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マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 110CD聴き比べです [#1 : 1-10]


今回マーラーの交響曲第9番で話題のバーンスタイン/イスラエル・フィルのアルバムが出たので、バーンスタイン既発5枚と聴き比べをしてみようと思います。

他にもマーラー9は枚数がありますので、少しづつ聴き比べてみようかと。まずはそのバーンスタインとアバドをメインに聴き比べてみました。


Mahler Symphony No.9 -- 110 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:10CD 本投稿
バーンスタイン[x6 ★☆], アバド[x5 ★☆], ラトル[x2 ★], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x4 ★㊟], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆]
 #3:20CD
インバル[x3], M.T.トーマス, ドゥダメル, サラステ, バルビローリ[x3], 朝比奈隆[x2], ジュリー二[x2], ドラティ[㊟], ムント, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ, 小林研一郎
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[★☆], ジンマン, バルシャイ, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:10CD
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x3 ☆㊟], バレンボイム[x2 ㊟], ノリントン, エルダー, ツェンダー, カンブルラン, ブロムシュテット, 尾高忠明, A.フィッシャー, パク・ヨンミン





レナード・バーンスタイン, Leonard Bernstein (6録音)

マーラーと言うとやっぱりレニーですね。今回6録音(5CD, 1DVD)ですが非正規盤がもう少し存在している様です。

興味深いのはオケが全て異なるのと、二つのDG盤には同年の他オケ録音が残されている事ですね。もちろん全体の流れが一番ですが、そこを聴き比べてみるのも一つのポイントですね。

参考に録音年と演奏時間を列記しておきますね。これを見ても ■1985年で全体がスロー化 ■第一・最終楽章のスロー化が顕著、と傾向がわかりますね。そのスローが引っかかる訳ですが。

・1965 [NYP] 28:26 / 15:52 / 12:30 / 23:03 = 79:51
・1971 [VPO] 27:43 / 16:22 / 11:44 / 26:34 = 82:23
・1979 [BSO] 28:48 / 16:47 / 12:30 / 26:47 = 84:52
・1979 [BPO] 27:37 / 15:59 / 12:04 / 26:12 = 81:52 [DG]
・1985 [RCO] 29:52 / 17:26 / 11:47 / 29:34 = 88:39 [DG]
・1985 [IPO] 29:27 / 16:43 / 12:07 / 30:15 = 88:32

 (dataはKaplan Foundation の Mahler Discography より。IPOのみCD)





 (#1)
New York Philharmonic
[Sony] 1965-12/16


右はリマスターの12CDsetです。発売時は¥2kを切っていて驚きました

まずは若きレニーとニューヨーク・フィルの一枚です。この録音だけがセッションですね。アナログ時代のセッションですから今とは違うでしょうが。

第一楽章
第一主題はスローで美しく、第二主題も力感を避けながら陰鬱な色を出します。スローに進んで第三主題は抑え気味ですね。展開部前半はアレグロ・リゾルートからの山場は荒さはほどほど、同中盤の主題の出し入れはシャープでコントロールが効いている感じです。同後半のパッセージは葬送色を強調する様に現れますね。スロー基軸の美しさが印象的な第一楽章になっています。
第二楽章
主要主題はやや速め、第一トリオは少しテンポを落として、第二トリオはスローに。主部回帰で多少荒れたり、スローへのアゴーギクはありますが、全体としては特徴薄めで標準的ですね。
第三楽章
主要主題はスロー気味でメリハリほどほどにキッチリと、副主題(第一トリオ)は軽快にと、真面目さを感じますね。中間部(第二トリオ)は明瞭な音出しで速めに入り ターン音型で緩めながら最終楽章ラストを垣間見せます。そしてラストも約束通りの"più stretto"ですね。
第四楽章
主部弦楽奏は緩く厚く、fg動機からは濃厚です。第一エピソードはやや色合い濃いめに登って行き、ピークからのターン音型は緩やかな美しさを奏でてくれます。第二エピソードはいっそう濃いめに入って山場を大きく鳴らします。Tempo I. Molto adagio後半からコーダ(Adagissimo)のターン音型は少しアゴーギクの感情表現を入れていますね。



真面目で教科書的なマーラー9です。全体的にコントロールがしっかり効いている感じです。

決して悪いことは無く、初めて聴くのにも適していると思います。ただ、その後のレニーの9番を聴くと平凡に聴こえてしまうかもしれませんね。

(単独CDは発想記号ごとに全28パートに区切られていて構成確認の参考になります。DG盤RCOも同様に29パートです)






