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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 200CD 聴き比べ! [#10 : 10CD]


グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)の交響曲第5番の聴き比べも#10まで来ました。まだありますね。

Mahler Symphony No.5
  #10:10CD
ゲルギエフ[x4 ☆], ラトル, ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, 山田一雄

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:変わっています (普通の演奏じゃ満足出来ない貴方にw)


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ヴァレリー・ゲルギエフ, Valery Gergiev (4録音)
ゲルギエフはテミルカーノフの助手として1977年にキーロフ劇場、現マリインスキー劇場(管弦楽団)、の指揮者になっています。その後、1988年から音楽監督(1996年から総裁)を務めています。(キーロフはソヴィエト時代の呼び名です)
現在はミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者としてもマーラー・チクルスを推進中で、新しいマーラー5が楽しみです。
そしてここにも名盤が隠れています




(#1)

Rotterdam Philharmonic
[LIVE Supreme] 2001-1/2

非正規盤になりますが、ゲルギエフが主席指揮者(1995-2008)時代のロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団とのマーラー5です。


【第一部】
'間'を持った派手な鳴りのファンファーレから重厚スローな葬送行進曲。第一トリオは激しさよりも華やかさ、第二トリオは美しい哀愁です。
第二楽章 第一主題は刺激を強くキレキレに、第二主題では哀愁よりも優美さを作りますね。展開部は少し揺さぶったvc動機の色濃い美しさが印象的です。再現部も各主題を明瞭に鳴らした締まりの良さが光ます。多彩な表現力で素晴らしい第一部なりました。

【第二部】
スケルツォ主題は軽妙で演舞的、レントラー主題も僅かにアゴーギクを充てて優美にて洒脱!! 第三主題のオブリガート・ホルンはスローに弦とマッチの良さを、変奏パートでもテンポ変化を利かせて見晴らしが良いです。展開部はスローからハイへと刺激を与え、再現部は提示部よりテンポを上げ気味に進めて後半スロー、待ち構えるコーダは派手派手しくまとめます。見事なバランス構成で聴かせる第三楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は暖色系で濃い流れ、中間部も繊細な揺らぎを与えて官能的なアダージェットです。
完璧なアタッカからの最終楽章は二つの主題をバランス良く軽快さで、コデッタは美しく。展開部は始めから力感溢れる流れで緊迫感の中を突き進み、再現部冒頭主題群をしっかり抑えてコントラストを描きます。山場からコーダは猛烈にドライヴし、フィニッシュは豪快なアッチェレランド! 感激的です!!
怒涛の足踏み音の大アプローズが待っていました。


美しさから重厚さまで際立つ表現力のマーラー5です。暴れる事も無く見晴らし良く締まりある演奏の代表と言えるでしょう。(暴れるのも好きですがw)

放送録音だと思いますが、非正規盤としたら録音レベルも十分で、聴き応えある一枚になっています。個人的名盤の一角です。






(#2)
Kirov Orchestra
[DIRIGENT] 2007-8/19

続いても非正規盤です。ロッテルダム・フィルから6年後、総裁としてゲルギエフが長期政権を握る手兵(現)マリインスキー劇場管弦楽団の演奏です。


【第一部】
鳴りの良い管楽器のファンファーレと、ロッテルダムの重厚さからクールさに変化した葬送行進曲です。第一トリオでは明るく華やかですが少し標準的な激しさに、第二トリオも哀愁感が強まっている様です。ラスト管楽器が怪しいですがw
第二楽章 第一主題はここでも刺激的にキレキレ、第二主題は鬱な哀愁になりました。展開部もvc動機が静を強調しますが揺さぶりは消してシックに、後半は切れ味です。再現部も速めのテンポでシャープ、ラスト前の金管の山場は最終楽章の〆めを期待させますね。6年前とよく似た流れで見晴らしの良さは変わりませんが、処々で表情がスタンダード化した第一部です。

【第二部】
優美なスケルツォですが少し速く力感も、レントラーはここでもアゴーギクのトッピングで優美です。第三主題のホルンと弦もスロー朗々の美しさ、変奏も変化が心地良いです。展開部は始めからテンポを上げています。再現部もテンポを上げ気味にアゴーギクを着けて、その分シャープさが際立ちます。コーダは締まり良く締めていますが、派手さは抑え気味なりました。優美さとシャープさの対比を見せる第二部(第三楽章)でしょう。

【第三部】
第四楽章主部は少し速く落ち着いた流れになり、中間部でも揺らぎは弱まりました。冷たくシャープなアダージェットに変化しました。
最終楽章は第二主題に切れ味が増してテンポを上げて進みます。展開部はやっぱり始めから力感を入れていますがコデッタで落ち着かせてピークでテンポアップ。再現部山場からコーダは重量感よりも切れ味重視になり、炸裂的からまとまり良さに。


シャープで見晴らしの良いマーラー5です。ロッテルダムの多彩な表現力をシャープ方向へ向けた感じです。基本的なアゴーギク・ディナーミクの構成はよく似ています。

ロッテルダムが無ければ、もちろんです。と言うか、これはこれでで良いのかも…






(#3)
World Orchestra For Peace
[Unitel Classica] 2010-8/5 DVD

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amazon DVD

キーロフの3年後、2010年のBBCプロムスでWOFPを振った映像付きの録音です。平和の祭典・式典の時に集まるスペシャル・オケで、創設者ショルティ亡き後ゲルギエフが指揮者を務めています。


【第一部】
抑揚あるファンファーレから僅かにアゴーギクを感じる落ち着いた葬送行進曲。第一トリオも一層スタンダードな激しさ方向へ、第二トリオの哀愁には美しさがああります。
第二楽章 第一主題は王道的に切れ味鋭く、第二主題は美しいさと哀愁のバランス。展開部のコントラストはやや下がってvc動機も色合いは薄くなりました。再現部が速めに流れるのは変わりません。よりスタンダードに王道化した第一部になりました。

【第二部】
穏やか優美ですがhrが弱いスケルツォ、軽やか優美な弦のレントラーに。第三主題はオブリガート・ホルンが弱いのが気になり、変奏パートの表情も弱くなりました。展開部は速めにキープされて、再現部もテンポをキープしながら主題を並べ、コーダもきっちりまとめます。スタンダード化で良さが薄まった第三楽章です。詰まった様なパワー不足のhrも残念です。

【第三部】
第四楽章は少しスローになって甘美さもほどほどに今の時代の標準的なアダージェットです。
最終楽章がキーロフに一番近く、第二主題の速さは相変わらずで、展開部の力感からコデッタで落ち着かせるのも変わりません。再現部も山場からコーダを一体感ある切れ味でスカッと駆け抜けます。


王道化の完成度を上げたマーラー5です。ただ、(#1), (#2),にあった素晴らしい個性と引き換えになってしまいました。

決して悪くなく、前二録音を聴かなければ見事な演奏でしょう。方向性から言えば回を重ねる毎に王道化している様です。






(#4)
London Symphony Orchestra
[LSO Live] 2010-9

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上記プロムスのWOFPとの録音の翌月、首席指揮者(2007-2015)として数々の録音を残したロンドン交響楽団とのマーラー5です。


【第一部】
落ち着いたファンファーレと感情を抑えた葬送行進曲ですがアゴーギクが入ります。第一トリオも激情抑えめですが、その後の木管の主部回帰を極度にスロー展開するなど陰影が深まっています。
第二楽章も第一主題はやや強めになっていますが切れ味不足、第二主題も哀愁を強めに演奏されます。展開部のvc動機もすっかり平凡になっていますね。再現部も王道と言うより凡庸になってしまいました。切れ味が不足して見晴らしの良くない第一部です。

【第二部】
落ち着いたスケルツォから緩やか優美なレントラーへと続きます。第三主題のスローからの変奏もモヤモヤっとした感じで、展開部も速め力感ですが何処かヌケが悪く、再現部も流れはWOFPと似て王道ですが平凡と言えばそう聴こえてしまいます。緊張感や切れ味が弱く今ひとつ締まりません。ヌケが悪く、録音の問題?!

