fc2ブログ

ヴァイオリンとピアノで聴く『Ukraine - Journey to Freedom』8人のウクライナ現代音楽家


Ukraine - Journey to Freedom
(Solomiya Ivakhiv: vn, Angelina Gadeliya: pf)
ウクライナの近現代音楽家のヴァイオリン(ソロミヤ・アイヴァクヒヴ)とピアノ(アンジェリーナ・ガデリヤ)のDuo曲を並べたアルバムです。

年代的には1895-1975年生まれの作曲家8人ですから、ウクライナの近代から今の現代音楽までが網羅されていると言う事になります。欧前衛音楽で言えば黎明期2曲、最盛期から停滞期が3曲、21世紀の楽曲3曲というバランスも嬉しいですね。(旧ソ連圏だったのでそれに追従していたわけではありませんが…)







1. Two Pieces (1919)
  [Viktor Kosenko, 1896-1938]
ヴィクトル・コセンコはプロコフィエフとショスタコーヴィチの中間年代ですね。ピアニストでもあったためかピアノ曲が知られる様で、楽風は後期ロマン派と民族音楽和声や旋法と言った流れだそうです。
 I.では僅かに不協和音を効かせますが、美しい流れで民族和声+後期ロマン派の音楽です。特にII.は舞踏風でこの時代らしい心地よい民族和声の音楽になっています。


2. Hutsul Triptych (1964-65)
  [Myroslav Skoryk, b.1938]
ミロスラフ・スコリクはウィーンで習い、モスクワ音楽院でもD.カバレフスキーに師事しています。年代的には欧前衛最盛期でしょう。
 ちょっと仏印象派にも似た流れは全音音階でも使っている様な気配がありますね。流れは変奏曲的でバックに回ったpfは短旋律の反復が強く執拗です。確かに旧来の音楽から外れた流れは感じますが、旋律感は明瞭で前衛とまでは行きませんね。ここでも民族和声の舞踏が入ります。


3. Muzýka - Musician (1974)
  [Ivan Karabits, 1945-2002]
イヴァン・カラビツはキエフ音楽院で習い、上記のM.スコリクに師事していますね。
 ヴァイオリン・ソロ曲です。ピチカートやダブルストップを使いながら、曲調はメリハリでそのベースはやはり民族音楽和声です。それを使った独特な流れはモードと言い換えても良いかもしれません。ちょっと興味が湧きますね。


4. Sonata (1926)
  [Borys Lyatoshynsky, 1895-1968]
ボリス・リャトシンスキーは、調性からの逸脱を模索しつつソ連の締め付け時期は国民楽派も取り入れています。キエフやモスクワの音楽院で教鞭もとっており、門下生にV.シルヴェストロフがいますね。
 調性と無調を跨ぎながら、激しい出し入れ、濃い流れ。表現主義的な音楽ですね。この当時の欧前衛を鋭く盛り込んだと言うイメージかもしれません。三楽章の構成(速-遅-速)は旧来的で、II.の緩徐は美しいです。


5. An Episode in the Life of a Poet (2014)
  [Alexander Shchetynsky, b.1960]
オレクサンドル・シェチンスキーはソ連時代にウクライナで習った後、ポーランドに留学しています。前衛技法だけでなく教会旋法を生かした合唱曲も得意としているそうです。
 伴奏のpfは印象派の様な、そこでのvnは少し調性を逸脱する流れも作ります。そこで作られる浮遊感は流れが激しさをましても生きていますね。前衛性はありますが、今の時代の曲なので当然レベルではあります。最後(コーダ?)は民族和声の舞踏が登場します。


6. Post scriptum Sonata (1990)
  [Valentyn Silvestrov, b.1937]
ヴァレンティン・シルヴェストロフは最もビッグネームのウクライナ現代音楽家ですね。スタイルは前衛から機能和声回帰が明確で、この曲は後者です。
 part I.冒頭からシルヴェストロフらしいスローで美しい調べで入って来ます。楽章内の構成も例によってソナタや三部形式と言った風の組合せが明瞭ですから安心して聴けますね。I.は二つの主題のソナタ(コーダ付き)、II.は第一主題のIII.は第二主題の変奏曲でしょう。多分w


7. Angel's Touch (2013)
  [Yevhen Stankovych, b.1942]
イーヴェン・スタンコヴィチはキエフ音楽院で上記のB.リャトシンスキー、M.スコリフに師事しています。
 緩徐曲で幽幻な流れから強弱の出し入れ、そこに薄めの調性が存在しています。まさに今の時代のクラシック音楽でしょうね。これが1.の様に100年前となれば聴き方も変わるかもしれません。


8. Capriccio (2014)
  [Bohdan Kryvopust, b.1975]
ボーダン・クリヴォプストは作曲家とピアニストとして音楽院を卒業、ピアニストとしての活動も多いそうです。
 力感ある出し入れの強さがある機能和声の音楽で、明瞭な主題旋律がない今の時代のクラシック音楽です。この88年前に4.があるとちょっと微妙な印象ですね。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  数曲を除き聴く事ができます



8人の音楽家で一気にウクライナの音楽が見渡せるアルバムです。特徴的なのは20世紀の東欧らしい民族音楽和声が中心に存在する事でしょうか。21世紀に入るとやや特徴が薄くなって来ます。

面白いのは3. 4. でしょう。特に4.は二人の演奏の明瞭な音の鳴りがフィットしていますね。ただ全体的には演奏にもう少しソフトなタッチの陰影が入ると表情が豊かになる様な…



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kokoton

by kokoton
.

    

カレンダー
08 | 2022/09 | 10
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます