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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 195CD聴き比べです [#1 : 1-15]


グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)交響曲第五番*聴き比べです。 *インプレ(印象)ですね、レビュー(評価)ではありません。

気がつけば100CDを超えていた第五番、通して聴いてそのバリエーションを確認しておこうかと思います。まずはやっぱりバーンスタインの5録音を手始めに、そして若手や個性派等の15録音の聴き比べからスタートです。

【後日記】後半にマーラー5番の参考資料も載せました。


Mahler Symphony No.5 -- 195 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:15CD 本投稿
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン[x3 ☆], プレートル, 小澤征爾, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル[x2], ドホナーニ, 参考音源/資料類
 #2:20CD
M.T.トーマス, テンシュテット[x6], ベルティーニ[x2 ㊟], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4 ☆], シノーポリ, 井上道義, ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], スワロフスキー[㊟], レヴァイン, 外山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, マーツァル[x2], シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ[㊟], レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル, フェルツ[㊟], 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2 ㊟], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2 ㊟], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン, ヒルシェ
 #10:10CD
ゲルギエフ[x4 ☆], ラトル, ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, 山田 一雄
 #11:20CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト, エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス, スターン, デプリースト, ワルター[☆], ミトロプーロス[㊟], ケンペ, ロスバウト, パレー[㊟], ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ルドルフ・シュワルツ
 #12:20CD
佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ジンマン, ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ズィロウ・チャン, フックス, フロマン, ブリッグス(オルガン), トレンクナー&シュパイデル(ピアノDuo), ミヒャエル・ナナサコフ(ピアノDuo), ナタリア(アンサンブル), ホルスト=シンフォニエッタ(アンサンブル)
 #13:5CD
バッティストーニ, パヤーレ, ネゼ=セガン[☆], バーナード, ビシュコフ[☆], カーチュン・ウォン, クルンプ, バリエンテ




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レナード・バーンスタイン, Leonard Bernstein (5録音)

何と言ってもレニーからですね。所有5CD(含むDVD)とそのポイントは以下になります。

【録音年月. オケ. 音源】
 ① 1963-1/7   NYP ■Sony
 ② 1972-4,5    VPO DVD
 ③ 1987-8/30   VPO 非正規盤
 ④ 1987-9/6to8  VPO ■DG
 ⑤ 1987-9/10   VPO 非正規盤

【ポイント】
 1) CBS[現Sony]盤①とDG盤④, 2枚の正規録音24年の大変貌
  (その中間期②の映像付き録音の異なる立ち位置)
 2) DG盤を含む12日間,3録音③④⑤[同じVPOとのLIVE]の類似と違い




(#1)
New York Philharmonic
[Sony] 1963-1/7

今(2012年.発売時)なら右の全集がSonyから驚きの新品¥1,999で出てますね

45歳のレニーとニューヨーク・フィルですね。音楽監督(1958-1969)就任後5年での録音です。


【第一部】
哀愁や鬱よりも切れ味を感じる葬送行進曲、第一トリオの力感、第二トリオの哀愁、いずれシャキッと姿勢の良い第一楽章。ラストのピチカートを間をおいて強く打つのはこの時から変わりませんね。
第二楽章も第一主題はシャープ、第二主題は流れの良い哀愁で、展開部・再現部も変化球なしの切れ味主体のストレート。メリハリある音出しで折目正しい第一部です。

【第二部】
スローかっちりしたスケルツォとレントラー、やや優美さに欠けるのはDGに似ている?! 第三主題はSTD的で、その後も真面目な流れで優美さよりもカクカクっとしたレントラー楽章です。

【第三部】
第四楽章は暖色系で情感が強く好みの方向ではありませんが、その方向性は最後まで一貫したアダージェットでした。
第五楽章の第一主題入りはDGの極端なスローはありません。速めの流れで提示部を出して、展開部から再現部も速めの流れで飛ばします。コーダも速いですが、ラストのアッチェレラドは抑え目です。


処々速いパートがあってキッチリとしたマーラー5です。真面目な印象が強く+αが欲しいと言う気がしますね。

DG盤のスローな重さやクドさとは対極にありますね。(アダージェットは濃厚ですが)
(この演奏を聴くと、ワルター/NYPの5番を思い出します)






(#2)
Wiener Philharmoniker
[UNITEL] 1972-4,5 DVD


上記NYPの9年後, DG盤(1987年)の15年前で同じVPO、ウィーンのムジークフェラインザールでのDVDです。(CD化されていません)


【第一部】
葬送行進曲、第一第二トリオともにテンポ設定含めて本流的な流れ。Sony盤より安心感ある心地よさです。
第二楽章第一楽章は速め、第二主題は哀愁感にVPOらしさを感じますね。展開部・再現部で第一主題での速さはありますが、王道で完成度が高い第一部です。

【第二部】
スケルツォとレントラー、そして第三主題をは美しく優美で Sony盤・DG盤との違いが明確です。展開部・再現部も王道的な安心感で、まさに優美なレントラー楽章です。(演奏直後bravoと言っている様ですね)

【第三部】
アダージェットはここでも最後までスタンスを一貫した暖色系の濃厚さです。
最終楽章第一主題入りの極端なスローはありません。流れは速め主体突き進みSony盤に似ていますが、それが気になる事はありませんね。コーダからラストのアッチェレランドを奇麗にまとめて、フィニッシュと同時に大喝采です。


お手本の様な王道のマーラー5です。Sony盤の様なキッチリ感や、DG盤の重々しさはありません。

この後もVPOとの演奏が並びますが、15年後のDG盤での変貌が驚きですね。





ここから3CDは かのDG盤を含む12日間で3つの異なる音楽祭でのライヴ(VPO)です。始めにDG盤を、その後に前後の2録音をDG盤と比べてインプレします。




(#3)
★☆
Wiener Philharmoniker
[DG] 1987-9/6-8 at Alte Oper Frankfurt


右は廉価版の全集(DG盤)になりますね。

やはりメインはこれかなという事で。フランクフルトのアルテオーパーでのライヴ。超有名盤で、素人が今更感想もないとは思いますがご容赦ください。


【第一部】
重厚スローに鎮む葬送行進曲、第一トリオは重くテンポ良く、第二トリオで哀愁からのピークはド迫力の第一楽章。
第二楽章第一主題は重量級の激しさ、第二主題の哀愁で肩の力を抜きます。展開部も序奏のテンポを上げ、vc動機で一気にスロー静の鬱に落とし込む強烈なコントラスト。再現部では第一主題を速く、コラール金管は派手派手に鳴らします。スローのアゴーギクを使った濃厚な第一部で隙はありません

【第二部】
どっしりスロー重厚のスケルツォから濃厚な弦楽のレントラー、第三主題も鬱に鎮み軽快さなど微塵もありません。短い展開部をスローキープ低重心で進み再現部へ。三つの主題は派手さを増して陰影濃く、コーダは炸裂です。19'を超えるスロー側アゴーギクで高密度の類を見ないスケルツォ楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は暖色系で美しく、ピークも濃厚ですがディナーミク抑え気味。中間部も抑えつつも色合いは濃く、ポタージュの様な味わいのアダージェットです。
第五楽章提示部の第一主題はスローでずっしり重厚、絡む第二主題はテンポを上げますが重心は低くと軽妙感などありません。スローアゴーギクで重々しく入る展開部、テンポ変化を入れて色濃く。再現部の山場は揺さぶりながらの爆裂で、コーダからフィニッシュは爆走です。色濃い流れから最後弾け飛ぶ最終楽章です。


スロー濃厚でズシーンと重苦しいマーラー5です。後期バーンスタイン共通の意図を感じる重厚タクト。重量級の演奏は他にもありますが、100枚を超えるCDでこれを超える物には出会えません。

VPOじゃなくてレニーに憑依されたBPO?!的な緊迫感、これぞバーンスタインのマーラー5!、他の演奏を一蹴します。

これがベストかと言われれば???でもありますが、いずれ鉄板必聴の一枚に違いありませんね。






(#4)
Wiener Philharmoniker
[LCB-108] 1987-8/30 at Salzburger Fes.

これは上記DG盤の一週間前のザルツブルク音楽祭での非正規LIVE盤、オケは同じVPOです。(Kaplan Foundation 5.0365)


【第一部】
第一楽章のスローで強烈な陰影・力感はDGと同じですが葬送にアゴーギクを感じます。
第二楽章も爆裂的激しさとコントラストの強さと言った流れはDG同様で、第二楽章の緩急豊で出し入れ強い迫力はレニーならではですね。この第二楽章はDGより迫るものがあります

【第二部】
入りで珍しくホルンがつまずいたり演奏の乱れも発生し、DGより締まりに欠けます。正規盤でもhrは少し自信なさげではありますが。ところが第三主題以降は強烈濃厚なアゴーギクが復活、爆裂さは正規盤を勝る気配です。最後がややフェードアウト気味に録音が絞られていて残念。

【第三部】
アダージェットはDGと同じ暖色系濃密な流れですね。
最終楽章も流れは同じで、提示部第一主題を独特のスローでスタートし展開部以降は濃厚です。フィニッシュ直後に大喝采!!
通して暴れ方はDGより強烈で、生き生きとしたLiveらしさが伝わり個人的にはとても魅力的です。


DG盤と同じ流れですがやや荒っぽっく迫力は上回るかも。ディナーミクにマスタリングのコントロールが無い分リアルなのかもしれませんね。

非正規録音でMONOですから、編集なしの生々しい演奏を聴いてみたいマニア向けですね。個人的にはですが。

非正規盤ですがCD-Rではなく、日本の代理店?が帯やライナーまで作って発行していましたね。他にも非正規盤はボストン響とかあるのですが、わざわざ探して購入はしていません。






(#5)

Wiener Philharmoniker
[MEMORIES] 1987-9/10 at PROMS

MEMORIESを正規盤と呼んでいいのかは微妙ですが、DG盤の二日後のBBCプロムス, ロンドン・ロイヤルアルバートホールでのVPOとのライブ録音と言う事になります。


【第一部】
スローな第一楽章の渦巻く様な迫力はDGよりもナチュラルでシャープな方向へ。
第二楽章、スタートからDGの重厚さよりも緊迫の演奏を見せつつ すぐさま懐広い第二主題へ。この緩急が見事でその後も続きます。バーンスタインの素晴らしさはこの第二楽章が際立つ事かもしれませんね。ドロドロとしたDGより切れ味の迫力に感じます。

