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マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 130CD聴き比べです [#2 : 21-40]


前回のMahler Symphony No.9 の聴き較べはバーンスタインのイスラエル響盤が出た時に20CDの聴き較べをしてみました。
今回は10月27日(日)のラザレフ指揮日本フィルのコンサートを前に聴き比べです。
【後日記】▶︎ コンサートのインプレ  ▶︎ 同CDのインプレ

とりあえず今回は20CDで計40CD。まだまだ先は長そうです。


Mahler Symphony No.9 -- 130 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:20CD
バーンスタイン[x6 ★☆], アバド[x5 ★☆], ラトル[x2 ★], ハイティンク[x6 ☆], ゲルギエフ
 #2:20CD 本投稿
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x4 ★㊟], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆]
 #3:20CD
インバル[x3], M.T.トーマス, ドゥダメル, サラステ, バルビローリ[x3], 朝比奈隆[x2], ジュリー二[x2], ドラティ[㊟], ムント, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ, 小林研一郎
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[x2 ★], ジンマン, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン[☆], アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:20CD
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x2 ☆㊟], バレンボイム[x2 ㊟], マゼール[x4 ㊟], バルシャイ, ノリントン, エルダー, ツェンダー, 飯守泰次郎, カンブルラン, ブロムシュテット, 尾高忠明, A.フィッシャー, パク・ヨンミン




ヘルベルト・フォン・カラヤン, Herbert von Karajan (4録音)

前回はバーンスタインをメインにしたので、もう一方の雄カラヤンからインプレです。4録音(DGx2, 非正規盤x2) 全てベルリンフィル(BPO)、ここに凄い演奏が隠れています



(#1)
Berliner Philharmoniker
[DG] 1979-11, 1980-2, 9 (Kaplan Foundation 9.0310)


まずはカラヤンらしくセッションですが、その録音期日を見ると長期で綿密に作り込まれていると推測できますね。かのバーンスタインBPOのLIVEが1979年10月4日、その翌月から始めている訳で…


【第一楽章】
スロー緩やかな第一主題、第二主題も少し鬱にしますが流れは同じ、第三主題を向かえると壮麗な山場を作ります。展開部は暗鬱と明(激)のコントラストを明確に作りますね。"mit höchster Gewalt" もきっちりと。

【第二楽章】
主要主題はゆっくりとしたレントラー、第一トリオはリズムの刺激を付けて、第二トリオではhrが緩やかに登場します。ただ、全体的にはややモッソリ。スロー基調が少々足を引っ張っている様な感じです。

【第三楽章】
主要主題は速めに刺激を付加してリズミカルに進み、第一トリオと絡みながら、中間部(第二トリオ)ではスローでチェンジペースです。山場は力感ですが、流れの変化度は低めです。二つの中間楽章に締まりが欲しい感じですね。ディナーミクが薄い気もします。(ミキシングの問題?!)

【第四楽章】
主要主題は厚い音でこれがこのアルバムを象徴している気もします。第一エピソードは重さが強く後半のターン音型への繋がり感が弱いです。第二エピソードもターン音型をあまり落とさずに入って山場を重厚に作る事に専念します。好みの問題ですがしっくり来ませんね。鬱陶しい感じです。


何となく蒸し暑くスッキリしないマーラー9です。厄介な中間楽章の見晴らしが良くないのと、全体的にモワーっと厚みを感じるのがそう思わせるのかもしれません。BPO仕様?!

時間をかけてリリースしたのに満足できずに、翌年すぐにLIVE盤を録音したのでしょうか…(勝手な妄想ですw)






(#2)

Berliner Philharmoniker
[DG] 1982-9/30 Berliner Festspiele


上記セッション1981年リリースの一年後、極珍しいカラヤンの公式LIVEです。なぜこのタイミングでLIVE演奏を残したかったのでしょうか。どうしても背景にレニーを感じてしまいます。


【第一楽章】
第一主題は抑え気味・速めのテンポでスッキリとしました。第二主題は上手く鎮め、反復からの第三主題山場は締まりがいいです。アゴーギクも生きていますね。展開部前半は揺さぶりを上手く入れて緊張感を保ち、アレグロ・リゾルートからのパワープレイに繋げています。その後のパートもアゴーギクとディナーミクが上手く振られ、パウゼも明確に入れて緊迫感と刺激が伝わりますね。引き締まった第一楽章になりました。

【第二楽章】
主要主題は穏やかなレントラーになって一体感が増しています。第一トリオは印象が薄めで、第二トリオでシャキッと。流れはスローを感じて、もう少しピシッとすると嬉しいです。ラスト主題のテンポアップは素晴らしいのですが。

【第三楽章】
主要主題はハイテンポ・シャープに疾駆、第一トリオも穏やかな中に切れ味良く絡んで進みます。中間部(第二トリオ)は適度なスロー化で一呼吸入れ、最終楽章のターン音型を印象付けます。ラストの主題回帰からフィニッシュはpiù strettoでいい流れですね。

【第四楽章】
主要主題は暖色系で厚みがあり、セッションと似た(危険な香りの)方向性です。ところが一転、第一エピソードは静的になって後半への繋がり感が強調され、素晴らしく良くなりました。感動的でグッときます。第二エピソードでもその流れを保ちつつ、大きな山場を見事に作ります。後半のターン音型からコーダでは緩やかなポルタメントの浮遊感から細く静かに消え入ります。


シャープな流れのマーラー9です。アゴーギクとディナーミクを付け、過度の興奮と刺激は排したバランスの良さが感じられますね。最終楽章第2エピソードは素晴らしく、白眉ですね。

セッションから贅肉を削ぎ落としスッキリとした印象になっています。この完成度だと第二楽章が本当に残念!!。



この年1982年は四ヶ月間で三回のLIVE録音が存在します。上記DG盤9/30の他に、激しさの5/1とDG同傾向の8/27です。5/1があまりにも違うので驚きな事は有名な話。以下がその非正規ライブ録音です》






(#3)
(★)☆
Berliner Philharmoniker
[sardana] 1982-5/1

DG公式LIVE盤(#2)の約3ヶ月前の非正規LIVE盤、これが凄いです。


【第一楽章】
第一主題は抑えながらも緩やかなアゴーギクが絶妙で、感情が伝わります。ゆっくり感情移入して第二主題で緊迫感を漲らせ、反復から第三主題は華々しいです。展開部前半の暗鬱もピーンとテンションを張って、J.シュトラウスIIの引用からアレグロ・リゾルートで山場へ駆け上がります。後半はポリフォニーを渦巻く様にして漲る緊張感を作っていますね。つい軽く聴いてしまう再現部の各楽器のソロ交歓も刺激的で、もの凄いテンションの第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題はスロー、穏やかさと切れ味の両輪を回します。重厚さを見せながら進んで、第一トリオを鳴り良く登場させますね。第二トリオもスローながら太い音色で威風を見せます。後半山場はテンポアップし強烈なテンションです。スローのスタンスは変わりませんが、重心を下げて堂々感で完成度を上げた感じです。

【第三楽章】
主要主題はいきなりハイテンポ&ハイテンションで突き進み、軽快な第一トリオを巻き込んで行きます。レハールの引用も快速に進むと、弦楽器の対位的緊迫感が絶頂になったところで中間部(第二トリオ)のtpが緩やかな美しさを奏します。最終楽章を印象付ける流れでgood!ですね。

【第四楽章】
序奏から色濃く入ると、主要主題を厚めに夏の夕暮れの様に。好きな方向性ではないのですが、重圧感と緊張感が凄いです。fgの動機からも濃厚ですが、その低重心で強烈なテンションは圧巻です。
第一エピソードはターン音型を繋いで行きますが、音圧と緊張感は高めキープで山場を感動的に迎えます。その後を静めて第二エピソードに入り静かに美しく奏でて行き、怒涛の山場は強烈そのものです! 後半は穏やか静かに大きく変化させてターン音型を奏し、コーダで消え入ります。見事な構成ですね。
演奏終了時は一息あって拍手、そしてその後にブラボーの嵐となります。


強烈な陰影を付けた緊迫のマーラー9です。痺れる様な緊張感、生々しく生き物の様なBPOの迫真の演奏。この曲には何かが潜んでいるのではないか、と思わせるくらいです。

バーンスタインBPOの荒れ具合と違い、猛烈な緊迫感にBPOはフィットしています。これはDG盤LIVEに強烈なコントラスト付けを施したもの凄い演奏です

コンサートではこの手の演奏になかなか巡り会えませんね。巡り会えた時の感動は忘れられません。演奏後にメンバーも互いに握手を交わし、足踏みで指揮者を讃え、アプローズも指揮者に譲る。個人的にはそんなコンサートがやっぱり好きです。音楽とともに感激も感じたいですよね。






(#4)

Berliner Philharmoniker
[saradana] 1982-8/27 Salzburg

DG公式LIVE盤(#2)の約1ヶ月前の非正規LIVEです。


【第一楽章】
第一主題はやや速めに少しアゴーギクを振って美しさがあります。第二主題は少し緊張感を与え、反復からの第三主題の山場は華やかです。展開部前半は陰鬱な流れに緊張と穏やかさを与え、アレグロ・リゾルートから山場を激しく作り、中盤からの出し入れ強い流れに入ります。各主題に色合いの変化を付け、気持ち良い緊張感を作っていますね。ここでもパウゼを明確に使いDG盤に近いかもしれません。緩急の使い方がよく、見晴らしの良い第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題は華やかなレントラーで、ディナーミクが効いていますね。第一トリオもシャープにリズムを刻み、第二トリオは緩やかに出て優美繊細に流れます。DG盤で感じたスローの間延び感は避けていますね。山場はキレキレです。

【第三楽章】
主要主題は速くシャープで、第一トリオを巻き込んでパワーを上げて行きます。刺激的な流れですね。中間部(第二トリオ)ではtpのターン音型がゆっくりと長く保たれる感じですね。最終楽章を予見させています。ラストのpiù strettoは強烈です。

【第四楽章】
主要主題は緩やかな暖色系でやや濃厚のカラヤンのパターンです。第一エピソード入りの低弦が躓きますが、流れは静的に抑えるDG盤と同じ方向性で後半のターン音型を表現するパターンになっています。ここからはこの曲らしい非興奮系で山場を作り、静かに最後を迎えます。


引き締まってシャープなマーラー9です。DG盤LIVEの約1ヶ月前で同傾向にありますね。こちらの方が第二楽章のスローの欠点がない気がします。

5/1に較べると、あのハイテンションは消えています。カラヤンの好みでは無かったのでしょう。これはこれで完成度が高く個人的にはDG盤よりも好きですね。





クラウス・テンシュテット, Klaus Tennstedt (3録音)

マーラー振りの一人テンシュテットのマーラー9番です。ここにも素晴らしい録音が隠れていますね。もう一録音存在しますが、プラベート非正規盤なので入手はほぼ困難でしょう。(フィラデルフィア管1982)



