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アルディッティ・クァルテットで聴く シェーンベルクの現代音楽変遷:弦楽四重奏曲第1-4番『Streichquartette I-IV』


アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schönberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)
今更のシェーンベルクですが、本アルバムの四つの弦楽四重奏曲はシェーンベルクの音楽変遷に沿っているので興味深いですね。

 ■後期ロマン派時代の第一番(1905年)
 ■無調への足掛かりの第二番(1907-1908年)
 ■十二音技法確立後の第三番(1927)
 ■米亡命後調性回帰の第四番(1936年)

そのままシェーンベルクの音楽変遷です。ちなみに第五番は未完成、第三・四番には調性表記がなくなっていますね。十二音技法以降の音楽理論的なトータル・セリエリズムは弟子であるヴェーベルンに引き継がれる訳ですが、この四曲での推移が興味深いです。

結局、シェーンベルクは無調・十二音技法という前衛現代音楽を切り開きながら主流となるセリエルには乗らずに、調性回帰したわけですが。



弦楽四重奏曲第1-4番
再発盤になりますね。1990年代のアルディッティ(Arditti Quartet)のバリバリ時代の録音というのも嬉しいです。実は四曲ともに楽章構成は四楽章で、そこにもシェーンベルクのセリエル理論偏重に沈まなかったスタンスを感じます。

四曲で約2時間20分と長いですが、十分楽しめると思います。






弦楽四重奏曲第1番 ニ短調 op.7 (1905年)
テンポの速い美しい後期ロマン派の弦楽四重奏で、"浄夜(Verklärte Nacht)"の進化系とも感じられる流れです。ここでもパッセージには調性の薄い独特の浮遊感があり、より進化していますね。"ニ短調"と調性は振られていますが、既にそこからの離脱を志向している感じです。強い対位法展開とアルディッティらしい刺さる様な尖った弦楽も冴えています。

実は当時シェーンベルク擁護派だったマーラーはこの曲の初演に立ち会っていますね。そして同時期に交響曲第七番を作っています。このあたりからマーラーの楽曲も複雑な調性を見せる様になっているのも興味深いですね。そういう時代だったのでしょう。



弦楽四重奏曲第2番 嬰ヘ短調 op.10 (1907-1908年)
後半に無調となる注目のこの曲のみsopのドーン・アップショウ(Dawn Upshaw)が入ります。
始めは第1番の様な短調系の調性旋律(主題・動機)がホモフォニーに、そして強い対位的な動機の絡みとなっています。刺激的で、アルディッティの演奏もそれに応える演奏です。途中から明らかに不協和音を超える調性の不明な旋律が現れて来て、第三楽章から入るsopは明らかに弦楽奏とは異なる調性感(多調/多転調?)を強く感じます。調性を基本としながら、そこから乖離(複雑化?)していく楽章変化が感じられますね。sopは最終楽章で弱いながらシュプレッヒゲザングの方向性を見せています。この二作品後(op.12)がかの「月に憑かれたピエロ」ですね。

 ★試しにYouTubeで観てみる?
  演奏はThe Hausmann Quartet、sopはAnn Mossです。
  本CDに比べると、揺さぶり強めで切れ味はほどほど、sopの個性弱めです。




弦楽四重奏曲第3番 op.30 (1927年)
どこまで十二音技法なのか聴いてもわかりませんねw
それまでの曲に比べると明らかに変化して、無調点描的な事は一聴でわかります。ただ、それが厳密な十二音技法となっているかは聴いただけではわかりません。
また、少なくとも進化系セリエルの無表情さはなく、そのヴェーベルンに比べると曲調変化があります。そしてアルディッティの演奏が聴かせてくれるので刺激的ですね。このあたりからシェーンベルクが組みしなかったセリエルとの別れ道となっているのかもしれません。



弦楽四重奏曲第4番 op.37 (1936年)
刺激的な流れはそれまでと変わりません。ただ第2・3番に比べると調性感の強い旋律構成となって回帰色が濃いですね。新古典主義風です。アルディッティの刺激あるボウイングがいっそう感じさせているのかもしれません。




後期ロマン派 - 無調/十二音技法 - 新古典主義、と言ったシェーベルクの変遷が楽しめます。それがアルディッティ4の刺激的なスパイスで音楽としてもキレキレの味わいとなっているのも見逃せませんね。

アルディッティでシェーンベルクと20世紀前半のクラシックが味わえる超おすすめの一枚です。

現代音楽的には、前衛エクスペリメンタリズムは十二音技法からセリエルに舵をとり、ポスト・セリエル以降停滞して現在の多様性・インスタレーションの世界になっていますね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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