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シェーンベルク『グレの歌』13CD聴き比べ === ブーレーズ, 小澤征爾, インバル, ラトル, シノーポリ, シャイー, アバド, ギーレン, サロネン, ヤンソンス, ガードナー, ストコフスキー === おすすめ・名盤は?!


アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schoenberg, 1874/9/13 - 1951/7/13)
言わずと知れたシェーンベルク、現代音楽の黎明期前衛時代と合わせてちょっとだけおさらいです。[以下、以前の紹介文引用です]

後期ロマン派の最終期とも言える時期の傑作から始まり、1910年くらいに前衛の原点"無調作品"を世に送りました。そして"無調"に新しい音楽理論を当てはめた"十二音技法"を確立したのが1920年くらいなわけですね。
ただシェーンベルクは無調ですが調性に近い楽風を保持する様になり、1934年の渡米で更に調性回帰的になっています。
音楽理論的な前衛を推し進めたのは弟子で新ウィーン楽派の一人アントン・ヴェーベルンのトータル・セリエリズムであり、その流れを主流とした「ダルムシュタット夏季現代音楽講習会」をベースにシュトックハウゼン/ノーノ/ブーレーズが時代を支配して1970年代の"前衛の衰退"へまっしぐらに突進した訳ですね。



Gurre-Lieder (1900-1911年)
グレの歌
登場人物5人 語り手1人、400人を超える大編成(多編成合唱団の場合)で、2時間弱という壮大な歌曲の大曲ですね。基本は後期ロマン派の美しいストーリーと楽曲です。(詳細構成等は割愛しますね)

概要 (イェンス・ペーター・ヤコブセン「サボテンの花開く」より)
ヴァルデマル王は侍従の娘トーヴェと狩猟の城グレで愛を育んでいました。それを嫉妬した王妃によりトーヴェは毒殺されてしまいます。(第一部)
ヴァルデマルは悲しみと怒りで神を呪い(第二部)、天罰で死して亡霊となり亡き兵士たちを呼び起こして毎夜百鬼夜行します。死してなおトーヴェを恋い焦がれるヴァルデマル、最後はトーヴェの愛の力で救済を迎えます。(第三部)


レコード時代から大好きで聴き込んでいるこの曲、本年三回のコンサート機会(下記)が訪れました。

 2019-3/14:カンブルラン/読響 (カンブルラン首席指揮者退任月) ▶️ インプレ
 2019-4/14:大野和士/都響 (東京春祭2019最終日) ▶️ インプレ
 2019-10/5,6:ノット/東響 (ミューザ川崎シンフォニーホール開館15周年記念)



インプレ結果 13CD ダイジェスト

[①ブーレーズ] 全体バランスの良さ、この曲の標準原器です。
[②小澤征爾] 荒れ気味興奮の演奏がお好きな方向きです。
[③インバル] クールで広がりある個性派、個人的好み盤です。
[④ラトル] 全編濃厚、BPOファン御用達盤です。
[⑤シノーポリ] 強音の締まりの良さを感じたい方向きです。
[⑥シャイー] 爆裂疾走の快感、嫌いじゃない一枚です。
[⑦アバド] 名盤か最低か!! "語り手"の好み一つでどちらかです。
[⑧サロネン] 淡々とした流れとクールさ。気掛かりは歌手陣です。
[⑨ギーレン] 隙のない完成度の高さ。そこが好みを分けるでしょう。
[⑩ヤンソンス] 歌い手とオケの一体感ならこれ。心和みます
[⑪ガードナー] オケも歌手陣も一味違う方向性です。
[⑫ストコフスキー#1] 一度は聴きたい1932年世界初録音です。
[⑬ストコフスキー#2] 1961年のこれを聴くなら1932年盤かと。
 "おすすめ"はページ最後に。



個別インプレ


ピエール・ブーレーズ
(Pierre Boulez)
[1974年]

ブーレーズがBBC交響楽団(BBC Symphony Orchestra)首席指揮者時代(1971-1975)にイヴォンヌ・ミントンを擁して録音した作品ですね。ミントンとは"月に憑かれたピエロ"でも名演を残していますね。
LP時代の馬に乗ったヴァルデマール(国内盤)とは大きく異なるジャケットです。



ヴァルデマル王 (ジェス・トーマス, Jess Thomas)
落ち着いたテノールでシーン別の表情変化も明瞭にして上手い歌い分けです。"馬よ!"や神に対峙する厳しさもオケと一体感がいいですね。第三部の”天にある厳しき…”は演奏と共に白眉です。

トーヴェ (マリタ・ネピア, Marita Napier)
何よりもナピアの歌声から感じる若さがトーヴェにピッタリ!です。ヴァルデマルを想う心を優しさで聴かせてくれますね。強すぎず決して興奮しないネピアのトーヴェこそ好みです。

山鳩 (イヴォンヌ・ミントン, Yvonne Minton)
重心の低いMezで伸びが良く、トーヴェの死の悲しみと怒りを表現しています。溢れる感情を心に秘めての歌いは流石はY.ミントンで、この役一二を争う素晴らしさですね。

