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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 180CD聴き比べです [#1 : 1-15]


グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)の交響曲第五番、聴き比べです。

コンサートで取り上げられる事が多い事、CD発売枚数が多くいろいろな指揮者の特徴を楽しめる事で知らず知らず枚数が増えますね。(気がつけばCDもいつの間にか100枚どころか....)

100枚の道も1歩から、まずはバーンスタインの5CDを中心に15枚の*聴き比べからスタートです。【後日記】後半にマーラー5番の参考資料も載せました。

*インプレ(印象)ですね、レビュー(評価)ではありません。


Mahler Symphony No.5 -- 180 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:15CD 本投稿
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン, プレートル, 小澤征爾, ジンマン, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2], 参考音源/資料類
 #2:20CD
M.T.トーマス, テンシュテット[x6], ベルティーニ[x2 ㊟], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4 ☆], シノーポリ, 井上道義, ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ, スワロフスキー[㊟], レヴァイン, 外山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], デプリースト, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ, レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル[㊟], フェルツ, 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン
 #10:10CD
ゲルギエフ[x3 ☆], ラトル[★☆], ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, ヒルシェ, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト[☆], エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス[☆], スターン
 #12:20CD
佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ブリッグス(オルガン), ナタリア(アンサンブル)




レナード・バーンスタイン, Leonard Bernstein (5録音)

何と言ってもバーンスタインからですね。5録音のポイントは、
 ①CBS(現Sony)盤からDG盤への変貌
 ②DG盤とその直近(前後12日間)2録音の違い
ですね。



(#1)

New York Philharmonic
[Sony] 1963

今(2012年発売時)なら全集がSonyから驚きの新品¥1,999で出ますね

若き日のレニーとニューヨークフィルですね。DGのウィーンフィル盤と較べると…

第一部
情熱は感じますが切れ味が勝る葬送行進曲、第一トリオ・第二トリオともクセのない第一楽章。ラストのピチカートを間をおいて強く打つのはこの時から変わりませんね。第二楽章も変化球なしの切れ味のストレート。
第二部
第三楽章スローで美しいスケルツォとレントラー、その後も正統的で華やかさの第二部です。
第三部
アダージェットは情感とディナーミクが強く好みの方向ではありませんが、その方向性は一貫していましたね。第五楽章は軽快に登って二つの山場を盛り上げるシャープな王道で速めのコーダで走ります。ラストのアッチェレラドは抑え目、それもずっと変わりませんでした。



クセも欠点もない真っ向勝負、これはこれで既に完成形のマーラー5ですよね。切れ味はあってもDGの様な重さやクドさはありません

ブラインドで聴いたら+αが欲しいけどGood!って感じでしょうか。バーンスタインってわからないかも… (わかるとしたらアダージェットでしょうか)
初めてこの曲を聴くならとても良い一枚かもしれません。
(この演奏を聴くと、ワルター/N.Y.フィルの5番を思い出します)






(#2)
Wiener Philharmoniker
[DG-DVD] 1972-4,5


上記NYPの9年後、DG盤(1987年)と同じVPOでその15年前、ウィーンのムジークフェラインザールでのライブDVDです。(CD化されていません)

第一部
第一楽章は葬送行進曲、第一第二トリオともに本流的な良い流れでNYPOとの類似が強いです。第二楽章も同様でクセはなく、第一楽章第二トリオが回帰する第二主題はVPOらしさを感じますね。
第二部
第三楽章も美しく優美にスケルツォとレントラーを奏でますがNYPOほどのスローではありません。全体の優雅さは同じですが。(演奏直後bravoと言っている様ですね)
第三部
アダージェットも叙情性を豊かに。最終楽章は提示部前半は速めのテンポで、途中の山場をビシッと締めて、コーダからラストのアッチェレランドを奇麗にまとめます。フィニッシュと同時に大喝采です。



NYPO盤とよく似ています。過度の興奮を排除したまとまりの良さ、乱れもクセもないお手本の様な王道演奏です。後の激しい演奏スタイルに、この後どう変わって行ったのか興味深いですね。

レニーのマーラー5はどれを取っても☆を付けたくなります。






(#3)
Wiener Philharmoniker
[LCB-108] 1987-8/30 at Salzburger Fes.

