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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 180CD聴き比べです [#2 : 16-35]


マーラー5番の聴き較べ。前回の15CD紹介に続いて今回は20CDをインプレです。

今回はM.T.トーマス & サンフランシスコ響の11月19日(サントリーホール)来日公演に合わせて再チェックです。そのM.T.トーマス盤をトップに、マーラー振りの一人テンシュテットをメインで紹介しています。


Mahler Symphony No.5 -- 180 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン, プレートル[★], 小澤征爾, ジンマン, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2], 参考音源/資料類
 #2:20CD 本投稿
M.T.トーマス[★☆], テンシュテット[x6 ★☆], ベルティーニ[x2], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4], シノーポリ, 井上道義[☆], ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ[㊟], スワロフスキー, レヴァイン, 戸山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4 ☆], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], デプリースト, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ, レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル[㊟], フェルツ, 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン
 #10:10CD
ゲルギエフ[x3 ☆], ラトル[★☆], ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, ヒルシェ, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト[☆], エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス[☆], スターン
 #12:20CD
佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ブリッグス(オルガン), ナタリア(アンサンブル)




M.T.トーマス, Michael Tilson Thomas

★☆
SFSO
[SFS] 2005-9/28~10/2


1995年から音楽監督を務めるサンフランシスコ交響楽団とMichael Tilson Thomas、同オケ自主制作の5番ですね。

第一楽章は奇をてらった部分はなくディナーミクをうまく使っている気がします。第二楽章は速めのテンポで入りますが全体としたら多少の揺さぶりのアゴーギクです。しかしここでもディナーミクの方で曲のメリハリを見せますね。第三楽章はスケルツォらしい流麗さと、展開の切れ味も良い感じ。第四楽章は線の細さを美しく描きます。と言っても必要以上の甘美さは持ち込まない冷静耽美なアダージェットです。第五楽章は緩やかなアゴーギクで進みます。


暴れる事無く、破綻もきたさず、そして流れの良いマラ5。ディナーミクが強めで透明感のある演奏は、部屋で聴く際には環境が左右しそう。コンサートが楽しみですね。





クラウス・テンシュテット, Klaus Tennstedt (6録音)

マーラー振りの指揮者の一人 Klaus Tennstedt、もちろん好きな一人です。テンシュテット(Klaus Tennstedt)と言えば、このマーラーのNo.5を得意としていたので5 6枚ほど並べてみました。



(#1)
LondonPO
[EMI] 1978-5,6,10

(現在テンシュテットのマーラーを買うならこれが一番でしょう。EMIのスタジオとライブを16cdにまとめてありますから)

第一楽章からバランスの良いディナーミクとアゴーギクで聴かせます。管の華やかさが葬送行進曲を勇壮に奏でます。コーダに向けては消え入る様に納めていますね。第二楽章は美しい入りから燃焼度を上げて行く。揺さぶりも強め。スケルツォもメリハリ強めで美しさと精悍さを見せます。多少持て余し気味ではありますが。アダージェットは基本は薄く静粛な仕上げで、捧げたアルマへの愛情が映る様です。それを受けての最終楽章はテンシュテットらしく静かな入りから盛り上げて行きます。


全体に勿体ぶったマラ5です。もちろん悪くありません。






(#2)
《後日追記紹介》
North German Radio SO
[Profil] 1980-5/19


問題の北ドイツ放送響(現NDR)の音楽監督に就任した翌年の興味深い演奏が発売(2015年3月)されましたね。下記のニューヨークフィル同曲客演一ヶ月前になります。(折合いが悪く1981年演奏旅行中に決別しています)

第一楽章はスローにして流麗とも言える葬送行進曲から流れよく第二主題へ入って行きます。その第二主題ではアゴーギクを効かせますね。第二楽章は切れ味鋭い入りから緩急を使った演奏で、強音パートは気持ちの入った情熱を感じます。そして一転、美しいスケルツォは長さを感じさせませんね。
アダージェットは、スケルツォの迫力のコーダから世界を区切る様に静的な展開です。殊更の甘美さやスローさは避けた展開は好みです。最終楽章はリズム良く入り流れる様にコーダに向かいます。終盤の山場からコーダは最高の盛上りをみせてくれます。


アゴーギクとディナーミクをうまく効かせるテンシュテットのマーラー第5番です。例によって第二楽章は特筆物の素晴らしさで、相性の悪かったNDRとの緊張感が生んだ産物なのでしょうか。






(#3)
NewYork PO
[NYP] 1980-6/18


ニューヨークフィルでMahlerを振った指揮者を集めた1〜10番のオムニバス盤「NEWYORK PHILHARMONIC The Mahler Broadcasts」という自主制作アルバムに入っている5番です。