農夫 (ジークムント・ニムスゲルン, Siegmund Nimsgern)
曲の流れはやや速めで、緊迫のバス表現が強めです。"Da fährt's…"はかなり早く出ますね。

クラウス (ケネス・ボーエン, Kenneth Bowen)
テノールを生かした洒脱な道化を上手く歌います。洒落た表現は戯け過ぎずに王の姿を表現して好演ですね。

語り手 (ギュンター・ライヒ, Günter Reich)
速めの曲調に乗って厳しさを、緩く落として優しさを。シュプレッヒゲザングも適度な振りで抑揚を生かします。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"を始めとして激しいパートの切れ味を感じます。"見よ, 太陽!"の華やかさも当然ですね。


演奏と流れ
透明感と落ち着いた夕暮黄昏の序奏から第一部の前半、"馬よ!"で聴かせる締まった激しさ、"真夜中のモチーフ"の陰鬱。第二部は大きくアゴーギクを振り、第三部ではヴァルデマル(及び家臣)の神に対する激しさを適度な荒れで前面に出しながら、各パートで表現力を最大限活かします。
全体としては激しさと優しさをバランスよく両立させています。(これ以上激しさを前に出すならマスタリングの問題でしょうね)



的を得た配役陣の個性と演奏、トータル・バランスの高さを誇る一枚ですね。この曲の印象は、頭に擦り込まれたこの演奏があるからかもしれません。特にネピアのトーヴェはまり役で、上回るソプラノは聴いたことがありませんね。(上手い下手ではありません) もう一人は山鳩のミントンでしょう。

ブーレーズはCBS時代とDG時代で再録を多くしてしますが、この曲はしていません。再録していたらどの様になっていたのか興味は尽きませんね。




小澤征爾
(Seiji Ozawa)
[1979年]

言わずと知れた小澤さんと手兵のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)によるグレ。ポイントは何と言ってもトーヴェ、ビッグネームのジェシー・ノーマンでしょう。J.マックラケンはこの18年前にストコフスキーにも採用されていますね。
ジャケットはレコード時代もこんな感じだったと記憶しています。



ヴァルデマル王 (ジェイムズ・マックラケン, James McCracken)
多少神経質さを感じるヴァルデマル。"馬よ!"ではオケに、"星は歓びの…"ではトーヴェに食われ気味で、負けじと?第一部後半はドラマティコorバリトン気味で力み過ぎです。後半も神と対峙の決意には欠ける様な。

トーヴェ (ジェシー・ノーマン, Jessye Norman)
J.ノーマンを使ったわけですから、堂々としたトーヴェです。"星は歓びの…"では尖っていますね。簡単に毒殺されそうにありませんw

山鳩 (タティアナ・トロヤノス, Tatiana Troyanos)
感情過多ではありませんが、かなり尖った声で表現しますね。好みは内に秘めた感情なのですが…

農夫 (ディヴィッド・アーノルド, David Arnold)
のびのびとした歌いで、"Da fährt's…"は炸裂的ですね。オケは控え目です。

クラウス (キム・スコウン, Kim Scown)
そこそこ道化ています。好みではありませんが、曲全体の濃い流れから行くとこれでマッチしている気もしますね。

語り手 (ヴェルナー・クレンペラー, Werner Klemperer)
シュプレッヒゲザング感はより低く、語り的ですね。前半の自然の激しさは超早口、中盤の"夏の夢"からは一呼吸置き歯切れの良いシュプレッヒゲザングとなっていますね。オケは控え目です。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"では結構暴れて陰影強く、ラストは派手ですね。


演奏と流れ
序奏は少しリズムを強調した感じで少し厚め、"馬よ!"も唐突的な激しさ、概して第一部は弱音パート薄めやや速めフラットな流れです。第二部は切れ味良く、第三部は強音パートの力強さに荒れが味方している感じですね。最後の序奏は半端感が猛烈ですが、ラスト"見よ, 太陽!"は劇的です。



本来好みとはミスマッチの全体的には速め厚め力感のグレです。流れもアゴーギクよりディナーミク強調型。厚めの第一部から 荒れ気味の速め強音パートの第三部への流れとなります。
ヴァルデマルとトーヴェも力感重視、筋肉質なトーヴェはあまり好きになれませんが。というかJ.ノーマンがトーヴェに合っているとは思いづらいです。最後の"語り手"の表現は濃いですが悪くありません。

何とか言いながら、コンサート受けしそうな荒れたパワープレイを聴きたくてかける機会が多いのも事実ですねw




エリアフ・インバル
(Eliahu Inbal)
[1990年]

インバルが首席指揮者(1974-1990, 現名誉指揮者)を務めたフランクフルト放送交響楽団*(Radio-Sinfonie-Orchester Frankfurt)を振った演奏です。
*一時期hr交響楽団(hr-Sinfonieorchester)と名乗っていましたが、再びフランクフルト放送響(Frankfurt Radio Symphony)にしましたね。



ヴァルデマル王 (ポール・フレイ, Poul Frey)
暗く沈んだ美しい曲の流れに合ったテノール、"馬よ!"も激しさとキレはありますが興奮は避けています。第二部以降も激しさを活かしながらの見晴らしの良さがあります。「トーヴェの声で森はささやき」も素晴らしいですね。

