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マーラー 交響曲 第9番 名盤・珍盤 130CDの聴き比べです [#6 : 91-110]


マーラー第9番も今回(#6)の20枚で100CDを超えました。全て聴いてインプレするにはまだ時間がかかりそうですが、一枚一枚違って楽しいですよね。


Mahler Symphony No.9 -- 130 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:20CD
バーンスタイン[x6 ★☆], アバド[x5 ★☆], ラトル[x2 ★], ハイティンク[x6 ☆], ゲルギエフ
 #2:20CD
カラヤン[x4 ★☆], テンシュテット[x3 ☆], クレンペラー[x4 ★㊟], ノイマン[x3], ベルティーニ[x3 ☆], クーベリック[x2], 井上道義[☆]
 #3:20CD
インバル[x3], M.T.トーマス, ドゥダメル, サラステ, バルビローリ[x3], 朝比奈隆[x2], ジュリー二[x2], ドラティ[㊟], ムント, ペシェク, ドホナーニ, シュワルツ, タバコフ, 小林研一郎
 #4:10CD
ラザレフ, ヤンソンス[x2], シャイー[x2 ★], ジンマン, W.モリス, シェルヘン[㊟], マデルナ[x2 ☆]
 #5:20CD
ノット[★☆], ハーディング[☆], ギーレン[x2 ㊟], 小澤征爾[x2], シノーポリ[x2 ㊟], ザンデルリング[x4], コンドラシン[x2], ミトロプーロス[x2], サロネン, アルブレヒト[x2 ☆], マズア
 #6:20CD 本投稿です
ショルティ[x2], ロペス=コボス, 金聖響, スラドコフスキー, セーゲルスタム[☆], ゴレンシュタイン, 若杉弘[x2], 高関健, 山田一雄, 秋山和慶, 大植英次[㊟], ギルバート, シェーンヴァント, クーン, ブラウン, ミュンフン, ネトピル, ノセダ[☆]
 #7:20CD
ワルター[x2 ★☆㊟], ブーレーズ[x3 ☆㊟], バレンボイム[x2 ㊟], マゼール[x4 ㊟], バルシャイ, ノリントン, エルダー, ツェンダー, 飯守泰次郎, カンブルラン, ブロムシュテット, 尾高忠明, A.フィッシャー, パク・ヨンミン




ゲオルク・ショルティ, Georg Solti (2録音)

鳴りの良さとパワーのイメージが強いショルティ(w/シカゴ響)のマーラーですが、9番(正規盤)はロンドン響とシカゴ響の録音を残しています。アクの強さがマーラーに合うかは好みの問題もあるでしょうね。



(#1)
London SO
[DECCA] 1967-4/28-5/11


帯同して来日したこともあるロンドン響とのマーラー9ですね。1967年録音で、当時はこんなにマーラーに人気がなかったと思います。(少なくともSP→LP時代の親父は長い交響曲は嫌いでしたねw)


【第一楽章】
第一主題は息遣いのごとく表情を見せ、第二主題は葛藤を演ずる様です。その後も表情豊かな展開部で楽しませてくれます。暗雲と嵐、常に"風雲急を告げる"的パワー表現メインですけどw

【第二楽章】
主要主題はもったいぶった調子でややスロー、第一トリオはテンポを上げて切れ味、第二トリオでも図太さを感じます。とにかく強音側のメリハリで疲れますね。

【第三楽章】
主要主題はオケの鳴りが全開、副主題(第一トリオ)では多少肩の力を抜きますが気合がすごいです。中間部(第二トリオ)は落としますが背後に力がこもっているのがわかります。ラストは爆走!!

【第四楽章】
主要主題は太くて濃く、暑いお風呂みたいです。第一・第二エピソードも朗々とした鳴りでスローや閑を排して力感いっぱい。聴き終わったら疲れてぐったり


太く力漲るマッチョなマーラー9です。個性的ですが狂気というわけではなく暑苦しいだけ?、この曲の哀愁や情感には接点がないので残念です。

スキヤキを濃い割下で肉だけガッツリ早食い口いっぱい、みたいなw 好きな方にはオススメです。(爆) えっ、㊟印付けろ?? ですかねぇ。






(#2)
Chicago SO
[DECCA] 1982-5


ショルティと言えば音楽監督(1969-1991)だったシカゴ響。そのマーラー9ですね。上記15年後の演奏ですが、こちらはどうでしょう。


【第一楽章】
第一主題・第二楽章ともに抑えが増して静的に澄んだ音色に変化しています。反復から第三主題も適度な激しさを見せてバランスがいいですね。展開部も落ち着いてクセがなくなりお手本的、見晴らしよくなりました。後半スローが気になるのは演奏時間も3'以上長くなったからでしょうか。

【第二楽章】
全体の流れは似ていますが、少し肩の力が抜けて聴き疲れは弱まりました。第一トリオ以降もスロー気味です。

【第三楽章】
LSOと同傾向、全開運転です。中間部は少し速くなっている感じです。

【第四楽章】
通して同じ様な流れですが、少しスロー化して楽になった感じです。それにしても何かが伸し掛る様に強く重いです。ラストの静音はオマケみたい。


力強いマーラー9です。一部は一般化しましたが、いずれにしろ力感

ならばいっその事ロンドン響に一票でしょうか。





ヘスス・ロペス=コボス, Jesús López-Cobos

Cincinnati Symphony Orchestra
[TELARC] 1996-5/5,6


本年(2018年)3月2日に亡くなったスペイン人指揮者ロペス=コボスが首席指揮者(1986-2001)を努めていたシンシナティー響を振ったマーラー9、他には2,3,10番を残していてファンがいますね。


【第一楽章】
第一主題から第二主題への変化の流れは適度、そこからの反復と第三主題(コデッタ?)も安心して聴けますね。展開部も奇を衒ったパートはなく、標準王道的な落ち着きです。どちらかと言うと穏やかさの印象でしょうか。

【第二楽章】
主要主題から優美さ、第一トリオも刺激的変化を避けてマイルドに、第二トリオはよりマイルドで少し長く感じます。

【第三楽章】
主要主題は切れ味よく、副主題も同じ流れ。中間部は色合いは変えますがテンポ変化は少なめです。ラストもパワーはふるいますが刺激は薄いですね。

【第四楽章】
主要主題の穏やかな広がりの良さは得意とする処でしょう。流れの延長で第一エピソード、第二エピソード共には情感は適度ですが、後半からコーダのターン音型では静的に落としてこの曲らしさを聴かせます。


まとまりの良いマイルドなマーラー9です。抑え気味のアゴーギク・ディナーミクで個性・刺激には欠けるかもしれませんね。

刺激物の苦手な貴方にオススメですw





金 聖響, Seikyo Kim

Kanagawa Philharmonic Orchestra
[Octavia] 2011-5/28


在日韓国人指揮者の金(キム)さんは2009年から2014年まで神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を務めました。その時代の録音になります。その後いろいろ問題があったのは残念な事です。


【第一楽章】
序奏・第一主題は緩やかに、第二主題からは重厚さを見せる教科書的な流れです。反復最後の第三主題にかけてもきっちりと盛り上げています。展開部も陰鬱さとアレグロ・リゾルートからの激しさと良いコントラストで堂々本流ですね。ただキッチリとしている気配が強すぎて機械的な流れです。

【第二楽章】
主要主題はゆったりレントラー、第一トリオでキリッと表情を上げてリズムよく、第二トリオは穏やかに、と正攻法です。山場も約束通りに盛り上げますが、教科書通り的で表情が感じられません。

【第三楽章】
ここでも主要主題から副主題を全く違和感なくリズミカルに、中間部でターン音型を美しく奏でます。規格品ですが何かが足りません。

【第四楽章】
vnのターン音型は美しく、第一エピソードは陰鬱さを軸とする流れをきれいにつけています。第二エピソードも後半からはコーダに向けた流れが作られています。何かが欠けている様な、個性に欠けるのが個性?!


不要な揺さぶりを殺して、教科書の様なマーラー9です。レシピ通りの料理が好きな貴方向き?

ただこの曲に欲しい情熱や思い入れが伝わらないのが唯一最大の問題かもしれません。せっかくのLIVEなのですが。





アレクサンドル・スラドコフスキー, Alexander Sladkovsky

Tatarstan National Symphony Orchestra
[Μелодия] 2016


(古いコンドラシンとスラドコフスキーの1,5,9番をカップリングした面白いアルバムですね)

スラドコフスキーが首席指揮者で音楽監督を務めるタタルスタン国立交響楽団を振ったマーラー9ですが、両者ともよく知りません…


【第一楽章】
スローの序奏・第一主題から第二主題は激しさに表情を変え二面性を見せてきます。第三主題ももちろん激しさです。展開部も静のスローと烈のファストの明確な表情付けが、陰鬱さ・美しさ・激しさを生かす流れです。明瞭な第一楽章ですね。

【第二楽章】
歯切れの良いレントラーの主要主題から第一トリオをいきなりテンポアップ、第二トリオでスローダウンします。微妙ではなく明瞭なアゴーギクです。

【第三楽章】
主要主題は少々慌ただしい感じですが副主題で少し取り戻します。両主題が絡んだ後、中間部では澄んだ音色からラストは精一杯盛り上げます。わかりやすい流れですね。

【第四楽章】
第一主題は予想通り一楽章回帰的にスローです。第一エピソードの鬱さは情感に欠けますし、第二エピソード後半からのターン音型のエモーショナルさは弱いです。山場は盛上げますが…


すっきり明快なマーラー9です。主題・動機ごとに明瞭にアゴーギクを振り替えています。

個性も含めて微妙な"わび・さび"感は弱いです。(この曲に一番欲しい物かもしれません)





レイフ・セーゲルスタム, Leif Segerstam


Danish National Radio Symphony Orchestra
[CNANDOS] 1991-9/23-25


(第7番とのカップリング3CDです)

北欧の怪人、フィンランドの指揮者セーゲルスタムです。個人的には多作の現代音楽家のイメージが勝ちますが、指揮者としての来日も楽しませてもらいましたね。DR放送交響楽団(デンマーク放送交響楽団)首席指揮者時代(1988–1995)の演奏です。


【第一楽章】
とてもスローで大きな第一主題です。第二主題もその流れでスロー、そこから大きく山場を築いて反復、第三主題は落ち着きを払った雄大さです。展開部もスローを基本として奥行きのある流れを作っています。

【第二楽章】
主要主題スローで落ち着いたレントラーですが切れ味があります。第一トリオは威風堂々と、第二トリオは落ち着かせる様な優しさですね。山場は抑え気味で、この楽章のスローだけが'今ひとつ感'があるかもしれません。

【第三楽章】
主要主題と副主題は標準的なテンポで歯切れがいいですね。中間部のターン音型は最終楽章を印象付ける美しさです。ラストの緊迫は見事!決まりました。

【第四楽章】
主要主題は緩やか優美です。第一エピソードでは入りのcbからコーダ終焉に向けた気配を漂わせる構成です。第二エピソードも山場を含めて感情が溢れ出て、後半からコーダにかけての静音ターン音型の素晴らしさは格別かもしれません。


セーゲルスタムらしいスローで雄大さと情感のマーラー9です。単純な静スロー・激ファーストの様なアゴーギクではないのがセーゲルスタムらしさでしょう。

思い入れを感じられてとても好きな一枚です。CHANDOSの音の良さも一役買っているでしょう。





マルク・ゴレンシテイン, Mark Gorenstein

State Symphony Orchestra of Russia (Svetlanov SO)
[MDG] 2010-2/20


釜山フィルの首席指揮者も務めたゴレンシュタイン、ロシア国立交響楽団の音楽監督(2002-2011)時代の録音です。


【第一楽章】
緩やかスローの第一主題は美しく第二主題は変化は少なめに入って大きく広げます、反復後の第三主題も含めて王道ですね。展開部もスロー基本で大きくバランスの良さがありますが、やや刺激に欠けて時折スローの間延びも感じます。

【第二楽章】
レントラー主題もスロー強調ですが、第一トリオではしっかりと締めて、第二トリオは緩やか。山場もスローなので強調感に欠けますね。

【第三楽章】
主要主題はリズミカルで重さを付けて良い流れを作ります。第一トリオも流れに乗って緊張感を保ち、第二トリオで緩やかにターン音型では美しさを強調しますがその後が弱いです。でもラスト山場は暴れて面白く、この楽章が一番でしょう。

【第四楽章】
主題は得意の雄大さが光ります。第一エピソードは暗く鬱に入りスローを生かして大きく広げて良い流れを作り、第二エピソードは一転速めで入ります。山場(mixingバランスが?)から徐々にスローに戻し、ターン音型を緩やかに納めます。


緩やか広々スローなマーラー9ですね。スロー主体でアゴーギクが薄く、強音パートに締まりに欠けるのが残念ですね。

良い処もあり、ジャケットも好きなのですが。





若杉弘, Hiroshi Wakasugi (2録音)

ドイツを中心に指揮活動をされ現代音楽にも精通された若杉さん、亡くなってから今年で10年になるんですねぇ。本場ドイツで研鑽したマーラー9、興味ある二つの録音を残されています。



(#1)
Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[Altus] 1983-6/11


始めのドイツのオケのポストに就いたケルン放送交響楽団(現:ケルンWDR交響楽団, WDR Sinfonieorchester Köln)、首席指揮者(1977–1983)時代のマーラー9ですね。


【第一楽章】
スローで穏やかな第一主題、陰を強くする第二主題、反復から第三主題も研ぎ澄まされて堂々の提示部です。展開部も陰で悠々とした流れを作り、山場も過度の興奮を避け緊迫感重視です。

【第二楽章】
主要主題は緩やかスローに、vn動機は力強さを見せます。第一トリオはより歯切れの良さで第二トリオのシンプル優美につなげます。ここ二つの中間楽章は冷めたクールさです。

【第三楽章】
主要主題は力感を込めながらも客観性を強く、第一トリオもしっかりと抑えを効かせます。中間部(第二トリオ)は"subito poco espressivo"なのですがpoco強めのシンプル美ですね。ラスト山場も計算通りの盛上げでしょう。

【第四楽章】
主要主題は殊更のスローではありませんが緊迫感が漂います。第一エピソードはトーンダウン風に抑えて入り、vn独奏や木管からの流れを生かし見事に情感を湛えます。第二エピソードは山場を切れ味よく、そして後半のターン音型を日の沈む夕暮れの様に感じさせてくれました。


悠々としたスローを基に泰然たるマーラー9です。興奮を排して個性的なクールさと言っていいでしょう。

ただ、二つの中間楽章に感情移入を補填する+αが欲しかったのも確かです。興味深い一枚には違いありません。






(#2)
Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra
[fontec] 1991-5/2


約10年の時を経て、都響の音楽監督時代(1986-1995)にタクトを振ったマーラー9番です。マーラー・チクルスの一枚ですね。さて、その変化はどうでしょう。


【第一楽章】
第一主題から第二主題への流れは一般化した感じです。特に第二主題はテンポを速めにして反復や第三主題に刺激を与えています。展開部以降もスローの基調は見せるもののメリハリが付き王道化ですね。

【第二楽章】
主要主題を速め一般的?、に戻して心地よい流れを作ります。第一トリオも明確なリズム変化を作って、第二トリオをスロー優美に奏でます。没個性?にはなりましたが聴きやすのは間違いありません。

【第三楽章】
主要主題はここでもテンポアップ(=一般化)して締まりを見せ精悍な演奏になっています。副主題と中間部ではテンポ変化も明確化されて見晴らしも良いですね。ここまでの三つの楽章は大きく時間短縮されています。

【第四楽章】
主要主題はなぜか第5番アダージェットを思い浮かばせます。第一エピソードは静的に入りますが感情の盛上りは抑えめになっています。第二エピソードは速め、山場もその流れの上に作られます。後半からコーダ終焉のターン音型はお約束通りですね。


王道化ですが教科書的なマーラー9になりました。より見晴らしが付き、欠点もなく都響の演奏も見事なのですが、個性漲る10年前のケルン放送響が懐かしく感じてしまいます。

質は高く、初めて聴くにも良いと思う一枚ですね。





高関健, Ken Takaseki

群馬交響楽団
[ALM] 1999-3/21


高関さんが群馬交響楽団の音楽監督時代(1993 - 2008年)の録音ですね。


【第一楽章】
第一主題から第三主題までメリハリが不足している感じです。展開部もスローパートのモヤッとした感じが拭えないのはアゴーギクやディナーミクの弱さだけでなく、管楽器の音色もあるかもしれません。強音パートは適度に暴れて面白いですが前途多難を感じました。

【第二楽章】
主要主題は速めですが何かスカッとしません。第一トリオは流れに乗ってシャープさが感じられます。速い展開はいける様ですね。第一楽章よりまとまってきました。

【第三楽章】
主要主題はマーラー指示の様に荒々しさがありなかなかです。第一トリオもその流れに乗り、第二トリオの静展開ではやはり何かこもった気配になります。ラスト山場は見事です。