第一楽章は、やはり管の響きよく弦のしっとりとした演奏でLPOよりも葬送的風合いが強く出ています。アゴーギクを効かせた演奏ですが、くどさはありません。せっかくのエンディングで咳が酷い。(笑) 第二楽章は、頭からメリハリをつけた気合いと迫力。第三楽章スケルツォも流れる様にと言うよりも切れ味。アダージェットはテンシュテットらしく華美を避けています。最終楽章は細かいアゴーギクで揺さぶりながら、例によってコーダへ向けては迫力。最後は大ブラボーです。


全体としては重厚さよりもシャープさのテンシュテットです。

この全集はNEWYORK PHILHARMONICのホームページの Buy Recordings から新品を購入出来ます。
http://nyphil.org






(#4)
★☆
LondonPO
[FM東京, KING] 1984-4/13


(右はSACDシングルレイヤーです)

当時の手兵LPOを率いて大阪フェスティバル・ホールでのライブ。

第一楽章の入りからエネルギーがほとばしります。緩急の中にも滾る物が滲み出る様な演奏で、最後のピッチカートも強いです。第二楽章も弦のパワーと切れ味が素晴らしいです。少々中だるみも感じないではないのですが、いずれ情熱的にコーダに走ります。スケルツォもパワフルで、華麗と言うよりも重厚。
そしてアダージェット。スローで入るのですが、この曲にスポットを当てている演奏ではないですね。冷静にナチュラルなアダージェットです。第五楽章はお約束通りに 抑えた演奏から入り、全体をクレシェンドのごとく登って行きます。途中でコーダを予測させる持って行き方を感じますね。ラストの約1分は劇的です。拍手はもう少し残して欲しかった。


これはパワー漲る素晴らしいマラ5です。






(#5)

LondonPO
[EMI] 1988-12/13


曰く付きの演奏。Tennstedtに興味ある人はググってください。

第一楽章から力強いテンシュテットの葬送行進曲。第二楽章も派手な展開でライブならではの高揚感が伝わります。スケルツォも豪快にドライブしています。そして一転、アダージェットは静寂な演奏。このパターンは良いですよね。第五楽章は前半をかなり抑え気味、最後にパワーを集結させています。


多少荒っぽいマラ5。こういうのはライブで聴いたら楽しいです。好きですね。






(#6)
Concertgebouw O
[MEMORIES] 1990-12


例によって怪しげ伊Memories盤の晩年ライブです。闘病の中のタクトですね。

一楽章は入りファンファーレのtpが少々変わっているのと、ティンパニの奏でる第一主題が異常に小さい事くらいが気が付くくらいで普通。三楽章のスケルツォは長く感じました。でもそれ以外の二四五楽章は切れ味のある良い演奏ですね。それはコンセルトヘボウの感性かもしれません。


ロンドンPOとは明らかに異なるクールなTennstedtの演奏です。





ガリー・ベルティーニ, Gary Bertini (2録音)

(#1)
VPO
[Weitblick] 1983-4/12


マーラーの指揮者として日本でも人気のあるGary Bertini、ウィーンフィルとの5番です。

第一楽章は気負わず重厚さを残しながらも流している感じがします。そしてその流れは二楽章の出だしに繋がります。興奮を抑えた演奏ですね。しかしこの二楽章の流れは悪くなく、途中からの盛り上げ方が良くてスケルツォにうまく連携していきます。スケルツォの入りでホルンがもたつくのはご愛嬌でしょうか。ライブではこのスケルツォの前の楽章の合間でチューンし直す事がよくありますが、ここではスケルツォの後でも行われて、そのシーンが残されています。ライブならではですね。
スケルツォも全体としては抑え気味で進めて、ためたパワーがコーダで爆発。アダージェットは美しいですが、映画音楽の美しさではありません。ことさら甘美さを打ち出す訳でもなく、さめた美しさです。第五楽章は曲に逆らわずにコーダへ向かう流れで、この楽章へ繋げる為に構成されている気もしますね。


最後はウィーンフィルも集中力が増している感じです。押しては引く流れ。全体として冷静なるマラ5です。






(#2)
Kölner Rundfunk SO
[WDR EMI] 1990-1,2


Bertiniが首席指揮者として鍛えたケルン放送交響楽団との5番です。(現在はサラステが素晴らしい録音を残しています)