【第三部】
第四楽章主部は透明感が増していますが、中間部と重厚パートに揺さぶりを感じる変わったアダージェットです。
最終楽章で個性を放っていた第二主題の速さは平均的になって平凡化、展開部も力感からの流れではなくなりアゴーギクで見晴らし不良になってしまいました。再現部冒頭を抑えての山場からコーダはここでもビシッと決まりましたが、時すでに遅し。視界不良の第三部です。


焦点が絞れずシャキッとしないマーラー5です。流れはスタンダードと個性が入り混じって見晴らしが悪く、演奏にもヌケの悪さを感じます。WOFPから一ヶ月でのこの違いは??

なのにラストは切れ味良く見事に決めていると言う不思議さです。


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サイモン・ラトル, Simon Rattle

Belriner Philharmoniker
[EMI] 2002-9/7-10

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個人的にはイギリス人指揮者Sir サイモン・ラトルも我儘ヴィルトゥオーゾ軍団BPOも興味は薄いですが、ラトルのBPO音楽監督としてのデビューLiveですね。なんとここまでインプレしていなかったとは驚きでしたw
そう言えばBPOの首席指揮者(兼芸術監督)も2018年で終えるそうですね。


【第一部】
葬送行進曲は静から烈にもったいぶったクセがあります。第一トリオでは激しさほどほどですが後半は揺さぶりを入れ、弱いティンパニーからの第二トリオでも傾向は同じで、アゴーギクの表情付けに違和感があります。
第二楽章 第一主題は型通りの激しさ、第二主題の哀愁も平均的で第一楽章で感じたクセはありません。展開部はアンフィットなディナーミクを振り、再現部の第二主題のピークは何げに流している感じです。

【第二部】
スケルツォ主題とレントラー主題は今ひとつの優美さでよそよそしさを感じます。第三主題オブリガート・ホルンも気持ち良さは低くスッキリしません。展開部もそれなりの締まり具合で、再現部もするするっと流れて、コーダもほどほどです。

【第三部】
第四楽章主部は緩やかな揺さぶりの静美、中間部は淡々と流れて、アルマに気持ちが伝わらないアダージェットですw
最終楽章は両主題ともに特別な事はなく進み、コデッタでも普通に優美。ところが展開部からは力感で進めて締まりを見せ、ピークを派手に鳴らします。そして再現部の山場からコーダは迫力を増して見事にアッチェレランドで駆け抜けます。ラストだけはまとめる流石のBPO!!? (笑)


最終楽章展開部からラストを聴かせるマーラー5です。第一部の様にもったいぶった流れを作るかと思えば、第二部の様に気持ちの入らない楽章もあって、聴いていてフィットしません。

ところが第五楽章の展開部から一気に締まり、フィニッシュは大炸裂でまとめと言う不思議なマーラー5です。

ちなみにオブリガート・ホルンはソロ扱いで前列だったはずですね。


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マルティン・ジークハルト, Martin Sieghart

The Arnhem Philharmonic Orchestra
[EXTON] 2010-11/3-5

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オーストリア人指揮者ジークハルトが2008年に常任指揮者を退き名誉指揮者となったオランダのアーネム・フィルハーモニー管弦楽団(アルンヘム・フィルハーモニー管弦楽団とも)との演奏です。2010年はマーラー生誕150周年で、録音も増えた年でした。


【第一部】
スローで陰影を付ける葬送行進曲の第一楽章。第一トリオも激しさよりも鳴りの大きさ、木管の主部回帰後の第二トリオのスッキリ鳴らす哀愁も含めて構えの大きい第一楽章です。
第二楽章も当然の様に広がりを感じる第一主題から、落ち着いた哀愁感の第二主題を奏します。展開部でもスロー基調で心地良いコントラストを作り、再現部は第二主題を鳴り良く広げています。

【第二部】
ここでも基本は変わらずでスケルツォからレントラーはスロー基調の優美さです。第三主題オブリガート・ホルンは抑えながら美しい低弦とのマッチの良さを見せます。展開部もスロー、再現部もスロー、コーダももちろんスローです!! スローキープでマイルドな第三楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は静美でこの流れにピッタリ、中間部も澄んだ流れを作り主部回帰のスロー静は透明感の美しさです。クールなアダージェットそのものです。
第五楽章も両主題を落ち着いて絡ませ、コデッタは勿論優美! 展開部もスローですがしっかりとした鳴りで登り、ピークは大きく華やかに鳴らします。再現部山場からコーダは慌てずゴージャス!


スロー広がりでマイルド仕立てのマーラー5です。決して暴れる事は無く録音の良さもあって、独特の安定感と穏やかさを作っています。

徹底したスロー&マイルドなので好みは大きく分かれるでしょう。また、ボリュームを上げられないとボケた印象に陥る危険性も抱えています。

マーラー5番を聴き込んだ貴方に聴いていただきたい一枚です。やっぱり印でしょうかねェ。


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アラン・ロンバール, Alain Lombard

Orchestre National de Bordeaux-Aquitaine
[Forlane] 1991-6

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バーンスタインの助手を務めていた事もあるフランス人指揮者アラン・ロンバール。ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団の音楽監督時代(1988–1995)の録音になります。


【第一部】
微妙なディナーミクを見せる落ち着かない葬送行進曲から、弾ける様な第一トリオはテンポアップで、第二トリオでは丁寧で流麗な流れですがアゴーギクを感じます。
第二楽章は速く激しい序奏から第一主題、一転淡々とした美しさからアゴーギクの第二主題です。展開部は強いアゴーギクでコントラスト付け、再現部コラールはスタンダードで派手な盛り上げ!? 素直では無い揺さぶりの色付けの第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はスタンダードですが優美さに欠けて、レントラー主題では何とか優美さを見せます。第三主題は変奏パートと合わせて忙しない感じ、流れを締めるはずの展開部はアッサリ。再現部もこれといった特徴を見せずに、コーダいきなり爆速です。速い流れと丁寧さに欠けるスケルツォ楽章です。

【第三部】
第四楽章主部はややそっけなく、中間部は少しスローから粗く揺さぶります。'何か違う'と感じるアダージェットです。
第五楽章 第一・二主題は速めで忙しなく軽快さ不足、ゴリゴリとした感じです。展開部も速いまま乱雑に駆け上がり、再現部山場からコーダはテンポを落として大きく鳴らします。最後は爆演アッチェレランドですが感激的ではありませんね。


まとまりと丁寧さに欠けるマーラー5です。アゴーギクとディナーミクだったり、全部が速かったりと 個性的流れは尊重できますが、'何か違う'感じです。

何と言うか、もう少し大切に演奏しても良いのでは?と思ってしまいます。荒っぽさは歓迎ですが、気持ちの伝わらない粗雑な変則は残念です


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ブルーノ・マデルナ, Bruno Maderna


Orchestra Sinfonica di Milano della RAI
[ARKADIA] 1973-2/23 [mono]

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現代音楽家また指揮者としても好きなマデルナです。指揮は かのシェルヘンに師事しています。(そこが問題なのですがw) この5番はマデルナが亡くなった年に録音されたものになりますね。当時首席指揮者(1971-1973)を務めていたミラノRAI管弦楽団(ミラノ・イタリア放送交響楽団?)による演奏です。


【第一部】
何気ないファンファーレからいきなり超スローで強い揺さぶりの葬送行進曲、いきなりマデルナらしさが全開です。第一トリオは派手に激しく後半スローダウン、凄いコントラストです。第二トリオ前のティンパニーも奇妙です。
第二楽章第一主題は猛烈に速く大暴れ、そこからいきなりスタンダードな第二主題に。展開部は退屈ですが、再現部は始めから暴れて金管コラールは大爆裂、期待を裏切らない凄く変わった第一部になっています。(笑)

【第二部】
速めのスケルツォ主題、弦がガサゴソ変です。レントラー主題はスローで揺さぶりを入れつつ優美、ところが回帰するスケルツォで弦五部がグダグダの大暴走。第三主題変奏パートのピチカートは躓きそうで超極解? 展開部冒頭vnは完全フライング! 再現部は飛ばしてバラバラ。コーダは爆裂!! 速くて暴れて意味不明, とにかく変な第二部です。

【第三部】
スローで個性的アゴーギクもフィットして美しく大きなアダージェットです。澄んだ美しさが素晴らしく、かえって違和感が大きいですね。
最終楽章の序奏はボケて、提示部は普通かと思いきや 反復前でいきなり大スローを出したり目(耳?)が離せません。何をやるのか気になるラスト再現部山場からコーダですが、期待を裏切って見事にビシッと決めてくれました。


考え方の次元の異なる超変則表現主義のマーラー5です。一風変わった作品は多いですが、せっかくならここまでやらないと!!? その先には狂気の先端を行く師匠の作品がある訳ですがw (アダージェットは同じ様に美しいのは師弟ですね)

mono録音でもあり演奏も変ですから普通は絶対必要ない一枚ですね。個人的には絶対手放せない変則四天王の一角ですが。


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エイドリアン・リーパー, Adrian Leaper

Orquesta Filarmónica de Gran Canaria
[Arte Nova] 1995-9/20-24

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英人指揮者リーパーが1980年創設のカナリア諸島のオーケストラ、グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者(1994-2001)を務めていた時代の録音です。


【第一部】
落ち着いた葬送行進曲から第一トリオは華々しさのコントラスト、第二トリオの哀愁も美しさで、見事にコントロールされた正攻法の第一楽章です。
第二楽章も基本通りの迫力で第一主題をこなして、テンポダウンの第二楽章を優美に演奏します。展開部の"烈→暗→明"のコントラストも、再現部の第二主題ピークもコラールも大方のイメージ通りです。

【第二部】
優美に舞うスケルツォから始まり、広がりと穏やかさと優雅さで通します。クセは全く感じられず、オブリガート・ホルンをはじめ演奏の破綻もなく実に見事です。が、何か大切なモノが足りない気がします。

【第三部】
第四楽章も甘美さやボリューム感を抑え 淡々と澄んだ流れのアダージェットです。
第五楽章は緩やかなテンポとリズムの提示部から展開部。馬脚を表さない様に?w 再現部山場は落ち着いて乗り越え、コーダーは鳴り良く広げて足並み揃える様にフィニッシュします。第三部はスカスカした印象です。


せっかく作り込んだのに表情が薄いマーラー5です。極端な表現や揺さぶりなし、演奏のエラー・乱れなし。その代わり情熱もワクワク感もなしです。気持ちが伝わりません。

オケの弱さをカヴァーする為に安全運転の流れ、録り直しはもちろん recordingやmixingでも手を打っているでしょう。ならばむしろ演奏エラーがあっても情熱を聴きたかった気がします。




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山田一雄, Kazuo Yamada

NHK Symphony Orchestra
[KING INTERNATIONAL] 1985-2/13

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ヤマカズさん(当時73才)とN響のマーラー5です。実はこれがN響定期公演最後の登場となりました。


【第一部】
ややスローに構えた重厚な葬送行進曲から勇壮な第一トリオへ、第二トリオは色の濃い哀愁です。
第二楽章、縺れる様なアゴーギクとディナーミクを入れた強烈な個性の第一主題に対し抑え気味ながら重厚さの第二主題。展開部も再現部も通してスロー重量感キープ。重めパターンの典型です。

【第二部】
標準的ながら低重心のスケルツォ、レントラーはスロー重厚、一筋縄では行きません。第三主題は弦楽がスローに沈み、短い展開部を重心を下げて突き進みます。再現部は各主題を濃厚・重めに絡ませて、爆走コーダでビシッと締めます。個性的な重厚なスケルツォになりました。

【第三部】
第四楽章は情感豊かで甘美、密度の高い空気です。指揮者の気持ちの込め方も伝わって、音の厚みに迫力さえ感じるアダージェット。ヤマカズさんはハープ好きだったからか、ハープ位置も変則で指揮者近くです。
最終楽章提示部は急がずじっくり二主題を並べて進んで行きます。展開部も慌てず堂々、山場を華やかに迎えて、再現部冒頭を揺さぶってから山場からコーダはスローでズッシリ!!

盛大なアプローズとヤマカズさんの満足そうな表情が待っています。(実は所有はDVDです)


典型的な重量級マーラー5です。絶妙なスローと、時折見せる個性的なヤマカズ・アゴーギクがそれを作り出しているでしょう。スケルツォやアダージェットさえ重厚です。

今となれば管楽器のミスさえもスパイスで、観るたびに気持ちが入ってしまいを付けたくなります。全身を使って指揮するヤマカズさんを含めて、是非味わっていただきたいです






古い録音を中心に、まだありますねぇ。(汗)


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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





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