FC2ブログ

マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 110CDの聴き比べです [#7 : 101-110]


マーラー第9番今回10CDインプレで100CDを超えましたが、指揮者やオケの個性も一緒に味わえるので楽しいですね。

このブログはマーラーの人生や作曲の背景・経緯には触れていません。あくまで個人的な楽曲演奏のインプレです。生きた時代も世界も違う歴史上の才人のそう言った事、ましてや思いを安易な調べで素人のブログに載せるのは申し訳ない気がします。("商品"はインプレできますが…)

楽曲的には最終楽章も二つの主題(動機)の変奏とコーダと見る方が見晴らしが良い気もしますが、今は主題とエピソードでインプレしています。
(もちろんマーラーのスコアには主題や中間部といった表記はどこにもありません。BPM速度標記さえないので演奏テンポの差も大きいわけですが…)


Mahler Symphony No.9 -- 110 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:10CD
バーンスタイン[x6 ★☆], アバド[x5 ★☆], ラトル[x2 ★], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x4 ★㊟], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆]
 #3:20CD
インバル[x3], M.T.トーマス, ドゥダメル, サラステ, バルビローリ[x3], 朝比奈隆[x2], ジュリー二[x2], ドラティ[㊟], ムント, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ, 小林研一郎
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[x2 ★], ジンマン, バルシャイ, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:10CD 本投稿です
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x3 ☆㊟], バレンボイム[x2 ㊟], ノリントン, エルダー, ツェンダー, カンブルラン, ブロムシュテット, 尾高忠明, A.フィッシャー, パク・ヨンミン




ブルーノ・ワルター, Bruno Walter (2録音)

ワルターはマーラーに呼ばれ副指揮者からウィーン歌劇場(1901-1913)に立ちましたね。その時25歳、もちろん総監督はグスタフ・マーラー本人(41歳)です。
ワルターの有名な二録音、この二曲はワルターの二つの顔を持つ演奏になりますね。



(#1)
★☆(㊟)
Vienna Philharmonic
[OPUS蔵・他] 1938-1/16


(同年録音の貴重な第5番アダージェットも聴く事ができるOPUS蔵盤です)

ナチスから逃れてウィーンでVPOを振ったワルターの歴史的名演Liveですね。

第一楽章
第一主題から第二主題への表情変化は明確に、その後の山場と反復 第三主題もメリハリは明瞭です。アゴーギクも見事に決まっていますね。展開部前半の陰鬱を速めのテンポの揺さぶりで奏して、J.シュトラウス引用を明るく表現します。中盤は激しく荒れたパートと陰鬱パートのコントラストを強烈に付けています。コーダのまとめも素晴らしいです。速め基本の流れですね。
第二楽章
スローな二つの動機がメリハリ強く絡む主要主題、第一トリオはテンポアップしてシャープなレントラーに切り替えますね。第二トリオもスローにはなりますが隙は全くありません。山場は "きわめて粗野に" と言うマーラー指示以上にキレキレです。
第三楽章
冒頭から激しい主要主題、絡む副主題もシャキッとしていて両者疾駆疾走します。走った後の中間部もテンポは上げ気味のまま緊張感をキープし、ラストは爆裂でまさにマーラーのいう"きわめて反抗的に"です!!
第四楽章
主題を穏やか優美に広げてfg動機で瞬間的に暗転させてテンポを速めます。第一エピソードもその流れで速め、暗鬱に沈む事なく感情を広げます。第二エピソードも速めの流れから山場を炸裂させ、後半からコーダは濃いめ静美な浮遊感に落とし込みます。
19'を切るかなり速い最終楽章ですね。



アゴーギクとディナーミクを大きく効かせた個性的でビシッと硬派のマーラー9。ゆるさの微塵もありません。速さと緊張感に乗って一気に聴き終えます。一度はぜひ聴いておきたい演奏です。録音の古さなど関係ありませんね。個性も光ります。

バーンスタイン9番の原点にあるのがワルターと感じますね、特に中間楽章では。






(#2)
Columbia Symphony Orchestra
[Sony (CBS)] 1961-1/16-30, 2/6

 
(右は全集で1番は名盤、5番も素晴らしいのでおすすめですね)