安心感の高い第一楽章。大きな流れを掴んで離さない展開は魅力的です。第二楽章も同じ流れでつながり壮麗です。スケルツォは速めの演奏から入り、エモーショナルな展開。飽きさせる事がありません。コーダの切れ味も素晴らしいです。アダージェットは甘美に流れる方向で、好き嫌いが分かれるかもしれませんね。第五楽章は初めからテンションが高いです。そのためかコーダの盛り上がりが引けた感じかもしれません。


余すところなく詰め込んだ、って感じでしょうか。
亡くなる前の都響との録音が出されれば、と思う今日この頃です。





ヴァーツラフ・ノイマン, Václav Neumann (3録音)

(#1)
Gewandhausorchester Leipzig
[BERLIN] 1966


チェコフィルの指揮者として著名なヴァーツラフ・ノイマン(Václav Neumann)がその前に音楽監督を務めていたゲヴァントハウス管との5番ですね。

第一楽章はとてもいい流れ、引き込まれる様な切れ味。管楽器が音を良く鳴らし、それに若干速めのテンポが良いのかもしれませせん。第二楽章も同じくやや速めながら、緩急をディナーミクで付けてきます。良い感じ。スケルツォも速いですが、そのテンポにうまく合ったタクトと演奏で、ここでも管楽器の鳴りが良いのを感じられます。明瞭な音使いは不安感無く楽しめますね。アダージェットもやや速めで適度な情感を持たせて流れます。そして徐々にテンポを落としてスローに。しかし、ラストで甘美な世界に持ち込み過ぎかもしれません。第五楽章の入りは遅いテンポですが、すぐに速めのテンポに切り替えます。所々でアゴーギクを効かせながらコーダへ。コーダはアッチェレランドをビシッと効かせています。


この曲でテンポの速いのはあまり良くない気もするのですが、これはgoodです。ノイマンは後年のチェコフィルとのセットよりもゲヴァントハウスの演奏の方が好きですね。






(#2)
Czech PO
[SUPRAPHON] 1977-1/31, 2/2


(紹介の盤は日本コロンビアが発売した同盤)

Neumannとチェコフィル。この組合せは後年Canyonからも出されていますが、これはチェコの旧録音。チェコフィルはマーラを聴くには良いと思います。指揮者を誰にするかでしょうか。

いきなり第一楽章はキレのある演奏で立ち上がる熱を帯びた葬送行進曲。第二楽章は、やや早いテンポ。緊張感があって飽きさせません。スケルツォはスローですが流れがいいですね。ただ、少し淡白かもしれません。
アダージェットは甘美に聴かせてしまいます。クラシックファンの嫌がる?演奏に近いかも。「クラシックはもっと崇高だ!」(笑) 第五楽章もわりとあっさりめに展開します。


なんとなく尻窄み的なマラ5。出来れば第一楽章の様なキレで終止して欲しかった気がします。






(#3)
Czech PO
[CANYON] 1993-3/16-20


上記録音から16年後のマーラー5です。この録音時期はノイマンがチェコフィルの音楽監督(1968年 - 1989年)を去った後になりますね。

美しい響きの第一楽章。特に管楽器の響きが素晴らしいですね。第二楽章も同じ様に美しい音と流れです。第三楽章スケルツォはスロー。その分モッサリ感は否めないのですが、音が冴えているので一二楽章の繋がりでの違和感はないですね。ただ、聴き慣れたスケルツォじゃぁないです。第四楽章アダージェットはハープが強めで、甘さの強い演奏になります。個人的には少々クドい感じが気になります。その分、最終第五楽章は軽め、軽快に運びます。


1977年のこのコンビの延長上で完成させた世界。美しくも甘美なマラ5です。こういう解釈があるのもこの曲でしょう。





小林研一郎, Kenichiro Kobayashi (4録音)

(#1)
Kyoto SO
[Kyoto Symphony Orchestra] 1985-9/26


コバケンこと小林研一郎さんが京都市交響楽団の首席指揮者に就任した年の演奏ですね。京響自費出版『京響音のあゆみ (PART-Ⅱ) 』になります。続けて4枚(内1枚DVD)インプレしますが、もう一枚正規録音(1983年 w/日本フィル)が残されていますね。

あっさりとした葬送行進曲、第一トリオも軽めで処々で迫力を見せるものの淡白な第一楽章。第一楽章の流れと同じで、ポイント的に迫力と切れ味を押さえた第二楽章です。tpがちょっと怪しいw
第三楽章スケルツォ主題とレントラー主題は流れよく、でも第三主題が もそもそのスローに、管楽器群も怪しげでその後も長く感じます。
アダージェットは甘美さも興奮もない淡白さ、悪くないのですがフラット過ぎに感じます。第五楽章もやや締まりの欠ける流れでなんとかコーダへ辿り着きます。果たして結果は…大ブラボー!!です