【第二部】
スケルツォとレントラーに優美さが出て、VPOらしさが感じられる様に。DGの濃厚重圧の流れから軽妙なスケルツォ楽章らしさに変わりましたね。

【第三部】
第四楽章アダージェットの美しさはDGと変わらない暖色系濃厚のままですね。マスタリングのボリュームが大きい感じですが。
第五楽章でクセの強かった第一主題のスローは弱めていますが残して、その後の重厚低重心は避けて軽快な提示部になりました。展開部も力感はありますがスローを回避、コデッタは軽妙感さえ感じます。演奏終了と共に大ブラボー大喝采!!、DGよりも王道的になりましたね。


DG盤の重厚オドロオドロしさから王道的 高完成度のマーラー5になりました。録音レベルも素晴らしく、(#4)の様な荒っぽさもなく、VPOらしい美しい音の響きが随所に感じられます。ふと1972年のDVD(#2)を思い浮かべました。

DG盤と比べて"個性が減った" と見るか "研ぎ澄まされた" と見るかは人それぞれでしょう。個人的には両方w、素晴らしいマーラー5だと思います。

一ニ三楽章はやや短くなり、五楽章提示部は明確に軽快に、ミキシング・マスタリングでここまでの差は作れないと感じます。レニーが何を思って二日間で変えたのかとても不思議ですね。


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ヘルベルト・フォン・カラヤン, Herbert von Karajan (3録音)

カラヤンのリリースはDGのセッション一枚だけですね。他に非正規盤がDG盤と同年のLIVE、その5年後のLIVEが存在します。6番9番には非正規録音の名演が知られていて、やっぱりカラヤン非正規LIVEは侮れません



(#1)
Berliner Philharmoniker
[DG] 1973-2/13-16


マーラーのカラヤンと言うと今ひとつ評価が付かないと言うのが一般的でしょうか。一度先入観を排除して聴き直してみるとまた違う印象かもしれません。


【第一部】
重厚ファンファーレから落着いた憂いの葬送行進曲、第一トリオは一気に速く激しくと強烈です。第二トリオは優しさの哀愁から色合いを濃く上げてコーダへ。
第二楽章第一主題と第二主題は一楽章のトリオ回帰的で繋がりを意識していますね。展開部は'激→静→明'の流れをハッキリと、再現部も二つの主題の個性をより引き立てて、そのコントラスト付けが明確な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は平均的な印象ですが途中から鋭く、レントラー主題はスロー・マイルドでフンワリとした感じ。第三主題はスローに大きくhrが主題を鳴らし、各楽器にバトンタッチもスロー主体、短い展開部をコデッタ風にビシッと決めています。再現部もディナーミクを強くコントラストを付けて、コーダの暴れ方も爆速大迫力ですが、全体的には激しく速いパートが浮いた様な第三楽章に感じます。

【第三部】
第四楽章主部はやや速めの暖色系で中間部は繊細、ただ全体的にディナーミクが強く、大音響が不自然なアダージェットです。
最終楽章二つの主題は淡白な印象で進み、コデッタ主題もスルッと流れます。展開部も少し力を込めるものの印象は弱く、再現部の三主題もごく一般的です。ただ、山場はBPOらしさ全開の迫力でコーダから暴れて強烈なアッチェレランドで駆け抜けます。凄いです!!


コントラストの強いマーラー5です。ハッキリとしたディナーミク主体での色付けで、特に速くて激しいパートの印象が強いですね。

ただ、その他のパートの統一感が弱く、全体としては焦点が定まらない感じがしてしまいます。せっかくの迫力パワープレイが残念です。




【後日追記】


(#2)

Berliner Philharmoniker
[FKM] 1973-8/28


カラヤンBPO[DG盤]の6ヶ月後、ザルツブルクでの非正規LIVE盤です。実はこの音源が興味深いのですが…


【第一部】
荒っぽいファンファーレから葬送行進曲は憂いの中にディナーミクを付け、パッセージのファンファーレは強烈に。第一トリオは一気に速く激しくと猛烈に突き進みます。第二トリオは優しさの憂いから上げてコーダへ。
第二楽章第一主題・第二主題ともに一楽章のトリオ回帰、展開部から再現部も見事にDG盤をLIVEで再現した第一部です。ただ、tpが素っ頓狂な音を出すのが違いですw

【第二部】
スケルツォ主題は気持ちが入った優美さになって途中からの力感もより強くなりました。レントラー主題も抜けの良い優雅です。第一主題回帰からも締まりが上がって、長い第三主題から、その流れのフィニッシュ的な展開部の激しさもスッキリ聴ける様になりました。再現部も各主題に元気さがあって猛烈なコーダの炸裂へ繋げます。全体に感情のこもった演奏となって見晴らしが大きく改善されましたね。

【第三部】
第四楽章のディナーミクの強さは変わりませんが、前楽章の改善でその強音個性が生きる様になりました。
第五楽章提示部の三つの主題も感情がこもった良い流れになりましたね。展開部は冒頭から気持ちの入った一体感ある流れで、再現部三つの主題のスロー静から山場・コーダは極端な爆速を回避した大迫力!! もちろん盛大なアプローズです。

