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「Vienne 1900 Le Salon De Musique」20世紀初め、ウィーン・サロンの音楽


Vienne 1900, Le Salon De Musique
本ブログのメインとなる前衛現代音楽の夜明け、1900年ですから世紀末ウィーンの音楽の方がピッタリです。音楽の中心地でハプスブルク帝国(オーストリア=ハンガリー帝国)の首都ウィーン。斜に構えた音楽関係者、新しい音楽、と言ったイメージでしょうか。

見てわかる通りで今回の音楽家5人は互いに人間関係が交錯しているのも特徴です。世紀末ウィーン音楽家が並ぶ今回の顔ぶれ、これにフランツ・シュレーカー(1878-1934)が入れば完璧!?
個人的に興味深いのは最後まで前衛方向へ向いていたヴェーベルンが入っていない事でしょう。


そして、何と言っても演奏者の豪華さが楽しみです。全員が揃うのは最後の一曲です。(恥ずかしながらvcだけ知見がありません)

 ・樫本大進 (ヴァイオリン)
 ・エマニュエル・パユ (Emmanuel Pahud, フルート)
 ・ポール・メイエ (Paul Meyer, クラリネット)
 ・ズヴィ・プレッサー (Zvi Plesser, チェロ)
 ・エリック・ル・サージュ (Éric Le Sage, ピアノ)

入手理由は近現代音楽と樫本さんの組合せです。どんな表情を見せてくれるのでしょう。





v1900pmkps.jpg
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エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト
(Erich Wolfgang Korngold, 1897-1957)
マーラーに天才と言われたオーストリア人音楽家です。ツェムリンスキーにオーケストレーションを見てもらったり、マーラーからのアドバイスを受けたりしています。ナチスから逃れる為、後年は米国に渡り映画音楽家として活躍しました。

ピアノ三重奏曲 Op. 1 (1909-10年)
 四楽章、pf, vn, vc, のトリオです。第一印象は三人の音の主張で、色濃くハードな演奏になっています。vnの鳴りの太い音色がいかにも樫本さんらしくて、聴き応えがありますね。vcが負け気味ですw

楽章構成は古典的な "アレグロ-スケルツォ-ラルゲット-フィナーレ" で、曲調は新ロマン主義的な印象と後期ロマン派の美しさが共存する様な感じです。主動機の変奏・反復的が印象的な1st mov. 飛び跳ねるpfとvnの変奏変化の2nd mov. 緩徐楽章で調性の薄さを感じる3rd mov. 力感と一楽章回帰的な4th mov. と言った感じです。2nd mov. の変化の多い構成と、際どい調性に対位的な3rd mov.が面白いです。



アレクサンダー・ツェムリンスキー
(Alexander Zemlinsky, 1871-1942)
オーストリアの音楽家で、シェーンベルク, マーラー, コルンゴルト, が師事しています。アルマ・シントラーがマーラーと結婚する前の恋人で、妹がシェーンベルクと結婚しているので義兄弟です。

クラリネット三重奏曲 ニ短調 Op. 3 (1896年)
 三楽章形式、cl, vc, pf, のトリオです。演奏はピアノの主張が強いです。ついクラリネットの音を探してしまいます。力感が強い演奏はピアノが煽っているから、と言った気もしますw

こう並べて聴いてみると、師事していた以上にコルンゴルトはツェムリンスキーの影響を受けたのではないかと感じてしまいます。構成は古典的で "アレグロ-アンダンテ-アレグロ" ですが、曲は新ロマン主義的な色合いを感じます。緩徐楽章でも調性の微妙な印象も感じられます。3rd mov. で見せるvcの速いピチカートはJazzyな新しさを感じます。



グスタフ・マーラー
(Gustav Mahler, 1860-1911)
このブログのメイン・ターゲット、言わずと知れたウィーンで活躍した指揮者・音楽家です。歌曲をフルートとピアノために編曲(コーンフェイル b.1979)したものです。二曲とも3'ほどの小曲です。

ラインの伝説, "子供の魔法の角笛"より (1892-98年 org.)
 マーラーの歌曲の印象とはかなり異なります。三拍子のホモフォニーで洒脱ささえ感じます。時代感が遡る印象にはなりますが。


いつも思う、子供たちはちょっと出かけただけなのだと, "亡き子をしのぶ歌"より (1901-04年 org.)
 こちらの方がpfとflが対位的になっているパートが多く、時代的にはフィットしている感じがします。ただ、ここに本当にマーラーを入れる、トランスクリプションまでして、必要があるのかは疑問ですが…



アルバン・ベルク
(Alban Berg, 1885-1935)
シェーンベルクに師事し、ともに新ウィーン楽派です。"ルル" や "ヴァイオリン協奏曲" で人気の現代音楽家、方向性もヴェーベルンに比べるとシェーンベルクに似て最後は調性回帰しています。

ピアノ・ソナタ ロ短調 Op. 1 (1907-08年)
 一楽章ですがソナタ形式の三部に構成されて、調性は薄くなります。半音や全音音階での不協和音が詰まっています。初演での聴衆の印象は先進すぎて良くなかった様ですが、旋律感はあるので今なら違和感なく受け入れられるレベルかと。
ル・サージュのpfは表情を強く表現するので新ロマン主義風の印象にもなります。


クラリネットとピアノのための4つの小品 Op. 5 (1913年)
 5年の変化で明らかに無調作品となっています。Op. 7が"ヴォツェック"ですから。それでもベルクらしいのは旋律感がある事でしょう。1'〜3'強の小曲四楽章構成です。可能性を感じても、この先が行き止まりだとわかっていますからねェ…


アダージョ, 室内協奏曲より [cl, vn, pf, 編曲版] (1923-25年)
 十二音技法になる前、既に音列配置にはなっている楽曲です。もちろん無調・点描的ですが、そこはベルクなので不安定ながら旋律が奏でられます。三者はポリフォニーで緩い、緩徐楽章抜き取りなので、流れと関係になっています。とは言え、樫本さんとル・サージュがいるので厳しい音のやりとりが発生します。それが今回のセットの聴かせ処でしょう。



アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schönberg, 1874-1951)
ツェムリンスキーに師事し、マーラー家で音楽論をたたかわせた訳ですから、まさに世紀末ウィーンの音楽世界です。もちろん今回は後期ロマン派から無調への転換期の作品が取り上げられています。

室内交響曲 第1番 Op. 9 (1906年)
 ヴェーベルンによるフルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの編曲版です。処々で"浄夜"の様な調が出現したりと調性軸足ですが、ホモフォニーからポリフォニーを楽器間で激しく行き来交錯します。ハイテンポで強音の流れはこのセットの得意とする処で、素晴らしい緊張感が伝わります。このアルバムのハイライトでしょう。ラストの樫本さんのvnはキレキレです!!



機能和声から初期の無調へ、調性を超える音楽性を模索する方向になっています。タイトルに偽りなし。

演奏は、通して濃厚・力感の室内楽になっています。樫本さんとル・サージュが良いですね。

この時代を聴くのに最高のアルバムでオススメです!!



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テーマ : クラシック
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