ここから3CDは12日間の間の3つのライヴになり興味深いです。
これは非正規盤で下記DG盤の前の週、ザルツブルグ音楽祭のライヴです。(Kaplan Foundation 5.0365)

第一部
一楽章のスローで強烈な陰影・力感、第二楽章の爆裂的激しさはDG同様です。第二楽章の緩急豊を付けた出し入れが強い迫力はレニーならではですね。この楽章はDGより迫るものがあります。
第二部
第三楽章は入りで珍しくホルンがつまずいたり演奏の乱れも発生し、DGより締まりに欠ける流れです。ところが第三主題以降は強烈濃厚なアゴーギクが復活し爆裂さは正規盤を勝る気配です。
第三部
アダージェットはDGと同じ超濃密な流れですね。最終楽章も流れは同じで、提示部前半を軽快にスタートし展開部以降は爆裂主体です。フィニッシュ直後に大喝采!!
通して暴れ方はDGより強烈でLiveならでは、個人的にはとても魅力的です。VPOとは思えません。



DG盤と同じ流れですね。荒れ方はそれ以上かも。録音はMONOで音質劣悪、編集なしの生々しい演奏を聴いてみたいマニアには☆を、それ以外での購入理由はないでしょう。

非正規盤ですがCD-Rではなく、日本の代理店?が帯やライナーまで作って発行していましたね。他にも非正規盤はボストン響とかあるのですが、わざわざ探して購入はしていません。






(#4)
★☆
Wiener Philharmoniker
[DG] 1987-9/6-8 at Alte Oper Frankfurt


右は廉価版の全集(DG盤)になりますね。

好きかどうかは別にしてメインはこれかなという事で。フランクフルトのアルテオーパーでのライヴ。超有名盤で、素人が今更感想もないとは思いますがご容赦ください。

第一部
重厚スローの葬送行進曲、第一トリオは重く流れ良く、第二トリオで哀愁からド迫力の第一楽章。第二楽章はとんでもない重量級の激しさ、呪いでも感じる様な第一部で隙はありません。
第二部
第三楽章もどっしりとしたスケルツォから濃厚なレントラー、第三主題以降も軽快さなど微塵もありません。スロー側アゴーギク高密度スケルツォの第二部です。
第三部
アダージェットももちろん濃厚、甘美ではなく強烈ディナーミク緊迫美です。第五楽章提示部前半は落ち着いていますが、それ以降は重厚で展開部・再現部の山場は爆裂、コーダからフィニッシュは爆走です。とはいえ一番普通に近い第三部(最終楽章)かもしれません。



とにかくズシーンと重苦しい流れです。後期のバーンスタイン共通の意図を感じる濃厚タクト。重量級の演奏は他にもありますが、100枚を超えるCDでこれを超える物には出会えません。

VPOじゃなくて熱にうなされるBPO?!的な息苦しい程の重量感、これぞバーンスタインのマーラー5!!、他の演奏を吹っ飛ばします。

必携の一枚ですが、コンサートの前にこれを聴いて行くのはご法度ですねw






(#5)

Wiener Philharmoniker
[MEMORIES] 1987-9/10 at PROMS

MEMORIESを正規盤と呼んでいいのかは微妙ですが、ロンドンのロイヤルアルバートホールでBBC主催の恒例プロムスにおけるライブ。上記DG盤9月6-8日の二日後9月10日ライブと言う事になります。

第一部
スローな第一楽章の渦巻く様な迫力はDG盤よりもナチュラル方向へ。それはクセのあるホールの関係かもしれないですし、録音のせいかもしれません。第二楽章、スタートから緊迫の演奏を見せつつ すぐさま懐広い第二主題へ。この緩急が見事でその後も続きます。バーンスタインの素晴らしさはこの第二楽章が際立つ事かもしれませんね。ドロドロとしたDGより切れ味の迫力に感じます。
第二部
第三楽章も緊迫感と衝撃的な迫力ですが、その中に美しさを感じられる素晴らしさです。
第一部
第四楽章アダージェットの美しさはDGより厚みを増し、怒涛の波のごとし。そして第五楽章のパワー漲る充実の演奏は素晴らしく、観客は演奏が終わるなり大ブラボーです。



正規盤並の音質になり、DG盤よりも音の響きやVPOの充実 緊迫を素直に感じられるますね。特に第二・第三・第五楽章は素晴らしいです。オドロオドロしさから引き締まった筋肉の様な力強さ、一聴に値するマーラー5だと思います。

