マーラー交響曲第5番 名盤・珍盤 170CD聴き比べ #6

残念ながら5月の来日が中止になってライブを聴けなくなったマゼール(ボストン響)のマーラー第5番。でも、フィルハーモニア管とのマーラー第5番(2011年)が新しくCDで出たので、既出のマゼール盤・他と聴き比べしてみました。
(後日記:二ヶ月後の7月13日に亡くなりました。R.I.P. Maazel)

今回14CD、これでマーラー5番の聴き比べもやっと 100CD まで来ました。まだありますねぇ。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.5 の聴き較べです (現在 #12回 170CDまで)
 #12:10CD
 #11:10CD
 #10:10CD
 #9:15CD
 #8:15CD
 #7:10CD
 #6:14CD 今回
 #5:5CD アバド追悼
 #4:20CD
 #3:25 26CD
 #2:20CD
 #1:15CD



ロリン・マゼール, Lorin Maazel (3録音)
10歳を前にニューヨークフィルとフィラデルフィア管を指揮する天才ぶりを発揮したマゼールは数々の有名オケの首席指揮者等を歴任。(最後は亡くなった2014年までミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めましたね…後日追記)


(#1)
VPO
[Sony] 1982-9/30,10/4

(4番とのカップリングCDが入手可能です)

 ウィーン国立歌劇場の総監督に就任した年のウィーンフィルとマゼールのマーラー第5番です。
第一楽章・第二楽章
第一主題は遅くてモッタリ、第二主題はごく普通。モッタリと普通の繰り返し。少なくとも葬送行進曲とは思えません。第二楽章の入りもモソ〜っと入ります。すぐにペースは戻しますが、所々スローになり不安な展開です。
第三楽章
スケルツォは華やかさが感じられますね。ただここでもスローで、せっかくなのに長く感じます。
第四楽章・第五楽章
この展開だと予想通りにアダージェットはとても甘美です。クレンペラーが言うサロンミュージックっぽいかもしれません。最終楽章は印象の薄い流れで少々飽きます。
・・・・・
VPOらしく全体的に美しい音の流れなのですが、解釈の問題で今ひとつ締まりに欠けるマラ5です。また各楽章もテンポ変更指示毎に細かくトラック分けしているので鬱陶しい気がします。




(#2)
NYPO
[New York Philharmonic] 2003-9

(DL版になります。CDがあるかは不明です)

 VPO共演から21年後のMaazelですね。この時の手兵ニューヨークフィルとの演奏です。
第一楽章・第二楽章
第一主題もVPOと較べればまだ葬送行進曲です。スローには違いありませんが。(笑) でも第二主題は遥かにテンポに勢いを感じますね。第二楽章の入りも自然で安心感があります。全体の流れも優雅でメリハリがあり悪くありません。
第三楽章
スケルツォもリズミカルになって、アゴーギクも自然な流れで入っています。オブリガートホルンも効いていて、コーダも悪くありません。
第四楽章・第五楽章
アダージェットも極端に蕩ける様な感じではありませんね。交響曲の楽章らしくなりました。第五楽章もコーダに向けて上って行く流れを感じられる展開で、コーダも雄大です。アッチェレランドが甘いのはVPO時代と同じですが。
・・・・・
VPOとの比較とすると、こちらの方が生き生きとしています。




(#3)
Philharmonia O
[signum] 2011-5/5

(第4, 5, 6番のセットです)

 亡くなる3年前、フィルハーモニア管弦楽団を振ったマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
スローで微妙なアゴーギクの第一楽章葬送行進曲ですが、メリハリはあるので救われます。第二主題は第一主題にたいしてコントラストの良い展開です。見晴らしの良い第一楽章になりましたね。第二楽章は第一楽章とのつながりが自然になりました。押しては引くといった緊張感のある良い演奏です。
第三楽章
やや切れ味不足、長さを感じてしまいます。コーダでは奇妙なパートもありますね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはクールで好きなパターンです。静音パートをスローで展開し、感情を込めすぎる事なく冷静な緩徐楽章です。最終楽章はスローでフラットな入りから上げて行き、山場をうまく盛り上げます。ラスト2分は圧巻、アッチェレランドもビシッと決まります。
・・・・・
基本スローで静音パートは極端にスロー、細かい処に特徴的な解釈を配したクセのあるマラ5ですが、悪くありません。中止になってしまいましたが、コンサートで味わいたかったですね。




