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藤倉大 オペラ「アルマゲドンの夢」2020年11月18日 at 新国立劇場 under COVID-19


ボンクリで現代音楽を楽しませてくれる藤倉大さんの新作オペラです。そして新国立劇場は昨年の西村朗さんと芸術監督の大野和士さんの「紫苑物語」が素晴らしく、行かない理由が見つかりませんでした。大野さんは昨年 都響との素晴らしい「グレの歌」でも演出力を披露してくれましたね。


18nov2020Armageddon.jpg
"A Dream of Armageddon"


全9場, 1時間40分, インターミッションなし, 英語(日英字幕)上演。コロナ禍の東京、海外メンバーも揃って来日、オーディエンスは40%ほどでした。





音楽
藤倉さんの音楽ですから調性の薄さを生かした洗練ですね。前衛実験系とは距離を置く藤倉さんらしさで、楽曲が心象風景にとても合っている感じです。トリル・トレモロ反復変奏が多かった事、四拍子の行進曲があった事など意外性もありましたね。
やや調性色が強まって エレクトロニクスが無くなったのは少し残念だったかもしれません。(先進性を軸足にライヴエレクトロニクスを入れたら更に面白かった様な)

演奏も大野さん(東京フィル)は予想通りのメリハリ、間違いなくステージを盛り立てましたね。


演出
初演ですから、今の時代のオペラ演出で まず気になる原作からの読み替えや逸脱は当然ありませんね。

グロテスクや理解不能な前衛性は無く、時代設定は現代(20世紀中盤?)になるでしょうか。プロジェクション・マッピング(PM)や暗さを中心とした今の時代らしい設定で、モノトーンからカラフルまで色彩を生かしています。テーマとなる"現実と夢"も、通勤電車の具体風景とPMやミラーといった対比にしていましたね。

素晴らしかったのはラストの少年のアーメン。ややせわしない流れから、最後はミサの様に鎮めてこれでとどめを打った感じでした。神が語られても救済感がないのは不思議?!


舞台・衣装
舞台はシンプルながら巨大な衝立が設定されてスクリーンやミラーとなっていました。全面スクリーンも時折使われて大きなプロジェクションマッピングが印象的でしたね。ついついそちらに目が行ってしまうくらいに使われていましたが邪魔にはなっていませんでした。舞台の奥行き感が生かされた上手さもありましたね。

衣装は前述の近現代風、合唱団メンバーには全身真っ白やファンタジーな非現実的衣装が配されます。これも今の時代らしい設定でしょうか。


配役
【男性陣】テノールのP.タンジッツ(クーパー・ヒードン役)は声も良く出て演技も映えましたが、やや一本調子的な感じがしました。S.カリコ(ロスコー/イーヴシャム)は思いのほか出番が少なかったです。
望月さん(歌手/冷笑者)はなんといっても"柳の歌"での存在感でしたね。間違いなく一つのハイライトシーンでした。女装の歌手はピンときませんでしたがw

【女性陣】J.アゾーディ(ベラ・ロッジア役)はテノールのタンジッツのミラーの様な印象でした。加納さんのインスペクターが声量も素晴らしく聴かせてくれましたね。テノールとソプラノがやや変化に乏しい感じがしたので、日本人二人が頑張った印象でした。

新国立劇場合唱団も存在感を見せましたね。いきなりのアカペラに愕きましたし、多メンバーでサークル(兵士)の存在感もよかったです。



【後日記】当日(11/18)のダイジェストです



今の時代のオペラを舞台いっぱいに楽しめました。ディストピア時代への警鐘と言った本オペラの主題・主張、それを表現する音楽・舞台。ストーリーと表現力がフィットして、すぐに惹き込まれてしまいました。

少し残念なのは100分と言う短い中に内容が濃いので慌ただしく感じた事でしょうか。また、ディストピア的な恐ろしさをパロディっぽくしていたのは、最後に神を歌う深慮な文面があったから?!

全体としては大野さんカラーを感じましたね。


近年作で比べると、見栄えする舞台とストーリー性なら「紫苑物語」の方が素晴らしく、訴えかける心象なら細川俊夫さんの「松風」「Stilles Meer 海、静かな海」が心に沁みると思います。方向性が違うと言ってしまえば、それだけの事でしょうが…
コロナとは言えカーテンコールが、あまりにもあっさりと静まってしまったのは驚きでした。



【出 演】
 ・クーパー・ヒードン:ピーター・タンジッツ [Peter Tantsits]
 ・フォートナム・ロスコー/ジョンソン・イーヴシャム:セス・カリコ [Seth Carico]
 ・ベラ・ロッジア:ジェシカ・アゾーディ [Jessica Aszodi]
 ・インスペクター:加納悦子 [Etsuko Kano]
 ・歌手/冷笑者:望月哲也 [Tetsuya Mochizuki]

【台 本】ハリー・ロス [Harry Ross]
【作 曲】藤倉大 [Dai Fujikura]
【芸術監督/指揮】大野和士 [Kazushi Ono]
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 [Tokyo Philharmonic Orchestra]
【合 唱】新国立劇場合唱団
【演 出】リディア・シュタイアー [Lydia Steier]


2020年11月18日 新国立劇場

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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