DG盤と比較した時に、素晴らしい演奏(録音バランス?)と見るか 個性が減ったと見るか はそれぞれかもしれません。(アダージェットは別ですがw)
これらのライヴからDG盤がミキシング・マスタリングで作り込まれているのが実感できますね。





ヘルベルト・フォン・カラヤン, Herbert von Karajan

Berliner Philharmoniker
[DG] 1973


9番や6番は非正規盤に隠れた名演・名盤が存在しますね。この5番にも同年同月のBPOとの非正規盤が存在しますが、未所有です。一度聴いてみたいですね。

第一部
重厚ファンファーレから落着いた憂の葬送行進曲、第一トリオは速く荒く、第二トリオは繊細陰鬱の第一楽章。第二楽章は速く荒れ気味の第一主題に鬱な第二主題で、そのコントラストが明確な第一部です。
第二部
第三楽章はスケルツォ、レントラーともに特筆なし。第三主題以降も特徴には欠ける第二部です。コーダの暴れ方は大迫力ですが。
第三部
アダージェットは暖色系で甘美、くどさ好みの別れるところでしょう。最終楽章の前半は特筆なしですが、山場はBPOらしさ全開の迫力、フィニッシュ前のコーダから暴れてアッチェレランドで駆け抜けます。



重厚さの中の荒れた迫力、繊細優美で処々締まりに欠ける、と焦点が定まらないカラヤンのマーラー5ですねェ。

個人的には際立つ迫力に重心を乗せて行って欲しかったです。





ジョルジュ・プレートル, Georges Prêtre

Wiener Symphoniker
[WEITBLICK] 1991


個人的には印象の薄い仏人指揮者ジョルジュ・プレートルが終身名誉指揮者だったウィーン交響楽団(VSO)を振ったLiveです。
【後日記:2017年1月4日亡くなりました】

第一部
ディナーミクを付けた葬送行進曲から第一トリオでは標準的に激しさを増す第一楽章。第二楽章第一主題は速めで荒れ、第二主題では第一楽章第二トリオに静的回帰し、その後も表情豊かです。明確なコントラスト設定の第一部ですね。
第二部
第三楽章スケルツォ主題、レントラー主題ともにほどほどですが、第三主題から展開部・再現部で纏まりの良さと美しさのバランスを見せる第二部です。
第三部
アダージェットは微妙なアゴーギクと明確なディナーミク、この楽章だけややクセを感じます。最終楽章は速め軽快に進み、山場・コーダを迫力いっぱいに決めます。



クセモノや個性派ではなく、Liveで遭遇なら盛り上がるマーラー5ですね。(音質は同第6番に比べると良いですが、それでも…)

クラシック関係の出版・評論家大先生 達が大はしゃぎしたCDという印象の方が強烈で引けますがw





小沢征爾, Seiji Ozawa

Boston Symphony Orchestra
[Phiiips] 1990



第一部
迫力のファンファーレから出し入れ強い葬送行進曲、第一トリオは適度な強さ、第二トリオは鬱美の第一楽章です。第二楽章第一主題は鋭い切れ味、第二主題は鬱美に回帰、その後も重厚さと美しさのコントラストが良い第一部です。
第二部
第三楽章スケルツォとレントラーは標準的に美しく、第三主題も流れは王道的で良いのですが録音の問題?か今ひとつスカッと抜けが欲しい様な響を感じる第二部です。
第三部
アダージェットは極度の甘美さは抑えられて悪くありません。第五楽章は抑え目に提示部を流して、やや間延び感を残しつつも展開部山場からコーダは重量感溢れる演奏です。



重厚さと美しさ、王道的なのですが何かもう一つ欲しい気がするマーラー5です。





デイヴィッド・ジンマン, David Zinman

Tonhalle Orchestra Zurich
[RCA] 2007


デイヴィッド・ジンマンが音楽監督を勤めたチューリヒ・トーンハレ管とのマラ5です。

第一部
第一楽章スローながらクールな陰鬱さの葬送行進曲、第一トリオもスマートな激しさ、第二トリオは優しさです。第二楽章も同様の流れ、特に第二主題の美しさは別格です。何ともジェントルな第一部。
第二部
第三楽章もその流れで、通して優美。一楽章をマーラーの意図をくんだ葬送行進曲としても、二楽章の"嵐のように"、スケルツォ"力強く"は当てはまらないかな。そう言った解釈ではないと言う事でしょう。
第三部
第四楽章は予想通り、冷たい空気を感じる細く澄んだアダージェット。これは好みですね。でも第五楽章は裏目に出て、提示部前半と展開部以降の山場前後パートのマイルドさ、スローなコーダはちょっと残念。



