fc2ブログ

キャサリン・ラム(Catherine Lamb)の共鳴倍音の音空間『aggregate forms』


キャサリン・ラム
(Catherine Lamb, b. 1982)
ベルリン在住の米女性現代音楽家でヴィオリストです。2003年に米からインド北部へヒンドスタン音楽を学びに渡り、2006年帰国後はL.A.のCalArtsで博士号を取得しています。その後もS.F.やN.Y.でも音や音響について学び、2013年に米から独へ拠点を移しダルムシュタットにも参加しています。

楽風は "interaction of tone, summations of shapes and shadows, phenomenological expansions, the architecture of the liminal (states in between outside/inside), and the long introduction form" と抽象的で、人間の知覚聴覚の感覚的な調和に焦点を当てている記載があります。

スコアは図形や小節区切りなし等々、前衛記譜法でそれも方向性が合っている様です。(そこにはnoiseと言う指示も見られます)
リリースは音響系インディペンデント・レーベル"Another Timbre"やNEOS、本CDがKAIROSですから経歴と合わせて欧エクスペリメンタリズムの空間音響系なのは想像出来ますね。



aggregate forms
ジャック四重奏団 (JACK Quartet)
今回は二つの弦楽四重奏曲で2CDset、二曲とも長いですw 10年を隔てた作品になりますから楽風変化もわかりそうですが…さて。

演奏は現代音楽を軸とする米弦楽四重奏団ジャック・クァルテットです。





888832.jpg
 amazon CD 

amazon music unlimited


1. String Quartet (Two Blooms) (2009)
46'を超える単一楽章曲で、曰く"結晶構造や螺旋形状" をイメージしているそうです。"倍音の対数螺旋" ともありますね。

単音ロングトーンのノイズ系で入り延々と鳴り続きます。これが "the long introduction form" と言う事でしょうか。そこに倍音の様な重なりや細かな背景ストリングノイズが入って来て、パウゼを挟んでこれまた延々と続きます。
10'もすると脳が麻痺して来て音空間に晒されている様な浮遊感が生まれ、徐々に楽器間での位相的な乖離が強くなって部屋中がウワ〜ッと共振する様な不安定さや不条理さが現れます。

徹底した無旋律の調性共鳴の音空間、もちろん聴く音楽ではなく体感する音です。弦楽四重奏の共鳴倍音となるとチューニングは純正律?!

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?


2. Diviso Spiralis, for String Quartet (2019)
13パート1h30mを超える長〜ぃ楽曲です。
1.から10年の変化は単音ではなく音階が存在する事でしょう。始めは最低限の二つの音の単純音階で、徐々に僅かながら音数を増し楽器間で対位的・ポリフォニー的な絡みを見せ始め一部で無調旋律となります。

基本的にロングトーンですが、音階が介入する事でその感覚は除減。そして高音域の流れになっていて、1.に比べてキ〜ンというメタリカルな音色が特徴的です。その分倍音の空間を占有する共鳴感は低く感じらるのは残念ですが。
聴き処は低音も入って音厚が増すパートIX.からでしょうか。

13パートに分けなくても良かった様な…また対位的絡みからの無調旋律化は今や前衛的な後退に思える可能性も否定出来ない様な…



ロングトーンも共鳴や倍音も良くあるパターンではありますが、ここまで徹底した狂信共振共鳴の音空間は初めてかもしれません。

陶酔なのか圧迫なのか、聴き手側に委ねられるのはラムの狙い通りなのでしょう。また、部屋にあるモノも共鳴に参加している様な感覚や、音が止まると静空間さえも安らぎの無音空間音響に思えるのも興味深いです。

面白いのは1.(2.ならパートIX.以降?)で、普段聴かない音世界を覗いてみたい貴方にはオススメです!!



