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マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 190CD聴き比べ! [#12 : 171-190]


グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)の交響曲第5番の聴き比べ#12です。#12の内容は以下になります。

① 随時追記 [最終追記:2022/8]
  (新譜中心、見落とし旧譜等あり)
② 管弦楽以外の演奏


Mahler Symphony No.5 -- 190 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン[x3 ☆], プレートル, 小澤征爾, ジンマン, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル[x2], ドホナーニ, 参考音源/資料類
 #2:20CD
M.T.トーマス, テンシュテット[x6], ベルティーニ[x2 ㊟], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4 ☆], シノーポリ, 井上道義, ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], スワロフスキー[㊟], レヴァイン, 外山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, マーツァル[x2], シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ[㊟], レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル, フェルツ[㊟], 大植英次, マッケラス
 #8:15CD
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2 ㊟], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2 ㊟], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン, ヒルシェ
 #10:10CD
ゲルギエフ[x4 ☆], ラトル, ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, 山田 一雄
 #11:20CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト, エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス, スターン, デプリースト, ワルター[☆], ミトロプーロス[㊟], ケンペ, ロスバウト, パレー[㊟], ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ルドルフ・シュワルツ
 #12:20CD 本投稿
カーチュン・ウォン, クルンプ, バリエンテ, 佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ズィロウ・チャン, フックス, フロマン, ブリッグス(オルガン), トレンクナー&シュパイデル(ピアノDuo), ミヒャエル・ナナサコフ(ピアノDuo), ナタリア(アンサンブル), ホルスト=シンフォニエッタ(アンサンブル)




カーチュン・ウォン, Kahchun Wong

Japan Philharmonic Orchestra
[DENON] 2021-12/10, 11


シンガポールの指揮者ウォン(黃佳俊)が2021年から主席客演指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団を振ったマーラー5、昨年末のサントリーホールでのLIVEですね。
ちなみにウォンの初リリースCDで、2023-24シーズンから主席指揮者になる様です。


【第一部】
強めのファンファーレに僅かに揺さぶりを見せる主部葬送、第一トリオは鳴りの良さで勝負、第二トリオの哀愁は軽量ですがアゴーギクとディナーミクの揺さぶりが強くクセがあります。
第二楽章第一主題は速め、第二主題は緩やかに、一楽章トリオのパロディを避けています。展開部は"烈→暗→明"のコントラストはテンポ変化を大きく付けて、再現部も提示部より一層抑揚を付けます。
揺さぶりで聴かせ処を作る第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は緩やか穏やかですがclパートで揺さぶり、レントラー主題は速めの流れにアゴーギク。もう少し優美・優雅さが欲しかったかも。第三主題はオブリガートホルンと弦楽パートも、変奏パートもクセはなく。展開部は静スローから一気に登って、再現部も三つの主題をそつなくまとめています。コーダはもちろん約束通りの鳴りの良さでまとめます。
提示部以外至って標準的なスケルツォ楽章になりました。

【第三部】
第四楽章主部は静的ですが気になるアゴーギク、中間部は静美に聴かせて、微妙な変化球アダージェットですね。
第五楽章第一・第二・コデッタ主題ともに教科書的、展開部も徐々に上げていく良くある流れです。再現部山場からコーダもフィニッシュのアッチェレランドも予想通りの盛り上げですね。LIVEらしいアプローズはカット…なぜ?!


揺さぶりと標準仕様が混在するマーラー5です。コーダのある第三・五楽章を落ち着かせて、一・二・四に変化をつけています。

どうせやるなら全部クセの個性派の方が拍手ですね。手が回らなかった?!





ヨハネス・クルンプ, Johannes Klumpp

Landesjugendorchester Baden-Württemberg
[Animato] 2018-11/8


ドイツ人指揮者のクルンプがクリエイティブ・アドバイザーを務めるユースオケのバーデン=ヴュルテンブルク州立ユース管弦楽団を振ったマーラー5です。

同オケはC.ヴァイネケン指揮でもマーラー5を残していて、ユースらしい元気な演奏を聴かせてくれましたね。


【第一部】
力のこもったファンファーレから鬱ですが沈まない葬送、第一トリオでは伸びやかに鳴らして、第二トリオは落ち着いた流れで哀愁を奏でます。上々の第一楽章です!!
第二楽章第一主題はテンポ設定を速めて切れ味、第二主題も緩やかさを決めて、第一楽章のパロディを避けた上手い流れです。展開部もアゴーギクを生かしたコントラストで、再現部は抑揚を増してまとめ上げていますね。
表情豊かで生き生きとした素晴らしい第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は軽妙洒脱さを速さで表し、レントラー主題では優美な弦楽奏に落ち着かせます。第三主題オブリガート・ホルンと弦楽も情感を湛え、変奏パートのピチカートも表情を作って見事!! 展開部ではそれをまとめる様にテンポアップで締めて、再現部は三つの主題をアゴーギクとディナーミクで華やかに奏します。コーダは怒涛!!
表現力で見晴らし良いスケルツォ楽章になりました。

【第三部】
第四楽章主部は甘美を避けたクールさ、中間部も透明感ある美しさです。微妙なディナーミクとアゴーギクに、やや速めのクールなアダージェットは素晴らしく、好きなパターンです。
第五楽章二つの主題は軽快なテンポを生かして絡み、コデッタ主題は優美な舞踏風。展開部は力感を軸に突き進み、再現部山場からコラールはパワーを溜めてコーダは一気のアッチェレランドで駆け抜けます。
もちろん大喝采!! (たっぷりとアプローズも入っています)


表情豊かで見晴らし良いマーラー5です。主流的流れにディナーミクとアゴーギクを生かした構成、それについて行けるユースオケの技量が驚きの素晴らしさです!!

微妙な揺さぶりもしっかりと表現して、なんとも爽快で気持ち良さが光りますね。一聴の価値があるマーラー5になりました。今まで聴いたユースオケでは抜群の仕上がりでしょう。(録音技術も含めてです)





ホセ・マリア・モレーノ・バリエンテ, José María Moreno Valiente

Málaga Philharmonic Orchestra
[IBS Classical] 2020-6/22-26


スペインの若手指揮者バリエンテが2020/21シーズンから首席指揮者を努める同国マラガ・フィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー5ですね。残念ながら両者知見がありません。


【第一部】
ファンファーレのtpが怪しいw 葬送行進曲は穏やかですが何処か落ち着きません。第一トリオは標準的激しさで、第二トリオの哀愁も特徴は薄いですね。
第二楽章第一・第二主題、共に一楽章のトリオ再現的で、展開部の"烈→暗→明"のコントラストも平凡です。個性は無く演奏も自信なさげな第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は標準的ですがhrがヒヤヒヤ、レントラーもスローに落としてSTD的です。第三主題のオブリガートhrは一杯一杯、短い展開部やカラフルな再現部もバランスや一体感に大きく欠けます。コーダは荒れ具合が面白いかも?w
標準的スケルツォですが不安定感満載です。録音の問題でしょうが、なぜかhrが遠く聴こえるのも気になります。

【第三部】
第四楽章は弦楽奏なのに音色や揃いが良くないと言うのは困りものです。主部の途中でスローに落としている意味が不明です。
第五楽章序奏の管楽器は不安定、二つの主題をなんとか音にして提示部を逃げ延び、展開部もボロボロになりながらも山場へたどり着きます。再現部山場からコーダが一番いいかもしれません、やり直しを重ねたのでしょうねェ…


何とか形にした、そんな感じのマーラー5です。演奏レベルは酷しく、個性を見せる余裕は全く無さそうで"間"や"一体感"とはかけ離れている感じですね。

ミキシングのバランスも少し難を感じ、マスタリングのボリューム感にもやや違和感を覚えます。作り込んでいる割には全体今ひとつですね。下位争いに参加かも。





佐渡裕, Yutaka Sado (2録音)

佐渡さんは二枚のLiveを残していますね。この17年余での違いは佐渡さんの変化なのか、はたまたドイツとウィーンのオケの差なのか、興味深いですね。



(#1)
Stuttgart Radio SO
[SWR avex] 2001-10/17,19


佐渡さんがシュツットガルト放送響に客演して振ったマーラー5です。


【第一部】
葬送行進曲はスローでどこか美しさも感じます。第一トリオでも明るい音色で明瞭なコントラスト付けです。第二トリオは美しい哀愁ですね。
第二楽章第一主題はテンポアップ激しさを出して、第二主題の哀愁とメリハリを感じます。展開部・再現部も主題の対比を意識させていますね。山場は見事!
計算された美しさと激しさの第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題は気持ち早め軽妙に、レントラー主題は優美に変化を付けます。微妙に揺らぎを入れますね。第三主題部は緩やかに沈めてコントラストを付けています。ここでも再現部は主題間の色付けがハッキリしています。

【第三部】
極端な弱音で入り、超スローに冷たい音色の主要主題。大きな揺らぎに続くトリオも透明感がありますね。好きな個性的アダージェットです。
全く切れ目がなく続く最終楽章。第一・第二主題の絡みは対位的に小気味よく、コデッタも早め優美です。展開部は激しさを増しながら華々しい山場を作り、再現部もテンポと激しさを上げてコーダはタメを作ってアッチェレランドで炸裂です。大ブラボーの嵐、お見事!


