fc2ブログ

エマーソン弦楽四重奏団の ラストアルバム「Infinite Voyage」


Infinite Voyage
(Emerson String Quartet, 1976-2023)
今月(2023年10月)をもって活動を終了するエマーソンSQのラストアルバム、タイトルも『終わりなき航海』です。

不思議な事にSQのラストアルバムなのに純粋の弦楽四重奏曲は一曲で、四曲中 三曲(1, 3, 4)にソプラノが入ります。ソプラノは指揮者としても活躍が目覚ましいバーバラ・ハンニガン(Barbara Hannigan)、前衛を得意としているので本ブログではお馴染みになります。
エマーソンSQとハンニガンのリレーションが以前から深かった事は意外でした。

ちなみにラストコンサートは10/21, 22にN.Y.リンカーンセンター(Alice Tully Hall)の予定で、シューベルトの弦楽五重奏曲 Op. 163 (for Two Violins, Viola, and Two Cellos)では2nd Celloに創設メンバーのDavid Finckelが入るそうです。





esqbhinvo.jpg
 amazon CD 

amazon music unlimited


1. Melancholie, Op. 13 (1919)
  [Paul Hindemith, 1895-1963]
独の音楽家で後期ロマン派と前衛の間で生きたパウル・ヒンデミット、楽風も両者を跨ぐ印象です。
 浮遊感のある旋律が特徴的で、そこには不協和音的な調性の自由度を感じます。そして何処かモードの旋法感もあるイメージです。タイトル通りに"メランコリー"なポスト後期ロマン派的楽曲になっています。


2. String Quartet, Op. 3 (1910)
  [Alban Berg, 1885-1935]
アルバン・ベルクの初期作品で、この曲だけがソプラノの入らない純粋な弦楽四重奏曲です。
 全音音階を軸とした主題はいわゆる旋律感は薄く、調性や旧来的構成からの逸脱を狙った流れです。ところどころでシェーンベルクの"浄夜"の流れを感じたり、ポリフォニックで多調的な様相も現れます。コンサート受けする楽曲で、エマーソンSQは程よく刺激を与えてバランスの良い弦楽奏に仕立てていますね。


3. Chanson perpétuelle, Op. 37 (1898)
  [Ernest Chausson, 1855-1899]
今回唯一の19世紀の音楽家エルネスト・ショーソンです。「終わりなき歌」はピアノ伴奏版やオケ伴奏版もありますが、一番知られるのは今回のpf+SQ版でしょう。
 メランコリックで1.で薄くした旋律感を取り下げた流れです。この曲には冒険的な構成は見当たらず、前二つの楽曲の原点の位置付けになっているのかと思われます。pfも入ってB.ハンニガンの情感に溺れないクールなsopも合っています。


4. String Quartet No. 2, Op. 10 (1907-08)
  [Arnold Schönberg, 1874-1951]
アルノルト・シェーンベルク初期の弦楽四重奏曲で、第四楽章のみスコアは無調になっています。無調から十二音技法へ向かう足がかりになった作品と言われていて、ソナタ形式で主題も存在しています。
 前半二楽章は反復や変奏もあって楽曲的には後期ロマン派の印象が色濃く感じられます。この時代のシェーンベルクらしく濃厚なロマン色を強く押し出しているパートが中心になってて、その辺りはエマーソンSQが上手く表現しているでしょう。
sopが入る第三楽章からやや調性を崩す様な流れや跳躍音階が登場して、ラストの四楽章は反復を残しつつも調性感は怪しくなっています。ここではハンニガンらしいsopの切れ味が見事ですね。



前衛前夜のポスト後期ロマン派への時代を楽しむにはピッタリのアルバムです。機能和声から調性逸脱への流れで構成されて、楽曲間のコントラストがあって良い感じです。

ハンニガンのsopは例によって硬質でクール。その現代音楽を得意としているスタンス/表現力とESQの演奏が相まった4.がベストトラックです。
オススメのアルバムですね。




オフィシャルの録音excerptです



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kokoton

by kokoton

のらのらからみ   

カレンダー
03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます