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アンナ・プロハスカ(Anna Prohaska) がソプラノで描く ミルトンの"失楽園"『Paradise Lost』

ジャケットに負けない素晴らしいコンセプトと表現力のアルバムですね。


Player
アンナ・プロハスカ
(Anna Prohaska, b.1983)
ドイツのソプラノ歌手ですね。現代音楽の賞であるハンス・アイスラー賞を受賞したり、オペラや古典だけでなく現代音楽も得意としている様です。そうなるとこのアルバムの構成も納得かもしれません。

プロハスカの個人的印象は殆ど無く、2012年ルツェルン音楽祭のアバドが振ったレクイエム(Mozart)が良かったくらいしか残っていません。古くて恐縮です。


Album Title
Paradise Lost
まずタイトルから惹かれますね。旧約聖書『創世記』第3章を元にしたジョン・ミルトンの同名作品をベースにした、良く知られるアダムとイヴのリンゴの話ですね。ジャケット写真もまさにそれに倣っています。

楽曲の構成が凝っています。全体を6つのパートに区切り、エデンの園から 追放されて地上での暮らしまでになっていますね。各パートに以下のバロックから近現代の音楽家20人の25作品を詰め込んでいます。それぞれ、失楽園に纏わるもしくは関連性のある小楽曲ですね。(例えばフォーレ"イヴの歌, Op.95")
ラヴェル, バーンスタイン, メシアン, フォーレ, ドビュッシー, ダニエル=ルシェール, ストラヴィンスキー,ヴォルフ, ブラームス, ライマン, ブリテン, プフィッツナー, ラフマニノフ, アイヴズ, パーセル, シューベルト, シューマン, アイスラー, マーラー, クラム


そしてピアノ伴奏のみのソプラノ・ソロと言う先鋭な設定です。(ピアノはジュリアス・ドレイク, Julius Drake)






I. 楽園の朝
ラヴェルは澄んだsopでパラダイスの三羽の小鳥を歌います。続くバーンスタインは弾む様な変化でとても生き生きしていますね。そしてメシアンの無調pfの音色とsopへと流れて、楽園がとても上手く構成されています。
楽風変化で作るI.ですね。


II. イヴの目覚め
フォーレの"楽園"はこのアルバム前半のメインでしょう。世界の夜明けを音数の少ないpfの上に透明なsopで、フォーレらしい美しさがピッタリですね。ドビュッシーからダニエル=ルシェールに繋がるフランス連携、美しさが輝きますね。
仏印象派の流れのII.です。


III. 理想郷/田園の牧歌
ストラヴィンスキーの知られた旋律にヴォーカリーズで弾むリズムで入ります。ヴォルフの二曲が色濃く、明瞭に、平和と喜びを歌い上げます。
心情を吐露するパートIII.ですね。


IV. 火遊び/イヴと悪/人間の堕落
古典(ブラームス)から、現代音楽(ライマン)、英音楽(ブリテン)、とリンゴへの欲望の世界を陰影強く歌います。プフィッツナーで遂にリンゴを食べてしまいます。
濃厚にリンゴの欲望を歌うIV.です。


V. 追放/出立/思い出
ラヴェルを思わせる様なpfのラフマニノフで混乱を見せて、アイヴズで夕暮れを陰鬱に、パーセルは古典英語の文でアダムに声をかけます。その後はシューベルトとシューマンが二曲づつ続き、ロマン派リートとなりますね。
クラシカル歌曲らしいV.になっていて、一番平凡かもしれません。


VI. 地上の暮らし
アイスラーの短い二曲で、この世は天国であり地獄、楽園は地獄、と歌います。調性はかなり薄くぴったりです。この作品のキー曲ですね。
マーラー「子供の不思議な角笛」から "浮世の生活" が使われて、親子の厳しい話が神経質なpfと共に速めのテンポで歌われます。
人間の悲しみから 最後はクラムの "風のエレジー" で調性を感じさせながら自然を歌い静めます。しかし30"以上の無音の後、楽曲リストにない26曲目が現れます。
作者不明の "I will give my love and apple…" です。静かに諭すように、最後に希望の光を灯します。(ライナーノートには歌詞も載っていません。存在は無記述です)
この作品最大の聴き処のパートになっています。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  PVです。録音風景やプロハスカの思いが聞けます



各パートに個性が与えられ、ストーリー展開も見事に決まっています。特にパートIV. は構成と歌詞と曲の流れが合致して素晴らしいですね。強力オススメの一枚!です。

歌詞は、独語・英語・仏語になりますが、英訳付きなのでストーリーを追えるのは助かりますね。この曲に歌詞は必須です。

プロハスカの構成力が際立つ作品で、このコンサートがあったら是非行きたいですね。




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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