(#2)
Wiener Philharmoniker
[unitel] 1971-3 DVD


NYPから6年後、ウィーン・フィル(VPO)との映像付き録音です。

第一楽章
第一主題はスローに美しく、第二主題で少し陰影を濃く、第三主題も落ち着いています。展開部前半は緩やかな序奏からJ.シュトラウスIIの引用、アレグロ・リゾルートで切れ味を見せるコントラスト。同中盤も第二主題をアゴーギク&ディナーミクで、2度下降動機をスロー鬱に、第一主題で派手にと切れ味がいいですね。展開部後半のパッセージ葬送は穏やかです。コントロールの効いた切れ味の第一楽章になっています。
第二楽章
主要主題は標準的に少しテンポよく、第一トリオはテンポキープで歯切れよく重厚さを見せます。第二トリオは約束通りにスロー穏やかさですね。NYPよりも表情が豊になりました。これはVPOらしさでしょうか。
第三楽章
主要主題は速く切れ味鋭く、NYPからの変化があります。第一トリオもその流れに乗って軽快でシャープです。速く刺激的な流れを作りながら、中間部(第二トリオ)は速めで殊更ターン音型の浮遊感は意識させません。ラスト山場は激しさを増して、最後はpiù strettoを決めます。唯一この先の激しい第三楽章を予感させる構成になっています。
第四楽章
主部は緩やかですが音厚が強く濃厚、fg動機からいっそう力感がこもります。第一エピソードはいっそう濃厚さを増して進み、後半ピーク後のスロー静のターン音型も緊張感が漂います。第二エピソードは落ち着いた入りから山場向かう様になりましたね。山場はスローに大きく鳴らします。後半からコーダでは殊更pppを強調はせずに、緩いアゴーギク静で終焉します。



コントロールの効いた前半、感情豊かな後半という両面を持ったマーラー9です。緩徐の第一・第四楽章のアプローチの違いが際立ちます。バーンスタインのタクトが見えるので気持ちの入れるパートもわかりますね。

NYPと似た流れですが表情があって、Liveでの気持ちが入りと切れ味が増していますね。第三楽章はこの先の方向性を感じさせてくれます。






(#3)
Boston Symphony Orchestra
[MEMORIES] 1979-7/29

mahler9-bernstein-bostonsymphony1979.jpg
(amazonには見当たりません)


VPOの8年後、かのBPOとのLiveの3ヶ月前で同年の7月のタングルウッド音楽祭でのLive録音でオケはボストン交響楽団です。

第一楽章
第一主題はここでもスロー美、第二主題でも自然なつながりで陰影を付けますね。少し揺さぶりながら反復、第三主題は派手です。展開部前半の序奏/鬱からシュトラウス引用/明のコントラストが上がり、アレグロ・リゾルートでは暴れる事なくシャープさです。同中盤の第二主題は抑え気味、2度下降動機は暗く少し速く、第一主題で派手に鳴らし、アゴーギクで揺さぶり崩れます。同後半のパッセージ葬送はここでも緩やかですね。再現部第一主題は力感が増しています。多少の色合い変化はありますが、基本的にはNYP・VPOと同じ流れです。
第二楽章
主要主題は標準的テンポですがリズムを効かせて、第一トリオはよりリズム感を強め心地良い流れを作ります。第二トリオは穏やかマイルド。最後の第一トリオ回帰では切れ味を見せてくれますが、そこからスロー主体でややモヤッとします。全体的に力感が出て来ましたね。ラストのスローはいけませんw
第三楽章
主要主題は揺さぶり強く入って、程よいテンポで切れ味鋭く。副主題(第一トリオ)もその流れに乗って軽妙でリズミカルですね。両主題の絡みは今ひとつヌケが良くないのが残念です。妙なアゴーギクからの中間部(第二トリオ)は緩やか、tpがコケますが、クセを感じるほどテンポを変化させながらターン音型へ。中間部のテンポ変化が特徴的になりました。ラスト山場は激しくストレッタは大迫力です。
第四楽章
主部は緩やかスローで広がりを感じます。fg動機からは情感を濃くしながら進みますがVPOほどではありませんね。第一エピソードも抑えた美しい流れから登っていく緊張感で大きく変わり好印象です。ピーク後のターン音型で緩いアゴーギクを感じますね。第二エピソードも抑えた流れで入り、山場は感情が溢れる様な大きさです。バーンスタインの足踏みの音が聞こえますね。後半からコーダの緩いアゴーギクを生かしたターン音型はここでも同じです。



