マーラー 交響曲第5番 名盤珍盤 170CD聴き比べ! [#12 / CD:161-170]

グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860/7/7 - 1911/5/18)の交響曲第5番(Symphony No.5)の聴き比べ#12。今回は次の10CDのインプレです。

①今年7-8月発売のヴァンスカとヤンソンス(旧盤と聴き比べ)
②1960年代以前の古い演奏
 (おまけ+3CD:メンゲルベルクとワルターのアダージェットのみ古い録音)

【参考】
 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています

[リスト] 現状のMahler Symphony No.5 の聴き較べです (現在 #12回 170CDまで)
 #12:10CD 本投稿
 #11:10CD
 #10:10CD
 #9:15CD
 #8:15CD
 #7:10CD
 #6:14CD
 #5:5CD アバド追悼
 #4:20CD
 #3:25 26CD
 #2:20CD
 #1:15CD


オスモ・ヴァンスカ, Osmo Vänskä
Minnesota Orchestra
[BIS] 2016-6
 オスモ・ヴァンスカが2003年から首席指揮者を務める、ミネソタ管弦楽団を振った昨年6月の録音です。ミネソタ管のゴタゴタは興味ある方はググってくださいね。
第一楽章・第二楽章
第一楽章ファンファーレからいきなりギクシャク感のスロー、おとなしい葬送行進曲、第一トリオでは表情を変えますが緩め、第二トリオは弱音で入り柔らかな印象で個性的。
第二楽章第一主題も抑え目でギクシャク、第二主題も静音,スロー&マイルドです。展開部から再現部もマーラーの「最大の激烈さを持って」とは無縁、切れ味排除の曲者第一部です。
第三楽章
スケルツォもスローでhrはモタモタ、レントラー主題も微妙な揺らぎ、それ以降もいきなりのテンポアップとか読めない見晴らしの悪い残念な第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは薄く細い流れで山場も抑える好みの演奏、間を取りすぎなのは別として冷たく澄んだ流れは良いですね。
最終楽章の入りのhrは間を取り過ぎ、その後は適度に主題を絡ませながら常識的に進んで(軽快感は低いですが)、展開部の山場を盛り上げ、再現部では山場・コーダを見事に〆てラストはあっさり風w。
とはいえこの第三部は1-3楽章より遥かにマシです。
・・・・・
スロー&マイルドと奇妙な揺さぶり、そして管楽器のギクシャク。咳払いでもして喉のつかえを振り払いたい様なマーラー5です。
一癖モノがお好きな通の貴方には一聴の価値ありですw




マリス・ヤンソンス, Mariss Yansons (2録音)
ラトビア人指揮者ヤンソンスは、ムラヴィンスキーの助手を務めレニングラード・フィルでデビューしています。その後ほぼ同時期にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)とバイエルン放送交響楽団二つのビッグネイム・オケの首席指揮者を務めていましたね。


(#1)

Royal Concertgebouw Orchestra
[RCO Live] 2007-10/18,21 2008-1/16,17
 2004年から2015年までROCの首席指揮者を務めた時代のライヴです。
第一楽章・第二楽章
第一楽章はややスローで落ち着いた葬送行進曲、第一トリオでは目醒めてテンポアップかつ激しさを見せ、第二トリオでは控えめな弦の音色から抑えめの展開です。第二楽章第一主題は切れ味良く、第二主題では第一楽章第二トリオの回帰でコントラストを付けます。殊更の重厚さと激しさは避けていますが、主流派的な第一部です。
第三楽章
ややスローなスケルツォ主題、レントラー主題は優美に推移し、第三主題も落ち着いています。展開部再現部も同様に控え目でスローな流れ、正統派ですが第一部同様ややシャープさに欠ける気がする第二部です。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは、9分台前半の演奏時間(テンポ)も含めて、抑えの効いた情感で好きなパターンですね。最終楽章は第一・第二主題がうまく絡みながらの落ち着いた流れで展開部の山場を抑え気味に、再現部の山場からコーダは壮大に、ラストのアッチェレランドは抑え気味ながらビシッと決めますね。この第三部が好みでしょうか。
・・・・・
スパイスに欠けるきらいは残るものの悠然と落着き払ったマーラー5です。全体として独特の個性を感じる演奏ですね。
ラストにだけ入るとって付けた酷いアプローズは何?!w




