シマノフスキのピアノ曲を Hamelin, Roscoe, Anderszewski, Rosenberger, Lee, Vehviläinen, 6人のピアニストで聴く

Szymanowski (1882/10/6 - 1937/3/29)好きなのでピアノ曲を何回で紹介しましたが、まとめておきますね。
シマノフスキはポーランドの現代音楽家。と書くと異論が出るかもしれませんが、現実的にはOp.30番台からは調整が薄くなり無調になります。シマノフスキが心に残したポーランドのグラル民謡はフレーズやリズムにかなり特異性があったそうです。当然の帰結なのかもしれません。

◆マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin) の Mazurkas Complete
ポーランドの民謡曲であるマズルカを題材にしています。このCDはマズルカOp.50とOp.62の他に後期のピアノ曲2曲と、調性が無くなる後期作品集。

一曲目、20のマズルカは、Op.50とシマノフスキが無調となってからの作品。この曲を聴いてマズルカを思い浮かべるのは難しいと思いきや、得意な幽玄さの中に独特な世界は残されている。No.4 Allegramente の様に一瞬ショパンのマズルカを思わせる部分が所謂(いわゆる)マズルカらしさ。それもすぐに調性の薄い世界へ入り込む。その繰り返し。この流れにポーランド民謡らしい跳ねる様な音を織り込む。後期のシマノフスキらしさ満載。
二曲目、ロマンティックなワルツはやはりポーランド民謡らしさを感じさせる小曲。
三曲目、4つのポーランド舞曲は文字通り、Mazurek, Krakowiak, Oberek, Polonaise, の四曲からなる後期の小作品。このMazurek, Krakowiak, あたりが一番聴き易いかもしれない。個人的には四曲目のポロネーズらしいディナーミクが珍しく楽しい。
四曲目、2つのマズルカはOp.62でシマノフスキの未完成のマズルカ。研ぎすまされた細い音、いかにもシマノフスキ。そんな2曲が実に素晴らしい。この続きが作られる事無く終わってしまったのがなんとも残念。

アムラン(Marc-André Hamelin)のピアノはこういうパターンには最も向いている。ピアノのテクを最大限に生かしながら正確無比、そして冷徹に演奏する。Hyperionのアムランを あまり良く書く事がないのですが、これはgood !です。
実にお勧めのピアノ独奏曲集です。^^v




◆マーティン・ロスコー(Martin Roscoe) の Piano Works
4CDです。Martin Roscoeはニールセンのピアノ曲集もHyperionから出していますね。
今回はちょっと厄介です。例えば「20のマズルカ」は4枚のCDに、ソナタは3枚のCDに分割されて収録されています。なぜ? 作品年代順? いや違います。とにかくなんでわざわざ?と思われる配曲構成です。通しで聴くのに何回かCDを入れ替える事になりますからね。少々悪趣味的分割と言わざるを得ません。

まずは「20のマズルカ」ですが、アムランと較べるのはかわいそうかな。アムランの冷徹さはSzymanowskiの音楽にピッタリ来ていますから。それに較べるとロスコーのピアノは明るく明瞭さが強いです。その分だけ幽麗さが欠けます。不協和音的な流れも元気。それならマズルカ的色合いが合うのじゃないか? それが陰影に欠けて表現しきれていない感じ。

とりあえずロスコーの解釈はそんな感じと言う事で、「ピアノソナタ」を。ソナタは3番まで作られ、最後がOp.36ですから中期までの作品と言う事になります。
ピアノソナタ1番はOp.8と初期の作品で四楽章構成。古典というよりはロマン派的作品。シマノフスキらしさは無いですね。少々眠けがします。2番は二楽章構成になります。作曲者自身「悪魔的に難しい」と語った事で有名な曲ですね。1番に較べると微妙な不協和音が入り込みます。ロスコーはここでも太い音で弾きまくります。3番は四楽章構成ですが途切れなく繋がっています。ここで調性は無くなります。調性表記も当然ありません。繊細にして超絶的なシマノフスキの代表作の一つ。しかしここでも爆裂的に演奏されてしまいます。特に入りは繊細にして欲しかった。

メトープが第1集に入っています。幽玄にして繊細なるシマノフスキらしさ漂う、仮面劇と並ぶ傑作。1.セイレーンの島"L'île des sirènes" 2.カリュプソー"Calypso" 3.ナウシカー"Nausicaa"。これは古代ギリシャ長編叙事詩オデュッセイアに登場する女性像から引用している作品。ラヴェルのピアノ曲に通づる曲調を感じますね。

ロスコーのピアノはシマノフスキに合いません。基本的に全面的強鍵演奏です。(ニールセンのピアノ曲も同じです)
昨年ライブで観た庄司紗矢香のヴァイオリン協奏曲1番も合わないのですが、彼女の演奏は曲とマッチすると最高です。シマノフスキのkokotonPAPAの好みの方向と違うだけすね。
まぁこのCDには他にも良いピアノ曲があるのですが、紹介するまでもない感じです。




◆ピョートル・アンデルジェフスキ(Piotr Anderszewski ) の Piano Sonata No 3 Metopes Masques
ポーランドのピアニスト。従ってポーランド"お国もの"の演奏と言う事になる......のですが、三曲は調性の薄い、もしくは無調、シマノフスキのピアノ曲の代表曲が並びます。

