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マーラー 交響曲 第5番 名盤・珍盤 180CD 聴き比べ [#8 : 111-125]


グスタフ・マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)の交響曲第5番の聴き比べも、8回まで来ました。

今回 #8 は15CDsのインプレ、現時点で3枚以上のアルバムを残した指揮者は紹介してしまいましたので、2枚のCDを出している指揮者をメインに聴いてみました。


Mahler Symphony No.5 -- 180 CDs

 ★:名盤 (一般的いわれている…と思う盤)
 ☆:個人的お勧め
 ㊟:とっても変わっています


 #1:15CD
バーンスタイン[x5 ★☆], カラヤン[x3 ☆], プレートル, 小澤征爾, ジンマン, モリス[㊟], ブロムシュテット, ドゥダメル, ドホナーニ, マーツァル[x2], 参考音源/資料類
 #2:20CD
M.T.トーマス, テンシュテット[x6], ベルティーニ[x2 ㊟], ノイマン[x3], 小林研一郎[x4 ☆], シノーポリ, 井上道義, ザンダー[x2]
 #3:25CD
インバル[x4], セーゲルスタム[☆], ノット, ダーリントン[☆], ルドルフ・シュワルツ, スワロフスキー[㊟], レヴァイン, 外山雄三, ノリントン, ロジェヴェン[㊟], ズヴェーデン, 飯森範親, 尾高忠明, 若杉弘, ルイージ, ホーネック, ヴィト, シェルヘン[x4 ㊟]
 #4:20CD
ハイティンク[x4], ブーレーズ[x3 ★㊟], メータ[x3 ☆], クーベリック[x3], ショルティ[x3 ★☆], バルビローリ[x2], デプリースト, バルシャイ[☆], バレンボイム
 #5:5CD アバド追悼
アバド[x5 ★☆]
 #6:15CD
マゼール[x3], ナヌート, テミルカーノフ, スウィトナー, 上岡敏之, 井上喜惟, 西本智実, ベシェック, N.ヤルヴィ, アルブレヒト, I.フィッシャー, 堤俊作, フェルスター
 #7:10CD
ガッティ[㊟], レヴィ, コンロン, リットン, ファーバーマン, クライツベルク, アブラヴァネル, フェルツ[㊟], 大植英次, マッケラス
 #8:15CD 本投稿
サラステ[x2 ☆], ギーレン[x2 ㊟], M.シュテンツ[x2], ジェラード・シュワルツ[x2], ヘルビッヒ[x2 ㊟], フェドセイエフ, リンキャヴィチウス[㊟], フリーマン, タバコフ, ラート
 #9:15CD
カサドシュ, ヘンヒェン, ノイホルト, インキネン, コンドラシン[x2], オストロフスキー, ポポフ[㊟], ミュンフン, マック・カーロ, オラモ, ダニエル, アルミンク, アシュケナージ, ヴァイネケン, ヒルシェ
 #10:10CD
ゲルギエフ[x4 ☆], ラトル, ジークハルト, ロンバール, マデルナ[㊟], リーパー, 山田 一雄
 #11:10CD
シャイー[x2 ★], スラドコフスキー, シーヨン, ワールト, エッシェンバッハ, シップウェイ, P.ヤルヴィ, ネルソンス, スターン
 #12:20CD
バリエンテ, 佐渡裕[x2], 大野和士, ハーディング, A.フィッシャー[☆], ロト, スヴェトラーノフ[x2], ヴァンスカ, ヤンソンス[x2 ★], ワルター[☆], ミトロプーロス, ケンペ, ロスバウト, パレー, ホーレンシュタイン, ラインスドルフ, アンチェル, ブリッグス(オルガン), トレンクナー&シュパイデル(ピアノDuo), ナタリア(アンサンブル)





ユッカ=ペッカ・サラステ, Jukka-Pekka Saraste (2録音)

シベリウス音楽院で指揮を学んだフィンランド人指揮者サラステ。ちなみにシベリウス音楽院で指揮を学んだ同期にはサロネン、ヴァンスカがいますね。



(#1)
Finnish Radio Symphony Orchestra
[Virgin] 1990-5


サラステがフィンランド放送交響楽団の首席指揮者(1987–2001)を務めていた時代、34歳の時のマーラー5になります。ちなみに サラステはかつて第2ヴァイオリンの一員として同楽団に在籍していましたね。