感情のこもった程良い濃厚さのマーラー9です。最終楽章の濃厚さが落ち着いた流れになったのは嬉しいですね。

8年前のVPOの進化ver.と言った感じで、DG盤BPOと似た構成になりました。違うのはこれを遥かに超える+αがあるのが次のBPOという事になりますね。






(#4)
★☆
Berliner Philharmoniker
[DG] 1979-10/4


有名なベルリンフィル(BPO)と一期一会のLiveですね。今更素人がインプレするのも恐縮ですが。

第一楽章
第一主題はスローで僅かな揺さぶりを感じ、それが緊張感を作っている様です。第二主題は強く陰影付けされて抑揚があります。アゴーギクとディナーミクを最大限に生かしながら第三主題は炸裂します。展開部前半、序奏はスロー鬱を強調して、引用のワルツでは緩やかな明るさで明確なコントラスト付けです。アレグロ・リゾルートからは緊張感漂う迫力で、同中盤もその流れ、特に最後の第一主題回帰はキレキレです。同後半のパッセージ葬送も重心が低いです。コーダさえ緊張感があります。基本的にはそれまでと同じなのですが、演奏レベルと切れ味・緊張感の次元が異なる楽章です。
第二楽章
主要主題は若干速め繊細でシャープ、緩みはありません。第一トリオもテンポキープでリズムを強調していますね。それまでの流れを研ぎ澄ました感じです。第二トリオも緩やかで優しさです。最後の主部回帰は緊迫感ある切れ味が凄いですね。BSOにあったラストのスローは無くなり、隅から隅までシャープな第二楽章です。
第三楽章
主要主題はいきなり凄い切れ味の演奏絡みで、強引とも思える力感で突き進みます。第一トリオは穏やかですが速くて油断できません。二つの主題が絡むと狂乱状態となり強烈に発展します。レハール引用も穏やかさなどありません。中間部(第二トリオ)でも優しさよりも緊張、そこからゆっくりと落ち着いて行き哀しみが溢れるかの様です。ラスト山場から狂乱、più strettoで一気に駆け抜けます。オケが意思を持っているかの様な狂気と感情過多の凄い演奏ですね。
第四楽章
主部は緩やかを取り戻した優しさが溢れます。fg動機からはそこに緊張感が流れ込んで演奏さえ不安定にさせています。第一エピソードも澄んだ音色の静な弦楽でアゴーギクを挟んで進んで行きます。シャープなエモーショナルさで素晴らしいですね。怒涛のピークを作ると静に静まるターン音型ではバーンスタインの声が聞こえます。第二エピソードも抑えながら速めに進めて、山場は感情が溢れ出します。後半からコーダは、ここでもターン音型をアゴーギク静で終息します。ラスト"F♯-G-A-G"を強調しますね。緊張感の中に美しさ溢れる最終楽章です。



緊迫的激情、狂気さえ感じるスリル満点のマーラー9です。そういうのが好きな人には絶対のオススメ名盤です。そして実はそれまでの演奏の延長線上という事実、バーンスタインとBPO唯一の邂逅が生んだ名演と言う事ですね。

これに対抗出来るとすれば、カラヤンの1982-5/1ライブ(非正規盤)しか見当たりません。#2では、その他好きな盤も紹介します。






(#5)

Royal Concertgebouw Orchestra
[DG] 1985-5/27, 6/3


(右は全集で、9番はRCOです)

BPOとの6年後、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのマーラー9は違う顔を見せます。(録音当時の名称は"アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団"でしたね)

