劇『ピーター・グライムズ』より Op.33b (1945年)
全体的に強音構成でしたね。
 『ピーター・グライムズ』Op.33 第2幕第2場への間奏曲ですね。前回の「4つの海の間奏曲」をOp.33a として、この二曲を作品番号にa,bで抜き出し管弦楽曲としてあります。
6-7分の小曲、ベース低音の上に現れる各楽器の旋律とクレッシェンド、そして沈黙へ。初めから明瞭な鳴りで始まり、ラストの静音でも、消え入る様な様子はありませんでした。


細川俊夫:フルス (FULSS, 河) ~弦楽四重奏とオーケストラのための(2014年)[日本初演]
細川さんらしい神経の様な細い線、そこに弦楽四重奏の脳神経の刺激ような切れ味が絡み、最後は同期して巨大生命の覚醒なごとく。素晴らしいですね。
 アルディッティQに献呈された弦楽四重奏曲「遠い小さな河」を元に、40周期年記念に再び献呈された弦楽四重奏協奏曲ですね。恥ずかしながらの初聴きです。
静音でロングトーン、ロングボウイングのオケにアルディッティのトリルやグリッサンドが刺激します。そのままオケも同調する様に技術的にもクレシェンドしながら進み、キレキレの弦楽四重奏のカデンッアへ。そして渾然一体となります。


スクリャービン:交響曲第3番「神聖な詩」 Op.43 (1904年)
大野和士さんのスタンスが曲にぴったり合った最高の演奏でしたね。派手さが生き、テンポ、拍子の作る流れも素晴らしかったです。
闘争」序奏のtb,tpが特徴的な雄叫びを上げたあと、明確な音色にテンポを上げピチカートをバックの第二主題を伸びやかに、展開部から再現部も派手さ中心に展開します。
官能の悦び」で緩やかな流れに一変すると、トリオでは管と弦の対比を迫力で見せて、穏やかな調べから収束します。
神聖な遊戯」へは全く切れ目無くつながり、跳ねるtpのリズム主題を生かしてテンポアップします。派手さを押し出しながら表情を変化させて壮大なコーダからラストはトゥッティは雄大です。大野さんはティンパニの連打を強く残しながらのトゥッティ2発で締めましたね。




まずはフルスでしたね。繊細さから渾然の一体感へ。アルディッティSQが先週よりも鋭い切れ味が光りました。細川さんが登壇したのも嬉しかったです。スクリャービンは事前に迫力のスヴェトラーノフと爽快なゲルギエフを聴いておきましたが、それらを上回る素晴らしい演奏でした。
一曲目は情景から行くともう少し陰鬱さが欲しい気がしましたが、それを差し引いても晴らしいコンサートに違いありませんね。




都響のページには、わかり易い各曲解説があります。


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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 160CD聴き比べ! [#11 / CD:151-160]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べも今回の10CDで160CD(含DVD/BD)まで来ました。まだありますね。
そのうち、indexでも作ろうかと思っています。^^ゞ

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ○:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.5 の聴き較べです (現在 #11回 160CDまで)
 #11:10CD 本投稿
 #10:10CD
 #9:15CD
 #8:15CD
 #7:10CD
 #6:14CD
 #5:5CD アバド追悼
 #4:20CD
 #3:25 26CD
 #2:20CD
 #1:15CD




★ シャイー / Royal Concertgebouw Orchestra
[Decca] 1997-10
 リッカルド・シャイー(Riccardo Chailly)が常任指揮者を勤めていた時代のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との演奏ですね。
 スローで重々しい葬送行進曲、第一トリオも激しさより重厚さの第一楽章。第二楽章第一・第二主題はコントラストを標準的に付けています。落ち着き払った第一部です。
第三楽章スケルツォは緩めですが、レントラーは優美です。第二トリオ以降も今ひとつ切れが感じられないのは主役のオブリガート・ホルンの音色と抜けがすっきりしないのもあるでしょう。ややもっそりとした第二部です。
アダージェットはスローですが甘美さは抑えられクールな良い流れです。最終楽章ロンド-フィナーレは途中で微妙な気配はありますがバランスの良い演奏を展開し、山場からコーダ・フィニッシュを迫力で乗り切ります。

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丁寧な演奏ですが何か吹っ切れないマーラー5です。個人的には演奏も含めて何かスカッとした感が欲しいところです。



シャイー / Gewandhausorchester Leipzig
[Accentus DVD] 2013-2/21,22
 2005年から2016年までカペルマイスター(音楽監督でいいでしょうね)を務めたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とのDVDになります。
 第一楽章葬送行進曲は少し抑えて、第一トリオ(第二主題)は標準的な変化を見せます。アタッカで入った第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題はやや速めながらマイルドでクセのない主流派の第一部です。
第三楽章スケルツォ主題はリズムカルに、そしてレントラーの優美さへ繋ぐ流れの良さ。第三主題はオブリガートホルンと弦楽器のバランス良く、続く展開部と再現部の心地よさ、シャイーらしさが発揮された第二部と思います。
心持ち速めで甘美さを避け、澄んだ美しさのアダージェットは良いですね。最終楽章も提示部でフーガ的良い流れをうまく作り、展開部・再現部の山場、そしてコーダ・フィニッシュを冷静に仕留めます。(シャイーはプレストを生かすためにラストのアッチェレランドを否定していますね)