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方
   ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧
     ▶️ 北欧近現代音楽CD(作曲家別)一覧


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第5番』«ネット配信» アラン・ギルバート指揮/NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団 2023年11月9日


NDR Elbphilharmonie Orchester
Alan Gilbert: cond.
A.ギルバートが主席指揮者を務めるNDRエルプフィルとのマーラー5です。今月上旬(2023年11月)のヨーロッパ・ツアー2023からハンガリー/ブタペスト公演ですが、今月下旬には来日してジャパン・ツアーがありますね。ブラームスがメインで本演目はありませんが。

本配信はもちろんNDR(北ドイツ放送)のRadio & TVからです。



▶️ NDR (配信期間は短いと思われますのでお早めに)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 5


AG-NDRelp-mahler5.jpg
[Live at Palace of Arts in Budapest, 09 Nov. 2023]


第一部
ファンファーレは派手やかに 葬送主題はスローのアゴーギクで個性を付けて、第一トリオは力強さと鳴りの良さに煽りを入れます。主題回帰はアゴーギクで揺さぶりを加え、第二トリオも哀愁を引きずる様な揺さぶりです。
第二楽章第一主題は激しさですが揺さぶり無し 第二主題も落ち着いた標準的哀愁ですが、展開部はvc動機の静パートとマーチで揺さぶりを入れて来ます。
派手な鳴りとアゴーギクの揺さぶりで強い個性を見せる第一部です。

第二部
スケルツォ主題は舞踏的ですが僅かにwaveを付けて、レントラー主題はスロー優美そのもので間を上手く入れています。第三主題主部のオブリガートhrと低弦、変奏パートのピチカート、共に緩やかにアゴーギクで色合いを挟みます。再現部ラストからコーダは王道で華やかに鳴らしてまとめました。
個性的な揺らぎを生かしたスケルツォ楽章になりました。

第三部
第四楽章主部主題もアゴーギク&ディナーミク、中間部は揺さぶりつつもクールに。濃厚で個性的なアダージェットですが流れにフィットしています。
第五楽章第一主題は弦が揺さぶりを入れ、第二主題は刻みを強めに、コデッタ主題は優美さです。展開部はコデッタへ向かうパートで煽りを入れて盛り上げ、再現部ラストからコーダは堂々と、フィニッシュのアッチェレランドはもちろん激走です!!


独特のアゴーギクで個性を放つマーラー5です。処々粘り着く様なアゴーギクなのですが、演奏完成度は高く聴き応え十分。決め処はしっかり押さえます。

客演では作れない個性をしっかりとまとめ上げた演奏で、是非配信期間中に聴いていただきたいです。CDなら間違いなくです!




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





エクサン・プロバンス音楽祭2023 ベルクの歌劇「ヴォツェック」をNHKプレミアムシアターで観る


今年の "Festival d'Aix-en-Provence 2023" からアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885–1935)のオペラ "WOZZECK" です。

ベルクが各幕の音楽構成をキッチリと作り込んでいて音楽的に手の込んだ作品ですが前衛音楽、ストーリーは生体実験や狂気錯乱や貧困と言った陰惨さで一般的には人気があるオペラではないと思います。
そこをどう料理するか、今回演出のマクバーニーには知見が無いのでどの様な方向性なのか楽しみです。

ベルクの"ヴォツェック"(1925)と"ルル"(1928)、それを合わせた様なB.A.ツィンマーマンの"兵士達"(1965)の三作品は時代の流れを感じさせて興味深いですね。


150337-1.jpg
(写真はwebよりお借りしました)


演出
シンプルさを前面にしていますね。舞台・衣装から動きまで全てが単純化され、キャストは表現主義的な鋭い表現でこの陰惨なストーリーを表現しています。
その単純性が心的葛藤を表現する前衛音楽とフィットしていたと言って良いのではないでしょうか。
ストーリーの置き換えもありませんし、極端な前衛性もありません。

舞台・衣装
上記の通り色彩も含めて両者極端にシンプルです。モノクロのプロジェクトマッピングが時折使われるものの程良く、照明もスポットライトをキーに暗い周囲とのコントラストで統一されています。配役や合唱団員の動きも少なく小さくなっていますね。

配役
【女性陣】マリー役のビストレムは無表情の中に極端な素振りを付けてパントマイム風の表現です。この表現は狂気を感じて陰惨なストーリーにピッタリ来ていました。

【男性陣】タイトルロールのゲルハーヘルですが、如何にもヴォツェックらしい貧乏たらしい?姿を見せます。このオペラはそれが表立たないと成立しませんから。
演技も"第三幕 第2場池のほとりの小道"でのマリーとのシーンは白眉でした。
鼓手長のブロンデレは今一つでしたが、上司の大尉ホーアは歌唱・演技共に神経質な役柄を上手く演じ、生体実験の医者役シェラットも'それらしい'表現が光ました。
アンドレスのロバート・ルイスは端役なのですが、ヴォツェックとの絡みがフィットして良いコントラストでした。