第一楽章
スローで緩やかな美しさの第一主題、そこに陰影を加える様な第二主題、コントラストが見事なスロー雄大な流れから第三主題も大きく華やかに鳴らします。展開部前半は歯切れよく"暗鬱→明→烈"のコントラスト付け。同中盤も大きな広がりを感じさせる第二主題が印象的ですね。その後もアゴーギクとディナーミクのバラスがよく、基本の流れは継承しつつRCOらしい華やか広がりある第一楽章で、スロー化を感じますね。
第二楽章
主要主題は緩やか華やかな入りからテンポを程よく戻し、第一トリオも付点リズムを強調しつつもスロー気味。第二トリオはいっそうスローになって穏やかさが顕著ですね。しなやかなスロー美の楽章になりましたが、間延び感も気になります。
第三楽章
主要主題はテンポと歯切れが良く、シャープにどんどんと進みます。第一トリオも快速で少し軽妙感を残しつつ飛ばして、主題を絡めると荒っぽさも見せますね。中間部(第二トリオ)はテンポを揺さぶって不思議な流れです。ラストは激しい山場を作ってフィニッシュは見事にストレット。ハイテンポで刺激ある第三楽章です。
第四楽章
主部はスローで緩やか大きく、アゴーギクで揺さぶります。濃厚でクセが強く個性的です。あまり好めませんが。第一エピソードは静スローからゆっくり登る安心感と美しさです。アゴーギクの緩い揺さぶりが気にはなりますが。
第二エピソードは山場がスロー&アゴーギクになりましたね。スローの揺さぶりで違和感ある最終楽章になってしまいました。バーンスタインは何を目指したのでしょう…



スローの流麗さと間延び感が同居するマーラー9番です。それまでの録音からスロー化が顕著ですが、優美さを感じるのはRCOの個性が出ているのも確かとは思いますね。

スロー化は間延び感を避けられず、その被害を被らなかった第三楽章は好みです。スローにアゴーギクが加わって足を引っ張っているパートもあって気になります。






(#6)
Israel Philharmonic Orchestra
[helicon] 1985-8/25


コンセルトヘボウ管の2ヶ月後の録音、これが今回発売されたイスラエル・フィルとのマーラー9ですね。"最高だった日本公演との比較"とかでも話題ですね。興味ある方はググってみてください。

バーンスタイン-IPO-マーラー9


第一楽章
何処かよそよそしいスローで緩い第一主題、第二主題は陰影濃厚でコントラストが強いです。その後もスローな流れですが、それが生きていませんね。第三主題はシャープです。展開部前半"暗鬱→明→烈"はRCOと比べるとメリハリ不足、同中盤の主題・動機の出し入れもスローに足を引っ張られてやや弱めですね。同後半のパッセージ葬送もフラットに感じます。ズルズルとしたスロー間延び感が気になる第一楽章です。
第二楽章
主要主部はリズム感のある良い流れに、途中で管楽器が素頓狂な音を出しますね。第一トリオは少しメリハリが不足気味、第二トリオは弱いスローでぼんやりとしています。第一トリオ回帰でも狂乱出来ず、締まりに欠けるスローの第二楽章です。
第三楽章
主要主部は速めで少し荒れ気味に突き進み、副主題(第一トリオ)も軽量化しますがハイテンポ、二つの主題が絡むと狂乱状態を見せてパワープレイです。そこに中間部(第二主題)が一息入れる様に入りますが、ここでもアゴーギクが振られていますね。tpも怪しですがw ラストは激しさ全面で溜飲を下げるかの様です。これはかなり荒っぽくて面白いかも。
第四楽章
主部はスローで穏やか抱擁感です。アゴーギクはRCOより薄くなりました。第一エピソードはここでも静スローからゆっくりと登ります。スローのアゴーギクは減って安心感がありますが、引替えにベターとスローですがw 第二エピソードは山場をシャープに決めています。コーダは例によって緩いアゴーギクでの終焉ですが、長く感じます。



コンセルトヘボウと同じスローですが、それが生かせないマーラー9になっています。全体的にモワッとした印象です。

同じ構成のスローでRCOの様な優美さに弱く、おまけにIPOの演奏も管楽器が怪しいのでは厳しいですね。





クラウディオ・アバド, Claudio Abbado (5録音)

マーラーでは評価の高いアバドですが、5録音(3CD, 2DVD)が残されています。アバドと言うとBPOとルツェルン祝祭管の印象が強いでしょうか、ここでも両方の録音がありますね。