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音の揃いも良く、クセの少ないマーラー5ですね。人気のシャイーで映像付き、失敗のない選択肢です。
このセットで2014年に来日、マーラー第7番でしたが良かったですね。



スラドコフスキー / Tatarstan National Symphony Orchestra
[Melodiya] 2016
 ロシア人指揮者アレクサンドル・スラドコフスキー(Alexander Sladkovsky)が首席指揮者・芸術監督を務めるタタルスタン国立交響楽団を振った演奏ですね。
7CDsetで、マーラーの1, 5, 9番をコンドラシンとの聴き比べBOXです。コンドラシンの第5番がモスクワ・フィルになっていますが間違いで、ロシア国立交響楽団が正解です。(by Kaplan Foundation)
 第一楽章序奏ファンファーレから揺さぶります。スローな葬送行進曲、第一・第二トリオはやや速めで揺さぶりますね。第二楽章第一主題は速め、第二主題は標準的に、展開部以降も同じです。
第三楽章スケルツォ主題はリズム良く、レントラーは優美で両者クセはありませんね。第三主題以降もクセは少なめ、ただ摑みどころが弱く感じますが。
第四楽章は当然スローでかつ微妙〜な揺らぎ、しっくりきませんねぇ。第五楽章は一番クセがありませんね。

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スローか速めか標準的か。はたまた揺さぶりは? 何がやりたいのメインかよくわからないマーラー5です。



ソン・シーヨン / Gyeonggi Philharmonic Orchestra
[DECCA] 2016-6/9
 韓国人女性指揮者 Shiyeon Sung が首席指揮者を務める京畿道立オーケストラを振った演奏です。
 第一楽章は派手なファンファーレから緩い葬送行進曲へ、第二主題(第一トリオ)はクセはなく第三トリオからの静的収束は尻切れトンボ感が残ります。第二楽章では第一主題は適度な激しさ、第二主題以降は緩さが支配します。緩さが気になる第一部です。
第三楽章スケルツォ主題はスローで優美、レントラー風主題は超緩です。第三主題以降も緩さのアゴーギクが間延び感を強めユルユルの第二部です。
第四楽章アダージェットは染み入る様な美しさですが、圧倒的静音スロー強調でやりすぎですw 第五楽章は軽快さで主題をからめて上げていきます。途中間延び感は残りますが、展開部山場を経て再現部は締まりを見せてコーダは華々しく、ラストは適度なアッチェレランドです。

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静音スロー大重視、強烈な間延び感のマーラー5です。



☆ ワールト / Netherlands Radio Philharmonic
[RCA] 1992-10/17


(個人的所有は下の全集になりますね)
mahler-EdoDeWaart.jpg
 オランダ人指揮者エド・デ・ワールト(Edo de Waart)がオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めていた時のマーラー・チクルスからの演奏です。
 第一楽章は遅めながら締まりある葬送行進曲から一転第一トリオ(第二主題)で派手にと、緩急があります。第二楽章は強い第一主題と落ち着いた第二主題でソナタを構成しますが、激しさより落ち着いた印象の第一部です。
第三楽章は重厚なスケルツォ主題から優美なレントラーへ、展開部・再現部・コーダともコントラスト良く気持ちの良い第二部です。
第四楽章アダージェットは僅かなアゴーギクを使い澄んだ音色の好きなパターンです。最終楽章は見晴らし良く両主題をフーガ風展開して展開部の山場は適度に、そして再現部の山場を大きく盛り上げてコーダのコラールに繋げます。ラストはアッチェレランドでビシッと締めます。

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ワールトらしくスローの美しさと迫力が好バランスのマーラー5です。いいですよね



エッシェンバッハ / North German RSO
[ELS] 2001-1/12

 ピアニストにして指揮者、クリストフ・エッシェンバッハ(Christoph Eschenbach)が北ドイツ放送交響楽団の首席指揮者を務めていた時の演奏です。残念ながら非正規盤ですが、他に正規録音CDを2枚出しています。(未所有)
 第一楽章スローな第一主題の強音は暴れます。第二主題(第一トリオ)は適度にテンポアップですが、ここでも少々荒れる気配を見せて面白いです。第二楽章第一主題は荒々しく一転美しく第二主題へ繋げて、全体としては荒れる強音とスローのコントラストの第一部です。
第三楽章スケルツォはそれらしく流れ良く、レントラーも優美で心地よいです。展開部・再現部も緩急で表情豊か、見晴らしの良い第二部ですね。コーダからフィニッシュはシャープです。
アダージェットは12'と長め、アゴーギクが振られて緩急強めですが悪くありません。第五楽章はテンポ速く主題を絡ませて展開部山場は荒れ気味に、そして壮大に再現部山場を築きます。ラストはそのままコーダからフィニッシュへ駆け上がります。

・・・・・
スローパートはともかく、緩急と荒れる強音パートが楽しいマーラー5です。DDDstereoとある通り非正規録音としては音もいいですね。



シップウェイ / Royal Philharmonic Orchestre
[RPM] 1996

所有盤とは異なりますが、同録音かと...(Kaplan Foudationにより録音は1996年一回)
 フランク・シップウェイ(Frank Shipway)がロイヤル・フィルハーモニー管を振った英国セットの演奏です。
 派手さと陰鬱さの第一楽章葬送行進曲、華々しい第二主題と目一杯鳴らします。第二楽章も派手な第一主題からソフトな第二主題へと目まぐるしさの第一部です。
第三楽章は華やかすぎるスケルツォから静的に引いたレントラー、このコントラストが全体を通していますがそれ以外の変化に乏しく長く感じます。ラストは激走ですがw
第四楽章はスローで冷たさを感じる美しい流れですが、強音パートの響きは大きすぎ。第五楽章は二つの主題がシャープな音色で上げていき、自然な流れで展開部山場を迎えます。再現部山場からラストまでは派手で華々しいです。

・・・・・
20bit録音32bit編集を売りにしてます。それだけでなくミキシング・マスタリングでの作意が大きく反映されていますね。
派手でキラキラ、不自然さが個人的には気になるマーラー5です。




P.ヤルヴィ / Frankfurt Radio Symphony Orchestra
[major BD] 2011-6/25,26
 当時首席指揮者だったパーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvi)がフランクフルト放送交響楽団(現:hr交響楽団, hr-Sinfonieorchester)を振った演奏です。所有はBD(第6番とカップリング)で、DVDもありますがCD発売がありませんね。
 落ち着いた葬送行進曲で始まる第一楽章、第二主題(第一トリオ)もテンポアップはしますが攻撃的ではなく、第二トリオも殊更に落としません。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題は丁寧さを感じます。展開部のチェロパートは美しく、通して興奮よりも耽美な第一部ですね。
第三楽章、スケルツォはスローで入り、レントラー主題も入りはスローでまさに優美です。第二トリオもスローで美しく、*オブリガート・ホルンは指揮者横の起立演奏でソロの扱いです。厄介なこの楽章をうまくこなして、流麗な第二部ですね。
アダージェットは暖色系の流れですね。もうちょっと薄く細く演奏してもらえると嬉しかったですね。最終楽章はうまく間をとった入りで緩やかに上げていきます。展開部山場を広がり良く盛り上げて、再現部の山場からコーダは雄大で見事。ラストのアッチェレランドもビシッと決めました。
*オブリガートホルンをソロ風にコンマスの横に置いたのはメンゲルベルクが実施したわけですが着座でしたね。

・・・・・
hr響の演奏も丁寧でまとまりが素晴らしく、流れの美しいマーラー5です。アダージェットが好みなら☆です。BDの録音の良さもあるでしょう。



☆ ネルソンス / Lucerne Festival Orchestra
[accentus DVD] 2015-8/19,20

(所有はDVDサイズのデジパック仕様ですが...)
 ラトビア人指揮者アンドリス・ネルソンス(Andris Nelsons)がアバドの後を引き継いたルツェルン祝祭管弦楽団の音楽監督時代の演奏ですね。所有はDVDでCDは出ていない様です。
 第一楽章ファンファーレから第一主題へは大きく落とします。憂いを帯びた葬送行進曲から第一トリオへはテンポと切れ味を上げた展開になりますね。第二楽章は第一主題の激しさに始まり第二主題ではトーンを落として展開部・再現部も癖のない流れでコーダ前の雄大感が良いですね。
第三楽章スケルツォ主題は優美、レントラーは美しさが溢れますね。第三主題オブリガート・ホルンの鳴りも良く、優しを感じる提示部です。展開部もスローを美しく描きます。コーダの切れ味とのコントラストも見事です。
第四楽章は、それまでの良さを最大限生かした流れで山場の甘美さも殺し透明感の静音をクールに奏でます。屈指のアダージェット、好きなパターンです。第五楽章も序奏・第一主題・第二主題が優美に流れます。その後の二つの山場を見事に超えて、コーダは切れ味、そしてラストは見事なアッチェレランドでした。

拍手喝采、最後はスタンディングオベーションで、指揮者への拍手では演奏者は起立を譲り足踏みで答えるという最高のコンサートの姿がありました。(DVD/BDでapplauseを最後まで見たのは初めてですw)
・・・・・
スロー静音の美しさを生かし、激しさよりも憂いと優美、広がりを感じる一味違うマーラー5番ですね。演奏もまとまりが良く、おすすめの一枚。ネルソンス侮れず!
BD盤もあります。えっ、高いですねぇ。



