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ブレット・ディーン と エリッキ=スヴェン・トゥール の カルロ・ジェズアルドへのオマージュ『Gesualdo』



Composers
エリッキ=スヴェン・トゥール (Erkki-Sven Tüür, b.1959)
ブレット・ディーン (Brett Dean, b.1961)
エリッキ=スヴェン・トゥールはエストニアの現代音楽家でタリン音楽院で習い、レポ・スメラにも師事しています。技法的にはミニマル・音響解析・等を使っているそうです。興味深いのは同時期にロック・グループ"In Spe"での活動がある事で、そこがポイントになり楽風にも影響を与えていれば面白そうですね。

ブレット・ディーンは、オーストラリアの現代音楽家で指揮者としても活躍しています。元はヴァイオリン・ヴィオラ奏者でBPOの団員でした。その後ソリストの道を選んでオーストラリアに戻っています。そこを拠点として音楽家・指揮者としての活動を行なっていますね。
楽風は実験音楽・即興音楽の前衛現代音楽で、今回の作品は代表作です。弦楽とサンプリングのエレクトロニクス処理が行われていますね。


Album Title
Gesualdo
タイトルにもなっているルネサンス時代の音楽家カルロ・ジェズアルド(Carlo Gesualdo, 1566?-1613)ですが、なぜか今の現代音楽家が度々取り上げています。(このブログでもB.マントヴァーニやP.コパチンスカヤ(vn)、S.シャリーノのアルバムでインプレしています)

ジェズアルドは当時の前衛で、半音階(転調や全音階の方向性も見える?!)と言う不協和音?!をマドリガーレに採用していました。その調性逸脱音楽が見直されたのは 300年を越えた20世紀、前衛現代音楽の時代を向かえてからでした。「春の祭典」で大論争を巻き起こしたストラヴィンスキーもオマージュ作品を残しています。
またジェズアルドのもう一つの側面、妻とその愛人の殺害、で知られる事もミステリアスなターゲットとなっている様ですね。

本アルバムは二人の作品にジェズアルドの曲を挟み、オマージュになっています。






Moro Lasso [Carlo Gesualdo] (org. 1611年)
指揮者のトヌ・カリユステ(Tõnu Kaljuste)が弦楽奏曲に編曲している後期のマドリガーレです。普通に聴けばルネッサンス時代の穏やかな楽曲なのですが、確かに微妙な半音展開が明確です。ただ、その不安定さは仏印象派的な美しさに反映されている様な流れを感じますね。違和感はありません。(編曲がどこまで影響しているかは不明ですが)


Carlo [Brett Dean] (1997年)
合唱と弦楽奏曲です。導入部で明らかなジェズアルドの前曲の動機(半音階旋律)を使っています。それが次第に崩れて調性を崩壊させていきますね。どこまでがエレクトロニクス処理なのかわからない弦楽は音が重なり合って混沌気味になり、第一トリオとでも言う感じで神経質な弦楽にヴォーカリーズも加わった即興的ポリフォニーになります。虫の羽音の様なグリッサンドも特徴的です。第二トリオ的な変化は下降音階の流れが雲の様になり、折り重なり混沌聖歌の様相を見せます。ラストは主部が変奏されて回帰しますね。
ジェズアルドを下敷きに即興的混沌のB.ディーンらしさが溢れる楽曲になっていて素晴らしいです。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  Richard Tognetti 指揮、Orchestra d'Archi Italiana の演奏です



O Crux Benedicta [Carlo Gesualdo] (org. 1603年)
エリッキ=スヴェン・トゥールが弦楽奏に編曲しています。一曲目ほどの半音の効果はありませんが、それでも独特の浮遊感がありますね。今の時代の美しい緩徐曲として同様に通じそうです。


L'ombra Della Croce [Erkki-Sven Tuur] (2014年)
ここでもジェスアルドをベースにした和声と美しい流れで、前曲と同じくまるで弦楽編曲しただけみたいです。ECM(本CDのレーベル)のM.アイヒャーに献呈しているのはそういう意向もあるのでしょうか。


Psalmody [Erkki-Sven Tüür] (1993/2011年)
合唱と管弦楽の楽曲です。冒頭主題は舞踏風にホモフォニーで機能和声的で、合唱も同期します。反復もあってミニマル的でもありますね。7'ほどで全休符が入り、民族音楽を取り入れた流れに変わります。合唱も同期して音圧が高く、ここでもミニマルを感じます。その後管弦楽の落ち着いた反復変奏となり合唱が戻ります。
ミニマルで米管弦楽曲風な明確な旋律と流れのマニエリスム楽曲です。




何と言ってもB.ディーンのCarloの素晴らしさでしょう。ジェズアルドを意識しながらのオリジナリティが光りますね。ジェズアルドの曲も少し新鮮さを味わう事が出来ました。

E.S.トゥールの方向性がロックを背景にした前衛だったらもっとアルバムが冴えたものになった気がします。でもレーベルがECMですから、そこまで期待していませんでしたけどもw



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ジャンル : 音楽





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