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マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 130CD聴き比べです [#3 : 41-60]


マーラー9番聴き比べ第3弾です。
今回は週末のインバル/都響の新マーラー・チクルスのコンサートを前にインバルの既発2CDを中心に20CDですね。
《後日追記》コンサートのCD発売を機に追記(インバル3CD)しました (2015/3)


Mahler Symphony No.9 -- 130 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:20CD
バーンスタイン[x6 ★☆], アバド[x5 ★☆], ラトル[x2 ★], ハイティンク[x6 ☆], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x4 ★㊟], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆]
 #3:20CD 本投稿
インバル[x3], M.T.トーマス, ドゥダメル, サラステ, バルビローリ[x3], 朝比奈隆[x2], ジュリー二[x2], ドラティ[㊟], ムント, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ, 小林研一郎
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[x2 ★], ジンマン, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン[☆], アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:20CD
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x3 ☆㊟], バレンボイム[x2 ㊟], マゼール[x4 ㊟], バルシャイ, ノリントン, エルダー, ツェンダー, 飯守泰次郎, カンブルラン, ブロムシュテット, 尾高忠明, A.フィッシャー, パク・ヨンミン




エリアフ・インバル, Eliahu Inbal (3録音)

マーラー振りの一人インバル、フランクフルト放送響とのジャケットは見ただけでも直ぐにインバルのマーラーとわかります。都響との2回目のチクルスとのアルバムもそうなりそうですね。



(#1)
Japan Philharmonic Symphony Orchestra
[DENON] 1979-11/19


1970年代最後の年、日本フィルハーモニー交響楽団と43歳若手インバルのマーラー9ですね。


【第一楽章】
第一主題は少しあっさり気味に、第二主題もクセはなく、やや速めで陰影付けした提示部です。展開部も流れはやや速めで、同じ様にコントラストを付けて良い流れを作っています。特に中盤、速い流れで作る主題の変奏の緊迫感は魅力的ですね。速めの設定と切れ味の第一楽章になっています。

【第二楽章】
主要主題は二つの動機を標準的に絡めて、第一トリオでシャキッとしたリズムを刻み、その流れで進みます。第二トリオではスローに落としてチェンジペース、大きな出し入れで聴き易いですね。

【第三楽章】
主要主題は標準的な流れですがキレがありますね。第一トリオは軽妙に入ってつなぎ、気持ちの良い流れを作ります。Hrがちょっと怪しいですが…w 中間部(第二トリオ)はやや速めで殊更に緩めません。最終楽章が読みづらい流れです。ラストのストレットは魅力的に暴れます!!

【第四楽章】
主部は速めで、穏やか暖色系のアダージョになっています。第一エピソードも速め細く繊細、緩やかに上げて行きます。第二エピソードでスローにすると、シャープな山場を作ります。インバルが足を踏みつけて唸りますね。後半からコーダのターン音型はppp極静の空間に誘います。


若々しさが伝わる速めでシャープなマーラー9です。もちろんアゴーギクでスローも使い視界は良好です。スロー低重心とは対角的な流れですね。

決して完璧ではない事も、次の作品を期待させる様な魅力になっている気がします。(インバルはこの頃から既に唸っていますね)






(#2)
Frankfurter Radio Symphony Orchestra
[DENON] 1986-9/24~27


上記JPSO(#1)から7年後、インバルとフランクフルト放送響のマーラー9番です。


【第一楽章】
第一主題はスローになって、微細なアゴーギクを付けています。第二主題は重み付けのパターンで、ここでも揺さぶりを与えますね。山場と第三主題は引っ張る様な重さを感じます。展開部前半は、陰鬱スロー➡︎明るいJ.シュトラウスII引用スロー➡︎山場はファスト、の流れです。山場の激しさは強烈です。中盤も強い出し入れで第三主題回帰からの山場は抑え気味に、後半のパッセージ葬送を低弦の歩みを明確にして進みます。再現部も大きな'うねり'を感じます。スロー重厚へと方向変換した第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題はスローに第二動機のリズムを引き立たせています。緩やかにテンポを上げて、第一トリオもスロー気味ですが揺さぶりが強いですね。第二トリオはモワッとした緩さにして来ます。もちろんスローです。全体もっさり感があるかもしれません。

【第三楽章】
主要主題はテンポ良くクセの無い軽快な流れ。第一トリオではここでも軽妙で、その後も良い流れです。JPSOとよく似た流れになっていますね。中間部はスローですがシャープ、最終楽章を思わせる好きな流れになりました。ラストは猛烈にpiù strettoします。聴き応え十分の第三楽章ですね。

【第四楽章】
全体JPSOの流れに似て、主部は速め穏やか暖色系のアダージョ。第一エピソードも速めからの気持ちのこもる流れ、第二エピソードもスローで哀愁を伝える様に入り山場はシャープに。ラスト5分の静の浮遊感はここでも上手いですね。感情移入が+された感じです。


前半スロー低重心と揺さぶり、後半ファスト切れ味、前後半二面性マーラー9です。前半楽章は7年前から180°の方向転換で驚きですね。後半楽章は、7年前JPSOのブラッシュアップでイイ感じです。オケのレベルも上々かと。