スターン / Rundfunk Sinfonieorchester Saarbrücken
[SR] 1997-7/12

(所有はCDですが…)
 米人指揮者マイケル・スターン(Michael Stern)が*ザールブリュッケン放送交響楽団の首席指揮者に就任して1年後の演奏ですね。*現 ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団(Deutsche Radio Philharmonie Saarbrücken Kaiserslautern)
 第一楽章葬送行進曲は落ち着いて、第二主題(第一トリオ)では適度な激しさ、第三主題からトーンを強めに落とします。第二楽章は速めな第一主題から、第二主題も陰鬱ながら速めに変化させます。基本速めの中、特徴的なのは展開部のトリオ?の静音スローですね。ややアゴーギクにクセのある第一部です。
第三楽章第一主題はスケルツォらしさ、第二主題レントラーも優美ですが、いずれ速めです。その後も同展開で、時折静音パートでスローになります。落ち着かない感の第二部ですね。
第四楽章は予想通りにスロー、あっさり風味は良いのですがフラットです。最終楽章は良いリズムで主題をフーガで絡めます。山場、コーダは見事。この楽章が一番クセがありません。

・・・・・
速めベースで一部静音ではスロー、落ち着かないマーラー5です。ここまで感情を殺したアダージェットも珍しいかも。



次はいよいよ残しておいた、ワルターやメンゲルベルク(アダージェットのみCDあり)と言ったマーラーを知っている人、米国にマーラーを紹介しバーンスタインにバトンタッチしたミトロプーロスと言った古い音源のインプレをしようと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

2017年6月24日 アルディッティ弦楽四重奏団 at 東京文化会館 小ホール ★★

今回のアルディッティ弦楽四重奏団(Arditti Quartet)来日、本当は6月17日(土)のラッヘンマンとの公演に行きたかったのですが水戸で都合がつかず、今日と来週の都響との共演の二回です。

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現メンバーは以下。もちろん創設メンバーはアーヴィン・アルディッティご本人のみですが、それでも最後にルーカス・フェルズが2006年に加わってから11年目になるんですね。

・アーヴィン・アルディッティ(Irvine Arditti), The 1st Violin
・アショット・サルキシャン(Ashot Sarkissjan), The 2nd Violin
・ラルフ・エーラーズ(Ralf Ehlers), Viola
・ルーカス・フェルズ(Lucas Fels), Cello

アルディッティ弦楽四重奏団来日2017年

当初二曲目予定だった西村さんの初演作品がラストになりましたね。
ご本人が最後に登壇した事もあるでしょうが、結果的に曲構成でも良かったのは。

ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調, Ravel : String Quartet in F major
 意表を付く選曲を一曲目に持ってきたので驚きです。静的な美しさを主としたイメージはおおよそ似つかわしてくない曲ですよね。
そんな中、予想通り最終楽章の激しさが売り物でしたね。キレキレの中にエモーショナルさも生きて良かったです。
でも、三楽章まではちょっと??でした。特徴的な第一楽章の美しい流れは速めで、ラベルらしさ感じられませんでした。全体としては、やっぱりこの曲を入れた意図が個人的にはくめませんでしたね。

細川俊夫:沈黙の花, Toshio Hosokawa : Silent Flowers
 今回一番聴きたかったのはアルディッティが1998年初演しCD(インプレ済みです)にも残している、静寂の中に刃物のような先鋭な弦音が飛び交うこの曲ですね。
切り裂く様なボウイングそしてピチカート、超静音のグリッサンドと間はCDとは一味違いました。アルディッティSQが創り出す緊張感と一体感はライヴならではの素晴らしさでしたね。

バルトーク:弦楽四重奏曲第6番, Bartók : String Quartet No.6 Sz.114
 一つの主題Mestoが各序奏に存在し、それを軸にするこの曲。アルディッティSQらしさを二・三楽章の序奏後の展開に期待しましたが、そうでもありませんでした。激しさと切れ味は薄く、予習イメージのハーゲンSQを超えられませんでした。
Mesto主題が主部となる第四楽章の幽幻さも取り立てての特徴は感じられませんでしたね。

西村朗:弦楽四重奏曲第6番「朱雀」(2017/世界初演)Akira Nishimura : String Quartet No.6 "Suzaku - The vermilion Bird"
 二楽章形式 [I. 鬼(Ghost)と星(Stars) - II. 火(Fire)と翼(Wings)] で、東洋の夏とその象徴の古代中国の朱雀(Suzaku)をモチーフにしているそうです。朱雀の持つ四つのイメージを楽章に配しているとのことですね。
これが一番の聴かせどころになりました。高速のトリルとグリッサンドが支配するまさに前衛現代音楽のノイズ系?弦楽四重奏でしたね。
もちろん機能和声的な旋律は存在しませんから「朱雀の飛翔の音列主題」(D-B-E-H-F-Ges-C-A-As-G-Cis-Dis)もその中に現れます。
技巧性が強く、一塊となったアルディッティSQのみごとさが活かされて朱雀の飛翔を感じる素晴らしい演奏でした。



