Donaueschinger Musiktage 2014 / 今の時代の現代音楽を聴く

毎年購入する音楽祭CDと言うと、5月発売のルガーノと11月発売のドナウエッシンゲンですね。ドナウエッシンゲン音楽祭のアルバムはバリバリのヨーロッパ前衛エクスペリメンタリズム "今"の現代音楽がたっぷり楽しめるのが嬉しいです。

今回のアルバムは4枚中 3枚SACDで、1枚がDVDになりました。DVDは146分の映像付きですから嬉しいです。

IRCAMなどもそうですが、映像等も展開して現代美術のインスタレーションInstallation artに近づいています。日本の現代音楽のコンサートでも映像やパフォーマンスありが増えていますし、もちろん本アルバムでもDVDはその手の楽曲?を取りあげています。これからはヴィジュアルも欠かせなくなるでしょうねェ。

Donaueschinger Musiktage 2014のダイジェストを見ても明白ですね。
試しにYouTubeで観てみる?

全曲 世界初演World premiere ·南西ドイツ放送委託作品Work commissioned by SWRです。(シャリーノのカルナバルNo. 10 Lasciar vibrareを除く)

◆ CD 1
[01] Friedrich Cerha (1926/2/17 - ) Nacht for orchestra (2012 / 2013)
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, Emilio Pomàrico (cond.)
大ベテランのフリードリヒ・チェルハは以前も紹介していますが、新ウィーン楽派の研究者やベルクのルルの補追完成者としても知られるオーストリアを代表する現代音楽家ですね。
前半のポリフォニー的な音の中に煌めきや浮遊、静寂がブーレーズに似ている気がします。打楽器の使い方はヴァレーズやクセナキスの気配が感じられ、なんとなく色々と似ている感じですが曲的には好きです。以前の作品に比べてパートを区切る様な楽風変化はなくなり、全体として混沌の塊になってきていますね

[02] Hanspeter Kyburz (1960/6/8 - ) Ibant obscuri for large orchestra (2014)
 SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, Emilio Pomàrico (cond.)
ハンスペーター・キブルツはナイジェリア生まれでスイスの現代音楽家です。グラーツ、ベルリンで音楽を学び、フランクフルトではハンス・ツェンダーに師事しています。
パルス的な音の並びを主体として、特殊奏法そしてクラスターの組合せで、その中に時折 旋律が現れます。全体のパルス感や旋律の存在が、何となく前衛の衰退初期の様な音楽に感じます。ちょっと興味が薄いかも…

[03] François Sarhan (1972/9/30 - ) Zentral Park for nine musicians, electronics and video projection [optional] (2014)
 Jugendensemble für Neue Musik des Landesmusikrats NRW (Studio Musikfabrik), François Sarhan (voice), EXPERIMENTALSTUDIO des SWR
フランソワ・サルアンはフランスの現代音楽家で、IRCAM で B.ファーニホウ、J.ハーベイ、M.リンドベルイに学んでいます。
ベンヤミンWalter Benjamin翻訳によるボードレールCharles Baudelaireの詩を使っています。詩(英語で助かります)は語りで、エレクトロニクスが絡みますがホワイトノイズ以外は詳細は不明ですね。またビデオ・プロジェクションも使われている様ですが同様です。(一部上記YouTubeで見られます)
演奏はアンサンブルの音数が少なく 言葉の交錯の様なポリフォニーです。語りは途中で英語早口のオークション口調になります。これが楽曲半ばを占めて、音は添え物的に入るだけです。後半は再び語りに戻ります。
ビデオと音とナレーター、そしてオーディエンスの関係をサルアンは強調しているので、現場に居ないと本当の姿はわからないでしょうねぇ。インスタレーションに近い現代音楽でしょう。興味深いです!

◆ CD 2
[01] Salvatore Sciarrino (1947/4/4/ - ) Carnaval for five voices and ten players (2010–2011)
 Nos. 1–9 Così dice lo scultore di prue(Thus Speaks the Power-Carver), No. 10 Lasciar vibrare(Let Ring)
 Neue Vocalsolisten Stuttgart, Klangforum Wien, Ilan Volkov (cond.)

