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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 180CD聴き比べです [#1 : 1-15]


グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)の交響曲第五番、聴き比べです。

コンサートで取り上げられる事が多い事、CD発売枚数が多くいろいろな指揮者の特徴を楽しめる事で知らず知らず枚数が増えますね。(気がつけばCDもいつの間にか100枚どころか....)

100枚の道も1歩から、まずはバーンスタインの5CDを中心に15枚の*聴き比べからスタートです。【後日記】後半にマーラー5番の参考資料も載せました。

*インプレ(印象)ですね、レビュー(評価)ではありません。


Mahler Symphony No.5 -- 180 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:15CD 本投稿
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン[x3 ☆], プレートル, 小澤征爾, ジンマン, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2], 参考音源/資料類
 #2:20CD
M.T.トーマス, テンシュテット[x6], ベルティーニ[x2 ㊟], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4 ☆], シノーポリ, 井上道義, ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ, スワロフスキー[㊟], レヴァイン, 外山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], デプリースト, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ[㊟], レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル, フェルツ[㊟], 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2 ㊟], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン
 #10:10CD
ゲルギエフ[x3 ☆], ラトル[★☆], ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, ヒルシェ, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト[☆], エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス[☆], スターン
 #12:20CD
佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ブリッグス(オルガン), ナタリア(アンサンブル)




レナード・バーンスタイン, Leonard Bernstein (5録音)

何と言ってもバーンスタインからですね。5録音のポイントは、
 ①CBS(現Sony)盤からDG盤への変貌
 ②DG盤とその直近(前後12日間)2録音の違い
ですね。



(#1)

New York Philharmonic
[Sony] 1963

今(2012年発売時)なら全集がSonyから驚きの新品¥1,999で出ますね

若き日のレニーとニューヨークフィルですね。DGのウィーンフィル盤と較べると…

第一部
情熱は感じますが切れ味が勝る葬送行進曲、第一トリオ・第二トリオともクセのない第一楽章。ラストのピチカートを間をおいて強く打つのはこの時から変わりませんね。第二楽章も変化球なしの切れ味のストレート。
第二部
第三楽章スローで美しいスケルツォとレントラー、その後も正統的で華やかさの第二部です。
第三部
アダージェットは情感とディナーミクが強く好みの方向ではありませんが、その方向性は一貫していましたね。第五楽章は軽快に登って二つの山場を盛り上げるシャープな王道で速めのコーダで走ります。ラストのアッチェレラドは抑え目、それもずっと変わりませんでした。



クセも欠点もない真っ向勝負、これはこれで既に完成形のマーラー5ですよね。切れ味はあってもDGの様な重さやクドさはありません

ブラインドで聴いたら+αが欲しいけどGood!って感じでしょうか。バーンスタインってわからないかも… (わかるとしたらアダージェットでしょうか)
初めてこの曲を聴くならとても良い一枚かもしれません。
(この演奏を聴くと、ワルター/N.Y.フィルの5番を思い出します)






(#2)
Wiener Philharmoniker
[DG-DVD] 1972-4,5


上記NYPの9年後、DG盤(1987年)と同じVPOでその15年前、ウィーンのムジークフェラインザールでのライブDVDです。(CD化されていません)

第一部
第一楽章は葬送行進曲、第一第二トリオともに本流的な良い流れでNYPOとの類似が強いです。第二楽章も同様でクセはなく、第一楽章第二トリオが回帰する第二主題はVPOらしさを感じますね。
第二部
第三楽章も美しく優美にスケルツォとレントラーを奏でますがNYPOほどのスローではありません。全体の優雅さは同じですが。(演奏直後bravoと言っている様ですね)
第三部
アダージェットも叙情性を豊かに。最終楽章は提示部前半は速めのテンポで、途中の山場をビシッと締めて、コーダからラストのアッチェレランドを奇麗にまとめます。フィニッシュと同時に大喝采です。



NYP盤とよく似ています。過度の興奮を排除したまとまりの良さ、乱れもクセもないお手本の様な王道演奏です。後の激しい演奏スタイルに、この後どう変わって行ったのか興味深いですね。

レニーのマーラー5はどれを取っても☆を付けたくなります。






(#3)
Wiener Philharmoniker
[LCB-108] 1987-8/30 at Salzburger Fes.

ここから3CDは12日間の間の3つのライヴになり興味深いです。
これは非正規盤で下記DG盤の前の週 ザルツブルグ音楽祭のライヴです。(Kaplan Foundation 5.0365)

第一部
一楽章のスローで強烈な陰影・力感、第二楽章の爆裂的激しさはDG同様です。第二楽章の緩急豊を付けた出し入れが強い迫力はレニーならではですね。この楽章はDGより迫るものがあります。
第二部
第三楽章は入りで珍しくホルンがつまずいたり演奏の乱れも発生し、DGより締まりに欠ける流れです。ところが第三主題以降は強烈濃厚なアゴーギクが復活し爆裂さは正規盤を勝る気配です。
第三部
アダージェットはDGと同じ超濃密な流れですね。最終楽章も流れは同じで、提示部前半を軽快にスタートし展開部以降は爆裂主体です。フィニッシュ直後に大喝采!!
通して暴れ方はDGより強烈、個人的にはとても魅力的です。VPOとは思えません。



