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マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 175CD聴き比べ #3 [36-61]

マーラー5番の聴き較べも3回目。今回はインバル都響とセーゲルスタム読響の公演を前に、インバル盤を3 4枚とセーゲルスタム盤を初めに計2526CDです。
スペシャルは問題のシェルヘン4CD、最後にインプレしています。


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)

[リスト] 現在 #12回 175CDまで
 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン, プレートル[★], 小澤征爾, ジンマン[★], モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2]
 #2:20CD
M.T.トーマス[★☆], テンシュテット[x6 ★☆], ベルティーニ[x2], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4], ザンダー, シノーポリ, 飯森範親, 井上道義[☆]
 #3:25 26CD 本投稿
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ[㊟], スワロフスキー, レヴァイン, 戸山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 佐渡裕, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4CD ☆], ブーレーズ[x3 ★☆], メータ[x3], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★], デプリースト, バルビローリ, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:14CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, ホーレンシュタイン, スウィトナー[☆], 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ[☆], アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作
 #7:10CD
ガッティ, レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル[㊟], フェルツ, 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン
 #10:10CD
ゲルギエフ[x3 ☆], ラトル[★☆], ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, ヒルシェ, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト[☆], エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス[☆], スターン
 #12:15CD
ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, 資料的音源(アダージェット)他



エリアフ・インバル, liahu Inbal (4録音)

(#1)
Frankfurt Radio SO
[DENON] 1986-1/23-25


定番化したインバルとフランクフルトのマーラー5番。ジャケットを見た時点で頭にイメージが浮かびますね。

第一楽章はまさに葬送行進曲、抑揚を抑えつつ冷静なインテンポなタクト。第二楽章はコントロールの効いたアゴーギクとディナーミクでマーラーの但し書きを通した演奏。
スケルツォは華麗。少々もたつく感じも無きにしもあらずですが、中盤以降の緩急の付け方がいいですよね。アダージェットは、ディナーミクを薄めに虚飾を排した美しさです。第五楽章も基本は美しさと正確さ。山場でも破綻を来す様相もありません。

まずは興奮よりも端正な美しいマーラー5番でしょうか。





(#2)
Tokyo Metropolitan SO
[fontec] 1995-4/15


インバルが都響の特別客演指揮者になった年のマーラー5ですね。

壮大な葬送行進曲なる第一楽章。王道的な演奏。ラスト近くのティンパニが少し外している? 第二楽章はパワフルに入ります。その後はうまくディナーミクとアゴーギクを使い、音の出し入れを強調していますね。スケルツォは緩急の付け方は個人的にしっくり来ない処があります。アダージェットは甘美になる事もなく、冷静な流れ。多少アップテンポなのが、あっさり過ぎる様に感じさせます。必要以上の華美は要らないのですが、冷徹な美しさを聴きたいですね。第五楽章は華やかさを持つ前半からコーダへ向かう良い流れ。中盤に中だるみがある気がしますが、コーダは壮大そのもの。ライブ受け間違いなし!

波乱のない出来上がったインバル都響1995年(18年前)のマラ5。





(#3)
Czech PO
[EXTON] 2011-1/20, 21


インバルが首席指揮者を務めたチェコフィルとのマーラー5ですね。

第一楽章は極度な重厚さを避けた壮麗華美的な葬送。第二主題でも大きなテンポの切替はしていません。あくまで第一主題の延長線上です。冷静なる第一楽章。第二楽章は切れ味鋭い入りから、例によってバランスの良いアゴーギクとディナーミクで展開されます。インバルの第二楽章は安定感が有りますね。スケルツォはちょっとモッタリしていて好みではありません。勿体ぶった感じもします。これが本来の第二部として独立した第三楽章かもしれないですが。アダージェットは暖色系にして情感が強く 好きなパターンではないのですが、スケルツォからの流れから行くとこれもありかもしれません。最終第五楽章は穏やかにスタートして約束通りに盛上げて行きます。緩急出し入れもうまく流れる様にコーダに向かいます。待ち構えるコーダ。この楽章だけでコンサートは大ブラボーでしょうねぇ。