【第四楽章】
不安を感じたスローの主要主題は落ち着いた演奏になります。第一エピソードは繊細なのですが、寂寞感や情感に繋がりません。第二エピソードは山場があるので、そこはこなしています。


今ひとつ見晴らしの良くないマーラー9です。全体的には荒れたパワーパートは面白さがありますがスローのモヤモヤが拭えず。

テクニカル部分も含めて、この曲の持つ哀しみや美しさと言った情感が弱く感じました





山田一雄, Kazuo Yamada

新日本フィルハーモニー交響楽団
[fontec] 1986-6/7


ヤマカズさんが新日本フィルを振ったマーラー9ですね。本当は第5番同様映像付きで見たいところです。


【第一楽章】
緩やかで緊張感を漂わせる第一主題と第二主題、そして反復からの第三主題は雄大です。展開部は陰鬱な流れからJ.シュトラウスの引用で明るさを見せ、流れよく山場へと進みます。鬱パートと山場の組合せは明確にコントラストを付けてきますがしっかりとアゴーギクがコントロールされて心地よいですね。再現部の間延び感が少し残念ですが。

【第二楽章】
レントラー主題は速く軽快な勇み足風に、第一トリオで一般的なテンポ設定に戻し明快な三拍子を付け、第二トリオでスローダウン。三つの顔を明確にしていますね。

【第三楽章】
主要主題は速めに少し乱暴で切れ味よく、第一トリオでは流れに乗った落ち着きを見せて、第二トリオはまさに中間部らしい美しい流れを作り出します。ラストも暴れて見事な構成感ですが真面目過ぎかもw

【第四楽章】
主要主題は第一楽章で感じた様な緩やかな緊張感が少し弱いですね。第一エピソードを支配する静は全体スローでコーダをイメージさせ、第二エピソードはテンポアップして山場を迎えた後スローに落としコーダへ繋げます。


構成感もあり きっちり真面目なマーラー9です。スローの優しさとコントロールされた強音パートをどう見るかで評価は分かれるかもしれません。

個人的にはコンサートならではの一体感や興奮が欲しいところです。少し羽目を外してもいいかも。指揮台のヤマカズさんの音が聞こえますねw





秋山和慶, Kazuyoshi Akiyama

The Kyushu Symphony Orchestra
[fontec] 2011-11/10


日本指揮者協会の会長である秋山和慶さんが九州交響楽団首席指揮者時代(現:桂冠指揮者)にタクトを振ったマーラー9番です。もちろん九響も日本オーケストラ連盟の正会員なのでプロのオケです。


【第一楽章】
第一主題はややスローで重さは控えて、第二主題でも表情変化は薄めですね。ところが反復前から第三主題で魂が入った様な情熱を感じさせる流れを作り出します。展開部もスローな面持ち・秘めた情熱ながら、そのスローが無表情でそっけないのが残念です。アレグロ・リゾルートからのテンポ変化は上手く、その後の出し入れの効いた構成は緊迫感を伝えてくれます。

【第二楽章】
ここでも主要主題はスローに入り、第一トリオは締まりを付けた感じです。第二トリオは優しく、でも全体的には緩さを感じてしまいます。凡百に埋もれそう。

【第三楽章】
主要主題は緩く感じ、副主題(第一トリオ)もやや締まりに欠けますが第二楽章よりは良い感じ。中間部(第二トリオ)は標準的穏やかさです。ただ、後半からラストに盛り上がりと締まりはありましたね。

【第四楽章】
序奏から主要主題は表情が引き締まった様な哀愁と思いを感じました。第一エピソードは後半のターン音型哀愁を印象付ける様な流れです。第二エピソードは速く、二つの山場はしっかり締めて、後半からコーダへはターン音型を崩しながらのお約束です。


処々で見せる緊張感にハッとしますが、全体としては玉石混交的のマーラー9です

この曲に欲しい情熱溢れる一体感が垣間見られたのは嬉しかったですね。ただ、最後に残念なフラブラでぶち壊しでした。カットして欲しかったです。





大植英次, Eiji Oue


NDR Radiophilharmonie
[EXTON] 2009/6/28


大植さんのハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニーの主席指揮者(1998-2009)最後の年の来日Live(サントリーホール)、ほぼ10年経つんですねぇ。世界最遅のマーラー9になります。(Kaplan Foundation 2010ver.)


【第一楽章】
大きなスローで緩やか揺らぎの第一主題、美しく広がりがあります。第二主題も抑えながら大きく反復へ向かい第三主題も派手に鳴らさず間をとったアゴーギクを生かしてきます。展開部でもスロー静を基調として揺さぶりのある流れ。アレグロ・リゾルートで多少テンポアップしパワーも見せますが基本はあくまでスローの揺らぎです。

【第二楽章】
主要主題は極スローに二つの動機を絡め、hrに奇妙なヴィヴラートも入れています。第一トリオも切れ味はありますがスロー、第二トリオもスローで出し入れにクセはありません。流れのアゴーギクは弱く、要は全体をスローに引き伸ばした感じです。

【第三楽章】
主要主題は当然ながらスロー、第一トリオも同様ですが不思議な切れ味が感じられます。中間部は必要以上には落とさず流れを合わせている様です。ただマーラーが二つの中間楽章に指示した激しさには縁がありませんね。(ラスト一瞬垣間見ますが)

【第四楽章】
主要主題はスローを生かした美しさで哀愁感は低く、第一エピソードはスローな鬱と美。前半印象は甘美なアダージョです。第二エピソードは初めからターン音型を意識させながら山場を作ります。アゴーギクは薄く浮遊感を強め、スローを効かせて静かに絶え入ります。


強烈なスローが個性的マーラー9です。興奮や強音も抑え込んでいます。それをどう取るかで好みは分かれるでしょう。少し間延び感が気になるのも確かですが、個人的には個性派歓迎方向です。

師バーンスタインとは似ても似つきません、というか似た演奏は浮かびませんw

大阪公演もあったと思います。ブログに演奏会インプレを残す前なので既に記憶(脳)はあやふやですが、妙な揺らぎのスロー・マーラー9の印象でした。(CDでは揺らぎは薄く感じますが)





アラン・ギルバート, Alan Gilbert

Royal Stockholm Philharmonic Orchestra
[BIS] 2008-6/2-7


都響/首席客演指揮者のA.ギルバートがロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団で首席指揮者(2000-2008)を務めた最後の年のマーラー9ですね。ちなみに来年(2019)からNDRエルプフィルハーモニー管(旧:北ドイツ放送響)の音楽監督ですね。


【第一楽章】
第一主題・第二主題は特徴的ではありませんが、緊張感をうまく与えていますね。それを反復から第三主題へとつなげます。揺らぎも上手く使い、緊迫する提示部ですね。展開部もJ.シュトラウスの引用を穏やかに、アレグロ・リゾルートからは迫力を明確に打ち出すコントラストが心地良いですね。アゴーギクとディナーミクのマッチした切れ味があります。

【第二楽章】
主要主題は速めで二つの動機を絡めますが、印象は穏やか。第一トリオも格段のアップは見せず、第二トリオでも表情変化は薄めです。穏やか速めの印象です。

【第三楽章】
主要主題も副主題もほどほど的に尖っています。ここでも速めの流れから中間部も変化は少ないですね。ラストはテンポアップで激しさを見せますが、中間楽章二つはコントラストに欠けるきらいがあります。

【第四楽章】
主要主題は緩やかな哀愁感です。第一エピソードは静哀に軸足を置いて後半ターン音型を印象付ける感じです。第二エピソードは山場を大きく作ってターン音型につなげ、静的な終息になります。


全体が速めで どこか落ち着かないマーラー9です。静音パートをスローにして、強音は速めるというお約束的な設定ですが、よそよそしく落ち着きません。何がそう思わせるのでしょう?!

流石はBISで録音はいいですね。





ミヒャエル・シェーンヴァント, Michael Schønwandt

Danish National Symphony Orchestra
[Challenge Classics] 2012-1/7


オペラを得意とするデンマーク人指揮者シェーンヴァントがデンマーク国立交響楽団(DR放送響)を振ったマーラー9ですね。首席客演指揮者を務めた事もあるデンマーク・セットです。


【第一楽章】
第一主題はバランスよく表情を付けています。第二主題でも感情を盛り上げ、反復から第三主題で広げます。堂々の提示部ですね。展開部でも重心の低い流れで、穏やかな前半から中盤を陰影強く構成します。

【第二楽章】
一楽章に対比する様な軽快なテンポの主要主題がうまいですね。第一トリオも切れ味で明るさを表現、第二トリオではテンポを落として落ち着かせます。表情豊かです

【第三楽章】
主要主題は力強くメリハリよく、第一トリオで少し落ち着きを取り戻し、第二トリオでは穏やかな広がりを見せます。上手い組み立てですね。もちろんラストは激しさとアッチェレランドで山場を駆け抜けます。

【第四楽章】
一転して主要主題は緩やか大きな流れを作り楽章間のコントラストを明確にします。マーラーの指示を生かした感じですね。第一エピソードは繊細さを奏で、第二エピソードは少しテンポを上げて山場を大きく築きます。そこからはゆっくりスロー静へ流れてターン音型入り、コーダに沈みます。


まとまりの良い明確な構成感のマーラー9です。奇を衒わず王道的で安心して聴けますね。

何か+α、Liveならではの興奮や一体感があればです。侮れずシェンヴァント!





グスタフ・クーン, Gustav Kuhn

Orchestra Filarmonica Marchigiana
[Oehms Classics] 2004-2


ドイツ人指揮者クーンがイタリアのマルキジアーナ・フィルハーモニー管弦楽団(1985年設立)を振ったマーラー9です。クーンは来日もありますが、オケ共に知見がありません。


【第一楽章】
第一主題はややスローですが揃いが今ひとつ、第二主題から反復もややギクシャクです。展開部も流れどうのよりも音の細部がまとまらない感じが気になります。

【第一楽章】
主要主題はややスローでまとまり、第一トリオでも活性を見せ、第二トリオは軟着陸します。でも流れはダラっとしてもっさりに感じます。

【第一楽章】
主要主題と副主題は良いリズム感を作ります。モヤモヤですが、スカッと抜けた何かがあればいい感じでしょう。ラスト山場は走れません。

【第一楽章】
主要主題はややスローでフラット。第一エピソード・第二エピソードでもペタッとフラットです。浮遊感の薄いターン音型も残念。


全体スロー・フラットでレベルの低さを感じてしまうマーラー9でしょうか。アゴーギクを振ったら成立しないのではなどと邪推してしまいます。

オケの技量も含めて演奏が手の内に入っていない感じです。残念ながらワースト争いの一枚ですね。





ジャスティン・ブラウン, Justin Brown

Badische Staatskapelle Karlsruhe
[PANCLASSICS] 2011-7/17,18,19


2008年からJ.ブラウンが音楽監督を務めるカールスルーエ・バーデン州立歌劇場のオケ(カールスルーエ・バーデン州立管弦楽団)を振ったマーラー9番です。J.ブラウンはタングルウッドで小澤さんやバーンスタインに師事し、バーンスタインのアシスタントも経験しているそうです。


【第一楽章】
第一・第二主題を標準的に、反復での第三主題も大きく奏でて王道的提示部です。展開部もクセはなくアレグロ・リゾルートからの激しい出し入れも経過部も落ち着いています。流れはやや速めですね。

【第二楽章】
主要主題はスローで折り目正しく、第一トリオはリズミカルに、第二トリオではスロー・シンプルに。後半もマーラーの"きわめて粗野に"という感はなく、気の抜けた炭酸飲料的です。

【第三楽章】
主要主題・副主題(第一トリオ)は速めですがマイルド、力みなぎる感じはありません。中間部はスロー・シンプルですが美しさや哀愁も薄いです。マーラーは"きわめて反抗的"と言っていますが。

【第四楽章】
主要主題は優美です。第一エピソードはターン音型の印象を強く奏でて緩やかに、第二エピソードも山場も抑え気味に後半のターン音型に繋げ終息に向かいます。特徴はありませんが、この楽章が一番良いのかもしれません。


落ち着いたマーラー9です。多少のアゴーギクは感じますが、小澤さん ましてやバーンスタインの印象はありませんね。

クセもミスもないのですがこじんまりして、何か個性が欲しいところです。





チョン・ミュンフン, Myung-Whun Chung

Seoul Philharmonic Orchestra
[DG] 2013-8/29,30


韓国生まれの米国人指揮者チョン・ミュンフン、ソウル・フィル(ソウル市立交響楽団)音楽監督時代のマーラー9番です。


【第一楽章】
第一主題はスローに続く第二主題も柔らかさ重視で、反復から第三主題で山場を作ります。展開部もスロー穏やかメインに山場を築くコントラストが明確ですね。好きな流れですが無表情的で、再現部はもやっとしてしまいます。