(#1)
Wiener Philharmoniker
[DG] 1987-5/16,17


アバドがウィーン国立歌劇場音楽監督時代のウィーンフィル(VPO)との演奏ですね。

第一楽章
第一主題は穏やかに緩やかに澄んだ音色で、第二主題は少し重さを入れて来ます。コントラストが良いですね。切れ味ある反復変奏から第三主題も華やかです。展開部前半は序奏の"鬱"を静スローに、シュトラウス引用で"明"を仄々とマイルドに表現しています。アレグロ・リゾルートからはシャキッと切れ味を見せて、中盤の主題回帰も同様に色付けを明確にして見晴らしが良いですね。コントロールされたアゴーギクとディナーミクが効果的で、切れ味と見晴らしの良い第一楽章です。VPOらしい美しさも感じられますね。
第二楽章
主要主題は優美、VPOの本領発揮でしょうか。第一トリオも流麗な良いリズムです。第二トリオも大きな変化は避けつつ緩やかな流れになっています。VPO色のレントラー楽章ですね。
第三楽章
主要主題は速めシャープに程よく荒れ気味、副主題(第一トリオ)は少し力を抜いて流れに乗っています。中間部(第二トリオ)はスローに緩めて"小さな最終楽章"的で美しいですね。ラストは強烈にストレッタします。
第四楽章
主部は優美で少し厚め、fg動機後も音厚ある流れです。第一エピソードは一転して静で入り、やや速めで緩やかにクレシェンドと、このパートの基本的な流れですね。第二エピソードもスロー静で入り、山場はパワー、ターン音型からは薄くアゴーギクを使って静の浮遊感を出していますね。(コーダはこの後も同じ傾向にあります)



王道で優美さを感じるマーラー9です。絶妙なアゴーギクとディナーミクで表情作りが心地良いですね。

適度な興奮と切れ味 そしてVPOらしい優美さでも良いかもしれません。







(#2)
Berliner Philharmoniker
[RNW] 1995-5/12

VPOから8年後、この4年後にDG盤のBPOが出るわけですが、同じBPOで違いはどこにあるでしょう。1995年のオランダ "Mahler Feest" のsetアルバムからです。amazonでは見つかりませんが探すレベルでもないでしょうね。

第一楽章
第一主題は緩やかスロー、第二主題は黒雲の様になりますが重さは控え目です。反復からの第三主題も興奮よりシャープさですね。展開部前半の"鬱→明→烈"は標準的、中盤も各主題をクールにこなしている感じです。同後半もその流れに沿ってあっさりとしています。重厚さは無く落ち着いたクールな楽章ですね。
第二楽章
主要主題はリズム感をつけながらも落ち着いて、第一トリオでは少し力を入れて表情変化させて進みます。心地良い流れになっていますね。第二トリオは緩やかに、コントラスト付けが明瞭です。
第三楽章
主要主題は速めシャープ、第一トリオは軽妙・軽量、テンポは変わりません。第二トリオ(中間部)もテンポは速めでキープ、ターン音型が弦に出ると最終楽章思わせる流れになります。ラストは激しさを見せて強烈にpiù strettoします。一番切れ味を感じる楽章になっています。
第四楽章
主部は穏やかなスロー、fg動機後も音は厚くなりますが落ち着いた流れです。第一エピソードは静で入ってゆっくりクレシェンドの安定感。第二エピソードも入りは静ですね。山場を大きく鳴らして、ターン音型からは静スローを強くして鎮めます。



クールに落ち着いたマーラー9です。興奮や重厚さを避けながらも、全体のまとまりは良く 聴かせてくれます。基本的にはVPOの延長線上だと思いますが、それやDG盤BPOを知っていると、何か足りない様な感じがしますね。

4年後、BPOとの演奏は大化けする事になります。







(#3)
★☆
Berliner Philharmoniker
[DG] 1999-9/6,7


(右は全集です。アバドのマーラーならこれがお買い得ですね)