DG盤と同じ流れですね。荒れ方はそれ以上かも。録音はMONOで音質劣悪、編集なしの生々しい演奏を聴いてみたいマニアには☆を、それ以外での購入理由はないでしょう。

非正規盤ですがCD-Rではなく、日本の代理店?が帯やライナーまで作って発行していましたね。他にも非正規盤はボストン響とかあるのですが、わざわざ探して購入はしていません。






(#4)
★☆
Wiener Philharmoniker
[DG] 1987-9/6-8 at Alte Oper Frankfurt


右は廉価版の全集(DG盤)になりますね。

好きかどうかは別にしてメインはこれかなという事で。フランクフルトのアルテオーパーでのライヴ。超有名盤で、素人が今更感想もないとは思いますがご容赦ください。

第一部
重厚スローの葬送行進曲、第一トリオは重く流れ良く、第二トリオで哀愁からド迫力の第一楽章。第二楽章はとんでもない重量級の激しさ、呪いでも感じる様な第一部で隙はありません。
第二部
第三楽章もどっしりとしたスケルツォから濃厚なレントラー、第三主題以降も軽快さなど微塵もありません。スロー側アゴーギク高密度スケルツォの第二部です。
第三部
アダージェットももちろん濃厚、甘美ではなく強烈ディナーミク緊迫美です。第五楽章提示部前半は落ち着いていますが、それ以降は重厚で展開部・再現部の山場は爆裂、コーダからフィニッシュは爆走です。とはいえ一番普通に近い第三部(最終楽章)かもしれません。



とにかくズシーンと重苦しい流れです。後期のバーンスタイン共通の意図を感じる濃厚タクト。重量級の演奏は他にもありますが、100枚を超えるCDでこれを超える物には出会えません。

VPOじゃなくて熱にうなされるBPO?!的な息苦しい程の重量感、これぞバーンスタインのマーラー5!!、他の演奏を吹っ飛ばします。

必携の一枚ですが、コンサートの前にこれを聴いて行くのはご法度ですねw






(#5)

Wiener Philharmoniker
[MEMORIES] 1987-9/10 at PROMS

MEMORIESを正規盤と呼んでいいのかは微妙ですが、ロンドンのロイヤルアルバートホールでBBC主催の恒例プロムスにおけるライブ。上記DG盤9月6-8日の二日後9月10日ライブと言う事になります。

第一部
スローな第一楽章の渦巻く様な迫力はDG盤よりもナチュラル方向へ。それはクセのあるホールの関係かもしれないですし、録音のせいかもしれません。第二楽章、スタートから緊迫の演奏を見せつつ すぐさま懐広い第二主題へ。この緩急が見事でその後も続きます。バーンスタインの素晴らしさはこの第二楽章が際立つ事かもしれませんね。ドロドロとしたDGより切れ味の迫力に感じます。
第二部
第三楽章も緊迫感と衝撃的な迫力ですが、その中に美しさを感じられる素晴らしさです。
第一部
第四楽章アダージェットの美しさはDGより厚みを増し、怒涛の波のごとし。そして第五楽章のパワー漲る充実の演奏は素晴らしく、観客は演奏が終わるなり大ブラボーです。



正規盤並の音質になり、DG盤よりも音の響きやVPOの充実 緊迫を素直に感じられるますね。特に第二・第三・第五楽章は素晴らしいです。オドロオドロしさから引き締まった筋肉の様な力強さ、一聴に値するマーラー5だと思います。

DG盤と比較した時に、素晴らしい演奏(録音バランス?)と見るか 個性が減ったと見るか はそれぞれかもしれません。(アダージェットは別ですがw)
これらのライヴからDG盤がミキシング・マスタリングで作り込まれているのが実感できますね。





ヘルベルト・フォン・カラヤン, Herbert von Karajan (3録音)

カラヤンのリリースはDGのセッション一枚だけですね。他に非正規盤がDG盤と同年のLIVE、その5年後のLIVEが存在します。6番9番には非正規録音の名演が知られていて、やっぱりカラヤンLIVEは侮れません。



(#1)
Berliner Philharmoniker
[DG] 1973-2/13-16


マーラーのカラヤンと言うと今ひとつ評価が付かないと言うのが一般的でしょうか。一度先入観を排除して聴き直してみるとまた違う印象かもしれません。

第一部
重厚ファンファーレから落着いた憂いの葬送行進曲、第一トリオは一気に速く激しくと強烈です。第二トリオは優しさの哀愁から色合いを濃く上げてコーダへ。第二楽章第一主題と第二主題は一楽章のトリオ回帰的で繋がりを意識していますね。展開部は'激→静→明'の流れをハッキリと、再現部も二つの主題の個性をより引き立てて、そのコントラスト付けが明確な第一部です。
第二部
スケルツォ主題は平均的な印象ですが途中から鋭く、レントラー主題はスロー・マイルドでフンワリとした感じ。第三主題はスローに大きくhrが主題を鳴らし、各楽器にバトンタッチもスロー主体、短い展開部をコデッタ風にビシッと決めています。再現部もディナーミクを強くコントラストを付けて、コーダの暴れ方も爆速大迫力ですが、全体的には激しく速いパートが浮いた様な第三楽章に感じます。
第三部
第四楽章主部はやや速めの暖色系で中間部は繊細、ただ全体的にディナーミクが強く、大音響が不自然なアダージェットです。最終楽章二つの主題は淡白な印象で進み、コデッタ主題もスルッと流れます。展開部も少し力を込めるものの印象は弱く、再現部の三主題もごく一般的です。ただ、山場はBPOらしさ全開の迫力でコーダから暴れて強烈なアッチェレランドで駆け抜けます。凄いです!!