興奮をさり気なくかわす様な流れ、計算されたマラ5。インバルとチェコフィル同波長の完成系か。個人的にはもう少し思い入れが欲しい気もします。





(#4)
Tokyo Metropolitan SO
[EXTON] 2013-1/19,20,22


【後日追記】コンサート後に発売されたので追記です。そちらのインプレもご参考に。

重厚になり過ぎず適度なテンポで進む第一楽章の第一主題、第二主題も切り替わりでアップテンポを感じるものの通すと緩やかな流れです。出来過ぎの感が強く、弾けるものがないような。ややフラットなのかな。
第二楽章は一楽章第二主題に優雅さを加えた様な展開ですね。そもそも第一部として一体の楽章ですから、その意図通りの演奏でしょう。
第三楽章スケルツォは細かい音のパートとフルオケのバランスの良い演奏です。ここではアゴーギクを振って来るのですが、この展開はあまり好みではありませんね。第一部に比べて、構成を付けて変化を作り込んだ感じです。この楽章にインバルのマーラー5番の意図が現れている気がします。
アダージェットは例によってやや速めにして、ラストの山場を意識する程度であっさり系ですね。
アタッカで繋がる第五楽章は、スローで穏やかな入りからすぐにテンポを上げて行きます。楽曲の特徴を生かしてコーダへの期待を感じさせてくれます。この楽章の構成は好きですね。ラスト2分は素晴らしいですね。コンサートを思い出しました。

何故かインバルのマーラーとは相性が良く無い様で格別の印象が残りません。でも音は良く、インバルの声がすごく良く聴こえたりします。コンサートホールとは全く違いますが。(笑)




レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam


Danish National Radio SO
[CHANDOS] 1994-4/20-22,25


現代音楽の作曲家としても活躍するので個人的にはお馴染みの北欧の怪人Leif Segerstamとデンマーク国立放送交響楽団によるマラ5です。

アゴーギクの効いた第一楽章そして第二楽章 は時に陰鬱に、そして明朗に、また流れる様に変化を見せてくれます。適度な変化が聴き手の聴覚を飽きさせない感じです。
スケルツォの入りのホルンがもったいぶっていて面白いですね。ここでのアゴーギクの使い方は全体的に大きく、独特な解釈が感じられます。第三楽章を独立させたマーラーの意図をくんだ? 似ている第三楽章が思い浮かばないです。個人的にはとても面白い。アダージェットは甘美というよりも、陰を感じる静寂さが流れます。薄い刃のような切れ味。これは最も好きなパターンです。ここではアゴーギクを殺してスロー。第五楽章も極端にスローに入ります。この楽章は前半抑えて後半の盛り上がりからコーダが普通なので、前半がつまらない事が多いのですが、セーゲルスタムは前半もうまく変化を付けています。残念なのは後半部がややダレる…. コーダは圧倒的なアッチェレランドで締めるのでちょっと残念。

個性的な揺さぶりはあるものの、狂気でも極解でもない 懐の広さを感じる演奏。個人的にこの解釈はありですね。好きな一枚です。


(後日追記:2013年来日公演では読響を振りましたが、個性は消えていました。客演では無理でしょうね)



ジョナサン・ノット, Jonathan Nott

Bamberger S
[TUDOR] 2003-9/15-19


J.ノットとバンベルク交響楽団のマーラー5ですね。このセットのマーラーは評判が高いですね。

第一楽章は、強めなディナーミク。そしてアゴーギクを使い派手な展開です。そして同じ様な展開を見せる第二楽章。管楽器と打楽器の音が明瞭で派手に感じるのかもしれません。この流れだとスケルツォも、聴いていて気持ちがいいですね。響く管に変幻自在の弦。適度な揺らぎもあって長さを感じさせません。それにしても派手、最後は少々聴き疲れ気味。アダージェットは、わりと無表情っぽく流していますがf部では盛り上げ気味。少しクドいかなぁ。この構成の場合はさらっと行って欲しかったです。最終楽章へは途切れ目無く繋げるマーラー指示パターン。徐々に盛り上げて行くパターンも標準的ながら盛り上がり気味。コーダは大爆演かと思いきや、適度に収めました。

音の良さも加わって、全楽章全開の華々しい満艦飾的マラ5です。




ジョナサン・ダーリントン, Jonathan Darlington


Duisburg PO
[ACOUSENCE] 2010


お薦めの指揮者とオケ、Jonathan Darlingtonがデュースブルク・フィルを率いたマラ5、悪くないですねぇ。

重厚感ある演奏です。第一楽章ではティンパニで主題を弾かせる部分の音など明瞭に出すなど、面白いアプローチも見せますね。ディナーミクは強めで、速めの演奏になります。第一二楽章は迫力の素晴らしいし、スケルツォも飽きさせません。アダージェットは暖かみのある美しさを見せて、第五楽章ロンド-フィナーレも暖色系の音使いでコーダへ向かいます。お薦めの一枚。

