2018年1月10日 大野和士/都響 の R.シュトラウス組曲《町人貴族》・ツェムリンスキー交響詩《人魚姫》at サントリーホール

今日が年明け初コンサート、都響第846回定期演奏会で冬晴れの六本木まで行ってきました。

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20世紀初頭のドイツ後期ロマン派作品、似たような演奏時間の標題音楽二つが並びました。
違うのは小編成オケと大編成。
大編成の『人魚姫』の方が曲調含めて大野さんが得意そうな気がしますが、どうでしょうか。事前インプレをしてから来ました。
 ・R.シュトラウスの『町人貴族』聴き比べ:テンシュテット / ライナー / シュトラウス
 ・ツェムリンスキーの交響詩『人魚姫』を聴く



組曲《町人貴族》 Op.60:R.シュトラウス

前奏曲冒頭の軽さを聴いた時はアレ?っと思いましたがその後はアゴーギクを使ったいい流れに、続く2.メヌエットではロココ・バロック調のこの曲とは思えない小編成オケながら重量感ある演奏になりました。
独奏vnは力感ある音色と切れ味を見せ、part9.宴会は素晴らしく、表情豊かにしてお喋りな演奏で楽しませてくれましたね。R.シュトラウスですからね、これでないと。
それにしても、この曲はピアノが響きませんねェ。


交響詩《人魚姫》:ツェムリンスキー

一言で言うと、大音響の人魚姫でしたね。各楽章共に、残った印象は大編成オケの鳴り響くパワー。弱音側の振りは極少なく、とにかく厚め。アゴーギクもあまり感じなかったので、印象は爆音フラット。
人魚姫の独奏vnは第一楽章はわかりましたが、第三楽章の弱音ソロはわかりませんでした。人魚姫のストーリーを想像する様な展開ではなかった感じです。
とは言え、これだけの音量は実に久しぶりの様な...
終演後のオケのメンバーの様子はかなりの満足気。またもや駄耳の証明⁈


何と言っても表情豊かな《町人貴族》が素晴らしかったですね。
事前予想では《人魚姫》だったのですが、こちらは久々の大爆音が楽しめたので、それもまた楽しでした。
今年の初コンサートとしたら上々でしたね。


テーマ : クラシック
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R.シュトラウスの『町人貴族』聴き比べ:テンシュテット / ライナー / シュトラウス


リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss, 1864/6/11 - 1949/9/8)
今更のドイツ後期ロマン派最後の大物ですね。マーラーと時代を共にしてお互いに指揮者としても敏腕を振った二人、違うのはオペラと交響詩を得意とした事でしょうか。


町人貴族, Le bourgeois gentilhomme Op.60 (1917年)
モリエールの戯曲『町人貴族』のフーゴ・フォン・ホーフマンスタール改作時付随音楽から9曲にした組曲ですね。貴族になりたい金持ち町人ジョルダン、その娘リュシルが策略を巡らせて結婚をする喜劇です。
実はバロック調の曲構成でほぼ聴かないのですが、今回は明後日(2018-1/10)の大野和士/都響のコンサートを前に聴きなおしてみました。

1.Ouverture - 2.Minuet - 3.The Fencing Master - 4.Entry and Dance of the Tailors - 5.Lully's Minuet - 6.Courante - 7.Entry of Cléonte - 8.Intermezzo - 9.The Dinner
それぞれ1'から5'ほどの小曲(9.The Dinnerは10')なので、パート別の印象は不要かと思います。



クラウス・テンシュテット(Klaus Tennstedt)が音楽監督を務めた時代のロンドンフィル(LPO)との演奏です。
序曲の入りから優美です。通して洒落た古典っぽさを感じさせてくれる演奏で、テンシュテットの個人的な印象とは違って軽やかさが感じられます。とは言え「9.宴会」では交響詩の様な流れを切れ味のある演奏で聴かせてくれました。




フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)が鍛え上げた手兵シカゴ響(CSO)を振った演奏です。ライナーはシュトラウス本人との交流もあり、得意としていましたね。ここでは2曲(5,6)がカットされています。
序曲から切れ味のある演奏でテンポも速め全体が重心の低い流れです。もちろんメヌエットやバロック調の曲では優美さも見せますが陰影がありますね。1956年の録音とは思えないほど音もいいです。また曲構成から2曲が欠けても印象に影響ありませんね。華々しく表情豊かで流石はシュトラウスを得意とするライナーです。




リヒャルト・シュトラウス本人の指揮でも聴いておきましょう。オケは音楽総監督を務めたベルリン国立歌劇場附属オーケストラのシュターツカペレ・ベルリン(Staatskapelle Berlin)、1930年の録音です。
バロック感もそれほど強くなく、アゴーギクで流れを作っています。メヌエットでも優美さの中に交響詩の様な動機を感じさせてくれます。印象は一番シャープでシュトラウスの曲らしい表情です。(笑)
ただ古いspからのmonoですから、それ以上の素晴らしさを聴き取るのは難しいですね。


ライナー盤が、重心の低い流れでバロック的な印象を後期ロマン派的なものにしていいですね。あまりにバロック色が濃いのはシュトラウスさに欠ける気がします。
シュトラウス本人は、想像以上にシュトラウスらしさが感じられて(笑)録音の問題がなければ"これ"でしょう。
テンシュテットは軽すぎる感じです。

大野/都響がこのバロック・古典の調べをどう演奏してくれるか興味がありますね。独奏vnにも興味が湧きますし、「9.宴会」は一番の聴かせ処でしょう。





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ツェムリンスキー(Alexander Zemlinsky) の交響詩『人魚姫』を聴く


アレクサンダー・ツェムリンスキー (Alexander Zemlinsky, 1871/10/14 - 1942/3/15)
音楽感よりもアルマ・マーラー(シントラー)を恋仲の弟子にしていた事や、妹がシェーンベルクと結婚した事の方が知られている様なツェムリンスキーの印象です。
音楽的には当初ブラームスの尽力を得た事や、その後新ドイツ学派から後期になって調性感の薄い表現主義になっていますね。無調や十二音技法といったこの時代の前衛現代音楽には手を染めませんでした。