(#1)
London Philharmonic Orchestra
[EMI] 1979-5/11,12,14


(右は全集です。LIVEを含めた全16CDとお買い得)

テンシュテットがNDR放送響の音楽監督に就任した年のLPO客演ですね。NDRとは1981年のツアー中に決別してしまいますが、1983年にLPOの音楽監督に就任すると黄金期を作ります。相性の良い相手とのマーラー9です。


【第一楽章】
第一主題はスロー緩やかにアゴーギク、第二主題も暗い澱みで、提示部山場は重心低いスローから現れます。展開部前半は暗く澱んだ緊張感のスローから緩やかに上げて行き、山場は一気にテンポアップです。中盤以降はアゴーギクを振ってパート毎の表情を変化させますが、基調はもちろんスローに低く!! コーダの超スローフィニッシュは強烈です。
強烈なスロー低重心の第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題はテンポ良いレントラー、と言うよりもスケルツォ風かもしれません。第一楽章に対して極端な表情変化です。第一トリオは歯切れ良くシャキッと、第二トリオも緩やかですがレントラーの色合いを残していますね。この楽章らしい華やかさを感じます。

【第三楽章】
主要主題は軽快なテンポ設定で、すぐに第一トリオの軽妙さと重なって踊る様に進みます。中間部(第二トリオ)は穏やかさを前面に立ててきますね。とは言え、この二つの中間楽章にも何か重さを感じます。

【第四楽章】
主要主題は優しさを感じるスローですがfg動機からはテンポアップ、重心はここでも低いですね。第一エピソードはテンポはやや速めなのですがなぜか重いです。第二エピソードもやや速めで感情移入はほどほどに進んで山場を築き、後半のターン音型からは静に転じて薄い音色で最後の音を鎮めます。やっと安らげた、と言う感じでしょうか。このコントラストを計算していた?!


楽章毎に性格付けしながらも重さを感じるマーラー9です。テンポ設定とアゴーギクで楽章間に個性を付けていて、特徴的なのはスローで暗く澱んだ第一楽章でしょう。

全体通して感じるのは重々しさなので、そこが好みを左右しそうな感じですね。山場に特別な炸裂感も無く、重くのし掛かられて聴き疲れするかも






(#2)

New York Philharmonic
1982-2/18

LPOから3年後、テンシュテットがニューヨークフィルをエイブリーフィッシャーホールで振ったFM放送録音音源(プライベート非正規盤, Kaplan Foundation 9.0332)です。


【第一楽章】
第一主題はスローで悠々と、殊更の重厚さはありません。第二主題も少し刺激を与える良い流れです。提示部山場は第三主題を交えて派手に鳴らします。展開部前半スローに入ってJ.シュトラウスIIの引用で明るさを、テンポアップで山場を駆けるのはLPOと同じですね。中盤以降はアゴーギクで揺さぶりを強くかけ見晴らしが改善されています。基軸だったスローが弱まっているからですね。コーダも適度なスローになりました。
LPOと同スタンスですが重々しさが無くなってシャープになった感じです。

【第二楽章】
主要主題はシャキッと切れ味良く、第一トリオも同じ流れを引き継ぎます。緩やかな第二トリオでも基本的なシャッキリ感は維持していますね。主題回帰の山場はキレキレです。

【第三楽章】
主要主題は速く突進系、第一トリオは軽妙を残しますがシャープです。絡んでキレキレに進む前半は刃物の様な鋭さです。これは凄いですね。中間部で一息入れる様にスローに落とします。最終楽章を見据えながらのチェンジペースですね。山場は強烈で、ラストpiù strettoは炸裂爆走です!

【第四楽章】
主要主題は優美ですが終始音圧が高いです。静美とは無影の世界ですね。第一エピソードでは速めでしっかりとした音を鳴らします。方向性は違うと感じるのですが、何かに憑かれた様な流れに惹かれてしまいます。凄いコンセントレーションが伝わります。第二エピソードはスローから入って集中力を高めて山場を作ります。ハイテンションです。後半ターン音型からもシャープな切れ味で終息します。


切れ味を全面にしたマーラー9です。LPOと基本は同じですが、重々しい流れが解消されてスッキリしました。そうなると歯切れの良い流れが浮き立ちますね。特に第三楽章からの荒れながらの集中力は素晴らしいです!

残念なのは入手難と放送音源とは言え録音が良くない事です。それでもテンシュテットかマーラー9のファンの方は是非一度w、後半の取り憑かれた様な狂気を感じる一体感はそうそう味わえませんから。






(#3)
Philadelphia Orchestra
[Navikiese] 1988

NYPの6年後、癌を患って活動を縮小してからのフィラデルフィア管とのマーラー9です。非正規盤で音は少し我慢が必要ですが。


【第一楽章】
第一主題は繊細な音色を奏でます。第二主題では緊張感を加えて、反復からの第三主題の山場はシャープ。展開部もそれまでのスローや殊更の重さは皆無で、研ぎ澄まされたシャープさが光ります。隙の無い第一楽章です。

【第ニ楽章】
主要主題はキッチリとリズムを刻んで背筋を伸ばし、第一トリオでは弾む様なリズムに変えて舞踏的になります。スッキリとした流れになっていますね。中間部(第二トリオ)では少しスローに一呼吸で流れを整える感じです。

【第三楽章】
主要主題はハイテンポで尖っています。録音の問題?! 第一トリオも切れ味があり、対位的に進み混乱の様な協奏も見せながらテンションを上げて行きます。荒れ気味ハイテンションから中間部ではスロー化、王道的な流れです。山場は炸裂ですね。