アントン・ナヌート, Anton Nanut
Radio SO Ljubljana
[Master Classic] 1997-10/23

(所有盤とは異なります)

 幽霊指揮者?で有名な、ナヌートが音楽監督(1981年-1998年)を務めたスロヴェニア放送交響楽団, RTV Slovenia SO(リューブリャーナ放送交響楽団)を振ったマラ5です。
【後日記】2017年1月13日に亡くなりました
第一楽章・第二楽章
第一楽章は癖の無い落ち着いた葬送行進曲です。第二楽章も同様の演奏になります。
第三楽章
流石にこの楽章は長さを感じるかなぁ。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは叙情感の強い流れですね。最終楽章は、やや速めの展開になりますが癖はありません。コーダに向けて上げて行きます。ここでも少々 長さを感じますね。
・・・・・
基本的に特徴のとても薄い、という特徴?のマーラー5番です。

 以下の様に幽霊ですw (Kaplan Foundation より)
 ・本録音で10枚以上の異なるレーベルで出ています。
 ・録音年は不明の様です。(本データは所有CD記載より)
 ・誤った他人名義でも数枚CD化されています。(Incorrectly Identified)




ユーリ・テミルカーノフ, Yuri Temirkanov
Saint Petersburg PO
[Water Lily Acoustics] 2003-9/20,22
 テミルカーノフがムラヴィンスキー死去の後を継ぎ1988年から音楽監督を務めるサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(サンクトペテルブルク交響楽団ではない)によるマーラー5番。
第一楽章・第二楽章
スローな第一楽章の第一主題、そしてピッチを上げる第二主題。管楽器が響きます。スローな第一主題は往々にして重苦しくなるのですが、そこはうまく避けています。第二楽章もテンポは速く入りながらアゴーギクを効かせてきます。ティンパニがもたついたり、多少の破綻が見られますが。でも、一二楽章ともに〆の音が聴こえない不思議さ。
第三楽章
弦楽器が遠く聴こえ、長さを感じて緊張感が続きません。アゴーギクの緩い部分では飽きがきます。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは印象が薄いです。最終楽章も微妙なアゴーギクが落ち着かず、音もやや乱れ気味。中盤の山場は轟音、コーダはボチボチ。拍手もボチボチ。
・・・・・
Liveを考慮しても、やや締りに欠けた軽いマラ5です。




ヤッシャ・ホーレンシュタイン, Jascha Horenstein
BPO
1961-8/31

 非正規盤ですがフルトヴェングラーの助手を務めた事もあるホーレンシュタインが、1961年のエディンバラ国際フェスティバルでベルリンフィルを振った5番です。
第一楽章・第二楽章
スローでディナーミク強めの葬送行進曲、パワーとスピード感の第二主題でBPOらしさが出ています。第二楽章も同様の展開。
第三楽章
スケルツォも軽妙というよりも華麗で重厚です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは「ベニスに死す」w。最終楽章はやや飽きが来る展開(録音が悪すぎてフラットになってる?)ながらコーダは見事な...と言いたい処ですが、スローでモッソリ。なおかつ録音が乱れて尻切れとんぼ。
・・・・・
古い放送音源で、音質も劣悪超酷いです。演奏は勿体ぶったBPOらしさ満点で悪くないのですが、仕方ありませんね。




オトマール・スウィトナー, Otmar Suitner

Staatskapelle Berlin
[Deutsche Schallplatten] 1984-9/24,25、12/10-13
 日本でもお馴染みだったスウィトナーが名門 ベルリン国立歌劇場のカペルマイスター時代のマラ5です。
第一楽章・第二楽章
重さ控えめの葬送行進曲、ところが第二主題は異常に速いです! 続く第二楽章も猛烈なスピードで入りますが、すぐに標準的なペースに戻して来ます。演奏は処々で爆演になり、ラスト前の山場も決めます。現代のシェルヘン?
第三楽章
一転して スケルツォはシャープにして優美、やや速めですが飽きさせません。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは冷静な叙情でクールです。最終楽章は約束通り 穏やか緩やかに入り、切れ味良く徐々に上げて行きます。コーダ前からスピードアップ、ビシッとアッチェレランドを効かせます。
・・・・・
ジャケットが変わりながら何回も再発されていますね。一二楽章の個性強い展開も含めて実に侮れないマラ5です!




上岡敏之, Toshiyuki Kamioka
Sinfonieorchester Wuppertal
[DENON] 2010-6/27,28
 上岡敏之が首席指揮者を務める手兵ヴッパータール交響楽団との演奏です。
第一楽章・第二楽章
スローなファンファーレから抑え気味の葬送行進曲、第一トリオはテンポ良くシャープな流れ、第二トリオは美しさです。第二楽章もその延長線上ですが展開部第二主題は極端に静微音まで振られ特徴的です。荒々しさよりもシャープさと美しさの第一部です。
第三楽章
スケルツォ・レントラーは奇を衒わずに入り、通して流麗で優しい第二部です。
第四楽章・第五楽章
静音の中での揺らぎを生かすアダージェットは甘美さを押し殺す様な冷たい美しさで素晴らしいですね。好きなアダージェットです。最終楽章は速めで力強さを秘めて上げて行きます。提示部後半から美しさを見せながら山場を大きく捉えるとコーダは華やかに、フィニッシュはアッチェレランドで締めくくります。
・・・・・
個性的な展開も含めてヴッパータール響との一体感を感じられる好演でしょう。懐広い美しさベースのマーラー5です。録音もいいですね。




井上喜惟, Yoshihisa Inoue
Japan Gustav Mahler O
[JMO] 2004-7/24
 さて、問題のCDですね。設立者で音楽監督の井上喜惟と仲間?ジャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
いきなり入りのtpが崩壊。しかし演奏は熱さを感じます。いかにもといった葬送行進曲、第二主題も管楽器が変な音を発したりしますが一体となった迫力があります。第二楽章も同じ展開です。弦もトチ狂った音を発します。
第三楽章
スケルツォもホルンはメタメタです。この楽章はこの演奏レベルでは話になりません。これが20'ですから正気では聴けませんね。でも曲としてやりたい方向は伝わるのです。
第四楽章・第五楽章
弦楽曲のアダージェットは綺麗に流れます。とは言え素っ頓狂な音が飛び出さないだけで、まとまりの怪しげな音の弦楽曲。途中で何かを落とす大きな音がします。狙いの流れは静的です。試しに蕩けるような甘さを狙った方が面白かった様な。最終楽章もやりたい事はわかるのですが、ボロボロです。全楽章ともとても王道狙いで悪くないのです、狙いは…。ここでも見事に上げて行くのですが、如何せん音になりません。
いくらアマチュアとは言え管楽器は酷すぎます。これ以上酷い演奏のCDは勿論持っていませんし、コンサートでも出合った事がありません。
・・・・・
演奏レベルから行けばアウトで、鑑賞に値しません。でも練習を積んだのでしょう、指揮者と共有した何かを明らかに感じます。
論外なのですが、これをCD化した事実に敬意を表して手元に置いてあります。久しぶりに聴きました。




西本智実, Tomomi Nishimoto
Royal PO
[KING] 2009-9/21,22
 大阪出身の人気指揮者 西本智実がロイヤルフィルを振ったマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
ややスローで行進曲的ではない第一主題、第二主題は標準的に、第一主題が帰ってくると間延び感を否めません。第二楽章も薄味で掴みどころが不明です。
第三楽章
スケルツォは緩やかで穏やか、何かもどかしい感じ。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは無表情。入りから速い最終楽章はアゴーギクを振っても中だるみです。リハーサル不足?

録音ではない実際のライヴはどうだったのでしょう?
・・・・・
CDでは"おどおど"したペラペラなマラ5。戸山雄三/名古屋PO盤と双璧のつまらなさ......残念ですが。




リボール・ペシェック, Libor Pešek
Czech National SO
[Victor] 2007-3/1-4
 チェコユニット、首席指揮者だったペシェックとチェコ・ナショナル交響楽団のマラ5です。
第一楽章・第二楽章
特徴は薄いですが、重すぎずの葬送行進曲と速すぎずの第二主題です。第二楽章も標準的に第一楽章の延長線上ですね。
第三楽章
第三楽章はフラットに感じて、何かもの足りません。長く感じてしまいます。もう少しアゴーギクとディナーミクを振ってもいいのではないでしょうか。(録音の問題?!)
第四楽章・第五楽章
アダージェットは甘美でもなく、冷徹でもなく。最終楽章も前半中盤がやや退屈感、ここでも長く感じてしまいます。コーダのアッチェレランドは弱め。(個人的な好みは駆け上がりです)
・・・・・
今ひとつ煮え切らない? 淡白なマラ5です。




ネーメ・ヤルヴィ, Neeme Järvi

Scottish National O
[Chandos] 1989-10/23,24
 ネーメ・ヤルヴィが1988年まで首席指揮者を務めたスコティッシュ・ナショナル管(現:ロイヤル・スコティッシュ管)を振ったマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
メリハリのある第一主題、オケと指揮者の一体感を感じます。第二主題も速すぎず、繋がりが良い感じです。第二楽章も同様にドライブ感があります。この第一部は締まりがあり、管楽器の絢爛さが光りますね。
第三楽章
スローで18分あるのですが、長さを感じさせません。強音パートと静音パートでのアゴーギクの使い方がいいですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは叙情的甘美さより静かさ、黄昏を望む様です。好きなパターンですね。最終楽章は速いペースで入りますが演奏が薄いので、徐々に上げて行くのにはアゴーギクとディナーミクをうまく使っています。最後はアッチェレランドをきっちりかけて締めます。
・・・・・
父ヤルヴィらしいコントラストの明確な演奏です。少々濃いですが、好きな1枚です。

(息子の パーヴォとフランクフルトRSOとのDVDが出ましたね→#11)



ゲルト・アルブレヒト, Gerd Albrecht
Yomiuri Nippon SO
[EXTON] 2003-1/22,23
 おなじみのアルブレヒトが読響の常任指揮者時代のマーラー5ですね。
第一楽章・第二楽章
第一楽章は個性の薄い展開です。第二楽章は切れ味良く出ますが全体としてフラットに感じます。きっちり押さえられて悪くはないのですが没個性 ^^;
第三楽章
スケルツォ楽章も同様の展開です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットも同じく無表情。最終楽章も変化の少ない展開で進んで行きます。特にオケが悪いとかという問題では無い様な。
・・・・・
副指揮者の事前リハ? 魂を抜いたマラ5です。




イヴァン・フィッシャー, Iván Fischer
Budapest Festival O
[Channel Classics] 2012-9
 ブタペスト生まれの指揮者イヴァン・フィッシャーが創設者で音楽監督のブダペスト祝祭管弦楽団。ハンガリー・ユニットによる演奏です。
第一楽章・第二楽章
スローで冷静な葬送行進曲、展開のいい第二主題。標準的ながら計算された流れの良さを感じます。管楽器のバランスが気持ち良いですね。第二楽章は歯切れの良さと、緩さが同居します。間延び感が強いかもしれません。
第三楽章
その感じを持ち込んだ第三楽章はスローです。締まりに欠ける19'強は流石に長すぎです。時折 独自の解釈や良い演奏を見せるのですが。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはディナーミクが強めですが、甘美には走らず静的展開です。が、今ひとつ中途半端かな。アタッカで繋がる最終楽章は、軽いリズムで入ります。独特の跳ねる様な流れで上げて行きますが、ここでも少々もたつき気味。個性は感じますが。
・・・・・
第一楽章が良かったのですが、後はずるずるとした感じかな。無個性よりは良いです!






まだまだあります。でも中にはもっととんでもない数を所有している方がいらっしゃるようなので、こんなもんならまだ良いか?と言う事にして、ボチボチと続けましょう。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。

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