録音が良く音の定位と広がりが素晴らしい、それも評価をあげているのは事実でしょう。そして指揮者のダーリントンとデュースブルクのオケ。このセットのアルバムは数々所有していますが、本当に素晴らしいですね。ストラヴィンスキーの春祭・等でも良い演奏を残しており、来日があれば是非とも行きたいものですねぇ。




ルドルフ・シュワルツ, Rudolf Schwartz


London SO
[EVEREST] 1958


葬送行進曲的進行の強いRudolf Schwartz & ロンドン交響楽団のマーラー5ですね。

第一楽章。テンポはやや遅め。軽めで少々風変わり、ラストのピッチカートは普通 音が消えてから一音出しますが、ここでは流れの中で来ます。第二楽章のtpが変な音を出す、弦は良いのですが管楽器がちょっとチャチな気配。でもそれなりに長さを感じさせずに納めます。ここでもコーダが奇妙。スケルツォはなんだか躓きそうなぎこちなさのリズム取りをしたりします。
アダージェット、入りからギクシャクした演奏、と言うかシュワルツの解釈でしょう。ハープが強く録音されて、けっこう耳障りだったりします。そして全然美しくもないアダージェットも珍しいです。だいたい音量が大きすぎ。最終楽章もなんとなく陳腐な感じがします。

CDの色も凄く派手、演奏も奇妙?、変わってるのが好きな人向け。所有のマラ5の中でも一二を争う変わり種です。





クロイツェル / Königlich Dänisches SO
[CANTUS CLASSICS] 1972

MahlerNo5-Joseph_Kreutzer.jpg

どうもわからない Joseph Kreutzer という指揮者。同名で18-19世紀!の音楽家は存在しています。デンマーク王立交響楽団?、あまり使われない表記?
Kaplan Foundationで確認したところ、上記ルドルフ・シュヴァルツ(Rudolf Schwartz)指揮ロンドン交響楽団による1958年録音と同一音源でした。
・・・・・
これって、紹介の意味あるのかな…?! まぁ こういう意味不明のCDもあると言う事でw



ハンス・スワロフスキー, Hans Swarowsky

Vienna SO
[BERLIN] 1971-2


スワロフスキとウィーン交響楽団(VPOではありません)のマーラー5ですね。

第一楽章、陰鬱な葬送をイメージさせる事も無く、ディナーミクもアゴーギクも抑えていますがとてもバランスの良い演奏です。第二楽章もスローなテンポで迫力の演奏を聴かせます。この二楽章の展開は好きですね。第三楽章スケルツォもスローで優雅。長いスケルツォを珍しく重厚感を効かせて押し切ります。しかし、これはいかにも重い。アダージェットは逆に標準的なテンポになります。極端な甘美さは排しているものの、太い。この演奏だとこうなるのでしょうが、個人的にはカミソリの刃のごとく薄く細く切れ味繊細なアダージェットが好きですね。最終楽章はますますスローで重く粘ります。

一二楽章程度で安心していたら、最後はどっかりと粘り切られて聴き疲れのマラ5です。




ジェームズ・レヴァイン, James Levine

Philadelphia O
[RCA] 1977-1/17,18


今やすっかりメトの顔、そのJames Levineの若き日のマーラー5です。

第一楽章は明朗、軽快にとばします。最後のピッチカートはかなり強く打ちます。第二楽章は管楽器に対する独特の解釈が目立ちますが、展開は華やか。スケルツォも入りはまるでワルツの様な艶やかさで、その後も基本は明朗さ、長さは感じさせません。アダージェットはスローで華美を控えた静寂なる美しさが素晴らしい。この弦楽曲の美しさを見事に引き出している気がします。第五楽章はやや平坦気味に進みますが、最後はアッチェレランドを効かせてスカッと終わります。