特に第二楽章がギクシャクとして落ち着きませんね。第三楽章は出色の出来なのですが。




《後日追記》


(#3)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
[EXTON] 2014-3/15-17


(所有は右のワンポイント・レコーディングver.です。よりホールに近い音ですね)

都響と2回目のマーラー・チクルスから第9番ですね。上記フランクフルト放送響(#2)から28年後になります。このコンサートは行って来ましたね。


【第一楽章】
緩やかな第一主題は微妙な揺さぶりを入れて、第二主題はここでも揺さぶりの強さを感じます。28年前と似ていますが、スロー化は避けていますね。展開部前半の流れもスロー・スロー・ファストながら極端なスローではなくなっています。中盤からも出し入れや重厚さをほどほどに、28年前を基本にしながらもクセのない標準的な第一楽章になりました。

【第二楽章】
主要主題は軽快、第二動機のリズムを明確に刻むパターンになりました。様変わりの楽章です。速い流れで進んで、第一トリオもリズム良くシャッキリしていますね。第二トリオはスローで緩やかに、まさに王道的です。
コンサートでの印象はフラットに感じた様ですが、安心とみるか平凡とみるか表裏一体の微妙なラインでしょうか。

【第三楽章】
主要主題は軽快な流れで、第二楽章からの流れとフィットしています。第一・第二主題の絡みは軽妙なブルレスケ、中間部もシャープに少し速めで流れます。そこが変わったポイントで、基本JPSO(#1)に回帰している流れですね。ラストのストレットはまとまり良く。

【第四楽章】
主部はここでも速め穏やか暖色系のアダージョ。唯一の違いはインバルがよく歌う事でしょうw
fg動機の後が少しモヤモヤしますが、第一エピソードは程よいテンポになりました。第二エピソードはスローから哀愁を湛える流れでシャープな山場を作り、ラストからコーダを見事に鎮めます。


王道的で奇を衒う事のないマーラー9です。過去の演奏をベースにしながらも経年の熟成がそうさせたのかもしれません。

これ以上を望むなら強烈な情熱や狂気と言ったものが必要かもしれませんね。堂々として録音も素晴らしいので誰も安心、オススメの一枚でしょう。
 都響との一年前のこのコンサート、その時のインプレも参考まで。(言葉足らずになっていますね)




マイケル・ティルソン・トーマス, Michael Tilson Thomas(MTT)


San Francisco Symphony
[SFS Media] 2004-9/29-10/3


MTTとサンフランシスコ交響楽団という鉄板コンビのマーラー9、言わずと知れた録音ですね。


【第一楽章】
第一主題は緩やかスローで包み込む様な美しさ、第二主題は一転させて暗いニ短調を強調します。音を引っ張る様にテンションを上げて反復へ、現れる第三主題は広がりある音色です。展開部は暗くスロー・アゴーギクで鬱に入ってシュトラウス引用で緩やかな日差しを感じます。アレグロ・リゾルートから一気に派手に鳴らし、中盤以降の聴かせ処もスローを機軸に山場の興奮を避けた流れになっています。やや間延び感が避けられない微妙な流れかもしれません。コーダは超スローです。スロー強調が個性的な第一楽章になっています。

【第二楽章】
主要主題はスローで入って落ち着いたレントラーに、第一トリオは几帳面な音使いで、第二トリオは静で上品な流れになっています。全編スローで興奮を排除したクリーンさが印象的ですね。

【第三楽章】
ここでは主要主題をシャキッとしたテンポと流れにしていますね。副主題(第一トリオ)もそれに乗って心地よい軽妙な快適さを作っています。もちろん今までの流れの通り、過度の力感は排除してクールです。中間部(第二トリオ)はターン音型を速めに入りながらスロー化、最終楽章コーダを印象付けして見事です。ラストは抑えの効いたストレッタです。標準的なテンポ設定となって流れを上手く締めましたね。

【第四楽章】
序奏でアゴーギクを振り主要主題の緩やかな美しさに流れ込みます。fg動機は静の透明感で、気持ちの入った弦楽奏につなぎます。hrを挟んでの弦楽奏も穏やかさの中に気持ちが入っていますね。第一エピソードもその流れを受けて哀愁のある弦楽を広がりよく奏でます。実に美しいです。第二エピソードも主張は同じで入りは哀しみさえ感じ、山場はそれが溢れるかの様です。後半からコーダのターン音型は鎮まって緩いアゴーギクの浮遊感の中に消え入ります。素晴らしい最終楽章です


スローでクリーンなマーラー9です。この曲を澄んだ流れで通しているのが分かります。第三楽章でテンポを戻して全体を締めているのは好感ですね。

ただ、前半楽章はスローの良さと背反で間延び感があるのが残念かもしれません。最終楽章は程よいスローが上手くマッチしているので余計にそう感じます。





グスターボ・ドゥダメル, Gustavo Dudamel

Los Angeles Philharmonic
[DG] 2012-2/2-5


現在最も注目される若手No.1ドゥダメルが音楽総監督を務めるロサンゼルス・フィルとのマーラー9ですね。


【第一楽章】
緩〜ぃアゴーギクを使ったスローの第一主題、第二主題でも緊迫感は詰めません。山場と第三主題も客観性が高く興奮を避けている様です。展開部前半の流れも、中盤の揺さぶった第二主題も、第三主題の回帰に合わせてテンポアップでクライマックスを作りますね。計算された流れになっています。パッセージの葬送はスロー&シャープですね。表情を殺したスローが印象的な楽章になっています。

【第二楽章】
主要主題は第二動機にリズムの刻みを強く入れるパターンですね。低弦音を強く、時に揺さぶりを付けて進み、第一トリオもリズムの取り方が強めです。第二トリオは軽妙さを見せますが、流れは重厚方向を感じますね。それでも流れに感情移入を避けた感は拭えません。

【第三楽章】
主要主題はテンポを上げて力感を持たせ、第一トリオの軽快さと絡みます。完成度の高い演奏ですが、それが表情を薄く感じさせている気がしますね。中間部は緩やかに鎮めて最終楽章を思わせてくれますね。ラストは強烈にpiù strettoです。

【第四楽章】
主部は第一楽章の様な緩〜ぃ微妙なアゴーギクですね。第一エピソードは静で繊細な流れから、緩やかに高めて行きます。それにしてもクールです!! 第二エピソードも同様で表情の薄いスローの静けさ、憂いは薄いですね。山場も見事ですが溢れ出す感情は控えめでしょうか。後半からコーダのターン音型スロー静の浮遊感は良いですね。


重厚なのに無表情のスロー、アゴーギクを振りながらも興奮を避けた流れ、不思議なマーラー9です。演奏も高レベルで隙はなく録音も良いのですが、機械仕掛けの様なよそよそしさを感じてしまいます。

情熱や思い入れが欲しい感じが残ります。でもコンサートで観たらこの音量感で素晴らしいと思うかもしれませんね。





ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste

WDR Sinfonieorchester Köln
[Profil] 2009-12/06-07


マーラー第5番では素晴らしい演奏を残したサラステが首席指揮者を務めるケルンWDR交響楽団とのマーラー9です。


【第一楽章】
第一主題は心地良い揺らぎを感じ、第二主題で鳴りを高めて山場へ繋げます。程よい揺らぎで堂々とした提示部になっていますね。展開部前半は陰影を濃く付けたスローから、緩やかにワルツ引用へ、走る山場、の王道ですね。中盤の主題の変奏もメリハリで見通しが効いています。アゴーギクとディナーミクのマッチ、各楽器の鳴りが良く、美しささえ感じる楽章ですね。

【第二楽章】
主要主題は第二動機のリズムを明確に刻むパターンです。第一トリオは速めにシャープに現れて、流れを決めますね。第二トリオはスロー優美にコントラストを付けて来ます。メリハリと揺らぎのある流れですね。アゴーギクとディナーミクの相乗効果がここでも明白です。

【第三楽章】
主要主題は切れ味良く軽快、第一トリオの軽妙さと相まってテンポ良く進みます。中間部(第二トリオ)では大きくスローに、ターン音型を優しく奏でて小さな最終楽章の様で見事ですね。ラストはシャープなストレットです。

【第四楽章】
濃厚な序奏から入る主部は緩やかスローに揺らぎを付けて個性的、fg動機後は濃い目の揺さぶりになっています。第一エピソードは繊細に鳴らして、緩やかにテンポを上げながら進みます。波が大きく打ち寄せる様で素晴らしいですね。第二エピソードは速め、山場を盛大に奏でます。ラストのアダージッシモはマーラーの指示する「ersterbend, 死に絶えるように」の通りに薄く細く冷たい音色で消え入ります。


独特な揺らぎとバランスが絶妙なマーラー9番です。各所に振られたアゴーギクとディナーミクが個性を光らせますね。オケの鳴りの良さも素晴らしいです。

完成度は高く、鏤められた個性的な揺らぎは一聴に値すると思います。or?!





ジョン・バルビローリ, Sir John Barbirolli (3録音)

バルビローリは1960〜1964年の短期間に3枚の録音を残していますね。いずれも古いのですが、最も知られるのはもちろんBPOとのセッションでしょう。



(#1)
Rai-Torino Orchestra
[DELTA] 1960-11/25


トリノRAI交響楽団(現: Orchestra Sinfonica Nazionale della RAI)に客演した際のマーラー9ですね。


【第一楽章】
スローな序奏から第一主題はクセなく、第二主題はあまり落差を付けませんね。反復はやや速く揺さぶり、少し変わってます。展開部前半は標準的な変化、中盤以降の主題変奏はアゴーギクを振っていますが演奏にシャープさが欠ける感じです。

【第二楽章】
主要主題は重さを避けて程よいテンポに、第一トリオはシャッキリとリズムを刻みます。第二トリオも殊更のスローはしませんね。

【第三楽章】
主要主題は標準的な流れですが少々ギクシャクですね。ブルレスケとは違います。第一トリオで奇妙なスロー化、これは変でしょう?! 中間部はあっさりでtpがヘマをかませてくれますw ラストはストレッタ出来ません。

【第四楽章】
主部は録音が今ひとつで、やけに遠く聴こえます。少し音厚なアダージョで、fg動機から速いです。第二エピソードはますます速く感情移入は薄く、変です。


標準的流れにちょっと揺さぶり最終楽章は速くて違和感大のマーラー9です。前半二楽章はボチボチ、後半二楽章はガックリです。

演奏も若干怪しげで腰高、肩透かしの印象かもしれません。1960年録音としては十分聴けますが、最終楽章はSP盤みたいで良くないですね。(個体差という事はないでしょう)






(#2)
New York Philharmonic
[NYP] 1962-12/8


ニューヨーク・フィルに客演した時のマーラー9。ニューヨーク・フィル自費出版からになります。(後に伊Memoriesからも出ましたね)


【第一楽章】
ここでも序奏はスローに、第一主題はやや緩やかですが感情がこもっています。第二主題はここでも変化薄めですが、反復は素直に流しています。展開部序奏・一主題回帰は程よいスローの陰鬱さが生きています。前半ラスト山場を派手に速く鳴らして、中盤の主題の変奏もスロー鬱からアゴーギクのコントラスト付けが上手いですね。展開部後半の葬送行進曲も重い足取りで、アゴーギクの生きた第一楽章になっています。

【第二楽章】
主要主題は第二動機の弦がリズムを明確に刻みます。切れ味良く進み、第一トリオも小気味よいリズムを付けて流れを作りますね。第二トリオはスローに優美さを見せて、主部回帰の山場も良い鳴りです。

【第三楽章】
主要主題は絡みを強めに混乱気味にブルレスケ、第一トリオではここでも少しスロー化と言う変化球ですが違和感は少なめです。中間部(第二トリオ)穏やかに、ターン音型の哀愁が最終楽章をイメージさせますね。ラストpiù strettoは重量級の迫力です。

【第四楽章】
主部はここでも音が厚めですが、感情を込めた流れになっています。fg動機からも速める事はありませんね。第一エピソードはやや速めから入りますが細い音色になってスロー化、良くなりました。第二エピソードでも山場までは速い流れで少々落ち着きませんが、ターン音型からコーダはスロー鎮めます。もう少し静を強調して欲しい感じではあります。(実はこれがバルビローリなのですが…)


アゴーギクが上手くスッキリしたマーラー9です。"スロー静にファスト強"の標準的アゴーギクで安心して聴く事が出来ますね。

録音は残念ながらMONOになりますが、充実感の高い演奏で楽章間の環境音も入っていて会場にいるみたいです。個人的には次のBPO(#3)よりも好みです。






(#3)
Berliner Philharmoniker
[EMI] 1964-1/10-18


LIVEでの良さからベルリンフィル団員が希望して正規録音されたという逸話のマーラー9ですね。


【第一楽章】
例によってスローの序奏から第一主題は緩やかで表情が豊かです。第二主題でも殊更の変化は付けませんね。山場と第三主題は怒涛です。展開部前半も "スロー暗鬱→明朗な引用→ファスト強" が見事、中盤でも各主題の陰影付けをクッキリと付けて、後半のパッセージを低重心の葬送へと繋ぎます。太い流れの第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題は二つの動機を見事に絡め低重心で突き進み、第一トリオはリズムを強調します。第二トリオは緩やかですが隙がありませんね。少し肩の力を抜きたい感じです。

【第三楽章】
主要主題は隙なく落ち着いて、まとまり過ぎるくらいです。第一トリオのスロー化は一貫してバルビローリ色ですね。中間部はスローに落として実に揃いが良い流れを作ります。ラストはもちろん怒涛の一言です。

【第四楽章】
主部はスロー超濃厚。fg動機は軽めですが、そこからは再びドドっと重心を下げてのしかかってきます。第一エピソードも隙のない濃い流れ、第二エピソードも狙いはスピードアップで弩級の山場です。繊細さなどどこ吹く風?!の流れで、ersterbendなし。最後は終わってホッとします。


最初から最後まで重厚濃厚で太い流れのマーラー9です。かつてはと言われた録音で、バルビローリの振るアゴーギクが重量路線BPOとマッチして怒涛と低重心の一辺倒になっています。力を抜いたパートなど存在しません。

ガッツリ系ファンにの貴方にはオススメの一枚です。個人的には完食後は胃もたれが…
デジタルリマスタリングにより古さは全く感じません。





Takashi Asahina, 朝比奈隆 (2録音)

朝比奈さんが設立して亡くなるまでの54年間(1947-2001)、手兵中の手兵"大フィル"を振ったマーラー9番は2録音あります。



(#1)
Osaka Philharmonic Orchestra
[大阪フィル] 1975-7/19


東京定期公演・東京文化会館のマーラー9は、大阪フィルのオリジナル・レーベルからのリリースです。


【第一楽章】
第一主題は程よい流れで、第二主題で暗転、山場と第三主題を鳴らす王道的な提示部です。展開部前半も鬱に暗く響かせてJ.シュトラウスIIの引用を少しスローに明るく、ラスト山場はテンポアップ派手にまとめます。中盤の第二主題の揺さぶりも速めに進めて表情がありますね。その後もテンポの出し入れを上手く生かし、後半の葬送パッセージに繋げます。見晴らしの良い楽章です。

【第二楽章】
主要主題は二つの動機を緩やかなレントラーにして絡めます。そこに入ってくる第一トリオはリズムを明確にして流れを再構築しています。第二トリオは優美に変化、その後の緩さが少し気になるのは残念です。

【第三楽章】
主要主題はややリズムがギクシャク、第一トリオは緩やかでまとまりが弱い感じです。ブルレスケなのか今ひとつなのか、どうもスッキリしません。中間部のキーであるtpも不安定さを感じます。

【第四楽章】
主部は緩やかで情感ある良い流れです。第一エピソードは暗いターン音型をやや速めに入りますが、もう少し抑えて欲しかったですね。第二エピソードも速い流れを作って山場へ急ぎます。これは好みではありません。後半からコーダはスロー化させ良いのですが…


標準的流れかと思いきや最終楽章で速い流れのマーラー9です。演奏の怪しさや流れの緩さも気になります。

中間楽章が残念ですが、第一楽章は良かった感じです。第四楽章の速い流れは好みとは違いました。






(#2)
Osaka Philharmonic Orchestra
[FIREBIRD] 1983-2/15


東京定期から8年後、第190回定期演奏会 大阪フェスティバルホールのマーラー9ですね。


【第一楽章】
第一主題は少し気持ちを込めて、第二主題は重さと揺さぶりを感じます。反復を含めてスローで力感の提示部です。展開部前半も重心を下げてスローを生かす感じです。中盤も低重心の流れをキープしてテンションを高くして来ます。スロー基本のアゴーギクと微妙な揺さぶり、個性を見せる第一楽章になりましたね。

【第二楽章】
主要主題はややスローですが刻むリズムがはっきりしました。第一トリオも色を加える様にメリハリを付けています。ここでも重心の低さを明確にして進み、中間部(第二トリオ)でも重厚な流れは変えませんね。スタンスが真っ直ぐです。

【第三楽章】
主要主題は鳴りとバランスが良くなって切れ味があります。第一トリオも軽妙リズムを刻んで良い感じです。中間部(第二トリオ)では穏やかに流れを変えて、ターン音型では最終楽章を思わせる王道ストーリーです

【第四楽章】
主部は感情がこもる様なアゴーギクを付けて濃厚に流れます。第一エピソードでは澄んだ音色で入り、重心を下げながら進みます。第二エピソードもスローになって繊細さが伝わります。山場も素晴らしいのですが、ここに感動が欲しかった!! ラストに向かうターン音型は見事に"ersterbend"しています。


スロー基本のアゴーギクと低重心のマーラー9です。方向が統一されて録音もその方向性になっているかと。演奏レベルも8年で上がって、朝比奈さんの意図を十分表現している感じですね。

素晴らしい演奏で、コンサートならではの+α "興奮"や"感動" が憑依していたら間違いなしです。





カルロ・マリア・ジュリーニ, Carlo Maria Giulini (2録音)

ジュリーニと言うとシカゴ響とのマーラー9を浮かぶ人も多いのではないでしょうか。今回インプレは他に非正規盤1枚の2録音ですが、正規盤はもう一枚スウェーデンRSO(1973, Weitblick)があります。



(#1)
Wiener Symphoniker
[sardana] 1975

非正規盤ですが、ジュリーニが首席指揮者を努めていた時代(1973-1976)のウィーン交響楽団(VSO)を振ったマーラー9ですね。


【第一楽章】
緩やか優美な第一主題から第二主題は暗鬱に明瞭に変化させています。高まって反復はスローが気になりますが、第三主題も刺激の少ない派手さですね。展開部前半は静鬱➡︎明るさ➡︎激しさ の流れを緩やかに作り第三主題を炸裂させます。この曲の聴かせ処の展開部後半は緊張感ある陰影の第二主題からコントラストを付けたスロー鬱な2度下降の弦、高らかとした第三主題、激しく沈み込む第一主題、と見晴らしの良さがありますね。再現部は美しさが光ります。スローなエモーショナルさと緊迫感のコントラストがある第一楽章ですね。

【第二楽章】
主要主題はクセのない優美なレントラー、絡む第一トリオは付点音を刻んでスローに個性ある変化を与えています。不思議と合っていますね。第二トリオは穏やかに。回帰する主題のスローは気になりますが、アゴーギクの表情変化で聴かせる楽章になっています。

【第三楽章】
主要主題はややスローですが、刺激のトッピングで切れ味ある流れですね。副主題(第一トリオ)は少しだけ穏やかになっています。レハール引用も洒脱な流れを作って、激しい絡みもあるコントラストの良さがあります。中間部(第二トリオ)ではターン音型を緩やかに、最終楽章を予告しますね。ラストは激しさを見せてフィニッシュです。

【第四楽章】
序奏は感情的で、主要主題は包み込む様な情感に変えて行きます。fg動機は速めで濃厚な弦楽奏となります。第一エピソードは哀愁感を強調する流れで徐々に情感が溢れる様になりますね。後半はラストを覗く様なターン音型を奏でてとてもエモーショナルです。第二エピソードはその流れから山場をテンポアップとクレシェンドで高めて感情を解き放ちます。後半からコーダのターン音型はobが出ると一気に鎮まって静の空間に漂いながら終息します。