トーヴェ (エリザベート・コネル, Elizabeth Connell)
伸びやかながらも繊細さを見せる美しさです。ハイトーンは少し抑えて欲しい感じもありますが、こちらもオケの流れに合った印象のSopです。

山鳩 (ヤルド・ヴァン・ネス, Jard van Nes)
今にも溢れそうになるトーヴェの死の悲しみや苦悩を抑えつつ、情感深く歌います。その分ラストの溢れる感情は素晴らしいですね。

農夫 (ウォルトン・グレンロース, Walton Grönroos)
緊迫感ある歌いは堂々とも聞こえますね。"Da fährt's…"は"Holla!"と同期します。

クラウス (フォルカー・フォーゲル, Volker Vogel)
重さや道化感をうまく消化してクールなクラウスで、全体の流れにとてもマッチしています。

語り手 (ハンス・フランツェン, Hans Franzen)
小刻みな演奏と落ち着いたシュプレッヒゲザング、"夏の夢"からは優美な演奏にゆったりと。曲に合っていますね。

合唱団
第三部"よくぞ来られた…"は炸裂するオケに対してコントロールの効いた大合唱で応えます。"時を告げようと…"ではミサのごとく、ラスト"見よ, 太陽!"は雄大に飾られます。


演奏と流れ
第一部の序奏は静的澄んだ流麗さ、興奮を避けた流れで抑揚を抑えて美しさを奏でます。"馬よ!"も演奏は強音メリハリはありますが興奮は抑え、その後も美しさの第一部です。第二部もスタンスは変わらず山場"ヴァルデマルの絶望"も素晴らしいです。第三部も特徴である百鬼夜行やヴァルデマルの神への怒りも怒涛の激しさの中にコントロールの効いた見晴らしの良さを感じますね。
基本スローに計算されたアゴーギクとディナーミクのコントロールが見事に決まっています。



スローで澄んだ流れを生かしたクールな個性派グレです。強音での激しく締まった演奏も見事に鳴りよく響かせながら、不要な興奮を避けて透明感のある美しい心地良さです。
歌手陣も歌唱力と全員の個性が曲の流れにマッチしてトータル感を崩しません。広がりを感じる好みのグレと言っていいでしょう。
(ダイナミックレンジの広い録音で、聴く環境を要求するかもしれません)

インバルは『青ひげ公の城』でも同様の素晴らしい録音を残していますね。マーラーは今ひとつ合わないのですが…




サイモン・ラトル
(Simon Rattle)
[2001年]

2002年から昨年(2018年)6月まで首席指揮者・音楽監督を務めたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)との就任前年の録音ですね。BPO色が強そうに感じますが、クドさからいえば似た傾向にある両者ですからねぇ。(あまり聴かない一枚ですw)
ヴァルデマルを得意とするT.モーザーと、山鳩に大物オッターを迎えています。



ヴァルデマル王 (トーマス・モーザー, Thomas Moser)
トーヴェを思うパートは柔らかく甘美、"馬よ!"も暴れません。"時は夜半"での艶やかさは見事です。神との対峙でも過剰な暴力感は避けていますね。

トーヴェ (カリタ・マッティラ, Karita Mattila)
控え目ながら伸びを効かせるsop、濃厚さの流れの中でトーヴェらしさが光ります

山鳩 (アンネ・ゾフィー・フォン・オッター, Anne Sofie von Otter)
濃厚で感情剥き出しの表現です。個人的好みは、そこを心にグッと抑えて悲しみと無念を表現して欲しい処ですが。この先にあるとすれば狂気でしょう。

農夫 (トーマス・クヴァストホフ, Thomas Quasthoff)
精悍ささえ感じるバス・バリトンですね。"Da fährt's…"はかなり遅れて出てきますね。

クラウス (フィリップ・ラングリッジ, Philip Langridge)
演奏ともに表情濃いですが極端に道化てはいませんからいいですね。オケはくどいですがw

語り手 (→ "農夫"と二役)
明瞭な表現のシュプレッヒゲザングです。二役なのでここでも精悍さを感じますが、少し濃厚表現ですね。

合唱団
"よくぞ来られた…"ではオケ共々派手に大きく歌い上げ、"時を告げようと…"では抑え気味に、一息おいたラストはもちろん超ド派手です。


演奏と流れ
第一部序奏は明瞭な明るさを奏でます。本来夜を迎える黄昏で、二人の夜と死で完結する絶対の愛を前にする序奏なのですが。愛のパートは蕩ける様な甘美さ、"馬よ!"も適度な押しながら派手、艶やかな第一部です。山鳩は激唱です。第二部・第三部もパート毎に濃厚で、クラウスのパートなどは演奏との掛け合いのごとくです。オケが主役だと主張していますね。



至る所 濃厚な表現で溢れる満艦飾のグレですね。アゴーギクとディナーミクも細かい揺さぶりではなく、甘美さから激情まで濃厚な表情着けに厭わず振られています。歌唱陣ではオッターの感情をさらけ出すMezがその代表でしょう。オッター以外はバランス良いのですが、オケが前にしゃしゃり出ます。少々聴き疲れですね。

先入観もあってBPO色全開に感じます。ラトル本人も言っていますが基本弦楽四重奏ベースの曲のはずなのにクール・洒脱さは一片も見当たりません。単に好みの問題ですが。(笑)




ジュゼッペ・シノーポリ
(Giuseppe Sinopoli)
[1995年]

学研肌指揮者シノーポリが首席指揮者(1992-2001)を務めた時代のシュターツカペレ・ドレスデン(Staatskapelle Dresden)とのグレ。ヴァルデマル王を上記ラトル/BPOと同じT.モーザー(2005年にサイトウ・キネンフェス松本でも同役を演じています)、トーヴェを得意とするD.ヴォイト(フォイクト?)の起用と配役を固めています。



ヴァルデマル王 (トーマス・モーザー, Thomas Moser)
T.モーザーらしいマイルドなテノール、"馬よ!"でも力感を上手くコントロール、神に向かっても苦悩の濃さは出しますが怒りの熱唱ではありません。いいですね。

トーヴェ (デボラ・ヴォイト, Deborh Voigt)
朗々たる歌声に若さが弱く熟女的印象が強いです。"星は歓びの…"でははしゃぎ気味。最後は絶唱で、ちょっとトーヴェのイメージとは違うかなぁ。

山鳩 (ジェニファー・ラーモア, Jennifer Larmore)
細めのMezで神経質に感じますね。感情表現も強めだからでしょう。

農夫 (ベルント・ヴァイクル, Bernd Weikl)
テノールの伸びを生かして表情豊かに歌います。演奏も力感がありますね。

クラウス (ケネス・リーゲル, Kenneth Riegel)
道化色の濃いテノールになりますね。本来好みではないのですが、全体の流れが濃くないのであまり気にはなりません。

語り手 (クラウス・マリア・ブランダウアー, Klaus Maria Brandauer)
ちょっとクラウスにも似た道化的な表情を見せます、特に前半の速いパートですね。"夏の夢"からはトーンを落としてシュプレッヒゲザングします。

合唱団
"よくぞ来られた…"ではオケと張り合う様な勢いです。"時を告げようと…"では大きく広げてから静めて、"見よ, 太陽!"は盛大に。


演奏と流れ
第一部、序奏は少々ギクシャクぎこちなく、二人の愛のシーンは穏やか、"馬よ!"では心地よいメリハリ感、上手くツボは押さえていますね。第二部は激しさを前面に、第三部はコントラストが明白で強音のパワー炸裂が印象的です。それが全体として締まりの良さを感じるのでしょう。



強音パートを中心に押さえ処を心得た上手さを感じます。適度に引いては押す様な流れで聴きやすいでしょう。歌手陣では、ヴァルデマルのT.モーザーのクールな良さが流れに合っていますね。女性陣は強いですw

肩肘張らない流れで、強音パートをドッドーンと決めるので気持ちがいいですね。




リッカルド・シャイー
(Riccardo Chailly)
[1985年]

シャイーが首席指揮者(1982-1989)を務めた時代のベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie Orchester Berlin)との録音で、ヘルデンテノールの雄S.イェルザレムを起用ですね。イェルザレムは次のアバドにも起用されています。



ヴァルデマル王 (ジークフリート・イェルザレム, Siegfried Jerusalem)
流石はヘルデンテノール、トーヴェとの愛の交歓でも感情表現を表に出し、神との対峙では力漲りますが、クドさは感じません。演奏も力感溢れるので良いバランスでしょう。

トーヴェ (スーザン・ダン, Susan Dunn)
優しさを歌う可憐な歌声がトーヴェらしさを感じさてくれます。トーヴェ最後の"あなたは私に…"はオケが濃厚過ぎで、力が入っちゃてますね。

山鳩 (ブリギッテ・ファスベンダー, Brigitte Fassbaender)
感情が溢れてしまう様な表現です。速め濃いめの歌唱ですが、オケが強いのでこのくらいでいいのかもしれません。

農夫 (ヘルマン・ベヒト, Hermann Becht)
速めの流れで切羽詰まった気配が伝わるうまさですね。"Da fährt's…"は派手な演奏に埋もれています。

クラウス (ピーター・ハーグ, Peter Haage)
道化感はほどほどですが、濃厚な歌いです。とにかく速いのでこれでないと着いていけないかも。

語り手 (ハンス・ホッター, Hans Hotter)
速くて早口になってます。"夏の夢"からスローにはなって表現力を上げますね。オケとのコラボも生かしています。

合唱団
"よくぞ来られた…"は爆唱炸裂から暗く落とすコントラスト、"見よ, 太陽!"はまさに大団円ですね。


演奏と流れ
入りの序奏を色濃く、二人のシーンを優美にサポートして、"馬よ!"では激しさを、流れにメリハリが強い第一部です。山鳩ではオケMez共に押し出し強めです。第二部・第三部もメリハリ重視はそのまま引き継がれます。
出し入れの強い演奏で速さ基調、落とす時はピシッとスローなので胃もたれ感は少ないでしょう。ディナーミクも同様です。