録音も含めてあまり見晴らしのよくないマーラー5です。管楽器も怪しげですが、迫力パートだけはコバケンさんですねw






(#2)
Japan PSO
[CANYON] 1991-5/30,31


(右は現在入手出来るEXTONのSACDのハイブリッド盤ですね)

コバケンが常任指揮者に復帰した時代の日本フィルハーモニー管弦楽団との5番です。

第一楽章はゆったりとした構えの葬送行進曲からテンポアップの第一トリオへの見晴らしが良いですね。第二楽章も出し入れの良いアゴーギクが各主題のコントラストを生かしています。
シャープなスケルツォ主題から優美なレントラー主題、テンポの良い第三主題、展開部・再現部も安定した第三楽章です。
アダージェットはやや速めの澄んだ音色でスタート、アゴーギクを使い揺さぶりますがクール。個性的ですが悪くありません。第五楽章もバランス良く主題を絡めて提示部を進んで行きます。山場からコーダは速めの流れからビシッと締めます。


ややアゴーギクを振りますが、安心して聴けるマーラー5です。後のチェコフィル盤(CD)より好きですね。何か+αがあれば素晴らしかったでしょう。
音の抜けが今ひとつ、SACD盤ならすっきりするのかも…






(#3)
Czech PO
[Fuji Television] 1997-11/15 DVD


コバケンはアシュケナージが首席指揮者を務めた時代のチェコフィルとの映像・録音がありますね。この時期は日フィルの常任指揮者をしていました。

第一楽章冒頭のtpファンファーレにタクトを振らないのにビックリ! 葬送行進曲は適度な重厚さ、第1トリオとのコントラストも良いですね。第二楽章も第一二主題のコントラストをうまく付けて、展開部のスローも適度に押さえます。王道の第一部ですね。
スケルツォは管のまとまりが今ひとつですがレントラー主題は優美。第三主題も適度のスローで、展開部から再現部と繋ぎます。ややスローな事と管楽器の不安定さが気になりますが堂々とした第三楽章です。
アダージェット、中間部の揺らぎを含め一番標準的かもしれません。第五楽章は締まりのある流れで山場へ向かい、テンポよくコーダを華々しくまとめます。


次のチェコフィルとの録音、スロー方向への兆候が見えますね。でも通して堂々正攻法のマーラー5に感じます。






(#4)
Czech PO
[CANYON] 1999-3/11-13


チェコフィルを振るコバケンのマラ5の2枚目。チェコフィルのマーラーは各コンダクターで良い演奏を残していますね。ちなみに3年後2002年にプラハの春音楽祭オープニングコンサートで、東洋人初のチェコ・フィル指揮をしています。

第一楽章は葬送行進曲的な気配をあまり強くしていないのが功を奏して大きな構えです。二つのトリオの緩急の出し入れは弱めですね。第二楽章も同様ですが展開部のスローは大きく、その後ももたせ過ぎのテンポにクセを感じます。
第三楽章、スケルツォとレントラー両主題をクセなく流して第三主題をドッとスローに、展開部から再現部は特徴はありませんがもったりして切れ味に欠けます。
アダージェットは抑揚抑えた緩やか〜な流れで終始します。第五楽章は第一楽章と同じく大きな流れを感じられ、コーダは見事です。


全体的には緩さ方向のアゴーギクにクセを感じます。二三四楽章のもっさり感が強いマーラー5です。録音は良いですね。





ジュゼッペ・シノーポリ, Giuseppe Sinopoli

Philharmonia O
[DG] 1985


続けてフィルハーモニア管ですが、シノーポリが首席指揮者を務めた時代の5番です。学研肌で鳴らす指揮者シノーポリはシュトックハウゼンやマデルナの元で現代音楽も師事していますね。

美しい第一楽章。それはtpの音色の印象から来るのかもしれません。流れとしては特別な解釈をしている訳ではないと思います。
第二楽章も教科書通り、もう少し激しさが欲しかった気がします。スケルツォは軽く、そして少々もたつき感を感じてしまいます。アゴーギク/ディナーミクの振り方がしっくり来ないからでしょうか? 同じ事がアダージェット、最終楽章にも感じますね。


個人的に落ち着かないです。シノーポリらしいと言えば、そうなのかもしれません。^^;