鬱・暗・明・美をアゴーギクで表現したマーラー9です。演奏にやや不安を感じたり、気になるスローパートもありますが、明確な構成感と個性で楽しめます。

次のCSO盤の原型がここにありますね。荒削りさが残されていて、リマスタリング正規盤が出て欲しい一枚です。






(#2)
Chicago Symphony Orchestra
[DG] 1976-4/5, 6


昔から定評のあるジュリーニが首席客演指揮者(1969–1972)を務めたことがあるシカゴ交響楽団を振ったマーラー9です。有名作曲家の第9番をCSOと録音したシリーズの一つですね。上記VSOとの1年後の録音です。


【第一楽章】
緩やか優美な第一主題、第二主題は暗鬱さを揺さぶる様に、大きく高めて反復のスローも締まり良く、第三主題は抑えつつも華やかです。展開部の前半、序奏の暗鬱はほどほどに、シュトラウス引用も明るさは控えめ、アレグロ・リゾルートからの山場と第三主題回帰は鳴りの良さを感じます。展開部後半の第二主題は鬱の色合い濃く、2度下降音階を静の中に主題を変化させながら、第三主題回帰から第一主題の沈み込みは華々しさですね。再現部はコーダが美しいですね。1年前のVSOに磨きをかけた様なコントラストの光る第一楽章になりました。

【第二楽章】
主要主題は歯切れの良いレントラーでシャキッとしています。第一トリオは付点音をスローで強調、個性的でVSOと同じですね。第二トリオは落ち着きを取り戻す感じでしょうか。回帰する第一トリオは弾む様に進むのが面白いですね。少し個性を与えながらも安心感ある楽章です

【第三楽章】
切れ味ある主要主題、VSO時のスローを回避して標準的になりました。第一トリオはその流れに穏やかに乗る感じで、二つの主題(動機)が重心を下げて進みます。随分と安定化方向になりましたね。中間部は静めて、ターン音型を緩やかに奏でる安心感ある流れです。主題回帰の山場からラストは落ち着いて盛り上げ、più strettoも冷静です。

【第四楽章】
主部は穏やかな優しさが広がり、fg動機後は色合いを濃くしてhrの後は情感を増して行きます。第一エピソードは繊細な哀愁から感情を盛り上げて、VSOと同じ気持ちのこもった流れを感じます。後半はターン音型の美しさを奏で、ジュリーニの第一エピソードは本当に素晴らしいですね。このままコーダに入っても不思議は無いくらいです。第二エピソードもその延長線上に入り、静から少しテンポアップさせ山場を築きます。余韻でvnの引っ張る様なボウイングが感情を溢れさせる様です。後半からコーダは静の中で浮遊感のターン音型を生かしていますね。


明確な出し入れとコントラストのマーラー9です。基本構成はVSOと同じですが、演奏とスローの不安定さは無くなり、磨きをかけた完成度を感じます。

各パートの構成もわかり易く、個性のスパイスもほどほどあって、ちょっとした刺激を安心して楽しめるオススメの一枚ですね。





アンタル・ドラティ, Antal Dorati


Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
[Weitblick] 1984-5/30


ドラティとベルリン・ドイツ交響楽団のライブ。ドラティというと個人的にはストラヴィンスキーが浮かびます。さてマーラー9はどうなかと言う感じになりますね。


【第一楽章】
第一主題は太めの印象、第二主題はかなり濃い音に、第三主題では派手にオケを鳴らしています。展開部前半は序奏の暗鬱さを途中テンポダウンさせてからシュトラウス引用に入りますが、微妙なアゴーギクで落ち着かないです。展開部後半は主題の変奏が荒っぽい感じですね。それと微妙な揺さぶりが全体的に何か落ち着かない気配を醸し出している感じです。多少ラフな演奏と奇妙不思議な楽章です

【第二楽章】
主要主題は標準的なレントラーですがなぜか落ち着きません。第一トリオは切れ味良くと言った感じで、第二トリオではほどほどにスロー化、全体特殊性はありません。でも何処か落ち着かないんですねぇ。

【第三楽章】
主要主題は重いリズム感でギクシャクとして、副主題(第一トリオ)はそこから重さを剥がした様な感じ。歯車が狂った様な流れから、中間部(第二トリオ)ではターン音型を美しく奏でます。奇妙です。tpの鳴りは怪しいですが。この楽章が一番奇妙奇天烈なドラティ・マジックの世界ですね。

【第四楽章】
濃厚な主要主題、スローに鳴らすfg動機以降も分厚い弦楽奏です。第一エピソード入りの低弦は超スロー、その後vnがコケるのも驚きです。呼吸が苦しくなる様な濃厚さで進んで最後は細い音色のターン音型に落ち着かせます。第二エピソードは大きくスローでゆるゆると進み、山場でテンポアップして昇り詰める感じです。後半からコーダも奇妙なアゴーギクで引き伸ばして来ます。この楽章は明確に奇妙さがわかりますね。