VPOから12年後、Mahler FeestのBPOから4年後、このBPOとのマーラー9も名盤と言われる一枚ですね。

第一楽章
第一主題はシンプルに入り陰影を付けます。第二主題で切れ味を加え不安げな流れから上げて反復へ、第三主題はシャープですね。展開部前半は"鬱→明→烈"の流れを落ち着いてコントロール良く、中盤の第二主題はキレキレのポリフォニカルで素晴らしいですね。同後半の葬送パッセージはゆっくりと重さを見せて来ます。再現部の第一主題を聴くとホッとする様な感じがしますが、そこからの揺らぎもフィットしていますね。重厚の中に光るシャープさが素晴らしい楽章です。
第二楽章
主要主題は付点リズムを強調しつつ力強い流れ、第一トリオも同じ様に弾む様なリズムを強調しています。力感と切れ味で進み、第二トリオで肩の力を抜く感じですね。緩急も上手い迫力のレントラーで、BPOのパワーを感じますね。
第三楽章
主要主題は速めでシャープ、副主題(第一トリオ)で少し軽妙さを見せながらテンポは維持されます。絡んでポリフォニーの力強さになって、中間部もあまりスロー化させずにターン音型も最終楽章をイメージさせません。山場はキレキレ、ラストは飛ばして強烈più strettoです。適度な荒れ具合も味方に付けた楽章になっています。
第四楽章
主部は太めで音圧ある重厚な流れ、fg動機後も音は厚くのしかかってくる感じです。第一エピソードも厚い低弦から入りますがすぐに強烈に重厚な流れに入ります。これは第二・三楽章からの流れで作る構成感でしょうか、それとも山場の後のターン音型を鎮めるコントラストを生かすためでしょうか。第二エピソードはスロー静で入り良い流れで山場はシャープです。その後コーダまでのターン音型では一転静に、ラストはマーラーの指示するersterbendらしい最後を見せてくれます。



切れ味鋭く完成度の高い王道のマーラー9です。

バーンスタインもカラヤンもBPOとの素晴らしい演奏を残しているのですが、これまたアバド/BPOの迫力と鬼気迫る演奏で素晴らしいですね! 共通するのは意外にも中間楽章の見事さです。

この8年後にラトルが主席指揮者として振るわけですが、切れ味より重厚さが主軸になりますね。(次にインプレあります)







(#4)
Gustav Mahler Jugendorchester
[EuroArts] 2004-4/14 DVD


アバドが創設者で音楽監督だったグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団との映像付きのマーラー9ですね。

第一楽章
スローで揺さぶりを感じる第一主題、第二主題も揺らぎを入れていますが変化は弱めです。第三主題も落ち着いていますね。本当はユースらしく少しはしゃいで欲しい感じです。展開部前半の"鬱→明→烈"は最後が元気、中盤も多少ディナーミクを付けながら、後半パッセージの葬送は鐘を使わず金属の板で音が出ていません。アバドとしては可もなし不可もなしな印象でしょうか。ユース・オケですからね。
第二楽章
主要主題は付点リズムを強調しつつおとなしい流れ、第一トリオはシャキッとリズム感の速めになります。第二トリオも緩やかくらいしか印象に残りませんが、主部回帰で少しリズムに表情が出るのが良いですね。
第三楽章
主要主題は速く、音が少々怪しい入りです。第一トリオはユースなのでアゴーギクは避けると思ったのですが、この楽章自体結構揺さぶっていますね。中間部では緩やかにターン音型を奏し、ラストはまとまり良くストレットします。
第四楽章
主部はモワッとした印象、fg動機の後の弦楽奏は少し尖った感じです。第一エピソードは繊細に入り山場へクレシェンドする標準的、第二エピソードも同じ流れで進み、ターン音型からコーダはflの音色が気になりましたが約束通りに終息です。静の間をとるのはアバドらしさですね。

コーダで舞台照明を落として行くお約束パターンが見られます。(次のルツェルンも同じです)



やや没個性ながら真面目に一生懸命のマーラ9です。どうしてもユース・オケというフィルターが入ってしまいますが、ましてBPOとルツェルンの間に挟まれると凡百の一つという事になってしまいます。