(#2)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
[BR Klassiks] 2016-3/10,11
 2003年からヤンソンスが首席指揮者を務めるバイエルン放送響との昨年のライヴです。上記RCOの8年後のこの演奏は第四楽章以外は演奏が長くなっていますがそれを感じませんね。
第一楽章・第二楽章
葬送行進曲は適度なテンポと重厚さが付きました。第一トリオでも切れ味が増して、第二トリオも適度にテンポを確保しています。(第一トリオの途中でテンポダウンする特徴は同じですね) 第二楽章第一主題は速さ控え目、第二主題はコントラストを付ける様に第一楽章第二トリオを回帰させます。第一楽章でより顕著ですが、RCO録音より切れ味が増して見通しの良くなった第一部です。
第三楽章
ゆったりとしたネルソンスのスタンスはそのままに、スケルツォはよりリズミカル、レントラーは美しさを増しています。第三主題はゆったり構えた中に切れ味を増しました。スタンスはRCOと変わらずに聴き慣れた方向にシフトした第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは9'を切り 速くなっていますが、ディナーミクを付けています。濃くなってしまった感じで残念です。最終楽章はRCOと良く似た傾向にありますね。
・・・・・
RCOに比べると処々でメリハリが付きより王道的なマーラー5になりました。鬼に金棒と見るか、没個性化と見るか…
根幹部分の悠然としたヤンソンスのスタンスは変わらないので、オケの個性と言えるかもしれません。ドイツのオケと組むとこういう傾向になるのは今までも他の指揮者*で聴いています。

*J-P.サラステ、M.シュテンツ、等がそうでした。





ここから1960年代以前の古い録音です。(録音はmono主体で、その良し悪しを問うのは意味がないでしょう)
圧倒的個性を放つシェルヘンの4CDは#2で紹介済みですw



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter

New York Philharmonic
[Sony] 1947-2/10

(右はCBS録音のセット物です)
 マーラーがハンブルク歌劇場の音楽監督(1891年ー1897年)だった時代、その下で研鑽したブルーノ・ワルター(1876/9/15 - 1962/2/17 )が唯一残したマーラー5番全曲 ニューヨーク・フィルの音楽監督時代の録音です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、テンポ速めでその変化も少なめです。第2トリオも叙情を感じさせながらもテンポ変化はありません。第二楽章第一主題は激しさを増し、第二主題で叙情性強く変化させます。まさに王道です。
第三楽章
軽快なスケルツォ、レントラーも速めですね。第三主題はマーラーの「より遅く、落ち着いて」が見事に展開されます。15'ちょっとで、今聴き直すととても速い感じです。
第四楽章・第五楽章
7'半と短いのですが速く感じる事はなく、ゆったりと冷静なアダージェットで好みですね。最終楽章は軽量軽快な第一主題と第二主題が絡みながら上げて行き、展開部と再現部の山場はキッチリ盛り上げてコーダからフィニッシュまでは迫力いっぱいです。アッチェレランドを強烈に決めます。
・・・・・
全体的に速めですが、まさに王道のマーラー5ですね。今の時代の指揮者が繰り出すアゴーギクとディナーミクを剥ぎ取れば、この演奏が現れます。真髄で一聴必須です。
久しぶりに聴きましたが、聴き終わってから心に余韻が残りますね。

ワルターはアダージェットのみですが1938年にVPOとの録音を残しています。最後にインプレしています。




ディミトリス・ミトロプーロス, Dimitris Mitropoulos
New York Philharmonic
[delta] 1960-1/2
 ワルターの後ニューヨークフィルの首席指揮者(1949-1958)だったミトロプーロスがその職責を退いた後の録音ですね。ワルターの13年後、バーンスタインの3年前のニューヨークフィルとのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
少し不思議な間のファンファーレとゆったりとした葬送行進曲、第1トリオは派手ですがテンポ変化は少なめ、第2トリオも情感的ですがテンポ変化は薄めです。第二楽章第一主題は速めで切れ味良く、一転第二主題で柔らかさを強調します。構えの大きな正統派第一部ですね。
第三楽章
速めで揺さぶりのスケルツォはオケが暴れ気味、レントラーでは優美さを見せます。速めで揺さぶりから第三主題もスローですがアゴーギク強めです。全体としても揺さぶりと華々しさの第二部です。
第四楽章・第五楽章
澄んだ音色のアダージェットは間をとって大きいスタンスです。第五楽章は提示部からスローに妙なアゴーギク、山場は派手に、コーダからフィニッシュはスローを交えながらのアッチェレランドです。
・・・・・
雄大で迫力の第二楽章は見事ですね。揺さぶりのクセが強めですが、パワーパートは華々しいマーラー5です。




ルドルフ・ケンペ, Rudolf Kempe
Rundfunk-Sinfonieorchester Leipzig
[ARCHIPEL] 1948-11/3
 Rudolf Kempeとライプツィヒ放送交響楽団の古い演奏です。これもシェルヘンと同じ様にカット短縮盤です。シェルヘンの初録音(1953)よりさらに5年古く、当時の流れでしょう。
第一楽章・第二楽章
やたらスローなファンファーレと葬送行進曲、第1トリオもモッタリ、第2トリオは普通ですw 第二楽章第一主題はややテンポアップでコントラストが付きますが、いずれモタモタして長〜ぃ第一部です。
第三楽章
カットありの12分ですね。優美に入るスケルツォも同じ流れのレントラーも、その後も全体にもっさり。切れ味はありません。
第四楽章・第五楽章
ワルターと比べたら2分近く長いのですが、他の楽章が超スローなのでアダージェットは速く感じます。第五楽章ホルンがメタメタ、その後もスローで怪しげ、一部カットしながら山場とコーダ・フィニッシュは普通に炸裂させています。
・・・・・
演奏も怪しげ、モタモタとした退屈なマーラー5です。時代に関係なくひどい演奏が存在する証明ですねw 第三・五楽章カットもあり、怪しげマニアの貴方にオススメ。(爆)
アダージェットは悪くありません。




ハンス・ロスバウト, Hans Rosbaud
Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
[ica] 1951-10/22
 大戦前後に活躍した現代音楽が得意な指揮者ロスバウトが、ケルン放送響を振ったマーラー5ですね。
第一楽章・第二楽章
スロー重厚な葬送行進曲から第1トリオは激しさと強烈な速さに表情を一変させます。第二楽章第一主題は一楽章トリオの流れで厳しく、第二主題は緩やかなテンポに落としてきます。第一楽章の二つのトリオの印象を忠実に再現させている感じで、締まりのいい第一部です。
第三楽章
速め優美なスケルツォ、それ以降も全体16’弱と速めですが第三主題は見事に緩やかです。アゴーギクを大きく振った第二部ですね。
第四楽章・第五楽章
アダージェットは少し速いのですが、甘美さが感じられます。最終楽章は締まりの良い前半から流れよく二つの山場を盛り上げます。コーダは壮大、ラストのアッチェレランドもビシッと決めます。
・・・・・
テンポや表情の変化を明確に打ち出した硬派のマーラー5ですね。特に第一部と第五楽章は素晴らしく、今の時代の録音なら☆です!




ポール・パレー, Paul Paray
Detroit SO
[TAHRA] 1959-11/12
 フランス人指揮者ポール・パレーが音楽監督(1952-1963年)を務め鍛えた時代のデトロイト交響楽団とのマーラー5です。
第一楽章・第二楽章
クセのない葬送行進曲と第1トリオ、第二楽章も同じく、正攻法の第一部です。気持ち速めの演奏はややまとまりの弱さを見せますが。
第三楽章
速めで不安定なスケルツォと微妙な揺らぎのレントラー、その後も全体速い展開です。カットなし15'ですから。
第四楽章・第五楽章
アダージェットはやや速く厚めです。第五楽章第一・二主題は荒々しいですが流れは標準的に進み、展開部・再現部も力技的に迎えます。コーダからラストは溜めを作ってアッチェレランドで飛ばし上げます。
・・・・・
演奏が荒いのですが、全体速めのテンポ以外は正攻法なマーラー5です。荒さは録音精度も問題ですがw
パレーの口ずさみがよく聞こえます。