ディナーミク薄めながら管楽器を明朗に鳴らすマラ5。この解釈もありかもしれません。




戸山雄三, Yuzo Toyama

名古屋PO
[Nagoya Philharmonic Orchestra] 1983-11/18


いきなりのtpの調子外れ。こりゃぁダメかも…。演奏も意図する物も、色々聴いてきた中で稚拙で理解に届きません。どうするとこういう演奏になるのだろうって感じです。

個人的には残念ながら........のマラ5です。




ロジャー・ノリントン, Roger Norrington

Stuttgart Radio SO
[hanssler] 2006-1/19,20


ノリントンとシュトゥットガルト放送響のマラ5ですね。

vnのビブラートを排した演奏で有名な盤ですね。オケもバイオリンの両翼配置、最近復活の傾向がありますが、等のピリオドなセットアップ。それだけじゃなく、所々に奇妙な演奏、解釈?、が挟まっています。問題はやっぱりアダージェット、違う意味で。もう少しスローで、アゴーギクとディナーミクを押さえてくれたら抑揚を排した冷徹な美しさだった様に思う出来。ゴチャゴチャしたアダージェットになっちゃいました。確かにツルッとした感じはあるのですが、別にビブラートがどうのと言う以前の問題でしょう。でもノリントンはマーラーの注意書きに忠実とか。ならばこれが意図に近い?!(今は流行らない)
最後のブラボーの声、イントネーションが日本人っぽい? ヾ^^;

シンプルながら癖を感じてしまうマラ5。あまり好きじゃないありません。変わってるなら、ウィン・モリス や ルドルフ・シュワルツ、下のロジェベンの方がよっぽど危険だし可笑しい。古くはシェルヘンの別格なる狂気です。→ 後に紹介あり




ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー, Gennady Rozhdestvensky


Moscow Radio SO
[Memories] 1973-12/23


ロジェヴェンとモスクワ放送響によるマーラー5です。

一楽章の最後は音切りが早すぎ!! 終わってないですよ。第二楽章もとにかく荒く早いです。第三楽章の入りのホルンなどガタガタ。(笑) だいたいこの曲らしい気配がないのが凄い! そしてコーダの大荒れ。
アダージェット、重厚に迫る流れ。弦楽器が迫力で鳴らす。第五楽章も荒っぽい弦楽器が大奮闘。そこにパワーあふれる管楽器が挑んで大狂演。演奏終了とともに、音が余韻も無くバッサリ切られるのも凄いです。
メタメタで尖った演奏が好きな貴方に。普通の人には絶対お勧めしません。

豪快に振りまくりドライブする力技のマラ5。嫌いじゃありません。こういうのがあるから、ついついマラ5は増えて行っちゃいます。
録音が悪いですが、Memoriesだから…




ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン, Jaap Van Zweden

LondonPO
[LPO] 2008-1/16


ズヴェーデンとロンドン管のライブになります。

遅いテンポで入る第一楽章、でも重々しさは然程でもありません。それよりも流れがきれいですね。大きな流れの中でアゴーギクを入れて、緩い所は緩く、擧げる所は早めに。第二楽章も同じ様な展開。前半はイマイチですが後半は緩急をうまく使い、スケルツォに繋げています。第三楽章スケルツォの3/4拍子は流麗。
この演奏パターンだとアダージェットは生き生きとする....のですが、もう少しディナーミクを入れた方が好み。第五楽章は可もなく不可もなく的な進行でコーダは曲の構成上必ず盛り上がるといった感じ。オーディエンスは絶賛。

弱点もない代わりにインパクトもやや薄い、きれいにまとまったマラ5でしょう。




佐渡裕, Yutaka Sado

Stuttgart Radio SO
[SWR avex] 2001-10/17,19


佐渡さんがシュツットガルト放送響を振ったマーラー5です。

スローな葬送行進曲の第一楽章は、"ため"と爆裂的な対比が素晴らしいです。第二楽章も同傾向で、少々ため過ぎかもしれないですが後半にかけてリズムを取り戻す感じがいいですね。スケルツォは一二楽章に較べて早めのテンポで入りますが、アゴーギクを効かせて独特のメリハリが感じられます。アダージェットは過度のエモーションを押さえた弦楽曲になっていて、好きなパターン。もう少しppでも良い気がしますが、弱音で入る弦の音が拾われているのは録音も凄い。第四楽章と第五楽章が切れ目無く入るのはマーラーの指示通りの演奏。ここまで繋げるのは珍しいと思います。前半を抑えた演奏でこなして徐々に盛り上げ、期待感を煽る様にコーダへ向かい、最後は壮大でアッチェレランドを避けながらもうまく締めて、ブラボーの嵐です。

