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ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard)の オペラ「反キリスト, Antikrist」



デンマークの近現代音楽家ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard, 1893-1952)、三連続インプレの最後は唯一の歌劇『反キリスト, Antikrist』(英:Antichrist, 1921–23 rev.1926–30)です。終末思想の刺激的なタイトルとストーリーで台本も本人作、P.E. Benzonの同題の詩が元になっていて一部引用されています。初稿を王立デンマーク劇場に持ち込みましたが台本の時点で却下されたそうです。

Revisedで大きく書き直されて"反キリスト"は舞台に登場しなくなり、いわゆる筋書きも無くなってソリストは '神秘の精神' や '絶望' と言った象徴・概念になっています。それでも受け入れられず、初演はランゴーが亡くなって28年後の1980年でした。




公式PVです



プロローグと二幕六場、ソリスト10人、約1時間半。デンマーク語ですから、英字幕でもないと厳しいですw (日本語字幕はありません)

地下から現れた"反キリスト"が世界を堕落の終末へ向かわせるが、最後は神に滅ぼされる 』そんな感じです。

■第一幕
【プロローグ】悪魔'ルシファー'が"反キリスト"をこの世に引き出し、'神(の声)'が活動を許可します。
【一場】'神秘の精神'がその時代の精神を歌い、'神秘の精神のエコー'が新しい世の到来を告げます。
【二場】'素晴らしい事を告げる口'が終末論への導きを歌います。
【三場】'絶望'が時代の精神を強調する落胆と無気力を歌います。
■第二幕
【四場】'偉大なる娼婦'と'緋色の野獣'が欲望・快楽・エゴを宣言します。
【五場】'偉大なる娼婦' '嘘' '憎み' が世界の滅びを巡り議論を戦わせます。
【六場】'神秘の声'は"反キリスト"とその行為を呪い、'神(の声)'が滅します。



(左:DVD 右:BD)



1. 音楽
重厚なプロローグのプレリュードは後期ロマン派、それもワーグナーの様な印象ですね。ランゴー得意の弦の跳ねるようなピチカートも登場します。
一場冒頭・他で極僅かに不協和音が入りますが、基本的に機能和声音楽です。得意のオルガンも象徴的に鳴り響き、処々の行進曲風の流れはマーラーが浮かびます。
流れにはスケルツォやアンダンテ、アレグロを明瞭に感じるパートもあって、後期ロマン派の管弦楽ベースになっていますね。


2. 演出
これ以外を見た事がないので、特異性はわかりませんが、前衛的な設定はありません。設定は教会のイメージですね。
外から現れた'ルシファー'が一幕では常時舞台で動作の仕切りを入れます。二幕では'偉大なる娼婦'が十字架に晒されて滅します。そこに'ルシファー'が出現し最後は'神の声'に追われます。
'ルシファー'はrev.で削除された"反キリスト"を、'偉大なる娼婦'は終末思想を現しているのかもしれません。


3. 舞台・衣装
舞台はシンプルで机と椅子が配置されているだけです。壁際には大型モニターの様な鏡、キリスト像も置いてあります。教会のイメージでしょう、衣装も黒をベースとしてシンプルです。四場のみ舞台を赤くライティングしていましたね。


4. 配役
'ルシファー'はバス・バリトンですがテノールの様な軽さで少々イメージが違いました。また通して役割が高かったですね。
'神秘の精神'と'神秘の精神のエコー'は伸びやかに明るく時代が変わる事を互いに歌いますね。重唱にはなりませんが、聴かせてくれました。

'偉大なる娼婦'のニールントは歌唱力・演技力含めこの舞台の主役でした。一人赤い衣装も胸をあらわに終末の様相を歌い上げています。'緋色の野獣'も派手なファーを纏って欲望を熱唱し、一場とこの四場が聴かせ処でしょう。


後期ロマン派の重厚な音楽のオペラが楽しめました。重唱も無ければ明確な役柄の関連性も避けているので、演奏会形式でも楽しめそうですね。

問題はキリスト教ベースで終末論的な内容でしょう。宗教観が明確なので、キリスト教徒でない自分には本質は覗けなかったと思います。残念ですが。



【配役】
 ・ルシファー:ステーン・ビリエル [Sten Byriel] (bas-bar)
 ・神の声:モーテン・スアバレ [Morten Suurballe] (narrator)
 ・神秘の精神:アンネ・マーグレーテ・ダール [Anne Margrethe Dahl] (sop)
 ・神秘の精神のエコー, 神秘の声:ヘレーネ・ギェリス [Helene Gjerris] (mez)
 ・素晴らしい事を告げる口:ポウル・エルミング [Poul Elming] (ten)
 ・絶望:スサネ・レースマーク [Susanne Resmark] (mez)
 ・偉大なる娼婦:カミッラ・ニールント [Camilla Nylund] (sop)
 ・緋色の野獣:ジョン・ケティルソン [Jon Ketilsson] (ten)
 ・嘘:ショニー・ファン・ハル [Johnny van Hal] (ten)
 ・憎み:ヨン・ルンドグレン [John Lundgren] (bar)

【管弦楽・合唱】Danish National Symphony Orchestra, Danish National Choir
【指揮】トーマス・ダウスゴー [Thomas Dausgaard]
【演出】スタファン・ヴァルデマー・ホルム [Staffan Valdemar Holm]


収録:2002年8月29, 30日, 9月2日


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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