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セミヨン・ビシュコフ指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の「マーラー 交響曲 第二番 "復活"」


Mahler Symphony No. 2 "Resurrection"
(Czech Philharmonic, Semyon Bychkov: cond.)
ビシュコフとチェコ・フィルが進めるマーラー・チクルスから第二番"復活"ですね。
ソプラノはリスティアーネ・カルク(Christiane Karg)、アルトはエリーザベト・クールマン(Elisabeth Kulman) です。

本ブログでは既出の第五番、ネット配信の第六番をインプレ済みです。







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第一楽章
提示部第一主題は間を入れて、葬送行進曲も同様に間を挟んだ慎重さから上げます。第二主題は静さと穏やかさを丁寧に、コデッタも刺激を利かせますが安定感ですね。
展開部前半はスロー穏やかに第二主題で入り、コデッタの山場は一瞬の力感。後半も一瞬の激しい第一主題から、クレシェンド強くコラールの山場も厳しいですが落ち着いて。
再現部も各主題の強調は薄めで、コーダは大きくパウゼをとって入り鬱のコントラストは低めですね。
慎重な第一楽章です。


第二楽章
主要主題は優美でスローなメヌエット、トリオでも流れは変えずにリズム感を加えます。トリオ回帰では強めに鳴らしますが安定していますね。少しシラッとしたアンダンテです。

第三楽章
主部はコントロールが効いた『子供の不思議な角笛』中間部も緩やかさを軸にしますがピークを気持ち良く鳴らします。見晴らし良くコンパクトな最終楽章の様な印象になりました。

第四楽章
主部アルト「原光」はスローで丁寧さ、中間部も楽器編成の違いを生かして心地良さが作られます。少しアルトが弱めに感じますが、澄んだ流れで前後楽章とのコントラストが作られます。


第五楽章
提示部第一主題は各動機を生かした標準的な構成。第二主題のclからの"復活"の動機もクセなく、そこからの動機群は各個性をアゴーギクで対比させてコラールは華やかです。
展開部"死者の行進"は流れに変化を付けて行進します。慎重さは感じますがマーラーらしさを表現していますね。
再現部前半はアゴーギクとディナーミクを最大限利かせた管弦楽で、バンダの音色を効果的に夜鶯も清廉な印象です。後半の合唱は静を強調して入り、ソプラノもそこに浮かび上がる標準的な仕様ですが少し弱かも。アルトの "O glaube, Mein Herz" ももう少し低いトーンが好みですが、重唱は切れ味がありますね。そこからは一気にクロプシュトックの"DIE AUFERSTEHUNG"らしい怒涛の山場を作り上げます。



完成度は高く隙もないのですが、引き換えに感情移入が薄く淡々とした感の"復活"でしょうか。全体的には一/二楽章は間を入れたスロー、三/四/五楽章は楽章間のコントラストです。

録音技術も上がってセッションで作り込まれた完成度の高い作品の一つに思えます。駄耳ではありますが "やっぱりLIVEがいいね" などと思ってしまう今日この頃です。(LIVEのCDでも数回の公演の'良いとこ取り'も多い訳ですが…w)




テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





アレーナ・ディ・ヴェローナ 2022 ビゼーの歌劇「カルメン」をNHKプレミアムシアターで観る


Arena Di Verona 2022 "Carmen" ですね。上演回数が多いので一役2-4人のマルチキャスト。タイトルロールのガランチャは嬉しかったのですが、ドン・ホセはグリゴーロで観たかったかもw

ガランチャのカルメンと言えば2010年のMETが浮かぶわけですが、今回はどうだったでしょうか。当時34歳の若手、この舞台では46歳の円熟期です。



(今なら全編視聴出来ます。ドイツ語字幕ですが)


演出
演出は2019年に亡くなったゼッフィレッリで、舞台/衣装も含めて極めて古典的なステージですね。今や不思議感さえ漂う様な時代になりましたが、大人数のキャストが舞台を埋め尽くし馬も本物だったりと、これぞアレーナ・ディ・ヴェローナらしさでしょう。
本年2023のカルメンもゼッフィレッリの演出が採用されています。

舞台・衣装
と言う訳で、ストーリーを忠実に時代や風物を表現しています。今の時代らしさの欠片もありませんね。

配役
【女性陣】カルメンのガランチャ、2010年のMETでは挑発的で刺激的な印象でしたが、今回はmezも含めて強い女一辺倒に感じましたね。少々艶やかさに欠けたのでは。
ミカエラのレーヴァはちょっと太めで、sopも含めて役らしい可憐さには今一つ届かない様な…

【男性陣】ドン・ホセのジャッジは声も演技も良かったのですが特筆すべきはないかもしれません。良くわからないのですが、何か一つ足りない様な。勿論役柄的にエスカミーリョよりも上なのですが。
エスカミーリョのスグーラは容姿的にはまさに闘牛士、brも華やかな声質で今回一番のフィットでしたね。もちろん"闘牛士の歌"のシーンは人気シーンですから引き立ちました。

音楽
指揮はオペラを得意とするアルミリアートですね。序曲では約束の速めのテンポに各動機を乗せて勢いを付けていました。この演出ですと約束通りと言うのがポイントになりますね。重厚さも避けて良い感じです。


大スケールのアレーナ・ディ・ヴェローナを楽しむ"カルメン"でした。これだけ前衛性が無いと言うのは今や絶滅危惧種の感さえありますね。

ガランチャはMETの時の方が奔放自由さが溢れていた様に思えます。演出の問題でしょうが、若かったですしね。



<出演>
 ・カルメン:エリーナ・ガランチャ [Elīna Garanča]
 ・ドン・ホセ:ブライアン・ジャッジ [Brian Jagde] 固定された日本語表記不明
 ・ミカエラ:マリア・テレサ・レーヴァ [Maria Teresa Leva]
 ・エスカミーリョ:クラウディオ・スグーラ [Claudio Sgura]
  
<舞 踊> アントニオ・ガデス舞踊団
<合 唱> アレーナ・ディ・ヴェローナ合唱団
<管弦楽> アレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団 [Orchestra Arena di Verona]
<指 揮> マルコ・アルミリアート [Marco Armiliato]
<演出・美術> フランコ・ゼッフィレッリ [Franco Zeffirelli]


収録:2022年8月11・14日 ヴェローナ野外劇場(イタリア)



(2010 METのガランチャ "カルメン" です)



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シェーンベルク(Arnold Schönberg) "String Trio" | レガメイ(Constantin Regamey) "Quintet" 1940年台の二曲


シェーンベルク「弦楽三重奏曲」/ レガメイ「五重奏曲」
二曲の共通点は1940年台と言う時代ですね。実験前衛現代音楽の流れが勢いを増す中、シェーンベルクは晩年を迎え既に十二音技法やセリエルから調性回帰へ。片や30代半ばのレガメイは初めて十二音技法を取り入れています。
その二人が描く1940年台を聴いてみましょう。







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アルノルト・シェーンベルク
(Arnold Schönberg, 1874-1951)
シェーンベルクの"String Trio"(for vn, va and vc)はわりと聴く機会が少ない作品だと思います。米に移住してからの後期作品で、調性回帰や新古典主義の色合いを強めた時代になりますね。
三つの楽章の間に二つのエピソードが挟まれた全5パートです。

■1. 弦楽三重奏曲 Op. 45 (1946)
 激しさメインの楽曲で弦楽器三梃の凌ぎ合いです。ホモフォニーで、時に対位法でもありポリフォニーにもなる様です。ただ無調混沌ではなく、緩徐パートも含まれて構成は調性にありますね。
旧来の心地良い主題が存在しないので前衛っぽく聴こえるかもしれませんが、基本的には新古典主義になっていると思います。
今の時代にとてもフィットした多様性の要素も感じられ、前衛クァルテットのコンサートで取り上げたら受けるでしょうね。



コンスタンティン・レガメイ
(Constantin Regamey, 1907-1982)
キーウ生まれのポーランド人現代音楽家です。作曲は独学で覚えたそうですがルトスワフスキに見出されていますね。
その時の楽曲が今回の"Quintet"(for cl, fg, vn, vc, and pf)です。と言う事でレガメイの初期作品で、十二音技法を取り入れています。構成は旧来的な三楽章形式で前衛ではないのがわかります。

