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アウリス・サッリネン(Aulis Sallinen)のタンゴをイメージした「室内作品集」



アウリス・サッリネン (Aulis Sallinen, b. 1935)
前回インプレのP.H.ノルドグレン同様6年ぶりのインプレとなるフィンランドの現代音楽家A.サッリネンです。なぜ6年ぶりかと言うと北欧現代音楽ですが前衛ではないからですね。

ノルドグレンよりも9歳年上で、同じ様にJ.コッコネンに師事しています。新古典主義➡︎十二音技法➡︎調性を生かした新ロマン主義、と言った方向性は類型的になりますね。十二音技法も実験音楽的方向性(三度・五度や反復の否定といった)はとっていませんね。


 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


Chamber Musics III, IV, V Virtuosi di Kuhmo
興味深いタンゴにインスパイアされた作品集です。何やらフィンランドではタンゴが人気なのだそうです。サッリネンのタンゴと言う事で随分前に購入して、今回初めて聴きますw

演奏はヴィルトゥオージ・ディ・クーモ, 指揮とピアノはラルフ・ゴトーニ。チェロはアルト・ノラス、アコーディオンはミカ・ヴァユリュネンです。







1. Introduction and Tango Overture, Op. 74b (1997)
  for Piano & String Orchestra
無調点描音列配置的なpfから入って、弦楽が寄り添う様に現れます。弦楽は調性の薄さを生かした幽玄さですね。気がつくとpfも無調ながらも旋律感のある流れになっています。全体的に柔らかい幽玄さは新ロマン派的な流れを感じるでしょうか。進んで後半に入るとpfもオケもタンゴ和声を明らかにして、激情的な舞踏が浮かぶ感じです。流れの変化は楽風変化をトレースしている様ですね。


2. Chamber Music III, Op. 58 (1986)
  "The Nocturnal Dances of Don Juanquijote", for Violoncello solo & Strings
ドン・キホーテ(ドン・ファン)をモチーフにしていて、明らかに機能和声の標題音楽です。チェロがドン・キホーテを表してよく歌っていますが、どう聴いてもR.シュトラウスの"ドン・キホーテ"のパロディかオマージュで楽しい一曲になっています。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Amalie Stalheim のチェロですね



3. Elegy for Sebastian Knight, Op. 10 (1964)
  for Violoncello solo
ウラジーミル・ナボコフの「セバスチャン・ナイトの真実の生涯」を元にして作られた十二音技法をベースにした4'半のチェロ・ソロ曲です。その小説自体が前衛ですね。
一番古い29歳の作品で、調性の音楽です。十二音技法や初期セリエルに見られるパンクチャリズムはなく、ありげな無伴奏チェロ曲と言って良い感じです。


4. Chamber Music IV, Op. 79 (2000)
  "Metamophoses of Elegy for Sebastian Knight", for Piano solo & Strings
上記3.のメタモルフォーゼ(変身)ですね。36年の隔たりで混み入った音楽構成になっています。動機は生かされていて、それが変化していくのが"Metamophoses"という事でしょう。ポリフォニーというよりも各楽器が対位的な流れから入って、ホモフォニーに変化します。調性回帰はハッキリ明確で、ほぼ機能和声の音楽です。時折不協和音が感じられる程度でしょう。新ロマン主義と言って良い美しさと構成の見事さが印象的ですね。


5. Chamber Music V, Op. 80 (2000)
  "Barabbas Variations", for Accordeon solo & Strings
タイトルのキリスト教にまつわる話は割愛です。アコーディオンの鳴りが良く、一瞬オルガンかと思いました。新ロマン派というか、後期ロマン派というか、そんな流れですね。上記前作(#4)と構成感はよく似ていますが、処々でタンゴ和声が味わえるのが違いですね。(タンゴ色が味わえるのは1. 5.です)



全ての曲が標題音楽の様になっていますね。その中にサッリネンの楽風変化、十二音技法から調性回帰、を織り混ぜています。

北欧色を排除しつつサッリネンを味わえる楽しい一枚です。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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