シェーンベルクSchoenberg「月に憑かれたピエロ Pierrot Lunaire」の聴き比べ #3

シェーンベルク (Arnold Schönberg, 1874/9/13 - 1951/7/13) のこの曲はkokotonPAPAが現代音楽を聴くきっかけになった一つです。

今回は 6CDの紹介です。もう少しだけありますね。
毎回書いていますが、この曲は一つの演奏(CD)を聴いてもその良さがわかりません。聴き比べる事でいろいろな解釈を歌詞とともに楽しむのがポイントだと思います。シュプレッヒゲサングSprechgesang(もしくはシュプレヒシュティンメ Sprechstimme)を駆使する表現にも随分と差がありますね。

[現在までの比較20CD]
ブーレーズで聴く「月に憑かれたピエロ Pierrrot Lunaire」3CDs
「月に憑かれたピエロ Pierrot Lunaire」の聴き比べ #2 6CDs
◇「月に憑かれたピエロ Pierrot Lunaire」の聴き比べ #3 6CDs
「月に憑かれたピエロ Pierrot Lunaire」の聴き比べ #4 5CDs




◆演奏:The Vesuvius Ensemble、ソプラノ:Jane Manning 1967年
 現代音楽を得意とする Jane Manning の Pierrot Lunaire は二つの録音がありますね。前回紹介のラトル指揮ナッシュ・アンサンブルとの録音は 1977年ですから、これはその10年前です。彼女自身がライナーノーツの中でも若いと書いています。
まだ声の変化による抑揚が薄く、マニング本人の回想の通りでグリッサンドを使った歌唱に近い?シュプレッヒゲザングです。The Vesuvius Ensemble の演奏もわりと控えめに展開されています。全体にややフラットでしょうか。
The Vesuvius Ensemble はピアノのSusan Bradshaw がリーダーとなっていますので指揮も本人と考えていいでしょうね。
録音は古く1967年ですが、発売になったのは後年になってから(所有のCDは2005年?)で、遅れて陽の目を見ています。




◆指揮:Elgar Howarth、ソプラノ:Cleo Laine 1974年
 イギリスを代表するミュージカル女優にして歌手のクレオ・レーン、そのピエロです。現代音楽がもて囃された時代の この録音はグラミー賞クラシック音楽部門にノミネートされた話題作だったのですが、今や記憶にも乏しくなった気がしますね。
彼女の声はどう聴いてもソプラノには思えませんよね。でも表現力は流石で、アゴーギクとディナーミクを聴かせてアルトの低音からメゾソプラノで声色を変化させながら、シュプレッヒゲザングを駆使します。特に低音での表現は他の歌手にはない世界ですね。時折ミュージカル的な表現が現れたりもして、歌詞が英語版と言うのも含めて、一味違った Pierrot Lunaire に違いありません。
演奏は現代音楽も得意とする Juilliard String Quartet です。
kokotonPAPAはレコードで持っていましたが、一時期Tower RecordがCD化してくれて楽しめます。これが絶滅危惧種の様に入手が困難とは。(CD写真右下がオリジナルのレコードのジャケットですね)
他に有名歌手としては1996年のヴェルビエ音楽祭のビョーク(& ケント・ナガノ)盤が非正規で出ているそうですが、見た事がありません。入手出来る伝手をお知りの方がいらっしゃいましたら、アドヴァイス下さいね。

 CleoLaine-PierrotLunaire.jpg


◆指揮:David Atherton、ソプラノ:Mary Thomas 1973年
 ソプラノらしい声色を駆使するメアリー・トーマスのシュプレッヒゲサングは、"らしい"感じですね。極端さは薄いですが、安心して楽しめる狂気?のピエロです。感情表現的にトーンが上がる感じも狂気らしさに繋がっています。
演奏は London Sinfonietta になりますが、ピアノの活躍が良いですね。アンサンブルとしてはトーマスを引き立てる役に廻りながら適度に対峙する、安定化パターンでしょうか。
全体としてバランスの良いピエロです。




◆指揮:Hans Zender、ソプラノ:Salome Kammer 1994年
 サロメ・カンマーと Ensemble Avantgarde のマッチしたクールなピエロです。
共に冷たく細い、好みの展開です。興奮を押さえた演奏と、カンマーの落ち着いた語りに近い詠いをベースに、狂気を感じさせる切れ上がる様なシュプレッヒゲサングが展開されます。カンマーの表情まで想像出来そうな霊気さえ感じますね。
アヴァンギャルド・アンサンブルとカンマーの同期する様な対峙の見事さが素晴らしいと思いますね。お薦めの一枚になります。




◆指揮: András Mihály、ソプラノ: Erika Sziklay 1987年?
 Erika Sziklay の柔らかなシュプレッヒゲサングと 控えめな Budapest Chamber Ensemble は、前半 一味違う幻想的なピエロです。第二部の後半までは、絶叫的な部分も極端な声色も然程使わずに流れる様に進みます。そのままフラットに軟らかく全体を通しても面白いのですが、正(狂)気に?戻る第二部後半以降があると、微妙? 後半は後半で、途中で奇妙な声も出したりして面白いのですが。
この曲の基本的な流れ出はありますが、そのギャップに戸惑います。そこをどう思おうかですね。悪くはありません。




◆指揮: Philippe Herreweghe、ソプラノ: Marianne Pousseur 1991年
 第一部から狂気的なマリアンネ・プスール、それに添う様に奏でるアンサンブル・ミュジーク・オブリク(Ensemble Musique Oblique) 、kokotonPAPAの好きなピアニスト アリス・アデール(Alice Ader)が入っている、のピエロ・リュネールです。第二部では展開のバランスの良さを感じますが、第三部では少々プスールの全開モードが爆走気味。ディナーミクとアゴーギクは強めで、メリハリが強いです。プスールの表現も表情豊かで、狂気そのものです。(歌詞が歌詞ですから)
アンサンブルのゲインをもう少し上げて、プスールのシュプレッヒゲサングと対峙する様な録音にしてくれた方がもっと素晴らしかったかも。でも、狂気と切れ味の逸品です。



聴き比べると、本当にバリエーション豊かで楽しいですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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