ドン・シャン的濃厚・派手な演奏で速くてパワープレイ主軸。とにかく全体速めで飛ばしアゴーギクの振り方が明確、スローかファストか、です。ディナーミクはもちろん強音軸足です。歌手陣も表現力が強めですが、この演奏に"ごする"には必要でしょう。

好きな一枚で、一度は聴きたいイケイケ爆裂方向の個性的グレです。処々スローで休みますが、とにかく爆走大好きですw




クラウディオ・アバド
(Claudio Abbado)
[1992年]

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(Wiener Philharmoniker)は首席指揮者を置いていませんが、その母体であるウィーン歌劇場(ウィーン国立歌劇場管弦楽団)には音楽監督がいます。アバドが音楽監督(1986-1991)を退任した翌年録音です。
知る人ぞ知る"問題盤"になります。それは"語り手"に映画女優B.スコヴァの起用。女優起用だけなら新目線ですが、そのシュプレッヒゲザングたるや驚き以外にありません。(スコヴァはアバド/BPOとの演奏会、次に紹介する2009年サロネン盤にも起用されています)



ヴァルデマル王 (ジークフリート・イェルザレム, Siegfried Jerusalem)
シャイー盤と比べてオケが落ち着いた分イェルザレムのしっとりとした表現は美しさを増して、"馬よ!"でも力感より伸びの良さを感じます。神への怒りもシャープな歌いで聴かせてくれます。

トーヴェ (シャロン・スウィート, Sharon Sweet)
穏やかながら伸びよく抑えの効いたsop、若々しさを感じられるトーヴェらしさですね。(41歳のSweetですが)

山鳩 (マルヤーナ・リポヴシェク, Marjana Lipovšek)
悲しみと無念を心に秘めながらの深い情感の歌いは、スローで沈んだオケとぴったり来ていますね。

農夫 (ハルトムート・ヴェルカー, Hartmut Welker)
堂々と聴こえる農夫で、"Da fährt's…"はオケと共に炸裂です。キリストへの祈りからは落ち着きが伝わりますね。

クラウス (フィリップ・ラングリッジ, Philip Langridge)
程よい道化色がオケとマッチして、曲の中でスケルツォ的な印象を与えてくれますね。

語り手 (バルバラ・スコヴァ, Barbara Sukowa)
いきなりの軽いノリで素っ頓狂な声をあげるのでビックリ!! えっ, どうしたの, なんで??!!的な印象は今聴いても拭えません。表情豊かというわけでもなく、スローになる"夏の夢"からもアニメのアテレコみたいな。せっかくの女性シュプレッヒゲザングなら、「月にピエロ」的だったら面白かったかもしれません。

合唱団
"よくぞ来られた…"はオケと共にまさに百鬼夜行です。"時を告げようと…"では静かに沈み、"見よ, 太陽!"のラスト1分はクレッシェンドを効かせて大きく納めます。


演奏と流れ
クセのない落ち着いた序奏、二人の愛のシーンは穏やかな美しさを、"馬よ!"では締まり良く、山鳩に繋げる間奏は大きな揺らぎで見事に、大きな構えを感じる第一部です。第二部の"ヴァルデマルの絶望"モチーフも深く大きく、第三部もスローの落ち着きを元に激しさを切れ味よく大音響で鳴らします。



緩やか懐広いパートと、締まりある迫力の強音パートが両立しています。構えの大きな素晴らしい流れですが、唯一最大の違和感 "語り手" が全てを崩してしまいました。
歌手陣とオケの流れとのマッチもとても素晴らしく、素っ頓狂な"語り手"以外ですが、聴き応え十分ですね。何とも残念至極の一枚です。

"語り手"に違和感が無い方には最高の一枚と言っていいと思います。




エサ=ペッカ・サロネン
(Esa-Pekka Salonen)
[2009年]

サロネンが2008年から首席指揮者を務めるフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)を振ったグレですね。"語り手"が、アバド盤で迷演のバルバラ・スコヴァというハードルがあります。ヴァルデマルは同年録音のヤンソンス盤でも好演のスティー・アナセンなのですが。農夫は次のギーレン盤でも同役のラルフ・ルーカスです。



ヴァルデマル王 (スティー・アナセン・Stig Andersen)
優しさを感じさせるリリコ的なテノールはこの役に合っていますね。トーヴェの優しさを慕うのに汗臭い強面の王様は似合いません。好みのヴァルデマル歌いです。

トーヴェ (ソイレ・イソコスキ・Soile Isokoski)
清楚ながらしっかりのイメージがsopのシャープさに感じられます。もう少し優しさが勝ってもよかった気もします。

山鳩 (モニカ・グロープ・Monica Groop)
朗々と歌います。感情を込めてというよりも歌唱力で勝負的な山鳩でしょうね。

農夫 (ラルフ・ルーカス・Ralf Lukas)
切迫した気配の前半、"Da fährt's…"は2分割で叫びます。後半のキリストへの祈りで落ち着きを見せ変化をつけるうまさを感じます。