大胆な印象ですが、計算された力感のマーラー5です。録音の良さもライブの臨場感を伝えている様です。これで感情移入を強くすればバーンスタイン。やっぱり受け継いでいるものを感じますね。

その構成のこだわり感が少し気になりますが、一聴の価値有りです。






(#2)
Tonkünstler-Orchester
[Tonkünstler] 2019/3/16


2015年から佐渡さんが首席指揮者を務める、ウィーンのトーンキュンストラー管を振ったマーラー5番です。


【第一部】
葬送行進曲のテンポはやや速めに、そして切れ味を感じます。第一トリオでは流れに乗って速めに進みますが、コントラストはほどほどですね。第二トリオも速めで哀愁感はクールです。
第二楽章第一主題は速いです。第二主題では適度なテンポ設定の哀愁に感じますが少し速めでしょうか。キレはありますが速い流れの第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題はやや重め、レントラー主題は優しくでも気持ち速め、第三主題も殊更には鎮めませんね。展開部・再現部では"間"をとっていて安心して聴ける良い流れになっていますね。個性は薄いですが

【第三部】
アダージェットはやや暖色系で標準的なテンポからスローへ、トリオもクールです。悪くないのですが、あの個性的だった流れは全くありません
第五楽章第一・第二主題の絡みは速めのテンポで軽快に登り、コデッタも流れに沿っていますね。展開部は興奮を避けながら山場を作り、再現部は切れ味を増して山場からコーダは華やかに鳴らしました。ここでも大ブラボーですね。


個々の楽章や各主題はきっちりと仕上げて、全体としてはあっさり風味のマーラー5です。やや速めの設定がそう感じさせるのかもしれませんね。

安定感は上がりましたが、シュツットガルト放送響との惹きつけられる個性は消えてしまいましたね。個性派からクール派に、といった感じでしょうか。





大野和士, Kazushi Ono

Barcelona Symphony and Catalonia National Orchestra
[Altus] 2018-9/28–30


2015年から音楽監督を務めるカタルーニャ国立バルセロナ響を振ったマーラー5です。大野さんは1996年に常任指揮者時代のザグレブ・フィルとCDを残している様ですが未所有です。


【第一部】
葬送行進曲は抑えを効かせて進み緩いアゴーギクで揺さぶりファンファーレを鳴らします。第一トリオの入りは不思議なリズム感を感じます。第二トリオでは繊細な哀愁からピークを奏でます。でも何かスッキリしません。
第二楽章第一主題は激しさそこそこ、第二主題で哀愁に落とします。展開部の第一主題や第二主題vcもどこか抜けの悪さがあります。再現部もテンポ設定にもっさり感がありますね。今ひとつスカッとしない第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はhrをメインに演奏の揃いが今ひとつに感じます。レントラー主題は弦楽器主体パートは普通ですが。続く主題変奏から第三主題も流れにまとまりが感じられません。展開部・再現部も同じですね。コーダも〆のhrが…

【第三部】
緩やかな暖色系の流れから山場も適度に、中間部は透明感ある流れを作ります。やや間延び感はありますが、クールで澄んだアダージェットですね。
最終楽章、絡む第一・第二の二つの流れが落ち着きません。展開部から再現部も同様ですが山場は高らかに鳴らし挽回、コーダも大野さん好みに炸裂してアッチェレランドで駆け抜けました。最後の帳尻合わせは見事でした!


ラストは見事、でも演奏の見晴らしの良くないマーラー5です。流れにスカッとした抜けの良さがありません。指揮者のタクトにオケはいっぱいいっぱいの感じでした。ラストを上手く締めて印象挽回ですが。

こうなると、マーラーを得意とする都響との5番を大野さんに期待せずにいられませんね。





ダニエル・ハーディング, Daniel Harding

Swedish Radio Symphony Orchestra
[Harmonia Mundi] 2017/9-21-23


コンサートでは相性の良くない指揮者の一人、ハーディングです。この曲もコンサートでは新日フィルとパリ管で聴いていますが、パリ管ではとてもクセの強い演奏でした。このスウェーデン放送響との第9番のCDは良かったですが。
現在はパリ管と本CDスウェーデン放送響の音楽監督ですね。


【第一部】
第一楽章提示部主要主題はスローで揺らぎを入れていますがやや間延び気味。第一トリオでは激しさというより派手やかに、第二トリオも微妙な揺らぎを入れていますね。
第二楽章第一主題は明瞭に、第二主題も揺らぎをなくして素直な響きです。再現部・展開部も激しさは控えめで、第二主題は緩め、弱めのコントラストに感じます。

【第二部】
スケルツォ主題は優美ですが揺らぎを入れて、レントラー主題はあっさり感ですね。再現のvnの方が優美です。第三主題はスローを強めにして落としています。展開部・再現部も刺激な抑えめで印象はスローが勝っている感じですね。obl.hrの鳴りは良かったです。コーダは異常な速さです!

【第三部】
アダージェットは速めで入り後半スロー化ですが終始物静かに。山場も控えめ中間部でも冷静で好きなクールな展開ですね。中間部の揺らぎは気になりますが。
最終楽章は第一第二主題が心地よく絡んであげてゆき、コデッタ(第四楽章中間部の変奏)は軽快に現れます。展開部・再現部の山場からコーダは興奮は抑え気味に、フィニッシュでいきなりのアッチェレランドです。(第三楽章と似ていますね)


今ひとつスカッとしない 独特の揺らぎも気になるマーラー5ですね。抑えた強音パートとスローの印象が強く残ります。

ふとパリ管との来日公演の同曲を思い浮かべました。





アダム・フィッシャー, Adam Fischer


Düsseldorfer Symphoniker
[avi-music] 2017-3/31 - 4/2


ハンガリー人指揮者でスワロフスキーに師事していますね。弟のイヴァン・フィッシャーの方が先にマーラーを出していますが、ここへきてチクルスをスタート(1,4,7を既発)させています。首席指揮者を務めるデュッセルドルフ交響楽団を振ったマーラー5です。


【第一部】
感情を押し殺した葬送行進曲とコントラストを明確に付けるファンファーレ、第一トリオも極端にテンポや揺らぎを変えず流れを壊しません。第二トリオでも情感は保ちつつ流れを重視している感じです。
第二楽章第一主題は激しさを加えて第二主題を緩徐に落とし、この楽章らしい対比を付けていますね。特徴的なのは展開部の第二主題で大きくスロー&静に流れを変えてメリハリを付けていることでしょう。クールでコントラストの着いた第一部で見晴らしが良いですね。

【第二部】
締まりを効かせたスケルツォ主題からレントラー主題は優美に舞うように、ここでもコントラストを付けていますね。第三主題では揺らぎの中に朗々とHrを挟んでいます。展開部からも程よい揺らぎを付けて飽きさせませんね。コーダもビシッと決めます。

【第三部】
アダージェット主要主題は冷静な美しさで山場も抑えが効いています。最終楽章のコデッタにもなる中間部は緩やかにアゴーギクを使っていますね。この冷めた流れは好きです。最終楽章は第一主題と第二主題を軽快にまとめながらコデッタに結び、展開部・再現部は歯切れの良さで流れ二つの山場は華やか。コーダからフィニッシュはアッチェレランドで締めました。


洗練されたクールで心地よいマーラー5です。アゴーギクとディナーミクのバランスが良く、締めるところは〆、緩徐は美しく、クドさとかったるさを回避しています。を付けない理由が見つかりませんでした。

コンサートで出会えたら拍手喝采ですね。





フランソワ=グザヴィエ・ロト, François-Xavier Roth

Gürzenich-Orchester Köln
[Harmonia Mundi] 2017-2/20-22


フランス人指揮者で、現在46歳。Kapellmeister(楽長?, 音楽監督でいいですよね) を務めるケルン・ギュルツェニヒ管を振ったマーラー5です。ケルン・ギュルツェニヒ管はマーラー本人指揮で、この5番の初演を行っていますね。(1904年10月19日)


【第一部】
葬送行進曲は適度にアゴーギクとディナーミクを振り重厚さは控えめ、ファンファーレとのバランスも上手く取れていますね。第1トリオも過度の激しさよりも主題とのコントラストを押さえています。
第二楽章もその流れを明確に繋ぎます。第1トリオを継ぐ様な第一主題、第2トリオからの第二主題です。激しさを押さえた見晴らしの良い第一部です。

【第二部】
ディナーミクを使った締まりあるスケルツォに、微妙なリズム感のレントラー主題、第三主題は間を生かしたスローで穏やかさです。全体的にマイルド、独特のディナーミクとアゴーギクを感じる第二部です。

【第三部】
微妙なアゴーギクの中間部主題の前後を、スローで甘美な美しさで挟んだ個性的アダージェットです。第五楽章はスローな序奏からテンポの良い第一第二主題が絡みながら山場を目指します。展開部・再現部の山場を気持ちよく盛り上げてコーダからフィニッシュは迫力と大アッチェレランド。最終楽章では見事な王道に回帰です!!


個性を見せながらも心地よいと思っていたら、最後に保守本流の展開が待っていました。どっちがロト!? のマーラー5です
どちらも悪くないのですが、どっちかにしてねw





エフゲニー・スヴェトラーノフ, Evgeny Svetlanov (2録音)

ロシア人作曲家の交響曲を得意としていましたね。英名記述はYevgeny表記もあります。今回発売になったN響との録音の他にUSSR SOとアダージェットのみの録音も残しています。



(#1)
Russian State Symphony Orchestra
[Russian Season] 1995-10


ロシア国立交響楽団の音楽監督(1965 - 2000)を務めていた時代のマーラー5ですね。


【第一部】
特徴的にスロー弱音の葬送行進曲、山場ディナーミク強めです。第一トリオは明瞭にテンポを変え激しさですがクセはありません。第二トリオもややスローの標準的です。
第二楽章の第一主題は速く第二主題はスロー静の対比です。展開部以降も同様で、コントラストを明確にした第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題は緩めでhrも弱点、レントラー主題も第三主題も緩く演奏の質にも難があってぼんやりとした感じです。展開部・再現部も同じ流れで、特にスローの間延び感でボケた第二部に思えます。