【第一部】
鬱を抑えた美しさを感じる主要主題から、第一トリオはスタンダードにシャキッとした速めのテンポ設定です。第二トリオも標準的な哀愁ですが少し速めでしょうか。
第二楽章第一主題と第二主題は一楽章トリオ回帰的で、延長性を高くしています。展開部の"烈→暗→明"のコントラストも明瞭でクセはなく、再現部は第二主題を厚くしますが速めのテンポで重さは回避していますね。少し速めでクールなな第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はゆったりとしてhrが大きく鳴らしますが優美さに少し欠けるかも。レントラー主題ではスローで優雅ですね。第三主題とその変奏パートはオブリガート・ホルンが鳴り良く、各楽器の主題変奏も静スローキープです。その流れにけじめを付ける様に展開部は第二主題を刺激を付けますがスローが気になりますね。再現部もスロー基調に主題を回帰させますが、やや緩さを感じてしまいます。コーダの切れ味も今ひとつ。

【第三部】
第四楽章主部は少し速めで淡々と、中間部はスローに静の美しさ、クールなアダージェットです。
最終楽章第一・二主題はテンポアップしながら絡んで行き、コデッタ主題は速めで冷静。展開部は入りから速くディナーミクを使いながら上げて行きます。多少の荒っぽさも見せながら初めて感じるワクワク感かもしれません。再現部山場からコーダは豪放、最後は約束通りアッチェレランドで駆け抜けます。


最後の第五楽章で救われるマーラー5です。第一部は速め標準的、第二部は若干スローのもっそり感、第三部は速さの個性です。

のんびり聴いて最後はワクワクと言った感じでしょうか。






(#2)

WDR Sinfonieorchester Köln
[Profil] 2013-6/15


これはフィンランド放送響から23年後、ケルンWDR交響楽団の首席指揮者(2010-)になってからの比較的新しい録音です。


【第一部】
力感のファンファーレから締まりの強い葬送、そして生き生きとテンポアップの第一トリオ、速めで哀愁を濃くする第二トリオからコーダまで見事に一楽章を繋げて行きます。
第二楽章第一主題はここでも一楽章トリオ回帰的で連携性を感じます。やや穏やかにした第二主題から展開部のコントラストは増して、vc動機での深淵さから第二主題のvnへのパス、アゴーギクを使って行進曲へと見晴らしが良いです。再現部は第二主題を濃厚に奏で、流れをアゴーギクとディナーミクで整えます。表情豊かで見事な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はオブリガート・ホルンが心地よく鳴らして力感ある優美さです。レントラー主題もスロー優美ですが決して軽量ではありませんね。第三主題と変奏パートはhrと弦の対比の良さから各楽器へ静スローの美しさをバトンタッチして行きます。展開部はその流れを締めくくる様に第二主題をテンポアップと力感で鳴らし、再現部も派手に色付けて第二主題で落ち着かせると第三主題をhrが朗々と鳴らします。見事なコントラストの第三楽章です。聴きもののオブリガートホルンもコーダも決まってます。

【第三部】
第四楽章主部はやや速めですが微妙なアゴーギクで感情を見せる様になりました。中間部でも繊細さが光り、完成度の高いアダージェットです。
第五楽章は軽やかにスタート、高原の朝の様な爽やかさから第一・二主題を絡ませて、コデッタ主題を清涼的に唄い進んで行きます。展開部は抑えて入り緩急交えてグイグイと上げて山場へ向かう心地良さ。再現部第一主題回帰をスローに入るとテンポを上げ、山場からコーダは壮大にして雄大、見事なアッチェレランドで締めくくります。


濃厚・重厚系王道ライヴで素晴らしいマーラー5です。暦年のマーラー演奏によるケルンWDR響の実力なのか、年を経たサラステの境地なのか、はたまたその両者の会遇なのか。全楽章を絶妙なアゴーギクとディナーミクで見事に仕上げています。

録音も良く近年発売(2015年時)されたマーラー5の中では最高の一枚、所有する中でもBest 5に入るでしょう!!





ミヒャエル・ギーレン, Michael Gielen (2録音)

個人的には何と言っても現代音楽でのイメージが強いギーレン、"冷血"指揮者などとも言われますがマーラーも得意としていて第五番は二つの録音を残していますね。両者ともに楽しめます。
後日記】2019年3月8日に亡くなられました。



(#1)
Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken
[Altus] 1971-2/11,12


ギーレンとザールブリュッケン放送交響楽団のマーラー5番です。少々古い1971年録音ですね。


【第一部】
ファンファーレのtpがやや詰まり気味。葬送行進曲は鬱ですが重厚感は避けて一部微妙にアゴーギクを振っています。第一トリオは程よいテンポと刺激を付けて締まり良く、第二トリオの哀愁もクドさは無く心地よさですね。
第二楽章第一主題は荒れ気味でマーラーの意図に近く?!、第二主題は一楽章第二トリオ回帰的。展開部"烈→暗→明"のコントラストはギーレンらしい明白さをディナーミク/アゴーギクで構築しています。再現部第二主題は力感と締まりの良さがありますね。整然としてやや速めの心地良さですが、管楽器が不安定なのは気になります。

【第二部】
スケルツォ主題は緩やか優美、少し速め。レントラー主題でもテンポはあまり落とさずに軽妙感を与えています。第三主題とその変奏はオブリガートhrが怪しげですが、楽器を入れ替えながらの変奏は淡々としています。それを締める様に短い展開部はテンポを上げて荒々しく、管楽器は怪しいですがw 再現部はその延長にあって三主題の荒っぽさが魅力を見せて、コーダは走ります。速めでコントラストのある第三楽章です。少々荒っぽいオケも面白さがありますね。

【第三部】
第四楽章主部は速めで微妙な揺さぶり、中間部はややスロー化し感情を移入し主部回帰はスロー。テンポ変化を付けて色濃い珍しいアダージェットです。
第五楽章アタッカの序奏は引っ張り、第一第二主題は速めに絡んで力強く、アゴーギクでテンポを変化させながらコデッタ主題も優美ですがその流れに乗っています。展開部は始めから力感があって山場は炸裂。再現部もやや乱暴で力感基軸の流れで、コーダからフィニッシュは激しくアッチェレランドを効かせます。


速めの流れで少し荒っぽさが楽しめるマーラー5です。そしてギーレンらしい微妙な揺さぶりも処々に感じられますね。

気になるとすれば管楽器の弱さと、録音(年代の割に悪くはありませんが)と言う事になるでしょうか。






(#2)

SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
[haenssler] 2003-12/9,10


Altus録音から32年後のミヒャエル・ギーレン。終身客演指揮者を務める、手兵のバーデンバーデン・フライブルクSWR響とのマーラー5です。最高の現代音楽のユニットの一つですね。


【第一部】
迫力のファンファーレから独特の揺れを感じるギーレンらしい葬送行進曲です。第一トリオはコントロールの効いた激しさ、第二トリオの哀愁はあっさり風味ですね。
第二楽章第一主題は落ち着いた激しさ、第二主題は過度の重さは避けています。展開部は"烈→暗→明"は教科書的な流れ、再現部も個性を振り撒く事はしていません。

【第二部】
スケルツォ主題は教科書的な優美さに、レントラー主題はあまりテンポを落とさず軽妙優雅ですがギーレンらしい揺さぶりを入れて来ます。第三主題・変奏はオブリガートホルンが抑え気味にきれいに鳴らし、各楽器への変奏は淡々としています。何か揺さぶりを入れるかと思いましたが。展開部は元気でスッキリとしたスタンダード、再現部の前半三主題はキレキレ、コーダは華やかです。スタンダードの流れとギーレン・アゴーギク混在の第三楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は速くて感情控えめからスローにアゴーギクを入れて、中間部は揺さぶりの緊迫感を与えています。個性的アダージェットで、この大きなテンポの揺さぶりはギーレンならでは!!
第五楽章はAltus盤とは逆に緩やか落ち着いて登って行きます。コデッタは優美さそのものですね。展開部もスローでギーレンの個性になっていますが、もちろん山場はテンポを上げつつ大きく鳴らします。再現部スローの揺さぶりを入れながら、山場からコーダは大きく華々しく、ラストはアッチェレランドをビシッと効かせます。


堂々王道の流れにギーレン・アゴーギクをトッピングしたマーラー5です。最終楽章をAltus録音から一転スローに持って来ているのもギーレンらしさでしょう。

個性的テンポ変化と揺さぶりはギーレンそのもので、完成度も高くオケの鳴りの良さも良いですね。ギーレンファンなら必携でしょう!!





マルクス・シュテンツ, Markus Stenz (2録音)

タングルウッドでバーンスタインや小澤征爾にレクチャーを受けた事のあるドイツ人指揮者シュテンツはケルン歌劇場を含むケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の音楽監督(2003–2014)を務め、今はソウル市立交響楽団の常任指揮者ですね。
現代音楽ではH.W.ヘンツェのオペラの指揮を数多く手がけています。



