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マーラー第4番、ベルクの歌曲、全て室内楽編曲版 の『SEHNSUCHT』バーバラ・ハンニガン(sop)とロルフ・フェルベーク(cond.)


SEHNSUCHT
Camerata RCO, Rolf Verbeek: cond.
Barbara Hannigan: sop. | Raoul Steffani: bar.
後期ロマン派最後の輝きマーラーと前衛前夜のベルクと言う20世紀初頭の作品をアンサンブル編曲版で並べたアルバムです。歌唱がキーになっていますね。

全てが編曲版と言うのは、演奏者とその室内楽トランスクリプトを手掛ける指揮者のフェルベークによる処ですね。(今回の編曲者は違います)
カメラータRCOはロイヤル・コンセルトヘボウ管メンバーで構成される興味深いアンサンブル。

前衛志向のバーバラ・ハニガンに興味があって聴くわけですが、今回は単にソプラノだけの様です。本人指揮や規格物も得意としているので不思議ですね。
特にマーラー4は2020年にミュンヘン・フィルに客演して指揮&ソプラノで"歌い振り"していると思います。

LIVE(2021/4)ですが気配がありません。COVID対策での無観客ネット配信だったそうです。








アルバン・ベルク
(Alban Berg, 1885-1935)
今更ですが、新ウィーン楽派三人の中で宗主であるシェーンベルクと共に調性に回帰しています。何と言っても最後に完成させた名曲、ヴァイオリン協奏曲 "ある天使の想い出に" は今でもコンサートでお馴染みですね。
今回の歌曲二曲は1900年代初頭の初期作品です。

■1. 初期の7つの歌
 ラインベルト・デ・レーウ編で、ハンニガンのsopです。原曲はピアノ伴奏ですが、ベルク本人によるアンサンブル版もありますね。歌詞は若人が自然と恋人を思う内容です。

無調期に入る前の曲ですが多調的な浮遊感が強い流れですね。元々そう言う曲ですが、それを強く感じます。後期ロマン派の一歩先と言った曲調ですね。処々でシェーンベルクの "グレの歌" の気配も。
ハンニガンは細めでシャープなソプラノ、時にバイブレーションを抑え気味にテンション高め、弱音から強音への移行を強調します。特に人気のある "3.ナイチンゲール" ではそれを感じます。

ピアノ伴奏版のクールさの方が好みではあります。


■2. 4つの歌曲 Op.2
 ヘンク・デ・フリーヘル編で、ラウル・ステファニのbarです。1.と同じく怪しげな調性感を生かした楽曲でテンションを徐々に上げて行きます。全体的に濃厚な表現力になっていてアンサンブルとバリトンが対等に向き合っていますね。
聴き処は少し表現主義的な臭いがする "3.強い巨人を倒し" から "4.暖かな風" でしょうか。



グスタフ・マーラー
(Gustav Mahler, 1860-1911)
本ブログのマーラーでは第四番は最も聴く機会が少ない交響曲です。冒頭から古典色が濃いのがその一因になっているのは確かですね。

■3. 交響曲 第四番 ト長調
 エルヴィン・シュタイン編で、最終楽章のsopはハンニガンです。
第一楽章冒頭動機はより軽妙なメヌエット風に、第一・二主題も力感を入れながらもあっさりと。揺さぶりを濃くするパートもありますが、室内楽にフィットする楽章でしょうね。

と、各楽章もインプレしようと思ったのですが、その必要性を感じられません。マーラーの交響曲の中ではこの曲が一番アンサンブル風だと言うことを再認識しただけの様な…
最終楽章のハンニガンも天上の生活を歌いますが、柔らかさと細く鋭さの入り混じるソプラノで微妙な印象です。それがハンニガンではありますがw またアンサンブルの演奏は強弱コントラストを強く表現しますね。

ここにマーラーを入れるなら最終楽章だけ抜粋して他の歌曲を入れた方が全体がフィットしたと思います。この曲が室内楽ver.に向いているとは言え、マーラーの交響曲の室内楽トランスクリプトで楽しめた事はありませんねェ。残念ながら。




Alpha ClassicsからのオフィシャルExcerptです



ベルクの歌曲の後にマーラー第四番を聴くと時代を感じる、そんな印象でしょう。ベルクが後期ロマン派を越えようとしているのがわかりますね。

期待した前衛方向の味付けはありませんでした。この流れならマーラーも歌曲にした方がフィットした様な気がします。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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