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ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(Galina Ustvolskaya) 『交響曲 第1-5番』驚異の個性

前衛現代音楽の流れが停滞にあった1900年代後半、その特異性で出現したウストヴォリスカヤ。超個性的な交響曲を一気に聴いてみましょう。


Composer
ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ
(Galina Ustvolskaya, 1919-2006)
晩年になって知られる様になった旧ソ連、ロシアの女性現代音楽家ですね。1937年レニングラードの音楽専門学校に入り、音楽院に進んで最後短期間はショスタコーヴィチに師事しています。後に音楽院では、B.ティシチェンコやV.キーシンに指導もしていますね。
ショスタコーヴィッチとの話はよく出てきますが、興味ある方はググって下さい。その音楽的影響は初期だけ(1952年くらいまででしょうか)で、開眼した?!中期からは全くその影を感じません。

欧州登場はペレストロイカ以降と遅く、1988年にハイデルベルクで交響曲第4番が演奏されるものの、知られるのは1992年英国のハダースフィールド音楽祭やオランダの音楽祭の後になる様ですね。ピアニストのオレク・マーロフ*(Oleg Malov b.1947)らの支援により、20世紀末にはハイデルベルク, パリ, ウィーンでも話題をさらっています。1997年のザルツブルク音楽祭にも登場していますね。
* 今はロシアの現代音楽を中心に活動。ウストヴォーリスカヤの研究で知られます。

中後期の個性、モノフォニー的で破壊的な"音塊"、は他に類を見ませんね。今でこそ多様性で"何でもあり"になりましたが、当時は孤高の気配でした。今聴いても刺激的ですね。


Album Title | Player
交響曲 第1-5番
ウストヴォーリスカヤの交響曲は全5曲で、初期作品の1番以外にはサブタイトルが付いています。付記しましたが、いずれも宗教性の強さがありますね。

交響曲としては編成が小さくで1番のsmall orchestraからよりコンパクト化して、第4番では驚きの3楽器(+1voice)にまで縮小します。演奏時間も短く 最長の1番で約21'、最短の4番では7'を切ります。全てにvoiceが入っているのも異例ですが、そこにffffffまでのフォルテがクラスター&モノフォニカルに出現します。まさに唯一無二, 他に例を見ないウストヴォーリスカヤの交響曲です。

そしてウストヴォーリスカヤの交響曲と言えば、この"Megadisc"盤ですね。第1番はウラルフィルハーモニー管弦楽団(Ural Philharmonic Orchestra)、2-5番の演奏はサンクトペテルブルク・ソロイスツ(St. Petersburg Soloists)、指揮は共にドミトリー・リス(Dmitri Liss)で キーとなるpfは勿論O.マーロフです。

Megadiscは数多くのウストヴォーリスカヤをリリースしましたが、今はあまり見かけなくなってしまいました。今回は二枚のCDに渡る全交響曲をインプレです。(と言っても曲は短いですが)





(Symphony No.1です。CDは入手難ですが amazon music にはある様です)

交響曲 第1番 (1955)
  for two boys' voices and orchestra
二人の少年のvoiceが入ります。イタリアの文学者/児童文学者のジャンニ・ロダーリ(Gianni Rodari)のTextを使っていますね。Textが入る8パート(全10パート)全てが、ロダーリによる恵まれない環境の子供達の話です。
 管楽器偏重的な楽曲です。先入観で多少のショスタコーヴィチ感があるかもしれませんが、それほどでもありませんね。調性は薄く時代相応の作品になっていますね。pfと打楽器の使い方に後のクラスター的な方向を散見できますね。残念ながら個性は薄く平坦、退屈で興味が湧く作品ではありません




(Symphonies Nos2-5の amazon musicです)

交響曲 第2番, True and Eternal Bliss! (1979)
  for male reciter and small orchestra
TextはGospodin(神), Vechnost(永劫), Istina (真実)の三つの言葉の繰り返しになります。 第1番から24年経っていますね。この後は数年おきにリリースされます。
 いきなりのpfの打音と響にやられます。低く唸る様な暗い音色には不協和音が混ざり、単拍子の(等拍に近い)リズムで打ち鳴らされます。そこに管楽器と打楽器が被ってきます。まだモノフォニー的ではなく、協調的でホモフォニニーの関係です。一呼吸置いて"Gospodin"の祈りが入ります。この迫力がウストヴォーリスカヤですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Reinbert de Leeuw (pf) & Radio Philharmonic Orchestra です
  こちらの演奏の方が、パワフルでウストヴォーリスカヤらしさ炸裂です



交響曲 第3番, Jesus Messiah, Save Us! (1983)
  for male reciter and small orchestra
キリストのText "我を救いたまえ, Almighty, True God, Father of Eternal Life, Creator of the World, save us" が使われています。
 管楽器群の音色の使い方にウストヴォーリスカヤらしさが出てきました。単拍子に近いリズムに乗ってホモフォニーに進みます。太鼓が強烈な連打で中間部を設定するとpfが登場して管楽器の動機をアルペジオで叩きつけます。太鼓が合わせるとpfが強烈な和音を撃ち始めて管楽器との対位的強調で進みます。三部形式らしさがあって、主部回帰しますが強烈なpfがついてきます。


交響曲 第4番, Prayer (1987)
  for contralto, piano, trumpet and tam-tam
アルトと三人の楽器奏者による、タイトルTextの曲ですね。
 単音強音の単拍子(1/4拍子の様な)等拍的な流れが真髄まで削がれています。pfの割れた様な和音を叩き出し、voiceは初めて旋律を作ります。音階のあるpfとtpは時にモノフォニーに時にホモフォニーにと鳴らします。
研ぎ澄まされたウストヴォーリスカヤの音楽を聴く事ができます。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  #4もこの演奏の方が力感があって聴き応えがありますね



交響曲 第5番, Amen (1990)
  for male reciter, oboe, trumpet, tuba, violin and wooden cube
タイトル通りの祈りの言葉です。前曲の奏者3人から5人に増えますが、初めてpfが外されています。ウストヴォーリスカヤと言えばpfですから。
 楽器のシンプル化が進んでシンプルで奇妙なホモフォニーを作ります。そこにvoiceが語りで乗ってきます。第4番で一つの完成を見た楽風がより単純化して次へと進む気配を感じますね。pfがいないのもそう感じさせるかもしれません。



ウストヴォーリスカヤの真髄であるpfを聴くなら第2番がオススメになるでしょう。音楽の完成形ならば第4番と言うことになるでしょうか。

残念なのは本アルバムの演奏が今ひとつパワーに欠ける事。ただ全交響曲を同じ演奏者で聴けるのは現状これしかないので…

もっと個性を毒々しく聴きたい方にはピアノ・ソナタ第6番の狂気をオススメします。ウストヴォーリスカヤと言えばピアノですから。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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