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マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 170CD聴き比べ! [#12 / CD:161-170]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べ#12。今回は次の10CD・他のインプレです。

① 新規CD (新譜中心、見落とし旧譜分あり)
② 1960年代以前の古い演奏
==資料的音源・他==
③ アダージェット#1 (マーラーと親交のあったメンゲルベルクとワルターの古いアダージェット)
④ アダージェット#2 (映画「ベニスに死す」のアダージェット)
⑤ マーラー・ディスコグラフィー


【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現在 #12回 170CDまで
 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン, プレートル[★], 小澤征爾, ジンマン[★], モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2]
 #2:20CD
M.T.トーマス[★☆], テンシュテット[x6 ★☆], ベルティーニ[x2], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4], ザンダー, シノーポリ, 飯森範親, 井上道義[☆]
 #3:25 26CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ[㊟], スワロフスキー, レヴァイン, 戸山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 佐渡裕, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4CD ☆], ブーレーズ[x3 ★☆], メータ[x3], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★], デプリースト, バルビローリ, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:14CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, ホーレンシュタイン, スウィトナー[☆], 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ[☆], アルブレヒト, I.フィッシャー
 #7:10CD
ガッティ, レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル[㊟], フェルツ, 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン
 #10:10CD
ゲルギエフ[x3 ☆], ラトル[★☆], ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, ヒルシェ, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト[☆], エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス[☆], スターン
 #12:10CD 本投稿
ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ラインスドルフ, アンチェル, 資料的音源(アダージェット)他



フランソワ=グザヴィエ・ロト, François-Xavier Roth
Gürzenich-Orchester Köln
[Harmonia Mundi] 2017-2/20-22
フランス人指揮者で、現在46歳。Kapellmeister (楽長?, 音楽監督でいいですよね) を務めるケルン・ギュルツェニヒ管を振ったマーラー5です。ケルン・ギュルツェニヒ管はマーラー本人指揮で、この5番の初演を行っていますね。(1904年10月19日)
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度にアゴーギクとディナーミクを振り重厚さは控えめ、ファンファーレとのバランスも上手く取れていますね。第1トリオも過度の激しさよりも主題とのコントラストを押さえています。第二楽章もその流れを明確に繋ぎます。第1トリオを継ぐ様な第一主題、第2トリオからの第二主題です。激しさを押さえた見晴らしの良い第一部。
第三楽章
ディナーミクを使った締まりあるスケルツォに、微妙なリズム感のレントラー主題、第三主題は間を生かしたスローで穏やかさです。全体的にマイルド、独特のディナーミクとアゴーギクを感じる第二部です。
第四楽章・第五楽章
微妙なアゴーギクの中間部主題の前後を、スローで甘美な美しさで挟んだ個性的アダージェットです。第五楽章はスローな序奏からテンポの良い第一第二主題が絡みながら山場を目指します。展開部・再現部の山場を気持ちよく盛り上げてコーダからフィニッシュは迫力と大アッチェレランド。最終楽章では見事な王道に回帰!!
・・・・・
個性を見せながらも心地よいと思っていたら、最後に保守本流の展開が待っていました。どっちがロト!? のマーラー5です。
どちらも悪くないのですが、どっちかにしてねw




エフゲニー・スヴェトラーノフ, Evgeny Svetlanov (2録音)
ロシア人作曲家の交響曲を得意としていましたね。英名記述はYevgeny表記もあります。またこの2録音の他にUSSR SOとアダージェットのみの録音も残しています。