クラウス (アンドレアス・コンラッド・Andreas Conrad)
道化感はとても低く、でのびのび朗々と歌います。王の姿を客観的に表現というよりも誰かに訴えているかの様です。

語り手 (バルバラ・スコヴァ・Barbara Sukowa)
アバドとの録音から17年、出だしは僅に落ち着いた様にも感じたのですが結局素っ頓狂。受け入れるのは厳しいシュプレッヒゲザングでした。アバド盤よりは良い気もしますが…

合唱団
"よくぞ来られた…"と"時を告げようと…"は迫力よりも広がりですね。


演奏と流れ
淡々としながらクールな序奏と愛の交歓、"馬よ!"でも過度の緊張を避け、クセのない第一部です。第二部も抑えを効かせたバランスです。第三部でも演奏は興奮を抑えて流れを作ります。



ヴァルデマル(S.アナセン)とサロネンのクールさがマッチした心地良さですね。クセがなく淡々とした中に緩やかで大きなアゴーギクも効果的です。
ただ全体として残念な結果。歌手陣の山鳩とクラウスは好みではありませんし、"語り手"にB.スコヴァがいる時点でかなり厳しくなってしまいます。

アナセンとサロネン以外には聴くポイントが弱い印象です。




ミヒャエル・ギーレン
(Michael Gielen)
[2006年]

ギーレンが首席指揮者(1986-1999)を務めたこともあるバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団(SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg)を振ったグレですね。



ヴァルデマル王 (ロバート・ディーン・スミス・Robert Dean Smith)
若々しいテノールで"馬よ!"も伸びやかに、第二・第三部でも神への呪いを切れ味で歌います。

トーヴェ (メラニー・ディーナー・Melanie Diener)
綺麗に澄んだsopはトーヴェ向きですね。"星は歓びの…"でも感情コントロールが上手く、"あなたは…"ではの伸びは素晴らしいです。

山鳩 (イヴォンヌ・ナエフ・Yvonne Naef)
トーヴェの死の悲しみや憤りを表現力高く歌ってくれますね。Mezの声もぴったり来ています。

農夫 (ラルフ・ルーカス・Ralf Lukas)
切迫の表情を見せるバス、"Da fährt's…"は分割的スクリームです。キリストへの祈りからは落ち着きを見せるうまさですね。

クラウス (ゲアハルト・ジーゲル・Gerhard Siegel)
朗々と歌います。道化感は低めで声は伸びますが淡々と状況を語る感じは悪くありませんね。後半は熱唱も。

語り手 (アンドレアス・シュミット・Andreas Schmidt)
シュプレッヒゲザング感は弱めで、語りなのか歌なのかの微妙さです。その分流れには乗っていますね。

合唱団
"よくぞ来られた…"は切れ味よく、ラストもコントロールの効いた広がりです。


演奏と流れ
各楽器を明確にした序奏、"馬よ!"での激しさもコントロールよく、全体適度な揺さぶり(アゴーギク)で二人のパートを並べる上手さを感じる第一部です。第二部はスロー基本で興奮より重厚です。強音パートを中心に付けられた微妙な揺さぶりはギーレンらしさでしょう。そこも含めたギーレンらしいメリハリの第三部です。全体としては納まりが良すぎる感じですが。



シェーンベルクを得意としたギーレン、見事な完成度ですね。歌手陣のバランスも良く、全体の流れはもちろん熱狂パートでさえギーレンの手の内にある素晴らしさ。情熱の破綻も一切無いまとまりの良さです。ただそれが何回も聴きたいと思わせてくれない理由かもしれません

個人的には、溢れる情熱の様な何かスパイスが欲しい気がします。




マリス・ヤンソンス
(Mariss Jansons)
[2009年] DVD

現在ヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)の60周年記念演奏会の映像付き収録ですね。トーヴェはシノーポリ盤でも演じたD.ヴォイトです。S.アナセンは同年サロネン盤、ギュンター・ノイホルト盤(2012年/未所有)でもヴァルデマルを演じています。農夫・語り手(二役)M.フォレは2017年バイロイト音楽祭「ニュルンベルクのマイスタージンガー」でザックス役を好演したのが記憶にありますね。


(CD未発でDVDになります)


ヴァルデマル王 (スティー・アナセン, Stig Andersen)
優しさのある入り、"馬よ!"も情熱は強いですが伸びやかに、"時は夜半"はこのストーリー全体を表情豊かに歌い上げます。神への怒りパートも力感を伝えますが、過激さは回避します。感情を込めながらも聴かせる素晴らしさですね。

トーヴェ (デボラ・ヴォイト, Deborh Voigt)
シノーポリ盤から15年経っていますが優しさが伝わります。とは言え、尖った感じは残ってしまいますね。

山鳩 (藤村実穂子, Mihoko Fujimura)
抑えの効いた、その中に悲しみと無念を表現するMez。ここで流れが一変するほどの切れ味見事な山鳩です。

農夫 (ミヒャエル・フォレ, Michael Volle)
伸びやかなバス・バリトンで聴かせてくれます。後半のキリストへの祈りも朗々と歌いますね。

クラウス (ヘルヴィヒ・ペコラーロ, Herwig Pecoraro)
弾むような歌い方とテノールが適度な道化感を伝えます。ここでもオケとのバランスの良さを感じますね。