今回は、次週(2018-1/10)の大野和士/都響のコンサートを前に交響詩『人魚姫』の予習です。


交響詩『人魚姫』, Die Seejungfrau (1903年)
『人魚姫』はブラームス派から離れ、後期ロマン派的な新ドイツ楽派への変化の作品ですね。
演奏はリッカルド・シャイー(Riccardo Chailly)が首席指揮者だったベルリン放送交響楽団*(Radio-Symphonie-Orchester Berlin)を振っています。1990年代に話題となったDECCA頽廃音楽(Entartete Musik)シリーズ一枚ですね。
(カップリング曲Psalmは聖歌でインプレできない為割愛です)

*日本語では同名オケの"Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin"、旧東ドイツに属した、とは違います。ドイツのオケの名前は煩わしいですね。



三楽章の標題音楽で、アンデルセンの童話『人魚姫』を基にしています。
【第一楽章】暗い海底の音色からsolo-vnの奏でる人魚姫の動機が現れます。この辺りは派手さはワグナー、solo-vn旋律はシュトラウスを強く感じますね。後半の海が荒れて難破から王子との出会いは激しさから穏やかさでストーリー性が明確です。
【第二楽章】声を引換に痛みのある足をもらい人間になった喜びを派手に、その苦痛や王子が姫と結婚する悲しみを情感のコントラストを強く奏でます。処々でマーラー似の旋律が顔を出し、いかにも後期ロマン派的です。
【第三楽章】人魚姫が海に身を投じて泡となり風の精に生まれ変わって行くまで。緩徐楽章ですが(死の)山場を作るのはマーラー風に感じます。死を迎えた後は暗い緩徐パートとなりラストは細い音色の人魚姫のsolo-vnが入って天に登り救済されるシーンを奏でて閉じます。

後期ロマン派最後の時代20世紀初頭らしい音楽ですね。この時代を象徴するR.シュトラウスやG.マーラーの気配と、ストーリーを感じる標題音楽構成が明確です。人魚姫の物語を浮かべて聴くのは必須でしょう。
シャイーのコントラストある演奏もいいですね。

さて、次週の大野/都響は"うねる様"なこの曲をどう奏でてくれるでしょうか、楽しみです。




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バーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan) の CRAZY GIRL CRAZY を聴く


バーバラ・ハンニガン (Barbara Hannigan, 1971 - )
今や指揮者としても活躍の場を広げるカナダのソプラノ歌手 バーバラ・ハンニガンの最新作です。
現代音楽を得意とし、狂気さえ見せるハンニガンのソプラノは好きな一人です。このブログでも何回かインプレ済みですが、ジャケット写真を見ると『エクサン・プロバンス音楽祭 2016 オペラ「ペレアスとメリザンド」』のシーンを思い出しますね。


CRAZY GIRL CRAZY
本アルバムではベリオ/ベルク/ガーシュインを取り上げて、ハンニガン本人が指揮をしています。ガーシュインの曲では編曲にも関わっていますね。まさにハンニガン色のアルバムです。
ライナーノートではこのアルバムの三曲が、それぞれ奔放に生きた女性「ルル」を映し出していると言っていますね。演奏はルートヴィヒ管弦楽団 (Ludwig Orchestra)です。



Sequenza III for female voice (Luciano Berio)
ベリオの代表作でソロ曲シリーズの「セクエンツァ」その#3は楽器ではなく女性の声です。歌詞はMarkus Kutterの"Give me a few words for a woman to sing a true ..."でシンプルですが、前衛技巧で狂気に至る様な表現力を最大限必要とします。まさにハンニガンの実力を見せてくれます。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

Lulu Suite (Alban Berg)
 I Rondo - II Ostinato - III Lied Der Lulu - IV Variationen - V Adagio
ベルクの未完のオペラ『ルル』から1934年に組曲化(Symphonische Stücke aus der Oper „Lulu“)された交響小作品ですね。第二幕のシェーン博士の息子アルバのシーンから第三幕ラストの切り裂きジャックにルルが刺されるまでで、歌唱パートは「3.ルルの歌」ルルがシェーン博士を前に歌うアリアです。
もちろん無調無拍的な前衛ではなく、薄い調性の中に美しい旋律と激しさを作っている楽曲です。シーンを頭に浮かべながらでも楽しいです。ここでは情感強めに展開しますね。やはり聴き処はハンニガンのアリアでしょう、よく伸びるsopの声が楽しめます。(ラストにも入っています)
もちろんオペラ「ルル」のハンニガンも好評を博していますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?

Girl Crazy Suite (George Gershwin)
ガーシュウィンのガール・クレイジー組曲ですが、ハンニガンとオーケストレーションのビル・エリオット(Bill Elliott)が編曲しています。
ガーシュインらしいらしいポップさをそのままに生かして、"I Got Rhythm" 等を歌うところはまるでMGMのミュージカル・サントラ盤の様です。この歌い方もハンニガンのもう一つの顔と言えるのかもしれません。これはこれで楽しさいっぱいです!