大胆と言うよりも、計算された力感のマラ5。録音の良さもライブの臨場感を伝えている様です。これで感情移入を強くすればバーンスタイン。やっぱり受け継いでいるものを感じますね。構成のこだわり感が少し気になりますが、一聴の価値有りです。




尾高忠明, Tadaaki Otaka

東京FO
[CAMERATA] 1984-10-20


衒いの無い気持ちの良い第一楽章。良い意味で葬送的気配も薄く、中庸な展開は安心感があります。第二楽章は多少ディナーミクを付けていますが、それでも爆発的な とまでは行かないですね。スケルツォも手堅いです。でもその分、少々退屈さも。若干のアゴーギクもあって、所々で良い感じも見せるのですが。
アダージェットは緩いアゴーギクで静かな入り。この構成からいくと当然の帰結で、甘美さを避けた演奏になります。オーディエンスの咳が気になりますが。
第五楽章、ロンド-フィナーレも淡々と行く感じ。コーダは迫力を見せてうまくまとめます。

非感情移入型、醤油味のマラ5。個人的には今ひとつ食い足りない感じ。




若杉弘, Hiroshi Wakasugi

都響
[fontec] 1988-10-22


特徴の薄い第一楽章。第二楽章はややアゴーギクを効かせてきてメリハリのある演奏になります。第三楽章スケルツォもスルッと通過。興奮の無い冷めたアダージェット、これは良い...と行きたいところですが 少々枯れすぎの感じです。第五楽章も弦が怪しげな音をだしたり、前半はモッタリしています。最後はもちろん盛り上げます。で、ブラボーと拍手の嵐です。

集中が切れる...眠くなります。これでもコンサートだとラストでgoodになっちゃうんだろうなぁ。マラ5ってそう言う危険性がありますよね。




ファビオ・ルイージ, Fabio Luisi

Sinfonicorchester Leipzig
[mdr] 1997-4


ゆったりとした葬送行進曲の第一楽章のF.ルイージとライプツィヒ放送交響楽団。やや重め。第二楽章は第一楽章と同じ響き。だいたい一二楽章は同じ様な傾向で演奏される第一部ですからね。所々で極端にスローに振ります。その辺が特徴に感じます。スケルツォは少々締りがなく、ダラダラと長く感じてしまいます。アゴーギクをスローに振る処が個人的には裏目に出ていると思います。ちょっと飽きますね。
アダージェットは甘美。ただしディナーミクは薄めなのでクドさは無く良い感じです。しかし、ここでも極端なスローが気になります。第五楽章も同じ。オケの厚みを発揮させない様にしているのはルイージの意図でしょうが、個別の楽器パートを強調しているので薄っぺらく感じられる部分が多いです。でもコーダは豪快にアッチェレランドを効かせて締め括る。これだからこの曲は困るわけですw

持っているのはダサいジャケットのGIB盤。久しぶりに聴いたのですが やっぱりイマイチ。
家で聴いているから感じた通りに書けますけど、コンサートだと "ちょっと変わった解釈で面白いかな" なんて事になるのかもしれません。




アンドレ・プレヴィン, Andre Previn

Royal PO
[RPO Records]


[訂正とお詫び]
コメントにご指摘をいただきKaplan Foundationにて確認したところ、プレヴィン指揮のマーラー第5番は存在せず、井上道義指揮 Royal PO [RPOレーベル] 録音:1990-5/9 である事が判明いたしました。なお、プレヴィンはマーラーの交響曲は第4番だけ録音が残されているようです。
また井上道義指揮の当該CDは#2聴き比べに記載してあります。(インプレ内容がほぼ同じで良かったです ^^;)



マンフレッド・ホーネック, Manfred Honeck

Pittsburgh SO
[EXTON] 2011-5/20-22


マンフレート・ホーネックとピッツバーグ響のマーラー5番。

第一楽章はかなりスローに入ります。しかし異常な葬送行進曲という訳でもないですね。第二主題からはテンポアップしますが、独特なアゴーギクとディナーミクが強く何か不安を感じさせます。第二楽章も同様な展開。
最近の録音らしい透明感のあるスケルツォ。ここでも不思議な揺さぶりを感じます。アダージェットは透明感があって、静かな流れ。このパターンでの弱い変化を含ませるのは悪くないですね。この第四楽章だけは救われました。第五楽章もアゴーギクとディナーミクを振ります。細かい流れでの振りなので、聴いていて音が詰まりそうで気になってしまいます。しかし、例によってコーダは見事。凄まじいアッチェレランドで駆け上がります。