語り手 (→ 農夫と二役)
言葉の流れの良いシュプレッヒゲザングです。"夏の夢"からも表情豊かですね。

合唱団
"よくぞ来られた…"をはじめ少々抑え気味の印象ですが、もちろんラストは盛大です。


演奏と流れ
序奏から二人の愛シーンは優美に、"馬よ!"も激しさはヤンソンスのコントロール下、緩やかな大きな流れで歌手陣を生かす第一部です。第二部も大きく構えて、第三部も激しさの中に歌い手とのうまいマッチングを感じます。しゃしゃり出るオケではありません。



優美で大きな流れ、激しさには走りません。何よりも歌手陣を生かすオケが光ります。オケと歌い手のマッチングが素晴らしい一枚ですね。歌手陣はヴァルデマル王のアナセン、山鳩の藤村さん、この二人素晴らしさは所有盤の中でも一二を争います。第三部ヴァルデマルの歌う"トーヴェの声で森は囁き"では、思わずこちらもグッと来てしまいます。

アプローズではスタンディングオベーション、上記二人に拍手が大きく、客席にはクリスティアン・ティーレマンとケント・ナガノの顔も見えました。

本年(2019年)4月春祭の大野/都響、10月ミューザのノット/東響、二つの『グレの歌』で藤村実穂子さんが山鳩を演じるので楽しみですね。
(2015年10月の中国初演でも素晴らしい"山鳩"を演じていますね。トーヴェの死の悲しみと無念を表すのはこのDVDの方が一枚上手の気がします)




エドワード・ガードナー
(Edward Gardner)
[2015年]

ガードナーが首席指揮者を務めるノルウェーのベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団(Bergen Philharmonic Orchestra)を振った録音ですね。インプレの中では最も最近の録音で、45歳(2019年)と最も若い指揮者です。新しいアプローチが聴けるでしょうか。



ヴァルデマル王 (スチュアート・スケルトン, Stuart Skelton)
クールで伸びも良く決して悪くないのですが、他の共演者がクセモノ揃いなので その沼に沈みそうです。第三部後半二曲は今ひとつかもしれません。

トーヴェ (オルウィン・メラー, Alwyn Mellor)
若さのイメージは薄く、尖んがっちゃってます。ハイトーンがキンキンした声になるのも気になりますね。本来優しさ溢れる聴かせどころ「あなたは私に…」では声を張り上げます。感情過多の年増トーヴェ?!でしょうかw

山鳩 (アンナ・ラーション, Anna Larsson)
MezなのですがSopの様な高音を尖らせて歌います。トーヴェの死の悲しみと無念を、押さえ切れない感情が迸って出る様なエモーショナルさが欲しいですね。

農夫 (ジェームズ・クレスウェル, James Creswell)
農夫としては平常心的な表現です。これでも悪くありませんが、なんとなく普通じゃない感じが漂います。

クラウス (ヴォルフガング・アプリンガー=シュペルハッケ, Wolfgang Ablinger-Sperrhacke)
速めで跳ねてますが表現は適度な道化です。クールで適度に感情移入、この配役の中で一番役にはまっている感じです。

語り手 (トーマス・アレン, Thomas Allen)
早口で変な奇声も発し、シュプレッヒゲザング感も低いです。喋り的で 処々明らかに歌っていますから。

合唱団
"よくぞ来られた…"では暴れるオケに食われ気味で、揃いが今ひとつでしょうか。"時を告げようと…"は表現が薄めかも。


演奏と流れ
オケは第一部では抑え気味で "馬よ!"の激しいパートは少々うるさく、間奏は揺さぶりが気になります。本領発揮は第三部。激しいパートで暴れ気味なのは本来歓迎なのですが、やり過ぎ爆裂でうるさいです。処々フラットで、揺さぶりは情感過多、全体の方向性がわかりづらいです。
ただ、その方向が良いと感じる可能性も無きにしも非ず?です。



極端な激しさと緩急流れをはっきりと感じます。そこをどう思うかで好みは分かれるでしょう。
歌手陣も女性陣は壊滅、男性陣もそこそこです。そこも特に女性陣の好みが合えばgood!な印象に早変わりするかも知れません。好みで大きく評価が分かれそうなクセモノ的グレでしょうね。

"それなら聴いてみよう!" という貴方へ。ぜひ感想をお聞かせください。




レオポルド・ストコフスキー [#1]
(Leopold Stokowski)
[1932年]

ストコフスキーが世界初録音を行なった盤で、米国初演になりますね。オケはストコフスキーが首席指揮者(1912-1938)を務めた時代のフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)です。532人を擁した演奏は、この時代の録音とは思えない良好さで驚きですね。冒頭に本人の解説付き(5'のわかり易い英語です/所有盤)です。


(左:ドビュッシーやラヴェル他4CDset | 右:グレ単独D/L版ですね)


ヴァルデマル王 (ポール・アルトハウス, Paul Althouse)
低重心で押し出しの強い表現です。"馬よ!"は速く急げという表現になっていますね。神に対しても威風堂々とした歌いです。感情が溢れますね。