怒涛や興奮とは対極、優しさ美しさを感じるマーラー5。それを緩さと見るかどうかで好みの別れる処かもしれません。





ウィン・モリス, Wyn Morris


Symphonica of London**
[IMP] 1973


英国人指揮者ウィン・モリスと言うとデリック・クック*のマラ10第2稿と、バリー・クーパーのベートーヴェンの交響曲第10番の世界初録音で有名でしょうか。このオケ**(LSOではないと思いますが)は知らないので、情報をお持ちの方は教えていただけると嬉しいです。

第一部
葬送行進曲から重厚で揺さぶります。第一トリオは激しく、第二トリオも控え目ながら力感です。二楽章も同傾向でスロー性が増します。演奏は かなり荒っぽいですね。
第二部
第三楽章スケルツォとレントラーは荒さの中の優美さ!! 前半は抑えた展開で展開部からは揺さぶり暴れ始めます。
第三部
アダージェットは濃厚ですが、8'11"とかなり速め。ここをスローに振ったら重量級の甘美だったでしょう。第五楽章もスローな揺さぶりを噛ませ山場・コーダを見事に、ラストもスローながらスケール大きく鳴らしてくれます。



これはマーラー解釈に強かった(らしい)モリスの真骨頂?! クセのあるスローな揺さぶりと荒々しさのマーラー5ですね。

厳しい変化球ですが まだ魔球ではありません。魔球も嫌いじゃありませんが
w


*ライナーノートはそのDeryck Cookeが楽曲構成をベートーベンと比較したりしながら書いています!
**Kaplan FoundationでもSymphonica of Londonになっています。素っ頓狂な音を出すわけではないので酷いオケではなさそうです。




ヘルベルト・ブロムシュテット, Herbert Blomstedt

NHK Symphony Orchestra
[KKC King] 1985-12/5


スウェーデン人指揮者ブロムシュテットはマルケヴィッチやバーンスタインに師事していますね。これはN響の名誉指揮者になる1年前の録音です。

第一部
第一楽章は教科書の様な葬送行進曲と第2トリオですが、第二主題(第1トリオ)が抑え気味です。続く第二楽章の序章から第一主題は激しさを生かし、第二主題でうまく引きます。展開部から再現部もコントラストを生かして王道演奏ですね。
第二部
第三楽章は速めのスケルツォからレントラーで落ち着き、第2トリオ以降もコントラストがあり全体として速めですが安心感のある演奏です。聴きやすいですね。
第三部
第四楽章は一転スロー、甘美というわけでもなく重量感のアダージェット。モタれます。個人的にはもっと透明感の強い方が好みです。最終楽章は軽やかに主題が絡みながら上って中間部の山場まで流れよくつなぎ、コデッタからコーダは漲る迫力を見せて見事なフィニッシュです。



大きなクセやミスは無く、安心して聴けるマーラー5。気になるとすればアダージェットでしょうか。





グスターボ・ドゥダメル, Gustavo Dudamel

Simon Bolivar Youth Orchestra of Venezuela
[DG] 2006


グスターボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ。言わずと知れた、今や注目度の高いセットですね。

第一部
微妙なゆらぎの重厚な葬送行進曲から第一トリオは元気漲り飛ばし、第二トリオでは美しさを奏でる第一楽章。第二楽章第一主題は元気いっぱい、第二主題では美しさに、展開部・再現部も気持ちの良い演奏です。見晴らし良い第一部ですね。
第二部
第三楽章スケルツォは明るさ、レントラーはその流れから美しさ奏で、hrも思い切り鳴らし第三主題を軽快に進みます。長さを感じない、曇りのない明瞭さの第二部です。
第三部
アダージェットは暑い厚い演奏で、かつ少し落ち着きが足りませんね。第五楽章提示部前半は快速! そして展開部山場・再現部山場を華々しく盛り上げ、コーダからフィニッシュを一気に駆け抜けます。



