FC2ブログ

2006年ザルツブルク音楽祭 『ZAIDE・ADAMA, ツァイーデ・アダマ』モーツァルト と チェルノヴィン



ツァイーデ・アダマ  (ZAIDE・ADAMA)
モーツァルト生誕250年を記念にザルツブルク音楽祭で全22作品の上演をDVDにまとめたシリーズ「MOZART 22」の第9弾「ZAIDE・ADAMA」(2006年)です。

この作品はモーツァルトの未完作品"ZAIDE"に新たに作られた"ADAMA"を入れて再構築しています。

ZAIDE(1780)は「後宮からの逃走 (1782)」の元となった作品でタイトルも見つかっていないので主人公の名前をとっていますね。


2006ZaideAdama.jpg
(映像は演出のClaus Guth氏のwebよりお借りしました)



ハヤ・チェルノヴィン Chaya Czernowin
再構築を担当した前衛女性現代音楽家チェルノヴィンは、ザルツブルク音楽祭の演出家ペーター・ルジツカ(Peter Ru­zicka)から委嘱され、脚本もZAIDEのヨハン・アンドレアス・シャハトナー(Jo­hann An­dreas Schacht­ner)を元にチェルノヴィンが担当しています。ちなみにADAMAとはヘブライ語で地球(earth)の意味だそうです。(基本的にはチェルノヴィンの作品と言っていいでしょう。スコアをリリースしているSCHOTT社も作曲者は分けていますがチェルノヴィン作品としています)


チェルノヴィンは次の様に言っていますね。

"ADAMAはモーツァルトのZAIDEの物語の対位的になっていて、自分がこの新たな作品の完全性に貢献したのは伝統的アリアではなく、フラグメントやピースをZAIDEのエレメントと交互に時折ラップする様にする事です。その意味で、ADAMAはZAIDEの鏡と言えるでしょう"

事実チェルノヴィンの言う通り、全29シーンに細分化されて ツァイーデが15シーン(全曲)、アダマが13シーン、一つの舞台で二つの流れが折り重なって演じられます。(オケも指揮者も出演者もそれぞれ別です)


■ 物語の構成 ■
"ZAIDE"にはZaideとGo­matzの二人の恋人がいて、それは中近東の想像上の過去になります。"ADAMA"にも男女二人の恋人がいて、今日の中近東での宗教的かつ政治的な闘争に巻き込まれています。
時代が異なる恋人の関係を、モーツァルトの政治や文化の衝突で監禁された(Zaide)不運の愛と、イスラエル女性とパレスチナ男性の暴力で引き裂かれた愛で対比しています。ADAMAの配役には名前がありません。女・男・父と言った具合です。
(ちなみにチェルノヴィンはイスラエル出身。また、今回の演出は地域性を見せません)





音楽
ADAMAのシーンはモロに前衛現代音楽で、ノイズ系を含む前衛音楽に無調の旋律を歌います。もちろんZAIDEは古典音楽とアリアがあるので、その対比になっています。

一般的に前衛現代音楽家でもオペラの歌唱は調性+不協和音レベルになるのが殆どですが、チェルノヴィンは違いますね。歌唱自体に難しい無調旋律を与えています。これは素晴らしいですね。

オケ配置はZAIDEサイドはオケピットですが、ADAMAサイドは舞台の右で舞台道具の扉のガラスから見る事が出来ます。


演出
これが初演ですから比較するものはありません。配役の他に、大きな顔の被り物の人物が舞台に存在します。また血を見せるシーンもあって少しアヴァンギャルドですね。ZAIDEとADAMAそれぞれの配役は常に舞台に居てそれぞれ協調する演技設定になっています。二つのストーリーのミラーリフレクションにしていますね。

全体としては心象表現の強い前衛演出でZAIDEが持つロケーション的ストーリーを表現する事はありません


舞台・衣装
舞台は狭いですね、オケがいますから。白い部屋、そこに5倍くらいの大きさの家具が配置されて、人物が小さく見える様になっています。ADAMAでは全面にプロジェクション・マッピングが施されたりします。衣装はシンプル現代的です。


配役
【ZAIDE】Gomatzのレティプーはテノールものびのびと演技も熱がこもっています。Zaideのエルドマンはソプラノもよく声が出て、愛らしさが表現されていました。良い演技とテノールを聴かせてくれたのはSlimanのエインズリーで第二幕を締めましたね。曲があまりにもモーツァルトっぽ過ぎでしたがw

【ADAMA】二人は無調で難しい歌が入ります。心地良い旋律は存在しない訳で、そこは配役の良し悪し外です。演技は常にシリアスな気配が表現されて二つのストーリーの合成に貢献していますね。



ADAMAが完全に前衛現代音楽で出来上がっているのが驚きです。それが出来たのは古典の流れと前衛の流れをタイミング良く入れ替える構成にしたからでしょう。

その素晴らしさを構築したのがチェルノヴィンと言う事になりますね。クラウス・グースの演出も古典ZAIDEを前衛的にして統一感があり、全体として前衛オペラです。

今や前衛演出全盛ですからモーツァルト・ファンの方も違和感は少ないでしょうし、前衛現代音楽ファンとしてはもちろんオススメの作品です!!



【出演者】
[ZAIDE]
 ・Mo­jca Erd­mann, Zaide
 ・Topi Le­htipuu, Go­matz
 ・Jo­han Re­u­ter, Allazim
 ・John Mark Ains­ley, Soli­man
 ・Ren­ato Gir­o­lami, Os­min
[ADAMA]
 ・Noa Fren­kel, Wo­man
 ・Yaron Windmüller, Man
 ・An­dreas Fisc­her, Fath­er
 ・Paul Lorenger, Dan­cer
 ・Bernd Grawert, Act­or

【オケ・指揮者】
[ZAIDE]
 ・Moz­ar­teum Or­ches­tra Salzburg, Ivor Bol­don(con­d.)
[ADAMA]
 ・Aus­tri­an En­semble for New Mu­sic, Jo­hannes Kal­itzke(con­d.)

【演出】
 ・Claus Guth


ザルツブルク音楽祭 2006年8月15-19日

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kokoton

by kokoton
.


    


カレンダー
03 | 2021/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます