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ユジャ・ワン のピアノ・ソロ Live『ベルリン・リサイタル』を聴く


Yuja Wang
The Berlin Recital
ユジャ・ワンというと技巧的で派手さのステージ向きという印象です。コンサートで観たのは既に6年前のM.T.トーマス/S.F.響と、少々古い印象になってしまっていますね。
その後もドゥダメル/シモン・ボリバルとの共演盤のラフマニノフとプロコフィエフのコンチェルトしか記憶にありません。というわけで評判の良かった北米・欧州ツアーのLiveが出たので久しぶりに聴いてみました。
国内ではゲルギエフ/ミュンヘン管との来日にぶつけたCD発売でもあったわけですが…







セルゲイ・ラフマニノフ
(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)
絵画的練習曲《音の絵》は作品番号33と39、それぞれ9曲構成の中から選曲されています。(33/4は欠番)

前奏曲 Op.23/5
 ロシア民族和声の強烈な技巧系有名曲ですが、どちらかというと表情付けを強くした演奏になりますね。これ見よがしに強音のテクをひけらかす事を避けている感じです。余裕を感じる演奏ですね。


絵画的練習曲《音の絵》 Op.39/1, Op.33/3
 "Op.39/1"は超絶技巧曲です。速いアルペジオでディナーミクとアゴーギクを使っていますが、ここでも落ち着きがあって曲に表情を付けている感じです。押し出しの強い前半と後半も抑え気味です。
一方"Op.33/3"は叙情的な緩徐曲で、ここではエモーショナルなスロー側アゴーギクが映える演奏になります。以前のユジャ・ワンとは印象が異なり、この情感が伝わる演奏は悪くありません


前奏曲 Op.32/10
 ここでも澄んだ透明感ある音色を弾きますね。緩徐曲の表現力、バランスの良いアゴーギクとディナーミク、が見事に発揮されているのを感じます。美しい演奏になっています。




アレクサンドル・スクリャービン
(Alexander Scriabin, 1872-1915)
スクリャービンといえばピアノ曲で、このブログでも多くインプレしています。第5番以降の過渡期から無調への時代が好みですが、このピアノ・ソナタ 第10番は「トリルソナタ」と呼ばれてその名の通りの特徴ですね。単一楽章でソナタ形式になっています。

ピアノ・ソナタ 第10番 Op.70
 幽玄さはスクリャービンで、ここでも出し入れをうまく使っています。淡々とではなく、静的透明感ながら表現力は強めでしょう。テンポの揺らぎがうまいですね。トリルが少し硬く感じるパートもありますが…




ジェルジュ・リゲティ
(György Ligeti, 1923-2006)
ハンガリーの現代音楽家G.リゲティの後期を代表するピアノ・エチュードですね。1985-2001年にかけて作られた全18曲から3曲をピックアップしています。リゲティが亡くなって12年とは早いものです。

ピアノのための練習曲集 第3番, 第9番, 第1番
 「妨げられた打鍵:第3番」「眩暈:第9番」「無秩序:第1番」共にもトリル系のミニマル風な速弾きで、ともするとフラットになりがちですが、曲により打鍵の変化を付けています。第3番はエモーショナルに最後の第1番は速く強健的にといった色付けですね。うまい構成感で聴かせてくれます




セルゲイ・プロコフィエフ
(Sergei Prokofiev, 1891-1953)
熟年期に書かれた 通称「戦争ソナタ」の三作目ですね。ユジャ・ワンですと、一つ前の派手な第7番を選ぶかと思いました。

ピアノ・ソナタ 第8番 Op.84
 調性の妖しさを生かす様な幽玄でミステリアスなパートの中に得意の強鍵が交錯する第一楽章、浮遊感のある微妙な調性感の主題をソフトな優しさで奏でる第二楽章、速い流れをユジャ・ワンらしいシャープで歯切れの良さで突き進む第三楽章です。
最後に現れたこの最終楽章の弾きが本来のユジャ・ワンでしょうね、やっぱり。




緩徐曲の美しさや幽玄さを中心に持ってきたピアノ曲集で、ユジャ・ワンの印象とは一味違ったエモーショナルな表現を魅せてくれるアルバムですね。
とは言え、ベスト・トラックは最後のプロコフィエフの第三楽章の元気さになってしまいます。

そうなると気になるのはスクリャービンとプロコフィエフ(第一楽章)で、幽玄さの中に処々ユジャ・ワン本来の硬く強鍵的な表現に没入するパートがミスマッチ風に感じられる気もします。

ジャケット写真を見ると、ステージ衣装は相変わらず派手ですねw





テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。




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