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ルイ・ロルティのピアノで聴く『リストのオペラ・トランスクリプション集』の楽しさ


Liszt At The Opera
(Louis Lortie, piano)
リストと言えばトランスクリプション。ベートーヴェンをはじめ 何でもヴィルトゥオーソ・ピアノ曲にしていますね。本CDは有名オペラ作品をピアノ編曲版にした楽曲集です。(7. "トリスタンとイゾルデ" 「I. 第一幕 前奏曲」のみロルティの編曲です)

ピアノはルイ・ロルティで、本ブログでのリスト作品は「巡礼の年」全曲版をインプレしています。







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1. ワーグナー:"タンホイザー" 序曲
"巡礼の合唱"を厳かにスローに入って大きく華々しく鳴らし、"懺悔の歌"では物静かさが響きます。そこにいきなり"ヴェーヌスの誘惑"がハイテンポの身軽なお遊び世界を表現します。
出し入れと技巧性の高さを生かしつつ、この序曲がタンホイザー全曲を表現している事を見事に作り上げていますね。エンディングは超絶技巧です。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  pfはGyörgy Cziffraで、Lortieよりも強音打鍵は抑え気味ですね
  スコア付きで、アルペジオやスケールの強烈さがわかります


2. ワーグナー:"タンホイザー"「優しい夕星よ」レチタティーヴォとロマンス
透明感あるpf高音アルペジオ、そこから色濃い低音アルペジオと表現力を強く押し出します。緩徐なのですが、出し入れの強さはリストらしさでしょう。後半に行くほどに技巧を見せるのも同じです。
透明感あるpfが死期が迫るエリーザベトを表現していますね。


3. ワーグナー:"さまよえるオランダ人"「紡ぎ歌」
第2幕第1場の糸紡ぎをする女性陣のシーンですね。速くてお喋りなpfが鍵盤上を転がる様な音を奏でます。その強烈なハイスピードと旋律の対比が作り上げる技巧曲ですね。これはリストのトランスクリプションの典型の一つでしょう。


4. グノー:"ファウスト"「ワルツ」
第二幕のワルツで、ファウストがマルグリートに恋をするシーンですね。例によってメイン旋律は弄らずに技巧と出し入れで脚色します。特にラストは強い打鍵が印象的な激しいワルツで、コンサート受け間違いなしですね。


5. ベルディ:"リゴレット" 演奏会用パラフレーズ
リゴレットとありますが曲は第三幕の「美しい恋の乙女よ」のみで、ピアニストでもあった大指揮者ハンス・フォン・ビューローの為に書かれています。
よく知られる主題はスロー美を生かした演奏ですが、全体は強弱が強い編成です。その上ロルティはディナーミクをオリジナルよりも強く付けている感じがありますね。


6. モーツァルト:"ドン・ジョヴァンニ" の回想
5パートでドン・ジョヴァンニのストーリー各シーンがサブタイトルで付いています。お馴染みの主題が並びますがロルティは強音を軸としてpfを唸らせ、細かいアルペジオやスケールは速く 技巧性を見せ付けますね。


7. ワーグナー:"トリスタンとイゾルデ" 「I.第一幕 前奏曲」「II.イゾルデの愛の死」
コンサートでもお馴染みのクラシック音楽の中でも最も人気があるセットでしょう。
I.はロルティ本人の編曲でリスト作品と同様に強音を用いますがリズム変化と技巧は抑え気味で、その中にこの曲らしい澄んだ哀しみを湛える様な美しさをのこしますね。
II.は技巧を下敷きにして死んだトリスタンの後を追うイゾルデの哀しみを波の様に表現しています。出し入れも抑え気味になっていてラストシーンを思い浮かばせる見事なトランスクリプトになっています。それまでの編曲とは一味違いますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Marc-André HamelinのII.で、Lortieよりもpfを鳴らします
  そして硬質な鳴りがアムランらしく、表現力も濃いです
  その演奏パターンはアムランのLIVEらしさで、アプローズ前からLIVEとわかります
  (スタジオ録音のアムランはLIVEとは違いクールです)



オリジナル構成を改編せず、出し入れと技巧を最大限生かしたヴィルトゥオーソ・ピアノ曲集です。

旧来的な大向こうを唸らすタイプの為の楽曲で、当時のスターだったリスト(長身美男子の超絶技巧派ピアニスト)を思い浮かべるのにもってこいですね。

ロルティのpfもやり過ぎかと思われるくらいディナーミクを強く振っていてpfが唸りを上げます。全曲聴くとお腹いっぱいですがラストに救われますね。構成も上手いです。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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