VPOから23年後、当時CBSが録音オケとしていたコロンビア交響楽団を振ったマーラー9ですね。ワルターのステレオ録音用に米西海岸で編成されたオケですね。ワルターはこの翌年に85歳で亡くなっています。

第一楽章
第一主題は緩やか大きく、第二主題も流れを生かして盛り上げます。テンポも時代にあった設定となり見晴らしの良い提示部です。展開部前半をスローに落とし、アレグロ・リゾルートからもアゴーギクは弱くその分ディナーミクで見事にコントラスト付けしています。スロー化でこの曲の陰鬱感の美しさが引き出された感じです。
第二楽章
スローな主要主題ですがキリッとした動機の絡み、第一トリオではテンポアップして心地よい切れ味をつけます。もちろん第二トリオは美しく。
第三楽章
スローですが締まりの良い主題とソフトな副主題が絡みながら少しテンポを上げて山場を作ると、中間部でも大きな変化よりも美しさを引き立てます。
第四楽章
主要主題は穏やかそのもの、ここでもfgの動機で少しテンポを上げています。第一エピソードもそのテンポで暗い美しさを奏でて、第二エピソードも美しさを軸に山場へ引上げます。ターン音型の静パートからはこの演奏の真骨頂となりますね。



スロー基本美しさ軸足の今の時代のマーラー9の原点です。23年前と大きく様変わり、アゴーギクを排した全編スローとなっていますね。VPO盤とは正反対で曲の美しさが光る演奏です。スロー化でもディナーミクを使ったコントラスト付けがしっかりと付けられています。

音質もリマスタリングで今の時代になり価値が上がっていますね。本来の位置付けは★☆かもしれません…





ピエール・ブーレーズ, Pierre Boulez (3録音)

指揮者としてのブーレーズのCDと言うと、Sony(CBS)とDGでの同曲再録音を浮かべますがマーラー9のSony盤はありません。その代わりに同時代の録音がマイナーレーベルから2録音リリースされています。しかも1971年と1972年の録音で極端に性格の異なる個性を放ちます。



(#1)

BBC Symphony Orchestra
[Arkadia] 1971-6/6


BBC交響楽団の首席指揮者(1971-1975)時代のライヴです。もう一枚BBC響とはこの翌年1972年録音があります。

第一楽章
第一主題はスロー緩やかに、第二主題は暗く落としますが落差は小さめ、反復からの第三主題もスローに溜めた反発です。展開部前半の"暗→明→烈"のコントラストは低く強いスロー、中盤はテンポを戻して(本来はテンポを落とす!)鬱から静スローで引っ張り、後半の葬送の経過部をゆっくり一歩一歩進みます。再現部はスローに揺さぶりを入れて、コーダももちろんスロー!! スローが強い個性を放つ第一楽章です。
第二楽章
主要主題二つの動機は一転して速いと言う変則。第一トリオはややスローに落としてリズムを強く刻み揺さぶります。第二トリオではもっそりスローと表情変化の大きさが強烈です。主部回帰ではテンポを落としてきますね。スロー基調に冒頭主部はファストと言う変則楽章です。
第三楽章
主要主題はスローでシャッキリ、副主題(第一トリオ)は独特のリズミカルさに違和感を感じます。中間部はいきなり速くて素っ気なく、後半のターン音型も速いですが緩やかにテンポを落として大きく鳴らします。奇妙に動機を刻んで、ラストは派手に鳴らしますが当然più strettoはしませんw
第四楽章
主要主題は肩の力が抜けた流れでテンポは一般的に、fg動機後も力感は上げませんが詰まった様な揺さぶりが入ります。第一エピソードも流れはキープされてドロドロっと流れ行きますが異様性は低く、山場はスルッと乗り越えターン音型は静に美しいです。第二エピソードは静に入って違和感のない美しい流れですが、一度目の山場はテンポアップで鳴らします。とは言え 最も普通に近い流れの楽章で、肩透かしを食らった気分ですw 後半からコーダのターン音型も標準的ですね。



スロー基調にアゴーギクで揺さぶった変化球のマーラー9です。全体的に奇妙なリズムを刻みつつも力感は避けていますので、他にはない不思議(不気味?)な流れを感じます。最後が標準仕様的なのも期待を裏切る変化球?!

初期のブーレーズらしく素直な演奏はしないので、やっぱりですね。録音はそれなりで、リマスタリング出来ればかなり改善される余地を感じます。






(#2)

BBC Symphony Orchestra
[ENTERPRISE] 1972-10/22


(所有と同じENTERPRISE盤。他にMemoriesとAs Discからもリリース)

上記一年後の、同BBC交響楽団とのロンドンでのライヴです。それなのにこれだけ違う演奏ですから、ブーレーズはいろいろと考えていたのでしょう。

第一楽章
第一主題はスローですが力感があり、第二主題は暗く鬱に表情変化を強めて、第三主題も力強く、いたって明瞭な提示部です。展開部前半の"暗→明→烈"もスローを排し標準的になり、中盤もテンポを落とす事が出来て渦巻く様な陰鬱さからテンポアップし派手に、後半も葬送パートを切れ味を見せる流れにしています。緩急を入れつつ標準的な重厚パターンになりました。
第二楽章
主要主題は程々速めで軽快に締まり良く、第一トリオでややスローにリズムを強く刻むのは同じですが力感がありますね。第二トリオは緩やか優美、濃厚リズム以外はここでも標準に近い流れになっています。
第三楽章
主要主題はシャキッと締まり良くテンポも上げ気味で刺激的、第一トリオも軽妙化しつつその流れに乗っていますね。変奏的なリズムは無くなり二つの動機がキレキレになりました。中間部(第二トリオ)は速めで入のは一年前と同じですが、緩やかにスロー化してターン音型に繋げていますね。ラストは一気にストレッタして見事。強い揺さぶりと切れ味鋭い楽章になりました。
第四楽章
主要主題は表樹的テンポながら濃厚、fg動機後も音厚高く揺さぶりを強くかけて来ます。第一エピソードはやや速めで荒っぽく濃厚でクドイですw 第二エピソードも濃厚でテンポを揺さぶり爆音の山場です。後半からコーダも薄い音とは縁がありませんw (autoの様な録音の問題も大きいでしょう)
濃厚で荒っぽい個性的な最終楽章です。



速めで強烈に揺さぶったマーラー9です。個性派に変わり無いのですが、一年で大変身ですね。

第四楽章の濃厚さは見事クセもの、第三楽章は荒っぽい切れ味に大変化です。前半には目を瞑ってと言う事で。(後半楽章は上記ワルター1938年を彷彿させますね)

録音が(演奏も?)今ひとつですが、リリースされているだけ喜びましょうw






(#3)

Chicago Symphony Orchestra
[DG] 1995-11


上記23年後、シカゴ交響楽団の首席客演指揮者(1995–2006)時代のグラモフォン盤マーラー9ですね。

第一楽章
穏やかで澄んだ第一主題と重心の低い第二楽章、見晴らしの良い流れで完成度の高い提示部です。展開部前半はスロー静に重心を落とし、中盤からはCSOらしい鳴りの良さを生かしています。厄介なコーダも清流にこなして、朗々とした見事な第一楽章ですね。
第二楽章
二つの主題動機は歯切れよく、第一トリオではレントラーらしい優雅さを、そして第二トリオで柔らかいスロー美に落ち着かせます。変化球なしの完成度の高さです。
第三楽章
主題に副主題(第一トリオ)、共に各楽器の鳴りもシャープです。中間部(第二トリオ)も穏やかさが心地よいですね。ラストはキッチリと締めてきます。
第四楽章
やや速めの主題は適度な揺らぎで延びやかです。第一エピソードも速めで暗鬱さに沈むのを避け、心が高揚する後半の広がりにつなげます。第二エピソードも速めの流れからタメを作って山場を奏で、後半からコーダのターン音型はゆるい揺らぎを加えて浮遊感を作り出します。



惹きつけられる素晴らしさというよりも、完成度の高さが見事なマーラー9です。CSOの演奏、録音、全て揃ってピカピカに磨き上げたっていう感じですね。

確かに突出したモノはありませんが、これだけの安定感充実感もそうそう無いと思います。





ダニエル・バレンボイム, Daniel Barenboim (2録音)

バレンボイムは非正規を除くと現在3枚のマーラー9を残しています。今回2録音(1枚はDVD)ですが、他にシュターツカペレ・ベルリン(2006年)とのCDがありますね。(未所有です)



(#1)

Staatskapelle Berlin
[Unitel Classica] 2009-4 DVD


バレンボイムが音楽監督を務めるシュターツカペレ・ベルリンとの映像付き録音ですね。

第一楽章
第一主題はほどよい陰を見せる美しさ、第二主題は音色を落として緊迫感を与えます。微妙なアゴーギクが効いていますね。第三主題は華々しく。展開部前半は暗い緊張からシュトラウス引用で柔らかな明るさを見せ、アレグロ・リゾルートからは第三主題を派手に鳴らします。この曲のポイントの一つである展開部後半は三つの主題を陰影濃く奏で濃い流れになっています。再現部も押しては引く様な揺らぎを作ります。濃厚な感情表現の第一楽章になっていますね。
第二楽章
主要主題は切れ味と重心の低いレントラー、第一トリオは一気呵成にテンポアップ、それも軽快と言うわけではなく力感を持っています。第二トリオは穏やかシンプルに色合いを変化させて、強烈なコントラストがクッキリとした第二楽章です。
第三楽章
主要主題は色濃い流れに細かいディナーミクを効かせ、途中で一気にテンポアップさせます。副主題(第一トリオ)で軽量に踊る様に入り、パワープレイの様に主題を絡めます。中間部(第二トリオ)はシンプルですが軽妙ではありません。でもその中に最終楽章ラストのターン音型の浮遊感を残すのは流石ですね。もちろん最後のstrettoは強烈の一言です。
第四楽章
主要主題は厚い弦音で息苦しい様な、fg動機前後ともに音は分厚さです。第一エピソードはほどほどに静音パートを構築、なぜか途中でグッと来るものがあります。第二エピソード山場は溢れるパワー、後半ターン音型は決して細く繊細ではないのですが、コーダまで気持ちが伝わります。珍しいのはラストの"F♯-G-A-G"で、少し力を込める事ですね。



強いテンポ変化と濃厚な表情のマーラー9です。全編アゴーギクの濃い表情付けと厚い音で、怒涛のパワープレイです。

バレンボイムらしいメリハリがいっそう強烈に味わえる一枚。大盛カツ丼にソースをかけた様な感じで、そんな濃い味マーラー9をお望みの貴方にオススメです。

嫌いじゃありませんねw でもいいかも。






(#2)
La Scala Philharmonic
[DECCA] 2014-11/14


上記(#1)の5年後、スカラ座の音楽監督時代にスカラ座フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー9ですね。

第一楽章
第一主題適度な緊張感と優しさを奏で、第二主題でも極端な変化は見せませんが、音は重厚です。第三主題はもちろん華々しさですね。展開部前半は序奏を暗く落ち着かせて、シュトラウス引用は明確に穏やかさに変化させ、アレグロ・リゾルートからはコントロールの効いた激しさです。後半もコントラストの強い表現になっていますが怒涛よりも切れ味でしょうか。それでも第一主題回帰は怒涛ですがw。再現部も力感の流れです。
5年前のシュターツカペレ・ベルリンよりも少し押さえが効いている感じですね。
第二楽章
主要主題は太い音ながら速め軽快さを見せ、第一トリオはここでもテンポアップですが(#1)ほどの異常さはありませんね。それでも一般的にはかなり強烈です。第二トリオで緩やかに落として来るのは標準的になっている感じです。それでも全体メリハリ感の強い楽章には違いありません
第三楽章
主要主題は力のこもった鋭い流れでパワープレイ、5年前(#1)の様な途中でのテンポ変化はさせません。第一トリオは多少軽めにしますが延長線上の印象です。太い流れで絡んでパワーを見せて、第二トリオ(中間部)少し緩やかに。ターン音型でラストを印象付けるのはここでも良い流れです。ラストのstrettoはもちろん炸裂します。切れ味はこちらの方が上かも。
第四楽章
主要主題は少し穏やかになっていますが、それでも濃厚。fg動機は落ち着きましたが、その後は厚い音が垂れ込めます。第一エピソードはほどほどの繊細さで基本は変わりませんね。第二エピソードは山場をテンポを少し上げて炸裂させます。バレンボイムの足音が入っていますね。ターン音型からは落ち着きを見せて5年前には無かった繊細さと静寂さを感じさせてくれます。そこは大きく変わりました。"F♯-G-A-G"を強調するのは同じですね。他では聴いたことがありません。