全パート若さ漲る元気さを味わえるマーラー5です。全体を通して、死というよりも生命感あふれる演奏になってます。

それが欠点でもありますが個性、☆を付けたくなりますねぇ





クリストフ・フォン・ドホナーニ, Christoph von Dohnányi

Cleveland Orchstra
[Decca] 1988


クリストフ・フォン・ドホナーニが音楽監督を務めた時のクリーブランド管との演奏です。作曲家のエルンスト・フォン・ドホナーニは祖父で、その下フロリダ州立大で学んでますね。

第一部
冒頭ファンファーレのTpが少々弱いかなと言う感じくらいで第一楽章の流れは保守的、第二楽章も同じくそこそこの迫力にそこそこの情感。何か一味欲しい第一部です。
第二部
第三楽章スケルツォ主題をクセなく適度にこなしますが、レントラーや提示部第三主題以降でなぜか変な不思議な速さを見せるアゴーギク。落ち着かない第二部です。
第三部
アダージェットは抑え気味のディナーミクで保守的、本来なら静的で好きなパターンですが何か足りません。第五楽章前半はややフラットながら標準的に進んで、山場からコーダそしてフィニッシュのアッチェレランドもも標準的迫力です。クセはないけど何か足りない第三部。



欠点はないけど魅力にも欠ける "ほどほど" さ、但し第三楽章はクセモノの揺さぶり。原因不明のもっさり感のマーラー5です。





ズデニェク・マーツァル, Zdeněk Mácal (2録音)

チェコ人指揮者で、日本語ではマーカルとも。今や「のだめカンタービレ」の指揮者セバスチャーノ・ヴィエラ役の方が有名?!



(#1)
FOK Prague Symphony Orchestra
[vars] 2001-2/13

macal-pragueSO-mahler5.jpg
(希少盤ではないのですがチェコのCDだからかamazonでは見つかりません)

チェコ出身の指揮者マーツァルとチェコのプラハ交響楽団のマーラー5です。オケ名のFOKは当初は映画音楽中心の"Film-Opera-Koncert"だったからだそうです。

第一部
緩いアゴーギクを振った葬送行進曲は重厚よりも晴れやかさ。第一トリオは鳴りを強くしてテンポアップ、コントラストを明確にしていますね。心地良い流れです。第二トリオはやや速く哀愁強めですね。第二楽章第一主題もスッキリとした鳴りとテンポで第一楽章との繋がりを強調して、第二主題は一楽章第二トリオ回帰的です。展開部はvc動機を暗くスローに鎮め、行進曲まで表情変化が上手く作られます。再現部の主題群もメリハリがいいですね。上手い緩急で見晴らしの良い第一部になっています。
第二部
第三楽章スケルツォ主題は緩やか優美に、ただhrが弱いですね。レントラー主題はアゴーギクの揺さぶりが強めで、第三主題のオブリガート・ホルンは大丈夫でした。その後もアゴーギクで流れを作り、展開部は揺さぶりを強く鳴らします。再現部もそうですが、アゴーギクのギクシャク感が気になる第二部です。この楽章の優美さを削っている感じですね。
第三部
第四楽章主部は抑揚を抑え気味に適度な甘美さ、中間部はややディナーミクの揺さぶりを入れます。クセを感じるアダージェットですね。第五楽章第一・二主題は少し揺さぶりながら弾む様に、反復は華やかでコデッタは優美ですが速めです。展開部は力感が増して進みメリハリのフーガ、コデッタも切れ味です。再現部は華やかに鳴らしながら第一主題回帰もリズミカルに、山場からコーダは派手で見事です。フィニッシュはアッチェレランドをかけませんが、最終楽章は見晴らしがいいですね。



主流的流れに微妙な揺さぶりのマーラー5です。第一・第三部は程よいアゴーギクとディナーミクで上手くメリハリを付けています。

残念なのは第二部(第三楽章)で、ここに優美さがあれば興味深い作品になっていたかもしれません。






(#2)
Czech Philharmonic Orchestra
[Exton] 2003-10/9,10


プラハ響から2年後、ここでもチェコ・セット(指揮者/オケ)でチェコ・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー9です。首席指揮者(2003-2007)就任年の録音ですね。

