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トリオ・アッカント の「Other Stories」ラッヘンマンが歌う "さくら・さくら"の怪


ヘルムート・ラッヘンマンが日本の「さくら・さくら」を歌います。


Other Stories Trio Accanto
ラッヘンマンの84歳から桑原ゆうさんの36歳まで、幅広い年代5人の現代音楽家をリストアップしたアルバムになっています。

ラッヘンマンだけ4曲で、他は一曲づつ。ラッヘンマンは本来の特殊奏法ノイズ系とは全く異なるスタンスで、他は前衛系と言う変則のアルバムですね。

トリオ・アッカント(Trio Accanto)はサックス / ピアノ / パーカッションのトリオです。ジャズを弾かないジャズ・トリオだとか。なんとピアノはニコラス・ホッジス(Nicolas Hodges, ハッジスとも)です!! それで作曲家の中にフィニスィーがいるんですね、きっとw








ヘルムート・ラッヘンマン
(Helmut Lachenmann b. 1935)
今更なので紹介は割愛ですね。言わずと知れた欧エクスペリメンタリズム特殊奏法のイノベイターです。
ちなみにCDでは次の4曲は連続ではなく、他の音楽家の曲の間に挟まれています。

■1. Sakura mit Berliner Luft (2008)
 ラッヘンマンが歌う "さくら、さくら" そのものの日本語の歌です。バックのトリオも邦楽和声で続きながら、西洋和声のインプロビゼーション(風)を挟み込み、調性ver.やJazzモード風の"さくら"を出したりもします。その落差が面白いですね。ただ特殊奏法ノイズはないのでラッヘンマンらしくはないかもしれません。パーカッションは鍵盤打楽器が多いです。2008年こんな事をやっていたんですね。タイトルは"ベルリンの空気で、さくら"ですね。


■3. Marche Fatale (2016/17)
 ピアノ・ソロ曲ですが、バリバリ調性のリズミカルなマーチ風、運動会の音楽みたいに弾んでいます。タイトル通りなのですが、ラッヘンマンのこの洒落がわかる様になりたいですね。


■5. Berliner Kirschblüten (2016/17)
 "ベルリンの桜"、これもピアノ・ソロです。思い切り"さくら・さくら"で入ります。わずかに西洋調性ではあります。でもすぐに行進曲風な変奏に、そして強音を生かした重厚な変奏へと、続いてジャジーな変奏、と言った風に"さくら動機"の変奏で遊んでいる感じです。モードもありますが、調性音楽と言って良いでしょうね。


■11. Sakura-Variationen (2001)
 "さくら変奏曲"で、#1, #5, の元になった曲です。再びラッヘンマンの怪しい日本語の歌から入ります。その後の変奏も邦楽和声ベースから西洋音楽和声を混ぜ、変奏を繰り広げて行きます。まさに"さくら変奏"で、パターンは変えますが一曲目の回帰ですね。(作曲年からいけば逆ですが) 後半は無調混沌を交えるのが違いです。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  残念ながらラッヘンマンの歌でもトリオ・アッカントでもないのですが…
  演奏が弱々しくてCDの方が全然良いですがとりあえず




マルティン・シュットラー
(Martin Schüttler, b.1974)
ドイツの現代音楽家でダルムシュタットやドナウエッシンゲンでの活動がある通り、欧エクスペリメンタリズムです。個人的に気になる1970年代生まれですね。

■2. xerox (2003, rev. 2016)
 静や空の中にキラキラとした音が散りばめられた様な空間音響系で、旋律感は無く"音世界"ですね。duplicatesとあるのでエレクトロニクスも入っていますね。昔のテープで言うと転写ノイズです。キラキラは途中からノイズと共に混沌系のクラスター・サウンドで叫びます。今の時代的で面白いですね。他の作品も探してみようと思います。



桑原ゆう
(Yu Kuwabara, b. 1984)
東京芸大で習い、ダルムシュタットのマスタークラスでも学んでいますね。ハヤ・チェルノヴィンにも師事した事がある様です。

■4. In Between (2018)
 ご本人曰く "二つの異なる時間を統合しようとした" との事です。特殊奏法も入れたノイズ系で、反復の強いポリフォニーでしょう。サックスは執拗に短いグリッサンドを繰り出し、ピアノは高音の速いトリル・トレモロ主体に特殊奏法、パーカッションは音階の無い打楽器でノイズです。面白いのですが累計的な印象が残るかもしれません。



マルティン・スモルカ
(Martin Smolka, b. 1959)
このブログでは久しぶりのインプレとなるチェコの現代音楽家です。プラハのAcademy of Fine Arts in Pragueで学び、ドナウエッシンゲンでも活躍がありますね。

■6. fff (Fortissimo feroce Fittipaldi) (2010)
 タイトル通り強音fffの打撃音的な音の繋がりで、ここでも旋律感は無く"音"ですね。途中から弱音pppになりサックスが船の霧笛の様な音を鳴らします。面白いですね。ラストは冒頭の動機?が回帰します。
子供向けのコンサートに準備されていて、サブタイトルには"フィッティパルディの強音の力"ですからF1ドライバーのエマーソン・フィッティパルディがモチーフになっていますね。そんな曲です。



マイケル・フィニスィー
(Michael Finnissy, b. 1946)
このブログではお馴染みの "新しい複雑性" の現代音楽家ですね。何と言ってもピアノ曲の超絶性で知られる処でしょう。ジョナサン・パウエルやニコラス・ホッジスと言った超絶技巧ピアニストを見出している事でも知られていますね。

■7-10. Opera of the Nobility (2017)
 全4パート、トリオが点描的な音を並べて古いセリエルの印象です。Ia, IIa, はチョコマカ・チョロチョロした音色で動機的旋律感はありますが、反復の印象が強いかもしれません。Ib, IIb, は少し流れるsax音になりますね。
サックスの音が二本聴こえるパートがありますが、特にエレクトロニクスの記述はありませんしAltsaxofon単独記載ですね。



ラッヘンマンの調性系の音楽、他4人の無調の"音"中心の前衛音楽。極端な二方向の音楽がミルフィーユの様に組み合わされてまさに"Other Stories"です

かつ、ラッヘンマンは"さくら"変奏を元にして、特殊奏法ノイズや前衛の音は皆無。CD全体としての面白さは十分に味わえますが、ラッヘンマンの意図する処はさて???…???



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