【第三部】
主要主題は甘美を避けクール、中間部でも澄んだ流れを作っていて好きなアダージェットですね。
最終楽章は第一第二主題がうまく絡みテンポアップで上げていきコデッタを優美に仕上げます。展開部と再現部の流れもスローが少なく山場も気持ち良く盛上げますが、この曲のコーダからラストでスローに落としてしまってはアウト!ですね。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。
スヴェトラーノフ節で、アゴーギクとディナーミク共に大きく振っているのですがスローが締まらない感じです。演奏も少々…なのも事実でしょう。






(#2)
NHK Symphony Orchestra
[キング] 2000-9/28


スヴェトラーノフがN響を雄大に鳴らしたと逸話がある時代の遺産ですね。


【第一部】
葬送行進曲はやはりスローですがここでももっそりで何かが足りない感じです。第一トリオ・第二トリオ、展開部以降も第二楽章も5年前とよく似た第一部です。

【第二部】
ほぼ同じ構成、もやったスロー主体で見晴らしの悪さが印象に残ってしまいます。

【第三部】
アダージェットは色合いは同じですが、スローになっていて残念です。最終楽章も気持ちの良いテンポ設定で流れて行って、コーダ・ラストも類似かと思いきやスローにはしませんでしたね。アッチェレランドは効いていませんでしたが悪くありませんでした。


コントラストはあるのですが、スカッとしないマーラー5でしょうか。←1995年ロシア国立響と同じコメントです。(とにかくよく似ています)

スローで何をやりたいのか駄耳なのでわかりません、やっぱりこのスローは鬼門ですね。ラストが普通になっていたのが救いでした。





オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä

Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-6


オスモ・ヴァンスカが2003年から首席指揮者を務めるミネソタ管弦楽団を振った2016年6月の録音です。ミネソタ管のゴタゴタは興味ある方はググってくださいね。


【第一部】
第一楽章ファンファーレからいきなりギクシャク感のスローとおとなしい葬送行進曲、第一トリオでは表情を変えますが緩めです。第二トリオは弱音で入り柔らかな印象で個性的です。
第二楽章第一主題も抑え目でギクシャク、第二主題も静音,スロー&マイルドです。展開部から再現部もマーラーの「最大の激烈さを持って」とは無縁に切れ味排除です。クセ者第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題もスローでhrはモタモタと、レントラー主題も微妙な揺らぎを感じます。それ以降もいきなりのテンポアップとか流れが読めず、見晴らしの良く無い残念な第二部です。

【第三部】
アダージェットは薄く細い流れで山場も抑える好みの演奏です。間を取りすぎなのは気になりますが、冷たく澄んだ流れは良いですね。
最終楽章の入りのhrは間を取り過ぎですね。その後は適度に主題を絡ませながら常識的に進んで(軽快感は低いですが)、展開部の山場を盛り上げます。再現部では山場・コーダを見事に〆ますが、ラストはあっさり風w。
とはいえこの第三部は1-3楽章より遥かにマシです。


スロー&マイルドと奇妙な揺さぶり、そして管楽器ギクシャクのおまけ付き。咳払いでもして喉のつかえを振り払いたい様なマーラー5です。

一癖モノがお好きなマニアックな貴方には、是非聴いていただきたい一枚ですw





マリス・ヤンソンス, Mariss Yansons (2録音)

ラトビア人指揮者ヤンソンスは、ムラヴィンスキーの助手を務めレニングラード・フィルでデビューしています。その後ほぼ同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)とバイエルン放送交響楽団二つの人気オケの首席指揮者を務めていましたね。
【後日記】2019年11月30日に亡くなられました。R.I.P. Maestro Yansons



(#1)

Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17


2004年から2015年までRCOの首席指揮者を務めた時代のライヴです。


【第一部】
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲から第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せます。第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの流れですね。
第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けています。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。

【第二部】
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れで、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。

【第三部】
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。
最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。


スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
最後にとって付けた様なアプローズは何でしょう?!w






(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR Klassiks] 2016-3/10,11


2003年からヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送響との2016年ライヴです。上記RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じませんね。


【第一部】
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 
第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。

【第二部】
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォ主題はよりリズミカル、レントラー主題は美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。

【第三部】
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。


RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…

根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者*で聴いています。

*J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでしたね。




ズィロウ・チャン, Tzelaw Chan

Orchestra of the Music Makers
[OMMlive] 2012-1/6


(オケのOfficial Siteでも現状配信のみですね)

シンガポール人指揮者のTz.チャンが音楽監督を勤める同国の準プロオケ?、ミュージック・メーカーズ管弦楽団(OMM)とのマーラー5です。指揮者の名前表記は"Chan Tze Law"も多く見られます。