(#1)
Melbourne Symphony Orchestra
[ABC] 2002-2


シュテンツがメルボルン交響楽団の首席指揮者(1998–2004)を務めた時代のマーラー5です。


【第一部】
スローでアゴーギクの個性的な葬送行進曲、第一トリオは鳴りよくテンポアップでコントラストを付けて来ます。第二トリオはソフトタッチの哀愁ですね。三つの主題に対比色を濃く付けています。
第二楽章第一主題と第二主題は一楽章のトリオ回帰的で、第一部としての繋がり強調路線です。展開部の"烈→暗→明"のコントラストは荒れる事なくキッチリ几帳面、再現部も第二主題をスローからしっかりと響かせます。主題の色付けを明確にしつつ澄んだ響きがクールな第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はスロー優美で澄んだ音色、レントラー主題は軽妙でテンポはスロー基調ですが、やや緩い流れかもしれません。第三主題からの変奏は、オブリガート・ホルンが鳴りを少し抑えて各楽器の変奏は緩く弱めです。展開部も残念ながら そこそこの締まり。再現部の第二主題回帰のテンポアップとコーダでビシッと切れ味を見せますが、やや締まりに欠ける第三楽章になってしまいました。

【第三部】
第四楽章主部は速めのアゴーギクながら澄んだ美しさ、中間部は淡々としながら清美さを見せます。クールな美しさで好きなアダージェットです。
第五楽章第一・第二主題は抑え気味に絡んで速めのテンポ軽い足取りで上げて行き、コデッタ主題は軽妙さですね。展開部は重さを避けた速いテンポで軽やかにですが、スカスカした流れが気になります。再現部山場からコーダはアゴーギクを振って切れ味ある流れを作りました。派手でキレキレ、お見事!


アゴーギクの美しさと緩さが交錯するマーラー5です。スロー基調のアゴーギクですが、第三楽章ではスローが 第五楽章ではファストが、締まりを疎外してしまいます。

第一・第二・第四楽章、そしてフィニッシュは魅力ある流れになっているので残念ですね。






(#2)
Gürzenich-Orchester Köln
[OEHMS] 2009-1/26-29


メルボルン響との録音から7年後、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の音楽監督時代(2003–2014)のマルクス・シュテンツです。


【第一部】
メルボルン時代に比べ、第一楽章から大きく変化しています。いかにもドイツ的な葬送と行進の色合いが強い第一主題、速めのテンポ設定第一トリオと第二トリオの沁みる様な哀愁は堂々たる本流です
第二楽章も第一主題らしく荒れ気味に入り、第二主題できれいにスローを取り戻します。展開部の"烈→暗→明"はいっそうメリハリを付けて、再現部も出し入れを強めて終盤の第二主題を派手に鳴らします。

【第二部】
スケルツォ主題は程良いテンポで見晴らしが改善され、レントラー主題はスロー優美とコントストを付けました。第三主題からの変奏は、オブリガート・ホルンと弦の対話から各楽器へ主題を渡してアゴーギクでスッキリ色付けしています。展開部も一気にテンポと激しさを増して本道の締まりの良さですね。再現部は三つの主題を華やかに、コーダを激しく鳴らします。本流的な見晴らしの良さになりました。

【第三部】
第四楽章主部はここでも速めですが流麗さに欠ける奇妙で微妙な薄いアゴーギク、中間部は美しい繊細さから揺さぶって来ます。奇妙な揺さぶりのアダージェットです。第五楽章は腰の軽かったメルボルンからしっかりと足腰の流れとなって進みます。展開部も厚い流れを基本に見晴らし良く登って山場は大きく鳴らし、再現部山場からコーダは期待を裏切らない見事な迫力です。


ユッカ=ペッカ・サラステの2枚にも感じましたが、ドイツのオケを振るとどうしてこういった正攻法的演奏になるのでしょうか、不思議ですね。

シュテンツ本人もドイツ人ですし少し荒っぽくて悪くはないのですが、個性あるメルボルンver.を磨いて欲しかったです。





ジェラード・シュワルツ, Gerard Schwarz (2録音)

トランペット奏者としても著名な米国の指揮者シュワルツ、シアトル交響楽団の創設に関わり1985-2011年の長きに渡り音楽監督を務めました。



(#1)
Tokyo Philharmonic Orchestra
[Fun House] 1994-8/30


シュワルツが、渋谷文化村オーチャード・ホールで東京フィルハーモニー交響楽団を振ったマーラー5。ジャケットにBunkamuraと入っています。(国内編集盤ですね)


【第一部】
響の良いファンファーレから葬送行進曲はクセのない安心感で進みます。第一トリオはテンポアップし激しさを見せて、第二トリオは速めですが哀愁を利かせて来ます。
第二楽章第一主題は速くて激しく、第二主題は緩やかな哀愁の対比を作ります。第一楽章の延長を拒否ですね。展開部は"烈→暗→明"の流れを速めのアゴーギクで表現、再現部も基本は速め主体のアゴーギクで、第二主題回帰とコラールは華々しく。アゴーギクを使った速めの流れと明瞭な音使いの第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はいきなりスローで入ってギャップが大きいです。パッセージ?でテンポを戻すと、レントラー主題は緩やか優美。揺さぶりますね。第三主題・変奏では朗々のオブリガートhrから各楽器変奏は穏やかで最後は揺さぶり、それを補う展開部は激しさで駆け抜けます。再現部をスローで入って揺さぶりながら主題に色付けし、コーダは当然派手ですね。スローからファストまで揺さぶりが落ち着かない第三楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は少し速く淡々と流れ、中間部も澄んだ音色を聴かせます。クールなアダージェットで良いですね。第五楽章の第一主題は落ち着いて、続く二主題がテンポアップで絡んで、速い流れでコデッタ主題も進めます。展開部も速く突進系で一気に山場へ。再現部は落ち着いて入りますが、山場からコーダは気持ち良く鳴らしてアッチェレランドで駆け抜けます。爆走で派手な最終楽章です。
もちろん待っているのは大喝采!!


速い流れと緩急揺さぶりのマーラー5です。面白いアゴーギク揺さぶりで、迫力もあり悪くありません。第二部が面白かったらかなりの高レベル?!

この流れはコンサート受け間違いなしだと思いますね。演奏の東京フィルも破綻を見せずに好演で、オブリガート・ホルンも見事です。

ちょっと刺激的な一枚で、こういうのがあるから聴き比べはやめられませんw






(#2)
The Colburn Orchestra
[YARLUNG RECORDS] 2011-12/3


東京フィルとの録音から17年後のシュワルツ、米西海岸のコルバーン管弦楽団(コルバーン・スクールのユースオケ)との演奏です。


【第一部】
荒っぽいファンファーレからメリハリの強い葬送行進曲へ、第一トリオは速いですがまとまりは今ひとつ、第二トリオの哀愁はほどほどです。
第二楽章第一主題は速くて元気です。第二主題では哀愁は淡々としています。展開部もvc動機でスロー静に落としながら揺さぶる不思議さがあります。再現部も速めで第二主題回帰も激しさを見せますが、力感が不足ですね。多少一体感に欠ける事があってもこの元気さがユースオケでしょう

【第二部】
スケルツォ主題はスロー、hrもさる事ながらこれは表現力が必要で難しい設定でしょう。レントラー主題は少しテンポアップで流れを取り戻します。第三主題・変奏はオブリガート・ホルンが 'なんとか' 頑張り、各楽器の主題変奏へとバトンタッチして行きます。展開部はあまりパワープレイに持ち込みません。再現部の三つの主題もなんとかクリア、一通りスコアと指揮者の指示通りにこなしたっていう感じです。

【第三部】
第四楽章は弦の流れに滑らかさが不足して身を委ねられず、ギクシャクして落ち着かないアダージェット。
最終楽章は第二主題がテンポアップでやってくると流れが決まります。落ち着きなく進んでコデッタはギクシャク感。展開部は速いのですが少し一体感が芽生えて、山場はしっかり鳴らします。集中力が増して再現部の山場からコーダは一体感を見せてくれますが、フィニッシュが力感不足だったのは残念です。


良くも悪しくもユースオケのマーラー5です。良いところは元気な事、残念なのはまとまりや情感の表現力。

馬脚を現さない様に揺さぶる様なアゴーギクは排除、ラストは集中一丸となってフィニッシュ。これぞユースオケの演奏でしょう。





ギュンター・ヘルビッヒ, Günther Herbig (2録音)

チェコスロバキア出身のドイツの指揮者でシェルヘンに師事していて、カラヤンの影響もあるそうです。凡庸との評価が強いのですが本当にそうでしょうか。シェルヘンに師事している訳ですから… (シェルヘン先生も異常なほどの個性を放つ前はキッチリ正攻法だったので何とも言えませんがw)



(#1)

Berliner Sonfonie-Orchester
[Berlin Classics] 1980


東ドイツのベルリン交響楽団(現: ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)との演奏です。ちなみに西ベルリンで創設された現:ベルリン響とは違いますね。ヘルビッヒが首席指揮者(1977–1983)を努めていた時のマーラー5ですが、これが凡庸とはとても思えないのですが…


