素晴らしい"グレ"!、2019年4月14日 東京春祭2019 最終日 大野和士/都響の シェーンベルク『グレの歌』at 東京文化会館
東京・春・音楽祭2019の最終日、天気下り坂の上野まで行ってきました。今回は大野さんの指揮ですから流れは何となく想像できたわけですが、もう一つのポイントは山鳩を得意とする藤村実穂子さんの期待値でしたね。グルントヘーバーは?、不安と期待がありましたが…w


アルノルト・シェーンベルク『グレの歌, Gurre-Lieder』はレコード時代から大好きな曲で、13CDの聴き比べもしてあります。ぜひそちらもご笑覧下さい。
▶️ 『グレの歌 13CD聴き比べ:名盤・おすすめは』
ヴァルデマルとトーヴェは始めからステージに、その他は歌う際のみ登場する珍しいパターンでしたね。大ベテランのグルントヘーバーは最後までステージに残りました。曲の繋がりだけでなく脚の具合も勘案したのかもしれません。
■ ヴァルデマル王 (クリスティアン・フォイクト, Christian Voigt)
入りの "迫り来る黄昏に" で、軽やかなテノールがヴァルデマルらしさを感じさせてくれました。ところが "馬よ!" では残念ながら声が前に出て来ません。表現は好みなのですが、強音の高音は無理を感じました。従って第二・第三部の神と対峙する姿勢は弱かったです。
■ トーヴェ (エレーナ・パンクラトヴァ, Elena Pankratova)
ヴァルデマルの"馬よ!" を受けての "星は歓びの…" は凄く速いテンポ設定で驚かされました。走っているごとくでしたね。太めのsopで表現力も濃厚、可憐な若さというよりも恋愛に長けた女性と言った風。個人的な好みのトーヴェとは少し違いました。
■ 山鳩 (藤村実穂子, Mihoko Fujimura)
トーヴェの死の悲しみと怒りを、見事に色濃く歌い上げましたね。声量・表現・切れ味 共に素晴らしかったです。ただ、ヤンソンスとの共演盤の方が、絞り出す様な歌い方で好みではありますが。(中国初演:上海公演に近い感じだったかも)
やっぱり期待を裏切らない凄さでした。
やっぱり期待を裏切らない凄さでした。
■ 農夫 (甲斐栄次郎, Eijiro Kai)
前半は慄きは上手いバス・バリトンで、"Da fährt's…" から後半のキリストに祈るパートではやや一本調子ではありましたが落着きを見せる表現でしたね。予想を上回る出来で、失礼!!、嬉しかったですね。
■ クラウス (アレクサンドル・クラヴェッツ, Alexander Kravets)
道化の具合は完璧! 本当に道化で、着崩れて一杯やりながら酔っ払った演技で登場しました。歌は速めでもちろんコミカル、笑いも入れてクールな内容を斜に構えて歌いましたね。本来ならあまり道化たクラウスは好みでは無いのですが、今回は一本取られましたw
■ 語り手 (フランツ・グルントヘーバー, Franz Grundheber)
御歳81歳のシュプレッヒゲザングは前半は凄い早口。後半"夏の夢"からは内容に合った諭すようなバリトンが生きましたね。
登場時は杖を突いてゆっくりと出てきたので、また演技付きかと思いましたがマジでした。拍手!!
登場時は杖を突いてゆっくりと出てきたので、また演技付きかと思いましたがマジでした。拍手!!
■ 合唱団 (東京オペラシンガーズ)
"よくぞ来られた…" は、オケのパワーに負けてました。個人的な希望としては複数合唱団が良いですね、色々難しいでしょうが。"見よ, 太陽!" は混声合唱が活きていました。
■ 演奏と流れ (東京都交響楽団/大野和士)
第一部序奏は速めで厚い音、管楽器が少し破綻をきたし不安がよぎりました。ところが "馬よ!" は第一部最高の演奏で、ディナーミクを振った派手さが生きました。第一部は前半の速めのテンポ設定が特に際立ちました。
第二部は動機群を山場 "ヴァルデマルの絶望" を含めて見事にメリハリを付けて鳴らしました。
第三部も第二部の流れからペースも上がって'出し入れ'の明瞭なこの曲らしさを味合わせてくれました。ここでも途中、管楽器の破綻が有ったのが実に残念ですが、目をつぶれる全体の見事な出来でしたね。
第二部は動機群を山場 "ヴァルデマルの絶望" を含めて見事にメリハリを付けて鳴らしました。
第三部も第二部の流れからペースも上がって'出し入れ'の明瞭なこの曲らしさを味合わせてくれました。ここでも途中、管楽器の破綻が有ったのが実に残念ですが、目をつぶれる全体の見事な出来でしたね。
素晴らしいグレだったと言って良いのでは! 演奏は多少の破綻は有ったものの大野さんらしいドンシャン・メリハリを生かした演奏が決まり この曲らしさを見せてくれやした。
歌手陣も楽しさ十分でした。藤村さんの見事な山鳩、カーテンコールの拍手も一番!、を筆頭に農夫・クラウス・語り手それぞれが個性的に演じてくれましたね。主役二人がやや残念ですが、補って余りあり!でしたね。
この曲にはクールで良い録音もありますが、迫力系+演技の仕込で楽しめたのは間違いなく、今日は楽しかったです。
歌手陣も楽しさ十分でした。藤村さんの見事な山鳩、カーテンコールの拍手も一番!、を筆頭に農夫・クラウス・語り手それぞれが個性的に演じてくれましたね。主役二人がやや残念ですが、補って余りあり!でしたね。
この曲にはクールで良い録音もありますが、迫力系+演技の仕込で楽しめたのは間違いなく、今日は楽しかったです。
今年は『グレの歌』コンサート当たり年ですね。先月3月のカンブルラン/読響、そして10月にはノット/東響と三回楽しめます。
ちなみに個人的最大の聴き処は第三部#4「トーヴェの声で森はささやき」ラスト、亡霊になってなおヴァルデマルがトーヴェを慕う "Tove, Tove, Waldemar sehnt sich nach dir! "です。そこは次回のお楽しみと言う事で。