【第四楽章】
主要主題は例によって厚めです。第一エピソード速めに感情移入は薄く流れて行き山場は蒸し暑い感じかも。NYPと同傾向ながら第二エピソードもそこまでのテンションは無い感じですね。ラスト静音は録音がautoなのか大きく聴こえてしまいます。これはいけませんね。


年を経て正統派方向に向いてまとまったマーラー9です。テンシュテットの方向性が修錬された結果でしょうか。客演で平均化した訳では無いでしょうが、結果としてそうなったが一抹の寂しさです。

後半楽章はNYPと似てきますが、そこまでのテンションはありません。LPOより研ぎ澄まされて決して悪く無いのですが…





オットー・クレンペラー, Otto Klemperer (4録音)

1967-1970の間に4録音(一枚は非正規盤)、その内3CDは1967-68の間に集中しています。
クレンペラー節の9番です。マーラーと親交がありマーラーの意図に近く演奏しているのかもしれないですね。ただ、全ての楽曲に肯定的であった訳でもありませんが…



(#1)

New Philharmonia Orchestra
[EMI] 1967-2/15-24


(全集です。音も良くなり2,4,7,大地の歌も名盤ですね)

カラヤンとレッグで知られるEMIの録音専用オケだったフィルハーモニア管の初代首席指揮者でしたね。1964年解散再編したニューフィルハーモニア管では名誉総裁となったクレンペラー、そのマーラー9ですね。


【第一楽章】
第一主題は少し速めのテンポと緩やかなアゴーギクです。第二主題も殊更の変化を避けて入り、山場, 第三主題は激しいです。見晴らしの良い提示部になっています。展開部前半もスローから穏やかに、そして山場を流れ良く作ります。中盤からの出し入れもクセの無いコントラストになっていますね。基本骨格の様な第一楽章になっています。

【第二楽章】
主要主題はスローに二つの動機を重ねた明瞭さ、第一トリオもピシッとした姿勢の良さです。第二トリオでは緩やかな流れを見せて、その後の流れにつなげていますね。

【第三楽章】
主要主題はここでもスロー気味に、第一トリオは軽量化されています。中間部(第二トリオ)はターン音型を緩やかにして最終楽章第二エピソードの先取りを思わさせます。流石は基本ですね。ラスト山場もスロー徹底です

【第四楽章】
主部は第一楽章の回帰的に入って、甘美なアダージョを奏でます。いつ聴いても美しいのですが、5番のアダージェットがサロンミュージックの様で嫌いだったのが不思議ですね。(ここを聴くといつもそう思いますw)
第一エピソードも延長線上の美しさですが、緩やかにテンポアップして感情を盛り上げます。第二エピソードでも哀愁美から山場を強烈に作ります。後半は落差を付けて沈め、スロー浮遊感を強調しながらコーダへ。お手本の様な"ersterbend"につなげています。


華飾を排しながら個性を見せるマーラー9です。特徴的な中間楽章スローはクレンペラーらしさ、一・四楽章はコアで見事な演奏です。

音も良くなって、時折聴きたくなるクレンペラー節です。かつて名盤と知られた訳ですがちょっと古くさい感じ、それがマーラーが生きた時代の演奏なのかもしれません。一度は聴いて欲しいですね。






(#2)
Wiener Philharmoniker
[TESTAMENT] 1968-6/9


EMI盤の翌年、ウィーンでのLIVEです。TESTAMENTは他にもクレンペラーのマーラーを保有している気がするのですが…


【第一楽章】
第一主題はEMI盤と似た様な流れですが切れ味を感じます。第二主題も緊迫感が迫り、山場はシャープですね。展開部前半も標準的流れで山場は切れ味が増しています。第二主題の中盤以降もよりシャープにコントラストが上がった演奏になっていますね。

【第二楽章】
主要主題のテンポ設定がやや速まって聴きやすくなった分 平凡になっていて、第一トリオは速めに変化しています。EMIとは異なる方向性を感じますね。第二トリオも流れに沿った緩やかさでナチュラルです。没個性になりました。ラストは変にスローに揺さぶっていますが…

【第三楽章】
主要主題もテンポアップして違和感は減り、第一トリオも軽妙ですね。VPOの揃いが悪いのが気になります。中間部も少しギスギスした流れを感じます。ラストも強烈にストレッタして流れはベーシックになりましたが、演奏が落ち着かない楽章です。

【第四楽章】
主部の甘美さはここでもキープされて、fg動機後に厚めになるのも同じですね。ただ、第一エピソードからはやや速めに進み、流れの変化に感情を込める感じになっています。第二エピソードでも速くなり、揺さぶりを加えてVPOにベストマッチと思われた甘美さが消えたのは残念です。(良い悪いは別ですw)


王道・教科書的な中に刺激を追加したマーラー9です。クレンペラー節は影を潜めて、聴きやすさと引き換えに個性はなくなりました。聴きづらさがあるとすれば演奏かもしれません。

VPOの演奏に珍しいくらいミスが目立ち、一体感に欠けて落ち着かないのが気になります。鳴りの良さと優美さが感じられませんね。(録音の問題もあるかもしれません)






(#3)

New Philharmonia Orchestra
[ARKADIA] 1968-8


TESTAMENT盤(#2)の2ヶ月後、その前のEMI盤(#1)の1.5年後の録音です。これを聴くとTESTAMENT盤(#2)はクレンペラーよりもVPOの方向性という事になりそうです。