【第一部】
落ち着きの無いtpの荒っぽいファンファーレ、葬送行進曲は締まりに欠け導入句ファンファーレは荒れます。第一トリオは強音で荒々しく吠える様な狂気を感じ、途中でスローダウンと言う変則アゴーギクも噛ませます。第二トリオは意外や素直な哀愁です。
第二楽章第一主題は予想通り荒っぽくて速く強引に、哀愁の第二主題はそっぽ向いた様な白々しさ。展開部序奏を暴れて、vc動機はスロー鬱、第二主題後半でいきなりハイテンポと揺さぶります。再現部も揺さぶりを強く効かせてコラールを華やかに。アゴーギクを振って暴れる強烈な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はギクシャクで変な優美さw、レントラー主題も重くて奇妙な対比です。第三主題・変奏は意外にキッチリと流れて、展開部で約束通りにビシッと締めていますね。再現部は力がこもってせっかちな三つの主題、コーダはバッチリ鳴らします。落ち着きの無い珍しいスケルツォです。

【第三部】
第四楽章主部は超暖色で濃いです。中間部もガッツリ鳴らして暑苦しいアダージェットです。
最終楽章第一・二主題は途中でアゴーギクをかけて揺さぶります。素直には行きませんねェ。展開部は力感で荒っぽく進んで、再現部の山場からコーダはコラールでスロー化と変化を付けながら大爆裂、フィニッシュはドッカ〜ンです!!


揺さぶりと荒っぽさマーラー5です。基本的にガッツリ鳴らしますね。シェルヘン先生とまでは行かなくとも強力な個性を放っています。

オケの荒っぽさも 強引なのか情熱なのか…堂々クセモノ盤ですね。嫌いじゃありませんねェ。(笑) 荒っぽいのが好みの方にオススメです。






(#2)
BBC Philharmonic Orchestra
[BBC] 1984-3/27


上記から4年後のBBCフィルハーモニー客演のギュンター・ヘルビヒになります。


【第一部】
入りのtpが怪しいですw 葬送行進曲は薄味で淡々と、第一トリオはそれなりに激しさを見せ、哀愁の第二トリオは速いですが淡白です。
第二楽章第一主題はやや速い平均的、第二主題も個性を見せる事はありませんね。展開部の"烈→暗→明"のコントラストも概ね教科書的、再現部もハッとする流れは出現しません。平凡な第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はややボンヤリ、レントラー主題も軽やか優美ですが速めであっさり風味。第三主題と変奏は抑揚が不足気味、流れを締める展開部は教科書。再現部も特記するネタが見当たりませんね。全体的にはフラットで長く感じて飽きますねぇ。それなのにコーダだけ異常に元気ですw

【第三部】
アダージェット主部はクールなのですが、何処か音程が不安定に聴こえます。トリオの後半でもそう感じますね。
第五楽章二つの主題の絡みも特色はなく、コデッタ主題は美しさに欠けやや退屈です。ところが見せ場がこの先に待っていました。展開部は元気を取り戻してキレ良く登り、再現部はアゴーギクを効かせて、コーダは見事に大アッチェレランドで決めました。残念ながら時すでに遅し!!


没個性的なマーラー5です。このパターンでは凡庸と言われても仕方ないかもしれませんね。

最終楽章展開部以降の構成なら面白さが大きく変わったでしょう。それにしても この「Death in Venice」のジャケットは無いですよねェ。
(汗)





ウラジミール・フェドセイエフ, Vladimir Fedoseyev

Tchaikovsky Symphony Orchestra of Moscow Radio
[RELIEF] 2000-8/30, 9/2,3


フェドセイエフ自らが育て上げた手兵、1974年から長く音楽監督を務めるモスクワ放送交響楽団とのマーラー5です。


【第一部】
感情の度数が低い速めでよそよそしい葬送行進曲。第一トリオ、第二トリオは平凡で刺激の低い第一楽章です。
第二楽章第一主題と第二主題も一楽章のトリオ回帰的で変化量は低め、展開部の"烈→暗→明"のコントラストもメリハリが弱く刺激が足りません。再現部もコラールは多少鳴らしますが、するするッと進んでしまいます。標準的と言うよりも平凡な第一部ですね。

【第二部】
スケルツォ主題はhrが怪しく落ち着かないスロー、レントラー主題はスローで刻むリズムがフィットしません。第三主題と変奏パートは一層のスローと信頼不足のhrでモヤモヤ、このパートを締めるべき展開部もスローでズルズルです。再現部も言わずもがな。全編スロー19’を超えるもわ〜っと長い第三楽章です。でもコーダはうまく締めていますね。

【第三部】
アダージェット主部はクールなのですが "間"が無く急いでいる感じ、でも中間部から主部回帰では初めて情感が伝わる楽章になりました。
第五楽章序奏もhrは怪しげ、その流れで第一主題はアウト。第二主題の弦も締まり不足ギクシャクで絡んでも締まりません。スローでボケているのもあるでしょう。滅多に聴かない残念さです。展開部は力感を見せて入りやっと普通の流れに近くなりましたがhrが変な音を出します。ギクシャクしながらも再現部山場からコーダは何とかまとめます。アッチェレランドはありません。
オォ、ブラボー!!ですか… 私の駄耳では太刀打ちできませんでした。