かなりクセの強いマラ5です。初めてマーラー5番を聴くなら避けた方がいいかもしれません。




アントニ・ヴィト, Antoni Wit

Polish National Radio SO
[NAXOS] 1990-8/16-18


現代音楽を良く振るので個人的には御馴染み、コンサートでは人柄の良さを感じられるヴィトが音楽監督を務めていた時代のポーランド国立放送交響楽団とのマーラー5。ヴィトは評価がなぜか低いですね。

第一楽章はクリアな音を効かせながら良い流れを作っています。管楽器と弦楽器のバランスも良く、緩やかで大きなアゴーギクです。第二楽章はハイテンポ入り、主題の入れ替わりと同時に大きなうねりに変えて行きます。スケルツォも同様に大きな波がゆっくりと押しては引く感じで心地よいですね。アダージェットは暖色の心地よさで、死のイメージよりも生のイメージ。第五楽章は約束通りに徐々にペースを上げて行き、コーダを期待させる展開になります。ラストは音を集める様に締めくくります。

劇的な要素は排除していますが、大きな揺らぎの気持ちの良いマラ5です。




ヘルマン・シェルヘン, Hermann Scherchen (4録音)

1960年以前の録音はあまり出さないのが基本なのですが、Hermann Scherchenのマラ5です。
よく知られた事ですが、シェルヘンはこの後 楽曲の途中をカットして演奏すると言う暴挙にでて演奏解釈も狂気化します。ちなみに初めの録音では通常の解釈で演奏しています。これがどう変化するのか、それこそがシェルヘンの不思議さの味わいですねw シェルヘンのマラ5を4枚紹介します。



(#1)
ViennaStateOpera O
[Westminster] 1953


シェルヘンがウィーン国立歌劇場を振った録音第一弾ですね。

第1楽章はごく標準的な葬送行進曲から入り、第二主題でやや速めなテンポに乗ります。かなり速いです。でもすぐに第一主題の戻りと共に落ち着きます。第二楽章の入りはやや速めで落ち着きが足りない感じ。その後も全体をアゴーギクで振っています。スケルツォは特に大きな特徴的なものはありません。でも悪くないですね。
アダージェットは冷たさを感じます。途中からやや速めになり暖色系の演奏になる感情を込めたアダージェット。ロンド-フィナーレは定石通りに緩やかにコーダに向けて上げて行きますが、途中が少々長く感じるます。最後はグチャグチャ気味で終了。

特異性はなく悪くはないのですが、この曲を古いモノラルで聴くのでは素直に楽しむ事が難しいですね。





(#2)

Orchestra Sinfonica Di Milano Della Rai
[Living Stage] 1962-4/8


シェルヘンのマラ5、問題盤その1です。ミラノ・イタリア放送交響楽団とのこの演奏から怪しくなりますね。

第一楽章、これがシェルヘンの基本的な解釈なのでしょう、第一主題は葬送で第二主題はアップテンポ。速くなってます。それでも'53年に近い範疇です。第二楽章も速くなってます! 第三楽章と第五楽章のカット短縮だけではないです。この解釈の変化の現れは。第二楽章も主題が変わるとスピードダウンしますが、スローパートはごく普通の解釈で不安はありません。
そして問題の第三楽章スケルツォ。なんと5分ちょっとで即終了〜! 本来なら飛ばしても15分にはなるはずです。入りから速い。そしてスローに変化、その後もその繰り返し。速すぎて弦が付いて来れない! 第一主題の後はすぐコーダ?!
続く第四楽章アダージェットは長め。基本スローにしながら、感情を入れたエモーショナルなアダージェットです。'53年に近い解釈が残り美しいです。最終楽章は速めに入ります。しかし出ました!!、第五楽章も1/3ほどカッ〜ト! だいたいは15分程度のところ、9分しかありません。普通はゆっくりとコーダに向けて登って行くのですが、速くてハイテンション。演奏が追いつかない感じを残しながらアッと言う間に途中の山場を迎え、そのままラスト2分のコーダへ突入。ここでも速い! スローダウン! 最後は暴れるように締めます。拍手はパラパラ〜フェードダウン。