実際は演奏に破綻をきたす事はなく技術レベルは高いですが、次のルツェルンを観る(聴く)と表現力は別のところにある事がわかります。







(#5)
Lucerne Festival Orchestra
[Accentus] 2010-8/19-21 DVD


BPO[DG]から11年後、アバドが音楽監督に就任時に再編成されたルツェルン祝祭管弦楽団とのマーラー9ですね。もちろんルツェルン音楽祭からです。

第一楽章
第一主題は透明感ある美しさで今までにない流れです。第二主題も美しさがある暗鬱さから上げて行きます。第三主題も華やかに鳴らしますね。展開部前半、静の中に鬱を閉じ込めた流れからJ.シュトラウスII引用で柔らかく明るさを見せます。アレグロ・リゾルートからはキレキレの流れです。中盤は第二主題が渦巻く様な暗さから静の2度下降の動機は暗い流れ、第一主題回帰から光が戻るコントラストです。同後半のパッセージ葬送は悠々と、ここでも鐘を使わないという事はアバドの指示と言う事ですね。透明感と切れ味が素晴らしい第一楽章ですね。
第二楽章
主要主題はアバドらしい付点リズムを強く意識した流れ、第一トリオではリズム感をチェンジしてシャープに、第二トリオは流れをキープしながら緩やかにしていますね。少し上品にまとまり過ぎなのが欠点かもしれません。
第三楽章
主要主題は少し抑えた感じでしょうか。副主題(第一トリオ)では音量を落として入り、軽妙感が生きた流れになって行きますね。中間部(第二トリオ)は優しさが溢れて、ターン音型は最終楽章を思わせます。ラストはまとまり良くストレットです。
第四楽章
主部は柔らかく穏やかに少し音厚が高く、fg動機からもその流れにあってここを抑えないアバドらしさかもしれませんね。エピソードは第一・第二共に静に入って穏やかにクレシェンドで山場へ、その後のターン音型を鎮める保守本流です。コーダは大きなスローアゴーギクで鎮めますね。

タクトが降り切るまでの2'10"の静寂はグッと来ます。実際に涙する人もいて、スタンディングオベーションです。指揮者からの起立をメンバーは拒否してアプローズを指揮者に、最後はメンバー同士が握手し肩を抱き合うと言う素晴らしいコンサートに見られるシーンがありました



クリーンでマイルドなマーラー9です。BPO[DG盤]にあった重厚さ強烈さはどこにもありません。

替わりに優しさと心地良さがあります。中間楽章のそれが仇になって甘口の流れになったのが少し残念ですが。





サイモン・ラトル, Sir Simon Rattle (2録音)

ラトルのマーラーというと、BPO初共演の第6番の印象がいいくらいであまりピンと来ないのが個人的なイメージです。一般的にはBPOとの9番が名盤の様ですね。



(#1)
Wiener Philharmoniker
[EMI] 1993-12/4, 5


ラトルがウィーンフィル客演(初の定期公演)で振ったマーラー9です。

第一楽章
いきなりクセのある第一主題のスロー揺さぶり、第二主題もかなり揺さぶりを入れて来ますね。ハイに上げて反復後の第三主題はアゴーギクを強く振っています。かなり個性が強いですね。展開部前半の序奏の鬱とシュトラウス引用の明はスロー、テンポアップで一気に烈、中盤は各主題でアゴーギクの揺さぶりを強くしています。ディナーミクは弱めで妙な緊張感がありますね。クセのあるスロー揺さぶりと極端なアゴーギクの第一楽章です。なのに少し退屈?!
第二楽章
主要主題は付点リズムを強調していますね。第一トリオはクセのない流れ、第二トリオもこれと言った印象は残りません。主部回帰の前のパウゼを大きく取るのが不自然と言えば不自然ですが。退屈さを感じるのは録音もあるかもしれません。音のヌケが今ひとつです。
第三楽章
主要主題は何処か締まりに欠ける流れで、副主題(第一トリオ)も平凡です。中間部(第二トリオ)もまとまりが良くなく、tpのターン音型も最終楽章を望む流れにはなりません。山場は力感を出しますがこの曲レベルですね。ラストは激しくpiù strettoで、フィニッシュ数音だけスローの極端さ。ここだけは練習で指示しているでしょう。
第四楽章
気持ちの入りが薄い主要主題、fg動機後の弦楽奏もズルズルっと流れます。第一エピソードも何の個性も揺さぶりもなく山場だけ変に極端に厚く、第二エピソード山場は第一エピソードでエネルギー使い果たした様です。ターン音型に入ってからは極標準的です。



クセと平凡が交錯する見晴らしの良くないマーラー9です。個性ある第一・第三楽章ラストは練習したけど、平凡な第二楽章と山場だけの第四楽章は本番勝負?! みたいな感じさえしますね。若さは楽しめます。

ラトルらしい出し入れと見る事も出来ますが、全体としては統一感に欠けスカッとしませんね。






(#2)