コントラストの強いマーラー5です。ハッキリとしたディナーミク主体での色付けで、特に速くて激しいパートの印象が強いですね。

ただ、その他のパートの統一感が弱く、全体としては焦点が定まらない感じがしてしまいます。せっかくの迫力パワープレイが残念です。




【後日追記】


(#2)

Berliner Philharmoniker
[FKM] 1973-8/28


カラヤンBPO[DG盤]の6ヶ月後、ザルツブルクでの非正規LIVE盤です。実はこの音源が興味深いのですが…

第一部
荒っぽいファンファーレから葬送行進曲は憂いの中にディナーミクを付け、パッセージのファンファーレは強烈に。第一トリオは一気に速く激しくと猛烈に突き進みます。第二トリオは優しさの憂いから上げてコーダへ。第二楽章第一主題・第二主題ともに一楽章のトリオ回帰、展開部から再現部も見事にDG盤をLIVEで再現した第一部です。ただ、tpが素っ頓狂な音を出すのが違いですw
第二部
スケルツォ主題は気持ちが入った優美さになって途中からの力感もより強くなりました。レントラー主題も抜けの良い優雅です。第一主題回帰からも締まりが上がって、長い第三主題から、その流れのフィニッシュ的な展開部の激しさもスッキリ聴ける様になりました。再現部も各主題に元気さがあって猛烈なコーダの炸裂へ繋げます。全体に感情のこもった演奏となって見晴らしが大きく改善されましたね。
第三部
第四楽章のディナーミクの強さは変わりませんが、前楽章の改善でその強音個性が生きる様になりました。第五楽章提示部の三つの主題も感情がこもった良い流れになりましたね。展開部は冒頭から気持ちの入った一体感ある流れで、再現部三つの主題のスロー静から山場・コーダは極端な爆速を回避した大迫力!! もちろん盛大なアプローズです。


DG盤をLIVEの+αで仕上げたマーラー5です。弱さを感じた一般パートにLIVEで気持ちが入り、強烈な爆速が抑えられてバランスも良くなりました。

特に第三・第五楽章の見晴らしが大きく改善されて、聴き応えある見事な演奏になっています。放送音源ですからリマスタリングの可能性もゼロではないでしょうね。




【後日追記】


(#3)
Berliner Philharmoniker
[FKM] 1978-5/15


5年度後のザルツブルクでの非正規LIVE盤です。Kaplan Foundationには記載がありませんが、カラヤンの演奏記録には実績がありますね。(演奏スタンスからも間違いないでしょう)

第一部
パワーのファンファーレから憂いと揺らぎの葬送行進曲、パッセージのファンファーレは爆裂です。第一トリオでも激しく速く、第二トリオはここでも優しい哀愁からピークはいっそうの爆裂です。ラストの低弦ピチカートが凄く強いのは変わりませんね。第二楽章第一主題は激しさがいっそう増して、第二主題は緩やかな哀愁です。展開部から再現部も基本は変わりませんが、最後の第二主題の炸裂は聴いた事が無いレベルです。激しさのコントラストが強まった第一部ですね。
第二部
スケルツォ主題は大きく鳴らして後半は怒涛の気配です。録音の問題が大きい?! レントラー主題は優美で、第三主題の流れから続く展開部は5年前と同方向ですね。再現部でもピークは強烈に鳴らして、コーダはとんでもない豪快爆烈です。
第三部
第四楽章は今までと同じで強音を大きく鳴らしていますね。マーラーが愛を語るなら最後は激情と言う事でしょうか。第五楽章二つの主題は切れ味と締まり良く進んで、コデッタ主題も締まりある優美さです。展開部も力感溢れる流れで山場は炸裂、5年前のザルツブルクLIVEと同じ良さですね。再現部も静かに落ち着かせて、力を込めながら山場はスローに溜めて大爆発!! コーダはアッチェレランドを抑え気味に盛り上げます。

ザルツブルクで大喝采と怒涛の足踏み音ですから、凄い演奏だったのかも!!!


強烈な激しさ軸足のマーラー5です…多分w。録音が良く無いので正確な事が分からないのが残念です。

もしかしたら、とんでもない名演だったのかもしれません。





ジョルジュ・プレートル, Georges Prêtre

Wiener Symphoniker
[WEITBLICK] 1991-5/19


個人的には印象の薄い仏人指揮者ジョルジュ・プレートルが終身名誉指揮者だったウィーン交響楽団(VSO)を振ったLiveです。第一客演指揮者時代(1986-1991)の録音ですね。
【後日記:2017年1月4日亡くなられました】