見晴らしが悪くワクワク感の無いマーラー5です。テンポ変化はあるのですが、スローならスローでファストならファストと言った変化不足のフラットさ

第二部(第三楽章)など著しく締まりに欠けて、"寝不足なの? 大丈夫?" って言う感じですw





ギンタラス・リンキャヴィチウス, Gintaras Rinkevičius


Lithuanian State Symphony Orchestra
[aurea] 2005/10-1


Gintaras Rinkevičius
(ジャケットです)

リトアニアの指揮者リンケヴィチウス、自らが主席指揮者と音楽監督を兼ねるリトアニア国立交響楽団を指揮したマーラー5です。


【第一部】
奇妙に弦を揺さぶる葬送行進曲、第一トリオは一気にテンポアップして快速で元気、第二トリオも哀愁を上手く聴かせます。
第二楽章第一主題はクセなくしっかり、ですがtpは崩壊気味です。第二主題の哀愁もしとやかで主流的ですね。展開部の序奏の刺激、vc動機からの暗、第二主題からの明、それぞれ可もなく不可もなく的。再現部は第一・二主題を堂々と鳴らして、処々怪しげながらスタンダードな第一部です。

【第二部】
スケルツォ主題はガクッとスロー、hrがボケた音を出し弦は揺さぶります。演奏も流れも全くいけませんね。レントラー主題をスローにこなして、第三主題はオブリガート・ホルン含めて締まりに欠けたボンヤリさ。展開部もその流れを受けて見晴らしが悪いです。再現部第一主題は冒頭の変な流れが戻って来ます。変です、そして厭きますw

【第三部】
第四楽章はハープが強く一部の弦パートが強調気味、中間部では しゃくる様な揺さぶりを入れますが、基本は悪く無いアダージェットです。
最終楽章第二主題の弦が強引さ丸出しで管の第一主題を引きずり出しますが、絡んでからは良い流れになります。展開部は力強く進んで聴き応えがあり、再現部も三つの主題を落ち着かせて山場からコーダを華々しく、フィニッシュはアッチェレランドをビシッと決めます。お見事!!


奇妙奇天烈なマーラー5ですとんでもない奇妙さと堂々の見事さの共存で、似た演奏が浮かびません。

途中の奇抜さを最終楽章の展開部からフィニッシュで一気にひっくり返します。唸るしかありません。





ポール・フリーマン, Paul Freeman

Czech National Symphony Orchestra
[CARLTON] 1998-1/28


米国人指揮者フリーマンがチェコ・ナショナル交響楽団の首席指揮者になって2年目の録音になります。
【後日記】本年(2015)7月21日に亡くなられました。


【第一部】
色合いの薄い間延び感の葬送行進曲、第一トリオでもテンポは上げますが激しさは伝わりません。第二トリオの哀愁もほんわりとして気持ちが伝わりませんね。
第二楽章第一主題はほどほどに激しさを表現、第二主題の哀愁はあっさり。展開部は序奏から第二主題までの流れをフラットに淡々と、再現部は後半に大スロー化のアゴーギクを振るのですが伝わるものがありません

【第二部】
スケルツォ主題は速く変わってますがフラット、レントラー主題もモワモワッと進みます。第三主題オブリガート・ホルンは余韻を強くし、変奏はアゴーギクを使って来ますがフラット。展開部で少し元気を見せてくれますが抑揚不足です。再現部はやはり第一主題を速く、流れ自体にはアゴーギクを強めにつけているのですが強弱コントラスト不足で視界不良の第三楽章です。

【第三部】
第四楽章主部は落ち着かない揺さぶりが入って、全体としてはヌケの良くない詰まった様なアダージェットです。
第五楽章は二つの主題を標準的に絡めて、展開部は歯切れの悪いアゴーギクでしらけて、再現部山場からコーダもギクシャク。いずれにしても、惹き込まれる何か絶対値が見つかりません


ボケ〜っとしてモワ〜っとしたマーラー5です。気持ちが全く伝わらない珍しい演奏で、そのよそよそしさが凄いです。

処々で変則パターンや強音強打を鳴らしたりするのですが、全体音詰まりの様なフラットさは演奏だけでなく録音の問題も加担しているかもしれません。聴いていて少しイラつくかも…w