【第一楽章】
第一主題はより緩やかになって優美に、第二主題は少し緊張感を与えて山場を強烈に奏でます。メリハリが随分とハッキリして来ました。展開部前半もコントラストが強くなってJ.シュトラウスIIの引用の緩やかさが引き立ち、山場は驚きの激しさですね。後半もアゴーギクとディナーミクで強烈な揺さぶりを付けた流れを作ります。
いっそうのメリハリ化が進んだ切れ味と怒涛の第一楽章です

【第二楽章】
主要主題はテンポとリズムの付け方はEMI時と同じくスロー目でシャッキリです。第一トリオでもピッシリとリズムを刻み、第二トリオでも緩やかにスロー強調路線です。刺激的でEMIのクレンペラー節に磨きをかけた感じですね。

【第三楽章】
主要主題も二つの動機をスローに緊張感を加えて絡ませています。これは強烈な個性ですね。第一トリオも若干の軽量化はあるもののドッカリとして、そこからの絡みは猛烈に荒々しく、凄い!!
中間部(第二トリオ)はスローでここでも最終楽章の色合いを深めて既に山場は感動的です。まともなマスタリングで聴きたいですねぇ。ラストのスローからのストレッタは爆裂、強烈そのもの!!

【第四楽章】
主部は厚めの甘美さのアダージョ、fg動機からも同じ流れで濃厚なアダージョです。(録音を差し引いても)
第一エピソードと第二エピソードもEMI盤の流れをトレース、ラストに向け上手く計算された流れを感じますね。見事な山場とターン音型の使い方です。


スローの中間楽章とメリハリを強調した個性派マーラー9です。同じニューフィルハーモニアEMI盤(#1)のクレンペラー節をLIVEで光らせた演奏という事になります。中間楽章、特に第三楽章は強烈そのものです!!

本CDはアルカディア盤ですから録音は始めから引き算して聴く事が必要です。録音重視の貴方には無用の品ですが、'マーラー9好き'なら一聴の価値ありです。印か悩みます…






(#4)
Israel Symphony Orchestra
[Navikiese] 1970

(#3)の2年後、イスラエル交響楽団との晩年の録音(非正規盤)で演奏時間が更に長くなっています。IPO(イスラエル・フィル)は知っていますが、ISO?は知見がありません。


【第一楽章】
第一主題はスローで緩やかに、第二主題は少し緊張感を高めて山場・第三主題を派手に奏でます。#3と似た流れでよりスローですね。展開部前半も重めに入ってスロー偏重にゆっくりと登って山場でも慌てずにテンポキープです。後半もアゴーギクを抑えたスローはそのままに、主題の入れ替わりも客観的です。全体をスロー・コントロールにして落ち着いた第一楽章です。山場もスローで興奮を避けていますね。

【第二楽章】
主要主題はスローに刻まれるリズムが明白でクレンペラーらしいのですが、出し入れが薄くベターっとした感じです。第一トリオも穏やかにリズムをスロー、第二トリオもズルズルとスローです。全体にメリハリが薄く、いっそうのスローで間延びがしてしまいますね。

【第三楽章】
主要主題は、これまた酷くスローで緊張感に欠けます。第一トリオでもフラットさは拭えませんね。中間部は細い線で奏でるいつもの良さが残っていてホッとしますが、ラストもpiù strettoとは行きませんね。

【第四楽章】
主部は少しテンポアップして美しい流れに。明らかにここでスローから以前の流れに戻していますね。fg動機移行もその流れです。第一エピソードも以前の流れを感じますが、演奏のレベルは今ひとつ。流れは一番良い楽章ですが、聴く方の集中も切れています。


全編極端なスローに徹した変わり種マーラー9です。流れに締まりが薄く、山場もスローで興奮を回避していますから、間延び感の強い流れになってしまいます。

聴き終えるまでがとても長いですw 最終楽章は以前の良い流れに戻しますが、時既に遅し。





ヴァーツラフ・ノイマン, Václav Neumann (3録音)

スメタナの印象が強いノイマンですが、マーラーも二回のサイクルを行なっていますね。(二回目は未完に終わりました)



(#1)
Leipzig Gewandhausorchester
[BERLIN Classics] 1967-11


壮年期47歳のノイマンがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスター(1964-1968)を務めた時代の演奏です。この翌年からチェコフィルの首席指揮者となりますね。


【第一楽章】
第一主題は心持ち速めでスッキリしています。第二主題で若干陰鬱さを増して山場も王道的に進めますね。展開部前半もスロー暗から明るく、そして山場の流れまで標準的です。中盤からもやや速めで出し入れを強調しながらアゴーギクでメリハリを付けますね。全てが王道的で全てが想像できそうな流れです。

【第二楽章】
主要主題の二つの動機もリズミカルに変化球なしのストレート、第一トリオでも切れ味を見せています。テンポを上げながら、第二トリオでスローダウンのコントラストも予想通りの流れです。

【第三楽章】
主要主題は浮かれた調子も上手くブルレスケ、第一トリオで軽妙さに乗り換えます。そこからは対位的に絡んで、まさに王道! でも中間部(第二トリオ)が速いというのは意表を突かれましたね。ここは落ち着いて欲しかった…

【第四楽章】
主部は夏の夕暮れの様な暖色系で、蒸し暑い感じです。音の厚みもありますね。fg動機からはいっそう濃くなります。第一エピソードも繊細さに欠けた感じで、第二エピソードもテンポが速かったり濃厚だったりと、少し最終楽章としては聴きづらさが残ります。