かの有名な途中大カット演奏盤の始まりだと思われます。演奏も極端です。いよいよシェルヘン大先生の本性が見えて来ました。





(#3)

Philadelphia O
[TAHRA] 1964-10/30


シェルヘンのマラ5、問題盤その2。フィラデルフィア管とのこの演奏も、途中大カット演奏盤です。

第一楽章の葬送行進曲は普通ですが、第二主題になるやいきなりのスピードアップ。そして急ブレーキでスローの第一主題に戻ります。そしてまたスピードアップ。第二楽章も聴いた事のない猛烈なスピードで入り、またもやスピードダウン。とにかく速いか遅いか! この二つの楽章はカットなしです。
そしてカット短縮のスケルツォ、それにしても....いきなり速い。そして緩っとスローに。いよいよ本領を発揮し始めて来ました。
そして驚きは続くアダージェット。なんとも長いです。普通10〜12分、早ければ8分なんて事もありますが、益々増長怒濤の15分! とにかくウルトラスロー・オンリー、静音で聴かせに入ります。ここでは変なアゴーギクは振ってきませんね。これはありかな?! それにしても、前後の楽章との違和感が凄いです。
続く第五楽章へはマーラーの意思通り、そのまま続けて入ります。ここでもカット短縮! 前半をカッ飛ばして、中盤の山場以降へ突撃です。ゆっくりと上げて行くなんぞ かったるい事しません。演奏もかなりメタメタです。コーダも何か変だけど見事にまとめ上げちゃいます。驚きの大ブラボー、大喝采。

とにかくとんでもない演奏です。大カットと猛スピード大ブレーキの狂気解釈が極端化しています。
FM放送のアナウンスが冒頭と最後に入ります。シェルヘンの米国デビューとか。





(#4)
🌋🔥
Orchestre national de France
[harmonia mundi] 1965-11


(右はStereo音質が改善されているそうです)

問題頂点盤。フランス国立放送管弦楽団とのこの演奏ももちろん途中大カット演奏盤で、極端解釈の症状は悪化の一途です!!

第一楽章のスピード変化はフィラデルフィア響より急加速に急ブレーキ! 更に3分も短くなっています。とにかくアゴーギクなんてもんじゃありません。
第二楽章の入りの速さはさらに異常なる急速度に。そんなに急いでどこへ行く〜w そしてまたもやスピードダウン。スピードアップでは奇妙な揺さぶりも掛けて、スピード変化は一層極端になっています。
スケルツォ。これまた5分ちょっとで終わりです。でも入りは益々スピードアップ。入りのホルンはまるで咳き込んでいるみたい。コントラバスとバイオリンが合ってな〜ぃ。
アダージェットは少し短くなった、と言ってもたっぷり13分! しかしネットリとまとわりつく様な演奏に大変化。咳が凄くうるさい。(爆) ベタッとしてとても美しい演奏とは言えなくなってます。でもこの方が不気味で合ってるかも。
ここでもマーラーの意思通りアタッカで第五楽章へ.......。これまた同様に1/3ほどカット。症状は悪化し、音が渦を巻く様に登って行きます。恐ろしく歯切れは悪く呂律が回ってない感じです。管楽器の音飛びなんかお構いなし、大アッチェレランド的にスピードは増すばかり。そして途中で意味不明のスローに。でもコーダはしっかりまとめ上げます。大ブラボーとブーイング。オケもオーディエンスも大混乱。

狂気のシェルヘン大王降臨、ほとんど変態盤であります。でも一聴の価値あり、どうせ狂った世界をかいま見るなら是非こちらを!(笑)







まだまだ100CD以上はあるマーラー交響曲第5番なので、ゆっくりと聴き比べしていこうと思います。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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プレヴィン指揮ではありません

プレヴィン盤は、実は井上道義指揮の演奏ですよ。
ちなみに、プレヴィンさんは「私は一度もこの曲を指揮したことはありません」と明言されています。

ありがとうございました

ともさん、こんばんは。kokotonPAPAです。
確認の上、修正させていただきました。
ご指摘いただき助かりました。ありがとうございました。
プロフィール

kokoton

Author:kokoton
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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