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スザンナ・マルッキの表現力が光る「ベーラ・バルトーク:青ひげ公の城」

近年のマルッキは目が離せませんね。同じBISのバルトーク「かかし王子・中国の不思議な役人」も良かったですし、CD化はされていませんがロサンゼルス・フィルとは素晴らしい「マーラー第5番」を披露しています。


青ひげ公の城 Bluebeard's Castle
(ベーラ・バルトーク, Béla Bartók 1881-1945)
初期作品(1911, Op.11)で唯一のオペラ(一幕/1時間)、幽玄でミステリアスな曲です。各部屋(パート)に見られる血の問題やハンガリー語の問題はありますが、対訳等で基本的なストーリーがわかっていれば楽しめる好きな楽曲です。

■以前インバル/フランクフルト放送響、ブーレーズ/シカゴ響との比較も残してあります。最後に比べておきましょう。

演奏はスザンナ・マルッキ[Susanna Mälkki]が主席指揮者を務めるヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団。青ひげ公はミカ・カレス[Mika Kares, baritone]、ユディットはシルヴィア・ヴェレシュ[Szilvia Voros, sop.]です。







1. プロローグ〜オープニング
ゲーザ・シルヴァイの口上は落ち着いて淡々としています。カレスの青ひげ公は朗々としたバリトンで押しが強い感じ。ヴェレシュのユディットは美しいソプラノで若々しさが強いですね。演奏はディナーミクを利かせています。

2. 第1の扉 [拷問部屋]
冒頭を速く緊張感を強く入れてユディットの驚きを上手く表現しています。朝の光からユディットの落ち着いた歌いで次の扉の鍵を要求するのがわかりますね。

3. 第2の扉 [武器庫]
ここでも光が入ると流れが落ち着いてストーリーの展開が明瞭に作られます。ソロの二人も表現バランスがオケとフィットしてイイですね。

4. 第3の扉 [宝物庫]
ここまでの扉は類型的な構成になっていて、この扉が一番短く(2'台)淡々とした流れです。

5. 第4の扉 [秘密の庭]
主題の変奏が続き、ユディットと青ひげが伸びのあるソロを絡める聴かせ処はいいですね。そこからオケ強音パートに入って緊迫感を上げて青ひげが扉を開く様に示唆する様子を音で感じさせます。

6. 第5の扉 [領土]
ここから3パートがこの曲のメインでしょう。冒頭のユディットの驚嘆をオケが力強く消し込み、青ひげは主題を背景に朗々と歌い、ユディットの静のソプラノと見事に二人の対比を見せますオケは強めにコントラストを付けますね。

7. 第6の扉 [涙の湖]
この曲のメインです。入りからオケはユディットの疑惑(前妻たち)を感じさせる陰鬱さを奏でます。細かな音色の表現力が上手く、目の前に舞台がある様な印象を受けますね。ユディットは気持ちを殺して淡々と、青ひげの少し引いた気配も上手いです。後半ユディットが疑惑を問い詰める緊迫感と青ひげの絶望感のコントラストも見事に決まります。

8. 第7の扉 [妻たち]
6の扉の延長上の流れから語る青ひげの説得力と勝利とも思えるバリトンが聴けます。ユディットも揺れる気持ちを歌いますが、二人のフィット感がありますね。ソロ二人は重唱も含めてこのパートが見事です。全てを受け入れるユディットから最後の青ひげの呟きは、そのシーンが浮かぶ様ですね。



マルッキらしい舞台情景が浮かぶ様な表現力が発揮されていますね。ディナーミクを使ったコントラスト付け、二人のソロも陰鬱さよりも舞台映えのvoiceを感じてそれにフィットしています。オケが強めなのも実舞台に近い印象を受けますね。

所有盤と比較すると
【ブーレーズ】ユディットが強く、明瞭で濃厚
【インバル】青ひげ公がサイコパスで、静で陰鬱
【マルッキ】バランス良いソロ二人、ストーリー性強調

情景が見事に表現されるマルッキ、捨てがたいインバルの官能的陰鬱さ、そんな感じでしょうか。一枚と言われたらこのマルッキかもしれません。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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