第一部
スローで緩いアゴーギクの勿体ぶった葬送行進曲、第一トリオはやや速めで切れ味良く、第二トリオは繊細な哀愁感を漂わせてピークを真面目に作ります。第二楽章第一主題は速く激しさは程々、第二主題は第二トリオ回帰的ですね。展開部の'激→静→明'の流れは教科書的で気を衒った流れはありません。再現部の第二主題に続くコラールもコントロールが効いています。折り目正しい真面目な第一部です。
第二部
スケルツォ主題は標準的な印象、レントラー主題はシンプルです。第三主題はオブリガート・ホルンが朗々と鳴らして、スローからテンポアップして各楽器の変奏につなげて、短い展開部で締める様にテンションを上げます。再現部の主題群も刺激付けはスコアを超えるものはない感じですね。コーダも速めに走ってしっかりと纏めています。
第三部
第四楽章の主部は暖かく包み込む様なアゴーギク、中間部も揺さぶりをかけて、ピークでは音厚を高めます。大勢に影響ありませんが、このアダージェットだけはクセがあります。最終楽章二つの主題は快速軽快、コデッタ主題もその流れです。展開部は緩やかに入ってすぐに力感あるフーガからアゴーギクを使って進み山場は華やか。再現部の山場は大きく鳴らして、コーダはアッチェレランドをビシッと効かせて駆け抜けます。



バランスが良く聴きやすいマーラー5です。程よい緩急・出し入れで安心感はありますがワクワク感には欠けますね。

クラシック関係の出版・評論家大先生 達が大はしゃぎしたCDという印象の方が強烈で引けますがw





小澤征爾, Seiji Ozawa

Boston Symphony Orchestra
[Philips] 1990-10/13-16


小澤さんが長年音楽監督(1973-2002)を務めたボストン交響楽団とのマーラー5ですね。非正規盤でもBSOとの録音がある様です。

第一部
葬送行進曲は鎮まりパッセージのファンファーレもコントロールが効いて落ち着いた流れです。第一トリオも激しさとテンポを抑え気味にバランス重視、第二トリオは細く繊細さを生かして入って徐々に力強くコーダへ。第二楽章第一主題と第二主題はそれぞれトリオ回帰感が強く、一楽章の流れを軸にしています。展開部はvc動機は美しさを、行進曲は軽妙さを感じますね。再現部も第一主題を激しさ程々に、第二主題を丁寧に、と 終始落ち着いてコントロールされた第一部です。
第二部
レントラー主題はやや速めに優美で心地よく、レントラー主題も程よい優美さですが、教科書的な印象かもしれません。第三主題のオブリガート・ホルンは少しスローで抑えた音色、主題の楽器入れ替わりもスローです。展開部はそれを締める様にテンポアップして刺激を付けていますね。再現部の三つの主題も多少色合いは濃くするものの、コーダの力感もほどほど。ずいぶん抑えた流れだなぁ、という感じの第三楽章です。マスタリングで強音カット?!
第三部
アダージェット主部は静で淡々としていますが僅かにスローのアゴーギクがありますね。ピークは抑え気味で中間部は淡々とした流れから気持ちを入れて来ます。最終楽章二つの主題は心地良い流れで絡み、コデッタ主題はあっさりとしています。展開部も淡々と入って表情薄くあげて進み山場を作りますが、鳴らしてはいるものの感情移入が弱いです。再現部山場からコーダも標準品の様に盛り上げて?フィニッシュのアッチェレランドもほどほどに。



全てコントロールされて表情が薄いマーラー5です。感情起伏が感じられず、ディナーミクとアゴーギクを抑え過ぎ?!の印象です。

録音の問題もあるのでしょうか。流れは主流的にキッチリ押えているので、小澤さんらしい出し入れとメリハリを聴きたいですよね。アプローズがありますが、これがLIVEとは信じられません





デイヴィッド・ジンマン, David Zinman

Tonhalle Orchestra Zurich
[RCA] 2007-4/17-19


デイヴィッド・ジンマンが音楽監督(1995–2014)を務めたチューリヒ・トーンハレ管とのマラ5です。

第一部
スローながらクールな陰鬱さの葬送行進曲、第一トリオはテンポアップですが激しさはコントロール下に、第二トリオは静な哀愁から上げてコーダと言うクセのない第一楽章ですね。第二楽章第一主題は第一トリオ回帰的、第二主題は第二トリオ回帰的と、第一楽章の延長上スタンスが明確です。展開部vc動機は暗く澄んだ陰鬱さ、第二主題から行進曲を丁寧に扱います。再現部も第一主題は激しさほどほど、全てがコントロール下にありますね。ジェントルでスタンダードな第一部です。
第二部
スケルツォ主題は落ち着いて優美、レントラー主題も少しテンポを落として華麗。第三主題のオブリガート・ホルンは大きく朗々と鳴らして、主題を各パートに引き渡します。王道ですが平凡ですね。展開部も第二主題の荒々しさを押さえ込んでいます。再現部の三主題も多少のメリハリ付けはあるものの"再現"的になっていますね。コーダの激しさも計算尽くです。丁寧過ぎで楽しさに欠ける第三楽章かもしれません。
第三部
第四楽章主部は冬の夕暮れの様な透明感、中間部はスロー美、クールで好きなアダージェットです。第五楽章の第一・二主題も落ち着いて、コデッタ主題はマイルド優美ですね。展開部はまとまり良くマイルドな山場を目指します。再現部の三主題は上品に、山場からコーダは生真面目に盛り上げます。