井上道義, Michiyoshi Inoue


Royal PO
[RPO] 1990-5/9


個人的に好きなマーラーの指揮、Inoue MichiyoshiのロンドンRoyal Festival Hallでのライブです。

例によって構えの大きな 超スロー & ディナーミク、実に個性的。第一楽章はまさに葬送行進曲で、静かな流れと音の出し入れが凄いです。第二楽章が少々かったるいのはこの曲に対する個人的なイメージギャップかもしれません。しかしここでも個性は引き立ちます。第三楽章のスケルツォ主題は踊る様に華麗な立ち上がり、そして控えた展開になります。ここまで極静音に落とす解釈は殆ど思い当たりません。これでアダージェットにつなげるのか心配なるほどです。しかし後半テンポを上げ気味に展開してコーダの盛り上がりに繋げます。アダージェットはなんとも超静音のスタートで素晴らしい美しさ。実に繊細です。第五楽章もアダージェットからのきれいな繋がりを見せながら入り、そして壮大なコーダ。


ロンドンのオーディエンスの熱きブラボーは半端じゃないです。お薦めです





ベンジャミン・ザンダー, Benjamin Zander (2録音)

(#1)
New England Conservatory Youth PO
[CPI] 1997


英人指揮者ザンダーが45年間(1967-2012)活動を共にした米のニュー・イングランド音楽院ユース管弦楽団を振ったマーラー5ですね。

第一楽章・第二楽章
微妙な揺らぎの葬送行進曲です。第一トリオはチェンジペースですが、鳴りや揃いが少々怪しげです。やっぱりユースらしさが出て来ますね。奇妙な主題回帰からチューンの怪しいティンパニ、第二トリオでも揺らぎをつけています。第二楽章第一主題はギクシャクして見晴らしが良くありません。第二主題もスローダウンはいいのですが管楽器が怪しげ、展開部は管も弦も怪しげです。ユースオケらしい第一部です。
第三楽章
スケルツォ主題は優美にまとめます。オブリガート・ホルンも頑張りますね。レントラー主題は速めで緩いアゴーギクを振っています。第三主題はホルンからゆったりと入りますが、ここでもオブリガート・ホルンが活躍です。展開部・再現部は程々にまとめます。コーダは元気な良さが出ました!
第四楽章・第五楽章
アダージェットの主題は幽霊の様な美しいさ?で良いのですがHp音(録音)が弱すぎです。中間部動機は美しいですね。第五楽章第一・第二主題の絡みはややスローでいっぱいいっぱい、コデッタ主題はマイルドにまとめています。落ち着かない展開部を経ての、再現部の山場からコーダではユースらしい元気いっぱいの鳴りを聴かせてくれました。これがユースオケの楽しさですね。
大ブラボーが飛びました。



良くも悪しくもユースオケのマーラー5です。全体の完成度は取り上げても仕方ありませんが、ユースと聞いて期待するラストの盛り上がりは見事に応えてくれました。それがユースオケですね。

完璧には程遠いにしても破綻を来さぬオブリガート・ホルンもユースとしては見事だと思いました。






(#2)
Philharmonia Orchestra
[TELARC] 2000-8/7-10


フィルハーモニア管を振ったマーラー5です。例によって2CD目はザンダーによる解説になっています。
現在ザンダーは、自ら創設したボストン・フィル(セミプロ。小澤さんのいたBSO:ボストン・シンフォニーとは違います)を率いていますね。

第一楽章・第二楽章
押さえた葬送行進曲に情感あるファンファーレ動機、第一トリオは適度なテンポアップと激しさの好バランスのです。第二楽章では第一主題を重厚に切れ味よく、第二主題では第一楽章第二トリオの再現で哀愁を見晴らし良くつなぎます。展開部は主題を切れ味よく入れ替え、再現部も主題の変奏を色濃く奏でますね。見晴らしの良い第一部になっています。
第三楽章
スケルツォ主題は軽やかに、レントラー主題も優美に踊る様に流れます。その変奏から第三主題はコントラストが弱い感じになりますね。展開部から再現部にかけてもスローパートの流れがフラットに感じられます。そこが残念な第二部です。
第四楽章・第五楽章
第四楽章主要主題は静美なアゴーギク、トリオも美しさが沁みますね。アゴーギクが特徴的なアダージェットです。第五楽章は優美な第一主題、落ち着いた第二主題がスローな流れを作ります。これはシャープさに欠けますね。この流れではコデッタ主題も魅力が出ません。展開部も処々スローでフラットに流れて、再現部山場からコーダも落ち着き払ったフィニッシュとなりました。



見晴らし良い第一部を聴かせた後は、ややフラットに落ち着いてしまうマーラー5です。鳴りは良いので、第二部以降のスローパートが残念ですね。







次は2013年1月のインバルとセーゲルスタムのマーラー5番の前に聴き較べをしようと思います。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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