さてシャリーノですね。5分以下の10小曲からなる楽曲です。主役は5人のvocalで、演奏は必要最低限で、シャリーノらしい音を感じる事も残念ながら少ないです。歌は音響的であり所謂(いわゆる)歌唱でもシュプレッヒゲサングでもありません。
詩はTowitara Buyoyuでシャリーノがアレンジしています。(10はシャリーノ作) 流れは面白いのですが、英語の単純な対訳を読んでも今ひとつピンと来ません。

[02] Chiyoko Szlavnics (1967 - ) Inner Voicings (2014)
 *Klangforum Wien, Ilan Volkov (cond.), EXPERIMENTALSTUDIO des SWR
チヨコ・スラヴニクスはトロント生まれベルリンで活躍する現代音楽家、作曲はJames Tenneyに師事していました。またWalter Zimmermannのセミナー在籍からアシスタントを務めています。
クラングフォラム・ウィーン*(Klangforum Wien:ベアト・フラーが作った現代音楽アンサンブル)の為に書かれた三楽章形式で、子供の頃に母親と行ったコンサートで眼を閉じて聴いた時の心の中の"inner cinema"がベースになっている様です。
瞑想的な空間音響系の楽曲で、弦のグリッサンドを使った長音が主体になり、楽器数の少ない音が支配します。ちょっと静的パートのシャリーノ風かも。ドローンの響きに共鳴も感じますし微分音も使われているかもしれません。特徴的ではありませんが好きなパターンの今の現代音楽です。

[03] Wolfgang Rihm (1952/3/13 - ) Sound As Will for trumpet and ensemble (2011 / 2014)
 Marco Blaauw (tp), Klangforum Wien, Ilan Volkov (cond.)
ビッグネーム、ヴォルフガング・リームですねぇ。tpに対してアンサンブルの楽器が絡むポリフォニーな楽曲です。絡む楽器の数とリズムの変化がこの曲の表情ですね。一度だけ現れる衝撃音がリームらしさを感じさせますが、全体とするとフラットなディナーミクで安定した楽曲です。今となっては?的な感じがしない事もありませんが…

◆ CD 3
[01] Peter Ablinger (1959/3/15 - ) points & views (2014)
 points & views is dedicated to Armin Köhler
 -1. Ink-jet print, 6,40 x 6,40, 16 parts
 -2. Ensemble, 2 pianos, 2 loudspeakers, 16 parts
 Ensemble Modern, Hermann Kretzschmar / Ueli Wiget (pf), Jonathan Stockhammer (cond.)

ペーター・アブリンガー(エイブリンガー?)はオーストリア生まれでベルリンで活躍する現代音楽家です。グラーツで音楽を、その後 電子音響工学・現代美術(サウンド・インスタレーション, Installation art)を学んでいます。インスタレーション展開? するのが特徴の様ですね。ダルムシュタットでもお馴染みです。
まずInk-jet print, 16 partsですが、SPやドーナツ盤のレコード、カセットテープ、等々の写真で、Tile 1-16 のナンバーが付いています。これが現場でどう使われたかについての記述はありません。
それに対して各16のTile No毎にキッチリ 1'45"の16曲が付いています。とりあえず合わせながら聴きましたが関連性は皆無の気がしますw 曲はノイズ系で電子処理されていると思われますが、レコードやテープのヒスノイズやハムノイズ、テープ早回しの声がノイズ音の主役です。それに即興的な pf, ensemble が絡みます。英語・独語・露語・日本語 他、言語毎の単語のやりとりも出て来て変に面白いです。
CD1のFrançois Sarhanとも共通点を感じますね。視覚も動員した一つの流れ、この手のインスタレーション系, と言っていいのか?, ですね。是非ともコンサートで見たい気がします。とても面白く興味がありますね。音楽という範疇を超えて行く気がします。

[02] Kryštof Mařatka (1972 - ) Mélodictionnaire Concerto for piano and septet (2014)
 Hermann Kretzschmar (pf), Ensemble Modern, Jonathan Stockhammer (cond.)
クシシュトフ・マラツカ (Krystof Maratka)はプラハ生まれ、IRCAMでも学んだパリで活躍する現代音楽家です。ライナーノートの記述がとても短い紹介で印象的です。
奇妙な気配のピアノ室内楽曲です。もちろん無調なのですが、メロディーが存在してリズム変化もあります。機能和声をベースに調性からの解放で音楽の自由度を上げるのは好きですが、これは違います。逆でしょうか?! 
無調の中にメロディとリズムを存在させて自由度を上げている様な…
ありきたりの様で、そうじゃない。そんな感じで面白いです。

[03] Brian Ferneyhough (1943/1/16 - ) Inconjunctions for ensemble (2014)
 Ensemble Modern, Jonathan Stockhammer (cond.)
ブライアン・ファーニホウの新曲が聴けるのは嬉しいですね。この処、久しく聴いていません。
3section構成になっているそうで、first section: 高音域の管楽器, second section: 自然で美しい弦楽器とパーカッション, third section: 3金管楽器と2打楽器の砕かれ傷ついた対話。とあります。
少し角が取れている感じはしますが、やっぱりファーニホウですねぇ先鋭的です。各楽器の構成がsection毎に変わりながらも、難曲の気配が支配していますね。相変わらず作風は「新しい複雑性」に乗っている事を感じました。中盤の静音展開ではやや退屈ですが、今や懐かしい気がします。

◆ DVD ビデオに収録されたのはいずれもインスタレーション系の強いヴィジュアルが不可欠な作品が並びました。楽しいです!

