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杉山洋一さんの現代音楽作品集「子供の情景」の楽しさ


杉山洋一 (Yoichi Sugiyama, b. 1969)
東京出身の現代音楽家で指揮者の杉山さんですね。このブログでは指揮者としては数回登場していますが、現代音楽家としては初めてのインプレです。

作曲は三善晃さん、F.ドナトーニらに師事しています。イタリアのアンサンブルを指揮している事が多いイメージですが、在ミラノで音楽院での教鞭もとっているそうです。



Kinderszenen 子供の情景
近年作品で室内楽集ですね。箏ソロ(1), ピアノ三重奏/声楽(2), 室内楽/エレクトロニクス*(3), ヴィオラ四重奏曲(4), といったヴァリエーションですね。
*エレクトロニクスはTapeで、内容は下記楽曲欄にあります

興味深いのは "4.シューマンのピアノ曲「子供の情景」"のヴィオラ四重奏曲トランスクリプションでしょう。杉山さんがどこまで手を入れているかが興味深いですね。誰でもが知っている"7. トロイメライ"など、どうなっているのでしょう。

1番のキーになる楽曲は"3.アフリカからの最後のインタビュー"(The Last Interview from Africa)で、2011.3.11の津波の犠牲者に捧げられています。







1. 鵠(くぐい)~白鳥の歌 (2015) 十七絃筝のための
曲は師である三善晃さんに捧げられていています。十七絃筝は英語では"17-string bass koto"、通常の13絃の低音側拡張の箏ですね。演奏は日本を代表する現代箏奏者の沢井一恵さんです。

第一印象は、静の流れと絃の"押し"を生かしたグリッサンド&ヴィブラートですね。そして機能和声からの無調であって邦楽和声の香りが処々にある事でしょう。美しい幽玄さを感じる旋律(動機ではないでしょう)も現れます。無調の中に西洋と東洋(和)が混在する面白さが味わえますね。音数の少ないピアノ曲の様な印象で、ラストpart IVだけは音数が増えて広がります。



2. 杜甫二首 (2014) 女声と器楽のための
背景に中華和声を感じます。pfの点描的表現が印象的ですね。part I ではvnとclはロングトーンを多く使ってコントラストを付けて、part IIでは徹底反復になります。そこにsopが力強く入って来ますね。音の跳躍は少ないのですが、楽風的にはセリエル時代の様な流れと言ったらわかっていただけるでしょうか。



3. 五重奏曲 アフリカからの最後のインタビュー (2013)
東京現音計画からの委嘱作品で、指揮者なしのオープン・スコア(楽器指定なしの楽譜、一声部だけ?)でcue指示はありますが個々の演奏者へのフィックスではないそうです。演奏方法は演奏者に任されているのか詳細は不明です。途中でホモフォニーの流れになる際はcueを入れているのがYouTubeでは確認できますね。また、パーカッションはパフォーマーでもあり、演奏しながら歩き回ります。
楽曲のモチーフはアフリカのある部族の朝の祈りで、エレクトロニクスはノイズの他にナイジェリアの環境活動家Ken Saro Wiwaの処刑直前の最後のインタビューがループで入っています。聴こえるのは後半だけですが。

まず驚くのはテープの音(フィールド・レコーディングなのかノイズなのか)がブツブツと途切れながら入ってくる導入部ですね。そしてsaxやtubaが混ざり、perc.とpfが入って来ます。基本動機の短旋律を重ねて行きますね。時にモノフォニーであり、ずれてポリフォニカルな即興的にもなります。テープが割り込んでノイズが全体を支配する事や、徹底反復もありますね。整理された混沌の現代音楽でインパクトある一曲です。下記YouTubeで全貌が観られますが、音だけで楽しむのもアリの楽曲ですね。
インプロビゼーション的パートはフリー・ジャズの匂いもしますね。演奏はもちろん東京現音計画です。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  2013.9.13 杉並公会堂小ホールのLIVEです
  CDの方が音は明確で聴きやすいです




4. シューマン 子供の情景 (2017) ヴィオラ四重奏のための
現代音楽トランスクリプションですから原風景ごと破壊かと思いきや、原曲の持つ美しい動機はしっかりと残されつつ現代ヴィオラSQ曲になっていますね。"変なシューマンだね!?" っていう感じでしょう。多少不協和音が入ってギスギス・トゲトゲしたボウイングにはなっていますが、それ流れを取れば宮廷室内楽の様にも聴こえますね。コンサートでやったら受けそうなイメージで、"7. トロイメライ, träumerei" はそのまま美しいです。ベストトラックは "11. おどかし, Fürchtenmachen" ですね。
演奏は世界的ヴィオリスト今井信子さんの"The Imai Viola Quartet"です。



それぞれ異なる四曲で、杉山さんの楽風が楽しめて、これはオススメですね。現代音楽の楽しさや可能性も覗ける感じです。

一押しはやはり"3. アフリカからの最後のインタビュー"で、素晴らしさからB.A.ツィンマーマンを浮かべてしまいました。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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