エーリヒ・ラインスドルフ, Erich Leinsdorf
Boston SO
[RCA] 1963-11
 ワルターやトスカニーニの助手を務めた辛辣さで知られるラインスドルフが音楽監督を務めた時代のボストン交響楽団とのマーラー5です。この二代後が小澤征爾さんですね。
第一楽章・第二楽章
哀しみと美しさを感じさせる葬送行進曲、テンポを上げてシャープな第1トリオ、憂いの第2トリオと流れの美しい第一楽章です。ラストのティンパニが変則ですね。第二楽章は一楽章の二つのトリオのイメージを再現します。バランスの良さと落ち着いた第一部です。
第三楽章
円舞曲的なスケルツォ、優美なレントラー、第三主題と大きなテンポ変化は避けながらも全体は美しさで通しています。
第四楽章・第五楽章
8'半とやや速めなアダージェット、アゴーギクで美しく奏でられます。第五楽章は軽やかに二つの主題を絡め上げていき、バランスよく山場を盛り上げてコーダからフィニッシュもアッチェレランドできれいにまとめます。
・・・・・
録音に3日かけていて、充分に作り込まれていますね。クセも破綻も過度の興奮も殺した、落ち着きのある完成度の高いマーラー5です。出来過ぎ感が気になりますが一聴の価値ありです。
現在の一部作品に見られる録音技術で作り込まれた不自然さがないのがいいですね。'63年録音ですがステレオでバランスも音も良いです。(ADDでD.リマスターされているでしょう)




カレル・アンチェル, Karel Ančerl
Toronto SO
[TAHRA] 1969-11/4
 カレル・アンチェルが小澤征爾さんの後を継いでトロント交響楽団の常任指揮者に就任した年の録音ですね。
第一楽章・第二楽章
標準的な葬送行進曲から元気な第1トリオになり、憂いの第2トリオの第一楽章。第二楽章も取り立てて個性的ではありません。
第三楽章
やたらとスローなスケルツォと怪しげな管楽器、その後も"緩々と怪しげ"な流れで20'を超える演奏は長すぎです。ぼーっとしていて気がついたら、まだやってた…みたいな。
第四楽章・第五楽章
ここでも標準的で甘美でもクールでもないアダージェットです。第五楽章は緩めに二主題を絡めて行き、山場とラストは締まりよく納めます。
・・・・・
演奏も怪しく締まりに欠ける退屈なマーラー5です。
'69年録音ですがmonoでAAD、音もかなり残念。リマスタリングでヒスノイズは削減されてはいますが。






【おまけ】
マーラーと親交のあったメンゲルベルク(1926年録音)とワルター(1938年録音)のアダージェットをインプレしておきましょう。
(アダージェットのみなので聴き比べ枚数にはノーカウントです)


ウィルヘルム・メンゲルベルク, Willem Mengelberg
アダージェット / Concertgebouw O
[Opus kura] 1926-5
 メンゲルベルク(1871/3/28 - 1951/3/22)とコンセルトヘボウの約7'の演奏は特別速く感じませんが、間が置かれていないので落ち着きが足らない感じですね。ただ後半vnのポルタメントがキュゥ〜ンという感じまで強調されているのは特徴的ですね。
マーラー本人も同様な演奏時間だったそうですから、これがマーラーの演奏(意図)に近いのでしょう。
今の時代のアダージェットに比べれば、そっけないですがそれでも充分にサロンミュージック風ですよね。



ブルーノ・ワルター, Bruno Walter
アダージェット / Vienna Philharmonic
[Opus kura] 1938/1/15
 メンゲルベルクよりスローに聴こえますが、間が少ないのは同じですね。ポルタメントの強調はありません。また上記1947年のニューヨークフィルとの演奏と大きくは変わりませんね。



ケネス・スローイク, Kenneth Slowik
最後はメンゲルベルクの譜を元にガット弦vnで再現されたアダージェットです。

アダージェット / Smithsonian Chamber Players
[DHM] 1995
 スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる再現演奏です。
当時の人はこの様に聴こえたのでしょうか。現在の録音でポルタメントの揺らぎがさらに強調されている感じで、甘美です。
このアルバムには上記メンゲルベルクとワルター二つの古い演奏も始めの1'弱づつ入っています。(マーラーがアレンジしたベートーベンOp.95やシェーンベルクの"浄夜"の興味深いver.も入っています)




そろそろ所有のマーラー第五番も先が見えてきました。次回のインプレで在庫クリアーになり、後は新譜と何かのチャンスで既発売品の入手になりそうです。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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