[01] Simon Steen-Andersen (1976 - ) Piano Concerto for piano solo, sampler, video and orchestra (2014)
 Nicolas Hodges (pf), SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, François-Xavier Roth (cond.)
サイモン・スティーン・アンダーセンはデンマークの現代音楽家、現代美術家(Installation artist)です。
驚きの落下破壊ピアノ協奏曲です。映像にピアノが落下して破壊されるシーンがスローモーションで映され、音楽はそこから始まります。ピアニストは現代音楽ピアノの雄ニコラス・ハッジスです。
ステージ上のピアノにハッジスが現れると同時にピアノの前のもう一つの映像に鍵盤がガタガタに壊れたピアノが映りそこにもハッジスがいます。連弾風になり映像とステージのピアノは異なるパートを演奏します。ステージ上のピアノは譜面台の前にエレピ?が置かれて上下二段の鍵盤配置です。とにかく混乱しますね。
音は反復の強い単音階の旋律が延々と続いたり、オケは特殊奏法や即興的な音を鳴らしパルスやクラスターで破壊的です。技術的には引用もあるようです。音に合わせて破壊されたピアノ映像が踊る様に逆再生されたりとビジュアルに訴えるパートも存在します。最後はコーダ?!で照明が消えて壊れたピアノが回収されるシーンが映ります。
不確定性の現代音楽の進化系?!でありインスタレーション系でもあるでしょう。強烈です。ヴィジュアルがないとこの曲(?)成立しないでしょう。

[02] Ondřej Adámek (1979 - ) Körper und Seele for air machine, choir and orchestra (2014)
 Christoph Grund (air machine), SWR Vokalensemble Stuttgart, SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, François-Xavier Roth (cond.)
ベルリン在住でチェコ人の現代音楽家 オンドジェイ・アダーメク(Ondrej Adamek)は、パリ音楽学校で作曲と電子音楽を学んだ後、IRCAMにも通っています。
これも変ですw エア・マシーンのホースにカラフルなゴム手袋が繋がれて膨らんだり萎んだり、合唱隊は全員でシャーとかシューとか空気音?を出したり、風船を膨らましたり 水をブクブクさせたりとか特殊技法もやります。舞台映像もあり、手袋がアップで映されたりします。
オケは二構成で正面と左に配置。楽風はリズミカルで独語の歌は英文字幕で go step といった単文展開です。特殊奏法も入りますが、音楽自体はノイズでも混沌でもなく結構面白いです。エア・マシーンのブタが鳴きながら膨らんだり、オーディエンスの笑いも音楽として計算の内でしょう。
単純に音楽だけで成立しているわけではありません。計算された視覚を含めたシチュエーション、そしてユーモアが無いと基本的に存在しないでしょうね。楽しさいっぱいです!

[03] Jennifer Walshe (1974 - ) The Total Mountain (2014)
 Jennifer Walshe (performance)
ジェニファー・ウォルシュはアイルランド出身でベルリン在住のパフォーマー・現代音楽家です。イギリスでJ.マクミランにも学んでいますね。ダルムシュタットでも2002年に続き、この年2014にも出ています。声楽だけでなく室内楽も書く彼女もインスタレーションを学んでおり、それもキーでしょう。
ステージは映像付きで、歯ぎしり・叫び・早口などを主体とした意味不明?!なパフォーマンスがグレードアップです。
ステージだけでなく映像でもウォルシュが変な動きをしたり、動物とか合成画像とか歌詞に合わせてじゃんじゃん変わります。例によって変すぎですが、映像で幅は広がるけど彼女のパフォーマンスが弱く感じる?! そんな事はないですね。彼女が喋り始めると思わず引きずり込まれちゃいます。
パフォーマンスに眼がいきますがコラージュの様な音楽は彼女の作品で、これはこれで実は面白いんですよねぇ。

[04] おまけ
Kämpfer für die Moderne
Armin Köhler und die Donaueschinger Musiktage
 A film by Syrthos J. Dreher
他の作品のダイジェストやディレクターの話などがいっぱい入っているのですが、独語で英字幕がありません。向こうで活躍する日本人現代音楽家 Misato Mochizuki さんの作品ダイジェストもあります。

映像はこれから必須になるでしょう。来年は2CD, 2DVD にして欲しいですね。^^v

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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