(#1)
Russian State Symphony Orchestra
[Russian Season] 1995-10
ロシア国立交響楽団の音楽監督(1965 - 2000)を務めていた時代のマーラー5ですね。
第一楽章・第二楽章
特徴的にスロー弱音の葬送行進曲、山場ディナーミク強めです。第一トリオは明瞭にテンポを変え激しさですがクセはありません。第二トリオもややスローの標準的です。第二楽章の第一主題は速く第二主題はスロー静の対比です。展開部以降も同様で、コントラストを明確にした第一部ですね。
第三楽章
スケルツォ主題は緩めでhrも弱点、レントラー主題も第三主題も緩く演奏の質にも難があってぼんやりとした感じです。展開部・再現部も同じ流れで、特にスローの間延び感でボケた第二部に思えます。
第四楽章・第五楽章
主要主題は甘美を避けクール、中間部でも澄んだ流れを作っていて好きなアダージェットですね。最終楽章は第一第二主題がうまく絡みテンポアップで上げていきコデッタを優美に仕上げます。展開部と再現部の流れもスローが少なく山場も気持ち良く盛上げますが、この曲のコーダからラストでスローに落としてしまってはアウト!ですね。
・・・・・
コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。
スヴェトラーノフ節で、アゴーギクとディナーミク共に大きく振っているのですがスローが締まらない感じです。演奏も少々…なのも事実でしょう。




(#2)
NHK Symphony Orchestra
[キング] 2000-9/28
スヴェトラーノフがN響を雄大に鳴らしたと逸話がある時代の遺産ですね。
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲はやはりスローですがここでももっそりで何かが足りない感じです。第一トリオ・第二トリオ、展開部以降も第二楽章も5年前とよく似た第一部です。
第三楽章
ほぼ同じ構成、もやったスロー主体で見晴らしの悪さが印象に残ってしまいます。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは色合いは同じですが、スローになっていて残念です。最終楽章も気持ちの良いテンポ設定で流れて行って、コーダ・ラストも類似かと思いきやスローにはしませんでしたね。アッチェレランドは効いていませんでしたが悪くありませんでした。
・・・・・
コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。←1995年ロシア国立響と同じコメントです。(とにかくよく似ています)
スローで何をやりたいのか駄耳なのでわかりません、やっぱりこのスローは鬼門ですね。ラストが普通になっていたのが救いでした。




オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä
Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-6
 オスモ・ヴァンスカが2003年から首席指揮者を務める、ミネソタ管弦楽団を振った2016年6月の録音です。ミネソタ管のゴタゴタは興味ある方はググってくださいね。
第一楽章・第二楽章
第一楽章ファンファーレからいきなりギクシャク感のスロー、おとなしい葬送行進曲、第一トリオでは表情を変えますが緩め、第二トリオは弱音で入り柔らかな印象で個性的。
第二楽章第一主題も抑え目でギクシャク、第二主題も静音,スロー&マイルドです。展開部から再現部もマーラーの「最大の激烈さを持って」とは無縁、切れ味排除の曲者第一部です。
第三楽章
スケルツォもスローでhrはモタモタ、レントラー主題も微妙な揺らぎ、それ以降もいきなりのテンポアップとか読めない見晴らしの悪い残念な第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは薄く細い流れで山場も抑える好みの演奏、間を取りすぎなのは別として冷たく澄んだ流れは良いですね。
最終楽章の入りのhrは間を取り過ぎ、その後は適度に主題を絡ませながら常識的に進んで(軽快感は低いですが)、展開部の山場を盛り上げ、再現部では山場・コーダを見事に〆てラストはあっさり風w。
とはいえこの第三部は1-3楽章より遥かにマシです。
・・・・・
スロー&マイルドと奇妙な揺さぶり、そして管楽器のギクシャク。咳払いでもして喉のつかえを振り払いたい様なマーラー5です。
一癖モノがお好きな通の貴方には一聴の価値ありですw




マリス・ヤンソンス, Mariss Yansons (2録音)
ラトビア人指揮者ヤンソンスは、ムラヴィンスキーの助手を務めレニングラード・フィルでデビューしています。その後ほぼ同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)とバイエルン放送交響楽団二つの人気オケの首席指揮者を務めていましたね。


(#1)

Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17
 2004年から2015年までROCの首席指揮者を務めた時代のライヴです。
第一楽章・第二楽章
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲、第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せ、第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの展開です。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けます。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。
第三楽章
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れ、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。
・・・・・
スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
最後にとって付けた酷いアプローズは何でしょう?!w