ハンニガンの前衛ソプラノ、手短に情感強く味わえる「ルル」、ミュージカルの様な楽しさ、異なる3つそれぞれ詰まったのがこのCDですね。これはおすすめです
20'ほどの映像も付いていてハンニガンの様子がわかるのも嬉しいですね。
α(アルファ)レーベルは楽しいアルバムを作りますよね。




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ホーカン・ハーデンベルガー の「20世紀のトランペット音楽」を聴く

現代音楽を得意とするヴィルトゥオーゾ・トランぺッター、ホーカン・ハーデンベルガー(Håkan Hardenberger, 1961 - )の現代音楽ソロ・トランペット曲集ですね。
7人の現代音楽家の作品で、武満さんとワトキンスの曲はハーデンベルガーの為に作られています。また、ベリオの「セクエンツァX」のみピアノでペーター・ソロモン(Peter Solomon)が入ります。


Sonatina for Solo Trumpet (1974)
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ (Hans Werner Henze, 1926/7/1 - 2012/10/27)の「ソロ・トランペットのためのソナティナ」は三楽章形式の楽曲、中期の作品です。
技巧曲ではない計4'の小曲です。点描的な音の流れですが音列配置ではありません。機能和声と無調の両方に足を跨いだ様なソロ曲です。微妙な立ち位置がヘンツェですね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  スコア付きです。



Paths (In Memoriam Witold Lutoslawski) (1994)
武満徹 (1930/10/8 - 1996/2/20)さんの晩年の作品「径 - ヴィトルド・ルトスワフキの追憶に-」で5'ほどの小曲です。
武満さんらしい細い幽玄さがtpにマッチしているかは少々??な部分はありますが、そこは武満サウンド。ミュートのかかった繊細な音色とオープンとのコントラストは美しいです。それが何を意図し表しているのか気になるところです。


Sequenza X per tromba in do (1984)
ルチアーノ・ベリオ (Luciano Berio, 1925/10/24 - 2003/5/27)のセクエンツァXがメインの様ですね。ベリオの代表作「セクエンツァ」は楽器別ソロ曲集で、そのNo.10「トランペットと共鳴のためのピアノ」ですね。
前曲の延長線上の様な音から入りますが、細かなフラッタータンギングが特徴的です。無調ですが音列配置でも、音の飛躍が大きな混沌でもありません。pfはほとんど明確な音色は出さず、tpの音色の共鳴を生んでいるそうです。流れるフレーズにフラッタータンギングが入り、そこにパルス的に単音が発せられます。背景に薄く残る共鳴音が印象的ですね。この曲が一番面白いです

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Josh Roganのtpで、共鳴を引き出すためにpfに吹き込む様子がわかりますね。pfはペダル操作をしています。



Old/New (Study for Solo Trumpet) (1986)
マウリシオ・カーゲル (Mauricio Kagel, 1931/12/24 - 2008/9/18)作曲で、「若い奏者のための新しいトランペット作品集*」にフィーチャーされたファンファーレ・コレクションの一曲です。
というわけで1'の超小曲。ミュートの陰鬱さが特徴的で、いわゆるファンファーレではありませんね。これならマイルスの方が俄然面白い?! 過激さや意外性、パフォーマンスといった表現主義的印象のカーゲルですが…残念。


Emotion (1992)
アントワーヌ・ティスネ (Antoine Tisné, 1932/11/29 - 1998/7/19)はフランスの現代音楽家、印象に薄いのですが本来表現主義の傾向が強いようですね。
デイヴィッド・ニーマン(David Niemann)の詩"エモーション"とのセット?ですが、意味不明ですw それが前衛? でも曲調はここまでの流れを超えるものはなく、不協和音的な旋律の楽曲です。


La mort de l'aigle for Trumpet in C (1993)
マイケル・ブレイク・ワトキンス (Michael Blake Watkins, 1948 - )はイギリス人現代音楽家。「死せるイーグル」は詩人ホセ=マリア・ヘレディア(Jose-Maria de Heredia)の作品からインスパイアされているそうです。
暗く哀愁を感じる旋律は後期ロマン派の調性さえ感じます。そこに不協和音を入れた感じで変化はありません。同じような曲ばかりで、そろそろ飽きて来ましたがw


Die grosse Schildkröten-Fanfare vom Südchinesischen Meer
ジェルジュ・リゲティ (György Ligeti, 1923/5/28 - 2006/6/12)の「《南シナ海》からの《ビック・タートル・ファンファーレ》」も前述「若い奏者のための新しいトランペット作品集*」の中の一曲で30"の超小曲です。
明確な4/4拍子のリゲティらしい楽しさ、でも響の悪いファンファーレで尻切れトンボです。30"ではねぇw


*「若い奏者のための新しいトランペット作品集」:トランペット奏者・音楽学者であるエドワード・タール(Edward Tarr, 1936/6/15 - )編纂による23曲の作品集


類似性が強い楽曲が並びます。現代音楽としては冒険性は低く、超絶技巧や新たな特殊奏法も感じられません。
そのためトランペットの表現や技巧を尽くすというほどのバリエーションや新鮮さは味わえませんでした。逆にトランペットの限界を感じる様な印象になってしまったのは残念。もっと色々やってくれるかと思いました。





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クルト・ヴァイル(Kurt Weill) の Symphonies Nos.1 & 2 を聴く


クルト・ヴァイル (Kurt Weill, 1900/3/2 - 1950/4/3 )
ユダヤ人音楽家ヴァイルは20歳でフェルッチョ・ブゾーニに師事している事やマーラーやストラヴィンスキーに影響を受けている事からもわかる通り、近代音楽からの流れであり(前衛)現代音楽ではありません。
1920年代後半からは「三文オペラ」の成功と共に劇音楽で人気を博します。しかしナチス迫害から逃れるためパリ、そしてニューヨークへ移り米ミュージカル作品を作っていますね。
ジャズのスタンダード「マック・ザ・ナイフ」は三文オペラからの曲ですし、トム・ウェイツやデヴィッド・ボウイもヴァイルの影響を受けていると言われています。


Symphonies Nos.1 & 2
交響曲第1番はブゾーニ師事時代の初期作品、交響曲第2番はパリ亡命中の作品になります。ヴァイルが作った交響曲はこの二曲ですね。
演奏は個人的には好みの指揮者エド・デ・ワールト(Edo de Waart)、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の注目盤です。

■ 交響曲第1番 (1921年)
一楽章形式で25'ほどの曲です。調性感は薄く 音の飛躍が認められるので所謂(いわゆる)現代音楽風に感じます。奏法等に特異性はなく前衛ではありませんが、その辺りがヴァイルの初期作品らしさでしょう。中間部もしくは展開部では美しさが感じられますね。
マーラーっぽい旋律とストラヴィンスキー的和声、それを調性を薄めて時代を一歩踏み込んだ流れにしています。その不安定さが好みですね。コンサートでも楽しめそうな感じです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?