色濃い力感のマーラー9です。基本スタンスは5年前(#1)と変わりませんが、猛烈なパワープレイをほどほどにした感じでです。それでも十分に強烈ですがw

バレンボイムらしいメリハリを安心して楽しめるのはこちらですね。





ロジャー・ノリントン, Roger Norrington

Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
[Hanssler Classic] 2009-9/5


イギリス人指揮者ノリントンが首席指揮者時代(1998-2011)にシュトゥットガルト放送交響楽団を振ったマーラー9ですね。ノンビブラートで軽快といった印象がありますね。

第一楽章
第一主題は揺らぎなき穏やかさ、第二主題もほどほど、反復と第三主題でタメを作って盛り上げます。展開部は前半のスロー静を特徴的に、強音は速くと正攻法ですがそのコントラストがぴったり来ますね。鬱ベースのスローが面白いです。
第二楽章
二つの動機が絡む主要主題は速くアッサリ風味、第一トリオでもリズミカル軽量に、第二トリオでもテンポは速めを保ちます。ノリントンらしい楽章でしょうか。
第三楽章
主要主題はここでも軽快で副主題(第一トリオ)もやや落ち着きますが同様です。中間部(第二トリオ)も一呼吸程度で大きな展開感はありませんね。走るラストも激しいのですがほどほどです。
第四楽章
主要主題も速めで重厚さは避けています。第一エピソードもその流れで静的パートもあまりスロー化させません。そこが一楽章との違いですね。第二エピソードも速いのですが山場は間を作ってしっかり盛り上げ、後半からコーダのターン音型ではスロー静音に落とします。
この楽章20'を切るのは珍しい速さですね。



緩急はあるのですが基本速さ、サッパリとしたマーラー9です。ノリントンらしい軽快感がそう思わせるのかもしれません。

低重心のドッカリとしたマーラー9の対極にいる演奏ですね。第一楽章のスロー静の"鬱"が最終楽章にも生かされたらより面白かったという感じです。





マーク・エルダー, Mark Elder

Hallé Orchestra (The Hallé)
[Halle] 2014-5/22


2000年からハレ管弦楽団の首席指揮者を務めるM.エルダーが、その手兵を振ったマーラー9ですね。オペラを得意としていますね。

第一楽章
第一主題は緩やか穏やかに、第二主題も抑え気味、反復から盛り上げて第三主題、と言う正攻法ですね。展開部も前半を静に落とし、アレグロ・リゾルート以降をを多少の揺さぶりを交えて変化を大きく鳴らします。クセなく安心して聴ける反面、これと言った個性は弱く感じます。コーダは少しユルいですね。
第二楽章
主要主題も第一トリオも第二トリオもクセはなく標準的なのですが、なんとなく流れている様な気配。スケルツォ(相当楽章)なのに弾んでくれないのは辛いですね。
第三楽章
主要主題と副主題は適度なテンポと締まりを見せてリズムを刻み、ポリフォニカルな良い流れを作って中間部で情景を一変させます。とても見晴らしの良い流れで、山場からラストもマーラーの指示通り"Sehr trotzig, きわめて反抗的に"、素晴らしい楽章です
第四楽章
主要主題は心もち速めながら感情込めた哀愁を奏でます。第一エピソードは沈んだ面持ちを見せる様なスロー暗に軸足を置き重心の低い情感を湛えます。第二エピソードも山場を息詰まる様な演奏で作り上げ、後半のターン音型からコーダの5'は静的浮遊感を漂わせた空間を作りました。
指揮者とオケが一体となった情感が伝わりましたね。



流れのゆるい前半と充実の後半、二つの顔のマーラー9です。前半はスパイスが足りませんね。後半は気持ちも入って、コンサートらしい一体感も感じられた素晴らしさです。

第三楽章は第一主題の動機の多声を生かした見事さがあるので本当に残念、前半だけやり直しよろしく!!って感じ。





ハンス・ツェンダー, Hans Zender


Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken
[cpo] 1977-2/8, 9


H.ツェンダーというと現代音楽家でもあるわけで、本ブログではお馴染みの指揮者になります。ザールブリュッケン放送交響楽団を振ったマーラー9ですが、カップリングされている「子供の魔法の角笛」もB.ファスベンダーとD.フィッシャー=ディスカウという興味深い顔ぶれです。
後日記】本年(2019)の10月22日に亡くなられました。

第一楽章
速く低弦音にクセを感じる第一主題、第二主題もその流れに乗って変化は薄め、ピークは大きく鳴らします。反復後の第三主題もテンポは速めで締めますね。展開部は速めですが標準的、ワルツ引用で光を、第三主題で強烈に鳴らしてピークを作ります。第二主題も陰鬱さを速いテンポで表現、第三主題を派手に、葬送の歩みは鐘の音が変ですね。再現部は第一主題を大きくです。テンポは速目で山場を締める第一楽章です。
第二楽章
レントラー主題の二つの動機はシャープ、第一トリオも刻むリズムが明確で、第二トリオが速いのが変わってます。主部狂乱もしっかりと鳴らします。優美さより少し角張った舞踏曲になっています。
第三楽章
主要主題はややテンポを遅くしてリズムを刺激を加える様に刻みます。少し変化球ですね。第一トリオでは優美ですが角がある感じです。中間部(第二トリオ)は速く, これは変わっていますね。全体的に感じる刺々しさがツェンダー流マーラー指示の"反抗的"の表現でしょうか?! ラストはもちろんpiù strettoです。
第四楽章
主要主題は速くてそっけなく、直ぐにfg動機が現れる感じで、その後の主題回帰は音厚が高いです。第一エピソードもハイテンポで淡々として感情移入は弱いです。テンポがスローなら情感的なのかも?! 第二エピソードは少しテンポを落としますが、ターン音型での哀愁感や浮遊感は薄め、コーダは揺さぶりを入れながら透明感はあります。



尖った流れと山場を鳴らす個性的マーラー9です。基本速く、情感や哀愁には興味無しの流れです。

現代音楽家と指揮者が兼ねるパターンは一癖見せますが、二つの中間楽章の第二トリオの速さは異様でやっぱり個性を見せましたね。

9番と言うよりも6番に向いた流れで、クセもの系が好きな貴方には気になる☆印かも!!





シルヴァン・カンブルラン, Sylvain Cambreling
【後日追記投稿】

Yomiuri Nippon Symphony Orchestra
[Altus] 2018-4/20


先月(2019年3月)をもって読響の首席指揮者を退いたカンブルラン。昨年2018年4月20日のサントリーホールでのLive盤ですね。このコンサートは行ってきました。▶️ インプレです

第一楽章
序奏の管楽器が怪しげ、第一主題・第二主題もやや重めの流れで後半から反復で緊迫感を上げ第三主題で盛り上げますが、あまり特徴的ではありません。まとまりも今ひとつで、展開部も管楽器が冴えません。楽章全体の流れはスローをベースに陰鬱重めで悪くはないのですが。
第二楽章
主要主題は締まりよく、第一トリオは弾む様に、第二トリオでも管楽器が怪しい音を出しますねぇ。ややギクシャク気味で流れも個性に欠けますね。
第三楽章
主要主題はスローぎみで揃いが悪くもっさりとした感じで管楽器は怪しげ、副主題も同様です。驚きは中間部でテンポも落とさずスルッと通り抜けてしまいます。ただラストは荒れ気味なのが生きて激しさが決まりました。
第四楽章
主要主題は濃厚で暑苦しいアダージョ、第一エピソードは入りの低弦も怪しげw それ以外はスローパートは落ち着いています。山場が濃いめで疲れますが。第二エピソードは山場をガッツリ盛上げます。後半からはターン音型で鎮めてコーダへ向かいますが、ここは弦楽パートなので曲調通りですね。



なぜか落ち着かないマーラー9です。管楽器の怪しさ、ギクシャクした流れ、そういったものが強く感じられますが一切遠慮のない演奏です。それが良さを見せるパートもあるのですが、全体としては一体感を感じられません。練習不足?!って言うこともないでしょうが、かなり残念な一枚になってしまいました。

これが狙いならレアといえばレアw、㊟印を付けろですか?! それはちょっと…ですが、コンサートの印象とほぼ変わらない結果でしたね。





ヘルベルト・ブロムシュテット, Herbert Blomstedt
【後日追記投稿】

Bamberger Symphoniker
[Accentus] 2018/6


スウェーデン人指揮者(米生まれですが)のブロムシュテットが名誉指揮者を務めるバンベルク響を振った新しい録音ですね。ブロムシュテットはマーラーをそれほど多く残して無いので、91歳の貴重な録音になるかもしれませんね。

第一楽章
緩やか穏やかな第一主題から陰に籠る様な第二主題へと流れ、山場から提示部反復、第三主題を盛り上げるのは基本的ですね。展開部前半の隠な流れから中後半の出し入れの強いパートも上手く陰影を付けますが安定的で、この楽章の印象は落ち着いた感じです。
第二楽章
主要主題は二つの動機を対比的に紳士的、第一トリオはレントラーらしく優美で、流れは緩やか主体です。第二トリオでは更に落ち着きを増した感じです。主要主題の回帰からも然程暴れませんね。
第三楽章
主要主題は適度な抑揚とテンポ、副主題(第一トリオ)も決して慌てません。レハールの引用も穏やかに流れて、中間部(第二トリオ)は格別に変化を強調していません。ラストも真面目に荒れていますw。この二つの中間楽章の落ち着きが曲全体を印象付けているかもしれませんね。
第四楽章
主要主題は感情移入は薄く端正です。第一エピソードは入りから終盤のターン音型を思わせる静けさです。ブロムシュテットの計算を感じますね。第二エピソードの山場は初めて情感強くまとめます。もちろん後半からコーダは計算通りにターン音型を鎮めて消え入ります。上手い構成感を感じました。



落ち着き払った大人の(?)マーラー9ですね。アゴーギクによる揺さぶりや感情移入を廃して、端正な几帳面さを感じます。"座して心穏やかにお抹茶をいただく"、といった風でしょうか。中間楽章のテンポ設定が緩やかなのも影響しているかもしれません。

日本でも人気のブロムシュテットらしいマーラー9番でしょうか。一度聴いて欲しいですね。





尾高忠明, Tadaaki Otaka
【後日追記投稿】

Osaka Philharmonic Orchestra
[fontec] 2019-4/12,13


大フィルと言えば、朝比奈さんがすぐに浮かぶわけですが、その後大植英次さんが音楽監督を務め、今は2018年から尾高忠明さんがその席についていますね。(大植さんと尾高さんの間に、井上道義さんが主席指揮者を務めていました)

第一楽章
第一主題は抑えた入りから少し感情を込め、第二主題で切迫した流れを作ります。反復は感情豊かで第三主題も切れ味がありますね。展開部前半は低い落ち着いてJ.シュトラウス引用が心地良く、その後の出し入れの強い流れにつなげて再現部へと入ります。ラストのスローは効果的ですね。
微妙に振られたアゴーギクが効果的なスパイスとなった第一楽章です。
第二楽章
レントラー主題は跳ねる様に踊る様に、第一トリオでもシャキッとしながら舞踏的な流れを崩しません。第二トリオでは優美に色合いを変えて中間部的な様相を明確にしています。後半の主題回帰での荒れたパートはもう少し力感があっても良かった気がします。そこが少し長さを感じさせる気がします。
第三楽章
主要主題はシャープです。第一トリオでもリズミカルにキープして見晴らしの良さがありますね。この二つの主題のポリフォニカルな絡みは聴き応えがあります。中間部(第二トリオ)はあまりスローに落とさず、穏やかさの中に緊張感を感じます。その点ではあまり最終楽章のターン音型を意識させない様にしているかもしれませんね。ラストはビシッと決めて、締まりのある第三楽章です。
第四楽章
力の入った短い序奏から主要主題は穏やかに、テンポはあまり落としません。それでも気持ちの伝わる流れになっていますね。第一エピソードは入りからターン音型の鎮まりを見せて終盤への導入を感じさる構成です。第二エピソードは二つの山場を大きく鳴らすと、対比的に鎮めてターン音型の静寂へと落ち込んで行きます。フィニッシュまで緩やかに"ersterbend"です。
せっかくのLIveで好演なのにアプローズがカットされているのは残念。



締まりのある流れ、表情のある楽章構成、クールなマーラー9です。決して暴れたり、極度にエモーショナルに陥る事もありません。アゴーギクの色付けが絶妙で、効果を見せています。大フィルも見事です

予想を上回るマーラー9になっています。第二楽章後半が良ければ、ですね。





アダム・フィッシャー, Adam Fischer
【後日追記投稿】

Düsseldorfer Symphoniker
[CAvi Music] 2019-1/11,12,13,24


アダム・ フィッシャーとデュッセルドルフ響のマーラー・サイクル第8弾、マーラー9ですね。

第一楽章
第一主題はスローで穏やか、いかにもA.フィッシャーらしいです。第二主題は急に黒雲が広がる様に、山場もコントロール下にありますね。展開部前半は緩やかな暗さからJ.シュトラウスII引用を穏やかに、アレグロ・リゾルートから山場も興奮っぽくを見せつつ冷静です。後半もアゴーギクを使って揺さぶりつつ、決して荒れる事はありませんね。第三主題回帰からの山場も客観的です。再現部は丁寧に。
第二楽章
主要主題は正攻法に二つの動機を絡ませ、第一トリオをテンポ明確にして色合いをつけています。第二トリオも基本に忠実な穏やかさで、変化球なしの王道的な第二楽章です。失敗の少ない方向性ですね。
第三楽章
ここでも王道の流れで、主要主題はテンポ良く 緩やかさの第一トリオと絡んで軽快です。中間部(第二トリオ)も予想通りの穏やかさでチェンジペースです。ラストpiù strettoは一瞬間を置いて走る計算した〆めになっていますね。
第四楽章
主部は穏やかな夕暮れの様、fg動機はグッとスローにして後半をテンポアップしています。程よいスパイスですね。第一エピソードは暗くスローに入り後半のターン音型を意識させていますね。弦楽器のポルタメントが懐かしさを誘います。第二エピソードでも冒頭からターン音型の静かな儚さを奏でていて方向性は全てラストに向いているのが明確です。山場は激しさではなく高まる感情になっていて、後半からコーダはまさに絶え入るがごとく… この最終楽章は"あり"かもしれません。



落ち着いた流れで細部まで計算されたマーラー9です。静音パートは魅力的で、強音パートも興奮を排しながらも刺激を与えます。最終楽章の静のターン音型表現はピッタリですね。

全てがコントロール下にある安心感と穏やかさは好みを左右するかもしれませんが、それがA.フィッシャーですね。





パク・ヨンミン, Youngmin Park
【後日追記投稿】

Bucheon Philharmonic Orchestra
[Sony] *2018-19(?)



YoungminPark-mahler9.jpg
(写真です)

ギーレンに師事し、ラ・フォル・ジュルネ金沢でも来日経験のあるパクが2015年から音楽監督を務めるプチョン・フィルハーモニック・オーケストラ(1988年創設)を振ったマーラー9です。
*ライナーノートを見ても録音年月日が見つかりません。本国発売が2019年12月ですから、2018-19年頃とは思いますが。(LIVEです)

第一楽章
第一主題は緩やか穏やか、第二主題はそこに黒雲が湧く様になります。提示部の反復から第三主題は出し入れの強い流れになりますね。展開部第一主題変奏からJ.シュトラウスIIの引用は明るさと余裕に欠ける感じ、その後もディナーミクが強く角の尖った演奏です。演奏は硬い印象が強い第一楽章です
第二楽章
主要主題は生真面目に硬くやや速め、第一トリオも速さでキッチリ、第二トリオも同じ流れですね。頭から尻尾まで統一された流れの第二楽章で、アゴーギクは振られません。
第三楽章
主要主題はキッチリ詰め込まれた感じ、副主題(第一トリオ)も本来の戯けた感じではなく機械的。中間部(第二トリオ)のターン音型はラストの浮遊感を先出しして欲しいのですが、表情は薄く音の押し出しも強いですね。
第四楽章
序奏からキンキンしていますね。弦楽奏の第一主題は厚めの音で暑苦しいかもしれません。fg動機も太いです。第一エピソードも鳴りが強くて表情は弱く、第二エピソード前半は機械的、山場はまさに怒涛です。後半からコーダのターン音型も殊更に繊細さは無く淡々としています。



角張って硬い無機質的なマーラー9です。繊細な哀愁や包み込む様な流れの対極にありますね。

ディナーミク軸足の強いメリハリで、速い遅いはあってもアゴーギクでの表情付けはありません。演奏完成度は高いのでしょうがうるさい感じw。似た演奏が思いつきません。(暑苦しい濃厚な演奏はありますが)







まだまだあるのですが、続けて聴く集中力が…


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kokoton

by kokoton
.


    


カレンダー
03 | 2021/04 | 05
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます