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2016年ドナウエッシンゲン音楽祭 (Donaueschinger Musiktage 2016) で味わう現在形現代音楽

毎年同じみ、ドイツのシュヴァルツヴァルトで開催される前衛現代音楽祭のCDが国内でもリリースされました。
今年(CD化は毎年一年遅れ)はCD2枚組ですね。毎年同じ事を書きますが、3枚になったり4枚になったりDVDが入ってたり出るまでわからないのも前衛でしょうか?!!

今回のアルバムはお馴染みの若手・中堅の現代音楽家が並びましたね。作品別にインプレしましょう。CD1はアンサンブル、CD2は管弦楽になります。



【CD:1】

レベッカ・サンダース (Rebecca Saunders, 1967/12/19 - )
Skin for soprano and 13 instruments (2015 /16)
Juliet Fraser (soprano), Klangforum Wien, Titus Engel (cond.)

ノイズ系炸裂音の印象があるサンダースは、何と言ってもダルムシュタット直系の現代音楽家ですね。"スキン"の詩はジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」から主人公の妻モリー・ブルームの最後の一節を引用しているそうです。
 特殊奏法を使ったアンサンブルは例によってパルス・ノイズ・クラスター的で、無音の"間"を生かしています。唄いはシュプレッヒゲザングで旋律はありません。唄は音の跳躍が激しく「月に憑かれたピエロ」的でもあり、全体混沌です。歌詞も聞き取れません。炸裂衝撃波もサンダースらしいと言えばそうなのですが、やっぱり目新しさはありませんね。



ベルンハルト・ガンダー (Bernhard Gander, 1969 - )
Cold Cadaver with Thirteen Scary Scars for 21 instruments (2016)
Steamboat Switzerland, Klangforum Wien, Titus Engel (cond.)

kokotonPAPA一押しの現代音楽家の一人、ベルンハルト・ガンダーですね。KAIROSレーベルから2枚ほどのリリースはありますが、もっと注目されて然るべきと思います。"13の恐ろしい傷跡持つ冷たい遺体"は傷や恐怖を形にした13の恐れだそうで、13種のリズムを使っているそうです。
 アンサンブル(スチームボート・スイスランドというロックバンド?が入ります)は打楽器リズムで躍動します。ロックのドラムサウンドで、それに楽器群が特殊奏法を含めて打楽器リズム風に反復で流れていきます。重厚な激しさに動機の様な旋律が存在しているのはガンダーらしさでしょう。ベートーベン「運命」の主題ジャジャジャジャ〜ンが引用されているのも笑えます。そこからリズムは大きく変わって、猛獣の唸りの様になり下降音階が流れます。複合三部形式の中間部ですね。最後は主部が回帰し、コーダはミュートのtpですw
ポップな欧州前衛ポストミニマル?! やっぱり面白いですね。



マルティン・スモルカ (Martin Smolka, 1959 - )
a yell with misprints two movements for ensemble (2016)
ensemble recherche

チェコの現代音楽家でヴェーベルンから米実験音楽までベースがありますが、調性が感じられる音楽も作りますね。この"誤植の叫び"は二楽章で9つのルール「悪意のプロモーションでない事」「チェス・プレイヤーの様な計算」「とにかく美しい」等々で作られているそうですw
 第一楽章は無調ポリフォニーですね。簡単に言うとアンサンブルの各楽器が勝手に演奏している感じです。時折調性感の強い短い静音スローパートが入ります。第二楽章はその静音パートから入り、神秘的な空間を作ります。今度はそこへ木管楽器が斬り裂く様な強音を挟みます。両楽章ともに、そのコントラストが面白いですね。



【CD:2】

ジェイムズ・ディロン (James Dillon, 1950 - )
The Gates for string quartet and orchestra (2016)
Arditti Quartet, SWR Symphonieorchester, Pierre-André Valade (cond.)