第一部
葬送行進曲はやや速くなりましたが、僅かに感じるアゴーギクは同じですね。第一トリオも約束通りのテンポアップとメリハリの演奏で切れ味が増し、第二トリオは少し繊細な流れにしていますね、揺さぶりは感じますが。第二楽章第一主題はメリハリある音使いで切れ味、第二主題は流れを穏やかにする方向性で哀愁感ほどほどです。展開部vc動機は静を強調して落ち着いた流れを作り濃厚な第二主題へ、行進曲はリズムを強調します。再現部も主題ごとに色付けを明確にして、正攻法で切れ味ある第一部ですね。
第二部
第三楽章スケルツォ主題は堂々としたhrがリードして力強い流れです。レントラー主題は緩やかで優美、フィットした感じです。オブリガート・ホルンは朗々として第三主題の大きな広がりに貢献していますね。展開部は第二主題で一気に切れ味を増して進みますがテンポはキープです。再現部も適度な出し入れが効いて派手な流れです。妙なアゴーギクが消えて、音の迫る聴きごたえの第二部ですね。
第三部
第四楽章主部は音が厚めの暖色系、中間部の揺さぶりは無くなりましたが、好みではない空気密度濃厚なアダージェットです。第五楽章は鳴りを太く両主題を絡めて堂々と、反復を派手にコデッタは優美です。展開部は始めから太い流れで突き進み山場はガッツリ鳴らします。再現部山場からコーダは本領発揮のパワープレイ、アッチェレランドはここでもかけませんね。



濃いめで音圧迫るマーラー5です。基本プラハ響と同傾向ながら聴き応えがグッと増しました。第二部のギクシャク感の改善も大きく寄与していますね。

硬派で濃厚ガツッとした音作りを感じます。(録音も加担?w) その手が好きの方にはオススメ盤です!!












==参考音源/資料類==

マーラー交響曲第5番を聴く際のご参考です。

① アダージェット#1 (マーラーと親交のあったメンゲルベルクとワルター旧録音)
② アダージェット#2 (何かと出てくる映画「ベニスに死す」のアダージェット)
③ 書籍, スコア, ディスコグラフィー




【①アダージェット #1】

マーラーと親交のあった二人。11歳下のメンゲルベルク(1926年録音)と16歳下のワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレして当時を偲んでおきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg

アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5


メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的です。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15


メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik

最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995


スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)







【②アダージェット #2】

アダージェットと言えば映画「ベニスに死す」が取上げられる事が多々あるわけですから、インプレしておきましょう。

アダージェット, 映画「ベニスに死す」

フランコ・ マンニーノ(Franco Mannino)
Santa Cecilia Academy Orchestra
rec. 1971


(左:サントラ 右:DVD)

マンニーノはイタリア人指揮者、映画音楽を得意とする作曲家でもありましたね。

主要主題は繊細に入り、アゴーギクとディナーミクの抑揚を厚く付けてきます。中間部(トリオ)は透明感と繊細さですが、ここでも強い揺さぶりがあります。演奏時間は10'弱ですから、いまの時代のアダージェットの標準的テンポでしょう。濃淡の感情の強いアダージェットですね。これをもってクラシック畑の先生方は甘美でクラシックにふさわしくないとおっしゃっている訳ですね。まぁ、ここまで濃厚なアダージェットを交響曲第5番の中で聴くことは稀でしょう。
個人的にはあまり美しいアダージェットとは思えませんが、映画の中で聴くと静的に聴こえて主部の山場も生かされている感じがしますね。


「ベニスに死す」ではもう一曲マーラーが使われていますね。交響曲第3番 第四楽章「O MENSCH」で、ご存知の通り美しい歌曲パートです。(こちらは逆に硬派な演奏と歌唱です)

主役のイメージはマーラーというトーマス・マンの小説の映画化ですから、一度見ておくのも一興かと思います。(二人は親交があり、8番の初演にはマンも列席していました)






【③書籍・スコア・ディスコグラフィー】

書籍を一度は読んで、マーラーの時代や楽曲構成を知っておくと楽しめるのではないでしょうか。
スコアも持っていれば主題や楽器構成がわかりますので、ただ聴くよりも理解と楽しみは増えてきますね。
ディスコグラフィーは所有枚数が増えると必携品で、これがないと同一アルバムの再発等々 ダブりの確認が出来ません。

書籍

■ マーラー像
マーラーに関する書籍は数多く出ています。時代背景や環境、指揮者としての活躍、アルマとの関係等々、色々読んでみましたね。一度は読んで周囲の関係を知っておくとマーラーだけでなく、例えばR.シュトラウス他の作曲家やH.v.ビューローの様な初期の指揮者への興味も深まって面白いですね。
でも個人的には一回頭に入れれば十分かなと。古いですが有名評論家の先生の書籍をあげておきますね。