ドラティ・マジックのマーラー9です。全体のフィット感がズレていて落ち着かない、お尻がムズムズする様な感じでしょうか。

若干スローで演奏もやや荒い、僅か〜に感じる揺さぶり、明確に表現できないいずれ不可思議な演奏です。第二楽章などピエロが舞台で踊っているのが浮かぶ様な……聴いてみたいでしょ?!w
ちなみに海賊盤から正規盤になって登場した一枚ですね。





ウーヴェ・ムント, Uwe Mund

Kyoto Symphony Orchestra
[ARTE NOVA] 2001-3/22,24,25,26


ムントが京都市交響楽団の常任指揮者時代(1998-2001)最後の録音です。 (多分w)


【第一楽章】
穏やかな第一主題、第二主題で少し刺激を与えてクレシェンドであげて反復に、第三主題少しテンポアップで締めます。この流れは上手いですね。展開部前半は"暗鬱→明るく→炸裂"の流れを丁寧に、厄介な後半も三つの主題にアゴーギクでの差別化を付けて見晴らしが良いです。ほどほどのディナーミク&アゴーギクで、演奏も流れもキッチリと真面目な楽章になっていますね。

【第二楽章】
主要主題は少し速めのレントラー、第一トリオはキッチリとリズムを刻みます。音もマイルドながら教科書的な真面目さです。第二トリオも緩やかさで、この楽章自体の印象そのものです。主要主題の回帰でほどほどに荒れるのも特徴的ですね。

【第三楽章】
主要主題はテンポを上げていますね。副主題(第一トリオ)もテンポをキープして少し戯けた流れに、中間部(第二トリオ)はあっさりしています。ラスト山場は盛り上げて、フィニッシュは見事にpiù strettoします。まとまりある演奏ですが、感情が感じられません

【第四楽章】
主要主題は穏やかな弦楽奏で、fg動機後も殊更に濃厚にはしませんね。第一エピソードは丁寧なのですが無表情的な感じです。山場で異常なほど打楽器の音を大きくするのは何の意味があったのでしょう?! 第二エピソードも山場の異常な打楽器音で、そればかり印象に残ります。何処かシックリ来ない最終楽章に感じます


丁寧でまじめなマーラー9です。ミスやエラーは皆無で、セッションで作り込んだのがわかる演奏完成度です。

このパターンにある事ですが、感情移入や一体感と言ったこの曲に一番欲しいものが感じられないのは残念です。





リボール・ペシェク, Libor Pešek

Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
[Virgin Records] 1990-6


ペシェクが音楽監督(1987-1998)を務めた時代のロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団のマーラー9です。現在は桂冠指揮者ですね。


【第一楽章】
第一主題は優美、第二主題も同じ流れを保ち山場を作ると反復から第三主題で大きくまとめます。展開部は前半は鬱な中にJ.シュトラウスの引用を穏やかに生かし、アレグロ・リゾルートからは強音パートに鋭いキレを見せてくれますね。コーダのスローは少し気になりますが、見事なコントラストです。

【第二楽章】
主要主題の二つの動機は穏やか軽やかですが緩め、第一トリオも流れは変えず優雅な宮廷音楽調です。第二トリオもその流れに乗っています。やや間延び感があるでしょうか。

【第三楽章】
主要主題と副主題は速めの切れ味で適度な荒れた表情も、中間部はまさにチェンジペースでスローに変えて大きく広げますがややフラット。山場とラストの激しさはキレキレで光ります。

【第四楽章】
主要主題は流れの良いスロー、第一エピソードは透明感のある静に沈ませています。(緩くディナーミクの揺さぶりが入っていますね) 第二エピソードは少しテンポアップさせ哀愁感を付けて、山場を鳴りよく奏でます。(山場の下り坂のスロー化は??ですが) 後半からコーダは極端に静音化します。


スロー基本でキッチリとしたマーラー9です。オケの鳴りも良くパワープレイのパートは素晴らしいのですが、処々でフラットな間延感になるスローが残念

スローのフラット以外はディナーミク/アゴーギクのバランスも上手いですし、定位の良い録音も一役買っているのですが。





クリストフ・フォン・ドホナーニ, Christoph von Dohnányi

The Cleveland Orchestra
[DECCA] 1997-5


ドホナーニが音楽監督(1984-2002)として鍛えた手兵クリーブランド管弦楽団を振ったマーラー9ですね。現在は桂冠指揮者です。


【第一楽章】
大きくスローに振った第一主題。第二主題で重心を落として盛り上げますが、上手く揺らぎをかけて寄せては引く波の様です。展開部前半のスロー静もディナーミクで緊張感を与えて、中盤を出し入れ良く程よく荒れながら聴かせます。パワーと静のコントラスト、聴きやすい第一楽章ですね。

【第二楽章】
主要主題は標準的なテンポとリズム感で、第一トリオは歯切れ良くですがスロー化です。ちょっと珍しい流れでしょうか。第二トリオはその流れで落ち着きを見せる感じです。スローお上品な楽章です。(マーラーの意図とは違う様な…)

【第三楽章】
主要主題と副主題はキレ良いリズム感です。スロー化させた第二楽章と対比する感じでしょうか。中間部も約束的に静めますね。ラストも盛り上げますが暴れる事はありません。