前衛超絶系の現代音楽と古い弦楽四重奏曲のコンビネーション。圧倒的に良かったのは現代音楽二曲でした。
とはいえ、近年言われている通り鋭い尖りからやや円熟の域の味わいになって来ているのは実感します。そしてエモーショナルな古い曲の選択。アルディッティSQに円熟を期待したくないなぁと思ったコンサートでしたね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

B.A.ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)の un petit rien - das gelb und das grün - omnia tempus habent - metamorphose を聴く

10枚ほどインプレしたベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)ですが、まだ面白いアルバムが一枚残っていました。
中後期のアンサンブル作品集で、指揮はペーター・ヒルシュ(Peter Hirsch)、コレギウム・ノヴム・チューリヒ(Zürich Collegium Novum)の演奏です。

un petit rien - das gelb und das grün - omnia tempus habent - metamorphose / Bernd Alois Zimmermann

Un Petit Rien (1964年) musique légère, lunaire et ornithologique d'après de marcel aymé
 1. Ouverture Des Belles De La Nuit - 2. Métamorphose Lunaire I - 3. Pas Trop Militaire - 4. Petite Valse Lunaire - 5. Berceuse Des Petits Oiseaux Qui Ne Peuvent Pas S'endormir - 6. Métamorphose Lunaire II - 7. Boogie-Woogie Au Claire De Lune
セリエル以降、作風が多様性になってからの作品ですね。フランス人作家マルセル・エイメ(Marcel Aymé)の Les oiseaux de lune (月の鳥) にちなんで作られた6分半(7parts)の小曲です。
まるでおとぎ話の音楽の様で、調性感の中にキラキラとした煌めきがある曲です。ツィンマーマンとしてはとても不思議な楽風です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Das Gelb Und Das Grün (1952年) musik zu einem puppentheater von fred schneckenburger
 1. Prolog - 2. Burleske - 3. Kleiner Walzer - 4. Phantasmagorie - 5. Marsch - 6. Epilog
副題の通り人形劇場のための6parts9分の短い曲です。十二音技法・セリエル時代の楽曲で、その色合いが強いのですが、点描音列配置の背面に弦楽の揺らぎが配されます。それが情景描写的になり、劇音楽を感じさせてくれますね。パート毎に表情変化も豊かで、純粋なセリエル主義者から見たら異端だった事がわかりますね。今の時代のセリエルベース現代音楽としたら十分面白いのですが…

Omnia Tempus Habent (1957年) kantate für sopran-solo und 17 instrumente
ソプラノ声楽曲です。楽器編成はやや多いですが、多分に "月に憑かれたピエロ" の影響・類型を感じます。目新しさは感じられませんね。

Metamorphose (1954年) musik zum gleichnamigen film von michael wolgensinger für kleines orchester
 1. Introduktion (Vision) - 2. Invention (Reflexe) - 3. Romanza (Kontakt) - 4. Kanon (Largo) - 5. Habanera (Paso) - 6. Gigue (Burleske)
副題から、スイス人映像作家?ミヒャエル・ヴォルゲンジンガー(michael wolgensinger)の為のフィルム・ミュージックです。
これまた十二音技法・セリエル時代ですが、処々ジャズ風のサウンドが強く感じられる映画音楽です。確かに点描的ですが、動機の組合せのメロディーラインが感じられますね。ここでもシーン毎の表情変化が強いです。partVではボレロの引用の様な感じも聴き取れますが、これは先入観?w



三曲目以外、とても興味深い音楽が並びましたね。それぞれ、おとぎ話・劇音楽・フィルム音楽、という標題音楽になり、当時のセリエル系絶対音楽の印象と真っ向対比的です。まさにこれがB.A.ツィンマーマン!!
この折衷的、今なら多様性主義、な前衛が本人を苦しめたのかもしれません。興味の尽きないアルバムです。




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ジャンル : 音楽

Bernd Alois Zimmermann und das symphonische Spätwerk を聴いて、B.A.ツィンマーマンをちょっと振り返ってみましょう

今回続けてインプレの引金になったベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)の先月発売のアルバムになります。

このアルバムを含めてインプレは10CDになりますね。
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楽曲よりもドキュメントがメインの3CDsetです。(右ページは英文です)
BerndAloisZimmermann-LateSymphonicWorks.jpg
収録は次の通り。
 ・後期管弦楽3曲
 ・B.A.ツィンマーマン本人の語り
 ・最後の弟子ヨーク・ヘラー(York Höller)のインタビュー
 ・作家エルケ・ハイデンライヒ(Elke Heidenreich, 1943/2/15 - )による朗読*
  *Steady on the musical tightrope above the existential abyss (実存の深みの上を渡る音楽的"綱渡り"の安定性) これはツィンマーマンの「ユビュ王」に付いて語られた"おとぎ話"だそうです。関連してライナーノートにはシュトックハウゼンとの確執に付いてBlack Humourとしてハイデンライヒによる興味深い説明も付いていますね。それだけでも十分に面白いです。

という事で、インプレは後期管弦楽の3曲についてになります。(作品としては既出ですがw)
演奏は、B.A.ツィンマーマンを得意とする指揮者ベルンハルト・コンタルスキー(Bernhard Kontarsky)、シュトゥットガルト放送交響楽団(Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR)です。

Late Symphonic Works / Bernd Alois Zimmermann

Concerto pour violoncelle et orchestre en forme de pas de trois (1965/1966年)
パ・ド・トロワの様式によるチェロとオーケストラのための協奏曲」は最も多く録音されている代表作で、このブログでも指揮者ブールツェンダーギーレンと既に3CD紹介済みですね。
part1は弦のトリルやグリッサンドの静的幽幻さ、part2は音圧が上がり即興性やジャズの様なリズム変化も加わりポリフォニカルです。part3は幻想的な弦楽器ですが、音数は増えています。part4は重厚で一つの動機を変奏展開し、part5では幻想的にpart1が回帰してから旋律(sop.sax?)が生まれて音数の少ない空間音楽から混沌です。
もちろん弦はチェロが主役です。他の三者の演奏の印象より静的パートの幽幻さを生かした感じです。(一度聴き比べをしないといけませんねw)

Musique pour les soupers du Roi Ubu (Ballet noir) (1966年)
ユビュ王晩餐の音楽」も数回目のインプレですが、とにかく引用のコラージュです。
主な引用作品だけでも、展覧会の絵 プロムナード(ムソルグスキー)、トリスタンとイゾルデ(ワーグナー)、ピアノ・ソナタ 第18番 作品31-3(ベートーベン)、兵士たち(B.A.ツィンマーマン)、解放の歌(ダッラピッコラ)、ラデツキー行進曲(ヨハン・シュトラウス)、田園(ベートーベン)、ブランデンブルク協奏曲(バッハ)、ニュルンベルクのマイスタージンガー(ワーグナー)、カルメン(ビゼー)、軍隊行進曲(シューベルト)、ダンバートン・オークス(ストラヴィンスキー)、交響曲第9番スケルツォ(ベートーヴェン)、ジークフリート牧歌(ワグナー)、ラストは等拍パルスにワルキューレ(ワーグナー)で強烈・カオス的に盛上げます。

Stille und Umkehr - Orchesterskizzen (1970年)
「静止と反転」は歿年3-4月にケルン大学病院入院中に作られた最後の管弦楽作品です。Dの連続音に他の楽器がパッセージの様に音色を絡ませます。インテルコムニカツィオーネ(1967年)やフォトプトーシス(1968年)の進化系で、静止した連続音と空間の音楽ですね。最後まで表情変化はありません。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  他二曲は過去インプレで紹介済みです




ちょっと乱暴に括るとB.A.ツィンマーマンのスタイルは次のようでしょう。
・1940年代:新古典主義の時代
・1950年代:セリエルの時代 素直なセリエルとは限りませんがw
・1960年代:多様性の時代 (コラージュと時空の音楽)

もちろん最高なのは1965年以降、最後の1970年までです。
長い作品二点は最高。
兵士たち(Die Soldaten) (1965年)
ある若き詩人のためのレクイエム (1969年)

個性的な後期の作風なら
・パ・ド・トロワの様式によるチェロとオーケストラのための協奏曲 (1966年)
・ユビュ王晩餐の音楽 (1966年)
・フォトプトーシス (1968年)
になります。

というわけで、本アルバムはドキュメントも含めておすすめです!!




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B.A.ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)の Complete Works for Piano Solo を聴く

連続インプレ中のベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)、初期からセリエルまでのピアノ・ソロ全曲集ですね。

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作風の変化を見ると、初期は新古典主義(Neo-classical)時代、そして無調・十二音技法・セリエルの流れに対応した中期、ツィンマーマンらしさ全開のコラージュと時空を迎える後期となります。残念ながら無伴奏ピアノ曲の後期作品はありません。

嬉しいのは年代順になっている事ですね。ピアノは現代音楽を得意とするアンドレアス・スコウラス(Andreas Skouras)です。
例によって小曲の集まりですので、パート毎の演奏時間を入れてあります。

Complete Works for Piano Solo / Bernd Alois Zimmermann

Extemporale, Five Pieces For Piano (1939-46年)
 No.1 Sarabande [3:13] - No.2 Invention [1:11] - No.3 Siciliano [3:08] - No.4 Bolero [3:25] - No.5 Finale [1:55]
21歳から28歳の最も初期の作品です。美しいSarabandeやミステリアスなBoleroを始めパート毎に表情豊か、機能和声をベースに不協和音の挟まれる流れです。特異性はさほどでありませんが、ボレロでは早くもラベルの引用があります。

Drei Frühe Klavierstücke, Three Early Piano Pieces (1940年)
 No.1 Scherzettino [2:58] - No.2 Intermezzo [2:52] - No.3 Fugato [2:22]
ここでは不協和音も少なく、ラベルやドビュッシーを思わせる曲調が印象的です。38/39年にケルン音楽大学でのセミナーによる秀作的意味合いが強そうですね。

Capriccio, Improvisations On Folk Song Themes (1946年)
 [10:08]
基本的な流れは変わらず、仏印象派の様な楽風が感じらる美しさです。特徴的なのは副題通り変奏と引用?が用いられている事でしょう。特に後半は、後のスタイルを見せる様に引用と共に強弱の出し入れがあります。面白いです。
一曲(1パート)で10'を超えるのはこの曲だけですね。

Enchiridion I, Little Pieces For Piano (1949年)
 No.1 Introduktion [1:53] - No.2 Ekloge [2:59] - No.3 Rondino [0:48] - No.4 Bourrée [0:49] - No.5 Meditation [3:19] - No.6 Aria [1:10] - No.7 Estampida [1:10] - No.8 Toccata [1:21]
このあたりから表情が変わります。点描音列配置を感じさせ、今聴くと没個性の前衛現代音楽に聞こえてしまいます。形式的にはneo-Baroqueを標榜しているそうです。また、表題はギリシャ語でmanualの事だそうです。

Enchiridion II, Exerzitien (1952年)
 No.1 Vigil [2:09] - No.2 Hora [1:42] - No.3 Ostinato [1:07] - No.4 Matutin [2:30] - No.5 Imagination [2:06]
音の強弱、出し入れが強くなります。美しい旋律は存在しません。強打鍵音と響き、走るアルペジオ、そして音数を減らした点描。時代を感じますが "I" よりは面白いですね。

Enchiridion Anhang, Appendix
 Intermezzo [1:29] - L’après-midi D’un Puck [0:43] - Hommage à Johann Strauß [0:42]
点描音列配置が濃厚になります。パートにより強弱のコントラスト、多少なりと旋律感がある気はしますが...
Hommage à Johann Straußでは引用が聴けます。

Konfigurationen, Eight Pieces For Piano (1956年)
 No.1 [0:57] - No.2 [0:57] - No.3 [0:37] - No.4 [0:29] - No.5 [1:09] - No.6 [1:11] - No.7 [0:43] - No.8 [1:01]
この曲は音価と強度を記すセリエルの楽譜で書かれているそうです。点描で音の飛躍、つまらないですよねぇ。この後1960年代に入って楽風がブレークするわけですが...



まずはツィンマーマンのピアノ・ソロが全曲で時系列的に変化が楽しめるのが嬉しいですね。
特に新古典主義からセリエルの時代変遷がよくわかります。そしてツィンマーマンが早くからインプロビゼーションやオマージュで引用を採用し、強弱のコントラストを付けていた事を今更ながら再発見でしょうか。





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B.A.ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)の Music for Violoncello and Piano を聴く

続いてのベルント・アロイス・ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann, 1918/3/20 - 1970/8/10)は、チェロとピアノの各ソロとのデュオ作品集ですね。

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初中期のピアノ曲とセリエルのチェロ曲、そして後期の多様性時代のデュオとチェロ曲とバラエティに富みますね。
演奏は、Cello – Michael Bach、Piano – Bernhard Wambach になります。

Music for Violoncello and Piano / Bernd Alois Zimmermann

Enchiridion (1949/52年) - Small Pieces For Piano
新古典主義からセリエルに入る時代の作品です。13の小曲で2部構成になります。単なるエチュード(練習曲)でもハウスミュージックでもないとライナーノートにあります。表題はギリシャ語でhandbookの事だそうです。
強音の技巧的パートから静音で音数の少ないパートまであります。確かにエチュード的な感がありますが、気になるのは第1部のドビュッシーの様な気配の中に散見する点描的音列配置でしょうか。第2部の方が俄然面白く、強音と静止の様相は後期のスタイルを思わせますね。
次回インプレ予定の"Complete Works for Piano Solo"で、この曲も含めてピアノ・ソロ曲の変遷を時系列的に紹介しますね。

Sonata For Cello Solo (1960年)
セリエル時代の作品ですね。無表情の印象が強いセリエルとは違い、出し入れのコントラストが強いです。チェロの技巧的な面も見せどころでコンサートで聴きたいですね。ブルネロあたりがやってくれると嬉しいのですがw

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  アンサンブル・アンテルコンタンポラン(Ensemble Intercontemporain)のオフィシャルYouTube。チェロはフランス人チェリストの現代音楽家ピエール・ストローク(Pierre Strauch)です。

Four Short Studies For Cello Solo (1970年)
亡くなった年の作品になります。2'40"の小曲ですが、強引さと静的な間との組合せでこの時期のツィンマーマンを凝縮した様なチェロ曲です。これもアンコールでやってくれたら嬉しいですね、そんな曲です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  モーリーン・ケリー(Maureen Kelly)です


Intercomunicazione Per Violoncello E Pianoforte (1967年)
一つの音を、基音Eで、を延々とチェロが弾き伸ばします。ピアノがそこへアルペジオでうろちょろ動き回ります。中盤では逆転してピアノの打鍵残響音にチェロが絡み、ボリュームが上がります。後半は空の中にvcとpfの音を散らばす様な そして時に強音で対話な様な、間と音の空間です。
翌年作られる管弦楽の代表作Photoptosisと類型のデュオ曲でしょう。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  チェロはツィンマーマンを得意としたジークフリート・パルム(Siegfried Palm), ピアノはコンタルスキー兄弟の兄アロイス(Aloys Kontarsky) です。一番下の弟ベルンハルト・コンタルスキー(Bernhard Kontarsky)は指揮者でB.A.ツィンマーマンを得意としていますね。