音楽
基本的に音楽は所謂(いわゆる)オペラっぽくありません。無調前衛方向が現れるので、歌唱も心地良いアリアなども皆無です。従って歌手陣はシュプレッヒゲザング風で、表現主義的な流れになりますね。
LSOとラトルは陰影の強い音出しで、演出と相まってコントラストでこのオペラらしさを作りました。


演技と歌唱・音楽が表現主義的ヴォツェックでした。それを引き立てる為の極シンプル化した舞台・衣装で、それを上手く浮かび上がらせました。

極端な演出ですが前衛ではありません。ストーリーも衣装も基本に忠実です。それでもここまでの表現が作れた演出の見事さでヴォツェックらしさを楽しめましたね。


  
<出 演>
 ・ヴォツェック:クリスティアン・ゲルハーヘル [Christian Gerhaher]
 ・マリー:マリン・ビストレム [Malin Byström]
 ・鼓手長:トーマス・ブロンデレ [Thomas Blondelle]
 ・大尉:ピーター・ホーア [Peter Hoare]
 ・医者:ブリンドリー・シェラット [Brindley Sherratt]
 ・アンドレス:ロバート・ルイス [Robert Lewis]
 ・マルグレート:エロイーズ・マス [Héloïse Mas]

<合 唱> エストニア・フィルハーモニー室内合唱団
     ブーシュ・デュ・ローヌ聖歌隊 (児童合唱)
<管弦楽> ロンドン交響楽団 [London Symphony Orchestra]
<指 揮> サイモン・ラトル [Simon Rattle]
<演 出> サイモン・マクバーニー [Simon McBurney]


収録:2023年7月5・13日 プロバンス大劇場(フランス)


テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





ジモン・ガウデンツ(Simon Gaudenz)指揮/イェナ・フィル「マーラー 交響曲 第5番」の危険なアプローチ


COMPLETE SYMPHONIES
(Jenaer Philharmonie, Simon Gaudenz: cond.)
独イエナを拠点とするイェナ・フィルハーモニー管弦楽団とその音楽監督を務めるジモン・ガウデンツ(b. 1974)のマーラー5です。残念ながら両者知見がありません。

今回はマーラー5のみのインプレになりますが第4番とのカップリングで、両曲の前に現代音楽(A.L.Scartazzini)を前奏曲風に配置しています。実はそこに大問題を抱えている訳ですが。

またタイトルは "交響曲全集 Vol.1" (英: COMPLETE SYMPHONIES)とあってこれからマーラーチクルスを進める様です。





sgjpm5.jpg

amazon music unlimited


1. 第一部
?…荘厳に鳴らすファンファーレから静スローに微細な揺さぶりの葬送、第一トリオは激しさは少し低めにスロー気味に、第二トリオも哀愁度は弱めです。
第二楽章第一主題は少し速めで力感を込め、第二主題は哀愁を強めにと一楽章トリオの再現化を避けた提示部です。展開部"烈-暗-明"コントラストは付けていますが、あまりに教科書的で逆に見晴らしはあまり良くありません。
保守的な第一部ですが聴き処(ポイント)を絞りづらい印象です。また何であれ冒頭の処理は話になりません。


2. 第二部
スケルツォ主題は優美な演舞曲風に少し鳴りを太めに、レントラー主題はテンポをキープしつつ軽妙洒脱さを強調します。約束通りですね。
第三主題主部の主役オブリガートhrは朗々と鳴らして弦楽と絡み、変奏パートもピチカートのテンポ変化を生かしています。短い展開部をアップテンポで締めくくるのもこれまた約束通り。コーダも含めて流れがほぼ予測通りにやって来る教科書の様なスケルツォ楽章になっています。


3. 第三部
第四楽章主部は静美でやや速めですがハープの音色が強いですね。強音パートは厚く、中間部は繊細さを、とクールと甘美の両者をみせるアダージェットです。
第五楽章第一主題は少しテンポを抑え気味に鳴りを良く、第二主題でテンポを戻し、コデッタ主題は優美さです。展開部は徐々に上げるのではなく強く入って落ち着かせて最後を締めるパターン、再現部山場からコーダはテンポと力感を徐々に上げて大きく鳴らし、フィニッシュはアッチェレランド利かせて走り抜けます。約束通り仕様ですねw



