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ジェルジュ・リゲティの音楽変遷「LIGETI」アンテルコンタンポラン


ジェルジ・リゲティ
(György Ligeti, 1923-2006)
ハンガリー生まれオーストリアで活躍した現代音楽家です。年代的には前衛三羽烏(ブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノ)と同じ1920年代生まれですが、ハンガリーからオーストリアに亡命したのが1956年。そこで前衛現代音楽に出会うので実験前衛系キャリアのスタートは遅い事になります。
楽風変遷の概要は以下です。

【初期】
西側音楽情報遮断の共産主義ハンガリー時代は主に民族音楽の研究を進めていました。
【中期】
亡命後に十二音技法に出会い1950年台後半からは前衛系へと変貌しています。トーンクラスターや音密度が高い(多声部)のミクロポリフォニー、1966年からは全音音階と言った複雑性の高い方向に推移します。もう一つはメカニカルな単純反復と言った技法も登場させています。
【中後期】
1970年台になると調性回帰方向となりますが、この時期は作品数が減少。
【後期】
1980年台には微分音や倍音、ポリリズム、アフリカ系民族音楽などのモード、フラクタル幾何学と言った多岐に渡る手法を駆使します。

ビッグネームですが、個人的にはあまり積極的には聴いていない一人です。(W.リームなども同じです)


LIGETI
(Ensemble InterContemporain, Pierre Bleuse cond.)
今シーズン(2023-24)から音楽監督を務めるピエール・ブリューズ(ブルーズとも)とアンサンブル・アンテルコンタンポランによるリゲティの1947-1994年の作品集になります。
中後期の調性回帰楽曲が入りませんが、それほど問題はないでしょう。

これまでもリゲティ・プロジェクト等で多数のCDに渡って全年代作品がリリースされた事はありますが、今回は2CDでその全貌を垣間見る事ができそうです。

例によって作曲年代順に聴いてみます。(No. がCD収録順です)





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【初期】
CD2-3. 5つの小品 4手ピアノのための (1942-1950)
 [Fünf Stücke pour piano à quatre mains]
2'以下の小曲9パートで、リズム強調が印象的な民族音楽風楽曲です。時折ショスタコーヴィチの色合いもあるかもしれませんが、調性と一部モード風で特異性は低いです。


CD2-2. 2つの奇想曲 ピアノのための (1947)
 [Capriccio n° 1, Capriccio n° 2]
2'強の二つの小曲で、弾むリズムに不協和音の交錯するピアノソロ曲です。いかにも調性音楽から脱却する習作的です。これだと旧ソ連圏では演奏機会は無いかもしれません。



【中期】
CD1-2. チェロ協奏曲 (1966)
 [Concerto pour violoncelle et orchestre]
極端な静から入り長いボウイングの単音がゆっくりクレシェンド、そのまま弦楽器の数が増えて管楽器にも広がります。下降二音も入りますが、空間音響的な単音群の広がりになります。後半パートは静の流れは同じですが、短旋律反復が絡む様になって生命感があります。そしてクラスター的即興風ポリフォニーへと変貌します。
ちょっと代表作の"ロンターノ"を思わせますね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Alexis Descharmes(vc)のLIVE映像です


CD2-1. 室内協奏曲 13人の奏者のための (1969-1970)
 [Kammerkonzert pour treize instrumentistes]
小刻みな短旋律が複雑に絡む静的ポリフォニーが中心となっています。そこから長音やクラスター的な強音が割り込み表情変化が起こります。4パートの中でその組合せやバランスが異なります。
上記もそうですが全体は渦巻く平坦さでそこにクラスターが入るコントラスト、それがこの期の特徴でしょう。旋律には調性感が残されます。



【後期】
CD2-5. ヴァイオリン, ホルン, ピアノのための三重奏曲 (1982)
 [Trio pour violon, cor et piano]
対位法なのか微妙なホモフォニーなのかヘテロフォニーなのか。はたまたモノフォニーなのか。そして調性なのか無調なのか。
三つの楽器の短旋律反復変奏が絶妙な関係で絡みます。それが四つのパートでリズムやテンポを変えて、三楽器の関係性も様々に変化、シンプルで複雑な面白さが楽しめます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Denes Varjon (pf), Tamas Major (vn), Zora Slokar (hr) の映像です


CD1-3. ピアノ協奏曲 (1985)
 [Concerto pour piano et orchestre]
全体印象は即興ポリフォニーの協奏曲に聴こえます。でもメインはここでも短旋律の反復変奏で、ソロpfとオケの各楽器の関係も微妙に変化して行き、パート毎の表情変化もあります。
前の "ヴァイオリン, ホルン…" を編成拡大し、一部パルス的な音や東洋(邦楽?)和声を加味した様な流れになっています。


CD1-1. ヴァイオリン協奏曲 (1990-1992)
 [Concerto pour violon et orchestre]
ここでも線の細い弦楽奏ポリフォニーで入って来ます。そこに強音の刻む様なソリストが割り込み、オケの各楽器が絡んで混沌的になります。ポリフォニーだけでなくその関係が微妙に変化するのも同じですね。
調性感の強い旋律が明確に感じられる様になって来て幅が広がり、出し入れのバランスも良くなっています。


CD2-4. 無伴奏ヴィオラ・ソナタ (1991-1994)
 [Sonate pour alto]
不協和音を挟んだ調性旋律がより明瞭になっています。パートにより不協和音の挟みレベルの強弱があります。
ソロなので声部の絡みはありませんがダブルストップによる対位的な奏法パートがあります。短旋律の反復変奏は変わりません。



リゲティの多技法のベースがポリフォニー軸の各声部の絡みと変化、それと短旋律の反復変奏と言う事を再確認しました。
大枠で聴くと大小のポリフォニーと反復が流れをコントロールしているので、やや平板な印象を受けるかもしれません。

後は全く異なる代表作 "100台のメトロノーム" を聴くとリゲティの違う面を楽しめるかと。



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