■2. 五重奏曲 (1942-44)
 I. は点描跳躍音型的でいかにもそれらしいソロclの流れで入って来ます。その後は他の楽器が速いテンポを刻んで割り込み、力感ある流れを作ります。出し入れのコントラストもあって
機能和声の音楽で新ロマン派か新古典主義かといった風でしょう。
II. は緩徐楽章で、繊細で幽玄。まさに今の時代のクラシック音楽風に出来ていますね。
III. は変奏曲風で、速い主題が楽器毎にパターンを変えて絡んで進み、パウゼを置いてコーダもあります。三つの楽章の構成の上手さを感じます。


 ★試しにYouTubeで観てみる?
  オフィシャルのTrailer映像です
  演奏メンバーもこちらを参照下さい



今の時代に通じる激しさと緊張感の室内楽二曲ですね。それは「機能和声の楽曲ですが旧来的な心地良く明確な主題中心の構成では無く」ですね。

当時の欧エクスペリメンタリズム主流派から見たら日和見的か時代遅れだったでしょう。
実験前衛が停滞した今、これらが今の時代のクラシカル音楽源流に感じられます。聴き応えが合って楽しく、是非聴いていただきたいですね。



 ▶️ 現代音楽の楽しみ方  ▶️ 現代音楽CD(作曲家別)一覧


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『マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"』 «ネット配信» マイケル・ティルソン・トーマス指揮/サンフランシスコ響 2023年3月30日


マイケル・ティルソン・トーマス | サンフランシスコ交響楽団
(Michael Tilson Thomas | San Francisco Symphony)
SFSの音楽監督を25年の長きにわたって務めたMTT、現在は桂冠音楽監督を務めますね。
3/30, 31, 4/1 の三日間行われた同曲のコンサートから3/30の公演録音で、サンフランシスコのクラシック音楽専門放送局'KDFC'からの配信です。


▶️ KDFC (配信期間は短いと思われますのでお早めに)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 6 "Tragic"


MTT-SFS-mahler6.jpg
[Live at Davies Symphony Hall, 30 Mar. 2023]


第一楽章
第一主題は微妙にスローを効かせ、木管コラールも慎重に。アルマの主題は優美と感傷を広がりで聴かせます。それでも肩の力が抜けてリラックスな提示部ですね。
展開部の"速-遅-速"もハードさよりも落ち着きを感じます。再現部はアルマの主題をスローに広げる興味深い流れを作り、コーダはやや速めの葬送から華やかに締め括りますが処々で微妙なスローを入れています。スローがキーの第一楽章ですね。

第二楽章
スケルツォです。主部主題の力感は少しリラックスに、第一トリオでスローに落ち着いたメヌエット風に。木管動機もトーンの変化は薄めに作って回帰ではスロー化させています。
淡々としたスケルツォ楽章になりました。

第三楽章
主部主題は緩やかで穏やかにややスロー、第一トリオはスローに抑えた哀愁に、回帰の第一トリオのピークもコントロールされています。中間部(第二トリオ)では陽光を大きく広げますが、clの反復旋律が少しうるさく感じますね。
ラストの第一トリオからの山場は音厚を上げますがテンポをキープしています。静美なアンダンテです。

第四楽章
陰鬱で出し入れの強い序奏はスローで構成、エネルジコでも微妙にスローを挟みます。提示部第一主題も勇壮ですが突撃性より規律正しさ、パッセージが絡んでも同様ですね。第二主題は穏やかに登場させています。
展開部第一主題からの行進曲も興奮を抑えた軽快で心地良い勇壮さ。再現部のパッセージからの騎行で始めてテンポアップの力感を聴かせますが もちろん"過度の興奮や激情は避けて"です。


興奮を排除したクールなマーラー6です。基本は王道、微妙なスローを処々で挟んで決して走らず、ですね。

これこそMTTが得意とするマーラー6でしょうね。SFSとの同曲はCD(2001)と配信版(2019)がリリースされていますが、両者とも興奮排除ですから。



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『マーラー 交響曲 第2番 "復活"』 «web配信» クラウス・マケラ指揮/パリ管 2023年3月13日


クラウス・マケラ | パリ管弦楽団
(Klaus Mäkelä | Orchestre de Paris)
2022年から主席指揮者を務めるマケラとパリ管のマーラー2 '復活'、先月のLIVEです。ソプラノはクリスティアーネ・カルク(Christiane Karg)、アルトはヴィーブケ・レームクール(Wiebke Lehmkuhl)。オーストリアORF OE1 Radioからの配信です。

パリ管との'復活'は、実は2022年11月30日 LIVEが以前配信されていて、それとの違いも興味深いですね。


▶️ ORF OE1 Radio (公開は極短いと思われますのでお早めに)





«web配信»
Mahler Symphony No. 2
‘Resurrection’


Makela_ODP-13032023.jpg
[Live at Gesellschaft der Musikfreunde in Wien, 3 Mar. 2023]


第一楽章
提示部第一主題は速く間を作って緊迫を強く、葬送行進曲も鋭く。第二主題は祈りの様な澄んだ音色に、コデッタも明瞭なコラールと行進曲にしています。
展開部前半は第二主題の穏やかさから、山場では緊迫感を持って鳴らします。後半の第一主題は陰鬱と激しさを増し、コラールの山場は派手に華やかに。
再現部は明確に提示部との差別化を鳴らし、コーダは暗鬱の葬送を強調して一気に崩れ落とします。
派手な激しさと見晴らしの良さの第一楽章です。


第二楽章
主要主題はスローにアゴーギクを振った個性を見せるメヌエットで、トリオではリズム感を強調します。最後の主部回帰のピチカートも弾む弦を強調して個性を見せますね。

第三楽章
主部は王道的な『子供の不思議な角笛』ですが、少しリズム感を強調気味に。中間部は低弦と木管の絡みを穏やかに。回帰はコラールを強調して、コーダも王道の締め括りですね。

第四楽章
主部「原光」は抑えたアルトですが個人的好みはもう少し太くて低いトーンが好きですね。リズムやテンポは王道そのものです。中間部も同様です。


第五楽章
提示部第一主題は当然鳴らします、hrの動機が緩やかさを加える王道。第二主題の木管からの"復活"の動機は静から入って緩やかに広げ、そこからの動機群は各動機の性格を明確にコントラスト付けします。
展開部の"死者の行進"は勇壮に速く、マーラーらしさを強調していますね。
再現部前半管弦楽はテンポを速めに緊張感を高め、バンダと夜鶯で鎮めますが鳴りは華やかさです。
合唱が現れてからはまさにクロプシュトック"復活"です。静に入りsopがハッキリと登場。普通は浮かび上がる様にですがw alto "O glaube, Mein Herz" は "信じるのだ" ですからやっぱり太さが欲しいかも。sop/alto重唱が厳しく "光へ向かって" と歌い、そこからは一気に怒涛の山場 "生きるために死ぬ、よみがえるのだ!" へ登り詰めます。
王道に個性トッピングの最終楽章でしたね。もちろんアプローズは大喝采です!!


激しさと鳴りの美しさの"復活"で見晴らし良く楽しめます。パリ管もgoodな音を鳴らしましたね。

例によって王道をベースとして個性的なパートを絡ませるマケラパターンで構成されていました。
ただ、今回は全楽章均等加重型なので個人的には最終楽章集中型の2022-11/30配信版の方が好みかもしれません。

(この二つのパターンはこの曲の基本で、前者はテンシュテット[非正規盤]、後者はバーンスタイン[DG盤]が代表、共に名盤ですね。→ インプレ)



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽





オスモ・ヴァンスカ指揮/ミネソタ管弦楽団「マーラー 交響曲 第9番」は中間楽章の素晴らしさ


Mahler Symphony No. 9
(Minnesota Orchestra, Osmo Vänskä: cond.)
ヴァンスカ/ミネソタ管のマーラーチクルスから第9番ですね。実はヴァンスカは2022年で既に退任、22-23の本シーズンからはトマス・セナゴーが音楽監督に就任しています。







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1. 第一楽章
第一主題は仄かな鬱の美しさをスローに、第二主題でも落差は小さめに緊迫感を作って第三主題のピークを派手に大きく広げます。展開部前半から中盤も暗鬱さをスローで表現、力強さはファストとコントラストを付けています。心地良い王道ですね。経過部の葬送は少し強めにしています。
再現部は提示部よりも広がりが強く華やかで、コーダは最終楽章を思わせる静にする上手さです。


2. 第二楽章
主部主題、第一トリオ共にスローでリズムの刻みを強調。多少刻むのはよくありますが ここまで徹底して刻むのは聴いた事がなく、個性を放つレントラー楽章ですね。第二トリオでも穏やかな中に尖ったリズム感があって、主部回帰の山場は一転してハードでファストです。