トーヴェ (ジャネット・ヴリーランド, Jeanette Vreeland)
濃厚に歌いながらテンポ変化で表情表現をつけていますね。厚めの歌いです。

山鳩 (ローズ・バンプトン, Rose Bampton)
表現力が強く、オケのテンポ設定もかなり揺さぶっています。色濃いMezです。

農夫 (アブラーシャ・ロボフスキー, Abrasha Robofsky)
初めて聴くスローさで、歌いはフラット気味です。怯えた感じを出しているのでしょうか。音程も不安気味でなんだか変です。

クラウス (ロバート・ベッツ, Robert Bette)
道化感薄めに伸び伸びとしたテノールで、途中からテンポの揺さぶりが入り表現も濃厚になります。

語り手 (ベンジャミン・デ・ローチェ, Benjamin de Loache)
あまり揺さぶりません。シュプレッヒゲザングというよりも語りに近いでしょうか。抑揚はつけました、といった風です。

合唱団
"よくぞ来られた…"は爆速の激しさですね。ラスト"見よ, 太陽!"は、この時代の録音によく納まったと思える大熱演です。


演奏と流れ
序奏は少し速めで緩やかな揺らぎです。二人の愛のシーンはスローに振って、"馬よ!"と"星は歓びの…"では明確なテンポアップと、パート毎に大きな振り分けの第一部です。第二部は前半穏やかで、後半ヴァルデマルから速く展開します。第三部もスローとファストの振りが大きく、超スローの"棺のふたが…"から爆速"よくぞ来られた…"はすごいです。ラストは大迫力!!



87年前の演奏ですが、極端に緩急を入れ替えるのが特徴的です。アゴーギクというよりもパート毎の振り分けですね。速いパートが時代を感じさせるのは事実ですが、それを楽しめるのも良いですね。歌手陣も全体的に今よりも濃厚な表現・味わいでしょう。

歴史的な1932年の世界初録音、米プレミア演奏をこの音質で楽しめるとは素晴らしいですね。(オーディオマニアの方には無縁の世界でしょうw)




レオポルド・ストコフスキー [#2]
(Leopold Stokowski)
[1961年]

フィラデルフィア管から29年後、とはいえ今から58年前、エディンバラ国際フェスティバルでロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra)を振った録音ですね。ヴァルデマルには小澤/ボストン響[1979年]にも登場するJ.マクラッケン採用です。
冒頭にBBCアナウンスと英国国歌斉唱が入っています。



ヴァルデマル王 (ジェイムズ・マクラッケン, James McCracken)
小澤盤との18年前、この時のマクラッケンの方が落ち着き払っている感じで、"馬よ!"でも伸びよく歌い上げます。神との対峙でも感じるのは激しさよりも伸びの良さでしょう。

トーヴェ (グレ・ブロウウェンスティン, Gre Brouwenstijn)
優しさを感じるのですが、sopはやや力が入って濃いめ尖めでしょう。

山鳩 (ネル・ ランキン, Nell Rankin)
演奏の揺さぶりが以前同様見られます。それに乗ったMezで、表情を色付けして上手い表現は本アルバム中出色です。

農夫 (フォーブス・ロビンソン, Forbes Robinson)
ここでもややスローですが、以前ほどではありません。声は重厚ですが、やっぱり表現薄めです。なぜか"Holla!"が聞こえない不思議さです。

クラウス (ジョン・ラニガン, John Lanigan)
ここでも伸びやかテノールです。これはストコフスキーの好みでしょうか。

語り手 (アルバー・リデル, Alvar Lidell)
今ひとつ説得力に欠けるきらいのあるシュプレッヒゲザングです。テンポ設定が、特に前半、速いからかもしれません。

合唱団
"よくぞ来られた…"はテンポは一般化しましたが、とってもクセの強い歌になっています。"時を告げようと…"でも一部でクセを感じますね。


演奏と流れ
序奏は濃厚な優美さ、二人の愛のシーンも以前ほどスローに振っておらず速めに感じるくらいです。"馬よ!"は速くなりますが、スローとの極端な落差は減りましたね。短い第二部も同様で、第三部も個性は残りつつ平均化しているのは間違いありません。



極端なスロー&ファストの展開の影は潜めました。そうなると録音はmonoでダイナミック・レンジは狭いですから、没個性化してしまいますね。('61年録音としては良いレベルなのですがハンディになります)
とは言え、歌手陣はJ.マクラッケンが小澤盤より好演でN.ランキンの山鳩は一聴の価値があります

両録音ともテンポ変化は判断できますが、ディナーミク系は難しいですね。残念ですが想像力では補填できません。






おすすめ盤
あくまで個人的感想ですが。

 ■ まず一枚なら   ➡️  ①ブーレーズ
 ■ クールさ好み   ➡️  ③インバル
 ■ 豪快に聴きたい  ➡️  ⑥シャイー
 ■ 歌曲として楽む  ➡️  ⑩ヤンソンス

というところかと。ヤンソンス盤はDVDなのでコンサート気配も楽しめます。




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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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