■ 交響曲第2番 (1933年)
三楽章形式になります。第一楽章(Sostenuto - Allegro molto)、アレグロ的な流れは第1番でも感じましたが違いは調性感が強まってきる事でしょう。でも独特な不安定感は生きていますね。
第二楽章(Largo)は緩徐楽章です。方向性は同じで第1番でも感じた美しい流れが明確に機能和声への回帰を見せます。
第三楽章(allegro vivace)は文字通り小気味好い軽快さとヴァイルの切れ味が同居しています。この楽章にその後の劇音楽的な流れを一番感じますね。

初期の第1番は1921年らしい時代の流れ『調性からの脱却』を感じられてイイですね。おすすめです!
第2番はより調性への回帰を感じさせていて、ヴァイルらしい管弦楽曲として最後の作品になったのが残念です。
コントラストの良さはデ・ワールトの手腕も一役買っているかもしれませんね。




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アレクサンドル・クナイフェル (Alexander Knaifel) の Chapter Eight / Make Me Drunk With Your Kisses を聴く


アレクサンドル・クナイフェル (Alexander Knaifel, 1943/11/28 - )
旧ソ連の前衛音楽家としてグバイドゥーリナ、シルヴェストロフ、シュニトケらとキャリアをスタートさせましたが、1990年代以降大きく方向変換して宗教を背景にした作品を作っていますね。また多くのフィルム・ミュージックも手がけています。
チェロをムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Mstislav Rostropovich)に師事していて、本作品でもフィーチャーしています。


Chapter Eight / Make Me Drunk With Your Kisses (1993年)
Chapter Eight はチェロとコーラスの曲です。
歌詞は旧約聖書の最終章、The song of songs (The song of Solomon) の引用で、ヘブライ・ユダヤ共に愛の歌ですが、キリスト教では教会とキリストの関係を歌ったそうです。興味のある方はググってくださいね。本質の理解が難しい宗教系には深入りしません。
歌詞はライナーノートに乗っています。(英文あり)



■ "Who is this coming up from the wilderness" ■ "O that you were like a brother to me" ■ "Make haste, my beloved" ■ "You who dwell in the gardens" ■ "Set me as a seal upon your heart" ■ "His left hand is under my head"

賛美歌ですね。チェロはオブリガートで暗いトーン、しゃしゃり出る事は無く口数少なくです。通して曲調は変化に乏しくアタッカ?で繋がっていて、静かにこうべを垂れて聴くといったらわかってもられるでしょうか。"愛の歌"からイメージする様な情感は存在しませんね。
録音もワシントン大聖堂(Washington National Cathedral)で行われて、神聖な響きそのものです。

唯一"Set me as a seal upon your heart"だけはチェロの現代曲パートが存在します。3'ほどの短いパートですが、細い音色でA.ペルトを調性を薄くした様な感じです。

完全な教会音楽、賛美歌です。従ってヴォーカルは基本同一声部のモノフォニー、伴奏的にチェロが入ります。静的で美しい流れ以外の本質は宗教心がないので把握できません、残念ながら。




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カレヴィ・アホ (Kalevi Aho) の Concerto for soprano saxophone, Quintet for winds and piano を聴く


カレヴィ・アホ (Kalevi Aho, 1949/3/9 - )
現在のフィンランドを代表する現代音楽家ですね。毎年新譜がリリースされていますね。シベリウス音楽院で習い、北欧独特の多様性で交響曲も含めて協奏曲的に主役楽器を入れた音楽が得意ですね。もちろん前衛でもマニエリスムでもありません。


Concerto for soprano saxophone
Quintet for winds and piano
今回はソプラノサックス協奏曲と室内楽、そして少し古いヴァイオリンソロ曲になりますね。
指揮者は個人的に興味の尽きないヨン・ストルゴールズです。



Concerto for Soprano Saxophone and Chamber Orchestra (2014-15年)
 Chamber Orchestra of Lapland / Anders Paulsson (soprano sax.) / John Storgårds (cond.)
三楽章形式の協奏曲です。一楽章の長い序奏は和楽器の雅楽の様な音色で、その後不協和音と調性感のあるアホの流れになります。曲のイメージはもちろん透明で陰鬱的な荒涼感、スマートなストラヴィンスキーといった風合いです。
ソプラノサックスの音色は違和感なく、第二楽章の緩徐パートでも良い流れです。

Quintet for Oboe, Clarinet, Bassoon, Horn and Piano (2013年)
 Väinö Jalkanen (pf) / Markku Moilanen (oboe) / Pekka Niskanen (clarinet) / Antal Mojzer (bassoon) / Ilkka Puputti (horn)
四楽章形式の室内楽ですね。民族和声を感じるパートもありますが、やはりアホ独特の澄んだ荒涼感が生きた透明感の強い曲ですね。各楽器は主と従の関係が明確にあるホモフォニーで、ポリフォニックな展開は存在しません。それが安心感のある聴き心地を作っているのでしょう。最終楽章には元気がありますね。

Solo I for Violin (1975年)
 Jaakko Kuusisto (vn)
アホ本人の言う通りヴィルトゥオーゾなソロ曲です。スローで入りテンポと技巧を上げて行きます。処々でvn2挺の様にさえ感じる事がありますね。10'ほどなのでコンサート向きでもあります。

アホらしい、(文に違和感が…w)、北欧印象派とも言える様な澄んだ広がりが感じられますね。
・ホモフォニーで、主と従の関係を崩すことがない
・旋律が存在して、調性感から逸脱しない
・強音パートでの山場を作らない
馴染みの良い主題や動機がないだけでまさに今の時代のクラシック音楽です。
一時期北欧の現代音楽をよく聴いたので、アホはこれで10CD目のインプレになりますね。




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2016年ドナウエッシンゲン音楽祭 (Donaueschinger Musiktage 2016) で味わう現在形現代音楽

毎年同じみ、ドイツのシュヴァルツヴァルトで開催される前衛現代音楽祭のCDが国内でもリリースされました。
今年(CD化は毎年一年遅れ)はCD2枚組ですね。毎年同じ事を書きますが、3枚になったり4枚になったりDVDが入ってたり出るまでわからないのも前衛でしょうか?!!

今回のアルバムはお馴染みの若手・中堅の現代音楽家が並びましたね。作品別にインプレしましょう。CD1はアンサンブル、CD2は管弦楽になります。



【CD:1】

レベッカ・サンダース (Rebecca Saunders, 1967/12/19 - )
Skin for soprano and 13 instruments (2015 /16)
Juliet Fraser (soprano), Klangforum Wien, Titus Engel (cond.)

ノイズ系炸裂音の印象があるサンダースは、何と言ってもダルムシュタット直系の現代音楽家ですね。"スキン"の詩はジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」から主人公の妻モリー・ブルームの最後の一節を引用しているそうです。
 特殊奏法を使ったアンサンブルは例によってパルス・ノイズ・クラスター的で、無音の"間"を生かしています。唄いはシュプレッヒゲザングで旋律はありません。唄は音の跳躍が激しく「月に憑かれたピエロ」的でもあり、全体混沌です。歌詞も聞き取れません。炸裂衝撃波もサンダースらしいと言えばそうなのですが、やっぱり目新しさはありませんね。



ベルンハルト・ガンダー (Bernhard Gander, 1969 - )
Cold Cadaver with Thirteen Scary Scars for 21 instruments (2016)
Steamboat Switzerland, Klangforum Wien, Titus Engel (cond.)

kokotonPAPA一押しの現代音楽家の一人、ベルンハルト・ガンダーですね。KAIROSレーベルから2枚ほどのリリースはありますが、もっと注目されて然るべきと思います。"13の恐ろしい傷跡持つ冷たい遺体"は傷や恐怖を形にした13の恐れだそうで、13種のリズムを使っているそうです。
 アンサンブル(スチームボート・スイスランドというロックバンド?が入ります)は打楽器リズムで躍動します。ロックのドラムサウンドで、それに楽器群が特殊奏法を含めて打楽器リズム風に反復で流れていきます。重厚な激しさに動機の様な旋律が存在しているのはガンダーらしさでしょう。ベートーベン「運命」の主題ジャジャジャジャ〜ンが引用されているのも笑えます。そこからリズムは大きく変わって、猛獣の唸りの様になり下降音階が流れます。複合三部形式の中間部ですね。最後は主部が回帰し、コーダはミュートのtpですw
ポップな欧州前衛ポストミニマル?! やっぱり面白いですね。



マルティン・スモルカ (Martin Smolka, 1959 - )
a yell with misprints two movements for ensemble (2016)
ensemble recherche

チェコの現代音楽家でヴェーベルンから米実験音楽までベースがありますが、調性が感じられる音楽も作りますね。この"誤植の叫び"は二楽章で9つのルール「悪意のプロモーションでない事」「チェス・プレイヤーの様な計算」「とにかく美しい」等々で作られているそうですw
 第一楽章は無調ポリフォニーですね。簡単に言うとアンサンブルの各楽器が勝手に演奏している感じです。時折調性感の強い短い静音スローパートが入ります。第二楽章はその静音パートから入り、神秘的な空間を作ります。今度はそこへ木管楽器が斬り裂く様な強音を挟みます。両楽章ともに、そのコントラストが面白いですね。



【CD:2】

ジェイムズ・ディロン (James Dillon, 1950 - )
The Gates for string quartet and orchestra (2016)
Arditti Quartet, SWR Symphonieorchester, Pierre-André Valade (cond.)

スコットランド出身の現代音楽家で、ダルムシュタットで『新しい複雑性』を身に纏いながらロックから民族音楽までをバックボーンにしています。最近ではスペクトル楽派の影響とコンピューターアシストの作品も作られていますね。"門"は聖域に入る事で、日本の鳥居⛩で説明されています。入場はentrance → en-trance → trance(陶酔)だそうです。
 無調ですが混沌や即興的ではなく、パターンを組み合わせて構成感があります。トリル・グリッサンド・ロングトーンといった基本技法で大きな流れを組み立て、基本は静的な美しい音色で空間音響系的でもあります。とても心地良さを感じますね。
アルディッティ4をフィーチャーした今の時代の弦楽四重奏協奏曲、コンサートで聴いてみたいです。



フランク・ペドロシアン (Franck Bedrossian, 1971 - )
Twist for orchestra and electronics (2016)
SWR Symphonieorchester, Alejo Pérez (cond.), IRCAM, Robin Meier (computer music designer)

フランスの現代音楽家で、IRCAMでファーニホウやミュライユに習い、ラッヘンマンにも師事しています。ここでもIRCAMのエレクトロニクスを使っていますね。"ツイスト=ねじ曲がる"はアコースティックな音をエレクトロニクス音化して大音響にする事だそうです。
 強音パートはトーンクラスターと電子ノイズの凶暴な音楽です。それとポリフォニカルな混沌さとのバランスが面白いですね。好きな音楽ですね。IRCAMのロビン・マイアーの力量が発揮されている様です。

試しにYouTubeで観てみる?
 実際の音楽祭でのライヴ映像です。素晴らしい!!



マルティン・ヤギー (Martin Jaggi, 1978 - )
Caral for orchestra (2016)
SWR Symphonieorchester, Pierre-André Valade (cond.)

スイス生まれの若手現代音楽家でチェリスト、世界各国から委嘱を受けて現在はシンガポールで教鞭もとっています。世界各国の文化を取り上げていて、"カラル"は古代遺跡シリーズの一環で、旧南米の都市(カラル遺跡)をモチーフにしているそうです。
 木管主役の無調ポリフォニーの強弱出し入れです。民族音楽をベースにしているかもしれませんが特徴は薄く退屈です。
楽譜や理論に特別なものがあるのかは不明ですが、28歳にしては表現的突出感が足りない気がします。若手には新しい世界を期待してしまいますね。



ゲオルク・フリードリヒ・ハース (Georg Friedrich Haas, 1953 - )
Konzert für Posaune und Orchester (2015 /16)
Mike Svoboda (trombone), SWR Symphonieorchester, Alejo Pérez (cond.)