【第一部】
ファンファーレは華やかで葬送は暗さより美的、第一トリオも激しさより鳴りの良さ、第二トリオでも哀愁より美しさを奏でます。
第二楽章第一主題は速めのテンポで、第二主題は哀愁を濃く、と第一楽章のトレースを避けていますね。展開部の"烈→暗→明"の流れもコントラストよりスッキリとした見晴らしの良さ。心地よい鳴りが印象的な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題は速めで演舞的、レントラー主題も極端に落とさず心地よさで通していますね。第三主題主部はオブリガート・ホルンもしっかり朗々と、変奏パートも軽妙優美さで、展開部でも力感よりも鳴りの良さで勝負です。再現部は音厚をあげてコーダは僅かに乱れますが激しさを見せて締め括ります。

【第三部】
第四楽章主部は暖色系の美しさで速めのアゴーギク、中間部は音厚を上げて濃いめに夏の夕暮れの様なアダージェットです。
第五楽章はスローに落ち着いたパターンです。聴かせ処の再現部は主部パートをあっさり、山場からコーダも走らず落ち着いて鳴らし上げます。


重厚さや興奮を避けた不思議なマーラー5です。揺さぶりを抑えたパート・インテンポの様な独特の流れですね。

知見のない指揮者とオケですが、見事なLIVE演奏と興味深いアプローチです。何か+αがあったら""でしょう。
えっ?! 実力不足で揺さぶれないだけ?!





エリザベス・フックス, Elisabeth Fuchs

Philharmonie Salzburg
[MLT] 2019-6/5


(amazonではCDが見つかりませんね)

オーストリアの女性指揮者フックスが主席指揮者を務めるフィルハーモニー・ザルツブルクとのマーラー5ですね。


【第一部】
せっかちなファンファーレと速めの葬送、第一トリオもスルッと入って力感は弱め、第二トリオの哀愁もサラリと。
第二楽章第一主題は力感はありますが速めで慌ただしく、第二主題も哀愁の音色ですが淡々とした印象です。展開部"烈→暗→明"も荒かったり鬱だったりと濃さはありますが、どこか気持ちの入りが薄いのが気になりますね。
演奏は悪くないのですが気持ちが入りづらい第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題、レントラー主題、共に速めで流れてしまい肝心の優美さが伝わりません。第三主題は変奏パートの変化率が弱く、展開部も無表情で進み 淡々とした再現部に入ってしまいます。スケルツォらしい優美さが伝わらない楽章です。コーダは締めましたね。当然レベル!?w

【第三部】
第四楽章主部は淡々とした美しさがクールに生きるかと思いきや、何故かこれまで無かったアゴーギクを振って来ます。それは違うんじゃない!って言う感じですね。
第五楽章提示部はSTDに入って一番ナチュラルですがコデッタの後からが今ひとつ。展開部は力感が入って処々で締まりを見せてくれます。再現部の山場からコーダは約束レベルに鳴らして、ラストのアッチェレランドも決めてくれました。


何処かもどかしいマーラー5です。なぜそう感じるのか上手く表現出来ないのが残念ですが、"気持ちは込めずに演奏するぞ"と言った風ですね。"間"と言った表現の余裕が足りないのかもしれません。

最終楽章がなんとか聴かせてくれたので、最後は救われた感じで聴き終えました。





ルイ・ド・フロマン, Louis de Froment

Radio Luxembourg Symphony Orchestra
[Black Pearl] 1988 release (録音年はKaplan Foundationでも不明です)


(これもamazonではCDが見つかりません)

フロマンが主席指揮者(1958-81)を務めたルクセンブルク放送交響楽団(現: ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団)を振ったマーラー5です。


【第一部】
葬送行進曲は回帰のファンファーレが少し荒れますが、第一トリオ・第二トリオ共に標準的でマーラーの指示に近いですね。
第二楽章も二つの主題が一楽章トリオの再現的。展開部も序奏を激しくvc動機を沈めて、行進曲を明瞭に明るくと正攻法です。
コントラストもあって安心して聴ける第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題は楽しげに、レントラー主題は優美に、と約束通りです。第三主題主部も落ち着いたオブリガート・ホルンで、変奏パートも程良く色付け、そして短い展開部で駆け上がります。コーダは激しくまとめて、この楽章らしさで貫かれていますね。

【第三部】
第四楽章は珍しく強めのディナーミクですが、速めなので媚びる様なアダージェットではありません。
第五楽章提示部は二つの主題をしっかり絡めてコデッタ主題を軽妙に、展開部も山場へ登って行く王道の流れです。再現部コラールからコーダは華々しく鳴らして締め括ります。
最後まで正攻法を崩さずにまとめましたね。