ジェントルでクセのないマーラー5です。スローを基調として、興奮や怒涛や個性と言った流れの対極ですね。

流れも演奏もコントロール下にあって、ミスやエラーは皆無、いかにもセッションで作り込まれた標準仕様と言った感じです。初めて聴くなら安心感がありますね。





ウィン・モリス, Wyn Morris


Symphonica of London*
[IMP] 1973-11


英国人指揮者ウィン・モリスと言うとデリック・クック**のマーラー10番第2稿と、バリー・クーパーのベートーヴェンの交響曲第10番の世界初録音で有名でしょうか。このオケ*(ロンドン・シンフォニカ?, 1965年W.モリス創設, ロンドン)は知らないので、情報をお持ちの方は教えていただけると嬉しいです。

第一部
ファンファーレから主要主題は揺さぶりが大きく、スロー重厚。第一トリオは激しさを強くしてコントラストが明確です。第二トリオは少しテンポアップで哀愁を奏で、そのまま色を濃くしてコーダへ入りますね。第二楽章第一主題は激しさ&スロー、第二主題で肩の力を抜く様に穏やかさを見せます。展開部序奏は荒々しく、vc動機は鎮めてコントラスト付け、第二主題は濃厚なスロー哀愁、行進曲もスローと個性的です。再現部もスロー強調!! スロー そして揺さぶりと荒っぽさの個性的第一部になっています。
第二部
スケルツォ主題はほど良いテンポで優美ですが力感があります。レントラー主題もそのテンポに乗っていますね。第三主題ではオブリガート・ホルンが大きく鳴らして、弦に主題を渡して各楽器の変奏へと入りますがなぜか平凡退屈w。展開部に入ると激しく派手に、再現部は主題の流れはそのままに荒っぽさと揺さぶりが出て来ます。軸足はスロー、やや退屈な第三楽章です。コーダのスローからパワーは凄く変わってます。
第三部
第四楽章主部は速く淡白な甘美、中間部は感情的、全体8'11"と速く風変わりアダージェット。第五楽章第一・二主題は揺さぶりを入れてスロー重厚さ、コデッタ主題は優美です。展開部は荒っぽさを加えながらスローに進み最後は炸裂。再現部の主題群は控えめで、山場は派手派手しく、コーダはスローに構えて大きく鳴らします。スローのアッチェレランドが奇妙ですヨ。個性を振り撒く第三部ですね。



クセのあるスローな揺さぶりと荒々しさのマーラー5ですね。これはマーラー解釈に強かった(らしい)モリスの真骨頂でしょうか?!

シェルヘン・マデルナ・ロジェヴェンと変則四天王の一角ですね。厳しい変化球ですが まだ魔球ではありません。魔球も好きですがw


*Kaplan FoundationでもSymphonica of Londonになっています。素っ頓狂な音を出すわけではないので酷いオケではなさそうです。
**ライナーノートはそのDeryck Cookeが楽曲構成をベートーベンと比較したりしながら書いています!




ヘルベルト・ブロムシュテット, Herbert Blomstedt

NHK Symphony Orchestra
[KKC King] 1985-12/5


スウェーデン人指揮者ブロムシュテットはマルケヴィッチやバーンスタインに師事していますね。これはN響の名誉指揮者になる1年前の録音です。

第一部
ファンファーレから葬送行進曲は教科書的で淡々と、第一トリオではテンポアップと激しさを抑えて来ます。tpがコケますが。第二トリオは少し速めのテンポで哀愁は軽めから上げてファンファーレ回帰です。第二楽章第一主題はここでもテンポ・激しさは教科書的、第二主題も特徴薄めですね。展開部もvc動機を抑えて行進曲へ激しさを持ち上げる典型、再現部も三つの主題を程良く力感をプラスしています。クセのない平和な第一部ですね。
第二部
スケルツォ主題は少し速めに優美さは抑え気味、レントラー主題は適度スローの優美さです。第三主題はオブリガート・ホルンと弦楽が広がりを聴かせ、主題を楽器を変えながら変奏しますが穏やかです。第二主題回帰からの展開部はテンポアップと刺激を付けて締めますね。再現部は各主題変奏の力感を僅かに強め、コーダはテンポアップで華やかに決めます。
第三部
第四楽章主部はスローで暖色系、夏の夕暮れの様。中間部も静にコントロールされて落ち着いた心地よさのアダージェットになっています。最終楽章二つの主題は教科書的に絡んで進み、コデッタ主題も約束通りの穏やかさですね。キーとなる展開部も適度な刺激を加えつつ上げて行き、コデッタから山場をキッチリ鳴らします。再現部山場からコーダは素晴らしい鳴りで、フィニッシュはアッチェレランド抑えめですね。



平和で安定感のマーラー5です。主題間でのテンポ設定の区別等はありますが、全体としたらクセは感じませんね。もちろん締める処はピシッと、それがブロムシュテットらしさでしょう。

ショーファードリブンの車にゆったりと安心して乗る気分と言った感じでしょうか。





グスターボ・ドゥダメル, Gustavo Dudamel

Simon Bolivar Youth Orchestra of Venezuela
[DG] 2006-2


グスターボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ。言わずと知れた、今や注目度の高いセットですね。ドゥダメルは他に非正規盤のマーラー5が多く出ていますね。

第一部
揺さぶりのファンファーレから静に入りアゴーギクの葬送と主要主題は個性的です。第一トリオは一気にテンポアップで元気さを見せる明快なコントラスト付け、ここでも途中で揺さぶります。第二トリオは静の哀愁でクレシェンドです。第二楽章第一主題はやたらと速くて元気溢れ、第二主題は第二トリオの回帰的、と 第一楽章の紐付きの印象が強いです。展開部vc動機からは鬱→明の行進曲へと明確な変化を付け、再現部は音はやや強めですが緩急は弱めですね。アゴーギクによる揺さぶりと緩急の個性的な第一楽章が印象的です。
第二部
スケルツォ主題は若々しい元気さで、僅かに揺さぶりを感じます。レントラー主題でも緩やか優美で心地良い流れです。第三主題はオブリガート・ホルンが朗々と鳴らして気持ち良く、力まず見晴らし良い変奏パートへ入ります。展開部はメリハリを付けて、再現部は三つの主題に緩急を振り分け、曇りのない明瞭さの第三楽章です。
第三部
第四楽章主部は静で甘美さを避けた好きな流れ、中間部も静美でクールなアダージェットになりましたね。最終楽章一・二主題のフーガはハイテンポ軽快に、コデッタでテンポを緩めて優美さを出します。厄介な展開部は静に抑えて入りテンポと力感を強める見晴らしの良さ、再現部はスローを大きくとってからテンポアップで山場を駆け抜けます。フィニッシュは突如のアッチェレランドですね。



基本速めで若々しく心地良いマーラー5です。執拗な重厚さを避けてスカッとした軽快さが素晴らしいですね。

気になるのは第一楽章にある個性的なアゴーギクで、全楽章通したら また違った印象になっていたかもしれません。興味深い一枚でを付けたくなりますねぇ





クリストフ・フォン・ドホナーニ, Christoph von Dohnányi

Cleveland Orchestra
[Decca] 1988-7/25


クリストフ・フォン・ドホナーニが音楽監督(1984-2002)を務めたクリーヴランド管弦楽団との演奏です。作曲家のエルンスト・フォン・ドホナーニは祖父で、その下フロリダ州立大で学んでますね。

第一部
ファンファーレtpは揺さぶり、主部は静かな葬送です。第一トリオは激しさを出しますがテンポは緩めですね。第二トリオは緩やかでやや速めで情感は控え目です。第二楽章第一主題は抑えの効いた激しさで、第二主題も一楽章第二トリオの回帰的で哀愁も地味な印象ですね。展開部vc動機から第二主題もテンポ・鬱さ加減もほどほど、再現部は少し主題の切れ味があるかもしれません。全体ほどほどで控え目な第一部です。
第二部
スケルツォ主題は速めで軽く教科書的、レントラー主題は速く忙しないです。第三主題動機は弦はスローでオブリガート・ホルンやピチカートは速めと言う変則コントラストですが、インパクトがありません。メリハリが弱くモヤッとした感じです。揺さぶり強く進んで展開部に入りますが、印象は弱いです。再現部に入って各主題のディナーミクと切れ味がまして目が覚めますね。時すでに遅しですが。個性的なアゴーギク揺さぶりが生かされない第三楽章で残念です。
第三部
第四楽章主部はやや速めからスロー化させて来ますがフラット。中間部は少し揺さぶって甘美さを付けて来ますが、視線が定まらないアダージェットです。第五楽章両主題は速めで絡みますが薄味。コデッタも流れに乗った優美さですが地味。録音上の問題も足を引っ張っているかもしれませんね。展開部は速めで王道的に上げてなんとかメリハリを感じますね。再現部もその流れから山場を鳴らしてラストもしっかり盛り上げアッチェレランドを利かせたフィニッシュです。ですが、どこか見晴らしが良くないのが残念です。



速め基本ですが全編通して印象地味なマーラー5です。迫力も哀愁も優美さも、録音の問題もあってか全部ほどほどに聴こえます。

実は第三楽章はクセモノの揺さぶりなのですが、ディナーミクが弱くもっさり感が勝ってしまいます。録音も含めてスカッと抜けるモノが欲しいですね。





ズデニェク・マーツァル, Zdeněk Mácal (2録音)

チェコ人指揮者で、日本語ではマーカルとも。今や「のだめカンタービレ」の指揮者セバスチャーノ・ヴィエラ役の方が有名?!



(#1)
FOK Prague Symphony Orchestra
[vars] 2001-2/13

macal-pragueSO-mahler5.jpg
(希少盤ではないのですがチェコのCDだからかamazonでは見つかりません)

チェコ出身の指揮者マーツァルとチェコのプラハ交響楽団のマーラー5です。オケ名のFOKは当初は映画音楽中心の"Film-Opera-Koncert"だったからだそうです。

第一部
緩いアゴーギクを振った葬送行進曲は重厚よりも晴れやかさ。第一トリオは鳴りを強くしてテンポアップ、コントラストを明確にしていますね。心地良い流れです。第二トリオはやや速く哀愁強めですね。第二楽章第一主題もスッキリとした鳴りとテンポで第一楽章との繋がりを強調して、第二主題は一楽章第二トリオ回帰的です。展開部はvc動機を暗くスローに鎮め、行進曲まで表情変化が上手く作られます。再現部の主題群もメリハリがいいですね。上手い緩急で見晴らしの良い第一部になっています。
第二部
第三楽章スケルツォ主題は緩やか優美に、ただhrが弱いですね。レントラー主題はアゴーギクの揺さぶりが強めで、第三主題のオブリガート・ホルンは大丈夫でした。その後もアゴーギクで流れを作り、展開部は揺さぶりを強く鳴らします。再現部もそうですが、アゴーギクのギクシャク感が気になる第二部です。この楽章の優美さを削っている感じですね。
第三部
第四楽章主部は抑揚を抑え気味に適度な甘美さ、中間部はややディナーミクの揺さぶりを入れます。クセを感じるアダージェットですね。第五楽章第一・二主題は少し揺さぶりながら弾む様に、反復は華やかでコデッタは優美ですが速めです。展開部は力感が増して進みメリハリのフーガ、コデッタも切れ味です。再現部は華やかに鳴らしながら第一主題回帰もリズミカルに、山場からコーダは派手で見事です。フィニッシュはアッチェレランドをかけませんが、最終楽章は見晴らしがいいですね。



主流的流れに微妙な揺さぶりのマーラー5です。第一・第三部は程よいアゴーギクとディナーミクで上手くメリハリを付けています。

残念なのは第二部(第三楽章)で、ここに優美さがあれば興味深い作品になっていたかもしれません。






(#2)
Czech Philharmonic Orchestra
[Exton] 2003-10/9,10


プラハ響から2年後、ここでもチェコ・セット(指揮者/オケ)でチェコ・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー9です。首席指揮者(2003-2007)就任年の録音ですね。

第一部
葬送行進曲はやや速くなりましたが、僅かに感じるアゴーギクは同じですね。第一トリオも約束通りのテンポアップとメリハリの演奏で切れ味が増し、第二トリオは少し繊細な流れにしていますね、揺さぶりは感じますが。第二楽章第一主題はメリハリある音使いで切れ味、第二主題は流れを穏やかにする方向性で哀愁感ほどほどです。展開部vc動機は静を強調して落ち着いた流れを作り濃厚な第二主題へ、行進曲はリズムを強調します。再現部も主題ごとに色付けを明確にして、正攻法で切れ味ある第一部ですね。
第二部
第三楽章スケルツォ主題は堂々としたhrがリードして力強い流れです。レントラー主題は緩やかで優美、フィットした感じです。オブリガート・ホルンは朗々として第三主題の大きな広がりに貢献していますね。展開部は第二主題で一気に切れ味を増して進みますがテンポはキープです。再現部も適度な出し入れが効いて派手な流れです。妙なアゴーギクが消えて、音の迫る聴きごたえの第二部ですね。
第三部
第四楽章主部は音が厚めの暖色系、中間部の揺さぶりは無くなりましたが、好みではない空気密度濃厚なアダージェットです。第五楽章は鳴りを太く両主題を絡めて堂々と、反復を派手にコデッタは優美です。展開部は始めから太い流れで突き進み山場はガッツリ鳴らします。再現部山場からコーダは本領発揮のパワープレイ、アッチェレランドはここでもかけませんね。



濃いめで音圧迫るマーラー5です。基本プラハ響と同傾向ながら聴き応えがグッと増しました。第二部のギクシャク感の改善も大きく寄与していますね。

硬派で濃厚ガツッとした音作りを感じます。(録音も加担?w) その手が好きの方にはオススメ盤です!!












==参考音源/資料類==

マーラー交響曲第5番を聴く際のご参考です。

① アダージェット#1 (マーラーと親交のあったメンゲルベルクとワルター旧録音)
② アダージェット#2 (何かと出てくる映画「ベニスに死す」のアダージェット)
③ 書籍, スコア, ディスコグラフィー




【①アダージェット #1】

マーラーと親交のあった二人。11歳下のメンゲルベルク(1926年録音)と16歳下のワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレして当時を偲んでおきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg

アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5


メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的です。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15


メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik

最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995


スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)







【②アダージェット #2】

アダージェットと言えば映画「ベニスに死す」が取上げられる事が多々あるわけですから、インプレしておきましょう。

アダージェット, 映画「ベニスに死す」

フランコ・ マンニーノ(Franco Mannino)
Santa Cecilia Academy Orchestra
rec. 1971


(左:サントラ 右:DVD)

マンニーノはイタリア人指揮者、映画音楽を得意とする作曲家でもありましたね。

主要主題は繊細に入り、アゴーギクとディナーミクの抑揚を厚く付けてきます。中間部(トリオ)は透明感と繊細さですが、ここでも強い揺さぶりがあります。演奏時間は10'弱ですから、いまの時代のアダージェットの標準的テンポでしょう。濃淡の感情の強いアダージェットですね。これをもってクラシック畑の先生方は甘美でクラシックにふさわしくないとおっしゃっている訳ですね。まぁ、ここまで濃厚なアダージェットを交響曲第5番の中で聴くことは稀でしょう。
個人的にはあまり美しいアダージェットとは思えませんが、映画の中で聴くと静的に聴こえて主部の山場も生かされている感じがしますね。


「ベニスに死す」ではもう一曲マーラーが使われていますね。交響曲第3番 第四楽章「O MENSCH」で、ご存知の通り美しい歌曲パートです。(こちらは逆に硬派な演奏と歌唱です)

主役のイメージはマーラーというトーマス・マンの小説の映画化ですから、一度見ておくのも一興かと思います。(二人は親交があり、8番の初演にはマンも列席していました)






【③書籍・スコア・ディスコグラフィー】

書籍を一度は読んで、マーラーの時代や楽曲構成を知っておくと楽しめるのではないでしょうか。
スコアも持っていれば主題や楽器構成がわかりますので、ただ聴くよりも理解と楽しみは増えてきますね。
ディスコグラフィーは所有枚数が増えると必携品で、これがないと同一アルバムの再発等々 ダブりの確認が出来ません。

書籍

■ マーラー像
マーラーに関する書籍は数多く出ています。時代背景や環境、指揮者としての活躍、アルマとの関係等々、色々読んでみましたね。一度は読んで周囲の関係を知っておくとマーラーだけでなく、例えばR.シュトラウス他の作曲家やH.v.ビューローの様な初期の指揮者への興味も深まって面白いですね。
でも個人的には一回頭に入れれば十分かなと。古いですが有名評論家の先生の書籍をあげておきますね。


とは言え、各楽曲の内容・構成となると一冊では心許ないですね。本ブログではマーラーの人生や作曲の背景は受け売りになってしまうので触れていません。聴いた印象(インプレ)がアウトプットになります。

楽曲解説の理解しやすさは相性もあって、例えば第8番は柴田南雄さんがが良く、第7番は長木誠司さんが…と言った問題は出て来ます。




■ マーラー楽曲解説
と言う事で、それをメインにしてある 現代音楽も造詣の深い長木さんのこれを所有しています。ポイントは三つ、1.歌曲も網羅されて、2.譜例付き楽曲解説で、3.対訳付き、と言う事ですね。特に譜例の横には"第一主題"や"経過句"と言った区分を小節番号で、長木さんの考えで、振ってあるのは助かります。


(なぜか価格は不安定な感じです)

楽曲解説は流れの本流に添うだけでなく、アナリーゼ的な説明が挟まれてくるので始めは少々混乱するのも事実です。もう少しシンプルに と言う場合はまずWikipediaを読みながら聴くのがオススメかもしれません。また公設図書館には関係図書が多くありますので、一度読むのもありですね。アルマの回想など高価な書籍もあります。

他には面白おかしく読み物的に書いてあるこちらも一つの選択肢かも。



スコア (総譜)

スコアによって印刷レベルが大きく異なります。パート譜は必要ないでしょうから総譜になるわけで小型版ですと余計です。おまけに小節番号のあるなし等々、気に入ったのを見つけるしかありません。所有はこれですね。




小型版(新書より少し大きいくらい)ですが、文字・音符はそれなりに見えます。そして楽曲解説と一部マーラーの注意書きに日本語訳があります。とはいえスコア上の細かい注意書きは全てドイツ語、演奏記号はイタリア語ですから、わからないところは日本語を追記し、場所によって主題パートやパッセージの冒頭とかにも色付けしてあります。(マーラー交響曲スコアの日本語対訳は検索すると便利なものがいっぱいあります)
おかげでわかりやすくなり、第6番や第9番のスコアはそこまで書き汚さなくても大丈夫になりましたw

無料pdf譜をIMSLPからDLしてみるのが良いかもしれませんね。初めは面食らうかもしれませんが、見慣れてくると楽章の構成等がわかって楽しいですし、新たな楽しみになるかも。ただ、スコアには楽章構成、第一主題やトリオ等、の表記はありません。

 ① 楽曲を聴きながらスコア内容を読み解く楽しみ
  (込み入ったスコアの迷路を曲と共に解読するのも楽しいですね)
 ② 好みの演奏とスコアのギャップを眺める楽しみ
  (アダージェットはクールが好きですが、スコア指示は情感です)

指揮者になるわけでも演奏者になるわけでもないので、スコアにならってのインプレはしていません
(指揮者気分でスコアを眺めるのも楽しいですが、指揮法など考えると振れませんねw)

またスコアを見ると次の様な事も感じますね。
・BPM指示(♩=f)がないので、テンポ設定は指揮者好き放題です
・rit.と書いてriten.の場合もあって混乱気味
・チェロなどはヘ音記号とハ音記号(表示位置も)がめまぐるしく変ります
・トランペットはB管基本ですが、やたらとF管持ち替え指示があります
 (C管使ったり実際には持ち替えしないオケも?!…w)



マーラー・ディスコグラフィ / カプラン・ファウンデーション監修

Mahler Discography / Péter Fülöp / Kaplan Foudation


マーラー・ディスコグラフィーというよりも辞書ですね。重さは3kg弱もあります。マーラーの交響曲・他のディスクについての詳細が記されています。これが世界標準と言って良いと思います。

 1) 各音源(CD等)の 指揮者 / オケ、録音年月、レーベル
 2) 指揮者 / オケ / 演奏者別音源一覧
 3) レーベル別、音源一覧
 4) 全音源の楽章別演奏時間の一覧

1)には間違った演奏者表記も正解が載っているので助かります。大きくて重いのは装丁・紙質が素晴らしいからでしょう。当初は¥10k以上しましたから激安ですね。

2010年増補改訂第2版ですので、2020年には第3版が出るのではと勝手に想定しています。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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