細川俊夫の歌劇「Stilles Meer 海、静かな海」ハンブルク国立歌劇場公演 を NHKプレミアムシアターで観る

待っていたこのオペラを観られて嬉しい限りです。
森鴎外の「舞姫」や 能の「隅田川」からとられた骨格、西洋バレエと能の舞いの違い、彼岸に対する思いや被爆地ヒロシマ生まれの本人のフクシマへの思い。事前に細川さん本人のインタビューを1月に読む事が出来たので心待ちでした。

同時放送されたドキュメンタリー「海、静かな海 フクシマへのレクイエム」でも、出演者達のFukushimaへの思いは単にオペラとしてだけ見るのでなく、それを念頭に置くことが必然と感じさせてくれました。見る前は、あまり意識しないで観ようと思いましたが、それは違いました。
冒頭音楽の変更に対する考え方も含めて、ドキュメンタリー内容も原発事故への取り組みの真剣さが伝わりましたね。

オペラ「Stilles Meer 海、静かな海」1幕5場
 《2011年3月11日の犠牲者に捧げる》
 世界初演:2016年1月24日・27日・30日・2月9日・13日
      ハンブルク州立歌劇場(委嘱作品)
 作曲:細川俊夫
 原作(日本語)・演出:平田オリザ
 ドイツ語翻訳:ドロテア・ガストナー
 台本:ハンナ・デュブゲン
ToshioHosokawa-StillesMeer.jpg
写真はハンブルク国立歌劇場のウェブサイトから

あらすじ
Fukushimaで日本人の夫と息子マックス(前夫との子)を亡くしたクラウディア。息子はまだ生きていて帰ると信じている。
クラウディアを現実に戻し ドイツに帰すために、前夫のシュテファンと亡き夫の姉ハルコが訪れる。現実を受け入れられないクラウディア。
最後は「隅田川」のラストシーンを思い起こさせて回復を願うが、叶わない。

演出・舞台
円形の原子炉の中、核燃料棒、そして海の青と 山を表すスロープ、というシンプルな一舞台。抑揚の薄い現代音楽に、"間" を重要視したという極端に動きの少ない演出(上記、バレエと能の違い)。徹底したシンプルさ、陰で静な演出です。

衣装・演技
東北地方の縞木綿の生地を使っているとの事で、漁師はそれらしい出で立ち、主役3人は今風の洋服ですね。アヴァンギャルドさはありません。

配役
一人一人の個性を浮き立たせない無表情で動きのない演出ですから、一般的なオペラとしての個別の印象は生まれません。クラウディアの狂気も最低限(発見された遺体のくだり)の表現です。
特徴的なのはクラウディアの前夫シュテファン役のメータがカウンターテナーで、まるで女性の様な声なことでしょう。見ていないと誰が歌っているのか混乱しますね。

音楽
無調の静的で抑揚のないパートと強音の組み合わせですが、歌のパートに処々で能楽の気配を感じます。殆どのパートを支配する静音展開に対して、わずかな強音パート(クラウディアの狂気)が現れます。

危険地域を象徴するロボット「ここは安全です」という後に起こる、突如現れる打楽器の地震、そして津波。そこがリハーサル中に追加された様ですが、音楽としてはそれも無くて徹底的な静での導入の方が好きかもしれません。

全体印象
現代音楽オペラとしてみてもかなり極端な舞台です。確かに細川さんの言う通り能に近く、能的な衣装や 動きをすり足にしたらまさに現代能といった風情です。
そこにこのフクシマの抱える大きな恐ろしさと問題を封じ込めたのでしょうか。歌詞の重要性も見逃せません。(表題の海に関しては、海に帰る魂と海から返してもらえるもの、死んだ海、の対比がひびきます)
ちなみに、このオペラはキリスト教が背景にあるわけではないのでお約束の救済シーンはありません。最後も救いはありません。

フクシマを風化させないために このオペラが世界で上演されるといいなぁと思います。でもまずは日本初演を。


<出 演>
 クラウディア(ソプラノ):スザンヌ・エルマーク Susanne Elmark
 ハルコ(メゾソプラノ):藤村 実穂子
 シュテファン(カウンターテノール):ベジュン・メータ Bejun Mehta
 ヒロト(テノール):ヴィクトール・ルート Viktor Rud
 漁師サカモトタロウ(バリトン):マレク・ガセツェッキ Marek Gasztecki

<舞台美術> 杉山 至
<衣装> 正金 彩

<合 唱> ヴォーカルゾリステン・ハンブルク
<管弦楽> ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮> ケント・ナガノ


収録:2016年1月24,27日 ハンブルク国立歌劇場(ドイツ)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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