DG盤をLIVEの+αで仕上げたマーラー5です。弱さを感じた一般パートにLIVEで気持ちが入り、強烈な爆速が抑えられてバランスも良くなりました。

特に第三・第五楽章の見晴らしが大きく改善されて、聴き応えある見事な演奏になっています。放送音源ですからリマスタリングの可能性もゼロではないでしょうね。
(2021 Feb. 伊"Urania Records"よりリリースされる様です。リマスタリングは無いと思いますが)




【後日追記】


(#3)
Berliner Philharmoniker
[FKM] 1978-5/15


5年後のザルツブルクでの非正規LIVE盤です。Kaplan Foundationには記載がありませんが、カラヤンの演奏記録には実績がありますね。(演奏スタンスからも間違いないでしょう)


【第一部】
パワーのファンファーレから憂いと揺らぎの葬送行進曲、パッセージのファンファーレは爆裂です。第一トリオでも激しく速く、第二トリオはここでも優しい哀愁からピークはいっそうの爆裂です。ラストの低弦ピチカートが凄く強いのは変わりませんね。
第二楽章第一主題は激しさがいっそう増して、第二主題は緩やかな哀愁です。展開部から再現部も基本は変わりませんが、最後の第二主題の炸裂は聴いた事が無いレベルです。激しさのコントラストが強まった第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題は大きく鳴らして後半は怒涛の気配です。録音の問題が大きい?! レントラー主題は優美で、第三主題の流れから続く展開部は5年前と同方向ですね。再現部でもピークは強烈に鳴らして、コーダはとんでもない豪快爆烈です。

【第三部】
第四楽章は今までと同じで強音を大きく鳴らしていますね。マーラーが愛を語るなら最後は激情と言う事でしょうか。
第五楽章二つの主題は切れ味と締まり良く進んで、コデッタ主題も締まりある優美さです。展開部も力感溢れる流れで山場は炸裂、5年前のザルツブルクLIVEと同じ良さですね。再現部も静かに落ち着かせて、力を込めながら山場はスローに溜めて大爆発!! コーダはアッチェレランドを抑え気味に盛り上げます。

ザルツブルクで大喝采と怒涛の足踏み音ですから、凄い演奏だったのかも!!!

強烈な激しさ軸足のマーラー5です…多分w。録音が良く無いので正確な事が分からないのが残念です。

もしかしたら、とんでもない名演だったのかもしれません。


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ジョルジュ・プレートル, Georges Prêtre

Wiener Symphoniker
[WEITBLICK] 1991-5/19


個人的には印象の薄い仏人指揮者ジョルジュ・プレートルが終身名誉指揮者だったウィーン交響楽団(VSO)を振ったLiveです。第一客演指揮者時代(1986-1991)の録音ですね。
【後日記:2017年1月4日亡くなられました】


【第一部】
スローで緩いアゴーギクの勿体ぶった葬送行進曲、第一トリオはやや速めで切れ味良く、第二トリオは繊細な哀愁感を漂わせてピークを真面目に作ります。
第二楽章第一主題は速く激しさは程々、第二主題は第二トリオ回帰的ですね。展開部の'激→静→明'の流れは教科書的で気を衒った流れはありません。再現部の第二主題に続くコラールもコントロールが効いています。折り目正しい真面目な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は標準的な印象、レントラー主題はシンプルです。第三主題はオブリガート・ホルンが朗々と鳴らして、スローからテンポアップして各楽器の変奏につなげて、短い展開部で締める様にテンションを上げます。再現部の主題群も刺激付けはスコアを超えるものはない感じですね。コーダも速めに走ってしっかりと纏めています。

【第三部】
第四楽章の主部は暖かく包み込む様なアゴーギク、中間部も揺さぶりをかけて、ピークでは音厚を高めます。大勢に影響ありませんが、このアダージェットだけはクセがあります
最終楽章二つの主題は快速軽快、コデッタ主題もその流れです。展開部は緩やかに入ってすぐに力感あるフーガからアゴーギクを使って進み山場は華やか。再現部の山場は大きく鳴らして、コーダはアッチェレランドをビシッと効かせて駆け抜けます。


バランスが良く聴きやすいマーラー5です。程よい緩急・出し入れで安心感はありますがワクワク感には欠けますね。

クラシック関係の出版・評論家大先生 達が大はしゃぎしたCDという印象の方が強烈で引けますがw


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小澤征爾, Seiji Ozawa

Boston Symphony Orchestra
[Philips] 1990-10/13-16


小澤さんが長年音楽監督(1973-2002)を務めたボストン交響楽団とのマーラー5ですね。非正規盤でもBSOとの録音がある様です。


【第一部】
葬送行進曲は鎮まりパッセージのファンファーレもコントロールが効いて落ち着いた流れです。第一トリオも激しさとテンポを抑え気味にバランス重視、第二トリオは細く繊細さを生かして入って徐々に力強くコーダへ。
第二楽章第一主題と第二主題はそれぞれトリオ回帰感が強く、一楽章の流れを軸にしています。展開部はvc動機は美しさを、行進曲は軽妙さを感じますね。再現部も第一主題を激しさ程々に、第二主題を丁寧に、と 終始落ち着いてコントロールされた第一部です。

【第二部】
レントラー主題はやや速めに優美で心地よく、レントラー主題も程よい優美さですが、教科書的な印象かもしれません。第三主題のオブリガート・ホルンは少しスローで抑えた音色、主題の楽器入れ替わりもスローです。展開部はそれを締める様にテンポアップして刺激を付けていますね。再現部の三つの主題も多少色合いは濃くするものの、コーダの力感もほどほど。ずいぶん抑えた流れだなぁ、という感じの第三楽章です。マスタリングで強音カット?!

【第三部】
アダージェット主部は静で淡々としていますが僅かにスローのアゴーギクがありますね。ピークは抑え気味で中間部は淡々とした流れから気持ちを入れて来ます。
最終楽章二つの主題は心地良い流れで絡み、コデッタ主題はあっさりとしています。展開部も淡々と入って表情薄くあげて進み山場を作りますが、鳴らしてはいるものの感情移入が弱いです。再現部山場からコーダも標準品の様に盛り上げて?フィニッシュのアッチェレランドもほどほどに。


全てコントロールされて表情が薄いマーラー5です。感情起伏が感じられず、ディナーミクとアゴーギクを抑え過ぎ?!の印象です。

録音の問題もあるのでしょうか。流れは主流的にキッチリ押えているので、小澤さんらしい出し入れとメリハリを聴きたいですよね。アプローズがありますが、これがLIVEとは信じられません


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ウィン・モリス, Wyn Morris


Symphonica of London
[IMP] 1973-11


英国人指揮者ウィン・モリスと言うとデリック・クック*のマーラー10番第2稿と、バリー・クーパーのベートーヴェンの交響曲第10番の世界初録音で有名でしょうか。
オケについてはライナーノートにSuperbなどと褒めてありますが詳細不明。モリスのマーラー9のライナーノートによれば、レコーディングとプロモーションを目的にロンドンのミュージシャンで構成されたオケだそうですが。


【第一部】
ファンファーレから主要主題は揺さぶりが大きく、スロー重厚。第一トリオは激しさを強くしてコントラストが明確です。第二トリオは少しテンポアップで哀愁を奏で、そのまま色を濃くしてコーダへ入りますね。
第二楽章第一主題は激しさ&スロー、第二主題で肩の力を抜く様に穏やかさを見せます。展開部序奏は荒々しく、vc動機は鎮めてコントラスト付け、第二主題は濃厚なスロー哀愁、行進曲もスローと個性的です。再現部もスロー強調!! スロー そして揺さぶりと荒っぽさの個性的第一部になっています。

【第二部】
スケルツォ主題はほど良いテンポで優美ですが力感があります。レントラー主題もそのテンポに乗っていますね。第三主題ではオブリガート・ホルンが大きく鳴らして、弦に主題を渡して各楽器の変奏へと入りますがなぜか平凡退屈w。展開部に入ると激しく派手に、再現部は主題の流れはそのままに荒っぽさと揺さぶりが出て来ます。軸足はスロー、やや退屈な第三楽章です。コーダのスローからパワーは凄く変わってます。

【第三部】
第四楽章主部は速く淡白な甘美、中間部は感情的、全体8'11"と速く風変わりアダージェット。
第五楽章第一・二主題は揺さぶりを入れてスロー重厚さ、コデッタ主題は優美です。展開部は荒っぽさを加えながらスローに進み最後は炸裂。再現部の主題群は控えめで、山場は派手派手しく、コーダはスローに構えて大きく鳴らします。スローのアッチェレランドが奇妙ですヨ。個性を振り撒く第三部ですね。


クセのあるスローな揺さぶりと荒々しさのマーラー5ですね。これはマーラー解釈に強かった(らしい)モリスの真骨頂でしょうか?!

シェルヘン・マデルナ・ロジェヴェンと変則四天王の一角ですね。厳しい変化球ですが まだ魔球ではありません。魔球も好きですがw


*ライナーノートはそのDeryck Cookeが楽曲構成をベートーベンと比較したりしながら書いています!

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ヘルベルト・ブロムシュテット, Herbert Blomstedt

NHK Symphony Orchestra
[KKC King] 1985-12/5


スウェーデン人指揮者ブロムシュテットはマルケヴィッチやバーンスタインに師事していますね。これはN響の名誉指揮者になる1年前の録音です。


【第一部】
ファンファーレから葬送行進曲は教科書的で淡々と、第一トリオではテンポアップと激しさを抑えて来ます。tpがコケますが。第二トリオは少し速めのテンポで哀愁は軽めから上げてファンファーレ回帰です。
第二楽章第一主題はここでもテンポ・激しさは教科書的、第二主題も特徴薄めですね。展開部もvc動機を抑えて行進曲へ激しさを持ち上げる典型、再現部も三つの主題を程良く力感をプラスしています。クセのない平和な第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題は少し速めに優美さは抑え気味、レントラー主題は適度スローの優美さです。第三主題はオブリガート・ホルンと弦楽が広がりを聴かせ、主題を楽器を変えながら変奏しますが穏やかです。第二主題回帰からの展開部はテンポアップと刺激を付けて締めますね。再現部は各主題変奏の力感を僅かに強め、コーダはテンポアップで華やかに決めます。

【第三部】
第四楽章主部はスローで暖色系、夏の夕暮れの様。中間部も静にコントロールされて落ち着いた心地よさのアダージェットになっています。
最終楽章二つの主題は教科書的に絡んで進み、コデッタ主題も約束通りの穏やかさですね。キーとなる展開部も適度な刺激を加えつつ上げて行き、コデッタから山場をキッチリ鳴らします。再現部山場からコーダは素晴らしい鳴りで、フィニッシュはアッチェレランド抑えめですね。


平和で安定感のマーラー5です。主題間でのテンポ設定の区別等はありますが、全体としたらクセは感じませんね。もちろん締める処はピシッと、それがブロムシュテットらしさでしょう。

ショーファードリブンの車にゆったりと安心して乗る気分と言った感じでしょうか。


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グスターボ・ドゥダメル, Gustavo Dudamel (2録音)

(#1)
Simon Bolivar Youth Orchestra of Venezuela
[DG] 2006-2


グスターボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ。言わずと知れた、今や注目度の高いセットですね。ドゥダメルは他に非正規盤のマーラー5が多く出ていますね。


【第一部】
揺さぶりのファンファーレから静の葬送と主要主題は個性的です。第一トリオは一気にテンポアップで元気さを見せる明快なコントラスト付け、ここでも途中でアゴーギクを入れて来ます。第二トリオは静の哀愁でクレシェンドです。
第二楽章第一主題はやたらと速くて元気さ漲り、第二主題は第二トリオの回帰的、第一楽章の紐付きの印象が強い提示部です。展開部vc動機からは鬱→明の行進曲へと明確な変化を付け、再現部は音はやや強めですが緩急は弱めですね。
アゴーギクによる揺さぶりと緩急の個性的な第一楽章が印象的です。

【第二部】
スケルツォ主題は若々しい元気さで、僅かに揺さぶりを感じます。レントラー主題はスローの優美さで心地良い王道コントラストです。第三主題はオブリガート・ホルンが落ち着いて鳴らして穏やかに、力まず見晴らし良い変奏パートへ。展開部はメリハリを付けて、再現部は三つの主題に緩急を振り分け、コーダも力まずにシャープさですね。
曇りのない明瞭さの第三楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は静で甘美さを避けた好きな流れ、中間部も静美でクールなアダージェットになりました。
最終楽章一・二主題のフーガはハイテンポ軽快に、コデッタでテンポを緩めて優美さを出します。厄介な展開部は静に抑えて入りテンポと力感を強める明快明瞭さ、再現部はスローを大きくとってからテンポアップで山場を駆け抜けます。フィニッシュは突如のアッチェレランドですね。


基本速めで若々しく心地良いマーラー5です。殊更な重厚さや荒々しさを避けて見晴らしの良い爽快さが素晴らしいですね。

静スローのアゴーギクの使い方も印象的で、程よいディナーミクととてもフィットしています。興味深い一枚でを付けたくなるクールさです




【後日追記】


(#2)
Berliner Philharmoniker
[BERLIN PHIL MEDIA GMBH] 2018-10/27


(左は豪華全集、右は5番だけの配信版です)

12年後にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー5です。


【第一部】
ファンファーレから葬送へは重心を下げて隙のない王道です。第一トリオも激しさを重々しく、第二トリオの鬱も色濃く捉えています。
第二楽章の第一・二主題は第一楽章二つのトリオの回帰的、展開部は"烈→暗→明"のコントラストを明確に着けて来ます。再現部は提示部の主題に重みを持たせて緩いアゴーギクで脚色します。
濃くて重々しい第一部ですが、BPOの予測範疇ですね。

【第二部】
スケルツォ主題は重厚華美一色、レントラー主題もアゴーギクで濃い優美になっています。第三主題もオブリガート・ホルンがこれ見よがしに鳴らし、変奏パートもアゴーギクを効かせますね。短い展開部は勿体ぶったスローから力感で押し上げて、再現部は三主題をトレースしてコーダは怒涛の音圧が炸裂です。
軽妙洒脱さは無く重厚なスケルツォ楽章です。

【第三部】
第四楽章主部主題は夏の夕暮れの様な甘美さ、中間部も繊細さの中に重さを残しますね。やや暑苦しいアダージェットかもしれません。
第五楽章二つの主題はまさに王道的に絡みコデッタ主題さえ濃い優美さです。長い展開部は始めから重心を下げてずっしりと進み、再現部冒頭主題群をぐっとスローに重く。山場からコーダは軽量アップテンポから腰を落として爆音で仕留めます。


BPOのマーラー5です。貴方がBPOらしいマーラー5を想像したら、それがそのままここにある。そんな演奏です。指揮は誰だっけ?、って感じかも。

完成度はメチャクチャ高く全てが隙のない王道重厚さに溢れます。
ただ、LIVEなのにセッションで作り込まれた様な完成度と言う事になる訳ですが。


.