【第四楽章】
主題は暖色系の緩やかさです。第一エピソードは静で暗に、回帰する主題を大きく奏でます。第二エピソードは一つ目の山場を揺らぎを使って盛り上げ、後半の主題はターン音型の浮遊感をコーダにつなげます。


安心して聴けるバランス感のマーラー9です。ベースはスローですが適度な揺らぎを入れているので飽きることもないでしょう。

突出を避けた安定志向がお好みの方におすすめです。打楽器重低音は床が響く録音です。





ジェラード・シュワルツ, Gerard Schwarz

Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
[Artek] 2006-6/1-3


米トランペット奏者で指揮者のG.シュワルツが音楽監督(2001-2006)を務めた時代にロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団と行ったマーラー・チクルスからの第9番ですね。


【第一楽章】
第一・第二主題とも表情は穏やか、一山上げてから提示部反復は見晴らしが良いです。展開部前半もピチカートを強調する程度でクセはなく、中盤での激しいテンポ変化も堂々とこなしています。コーダも含めて良く出来ていますね。

【第二楽章】
主要主題は適度なテンポに切れ味、第一トリオで少し色付けを増したレントラーにしています。絡ませながら第二トリオで一息入れる感じでしょうか。落ち着いた流れですね。

【第三楽章】
上げ気味の主要主題は第一トリオと絡んで適度に刺激的で流れよく進み、中間部からの表情変化も上手く付けています。ラストもしっかりとストレッタしています。

【第四楽章】
主題の流れは緩やかで大きく、第一エピソードもその流れで中後半はぶ厚いです。第二エピソードの山場はタメを作って見事に鳴らし上げ、後半からはコーダに向けてターン音型を緩やかに沈めて行きます。


80点主義的なマーラー9ですね。全楽章ミスや変な処は全然感じません。全く悪くないのですが、惹きつけられる何か+αが見当たりません

炸裂するパワーや狂気とまで言いませんが、良い流れの演奏ほど この曲には強い思い入れの様な+αが欲しい気がします。





エミール・タバコフ, Emil Tabakov

Sofia Philharmonic Orchestra
[Capriccio] 1991-3

 
(右は全集です)

タバコフのソフィア・フィルハーモニー管弦楽団 首席指揮者(1987-2000)時代のマーラー9です。ブルガリア・セットのチクルスからですね。


【第一楽章】
スローに振った第一主題と第二主題はチェンジペースも薄く、スローに徹した提示部です。展開部もスローですが前半の静はコントラストが強めで引用パートは緩め、アレグロ・リゾルートからはテンポ変化を大きく付けて表情変化を見せてきます。コーダは超スロー、テンポ変化の出し入れが強い楽章です。

【第二楽章】
スロー気味の主要主題は処々ゆるく、第一トリオはテンポアップで帳尻合わせです。第二トリオは落としますが、表情変化は薄いでしょうか。

【第三楽章】
かなり速い主要主題と副主題は荒れた表情を見せます。中間部で大きくスロー化しますが、ラストはひと暴れ。

【第四楽章】
主題を広がりよく鳴らし、第一エピソードの静けさ暗さも弱めです。第二エピソードは超スローから山場を作り、後半はスロー静のお約束ですね。


テンポ変化の大きいマーラー9です。一つの主題の中でも大きくテンポを変化させ、全体では超スローから乱速までありますね。それでやや統一感は欠けるのが残念ですが。





Ken-ichiro Kobayashi, 小林研一郎

日本フィルハーモニー交響楽団 (Japan Philharmonic Orchestra)
[EXTON] 2007-1/25,26


第5番では素晴らしい録音を残しているコバケンさんのマーラー9 Liveです。マーラー9はこの一枚しか現状では存在しない様ですね。


【第一楽章】
第一主題は低弦のピチカートを強く感じますね。第二主題は若干の揺さぶりを付けています。展開部の前半・後半も特徴的に振った感じはありませんね。聴かせどころの第三主題回帰もフラットで、再現部ラストのスローは間延び感が強いです。
多少の揺さぶりはありますが標準的、どこかスカッとしない第一楽章ですね。演奏に一体感や集中した流れが欲しいです。

【第二楽章】
主要主題の第二動機は刻みますが、二つの動機を絡める流れは標準的です。第一トリオは歯切れが良いですね。第二トリオは優美な流れを作り、第一楽章に比べると締まりがありますが、それでも長く感じます。

【第三楽章】
主要主題は標準的な流れですが一体感が今ひとつ、第一トリオは適度に穏やかに絡みます。中間部も標準的にスロー化して来ますが、どこかよそよそしい感じですね。最後の主題回帰からラストの勢いは良いですね。

【第四楽章】
序奏はコバケンさんが唸っていますw 主部は標準的流れですね。第一エピソード、第二エピソードも標準的で、それを超える+αを味わいたかったです。長い沈黙の後にアプローズが入りますね。


標準的な流れ主体ですが、何かモヤモヤしたマーラー9です。アゴーギクによる流れの変化でもあると聴きやすい感じがします。

また、一体感や感情移入と言ったLIVEならではのスパイスや、ふっ切れた気持ちが前に出て来て欲しかったですね。








もちろん日頃聴いておくわけですが、なかなか進みませんねぇ。^^;


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ジャンル : 音楽





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