3. 第三楽章
主部主題は速いテンポ。前楽章とのコントラストを激しさと力強さで荒っぽく表現しますね。サブ主題的な第一トリオも軽快ですが締りがあって速いです。中間部(第二トリオ)も速めで入りますが、スローになると最終楽章のターン音型を彷彿させます。ちょっと鳥肌モノです!! 当然ラストは強烈にpiù strettoです。


4. 第四楽章
主部主題は緩やかな哀愁でこの曲らしさそのもの。fg動機後も極端な音厚は避けて良いですね。第一エピソードは低弦の裏にvnを薄く入れて哀愁を表現し、緩やかに大きく弦楽奏を広げます。王道ながら心に響きますね。
第二エピソードは速めの流れにしてコントラスト付け、弦楽が入ると緊張感を上げて山場を大きく激しく鳴らします。このコントラストこそが今回のヴァンスカのスタンスでしょう。
後半からコーダへはゆっくりと鎮まり、ターン音型の浮遊さで静空間に音を浮かばせて終息します。



構成感とコントラストが光るマーラー9です。そのベースになるアゴーギクは基本的な "静スロー・烈ファスト"。それを強めに有効的に使っていますね。

第一・四の緩徐楽章も王道的に素晴らしいのですが特筆すべきは二つの中間楽章の対比でしょう。バーンスタイン盤を始めとする名盤はいずれも中間楽章の素晴らしさですから。
"マーラー9聴き比べ"ベスト5レベル!?




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『マーラー 交響曲 第6番 "悲劇的"』 «ネット配信» セミヨン・ビシュコフ指揮/チェコ・フィル 2023年4月4日


セミヨン・ビシュコフ | チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(Semyon Bychkov | Czech Philharmonic)
マーラーを得意とするチェコ・フィルと2018年から主席指揮者を務めるビシュコフ。注目のマーラーチクルスを進めていて、昨年(2022)リリースしたマーラー5は楽しませてくれました。

今回配信のマーラー6は先週の音楽祭でのLIVEになりますね。仏Radio Classiqueからの配信です。


▶️ Radio Classique (配信期間は短いと思われますのでお早めに)





«ネット配信»
Mahler Symphony No. 6 "Tragic"


BychkovMahler6.jpg
[Live at FESTIVAL DE PAQUES D’AIX-EN-PROVENCE, 4 Apr. 2023]


第一楽章
第一主題は極めて標準的、アルマの主題も華やかに大きくですがスローでトーンは控え気味です。展開部の"烈-暗-明"の流れもコントラストは程々、それは速め側のアゴーギクを抑えているからでしょう。再現部・コーダも同様で、派手に鳴らしても感情の起伏はコントロールされて落ち着いた第一楽章です。

第二楽章
スケルツォです。主部主題は力感を込めても感情的にはならず、トリオはスローに落としたメヌエット風。この楽章は少しアゴーギクを振っていますが、スロー側です。木管動機もほぼ標準的で全体としても標準仕様ですね。

第三楽章
主部主題は清廉な流れをややスローに作り、第一トリオは哀愁を奏でます。ピークで溢れる哀しみを作ると、中間部(第二トリオ)では一転して陽光を明るく晴れやかに鳴らします。気持ちのこもった大きなラストも見事で、堂々のアンダンテ・モデラートですね。スロー偏重なのでマーラー的緩徐楽章にフィットしました。

第四楽章
序奏はスロー強調の陰影付け、モデラートからエネルジコに乗り替わると力感と勢いを付けて、でも落ち着いてそのまま提示部第一主題へ。パッセージも力感はありますが興奮は避けています。第二主題も軽妙ですが落差は小さめですね。
展開部の第一主題回帰からの行進曲で勇壮さが聴けますが勢いが足りません。再現部の騎行では初めてテンポアップの勢いを付けて来ます。ただ熱気や興奮には届きませんね。コーダは淡々と進んで'とどめ'です。


標準仕様で興奮を避けたマーラー6で、チェコ・フィルの演奏レベルも高く聴き応えがあります。ただ それをクールと聴くか物足りないと感じるか聴き手次第になるでしょう。

特に速い側のアゴーギクはシャットアウトでスロー基調ですから、大きく鳴らしてもこの曲の持つ突撃性は低くなりますね。唯一、第三楽章が感情を見せてくれますが緩徐楽章です。
(これがチクルスの第六番で採用される事はないでしょう。セッションで作り込むのが方針の様なので)



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