オーストリアの現代音楽家で、フリードリヒ・チェルハらに学び、米現代音楽かからも習っています。ミクロポリフォニー(リゲティが使い命名した技法)、ミクロインターバルを使うスペクトル楽派の一人。"トロンボーン協奏曲"ですが、演奏者マイク・スヴォボダの為に作ったそうです。この前年の音楽祭でもトロンボーンを使った曲を披露していますね。
 チューニングを弄った弦楽器のアルペジオ、オケの厚いサウンド、それに乗るtbの派手な音色、そんな音楽です。即興性等の聴きづらさはなく、旋律らしき流れが存在します。tbも技巧パートはありますが超絶的ではなく、代わりに後半では微分音の旋律を聴かせてくれます。ハースらしい今の時代のクラシック音楽ではないでしょうか。


試しにYouTubeで音楽祭のダイジェストを観てみる?
 上記のサンダース"Skin"、ディロン"The Gates"、ハース"Konzert für Posaune und Orchester"が入っています。



今回は映像がないのでインスタレーションは味わえませんでしたね。ガンダー、ディロン、ペドロシアンは楽しめました。一方、今回一番期待した若手M.ヤギーは平凡で残念でした。
やっぱり映像付きでインスタレーション・エクスペリメンタリズム前衛音楽を味わいたいですね。

注目のインスタレーションだった Yutaka Makino "The program" をチョイ観する?




♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

マーラー交響曲第6番 [悲劇的] 名盤珍盤 30CD聴き比べ [#2 / CD:21-30]

マーラーの6番、パワープレイが嵌れば言うことなしですね。一方で冷めたクールさもありで楽しめます。
今回は変化球と魔球の二人、N.ヤルヴィとH.シェルヘンを含めた10CDをインプレします。ストックはそれほどありませんが、これで30CDになりますね。

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.6 の聴き較べです (現在 #2回 30CDまで)
 #2: 10CD 本投稿
 #1: 16CD
 #0: 4CD バルビローリ聴き比べ




パーヴォ・ヤルヴィ, Paavo Järvi

Frankfurt Radio Symphony Orchestra
[major BD] 2013-6/29,30
現N響首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィが、当時首席指揮者だったフランクフルト放送交響楽団(現:hr交響楽団, hr-Sinfonieorchester)を振ったBD盤(第5番とカップリング)です。
第一楽章
やや速めで、行進曲は落ち着いて、アルマの主題は広がりを大きく進みます。展開部の穏やかさと再現部の切れ味も良いですね。
第二楽章
主部主題はテンポを抑えて適度重厚さ、トリオは一転スローで抑えめのシンプル。パーヴォも踊るスケルツォです。
第三楽章
アンダンテは主部の二つの主題はスローで澄んだ美しさ、同じ流れで中間部を超えると叙情高く山場を盛り上げて静かに締めくくります。美しい緩徐楽章ですね。
第四楽章
序奏は鬱でスローの揺さぶりからアレグロ・エネルジコで走ると、提示部行進曲は切れ味良く経過句を含めて進み、第二主題もシャープです。キーとなる展開部はスローの美しさと切れ味の表情変化を見事に付けて、行進騎行ではアゴーギクを振って来ます。再現部も同様に出し入れの良い流れを作り、コーダを鎮めてラスト一撃です。
・・・・・
切れ味の鋭さと美しい穏やかさのコントラスト、見晴らしの良いマーラー6ですね。広がりがあるBDの録音の良さも大きく寄与しているでしょう。
(ダイナミックレンジの広い録音の良さでハンマーの音がこんなに良く聴こえたのは初めてですね。逆にラスト一撃が弱く感じて弱点に思えるくらいですw)

同じ放送局系であるN響をベルリンで振った(2017年2月28日)演奏より一枚上手ですね。




ネーメ・ヤルヴィ, Neeme Järvi (2録音)
息子パーヴォとは違う、速さとメリハリの父ヤルヴィの本領発揮のマーラー6ですね。
ネーメの二つの録音、第一楽章提示部(再現有り)は20'程度でとても速い演奏です。参考にその演奏時間を並べておきますね。
      RSNO 日フィル
 第一楽章 20:01 20:52
 第二楽章 11:32 11:41
 第三楽章 13:37 13:05
 第四楽章 27:07 27:29


(#1)

Royal Scottish National Orchestra
[CHANDOS] 1992-11/8,9
ネーメ・ヤルヴィが1988年にロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者を退いた後の演奏ですね。現在は桂冠指揮者を務めます。
第一楽章
第一主題の入りから驚きのハイスピードです。アルマの主題も速くて優しさよりもそっけなさです。(笑) 展開部の挿入部ではスローにテンポを落とし、再現部で再びハイスピードに激しさを加えます。
第二楽章
スケルツォ主部主題も速くてキレキレ、トリオでは美しさを見せ揺さぶりをかけながら小ロンドCパートへ入ります。激しい出し入れが切れ味を感じさせてくれます。
第三楽章
やや速めから標準的になり、緩徐楽章の色合いを残すように哀愁の音色を奏でます。山場の盛り上げも美しく見事ですね。
第四楽章
王道系です。序奏は程々の揺さぶり、提示部行進曲は華やかさと切れ味、経過句から軽妙な第二主題につなげます。展開部は出し入れと陰影強くメリハリの効いた、このパートらしい切れ味が光ります。再現部でもその良い流れをつなげてコーダからラスト一撃です。
・・・・・
第一楽章、こういう変化球は大好きですね。速さのN.ヤルヴィの面目躍如。そして全体を貫く切れ味と怒涛のマーラー6番です。
演奏の切れ味も素晴らしいですし、音質もCHANDOSですから☆の方が良かったかな!!
(☆と㊟は紙一重ですw 個性派・クセ者でも楽しめるものが㊟ですね)




(#2)
日本フィルハーモニー交響楽団
[JPS] 2000-6/23
RSNOとの8年後、ネーメ・ヤルヴィが現在 客員首席指揮者を務める日フィルを振った演奏です。RSNOとの比較で聴いてみました。
第一楽章
第一主題はRSNOよりはテンポは遅いですがそれでも速め、アルマの主題はやや速め程度の提示部、展開部も標準的な演奏で基本速め、再現部は迫力で暴れ気味になりラストは突っ走ります。再現部はこちらの勝ち!!
第二楽章
スケルツォ主部主題もやや速め程度になり、トリオ以降も特徴的な揺さぶりは減っています。
第三楽章
アンダンテは速めで感情移入を避けた淡白さです。もちろん後半山場は迫力ですが全体的に美しさや哀愁は弱いです。
第四楽章
序奏は所々で暴れます、そこから提示部行進曲から経過句へは疾走、第二主題は軽快ですが弱い感じ。展開部は揺さぶりを生かして、厄介なこのパートをコントラスト良く見晴らしを付けます。続く再現部が素晴らしく、適度に暴れながら盛り上げが見事です。コーダのスローは影を感じさせる流れからラストの一撃です。
・・・・・
RSNOに比べると前半楽章のテンポも"速め"くらいで、後半の王道さも不足気味です。それでも充分に一癖モノを楽しめるマーラー6。
日フィルも好演で、RSNO盤を知らなければ㊟印です。




マルティン・ジークハルト, Martin Sieghart
The Arnhem Philharmonic Orchestra
[EXTON] 1994-3/19
交響曲第5番では残念な演奏だったオーストリア人指揮者ジークハルトと常任揮者を務めていた時のアーネム・フィルです。
第一楽章
第一主題は重厚勇壮で、アルマの主題は情感深い良い流れの提示部です。展開部も締まりのある第一主題からスローの挿入部へ重厚さの余韻を残す様に入り平安な流れにつなぎます。再現部は提示部の回帰で、コーダからフィニッシュも素晴らしい見晴らしの良さです。
第二楽章
スケルツォ主部の主題は第一楽章第一主題の流れを汲んで締まりが良いですね。重厚さをベースにトリオで一息つく感じです。マーラーの指示通り「重々しく」です。
第三楽章
緩やかで穏やかな第一主題、哀しさ覚える第二主題、その緩徐の流れから後半の山場を盛り上げます。スローさで時折気がぬける様な気配は気になりますが。
第四楽章
あまり変化を付けない序奏で入ります。提示部第一主題は勇壮、第二主題では穏やかに流れます。展開部コントラストの強い演奏で、アゴーギク・ディナーミクを振って濃い演奏です。スローの流れが素直に受け入れられないパートもありますが。再現部もスローから迫力で山場へ進み、輝かしい管楽器パートからコーダへ入り、ラストの一撃を迎えます。
・・・・・
90'を超えるスローな重厚さを全面に押し出したマーラ−6番です。もう少しスローさを抑えれば全体が締まったかも。また、録音・ミキシングでの作品作りも強く感じ、それもオケを助けている気がしますね。




レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam
Danish National Radio Symphony Orchestra
[CHANDOS] 1990-9/24-26
フィンランドの怪人セーゲルスタムは個人的には現代音楽家の印象の方が勝ちますね。首席指揮者(1988–1995)を務めたデンマーク放送交響楽団(DR放送交響楽団)を振っています。第5番では素晴らしい演奏を見せてくれましたね。
第一楽章
行進曲主題はシャープに、アルマの主題はディナーミクで優しさを見せますが両者クセはありません。特徴的なのは展開部・再現部のスローパートを強調している事でしょう。
第二楽章
スケルツォ主部主題は第一楽章の印象を継続する様に進み、ここでもトリオをスローに明確に落として優美さを強調します。
第三楽章
第一主題は柔らかな音色で、第二主題では色合いを哀しみに変えます。優しさの中から山場を作るマーラーの緩徐楽章らしさに溢れたアンダンテになっています。セーゲルスタムは山場を押さえ気味でいいですね。
第四楽章
序奏は揺さぶりは少ないながら、不安感を掻き立てて提示部に流れ込みます。行進曲から経過句を経て第二主題まで冷静に奏で展開部へ。ここでもスローをうまく使い、過度の興奮や重厚さはありません。再現部もコーダも冷静です。気になったのはコーダでハンマーの様な音を感じた事、そうであればハンマー三発演奏ですが。
・・・・・
シャープさとスローの出し入れ(Agogik)がセーゲルスタムらしいですね。興奮と重厚さを排して、クールでスマートなマーラー6です。好きな盤ですね。
突撃型演奏が好きな方には向かないかも。




アントニオ・パッパーノ, Antonio Pappano
Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
[EMI] 2011-1/8,10,11
パッパーノが音楽監督を務める聖チェチーリア音楽院管弦楽団を振ったマーラー6です。
第一楽章
第一主題はスローにして重厚、モットーで抑えると第二主題アルマの主題を華やかに奏でます。展開部・再現部は強弱コントラストを生かして派手で壮大ですね。管楽器の華やかさが光ります。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は重厚、変拍子のトリオは優美でまさにスケルツォ。この二つの旋律が小気味好く、メリハリのある流れを作っていますね。
第三楽章
抑えの効いた主要主題はスローに美しく、イングリッシュホルンの副主題も同様に美しい流れを作ります。中間部以降も情感強い山場を含めて、美しい緩徐楽章になっていますね。
第四楽章
長い序奏は力強さと暗さのコントラストを付けて明瞭に、アレグロ・エネルジコからの提示部第一主題は抑え気味の行進曲から経過句で盛り上げると、軽快な第二主題へと見晴らしの良い流れを見せてくれます。展開部・再現部は行進曲や騎行を切れ味よく派手で劇的に、コーダは暗く沈みラストの一撃へ繋げます。
・・・・・
見事なライヴ、派手で華々しい明瞭なマーラー6。気持ち良さが欲しい人にはこれでしょう。☆を付けたくなります。




ゲオルク・ショルティ, Sir Georg Solti

Chicago Symphony Orchestra
[DECCA] 1970-3,4
言わずと知れたショルティが育て上げた手兵 シカゴ交響楽団とのマーラー6ですね。
第一楽章
速さで突き進む第一主題、派手に奏でるアルマの主題、乗っけからまさにショルティ/シカゴ響炸裂です。展開部も勇壮さメインに柔らかな響のコントラスト、激しさを増しながら再現部へ突入するとコーダを派手派手しく納めます。
第二楽章
第一楽章の流れをそのままに主要主題は速め迫力、怒涛の進撃です。トリオは優美なスケルツォに変化させコントラスト付けが上手いですね。
第三楽章
アンダンテらしい優美な流れの主部二つの主題、中間部では明るさと美しさから大きく山場を作ります。厚いアンダンテ。
第四楽章
序奏は陰鬱さは薄く重厚中心に変化を与えています。提示部第一主題と経過句は迫力の行進です。第二主題もその流れのまま続きます。展開部・再現部も緩急はありますが突撃性大重視です。3発目のハンマー?の様な音がしますが。
・・・・・
いかにもショルティ/シカゴ響、怒涛の迫力のマーラー6ですね。とにかく勇壮な戦闘シーンです。




アントニ・ヴィト, Antoni Wit
Polish National Radio Symphony Orchestra
[NAXOS] 1992-12/15-19
カラヤンの助手を務めていたポーランド人指揮者ヴィトですが、何と言ってもNAXOSで数多くの録音を残している事で知られていますね。そのヴィトが1983-2000年の間音楽監督を務めたポーランド国立放送交響楽団との録音です。
第一楽章
第一主題は勇壮、モットーで静まりアルマの主題は華やかです。展開部ではスローパートを強調しているのが特徴的ですね。
第二楽章
スケルツォです。主要主題は抑えめで、トリオはスローに落とします。最後の主要主題では迫力を見せますが、楽章としては控えめの感じがしますね。
第三楽章
主部の二主題は穏やかそのもの、中間部もやや抑え気味に山場を作ります。
第四楽章
序奏は静的、第一主題は行進曲を明確にしていますがやや弱め。展開部・再現部共にコントラストは弱めです。
・・・・・
穏やかさが印象に残るマーラー6ですね。迫力もあるのですが強烈さは弱いですね。炭酸の弱いコーラみたい?!




ヘルマン・シェルヘン, Hermann Scherchen

Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[MEMORIES] 1960-10/4 =mono=
さてシェルヘン先生です。ライプツィヒ放送交響楽団(現:MDR交響楽団)を振ったマーラー6ですが、大カット短縮演奏です。よく言われるのは第5番ですが、こちらも負けず劣らずの狂気を味わえます。(MEMORIESから再発されましたね)
第一楽章
第一主題・第二主題共に猛烈なハイスピードで管楽器はもつれ気味。提示部の繰り返しはもちろんカット!! 展開部・再現部も早回しで聴いているみたいですw
第二楽章
アンダンテを持ってきました。ここでは特別大きな異常性を見せませんね、中間部入りと山場でいきなりテンポアップは凄いですがそのくらい。シェルヘンは緩徐楽章は猛スピード化させない傾向ですね。(第5番では逆に超スロー化しています)
第三楽章
爆速スケルツォです。小ロンド形式で主要主題とトリオを繰り返すわけですが、そんなかったるい事しません。当然カット!! あっという間に終了、演奏時間は約半分w
第四楽章
序奏はコントラスト良く、アゴーギクが強いくらいです。まぁ一般的には充分"変"ですが。提示部第一主題からスピードアップ、でも第二主題も含めてそれほど過激ではありません。展開部はテンポは揺さぶりの強い程度の感じですが、後半はカ〜ット!! なのでハンマーは一発になっちゃいますw。再現部も似た流れで中盤をカット!! でもコーダはごく普通ですね。
・・・・・
爆速、奇怪、カット短縮のマーラー6です!!
詳細は楽章インプレの通り。音は劣悪ですが、一度聴いてみてほしいですねw




ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン, Jaap van Zweden
Dallas Symphony Orchestra
[dsolive] 2013-3
オランダのズヴェーデンはコンセルトヘボウ管のコンマスから指揮者になっています。来年2018年からニューヨークフィルの音楽監督に就任が決まっていて、早くも3月には新たな手兵を率いて来日しマーラー5番を演奏しますね。(もちろんチケット購入済みですw)
これは音楽監督を務めたダラス交響楽団を振ったマーラー6になります。
第一楽章
第一主題は少々まとまりの悪さと管楽器も危なげですがクセはありません。モットーからアルマの主題は優美です。展開部も再現部もバランスの良い音出しを感じます。
第二楽章
スケルツォです。主部主題からトリオもクセはなく安心の流れで切れ味もありますね。見事ですが何か一つ個性が欲しい感じです。
第三楽章
静的で美しいアレグロ。主部の主題も透明感があり、中間部でも牧場の広がりの様なのびやかさを見せます。本流の演奏ですね。
第四楽章
序奏の揺さぶりや陰鬱感は弱めですが良い流れで、第一主題から経過句も行進曲らしい切れ味で進みます。その流れからの第二主題も爽やかですね。展開部・再現部でも処々で間延び感はありますが山場を大きく奏でて、行進曲や騎行を勇壮に進みます。特徴に欠けるのは残念ですが素晴らしい演奏です。
・・・・・
音も良く クセも無く きれいにまとまったマーラー6です。その分、指揮者の意図や個性を楽しみづらくワクワク感がありません。初めて聴くならおすすめでしょう。





次は数枚ストックしているテンシュテットをメインにインプレしようと思っています。



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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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