スコットランド出身の現代音楽家で、ダルムシュタットで『新しい複雑性』を身に纏いながらロックから民族音楽までをバックボーンにしています。最近ではスペクトル楽派の影響とコンピューターアシストの作品も作られていますね。"門"は聖域に入る事で、日本の鳥居⛩で説明されています。入場はentrance → en-trance → trance(陶酔)だそうです。
 無調ですが混沌や即興的ではなく、パターンを組み合わせて構成感があります。トリル・グリッサンド・ロングトーンといった基本技法で大きな流れを組み立て、基本は静的な美しい音色で空間音響系的でもあります。とても心地良さを感じますね。
アルディッティ4をフィーチャーした今の時代の弦楽四重奏協奏曲、コンサートで聴いてみたいです。



フランク・ペドロシアン (Franck Bedrossian, 1971 - )
Twist for orchestra and electronics (2016)
SWR Symphonieorchester, Alejo Pérez (cond.), IRCAM, Robin Meier (computer music designer)

フランスの現代音楽家で、IRCAMでファーニホウやミュライユに習い、ラッヘンマンにも師事しています。ここでもIRCAMのエレクトロニクスを使っていますね。"ツイスト=ねじ曲がる"はアコースティックな音をエレクトロニクス音化して大音響にする事だそうです。
 強音パートはトーンクラスターと電子ノイズの凶暴な音楽です。それとポリフォニカルな混沌さとのバランスが面白いですね。好きな音楽ですね。IRCAMのロビン・マイアーの力量が発揮されている様です。

試しにYouTubeで観てみる?
 実際の音楽祭でのライヴ映像です。素晴らしい!!



マルティン・ヤギー (Martin Jaggi, 1978 - )
Caral for orchestra (2016)
SWR Symphonieorchester, Pierre-André Valade (cond.)

スイス生まれの若手現代音楽家でチェリスト、世界各国から委嘱を受けて現在はシンガポールで教鞭もとっています。世界各国の文化を取り上げていて、"カラル"は古代遺跡シリーズの一環で、旧南米の都市(カラル遺跡)をモチーフにしているそうです。
 木管主役の無調ポリフォニーの強弱出し入れです。民族音楽をベースにしているかもしれませんが特徴は薄く退屈です。
楽譜や理論に特別なものがあるのかは不明ですが、28歳にしては表現的突出感が足りない気がします。若手には新しい世界を期待してしまいますね。



ゲオルク・フリードリヒ・ハース (Georg Friedrich Haas, 1953 - )
Konzert für Posaune und Orchester (2015 /16)
Mike Svoboda (trombone), SWR Symphonieorchester, Alejo Pérez (cond.)

オーストリアの現代音楽家で、フリードリヒ・チェルハらに学び、米現代音楽かからも習っています。ミクロポリフォニー(リゲティが使い命名した技法)、ミクロインターバルを使うスペクトル楽派の一人。"トロンボーン協奏曲"ですが、演奏者マイク・スヴォボダの為に作ったそうです。この前年の音楽祭でもトロンボーンを使った曲を披露していますね。
 チューニングを弄った弦楽器のアルペジオ、オケの厚いサウンド、それに乗るtbの派手な音色、そんな音楽です。即興性等の聴きづらさはなく、旋律らしき流れが存在します。tbも技巧パートはありますが超絶的ではなく、代わりに後半では微分音の旋律を聴かせてくれます。ハースらしい今の時代のクラシック音楽ではないでしょうか。


試しにYouTubeで音楽祭のダイジェストを観てみる?
 上記のサンダース"Skin"、ディロン"The Gates"、ハース"Konzert für Posaune und Orchester"が入っています。



今回は映像がないのでインスタレーションは味わえませんでしたね。ガンダー、ディロン、ペドロシアンは楽しめました。一方、今回一番期待した若手M.ヤギーは平凡で残念でした。
やっぱり映像付きでインスタレーション・エクスペリメンタリズム前衛音楽を味わいたいですね。

注目のインスタレーションだった Yutaka Makino "The program" をチョイ観する?




♬ 現代音楽CD(作曲家)一覧


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・2017年12月9日
音楽ブログに特化するためにタイトルを「現代音楽と酒の日々」から変更しました。





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