Berliner Philharmoniker
[EMI] 2007-10/24-27


VPOとの録音から14年後、ベルリンフィルの首席指揮者兼芸術監督に就任して5年後の充実期に入っての演奏ですね。

第一楽章
ここでももったいぶったスローの第一主題ですが妙な揺さぶりはなくなり、第二主題の重厚さとのバランスも良いですね。流れは自然になり第三主題もBPOらしい音圧のある波の様な揺らぎは自然です。展開部前半のスローもなくなり、鬱から明 そして速烈のコントラストもハッキリしましたね。シュトラウス引用のhrは見事です。中盤の第二主題も緊迫感をクセのない揺さぶりで見せて、他の主題もコントラストが良い感じ。展開部後半の葬送パッセージも程よいスローが生きています。1993年VPOの不自然さは解消、この曲のBPOの録音に共通する王道重厚さを感じます。
第二楽章
主要主題はここでも付点リズムを強調していますね。第一トリオはリズム感のある流れになって快感があります。第二トリオも緩やかさが出て中間部らしいチェンジペースも見せてくれます。少し平凡さは感じますが完成度が上がりました
第三楽章
主要主題も締まりある流れになり、第一トリオも軽妙に跳ねる様にBurleskeしていますね。第二トリオは少し速めでフィットしていない様な… 山場は冷静でラストもクールに決めます。変な細工もなくなりましたね。とは言え、個人的には中間楽章の平凡さが気になります
第四楽章
揺さぶりを入れて濃厚な主部弦楽奏、fg動機後も音厚ある流れで暑苦しいですね。第一エピソードも明確に音を鳴らして、すぐに厚い音の重い空気の様な弦楽奏になります。ラストと対比させる一つのパターンではありますが、ここでは鬱陶しい感じですね。第二エピソード後半のターン音型からコーダのアダージッシモ約束通りに鎮めます。アバドと似た流れかもしれませんね。



重厚さのマーラー9です。この曲のBPOの録音に共通ものがここにもある様な気がします。曲者ヴィルトゥオーゾ集団BPOのなせる技なのか、はたまた指揮者の共通イメージなのか…

アバド/BPOに近い演奏?! それなら切れ味で一歩上回るアバドでw





ヴァレリー・ゲルギエフ, Valery Gergiev

London Symphony Orchestra
[LSO] 2011-3/2,3


昨年のライブですね。当代人気指揮者の一人ゲルギエフが首席指揮者を務めるロンドン交響楽団とのマーラー・チクルスから9番です。当然ながら期待値高く聴いたCDですね。

第一楽章
第一主題は静の音が印象的、第二主題は強め鬱な流れにシフト、音を高めて反復に入ります。第三主題は力む事なく派手ですね。展開部前半は歯切れの良い序奏からシュトラウス引用の明るさ、テンポアップからの激しさと標準的です。この曲のポイント展開部中盤はコントラスト良さを見せ、第二主題を陰影深く、2度下降動機をスロー暗鬱に、第三主題からは揺さぶりを強く、第一主題で激しく奈落します。後半はパッセージの葬送を速めに入るのが特徴的ですね。王道的な中にアゴーギクとディナーミクを程良く使った第一楽章ですね。
第二楽章
主要主題は優しく入って付点リズムをハッキリと刻みます。第一トリオも同じリズムをキープしていて、力強いレントラーになっています。第二トリオはスローに穏やかさでコントラストを付けていますね。後半主部回帰では狂乱的な流れを強調しています。
第三楽章
主要主題は速めでシャープ、どんどんとドライヴして行きます。副主題はハイテンポで軽妙に戯れる様に上手い流れです。中間部ではペースダウンしてターン音型を生かした哀愁を強調。静から一気にテンポアップで山場を炸裂させてラストpiù strettoは見事です。ハイテンポでこの楽章らしい危ういバランスが見事ですね。
第四楽章
主部は緩やか穏やかに包み込む様に、fg動機からの弦楽奏も音の厚みは付けますがクールです。第一エピソード入りの低弦が速いのは驚きで、その後も速い流れをキープしながらhr動機でテンポを戻します。感情が溢れ出る様に高まって、繊細なターン音型で鎮めます。いいですね。第二エピソードも入りは速く、そのまま山場へ入ります。そこからスローに戻してターン音型は穏やかに盛り上げ、後半からコーダは繊細そのもので素晴らしいですね。



基本の流れにアゴーギクとディナーミクでコントラストを付けたマーラー9です。強い個性はありませんが、スパイスが効いた聴き応えを味わえますね。

王道が好きだけど少し+αが欲しい、そんな方にオススメです。10年後・20年後のゲルギエフの再録音が楽しみですね。








次はカラヤンのライブとかテンシュテットのライブとか、非正規盤も含めてですね。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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