フィリップ・グラス(Philip Glass)の交響曲「ロウ」と「ヒーローズ」はオリジナルのデヴィッド・ボウイを超えられるか

米現代音楽を聴くシリーズwで続けていますが、ここでビッグネームのフィリップ・グラス(Philip Glass, 1937/1/31 - )をインプレしましょう。

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デヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバム「ロウ」と「ヒーローズ」をモチーフに作られた同名交響曲が二曲あります。その辺りをきっかけに何枚かインプレを残しておきたいと思います。(デヴィッド・ボウイのアルバムについては末尾の【追記 (続きを読む)】で触れておきますね)

ポイントは
ボウイの原曲と比べて
ヒーローズ・シンフォニー 聴き比べ (以下2CDで)

1枚目2003年リリース、デニス・ラッセル・デイヴィス(Dennis Russell Davies)が創設者で2002年まで音楽監督を務めたACOアメリカン・コンポーザーズ・オーケストラ(American Composers Orchestra)。Lowは1991–1996まで音楽監督を務めたブルックリン・フィルハーモニー管弦楽団(Brooklyn Philharmonic Orchestra)。

2枚目:指揮は同じD.R.デイヴィス、現在首席指揮者を務めるバーゼル交響楽団(Sinfonieorchester Basel)。上記の9年後、2012年録音。




Symphony No.1 "LOW" & Symphony No.4 "HEROES" / Philip Glass

ロウ・シンフォニー 交響曲第1番 (1993年)
 三楽章で各楽章でも旧来からの形式を尊重する様な展開が見受けられます。曲としてはアンビエントやミニマルが明確ですが、全体の流れに変化が乏しいのは否めません。

ボウイ原曲対応パターンは二つに感じます。
【パターンA】原曲をグラス流に展開
【パターンB】原曲の一部を生かして展開

第一楽章 サブテラニアンズ (Subterraneans)
 原曲自体が変化の少ないアンビエント系です。提示部?は曲調自体が保持されてベース音の重量感をなくして弦楽で美しさを乗せた感じです。ソナタ形式か複合三部形式の様な展開で、中盤はテンポアップして違う曲調となり最後はコーダから締める流れです。
第二楽章 サム・アー (Some Are)
 原曲はアンビエントなヴォーカル曲です。ここでは冒頭から一楽章からの流れを受けてミニマルで始まり、原曲パートを管楽器がなぞります。原曲の一部だけを生かして典型ミニマルと映画音楽的な心地さのロンド形式風展開になっています。
第三楽章 ワルシャワの幻想 (Warszawa)
 原曲は同じ様にアンビエントですが、そこにミニマルを第二主題(第一トリオ?)で加えて流れは第一楽章と似ています。



ヒーローズ・シンフォニー 交響曲第4番 (1997年)
 六楽章の構成感は絶対音楽というよりも標題音楽(映画音楽)のストーリーを感じます。
第一楽章はリズミカルで軽快さがあり導入部としての心地よさがあります。第二楽章はメランコリック、第三楽章で原曲を生かし映画音楽のスリルシーンの様にチェンジします。第四楽章は一転のどかなシーンを思わせるスケルツォ楽章、第五楽章はアダージョ風、ラスト第六楽章はグラスのミニマル管弦楽全開です。

原曲との比較は次の様になりますね。
第一楽章 ヒーローズ, Heroes
 原曲はグラムロック+テクノ系、パターンBでソフトに入ります
第二楽章 アブドゥルマジード, Abdulmajid
 原曲はロックリズムのテクノ+アンビエント、パターンA
第三楽章 疑惑, Sense of Doubt
 原曲はダークなアンビエント系、パターンA
第四楽章 沈黙の時代の子供たち, Sons of the Silent Age
 原曲はロック系ヴォーカル曲、パターンBもしくはAを極度にソフト化
第五楽章 ノイケルン, Neukoln
 原曲はアンビエント系、パターンA
第六楽章 V-2シュナイダー, V2 Schneider
 原曲はパンク&グラム系、パターンAに近いB






Symphony No.4 "HEROES" / Philip Glass

ヒーローズ・シンフォニー 交響曲第4番 (1997年)
 比べると全体としてディナーミクとアゴーギクを抑え、控えめで透明感のある流れになっています。くどさは薄まりクール、ポイントではメリハリも残されて見晴らしもいいですね。研ぎ澄まされた感じです。





ボウイの原曲と比べて
 比較しても仕方のない全く異なる音楽です。ボウイ&イーノ原曲は曲ごとに表情が異なり、音楽の幅も広く、ロックからエレクトロニカ、そして現代音楽につながる音楽性も覗いて楽しめます。
グラスは今の時代の、特にアメリカのオケが委嘱しそうな、クラシカル管弦楽曲です。ボウイの曲をモチーフにする必要性が話題性以外にどこにあったのか不思議です。

Heroes Symphony 聴き比べ
 ACOは濃厚で楽章展開が強い標題音楽の色合いです。9年後のバーゼル響の方が冷静で映画音楽の完成形に感じられますね。

フィリップ・グラスというとまず浮かぶのは映画音楽、耳なじみの良いサウンドにミニマルがチラ見えするというイメージ。現代音楽でもこのブログの前衛とは対極にあるマニエリスムですね
S.ライヒやT.ライリーと比べるとやっぱり退屈ハードルが高いですw




【追記】
両アルバムともに1977年のリリースで、当時アメリカからドイツ入りして生活と楽風を変えた時期にあたります。とは言え、今聴き直すとアンビエントとグラム・ロックにテクノが被った感じです。
CD化された際にボーナス・トラックが追加されていますが、そのタイトルもグラスは使っていますね。

★"ロウ"(Low) 1977/1 - 1991CD化
 ボウイ10作目のアルバムです。アルバムにはブライアン・イーノ(Brian Eno)が参画していました。アンビエント傾向が明確でインストルメンタルのパートが重視されていますね。
★"ヒーローズ"(Heroes) 1977/10 - 1991CD化
 "ロウ"に続くボウイ11作目のアルバムで同年発売。「ベルリン三部作」の二枚目でコンセプトはグラムロック回帰にテクノを被せた感じです。スタッフはほぼ同じです。

ブライアン・イーノ(Brian Eno)は、1973年にロキシー・ミュージックを脱退。この時期に前衛現代音楽やアンビエントに傾倒始めています。そのObscure Recordsレーベルからは後の現代音楽家となるギャヴィン・ブライアーズの様なアーティストも創出されて、言わずもがなの影響力ですよね。

ボウイ x ロキシー・ミュージック x ブライアン・イーノといった顔ぶれは、多様化してきた現代音楽にも関連して嬉しいですね。またこの時期ボウイはイギー・ポップのプロデュースもしており、今回聴き直した二枚のCDも最高でした。"ジジイの青春時代" は楽しかったですね。^^v



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