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現代音楽の古典, ジャン・バラケ(Jean Barraqué) の作品全集「Œuvres complètes」と言うセリエルの形


ジャン・バラケ
(Jean Barraqué, 1928/1/17 - 1973/8/17)
今更のバラケですが、フランスの現代音楽家で前衛の全盛期から停滞期に活動時期があリましたね。ブーレーズ、ノーノ、シュトックハウゼンと言った前衛三羽烏の時代でもあったわけです。ちなみに同じくメシアンに師事した仏現代音楽家ブーレーズの3つ後輩になります。またドビュッシー研究ではフランス国立科学研究センター在籍時に論文も発表しています。

ライナーノートによれば、1948年, 20歳の時に音楽院でメシアンのクラスに入ったのが始まりで、そこでヴェーベルンから始まるセリエルを受講していますね。また「偶然の彼方に(...au delà du hasard)」の初演はブーレーズが指揮をしています。(薬物やSM行為と言った事もあった様ですが…)

当然ながらセリエルの洗礼を受けている訳で、1950年代前半の作品はトータル・セリエルの方向性があると言われていますが、独自の "Proliferating Series"(一つの音列を徐々に変化させる"増殖セリエル" ) への転換を図っているそうです。45歳で逝去するまで残された全作品数は7つでしかありません。(他スコアの存在はある様です。"Symphony in C sharp minor"など聴いてみたいですね)


Complete Works
CD3枚セット「全作品」になります。という訳で、古いCDですがインプレはこのアルバムしかありませんね。(同じく1990年代ECM盤のピアノソナタも持っていますが…)

CDでは3枚に収める為に年代はバラバラですが、インプレは年代順にしています。演奏はクラングフォルム・ウィーン(Klangforum Wien)、指揮はカンブルラン他、ピアノはシュテファン・リトウィン、その他になります。






Piano Sonata (1952年)
ベートーヴェンのソナタにインスパイアされ、セリエルで書かれているそうです。
 聴いた瞬間から'いかにも'的な点描で音の跳躍が大きい無調ですから、十二音技法やセリエルである事はわかりますね。当時の欧エクスペリメンタリズム保守本流でしょう。残念ながら退屈で古さだけが印象に残る代表ですね。(もちろん聴いただけで十二音技法かただの点描無調か、ましてやセリエルかはわかりませんけど)


Etude (1952-53年)
  for three-track tape
所謂(いわゆる)テープ楽曲で、サンプリングの電子音楽です。そのミュジーク・コンクレート(musique concrète)の創始者シェフェールの元で作られた作品です。今ならサンプリングからソフトでの構成となるでしょうね。
 元の音は打楽器系とかpfの特殊奏法でしょうか。旋律的な存在は無く、"音"とノイズです。こちらの方が今の時代にも反映されていそうな前衛性が感じられますね。クセナキスなどにも通じるモノがあります、唯一の異色作品です。


Séquence (1950-55年)
  for voice, percussion and chamber ensemble
Textはニーチェからです。ピアノ・ソナタから3年、単純な音列配置から明らかに変化がありますね。その煌びやかな音色や打楽器使いはブーレーズに良く似ています。そこにシュプレッヒゲザングの様なsopが絡んでいますね。この時代のセリエルに深入りしている事を強く感じますね。相変わらず音の跳躍は大きいです。


...au delà du hasard (1958-59年)
  for four instrumental groups and one vocal group
1960年1月26日の初演ではブーレーズが指揮をしていますね。声楽と4群室内楽で13パート、Textは作家ヘルマン・ブロッホからです。
 前曲'Séquence'の延長線上に感じますね。強弱のコントラスト付けがより強くなり、点描的なpfのテンポ変化も大きいです。スコア上での変化はわかりませんが、どう聴いてもセリエルの本流的な感じですね。4群の室内楽配置は不明で、実際の聞こえ方はわかりません。残念ですが強烈な退屈感です。


Chant après chant (1966年)
  for six percussionists, voice and piano
6人のパーカッションとピアノで、声楽Textはブロッホとバラケ本人です。
 前曲から7年後で、楽器編成を整理してシャープにした感じでしょう。基本は大きく変わっているとは思えません。出し入れの強さがパーカッション編成で強調されている様です。ただ基本の流れが統一されてきて、バラケの言う"Proliferating Series"の方向性が出てきているかも知れませんね。古いセリエル的流れである事に変わりはありませんが、少し面い方向になりますね。


Le Temps restitué (1957-68年)
  for soprano, chorus and orchestra
「復元された時間」声楽と管弦楽で、Textはブロッホの"ウェルギリウスの死"からです。
 'Chant après chant'にある出し入れの強さが、ここでも感じられますね。年代的には完成が遅かっただけで、50年代から手を付けている訳ですから。


Concerto (1962-68年)
  for clarinet, vibraphone and 6 groups of 3 instruments
コンパクトですが6群の楽器編成を組むなど、シュトックハウゼンでも見られたこの当時の流れを感じますね。
 ただ楽風は変わり、Textの呪縛からも逃れています。強弱出し入れは減り旋律感が出てきて反復風 "Proliferating Series" の作品となっていますね。その反復の中から徐々に変化を見せながら進むのは今でもありそうな流れでしょう。各楽器の音の作りも今の時代にも通用しそうな感じです。でも当時は前衛の停滞期そのものですから、この多様性は受入られなかった気がします。圧倒的に興味深い作品ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  Ensemble Contrechamps他の演奏になります。




十二音技法から続く点描セリエル、そして出し入れの強い表現主義的な流れへ、最後は調性感ある多様性へと、バラケの変遷を楽しめます。

前半は古さと退屈さのセリエルですが、1960年代の "Proliferating Series"作品 'Concerto'では早すぎた多様性の楽しさが見出せます。これが1990年代ならもう少し評価が違ったかもしれませんね。



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テーマ : クラシック
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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。


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