どうしても大規模ユニットの音楽がツィンマーマンらしさを感じるのですが、チェロやピアノの後期作品には惹かれるものがありますね。



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ザルツブルク復活祭音楽祭2017 楽劇「ワルキューレ」を NHKプレミアムシアターで観る

7月の「ザルツブルク音楽祭」より前、4月に行われる「ザルツブルクイースター音楽祭 (Die Salzburger Osterfestspiele)」は、1967年にカラヤン(Herbert von Karajan, 1908/4/5 - 1989/7/16) によって設立され50周年を迎えましたね。
今回の「ワルキューレ (Die Walküre)」は、カラヤンが自ら演出も行った そのザルツブルク復活祭(イースター)音楽祭1967年公演の再演出ですね。

今更のワーグナーの"指輪"ワルキューレに関しては案内は不要でしょうね。4時間近くかかりますが、豪華な主役陣を楽しみましょう。

SalzburgerOsterfestspiele2017-Walküre

はどこまでがカラヤンの再現で、ネミロヴァのオリジナリティが生かされたのかはわかりません。でも近年にはない時代を感じたのは衣装を含めてアヴァンギャルドさが低い事かもしれません。
今のバイロイトとはやっぱり違いますね。

台・は、トネリコの木を模した第一場やリングの第二・三場等、基本はオリジナルベースですが、バックに投影した手書きの絵は現代の技術に置き換えられているそうです。
衣装も今の時代の演出のようにスーツ姿やアヴァンギャルドさはありませんね。

、男性陣ではヴォータンのコワリョフはハマリ役の出来でしたね。お馴染みツェッペンフェルトのバスはバリトンよりで、重厚な役よりもフンディングの様な地味な役が合いますね。ジークムントのザイフェルトは演技・歌唱共に魅せてくれました。(体型と動きのモッサリ感は…w)
女性陣では、アニヤ・カンペは役得のブリュンヒルデを演じましたが、同じアニヤでもハルテロス演じるジークリンデの素晴らしさが光りました。名脇役?クリスタ・マイヤーも流石で、キーとなるヴォータンの妻フリッカを楽しませてくれましたね。

はもちろん注目のティーレマン。今やバイロイト音楽祭を牛耳り、ワーグナー振りの第一人者ですからねぇ。4管編成・弦5部16型で、ティーレマンの指揮は陰影強いディナーミクが感じられました。きっと生の舞台では凄かった事と思います。



全体としては、第三幕ブリュンヒルデとヴォータンのシーンは今ひとつだったかもしれませんが、いつ観ても楽しいワルキューレですね。ただ、ワグナーの楽劇は個人的にはアヴァンギャルド傾向が好みなので、目新しい刺激に欠け旧態さを感じてしまいました。
とは言え自宅で今年のザルツブルクイースター音楽祭「ワルキューレ」が観られるなんて素晴らしい事です。



<出 演>
 ジークムント : ペーター・ザイフェルト [Peter Seiffert]
 フンディング : ゲオルク・ツェッペンフェルト [Georg Zeppenfeld]
 ジークリンデ : アニヤ・ハルテロス [Anja Harteros ]
 ブリュンヒルデ : アニヤ・カンペ [Anja Kampe]
 ヴォータン:ヴィタリー・コワリョフ [Vitalij Kowaljow]
 フリッカ:クリスタ・マイヤー [Christa Mayer]
  ゲルヒルデ:ヨハンナ・ヴィンケル [Johanna Winkel]
  オルトリンデ:ブリット=トーネ・ミュラーツ [Brit-Tone Müllertz]
  ヴァルトラウテ:クリスティーナ・ボック [Christina Bock]
  シュヴェルトライテ:カタリーナ・マギエラ [Katharina Magiera]
  ヘルムヴィーゲ:アレクサンドラ・ペーターザマー [Alexandra Petersamer]
  ジーグルーネ:ステパンカ・プカルコヴァ [Stepanka Pucalkova]
  グリムゲルデ:カトリン・ヴントザム [Katrin Wundsam]
  ロスヴァイセ:ジモーネ・シュレーダー [Simone Schröder]


<管弦楽> ドレスデン国立管弦楽団 [Staatskapelle Dresden]
<指 揮> クリスティアン・ティーレマン [Christian Thielemann]

<演 出> ヴェラ・ネミロヴァ [Vera Nemirova]
<舞台美術> ギュンター・シュナイダー=ジームセン [Günther Schneider-Siemssen]
<舞台再構築> ジェンス・キリアン [Jens Kilian] 1967年の舞台再現者

収録:2017年4月5,8日 ザルツブルク祝祭大劇場


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