仮面劇(Masques)の1.Scheherazade、シマノフスキらしい幽玄なる表現で入るのがいいです。冷たさも感じられ、マッチした演奏。後半雄弁になるところも、不安感を残す様な陰の部分が感じられます。2.Blazen Tantrisはラヴェルのピアノ曲を思わせますが、ここでも冷たさをうまく演出していますね。ちなみにこの曲はラヴェルへのオマージュと言われています。
ピアノソナタ第3番、ここでも入りがいいですね。繊細な細い音から流れて行き、大きな流れに。幽玄・雄大・先鋭、といったこの曲をうまく演奏しています。
メトープ(Metopes)、いかにもシマノフスキらしい曲です。その通りの演奏がここでは聴く事ができます。
シマノフスキのピアノ曲を楽しめるお勧め盤ですね。




◆キャロル・ローゼンバーガー (Carol Rosenberger) の Masques Etudes Mazurkas
デトロイト生まれの米人ピアニスト。西海岸で教鞭をとりながら、本CDのDELOSから30枚を越えるアルバムを残しています。そのシマノフスキのピアノ独奏曲集。
仮面劇(Masques)はローゼンバーガーらしい細い音ながら粒立ちの良い音で演奏される。少々音が明瞭すぎて幽玄さが不足しがちに聴こえる。しかし演奏ピッチが早い。一番のシエラザードで10分を切る。全体的に小気味好く進む、それが良いかは別だけど。
4つの練習曲(4 Etudes)は人気曲なのだが、Op.4と初期の作品なのでkokotonPAPA的にはそれほど好みではない。一音一音が明瞭な演奏。Etudesは調性が変化する時期にもOp.33が作られている。こちらは俄然面白い。本来12 Etudesなのだが、途切れ目が無いからか ここでは一曲で扱われています。
マズルカ(Mazurkas)はOp.62が先に。シマノフスキ最後の作品を先に持ってくるのはどうかなぁ。ちょっと明るい演奏だけど、やっぱり良い曲だ。Op.50の20 Mazurkas は7曲の抜粋演奏。CDに収まらないから? 演奏は同じ傾向。マズルカらしさとシマノフスキらしさが交錯する気配は残念ながら薄いね。

ちょっと異端な、深みに はまらないカルフォルニアのシマノフスキ? 録音は'70年代、デジタルリマスタリングされるはずもなくAADになるけど、ピアノ曲はそれほど聴きずらくならないからいいね。




◆デニス・リー(Dennis Lee) の Etudes, Fantasy, Metopes, Masques
マレーシアのペナン生まれで活躍の場はイギリス、ブゾーニのコンペで準優勝の経験もありこれがソロでの初レコーディング(1990年)になります。それ以前ですとPhilippe EntremontのRavelピアノ曲集での連弾(1974年)があったりします。

まずは4つの練習曲、Szymanowski の初期の作品でNo.4が少々面白いですが、まぁこんな感じ?といった具合です。
二曲目は名曲メトープです。デニス・リーの演奏も早いです。ローゼンバーガーとおなじくらい。でも演奏はリーの方が幽玄的です。しかし、もう少しスローにした方が間がとれて良いと思いますね。音色は好みなのですが、これでは技巧系が全面に出過ぎでシマノフスキらしい部分が削がれます。
続くFantasy, Masques も同様です。アゴーギクを効かせてスローパートもあるのですが、基本的に早い。とても残念ですね。
もともとこういった解釈なのか、やっぱり初録で技巧派な演奏を目指したのかなぁ。




◆アヌ・ヴェヘヴィライネン(Anu Vehvilainen) の Piano Works
フィンランドの女性ピアニスト Anu Vehvilainen(Vehviläinen)。第1集と2集になっていますね。先に言ってしまうと、シマノフスキのピアノ独奏曲集ならば一番のお勧めです。
まずは1集、"9つの前奏曲" "メトープ" "ソナタ3番" の組合せです。
9つの前奏曲はOp.1。従ってとても分かり易いのですが、6番辺りから早くもSzymanowskiさを感じられますね。
メトープですが、良いですねぇ。やや速めではありますがタッチが幽玄でシマノフスキらしさを演出します。こういった不活性的な演奏が最高です。間の取り方も素晴らしいですね。
人気曲のソナタ3番も打鍵の変化がとても好みです。変幻自在な演奏。

2集はやはり二曲目の仮面劇でしょうね。1集のメトープに対応する楽曲です。落ち着いたペースで入るScheherezadeの陰のある演奏。そしてTantris the Clownで強鍵的に変化し、Don Juan's Serenadeで仕上げに入る構成をうまく弾き切ります。
20のマズルカは残念ながら1から4番の抜粋。これはアムランの様にはいかないですね。でも4番などは全曲を聴きたくなる良さを感じます。ポーランドの民謡らしさとシマノフスキの幽玄さを出しています。
最後にマズルカOp.62を持って来ているのは流石と言う感じです。この2曲、シンプルにして透明感と冷たさが冴えますね。



他にも Roland Pontinen, Joanna Trzeciak, Martin Jones, Joanna Domanska, と言ったところがありますが、またその内に.....m(_ _)m


テーマ : クラシック
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2.マーラー交響曲第5番 160CD
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