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アルバン・ベルクの歌劇「ルル」:クリスティーネ・シェーファーのタイトルロールで


ベルクの代表作、未完の現代音楽オペラの傑作「ルル」DVDです。
タイトルロールのクリスティーネ・シェーファーは現代音楽を得意としていてシェーンベルク「月に憑かれたピエロ」でも素晴らしい歌声?!を残していています。


Album Title | Composer
LULU (1928-未完)
アルバン・ベルク (Alban Berg, 1885-1935)
ここで使われている十二音技法(的な手法)は主音列の十二音をルルに割り当てて、その音列を様々な組合せ変更でシェーン博士・他のキャラクタに振り分けています。言われている事ですが、ワーグナーのライトモティーフの様ですね。

落ちぶれて娼婦に落ちる魔性のルル。その構造は❶1)夫たち, 2)取り巻きたち, 3)客たち, の三つの役に分かれます。特徴的なのは❷殺した夫シェーン博士(役)が 最後に客の切り裂きジャックで登場する事、他二人の死んだ夫(役)も三幕でルルの客になるという第一・三幕シンメトリックな二役が設定されている事でしょう。また, その折り返し点となる❸第二幕ルルの"逮捕・裁判・投獄"が無声フィルムで流される事ですね。

現代音楽家フリードリヒ・チェルハ補筆版の全三幕ヴァージョンです。1996年のグラインドボーン音楽祭、少々古いですがよく知られた一枚でしょう。





(日本語字幕付きで, わかり易いです)


演出
ヴィックの演出は、この時代のクールさを感じさせますね。古典的な演出からアヴァンギャルドに移行する時代のシンプルな洗練さです。残虐さやエロティックなシーン演出もそこそこで留めていますね。
個人的には、この陰惨なオペラには前衛のドロドロ演出の方が合っている気がしますね。


舞台・衣装
現代的な衣装はシンプルに、舞台もシンプルで狭いグラインドボーン・ハウスの舞台を生かしていますね。中央にせり上がりのある同心円で動く多重の回舞台もあって、この時代らしい20世紀末の洗練された印象です。


配役
まずは何と言っても95年のザルツブルクでもタイトルロールを演じているシェーファーですが、個人的には子供っぽく妖艶さに物足りなさを感じてしまいます。sopも美しいのですが魔性の色合いはありませんね。演技も薄めで小柄でベビーフェイスの小悪魔?、ちょっと違う感じでしょうか。
やっぱりシェーン博士/切り裂きジャックのW.シェーネの素晴らしさでしょう。見栄えと通りの良いバス・バリトンはこの役にピッタリでしたね。
その他顔ぶれも特筆はありませんが、バランスの良い顔ぶれでサポートしていましたね。あえて言えばアルヴァのD.クブラーのテノールと、シゴルヒ役ノーマン・ベイリーの存在感でしょう。


音楽
当時グラインドボーン音楽祭の音楽監督だったアンドルー・デイヴィスは、かなり音を広げて鳴らしている感じがします。歌唱パートはともかく、音楽自体も主役だと言っているかの様です。

ベルクの音楽自体はより調性に回帰指向が強くなっている最晩年ですから違和感はヴォツェックに比べたら無いに等しいでしょう。音の跳躍も減って、語りパートも決してシュプレッヒゲザングにはなりません。



約3時間と長いのですが、流れの明確な演出もあって飽きさせません。そして何と言ってもベルクの音楽の素晴らしさを楽しめる事でしょう。アンドルー・デイヴィスとLPOに拍手ですね。

ただこのストーリーの渦巻く猜疑心や凄惨な流れとは対極にある演出は、きれいにまとまり過ぎの気がします。3人の夫他周囲を死に巻き込み、殺人罪で最後は娼婦に落ちぶれて死を迎えるのですから。今風のアヴァンギャルドな演出で楽しみたいですね。

とは言え、名作をすんなり楽しめるオススメDVDです。



独語+仏語字幕でOKならば、全編YouTubeで観られます!



【配役】
 ・ルル:クリスティーネ・シェーファー [Christine Schäfer]
 ・シェーン博士/切り裂きジャック:ウォルフガング・シェーネ [Wolfgang Schöne]
 ・アルヴァ(シェーン博士の息子):デイヴィッド・クブラー [David Kuebler]
 ・ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:キャサリン・ハリーズ [Kathryn Harries]
 ・画家/黒人客(?*):ステファン・ドラクリチ [Stephan Drakulich]
 ・医事顧問/教授(客):ジョナサン・ベイラ [Jonathan Veira]
 ・シゴルヒ:ノーマン・ベイリー [Norman Bailey]
 ・衣裳係/ギムナジウムの学生/下僕頭:パトリシア・バードン [Patricia Bardon]
 ・猛獣使い/力業師:ドナルド・マクスウェル [Donald Maxwell]
 ・公爵/従僕/侯爵:ニール・ジェンキンス [Neil Jenkins]

【指揮】アンドリュー・デイヴィス [Andrew Davis]
【演奏】ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 [LPO]
【演出】グラハム・ヴィック [Graham Vick]

* 原題"ein Neger"ですが特に黒人として出てくる訳ではありません。





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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