(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR Klassiks] 2016-3/10,11
 2003年からヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送響との2016年ライヴです。上記RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じませんね。
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。
第三楽章
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォはよりリズミカル、レントラーは美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。
・・・・・
RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…
根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者*で聴いています。

*J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでした。





ここから1960年代以前の古い録音です。(録音はmono主体で、その良し悪しを問うのは意味がないでしょう)
圧倒的個性を放つシェルヘンの4CDは#2で紹介済みですw



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

New York Philharmonic
[Sony] 1947-2/10

(右はCBS録音のセット物です)

 マーラーがハンブルク歌劇場の音楽監督(1891年ー1897年)だった時代、その下で研鑽したブルーノ・ワルター(1876/9/15 - 1962/2/17 )が唯一残したマーラー5番全曲 ニューヨーク・フィルの音楽監督時代の録音です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、テンポ速めでその変化も少なめです。第2トリオも叙情を感じさせながらもテンポ変化はありません。第二楽章第一主題は激しさを増し、第二主題で叙情性強く変化させます。まさに王道です。
第三楽章
軽快なスケルツォ、レントラーも速めですね。第三主題はマーラーの「より遅く、落ち着いて」が見事に展開されます。15'ちょっとで、今聴き直すととても速い感じです。
第四楽章・第五楽章
7'半と短いのですが速く感じる事はなく、ゆったりと冷静なアダージェットで好みですね。最終楽章は軽量軽快な第一主題と第二主題が絡みながら上げて行き、展開部と再現部の山場はキッチリ盛り上げてコーダからフィニッシュまでは迫力いっぱいです。アッチェレランドを強烈に決めます。
・・・・・
全体的に速めですが、まさに王道のマーラー5ですね。今の時代の指揮者が繰り出すアゴーギクとディナーミクを剥ぎ取れば、この演奏が現れます。真髄で一聴必須です。
久しぶりに聴きましたが、聴き終わってから心に余韻が残りますね。

ワルターはアダージェットのみですが1938年にVPOとの録音を残しています。最後にインプレしています。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos
New York Philharmonic
[delta] 1960-1/2
 ワルターの後ニューヨークフィルの首席指揮者(1949-1958)だったミトロプーロスがその職責を退いた後の録音ですね。ワルターの13年後、バーンスタインの3年前のニューヨークフィルとのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
少し不思議な間のファンファーレとゆったりとした葬送行進曲、第1トリオは派手ですがテンポ変化は少なめ、第2トリオも情感的ですがテンポ変化は薄めです。第二楽章第一主題は速めで切れ味良く、一転第二主題で柔らかさを強調します。構えの大きな正統派第一部ですね。
第三楽章
速めで揺さぶりのスケルツォはオケが暴れ気味、レントラーでは優美さを見せます。速めで揺さぶりから第三主題もスローですがアゴーギク強めです。全体としても揺さぶりと華々しさの第二部です。
第四楽章・第五楽章
澄んだ音色のアダージェットは間をとって大きいスタンスです。第五楽章は提示部からスローに妙なアゴーギク、山場は派手に、コーダからフィニッシュはスローを交えながらのアッチェレランドです。
・・・・・
雄大で迫力の第二楽章は見事ですね。揺さぶりのクセが強めですが、パワーパートは華々しいマーラー5です。




ルドルフ・ケンペ, Rudolf Kempe
Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[ARCHIPEL] 1948-11/3
 Rudolf Kempeとライプツィヒ放送交響楽団の古い演奏です。これもシェルヘンと同じ様にカット短縮盤です。シェルヘンの初録音(1953)よりさらに5年古く、当時の流れでしょう。
第一楽章・第二楽章
やたらスローなファンファーレと葬送行進曲、第1トリオもモッタリ、第2トリオは普通ですw 第二楽章第一主題はややテンポアップでコントラストが付きますが、いずれモタモタして長〜ぃ第一部です。
第三楽章
カットありの12分ですね。優美に入るスケルツォも同じ流れのレントラーも、その後も全体にもっさり。切れ味はありません。
第四楽章・第五楽章
ワルターと比べたら2分近く長いのですが、他の楽章が超スローなのでアダージェットは速く感じます。第五楽章ホルンがメタメタ、その後もスローで怪しげ、一部カットしながら山場とコーダ・フィニッシュは普通に炸裂させています。
・・・・・
演奏も怪しげ、モタモタとした少々退屈なマーラー5です。時代に関係なくこういった演奏が存在する証明ですねw 第三・五楽章カットもあり、怪しげマニアの貴方にはオススメ?!
アダージェットは悪くありません。




ハンス・ロスバウト, Hans Rosbaud
Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[ica] 1951-10/22
 大戦前後に活躍した現代音楽が得意な指揮者ロスバウトが、ケルン放送響を振ったマーラー5ですね。
第一楽章・第二楽章
スロー重厚な葬送行進曲から第1トリオは激しさと強烈な速さに表情を一変させます。第二楽章第一主題は一楽章トリオの流れで厳しく、第二主題は緩やかなテンポに落としてきます。第一楽章の二つのトリオの印象を忠実に再現させている感じで、締まりのいい第一部です。
第三楽章
速め優美なスケルツォ、それ以降も全体16’弱と速めですが第三主題は見事に緩やかです。アゴーギクを大きく振った第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは少し速いのですが、甘美さが感じられます。最終楽章は締まりの良い前半から流れよく二つの山場を盛り上げます。コーダは壮大、ラストのアッチェレランドもビシッと決めます。
・・・・・
テンポや表情の変化を明確に打ち出した硬派のマーラー5ですね。特に第一部と第五楽章は素晴らしく、今の時代の録音なら☆です!




ポール・パレー, Paul Paray
Detroit SO
[TAHRA] 1959-11/12
 フランス人指揮者ポール・パレーが音楽監督(1952-1963年)を務め鍛えた時代のデトロイト交響楽団とのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、第二楽章も同じく、正攻法の第一部です。気持ち速めの演奏はややまとまりの弱さを見せますが。
第三楽章
速めで不安定なスケルツォと微妙な揺らぎのレントラー、その後も全体速い展開です。カットなし15'ですから。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはやや速く厚めです。第五楽章第一・二主題は荒々しいですが流れは標準的に進み、展開部・再現部も力技的に迎えます。コーダからラストは溜めを作ってアッチェレランドで飛ばし上げます。
・・・・・
演奏が荒いのですが、全体速めのテンポ以外は正攻法なマーラー5です。荒さは録音精度も問題ですがw
パレーの口ずさみがよく聞こえます。




エーリヒ・ラインスドルフ, Erich Leinsdorf
Boston SO
[RCA] 1963-11
 ワルターやトスカニーニの助手を務めた辛辣さで知られるラインスドルフが音楽監督を務めた時代のボストン交響楽団とのマーラー5です。この二代後が小澤征爾さんですね。
第一楽章・第二楽章
哀しみと美しさを感じさせる葬送行進曲、テンポを上げてシャープな第1トリオ、憂いの第2トリオと流れの美しい第一楽章です。ラストのティンパニが変則ですね。第二楽章は一楽章の二つのトリオのイメージを再現します。バランスの良さと落ち着いた第一部です。
第三楽章
円舞曲的なスケルツォ、優美なレントラー、第三主題と大きなテンポ変化は避けながらも全体は美しさで通しています。
第四楽章・第五楽章
8'半とやや速めなアダージェット、アゴーギクで美しく奏でられます。第五楽章は軽やかに二つの主題を絡め上げていき、バランスよく山場を盛り上げてコーダからフィニッシュもアッチェレランドできれいにまとめます。
・・・・・
録音に3日かけていて、充分に作り込まれていますね。クセも破綻も過度の興奮も殺した、落ち着きのある完成度の高いマーラー5です。出来過ぎ感が気になりますが一聴の価値ありです。
現在の一部作品に見られる録音技術で作り込まれた不自然さがないのがいいですね。'63年録音ですがステレオでバランスも音も良いです。(ADDでD.リマスターされているでしょう)