標準仕様のマーラー5で '吊るしのスーツ' みたいな印象かもしれません。誰でも安心で失敗なし、でも何処かにちょっとしたお洒落さや遊び心が欲しいと言った感じでしょうか。

ただとんでもない問題が一つあって、第一楽章冒頭に前曲のフェードアウトが残されて被っています。チャレンジャブルなタクトは歓迎ですが、あくまでこの曲の中でお願いしたいです。(第四-第五楽章アタッカのパロディだとしてもNGですね)




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





『マーラー 交響曲 第2番 "復活"』«web配信» 山田和樹 指揮/モンテカルロ・フィルハーモニー管 2023年9月24日


Orchestre Philharmonique de Monte-Carlo
Kazuki Yamada, cond.
モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団と音楽監督/芸術監督を務める山田和樹さんの23-24シーズン開幕コンサートからマーラー2 '復活'です。
仏'Radio Classique' からの配信になります。

歌手陣はエレナー・ライオンズ(Eleanor Lyons, sop) と カトリオーナ・モリソン(Catriona Morison, mez)です。



▶️ Radio Classique (配信期間は短いと思われますのでお早めに)





«web配信»
Mahler Symphony No. 2
"Résurrection"


20230924.jpg
[Live at Grimaldi forum, 24 Sep. 2023]


第一楽章
第一主題から葬送行進曲へは標準仕様で僅かにアゴーギク、第二主題も教科書の様。コデッタは主題の再現的です。
展開部前半はスローで緩い第二主題とコデッタの山場で力感炸裂のコントラスト。後半は第一主題に緊張感、コラールでの華やかさで対比を作り、コデッタは激しく締めます。コーダ前に明確なパウゼを入れるのは不思議ですが、葬送は約束通りの鬱表現です。
標準仕様に強弱コントラスト付けの第一楽章ですね。


第二楽章
主要主題はアゴーギクを添えた優美なメヌエット風、トリオではリズム感を生かします。主部回帰ではスロー側に振って、トリオ回帰の力感との対比ですね。またもやラストの三回目の主部回帰の前でパウゼを入れます。
ここでもコントラスト効かせたアンダンテになっています。

第三楽章
主部はほぼスタンダードの"角笛"パート、中間部もその延長線上で安定的です。その後は強弱コントラストを入れますが、何となく緩い流れに感じます。

第四楽章
主部はスローでアルトは低く鎮め 好きな流れです。中間部は少し希望の光を感じさせる流れになって、アルトが気持ちを込めて神への願いを伝える"原光"です。


第五楽章
提示部第一主題は勿論怒涛に出て、hrの動機が落ち着かせますがソロhr前にまたもやパウゼが…。第二主題部の"復活の動機"は静に出て金管でも抑え気味に。そこからの動機群はその都度パウゼを入れるので途切れ途切れに感じてしまいますが、コラール動機はスローで大きく鳴らします。
展開部の主役"死者の行進"は落ち着きません。激しく速いのですが、途中から軽くなったり勇壮であったりテンポを揺すったり、ここはガーッと一気に行って欲しいです。
再現部後半、合唱の静に抑えた"復活"に被るソプラノの登場はもっと浮くようにして欲しかったかも。アルトの "O glaube, Mein Herz" は気持ちが入って良いですね。男声合唱が強く歌うとsop/alto重唱が切れ味を聴かせ、そこからオケと合唱が大きく広げて "Aufersteh'n" を盛大に歌いあげます。ラストは感動的にまとめてこの曲らしく締めくくりました



途中は??, でもラストでまとめるマーラー2です。
強音パートで何処か不自然さ、例えば最終楽章"復活の動機"、が拭えず。そして一二四楽章のパウゼも、途中のスローも違和感が強いです。
でもこの曲はラストが良ければ全て良しなのでOKでしょうw

例によって山田さんの強音パートは難易度が高く個人的にフィットしません。そこは駄耳なので勘弁していただくという事で m(_ _)m



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





プロフィール

kokoton

by kokoton

amazonのバナーが機能停止となり記事のCD画像が消えました😂
マーラー関連から随時画像挿入予定ですが時間を要するかと

 amazon 検索  


カレンダー
10 | 2023/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
ようこそ
カテゴリ
ありがとうございます