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イェスパー・ノルディン(Jesper Nordin)の「Emerging from Currents and Waves」


イェスパー・ノルディン
(Jesper Nordin, 1971/7/6 - )
今注目のスウェーデンの現代音楽家ですね。ストックホルム音楽大学でベント・セアンセンらに習い、仏ではエレクトロニクス必須のIRCAMで、米ではスタンフォード大でブライアン・ファーニーホーに師事しています。

楽風はスウェーデンの民族音楽に電子音響や即興性、そしてロック等を取り入れる多様性の前衛でインスタレーションの方向もみせるそうです。

近年は作品をビッグネームが取り上げている事も注目で、今回[BIS]はエサ=ペッカ・サロネン指揮/スウェーデン放送交響楽団、次回[KAIROS]リリース予定の"Vicinities"は同オケでダニエル・ハーディング指揮です。


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧



Emerging from Currents and Waves
(Swedish Radio Symphony Orchestra | Esa-Pekka Salonen: cond.)
斬新な技法の現代クラリネット協奏曲です。ライヴ・エレクトロニクスが使われていますが、従来のプログラミング・ソフトではなく、AIを使ったモーション・コントロールの様な処理で、指揮者とソリストの動きに反応します。Gestrument (from ‘gesture’ and ‘instrument’)と呼ばれオリジナルはノルディン自身のツールですね。

クラリネットはマルティン・フレスト(Martin Fröst)、ライヴ・エレクトロニクスはIRCAMの技術スタッフが対応しています。
そして本人制作の映像が使われていてインスタレーションになっています。







Emerging from Currents and Waves (2018)
I. Currents - IIa. Emerging - IIb. Emerging - IIc. Emerging - III. Waves

三部作で、クラリネットが入るのは "パート II. Emerging"(a,b,c) です。
[I. Currents] 静から強への変化、そして暗鬱と激しさの対比、ロングトーンのバックグラウンドと表出する短旋律、空間とクラスター音塊、そんな流れです。中盤では'祈り'を感じる静空間、後半はそこに生命体が現れた様な緊張感を作り出します。

[II. Emerging] 冒頭 明るい森の中の様なサウンド・イメージに変化して変奏曲的なバックグラウンドとソロが幻想的な空間を構成します。clには技巧パートも準備されていて全体は激しいパートとのコントラストです。特殊奏法も使われますが技巧をひけらかす事はありません。

[III. Waves] パートII.の流れを引き継いでアタッカで入ると 直ぐに激しい反復音塊に発展。シャリーノの様な面白いグリッサンドなどの音表現を上手く織り混ぜながらも基本は反復変奏で構成されますね。中後半の怒涛さは凄いです。



協奏曲と言うよりも今の時代の標題音楽と言った風でしょう。音楽で風景やストーリーを作って、映像補填の音楽とは違いますね。
ただ表現的な前衛性は低く、お約束の "心地良い統一主題を排除 | 全体は幽幻で反復変奏 | 静烈のコントラスト付け" が明確な機能和声の音楽です。

このあたりが今の時代のクラシック音楽のメインストリームの一つになるのでしょう。ポリフォニカルで調性逸脱の自由度が見つからないのは少々残念ですが。





3'ほどのEXCERPTで、Baltic Sea Festival 2018 初演です



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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