エミール・タバコフ, Emil Tabakov

Sofia Philharmonic Orchestra
[Capriccio] 1988-10

所有盤は独Capriccio盤です

ブルガリアの指揮者タバコフが首席指揮者を務めたソフィアフィルハーモニー管弦楽団を振ったマーラー5です。


【第一部】
tpが詰まり気味のファンファーレから抑えた葬送行進曲、第一トリオは教科書の様なテンポアップと激しさを見せます。第二トリオも抑えた感じが強く弱音で入ってクレシェンドで主部回帰。
第二楽章第一主題は荒っぽいですが管楽器も怪しげ、第二主題スロー強調で少しボンヤリ感の哀愁です。展開部の"烈→暗→明"のコントラストは標準的、再現部もきっちり再現でコラールはスローで華やかです。クセの少ない安心感ですが個性に欠けると言った感じですね。

【第二部】
スケルツォ主題はスタンダードな印象、途中の低弦と高弦でバランスが崩れます。レントラー主題も印象が薄く、第三主題のオブリガート・ホルンからの主題変奏もコントラストが薄めです。展開部はテンポアップで締めますが標準仕様でしょう。再現部もその流れで安心感はありますがスローでは間延びします。シャキッと感が欲しい第三楽章です。コーダはそれなりに荒っぽいですが。

【第三部】
第四楽章主部は穏やかでほんわりと、ピークを厚くして中間部も少し抑揚を入れて来ます。今とつピントを絞り辛いアダージェットですね。最終楽章第一・二主題の絡みはテンポ良く軽快、コデッタ主題も緩やか軽妙です。展開部は締まり良く入ってシャープな流れを作り、ピークを程良く鳴らします。この楽章が一番見晴らしがいいですね。再現部も山場からコーダを標準的な刺激にまとめて、フィニッシュもアッチェレランドを作っています。


凡百と見るかスタンダードと見るか、と言ったマーラー5です。アゴーギクもディナーミクもほどほど、荒っぽさも哀愁もほどほど。演奏もほどほど。

悪くは無いのですが、良くも無い。多いパターンと言えば、そうかもしれません。





ジェルジ・ラート, György Ráth

Orchestra Giovanile Italiana
[CAROMAN] 1992-11/2

GyörgyRáth-mahler5
残念ながらamazonではどう検索しても見つかりません…

タングルウッドでバーンスタインや小澤征爾に学んだハンガリー人指揮者のラートが、1980年創設のイタリアのユースオケ "オルケストラ・ジョヴァニレ・イタリアーナ"を振ったマーラー5です。ラートは同オケのFormer Teachersには入っていませんね…


【第一部】
あっさり淡々とした葬送行進曲、第一・第二トリオも標準的にまとめます。
第二楽章第一主題・第二主題ともになんとかスコアをまとめた感じ。展開部はなんとかアゴーギクでコントラストを付けますが、いっぱいいっぱい。再現部も若干のアゴーギクはありますが、表情変化には繋がりませんね。ユースらしいスコア通り鳴らすのが精一杯の第一部です。一部tpの貧弱さ、楽器自体のレベル?、が気になります。

【第二部】
スケルツォ主題はhrはそれなりですが流れは頑張って抑揚を作り、レントラー主題はスローで軽妙さを表現しようとしているのがわかります。第三主題のオブリガート・ホルンはやっぱり怪しげ、各楽器の主題変奏は辿々しいのは仕方ないでしょう。展開部ではテンポアップでの発散がもっと弾けて欲しかったですね。再現部でも緩急出し入れをつけてスケルツォ楽章らしさを表現しているのは好感が持てます。

【第三部】
第四楽章主部は緩やか静で好きな流れ、中間部も繊細な音色ですが弦楽奏スローの一体感が薄く安心して身を委ねられません。ラスト山場は良いですね。
最終楽章二つの主題はややギクシャクしますが、反復からは自信が感じられます。展開部も締まり良く進めてしっかりとピークを作っていますね。管楽器もよく鳴っています。再現部は揺さぶりを入れて山場からコーダは意外に慎重でした。もっと若さを炸裂した音を聴きたかったですね。


ユースらしく一生懸命スコア通りのマーラー5です。個性云々のレベルではありませんが、最終楽章でまとまりを見せてくれたのはユースならではでしょう。

ユースオケですとPMFの最終日などの様に、ラストのコーダとフィニッシュはもっと発散された元気さを期待してします。それがユースオケの楽しさですから…







まだまだありますが、マーラー5番だけ聴くわけにも行かないのでのでまた次はしばらくしてからですね。コンサートだと次は来年2016年1月27日にダウスゴーNJPのマーラー第5番が注目ですね。^^v



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