標準仕様で安心感のマーラー5です。技量はほどほどですが、ミスや破綻はありません。フロマンの声が処々で入っていて臨場感も伝わりますね。

全体速めでコントラストが効いているのでスッキリと楽しめます。ただ予測がつく流れなので、ワクワク感やスリルには欠けますが。









② 管弦楽以外の演奏です。
  マーラー5と言えるか微妙な演奏もありますが…

デイビット・ブリッグス, David Briggs

オルガン・ヴァージョン
[Priory] 1998-4/1, 2


イギリスのオルガン奏者で作曲家のブリッグスによる、オルガン編曲/演奏です。グロスター大聖堂のオルガニスト時代の演奏ですね。



申し訳ありませんが、これがマーラーの5番と言われても…
オルガン自体にもあまり興味が沸かないので、コメントのしようがありません
m(_ _)m





トレンクナー&シュパイデル・デュオ, Piano Duo Trenkner-Speidel

ピアノデュオ・ヴァージョン
[MDG Gold] 2018-07


オットー・ジンガー(Otto Singer, 1863-1931)編曲版の四手ピアノデュオ・ヴァージョンがリリースされました。
この二人はマーラーの第1&2番も残していますね。またエフリンデ・トレンクナー(Evelinde Trenkner)は他のパートナー(Silvia Zenker)との交響曲6&7番が良く知られるところです。


【第一部】
ファンファーレから葬送行進曲はスカスカ、第一トリオは強音パートですが音厚が足りません。第二トリオも哀愁への変化率が低いです。
第二楽章第一主題も力感が不足、第二主題も変化が薄いですね。展開部の序奏が少し気配があるかもしれませんが、いずれ音に厚みがなく、かつフラットな演奏です。

【第二部】
スケルツォ主題も単音アルペジオは寂しい感じで、レントラー主題ももつれる様な印象です。それでも回帰する第一主題の変奏パートや第三主題変奏パートは聴けますね。第一部よりはpfにフィットしているかもしれません。コーダのフィニッシュはパワー不足、もっと低音も鳴らしてほしいですが。

【第三部】
第四楽章主部はpfに向いているのでは、と思いきや 流れる様な美しさが足りません。ポロポロとした音で優美さを欠くアダージェットです。
最終楽章は第一・二主題のフーガ的な絡みは上手くpfで表現していますね。でも展開部は長〜く感じ、再現部山場からコーダのpfはうるさく聴こえてしまいます。


表情・表現力の薄いピアノ版マーラー5です。もっとガッツリpfを唸らせるとか、跳ねる様なリズムを生かすとか、アゴーギクを振るとか、ヴィルトゥオーゾ性を加えるとか… すれば面白いのかもしれません。

ピアノ版なら第一楽章だけマーラーの演奏がピアノロールで残されている訳で、そちらをオススメしますね。(#1の参考音源にインプレあり)





ミヒャエル・ナナサコフ, Michael Nanasakov

ピアノデュオ・ヴァージョン
[Nanasawa Articulates] 2020


ナナサコフは七澤順一さんが作ったバーチャル・ピアニストで、演奏はYAMAHAの自動演奏ピアノ"Disklavier"、そしてMIDIシーケンス・ソフトとのDuoになっています。ヴィルトゥオーゾ系のピアノファンは知っていらっしゃるでしょうが、かなり特殊です。
マーラーと同年生まれ、同じチェコ出身のアウグスト・ストラダル編曲ver.です。


【第一部】
ファンファーレから音の厚みがありますね。そして音の歯切れが強くギクシャクで、葬送行進曲は強烈な不自然さを作っています。第一トリオはメイン旋律が裏に回り、第二トリオは哀愁が弾んでしまってます。マーラー本人のピアノロール第一楽章とは全く異なる印象です。
第二楽章第一主題はフィットした激しさ、第二主題は哀愁が跳ねています。展開部は本来vcの動機がギスギスと、再現部も全体的にそう言った音を強く感じてしまいます。

【第二部】
スケルツォ主題は良く鳴らし、レントラー主題では音量を落として少し揺さぶっていますね。第三主題のhrパートは違和感ですねぇ、弦楽パートはOKですが。変奏パートは'らしく'なっています。展開部と再現部も緩やかなアゴーギクを感じますが、スコア通り?!
第一部よりは総譜に近い印象かもしれません。

【第三部】
第四楽章は少し音の跳ね具合を落としますが、それでも鍵盤をカツンと叩く様なカクカクした印象のアダージェットです。
第五楽章第一・第二主題はとてもフィット感があって本録音中一番でしょう。コデッタもいいですね。展開部は強い流れで通して聴き疲れ、再現部冒頭三主題はフィットして山場からコーダは少しうるさいかもw