ドイツ仕様の流れですが感情移入を避けたマーラー9です。この年代での演奏完成度、ノイマンというよりもゲヴァントハウス管の色合いではないかと思ってしまいますね。

基調に速めの流れを作る事で一色入れていますが、この曲に欲しい感情移入に欠けます。オリジナルのedel盤よりデジタルリマスタリングで音が良くなりました。






(#2)
Czech Philharmonic
[SUPRAPHON] 1982-1/12-16


長く首席指揮者(1968-1989)を務めたチェコフィル時代のマーラー・チクルスから第9番ですね。ゲヴァントハウス管から15年後になります。


【第一楽章】
序奏から第一主題で弱々しく怪しげです。テンポ設定は若干速めですね。第二主題も弱々しさは変わりませんが、山場はそれなりにまとめます。展開部前半も手探り的な流れ、中盤以降の主題の出し入れもモヤモヤしていて、再現部コーダはスローを強めてヨロヨロです。極端に見晴らしのきかない第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題の二つの動機は軽快ですが揃いが今ひとつで一体感に欠けます。第一トリオは落ち着いて出て来て、少しシャキッとして来た感じです。第二トリオは落ち着きを取り戻して、緩やかにチェンジしています。僅かな自信を取り戻した風ですね。見晴らしは改善されませんが。

【第三楽章】
主要主題の管楽器はバタバタです。特にhrは酷いです。第一トリオは弦楽器なのでなんとか大丈夫ですが、重なるhrはメタメタボロボロの崩壊。中間部はそれなりにテンポダウンでターン音型を奏でます。tpは少々怪しげですがw ラストはストレッタ出来ませんでした。

【第四楽章】
主部は一体感なく緩〜ぃ流れです。ただ第一エピソード以降はスローで細い音色になって、ゲヴァントハウス管に比べると気配は大きく改善されていますが…
結果として欠点の弱々しさがこの楽章では生きたと言う事でしょうか。本当のノイマンの狙いは?


弱々しく自信なさげのマーラー9です。暗闇を手探りで進んでいる様な、演奏に確信が持てない感じですね。"残念なマーラー9争い"の一枚です。

ゲヴァントハウス管とは真っ逆さまの、ややスロー基軸でモヤモヤ 余裕が全くありませんね。(同じチェコSUPRAPHONのノイマン/チェコ・フィル "マーラー5番" はこんなに残念ではないのですが…)






(#3)
Czech Philharmonic
[CANYON] 1995-8/21-24


チェコ・フィルとの2回目、1回目の13年後の録音です。死を前にした演奏で、本録音の一週間後に亡くなっています。


【第一楽章】
第一主題はゆったり穏やかな流れは音が厚め、第二主題も重厚に鳴らして来ます。山場と第三主題は華々しいですね。展開部前半の暗鬱→明るさ→山場の流れは全体に明瞭、中盤以降の主題の出し入れは強めで、第三主題回帰からは派手な流れを作ります。スロー気味、メリハリの付いた流れになっていますね。

【第二楽章】
主要主題は驚きのハイテンポで進みます。今までとは違いますね。音もあっけらかんと鳴らします。第一トリオは切れ味良く弾み、力強いですね。第二トリオでは緩やかにスローに。全体的にはテンション高いレントラーですね。

【第三楽章】
主要主題はテンポ良くリズミカル、音を明瞭にして軽快な第一トリオと絡みます。中間部も明瞭で、本来ならターン音型でラストを印象づけるところですが晴々とした感じです。ラストはしっかりストレッタします。

【第四楽章】
主部はスローですが、やや音厚があります。もう少し薄く細い方が好みですね。第一エピソードも鳴りの太さを感じ、第二エピソード後半からのターン音型もあまり鎮めてくれませんでした。


全体に朗々としたマーラー9です。明瞭明快、この曲の方向性かと言われれば疑問も残りますが、ノイマンの三つの録音の中では一番興味深いでしょう。

ラストの音を残響まで残して欲しい曲ですが、終わり切る前にカット!! これは酷いです。(フラブラでもあったのでしょうか…)





ガリー・ベルティーニ, Gary Bertini (3録音)

マーラー振りの一人、G.ベルティーニ。三つのオケとマーラー9を残していますね。その内2CDが日本でというのも興味深く、素晴らしい演奏が控えています



(#1)
Wiener Symphoniker
[Weitblick] 1985-2-3


ウィーン交響楽団(VSO)に客演した際のマーラー9になりますね。もちろんウィーンでのLIVEで、ライナーノートは日本語解説からの英独訳と言うのも面白いですね。(並びは英独日ですが)


【第一楽章】
第一主題は緩やかに優しく、第二主題は重心を下げる様に、反復山場と第三主題も約束通りに盛り上げますが反復前の山場にミスがありますね。展開部前半の流れも、静暗→明るく→山場をコントラスト良く。特に山場は見事です。中盤の混沌とした主題も速めに上手い流れを作り、その後もアゴーギクで流れを整理して見晴らしの良い第一楽章を作っていますね。

【第二楽章】
主要主題は二つの小刻みの動機を、程よいリズムで絡めますね。軽量系のレントラーから徐々にテンポと締まりを増して、第一トリオをシャキッとしたリズムで刻みます。第二トリオも軽妙な感じにしていますね。後半の山場は聴き応え十分です。

【第三楽章】
主要主題は、ここでも軽快。第一トリオも快速軽妙になっています。中間部ではスロー化しますが、それでも平均より速めの軽めになっています。主題と入れ替わるターン音型を聴くと最終楽章が浮かびますね。ラスト主題回帰からコーダは強烈そのものです。

【第四楽章】
序奏を揺さぶって、主部は濃厚な緩徐を奏します。優しさや透明感とは対極にあって、重厚と言っても良いでしょうね。好みとは…w
第一エピソードは低弦が唸るスロー重厚から後半を厚く奏でます。第二エピソードも大きなスローからあまり聴かない猛烈な山場を築きますね。濃厚な流れは、まるで重病から悶えて死を迎えるかの様です。
抑えたコーダの後、しばしあってからの静かなアプローズ、良いですね。


スッキリ明瞭かと思いきや最終楽章でズッシリ重いマーラー9です。哀愁や透明感とは対極にある流れでb>個性的です。

軽妙 x 迫力の山場 x 最終楽章はド〜ンと低重心、その異様さがポイントですね。強烈な流れを聴きたい貴方にはオススメです。






(#2)

Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[EMI] 1991-7/1-3


(右の全集がオススメですね)

VSOから6年後、手兵のケルン放送交響楽団を率いての来日。その変化はいかに。サントリーホールでのライブ録音です。


【第一楽章】
第一主題は透明感の中にあって、第二主題も緩やかな変化にしています。山場と第三主題はシャープに。素晴らしい提示部ですね。展開部前半は第一主題は鬱ながら澄んだ音色に、J.シュトラウスIIの引用は穏やかに、山場はテンポアップしてキレキレです。中盤からも緩急コントラストの良さを聴かせて見事ですね。再現部もいっそうシャープさが増している様です。

【第二楽章】
主要主題は木管動機と弦の動機を緩やかに、ディナーミクを上手く使って落ち着いた流れですね。第一トリオでテンポアップ、シャープにします。まさにマーラーの言う「緩やかなレントラー風のテンポで、いくぶん歩くように」、終盤にかけては「そして、きわめて粗野に」ですね。

【第三楽章】
主要主題はブルレスケと言うよりもシャープさ、第一トリオで穏やかにチェンジして見晴らしがとても良いです。中間部(第二トリオ)は緩やかに澄んだ音で入り、ターン音型は最終楽章の感動を伺わせる見事な流れです。ラスト山場は強烈に鳴らして怒涛のpiù strettoです。

【第四楽章】
主部は優しさを感じるアダージョになっていて、fg動機後も感情に訴える流れです。第一エピソードでは静で澄んだ音色に落とし、緩やかに歩みを進めて情感を盛り上げます。第二エピソードではスローダウンしてターン音型に入り、溢れる感動の山場を作ります。後半からコーダの浮遊感・透明感は言わずもながの、感動的な最終楽章です。


澄んだ透明感、研ぎ澄まされたシャープなマーラー9です。ベルティーニが磨き上げたケルンRSOとの一つの完成形です。

最終楽章はいつ聴いても、グッとくるものがあります。もちろん個人的ベストの一角です!!






(#3)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra (都響)
[fontec] 2004-5-30


ケルン放送響から13年、都響の音楽監督としてマーラー・チクルスを進めた時のマーラー9です。"横浜みなとみらい"でのLIVEですね。


【第一楽章】
第一主題は緩やかに穏やかにスローに、第二主題もその流れに変化を僅かに加える程度にしています。山場と第三主題は締まりよく鳴らしますね。展開部もケルンRSOと同じ流れですが、アゴーギクが強くなって速いパートが忙しなくなっているかもしれません。

【第二楽章】
主要主題の第二動機は少しリズムを強くした感じです。第一トリオのテンポを上げてリズム付けも強めていますね。第二トリオでも大きくスロー静に振って、全体的にメリハリ付けが強くなっています

【第三楽章】
主要主題は少し荒っぽく進み、第一トリオでもリズミカルな流れを維持しますね。中間部は少し詰まった感じですが、ターン音型はエモーショナルです。ラスト前のスローは気になりますし、最後はいきなりのテンポアップで突進、ストレッタします。クセを付けた感じですね。

【第四楽章】
主部から第一エピソードは、ここでも緩やかなアダージョです。第二エピソードもいっそうのスローダウンは同じですが、山場の盛り上げを含めて感情の入り方がケルンRSOほど伝わりませんでした。似て非なる…でしょうか。


揺さぶりをスパイスにしたマーラー9です。基本的にはケルンRSOの流れを踏襲しながら、"緩急・強弱"のコントラストを強めています。そこが引き算になってしまったかも。

演奏も都響らしい行儀の良さですが、伝わる一体感や感情はケルンRSOの方が上になるでしょうね。





ラファエル・クーベリック, Rafael Kubelík (2録音)

世代が一つから二つくらい古い指揮者となるクーベリック。バイエルン放送交響楽団との2録音を残していますね。いずれも首席指揮者(1961-1978)時代のものになります。



(#1)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[DG] 1967-2/28, 3/4


'60年代ですから、まだそれほどマーラーが一般的に聴かれる前の時代のセッション録音ですね。


【第一楽章】
序奏から第一・第二主題は標準的に、緩いアゴーギクがありますが反復から第三主題の山場も違和感はありませんね。展開部はアゴーギクの揺さぶりを強めに。大きな流れの揺さぶりだけでなく、局部や細かいパートもなのでクセを感じます。それでも決して悪い訳ではなく、見晴らしの良さは確保されていますね。

【第二楽章】
主要主題はスローに出てから上げて来ますが、二つの動機がややアンバランスです。第一トリオはビシッとリズムを刻んで締め、第二トリオ緩やかに変化付けしています。聴きやすい表情変化です。

【第三楽章】
主要主題は標準的に、第一トリオは揺さぶりながら入ってギクシャク感ですね。それでも対位的な流れは上手く作って、中間部はスローに静めてターン音型は最終楽章を思わせるいい感じです。ラスト主題回帰はややまとまりに欠けますね。

【第四楽章】
主部はスロー緩やか、少し厚めの音になっています。fg動機からはテンポを上げて、第一エピソードは低弦が不安定なのが気になりますが、静に流れを変えますね。やっぱりアゴーギクが少し気になります。派手な山場を作る第二エピソードも同様、後半からコーダは静に消え入る基本パターンです。


アゴーギクの揺さぶりを入れながらも安定感を確保したマーラー9です。あっけらかんと妙に鳴りが良いので、そう感じるのかもしれませんね。

基本の流れはベーシックなので全体の違和感は少ないですが、"可もなし不可もなし"的かもしれません。






(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[audite] 1975-6/4


クーベリックが手兵バイエルン放送響を率いて来日した際の東京文化会館でのライブです。


【第一楽章】
序奏は変ですw 第一主題もバランスを少し欠いた流れが気になります。なんとかまとまりを戻して、第二主題で…と思いきや、ここでも怪しげです。驚きの揃いが酷さの提示部です。展開部も管楽器が怪しげな音でギクシャクしていますね。弦楽器もモッソリしている様な。揺さぶりも奇妙にスローに引っ張ったりと、クセが強まっています。

【第二楽章】
主要主題第一動機の管楽器は怪しげ、緩んだリズムと合わせて締まりに大きく欠けます。第一トリオはリズムを明確に打って、なんとか流れを取り戻します。第二トリオもスロー緩やかですが、管楽器が合いません。局部的にスローに落とすアゴーギクにも不自然さを感じますね。ラスト静のvnも変ですw

【第三楽章】
主要主題はやや速め、リズム付けは標準的です。管楽器の揃いは今ひとつですが。第一トリオなぜか控えた音に変えて来ますね。ここでも金管が崩れ…
中間部では静に流れますが、tpが… こうなると聴く方も次のエラーの粗探しになってしまします。ラストはあまりストレッタしません。(出来ません?!)

【第四楽章】
主部は緩やか厚めの弦楽奏で、fg動機からテンポを上げるのも(#1)と同じですね。第一エピソードから静に流れを変えるのも同様で、緩やかに上げて行く良い流れです。アゴーギクが薄くなって安定は向上しました。第二エピソードも静から入りますが、山場でテンポアップし揺さぶります。馴染めませんねェ。管楽器(hr)が入ると何処か怪しい感じがしますね。


ギクシャクと不安定なマーラー9です。アゴーギクの振り方が強くなっているのですが、それ以上にオケの揃いの悪さ、特に不安定な金管楽器(hr, tp, tb)にまいりました。

かなり"まずい"と思うのですが…





Michiyoshi Inoue, 井上道義


新日本フィルハーモニー交響楽団 (New Japan Philharmonic)
[EXTON] 2000-6/9


マーラー各楽曲も好みですが、現代音楽も取り上げるので個人的にファンのミッキーこと井上道義さんのマーラー9ですね。


【第一楽章】
緩さスローの中にアゴーギクを付けた独特の第一主題、激しい短調を見せる第二主題、その緊張感から山場を鳴らす提示部は見事ですね。展開部前半、暗く鬱なもたれかかる様な入りからJ.シュトラウスIIの引用をスローに光を当てて来ます。中盤以降もスローの渦の中に主題が現れ、第三主題回帰からはテンポを上げてアゴーギクを振って激しさを見せます。再現部後半からコーダの超スローも納得の流れですね。
強烈なスローと疾走する山場の対比、表情の豊かな第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題は堂々と、ややスローで歯切れよく二つの動機を絡め、第一トリオは揺さぶってメリハリを強調します。第二トリオでも重心を低くして進みますね。スロー揺さぶりの第二楽章です。

【第三楽章】
主要主題はやや速めにキレキレです。第一トリオを軽快に入ると、緊迫感ある絡みを見せます。中間部ではシンプルに澄んだtpが鳴り響き、ターン音型を緩やかに最終楽章の浮遊感を窺わせます。良い流れです。最後の主題回帰からは強烈で、ラストのpiù strettoは爆裂爆走です!!

【第四楽章】
神経質な序奏から主部の動機を緩やかに、上手いですねェ。fg動機からは感情をテンション高く奏でます。第一エピソードは静に鎮めながらゆっくりと上げていきますね。張り詰める繊細な静に戻ると、第二エピソードもその流れに乗ってテンポを上げて行き山場を見事に作ります。ターン音型に入ってからコーダは静の浮遊感、そしてpppの中にアゴーギクを生かして消え入ります。見事な最終楽章ですね


個性的スローと濃厚深彫りのマーラー9です。目立つのはスローですがクライマックスは走ります。流れを大切に練習に時間を掛けたと思われる素晴らしさがありますね。好きな指折りの一枚です。

少し下地が出来て聴くと、より素晴らしく楽しめます。マーラー9の5CD目に超オススメ!!








次回もコンサートをターゲットに予習を兼ねてインプレしたいと思います。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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No title

マーラーの交響曲の投稿に感心しています。私(tkdclassic1)はようやく第9番のみを、クラシック名曲・名演・名盤の真髄に投稿しました。挙げた名盤は大きく変わるものではりませんが、視点が異なりますので、見に来てください。

No title

tkdclassic1さん、こんばんは。
早速拝見させていただきました。技術的にも感性的にも完成度の高い
素晴らしさで、勉強になりました。視点というよりもレベルが異なると
いう事だと思います。音楽ファンの方からの厚い信頼が伝わり
ます。ありがとうございました。
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