カレル・アンチェル, Karel Ančerl
Toronto SO
[TAHRA] 1969-11/4
 カレル・アンチェルが小澤征爾さんの後を継いでトロント交響楽団の常任指揮者に就任した年の録音ですね。
第一楽章・第二楽章
標準的な葬送行進曲から元気な第1トリオになり、憂いの第2トリオの第一楽章。第二楽章も取り立てて個性的ではありません。
第三楽章
やたらとスローなスケルツォと怪しげな管楽器、その後も"緩々と怪しげ"な流れで20'を超える演奏は長すぎです。ぼーっとしていて気がついたら、まだやってた…みたいな。
第四楽章・第五楽章
ここでも標準的で甘美でもクールでもないアダージェットです。第五楽章は緩めに二主題を絡めて行き、山場とラストは締まりよく納めます。
・・・・・
演奏も怪しく締まりに欠ける退屈なマーラー5です。
'69年録音ですがmonoでAAD、音もかなり残念。リマスタリングでヒスノイズは削減されてはいますが。











【アダージェット #1】
マーラーと親交のあった11歳下のメンゲルベルク(1926年録音)と16歳下のワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレしておきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg
アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5
 メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的ですね。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう。
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter
アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15
 メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また上記1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik
最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995
 スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。
当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)






【アダージェット #2】
アダージェットと言えば映画「ベニスに死す」が取上げられる事が多々あるわけですから、インプレしておきましょう。


アダージェット, 映画「ベニスに死す」
フランコ・ マンニーノ(Franco Mannino)
Santa Cecilia Academy Orchestra
rec. 1971

(左:サントラ 右:DVD)
 マンニーノはイタリア人指揮者、映画音楽を得意とする作曲家でもありましたね。

主要主題は繊細に入り、アゴーギクとディナーミクの抑揚を厚く付けてきます。中間部(トリオ)は透明感と繊細さですが、ここでも強い揺さぶりがあります。演奏時間は10'弱ですから、いまの時代のアダージェットの標準的テンポでしょう。
濃淡の感情の強いアダージェットですね。これをもってクラシック畑の先生方は甘美でクラシックにふさわしくないとおっしゃっている訳ですね。まぁ、ここまで濃厚なアダージェットを交響曲第5番の中で聴くことは稀でしょうね。個人的にはあまり美しいアダージェットとは思えませんが。

「ベニスに死す」ではもう一曲マーラーが使われていますね。交響曲第3番 第四楽章「O MENSCH」で、ご存知の通り美しい歌曲パートです。(こちらは逆に硬派な演奏と歌唱です)

主役のイメージはマーラーというトーマス・マンの小説の映画化ですから、一度見ておくのも一興かと思います。(二人は親交がありました)







【マーラー・ディスコグラフィー】
所有枚数が増えると同一アルバムの再発等々でダブりの確認が必要となりますので必携品ですね。これが世界標準と言って良いと思います。


カプラン・ファウンデーション監修 / マーラー・ディスコグラフィ
Mahler Discography / Péter Fülöp / Kaplan Foudation


マーラー・ディスコグラフィーというよりも辞書ですね。重さは3kg弱もあります。マーラーの交響曲・他のディスクについての詳細が記されています。

 ① 各音源(CD等)の 指揮者 / オケ、録音年月、レーベル
 ② 指揮者 / オケ / 演奏者別音源一覧
 ③ レーベル別、音源一覧
 ④ 全音源の楽章別演奏時間の一覧

①には間違った演奏者表記も正解が載っているので助かります。大きくて重いのは装丁・紙質が素晴らしいからでしょう。当初は¥10k以上しましたから激安ですね。

2010年増補改訂第2版ですので、2020年には第3版が出るのではと勝手に想定しています。






そろそろ所有のマーラー第五番も先が見えてきました。次回のインプレで在庫クリアーになり、後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手になりそうです。



テーマ : クラシック
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・2017年12月9日
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