一音一音の粒立ちが極端に明瞭で、流麗さは極低くギクシャクとまさに機械仕掛けの様な印象です。

インテンポとライナーノートにはありますが、そもそもマーラー5のスコアにはBPM表記がありません。印象は全体やや速めでアゴーギクもしっかり感じますね。

スカスカなオットー・ジンガー編曲版より音数があってそれらしさが味わえます。ふとM.A.アムランの多重録音で聴いてみたいと思いました。





ナタリア・アンサンブル, Natalia Ensemble

アンサンブル・ヴァージョン
[Cobra] 2016-4/24-26


グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラ(アバド創設)のメンバーが2013年に設立した室内楽団によるアンサンブル・ヴァージョンで、指揮者無しですね。
編成は #1vn, #2vn, va, vc, cb, fl, ob, cl, fg, hr, tp, #1perc, #2perc, timp, hp, pf, harm の17人です。(harmはオルガン系のハーモニウム)


【第一部】
音圧は低いもののファンファーレはスローで響の良さがあります。葬送行進曲は緩やか穏やか、第一トリオではテンポアップが明瞭ですがパワー不足は否めませんね。第二トリオは室内楽らしい哀愁を感じられます。
第二楽章提示部第一主題は編成の薄さをカバーする切れ味があり、第二主題は小編成を生かしています。展開部はソロを使って興味深い聴かせ方が感じられます。このパターンはありではないでしょうか。

【第二部】
スケルツォ主題は見事にアンサンブルしていますね。レントラー主題も少ない編成が生きています。第三主題はそもそも小編成なので違和感がありませんね。展開部以降も同じですが、せっかくの室内楽らしさは少ないですね。何か+アルファ的なものを期待していたのですが。

【第三部】
アダージェットは予想通りにハープ五重奏曲的な流れになっていましたね。
最終楽章の第一・第二主題のシンプルな絡みは新鮮に感じます。コデッタも緩やかな流れで悪くありません。展開部は耳が慣れて来た様で編成の薄さは然程気にならなくなりました。再現部山場からコーダはこの編曲では金管の薄さが致命的ですが。


オケver.から引き算している感じで薄っぺらいマーラー5です。基本王道で楽器数が少ないパートは悪くない感じです。(小ホールの生で聴いたら案外行けるかも?!)

例えば多楽器パートでは極端に室内楽的トランスクリプションに大きく舵を切ったりすると、室内楽ならではのマーラー 5になったかもしれませんね。pfがもっと活躍しても面白そうです。

第四楽章トリオの弦楽四重奏など面白く、なんとか言いながら結構最後まで楽しみました





ホルスト=シンフォニエッタ, Holst-Sinfonietta

アンサンブル・ヴァージョン
[bastille musique] 2015


クラウス・ジモン編曲版で、演奏はジモン創設の"ホルスト=シンフォニエッタ"です。
編成は、#1vn, #2vn, va, vc, cb, fl, ob, cl, b-cl, fg, #1hr, #2hr, tp, #1perc, #2perc, hp, pf, acc、の18人です。(ナタリア・アンサンブルは、b-clと#2hrが無くtimpが入る17人編成。アコーディオンの代わりにオルガン系のハーモニウム)


【第一部】
ファンファーレは意外や音圧を出して、葬送行進曲は超スローで雰囲気を作ります。第一トリオは落ち着いた切れ味、第二トリオの哀愁はスローで葬送の延長的印象です。
第二楽章第一主題は速くシャープでオケのイメージに近いです。第二主題はvc?の中低音を生かして哀愁を聴かせます。展開部もオケ版に近い"烈→暗→明"のコントラストを醸して、再現部にも違和感は少なく、通常のオケ版に近い音で驚きですね。

【第二部】
スケルツォ主題はhrの使い方もオケに近い印象を作り、レントラー主題は楽器数を減らしてスローに、上手いですね。第三主題は金管がオケそのもの、弦楽パートも上手く管楽器を加えて処理します。展開部から再現部もオケ版らしさを聴かせますが、コーダはやや薄くなってしまいました。主旋律と従旋律、特に従旋律を上手くアレンジしてオケに近づけている感じですね。

【第三部】
第四楽章はやっぱりハープ五重奏、アダージェットはこうなるのが自然でしょうが面白さはありませんね。
第五楽章は弦楽の第二主題に厚み不足を感じ、展開部は終始スローが気になります。再現部冒頭三主題は当然ピッタリ、山場からコーダは18人で頑張った感じですね。フィニッシュ編曲も見事にまとめました。


室内楽らしさを生かす編曲ではなく、18人でフルオケ並みに聴かせる方向性ですね。スカスカしてしまう音圧不足は、打楽器と低音の鳴らし方で上手く対処して18人とは思えません。ナタリア・アンサンブルとはスタンスが異なりますね。

ただ室内楽らしいマーラー5を聴いてみたい気持ちも残ったかもしれません。見事だったのですが、これなら普通にオケ版を聴けばいいか? などとも思ってしまいました。







ストックのインプレは終了、後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手のインプレになりそうです。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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