とは言え、各楽曲の内容・構成となると一冊では心許ないですね。本ブログではマーラーの人生や作曲の背景は受け売りになってしまうので触れていません。聴いた印象(インプレ)がアウトプットになります。

楽曲解説の理解しやすさは相性もあって、例えば第8番は柴田南雄さんがが良く、第7番は長木誠司さんが…と言った問題は出て来ます。




■ マーラー楽曲解説
と言う事で、それをメインにしてある 現代音楽も造詣の深い長木さんのこれを所有しています。ポイントは三つ、1.歌曲も網羅されて、2.譜例付き楽曲解説で、3.対訳付き、と言う事ですね。特に譜例の横には"第一主題"や"経過句"と言った区分を小節番号で、長木さんの考えで、振ってあるのは助かります。


(なぜか価格は不安定な感じです)

楽曲解説は流れの本流に添うだけでなく、アナリーゼ的な説明が挟まれてくるので始めは少々混乱するのも事実です。もう少しシンプルに と言う場合はまずWikipediaを読みながら聴くのがオススメかもしれません。また公設図書館には関係図書が多くありますので、一度読むのもありですね。アルマの回想など高価な書籍もあります。

他には面白おかしく読み物的に書いてあるこちらも一つの選択肢かも。



スコア (総譜)

スコアによって印刷レベルが大きく異なります。パート譜は必要ないでしょうから総譜になるわけで小型版ですと余計です。おまけに小節番号のあるなし等々、気に入ったのを見つけるしかありません。所有はこれですね。




小型版(新書より少し大きいくらい)ですが、文字・音符はそれなりに見えます。そして楽曲解説と一部マーラーの注意書きに日本語訳があります。とはいえスコア上の細かい注意書きは全てドイツ語、演奏記号はイタリア語ですから、わからないところは日本語を追記し、場所によって主題パートやパッセージの冒頭とかにも色付けしてあります。(マーラー交響曲スコアの日本語対訳は検索すると便利なものがいっぱいあります)
おかげでわかりやすくなり、第6番や第9番のスコアはそこまで書き汚さなくても大丈夫になりましたw

無料pdf譜をIMSLPからDLしてみるのが良いかもしれませんね。初めは面食らうかもしれませんが、見慣れてくると楽章の構成等がわかって楽しいですし、新たな楽しみになるかも。ただ、スコアには楽章構成、第一主題やトリオ等、の表記はありません。

 ① 楽曲を聴きながらスコア内容を読み解く楽しみ
  (込み入ったスコアの迷路を曲と共に解読するのも楽しいですね)
 ② 好みの演奏とスコアのギャップを眺める楽しみ
  (アダージェットはクールが好きですが、スコア指示は情感です)

指揮者になるわけでも演奏者になるわけでもないので、スコアにならってのインプレはしていません
(指揮者気分でスコアを眺めるのも楽しいですが、指揮法など考えると振れませんねw)

またスコアを見ると次の様な事も感じますね。
・BPM指示(♩=f)がないので、テンポ設定は指揮者好き放題です
・rit.と書いてriten.の場合もあって混乱気味
・チェロなどはヘ音記号とハ音記号(表示位置も)がめまぐるしく変ります
・トランペットはB管基本ですが、やたらとF管持ち替え指示があります
 (C管使ったり実際には持ち替えしないオケも?!…w)



マーラー・ディスコグラフィ / カプラン・ファウンデーション監修

Mahler Discography / Péter Fülöp / Kaplan Foudation


マーラー・ディスコグラフィーというよりも辞書ですね。重さは3kg弱もあります。マーラーの交響曲・他のディスクについての詳細が記されています。これが世界標準と言って良いと思います。

 1) 各音源(CD等)の 指揮者 / オケ、録音年月、レーベル
 2) 指揮者 / オケ / 演奏者別音源一覧
 3) レーベル別、音源一覧
 4) 全音源の楽章別演奏時間の一覧

1)には間違った演奏者表記も正解が載っているので助かります。大きくて重いのは装丁・紙質が素晴らしいからでしょう。当初は¥10k以上しましたから激安ですね。

2010年増補改訂第2版ですので、2020年には第3版が出るのではと勝手に想定しています。






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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