クリストフ・フォン・ドホナーニ, Christoph von Dohnányi

Cleveland Orchestra
[Decca] 1988-7/25


クリストフ・フォン・ドホナーニが音楽監督(1984-2002)を務めたクリーヴランド管弦楽団との演奏です。作曲家のエルンスト・フォン・ドホナーニは祖父で、その下フロリダ州立大で学んでますね。


【第一部】
ファンファーレtpは揺さぶり、主部は静かな葬送です。第一トリオは激しさを出しますがテンポは緩めですね。第二トリオは緩やかでやや速めで情感は控え目です。
第二楽章第一主題は抑えの効いた激しさで、第二主題も一楽章第二トリオの回帰的で哀愁も地味な印象ですね。展開部vc動機から第二主題もテンポ・鬱さ加減もほどほど、再現部は少し主題の切れ味があるかもしれません。全体ほどほどで控え目な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は速めで軽く教科書的、レントラー主題は速く忙しないです。第三主題動機は弦はスローでオブリガート・ホルンやピチカートは速めと言う変則コントラストですが、インパクトがありません。メリハリが弱くモヤッとした感じです。揺さぶり強く進んで展開部に入りますが、印象は弱いです。再現部に入って各主題のディナーミクと切れ味がまして目が覚めますね。時すでに遅しですが。個性的なアゴーギク揺さぶりが生かされない第三楽章で残念です。

【第三部】
第四楽章主部はやや速めからスロー化させて来ますがフラット。中間部は少し揺さぶって甘美さを付けて来ますが、視線が定まらないアダージェットです。
第五楽章両主題は速めで絡みますが薄味。コデッタも流れに乗った優美さですが地味。録音上の問題も足を引っ張っているかもしれませんね。展開部は速めで王道的に上げてなんとかメリハリを感じますね。再現部もその流れから山場を鳴らしてラストもしっかり盛り上げアッチェレランドを利かせたフィニッシュです。ですが、どこか見晴らしが良くないのが残念です。


速め基本ですが全編通して印象地味なマーラー5です。迫力も哀愁も優美さも、録音の問題もあってか全部ほどほどに聴こえます。

実は第三楽章はクセモノの揺さぶりなのですが、ディナーミクが弱くもっさり感が勝ってしまいます。録音も含めてスカッと抜けるモノが欲しいですね。












==参考音源/資料類==

マーラー交響曲第5番を聴く際のご参考です。

① マーラー本人の第一楽章 ピアノロール
② アダージェット#1 (マーラーと親交のあったメンゲルベルクとワルター旧録音)
③ アダージェット#2 (何かと出てくる映画「ベニスに死す」のアダージェット)
④ 書籍, スコア, ディスコグラフィー




【① マーラー本人の第一楽章 ピアノロール】

マーラー本人の第一楽章演奏がピアノロールとして残されています。よく知られてレコード時代から何回かリリースされています。何はともあれ、マーラー本人の演奏ですからこれを聴いておくのは大切かと。
他にも第4番第四楽章と二曲の歌曲の計四曲がマーラー自身のピアノ演奏で、後から歌唱を重ねた三録音(第五番以外)と、関係者のインタビューも入っています。


マーラー本人のピアノ (ピアノ・ロール)

交響曲 第5番 第一楽章 / Gustav Mahler (pf)
[Imp Classics] 1905-11/9


ファンファーレのテンポは今の時代の標準くらいで、トレモロを入れて力強さ表現しています。葬送行進曲もかなり揺さぶりが入って濃厚、ファンファーレの導入句も出し入れが強いですね。第一トリオは力強く多声的になっていて特徴的、第二トリオの哀愁も少し揺さぶりを感じますね。
演奏時間は約13分と今の時代でも標準的、演奏はかなり濃厚に感じます。







【② アダージェット #1】

マーラーと親交のあった二人。11歳下のメンゲルベルク(1926年録音)と16歳下のワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレして当時を偲んでおきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg

アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5


メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的です。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15


メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik

最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995


スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)







【③ アダージェット #2】

アダージェットと言えば映画「ベニスに死す」が取上げられる事が多々あるわけですから、インプレしておきましょう。

アダージェット, 映画「ベニスに死す」

フランコ・ マンニーノ(Franco Mannino)
Santa Cecilia Academy Orchestra
rec. 1971


(左:サントラ 右:DVD)

マンニーノはイタリア人指揮者、映画音楽を得意とする作曲家でもありましたね。

主要主題は繊細に入り、アゴーギクとディナーミクの抑揚を厚く付けてきます。中間部(トリオ)は透明感と繊細さですが、ここでも強い揺さぶりがあります。演奏時間は10'弱ですから、いまの時代のアダージェットの標準的テンポでしょう。濃淡の感情の強いアダージェットですね。これをもってクラシック畑の先生方は甘美でクラシックにふさわしくないとおっしゃっている訳ですね。まぁ、ここまで濃厚なアダージェットを交響曲第5番の中で聴くことは稀でしょう。
個人的にはあまり美しいアダージェットとは思えませんが、映画の中で聴くと静的に聴こえて主部の山場も生かされている感じがしますね。


「ベニスに死す」ではもう一曲マーラーが使われていますね。交響曲第3番 第四楽章「O MENSCH」で、ご存知の通り美しい歌曲パートです。(こちらは逆に硬派な演奏と歌唱です)

主役のイメージはマーラーというトーマス・マンの小説の映画化ですから、一度見ておくのも一興かと思います。(二人は親交があり、8番の初演にはマンも列席していました)






【④ 書籍・スコア・ディスコグラフィー】

書籍を一度は読んで、マーラーの時代や楽曲構成を知っておくと楽しめるのではないでしょうか。
スコアも持っていれば主題や楽器構成がわかりますので、ただ聴くよりも理解と楽しみは増えてきますね。
ディスコグラフィーは所有枚数が増えると必携品で、これがないと同一アルバムの再発等々 ダブりの確認が出来ません。

書籍

■ マーラー像
マーラーに関する書籍は数多く出ています。時代背景や環境、指揮者としての活躍、アルマとの関係等々、色々読んでみましたね。一度は読んで周囲の関係を知っておくとマーラーだけでなく、例えばR.シュトラウス他の作曲家やH.v.ビューローの様な初期の指揮者への興味も深まって面白いですね。
でも個人的には一回頭に入れれば十分かなと。古いですが有名評論家の先生の書籍をあげておきますね。


とは言え、各楽曲の内容・構成となると一冊では心許ないですね。本ブログではマーラーの人生や作曲の背景は受け売りになってしまうので触れていません。聴いた印象(インプレ)がアウトプットになります。

楽曲解説の理解しやすさは相性もあって、例えば第8番は柴田南雄さんがが良く、第7番は長木誠司さんが…と言った問題は出て来ます。




■ マーラー楽曲解説
と言う事で、それをメインにしてある 現代音楽も造詣の深い長木さんのこれを所有しています。ポイントは三つ、1.歌曲も網羅されて、2.譜例付き楽曲解説で、3.対訳付き、と言う事ですね。特に譜例の横には"第一主題"や"経過句"と言った区分を小節番号で、長木さんの考えで、振ってあるのは助かります。


(なぜか価格は不安定な感じです)

楽曲解説は流れの本流に添うだけでなく、アナリーゼ的な説明が挟まれてくるので始めは少々混乱するのも事実です。もう少しシンプルに と言う場合はまずWikipediaを読みながら聴くのがオススメかもしれません。また公設図書館には関係図書が多くありますので、一度読むのもありですね。アルマの回想など高価な書籍もあります。

他には面白おかしく読み物的に書いてあるこちらも一つの選択肢かも。



スコア (総譜)

スコアによって印刷レベルが大きく異なります。パート譜は必要ないでしょうから総譜になるわけで小型版ですと余計です。おまけに小節番号のあるなし等々、気に入ったのを見つけるしかありません。所有はこれですね。




小型版(新書より少し大きいくらい)ですが、文字・音符はそれなりに見えます。そして楽曲解説と一部マーラーの注意書きに日本語訳があります。とはいえスコア上の細かい注意書きは全てドイツ語、演奏記号はイタリア語ですから、わからないところは日本語を追記し、場所によって主題パートやパッセージの冒頭とかにも色付けしてあります。(マーラー交響曲スコアの日本語対訳は検索すると便利なものがいっぱいあります)
おかげでわかりやすくなり、第6番や第9番のスコアはそこまで書き汚さなくても大丈夫になりましたw

無料pdf譜をIMSLPからDLしてみるのが良いかもしれませんね。初めは面食らうかもしれませんが、見慣れてくると楽章の構成等がわかって楽しいですし、新たな楽しみになるかも。ただ、スコアには楽章構成、第一主題やトリオ等、の表記はありません。

 ① 楽曲を聴きながらスコア内容を読み解く楽しみ
  (込み入ったスコアの迷路を曲と共に解読するのも楽しいですね)
 ② 好みの演奏とスコアのギャップを眺める楽しみ
  (アダージェットはクールが好きですが、スコア指示は情感です)

指揮者になるわけでも演奏者になるわけでもないので、スコアにならってのインプレはしていません
(指揮者気分でスコアを眺めるのも楽しいですが、指揮法など考えると振れませんねw)

またスコアを見ると次の様な事も感じますね。
・BPM指示(♩=f)がないので、テンポ設定は指揮者好き放題です
・rit.と書いてriten.の場合もあって混乱気味
・チェロなどはヘ音記号とハ音記号(表示位置も)がめまぐるしく変ります
・トランペットはB管基本ですが、やたらとF管持ち替え指示があります
 (C管使ったり実際には持ち替えしないオケも?!…w)



マーラー・ディスコグラフィ / カプラン・ファウンデーション監修

Mahler Discography / Péter Fülöp / Kaplan Foudation


マーラー・ディスコグラフィーというよりも辞書ですね。重さは3kg弱もあります。マーラーの交響曲・他のディスクについての詳細が記されています。これが世界標準と言って良いと思います。

 1) 各音源(CD等)の 指揮者 / オケ、録音年月、レーベル
 2) 指揮者 / オケ / 演奏者別音源一覧
 3) レーベル別、音源一覧
 4) 全音源の楽章別演奏時間の一覧

1)には間違った演奏者表記も正解が載っているので助かります。大きくて重いのは装丁・紙質が素晴らしいからでしょう。
2010年増補改訂第2版ですので、2020年には第3版が出るのではと勝手に想定しています。
(後日記:ギルバート・カプラン氏が2016年1月1日に亡くなられ第3版のリリースは難しいかも)






テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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