【第二楽章】
主部主題はややテンポを上げてリズムよく、第一トリオも大きくは変えずスケルツォらしいです。第二主題は静でスローに落とします。

【第三楽章】
主部主題・副主題はいきなりのアップテンポ、中間部で静で薄く展開します。ラストも盛り上げますが、なぜか訴えて来ません。

【第四楽章】
主要主題は弦楽器で大きく奏でます。第一エピソードは薄く良い流れですが無表情、ラストがコーダの様なのはやり過ぎでは。第二エピソードも早々と前半からエンディングに意識を持って行っている感じです。


第一・第四楽章の静を強調したマーラー9です。ただ、この曲に欲しい情熱や思い入れとは無縁ですね。





トマーシュ・ネトピル, Tomáš Netopil

Essener Philharmoniker
[OEHMS] 2018-4/10-13


チェコ人指揮者ネトピルは、ストックホルム王立音楽院でヨルマ・パヌラ(Jorma Panula)に師事し、2013年からエッセン・フィルの音楽監督を務めています。
(エッセン・フィルは、1906年にマーラーの"交響曲第6番"をマーラー本人の指揮で初演していますね。またR.シュトラウスの"家庭交響曲"もシュトラウス本人指揮で初演されています)


【第一楽章】
穏やかでスロー美の第一主題から、同じ雰囲気を漂わせて第二主題へ。反復後の第三主題は広がりを見せて展開部も穏やかさを主体にしてJ.シュトラウスの引用を聴かせます。山場も大きいですが穏やかさが感じられますね。少々緩め美的な第一楽章でしょう。展開部で経過部の鐘が殆ど聴こえないのは不思議ですが。

【第二楽章】
主要主題は弱く穏やかで、第一トリオもマイルドに第二トリオは当然一層穏やかです。

【第三楽章】
主要主題は弾みますが強烈さはありません。副主題(第一トリオ)も平和な気配で、中間部は緩徐的表情に変化させますが元々穏やかですから…

【第四楽章】
主要主題は広がりある甘美さを奏でます。第一エピソードも陰影は付けますが哀愁は薄めの穏やかスロー、第二エピソードも山場は〆めますが緩い静的パートが印象を支配しますね。コーダからフィニッシュは哀しみをpppに沈めて終息します。ここで救われた感じです。


穏やかスロー甘口のマーラー9です。全体を通して破綻のない綺麗な演奏ではありますが。

生クリームたっぷりのケーキに、ぬるくて砂糖いっぱいのコーヒーをホテルのラウンジで、みたいな。





ジャナンドレア・ノセダ, Gianandrea Noseda


Orchestra Teatro Regio Torino
[fone] 2017-10/20,21


2007年から本年(2018年)4月まで音楽監督を務めていたトリノ王立歌劇場(トリノ・レッジョ劇場)管弦楽団とのLive録音になります。


【第一楽章】
第一主題は静的ですが珍しい速め軽やかさ、第二主題でも重さを抑えています。山場と反復の第三主題はクドさを避けたうまい盛り上げですね。展開部もさらっと心地よい流れをベースにメリハリを付けていますので纏わりつく様な重さはなく、後半葬送行進曲の流れも軽妙です。とても興味深い第一楽章です。

【第二楽章】
主要主題は速めで爽快に、第一トリオでも歯切れを増しますが軽快さ重視です。第二トリオも穏やかですが軽やか、全体の流れが統一された心地よさを感じますね。

【第三楽章】
主要主題は歯切れよく芯のある流れを作り、副主題(第一トリオ)はもちろん軽妙で、中間部(第二トリオ)では約束通りの緩やかさにします。ハープで主題が入れ替わるパートで振られた特徴的なスローのコントラストはフィニッシュと合わせて強力です。

【第四楽章】
主要主題は緩やかな哀愁ある正攻法で緩やかに入り、テンポを上げます。第一エピソードも哀愁を強く奏でますが速めのテンポでクドさを回避、第二エピソードも穏やかな哀愁感の心地よい流れから二度の山場を大きくコントラストを付けます。コーダからフィニッシュはスローand超静音に消え入ります。


独特の構成を生かしたマーラー9です。前半のオリジナリティーある軽快な流れから、後半はキレと哀愁で死を纏ったイメージを表現。

この曲に沿わせる見事な流れは秀逸。その構成感に一票を投じましょう。








聴いた印象を素直に少しづつアップしていきたいと思っています。数々のヴァリエーションからこの曲の全体像が感じられると嬉しいと思います。


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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