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イェスパー・ノルディン(Jesper Nordin)の『Vicinities』超多様性現代音楽


Vicinities
(Jesper Nordin, b. 1971)
先日 "Emerging from Currents and Waves" をインプレした今注目のスウェーデンの現代音楽家J.ノルディンの新譜です。近年作品が取り上げられる機会が多いので少し聴いてみようかと。

前回の印象はインスタレーションではありましたが前衛音楽ではなく今の時代のクラシック音楽で "心地良い統一主題を排除 | 全体は幽幻で反復変奏 | 静烈のコントラスト付け" の構成でした。ところが……

今回は室内楽から管弦楽までの3曲で、エレクトロニクス(2. 3.)が用いられているのがポイントでしょうか。そして今回も演奏陣は豪華です。
1.がダニエル・ハーディング指揮(音楽監督)スウェーデン放送交響楽団で、ファゴットがフレドリク・エクダール(Fredrik Ekdahl)。2.がディオティマ弦楽四重奏団、3.がアンサンブル・アンテルコンタンポランです。







1. Vicinities (2011)
1. In the Vicinity of The Open Sky - 2. In the Vicinity of Intimacy - 3. In the Vicinity of Noise

3パートの楽曲です。1.は中東和声風のfgが迷走する様な旋律を奏で、その背景オケがノルディンらしい鎮んだ中に煮詰まった濃い音色を付けてきます。調性とモードの混用的印象です。
2.は緩徐パートで、fgとオケの楽器のdialogueの流れになります。ホモフォニーですが旋律は対位的にもなり、微妙な調性感も表れますね。また静の中の強音炸裂(トリオ?)がここでもあって作風がわかります。三部形式を使うのも特徴ですね。
3.では幽幻さと反復変奏、強弱出し入れが強まってきます。反復の背景にロングトーンが絡んでくるのも前回も感じたノルディンらしさですね。パーカッションのリズムがアフリカの民族音楽風で面白いです。


2. The View from Within (2016)
導入部はクレシェンドの弦楽ノイズ、特殊奏法かは微妙でエレクトロニクスが絡んでいるかもしれません。ボリュームが上がると無調の激しいトレモロのボウイングが絡んで来ます。目新しさはありませんが何と完全な無調混沌の前衛実験的です。
ここでもトリオがあって調性感を残したvnの旋律がホモフォニーとモノフォニーで絡んでいますね。そこから激しいトリル・トレモロになって主部が回帰します。ハムノイズ風の音はエレクトロニクスでしょうか?!


3. Sculpting the Air - Gestural Exformation (2015)
まずトゥッティから入り静の中に潜り込み、静を引っ張って打楽器連打に強音反復が瞬間的に表れます。流れは激しい即興の無調混沌になってフリージャズの様相を呈します。よく聴くとその中に反復変奏が多用されているのもわかりますね。
そしてここでもトリオがあってエレクトロニクスと思われるノイズがゆっくりと登場。アンサンブルもノイズに変化して対応して、落ち着くとメランコリックな中華和声のモード緩徐パートに。
緩やかに機能和声に変化してスロー静の美しい反復動機になって静空間に終結します。驚くほど多岐に渡る技巧が散りばめられていますね。

 ★試しにYouTubeで聴いてみる?



大きく印象が変わりますね。"無調 - モード - 調性"を駆使する超多様性現代音楽です。それだけでなく技法的にも前衛までも網羅して来ます。

全方位あってかなり混乱しそうではありますが、それを全て見せる"3. Sculpting the Air - Gestural Exformation"は注目です。これはオススメのアルバムで、この先のノルディンが楽しみですね。



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マルチン・スタンチク(Marcin Stańczyk)の「Dark, Almost Night」新しいフィルム・ミュージック


Dark, Almost Night
(Marcin Stańczyk, b. 1977)
本ブログでは "Mosaïque"、"Acousmatic Music" を紹介済みのポーランドの現代音楽家マルチン・スタンチクによるサウンドトラックCDです。そもそも標題現代音楽の様相を見せる楽風なので違和感はないでしょうし、米フィルム・ミュージックとは一味違うでしょうね。

映画「Dark, Almost Night」はポーランドの女性作家ヨアンナ・バトール(Joanna Bator)の小説 "Ciemno, prawie noc" を元にしたホラー作品で、台本はボリス・ランコシュ(Borys Lankosz)になります。




超あらすじ
ポーランドの小さな町で警察でも不可解な子供たちの誘拐事件が起こります。同郷のジャーナリストのAlicja Taborは調査を始めると数十年前の手掛かりを入手します。そこには性的虐待が絡み、彼女は自らの過去の恐怖、家族関係と直面する事となります。


なのですが、今回は映画のサウンドトラックではなく純粋の前衛現代音楽として聴いてみたいと思います。

演奏はシモン・ビヴァレツ(Szymon Bywalec)指揮, シンフォニア・ヴァルソヴィア(Sinfonia Varsovia)、ソプラノとリコーダー、トランペット、アコーディオンそしてキーボードがフィーチャーされています。







1. Into The Hole - 2. The House Of Alice - 3. Mark - 4. Adalbert - 5. Angelica - 6. Anna Alias Rosemarie - 7. Evas Lament - 8. Bad Love - 9. The Funeral Of Daisy - 10. Russians In Waldenburg - 11. Kalinka - 12. The Hole - 13. Mama - 14. Sea - 15. Alice

面白い事に1.11.の冒頭に邦楽和声を感じます。もちろんスタンチクは意識していないでしょう。そして1.では倍音の共鳴の様な中に不協和音的な音色が重なる音響的パートに繋がります。2.でも和音のロングトーンの中に調性を崩す音を挟んで不安定さを表現、3.はそこからメランコリックな動機の反復・変奏の流れに入って行きます。

5.では倍音の共鳴が唸るように響き、6.では調性+不協和音で不安定さを広げてポリフォニーな混沌へと流れ込みます。その後もヴォーカリーズを交えたり, 強音トゥッティを鳴らしたり, 重低音の振動を響かせて, と表現パターンを広げますね。ラスト15.はちょっとErik Satieを思わせます。
様々な音楽技法を使って情景表現をするのが感じられます。リコーダーとアコーディオンも効果的ですね。



調性と言う水面に不協和音の微水滴を落として広がる水紋の様な調性感の拡張が感じられます。(個人的にはもう少し調性を崩しても良いとは思いますが)

そして流れは時にメランコリックに、時に倍音共鳴の広がりに、そしてポリフォニーへと技巧的に展開されて表現力を広げていますね。

多様性の現代音楽で音楽だけを聴いても十分に楽しめます。映画はB級ホラーっぽい感じですが。



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ギーレン(Michael Gielen)のメシアン(Oliveir Messiaen)「忘れられた捧げ物 | ミのための詩 | クロノクロミー」


Les Offrandes Oubliées・Poèmes pour Mi・Chronochromie Oliveir Messiaen, 1908-1992
(ORF Vienna Radio Symphony Orchestra, Michael Gielen: cond.)
1991-1996年と少々古い録音ですが、ORFEOレーベルがリリースするギーレン/ORFウィーン放送響のシリーズ#5からメシアンの三曲ですね。

管弦楽集で初期の1. 2. 、そして音楽語法や鳥の鳴き声の採譜と言ったメシアン技法確立後の3.と言う構成です。
もちろんキーとなるのは"3. クロノクロミー"で、トータルセリエルからの決別ともなったメシアンのBirdsongの集大成で代表作ですね。時代は前衛が全盛を迎える時で、初演での評価が大きく分かれる事になったのは知られるところです。

今更ですが微妙な緩急をつけてくるギーレンが、どんなメシアンを聴かせてくれるか楽しみです。







1. 忘れられた捧げ物 (1930)
不協和音的な無調の澄んだ曲です。カオスな完全な無調ではなく、調性音楽をベースに崩している感じですね。美しい管弦楽のパートは新印象派と言った様な印象も受けます。調性の枠を広げる音楽ですね。
そこに強音ハードパート(トリオ?)が挟まれますが、これは調性。そんな習作的な楽曲です。ギーレンらしくコントラストの付け方は明確です。


2. ミのための詩 (1936)
ソプラノ(サラ・レオナルド, Sarah Leonard)が入ります。
sopは若干シュプレッヒゲザング風で、管弦楽はディズニーアニメと1.を混ぜた様な流れです。面白い反復が出てきたりはしますが、ほぼ調性で激しいパートはこの時代の表現主義的、軸は仏後期ロマン派とか新印象派とかそんな括りの範疇にあるかもしれません。


3. クロノクロミー (1960)
機能和声でキラキラとした煌めき、そしてBirdsongの旋律感、それらが組み合わされた いかにもメシアンと言う曲ですね。主題やメインとなる動機が存在しないのは今の時代のクラシック音楽の先鞭にもなるでしょう。ポリフォニカルなホモフォニーと言うのも同様です。
それをギーレンらしい出し入れの強さで躍動感を加えて煌めきを際立たせています。



前期作の1. 2.は透明感に、代表作3.はBirdsongに、それぞれメシアンらしい煌めきを再確認できますね。それこそがブーレーズにも渡された仏前衛にあるベースかもしれません。

もちろんベストトラックは3.で、ギーレンのタクトがキラキラ感を際立たせているのは言うまでもありません。この煌めきは一度聴く価値があります。



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『マーラー 交響曲 第2番 "復活"』ファン必見!! «web配信» 2022年エクサン・プロバンス音楽祭 エサ=ペッカ・サロネン指揮/パリ管


エサ=ペッカ・サロネン | パリ管弦楽団
(Esa-Pekka Salonen | Orchestre de Paris)
2022エクサン・プロバンス音楽祭(Festival d’Aix-en-Provence)で行われたマーラー2は前衛表現主義的な"復活"と言って良いでしょう。話題となったそのマーラー2が仏"ARTE Concert"から映像配信されています。

1988年以降使われていない落書きだらけの仏ヴィトロレス・スタジアム(Stadium de Vitrolles)でロメオ・カステルッチ(Romeo Castellucci)演出による前衛舞台を交えたインスタレーションの"復活"です。

描かれる世界はこれまでにない圧倒的な凄惨さです。あまりにグロテスクであり(集団墓地で死体が沢山出て来ます)、コロナ禍やマリウポリのロシア侵攻を象徴する意図も考慮されます。


演奏はサロネン指揮のパリ管、ソプラノはゴルダ・シュルツ(Golda Schultz)、アルトはマリアンヌ・クレバッサ(Marianne Crebassa)です。歌手/合唱/演奏陣はオケ・ピット、そしてamplificationされています。



▶️ ARTE Concert

ショッキングなシーンがあるので了解画面が出ます
配信予定は長く、現状2025/1/13までの様です






«web配信»【映像付き】
Mahler Symphony No. 2
"Resurrection"


mahler2-Aix-en-Provence2022.jpg
(写真はwebからお借りしました)
[Live at Stadium de Vitrolles, 4/7/10/11/13 Jul. 2022]


第一楽章 既に舞台は始まっています。
提示部第一主題は激しさをかなり抑えてスタート、葬送行進曲もブレーキを効かせています。第二主題は明るい光を差すようにですが殊更の明るさは控え、コデッタでまとまった力感を表現し葬送行進曲を鎮めて締め括ります。
展開部前半第二主題は緩やか、コデッタの山場は一楽章再現的。後半はスロー暗鬱、コラールの山場は行進曲風に激しさを加えて。
再現部は流れを明瞭に激しさと色合いを増して、コーダも提示部コデッタを強い鬱の流れで仕上げます。
抑えを効かしたハイコントラストな第一楽章です。


第二楽章へ入る間は十分な時間がとられ陰惨な舞台シーンに集中させられます。(ここで間を置く様にマーラーは指示しています)


第二楽章
主要主題は緩やかスローの演舞曲です。舞台との落差の大きさに寒気がする様です。トリオでも変化は低く演奏されて、回帰では濃厚さを増して進み深みのあるトーンを奏でます。完成度の高い楽章になっていますね。

第三楽章
主部は影を感じる様な『子供の不思議な角笛』で表情が濃いです。コーダ後半は引き締まったクールな仕上がりですね。

第四楽章
主部アルト「原光」は約束通り低く構えたトーンの素晴らしさ。中間部は哀愁感が"神のもとに帰る"気持ちをスローに浮かび立たせこの楽章らしさを表現します。


第五楽章
提示部第一主題は怒涛!! そしてhrの動機が山にこだまします。第二主題の"復活の動機"、そしてそこからの長く厄介な動機群の絡みは音色を煌めかせて表情が豊か。アゴーギクとディナーミクの素晴らしいコントラストはサロネンらしさを感じますね。
展開部"死者の行進"は強烈に軽快に勇壮に進みます。見事な構成ですね。ここからはこの曲の聴かせ場所ですから!!
再現部前半は各楽器は色濃く絡みます。合唱が静に厳かに現れて空気を変えるとaltoが "我が心を信じる様に" を切々と でも力を込め説得。sopも素晴らしい表現で続きます。sopとaltoは素晴らしいですね。ハイコントラストな男声合唱を踏み台にsop/alto重唱が "光へ向かう" 気持ちを切れ上がる様に歌い上げ、そこからは一気に怒涛の "Aufersteh'n" の山場を作り上げて感激のラストです!!


新しいマーラー2 "復活"で、まさに今の時代のインスタレーション前衛を下敷きにしていますね。

サロネンのタクトの完成度は高く、全ての楽章で表情が豊か。近年聴いた"復活"では最高の出来でしょう。(サロネンのマーラーはいずれもクールで好みです)

舞台は正視に耐えない陰惨さです。でもラストのクロプシュトックの賛歌『復活』はその歌詞を知れば一層の感動を味わえます。



パリ管は2022からクラウス・マケラが主席指揮者ですが、マケラは振りたかったのでは。ちなみにサロネンとは同郷でアシスタントも務めていましたね。 (大人気のマケラは2027からRCOの首席指揮者にもなるそうで大忙しです。いくつ掛け持ち?!)


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マティアス・ヤキシッツ(Matthias Jakisic)の弦楽四重奏曲「Fragmente」


マティアス・ヤキシッツ
(Matthias Jakisic, 1977/5/14 - )
オーストリアの現代音楽家で、ヴァイオリニスト、音楽プロデューサーですね。アーティスト名"JIG"でも知られているそうです。プロデューサーとしてはロックやポップ系で多数のアルバムに関わっていたそうで、作曲はそんなエレクトロニクスやポップも反映された多様性の前衛方向の様です。そして劇場音楽での活躍も多いです。
ヴァイオリニストとしてはエレクトリック・ヴァイオリンも使っていますね。



Fragmente
(Strig Quartet)
タイトル通りに1パート5'半以下12の"断片"からなる弦楽四重奏曲です。
ライナーノートによれば "21世紀における古典の弦楽四重奏がどの様なサウンドなのか、オリジナルのヴィジョンを作り出す" のだそうです。よくわかりませんがw

演奏は、Lena Fankhauser (va), Emily Stewart (vn), Nikolai Tunkowitsch (vn), Asja Valčić (vc)です。今回は作曲家としてのアルバムなので演奏はしていませんね。







Fragmente (2021?)
1. 48A - 2. Sechsacht - 3. Forteforte - 4. Trauer - 5. Distel - 6. Frag1 - 7. Frag4 - 8. Chordstructure - 9. Frag2 - 10.Tragisch - 11. Streit - 12. Glassisch

1.はvnの特殊奏法が入り、基本は反復・変奏の構成です。ポップ調や舞踏系民族和声でもあっていかにも今風ですね。2.では古典やロマン派の流れを構築します。1.との対比と言う意味でしょうか?!

3.は激しいボウイングで今風、4.は新ロマン主義風、7.はバロック調、11.は微かに調性を乱し、ラスト12.は1.の舞踏モードが回帰します。
そんな感じで曲ごとに構成を変えて来ますね。はっきりとしているのは今風パターンのベースにあるのは反復・変奏だと言うことでしょうか。古典風と今風を混ぜる様な楽曲(パート)はありません。


 ★試しにYouTubeで聴いてみる?
  "1. 48A"です



バロック風から特殊奏法の現代調まで、まさにフラグメントであらゆるパターンの弦楽四重奏曲を順不同に並べて来ます。でも無調パートはありません。ベスト・トラックは"1. 48A"ですね。

通して一曲なので面白いかもしれませんが現代風パートが少ないのが微妙です。細切れ(フラグメント)ではなくて古きも新しきも絡んで混在させた楽曲にしてくれたらもっと面白かった様な…



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ハンブルク国立歌劇場2021 シュトラウス歌劇「エレクトラ」をNHKプレミアムシアターで観る


昨年(2021)末のハンブルク国立歌劇場、R.シュトラウスの個性作品「エレクトラ Elektra」ですね。作品内容もさる事ながら演出がD.チェルニャコフですからただでは済まないでしょうw

今までも "2021バイロイト さまよえるオランダ人" や "2017エクサン・プロバンス カルメン" でハチャメチャな演出を見ている訳ですから。

個人的にシュトラウスのオペラならば「薔薇の騎士」よりも「サロメ」「エレクトラ」が好きですね。



オフィシャルのTrailerです


演出
例によってラストの書き換えが凄いです。原作にはないシーンになってしまいますね。時代背景は近現代に置き換えられています。

本来復讐の達成の喜びで部屋で踊り死すエレクトラがエンディングですが、今回そこには弟に復讐殺害された母親と愛人二人が運び込まれ、最後はオレストが妹クリソテミスも殺害してしまうという大変則のラストです。やっぱりチェルニャコフでした。そして三人の姉/兄/妹に奇妙なエロティックさを振るのも意味深でしたね。他にも斧を掘らないとか変則シーンはありましたが。

舞台・衣装
舞台はお屋敷の部屋を再現して、細かく調度品を配置されています。現代のオペラ舞台としては古典的ですね。衣装も近現代風で揃えられていて全体として一昔前的な舞台演出の印象を受けますね。

配役
【女性陣】タイトルロールのA.ストゥンディーテはどこを取っても難曲のパートをクリテムネストラとエギストへの怒りの狂気で歌い上げています。そして奇妙なエロティックさ、これぞエレクトラです。
その母クリテムネストラのV.ウルマーナはエレクトラと狂気を対比させる様に自らへ向かせて歌います。演技も見事で、この二人の狂気が見ものでしたね。
クリソテミスのJ.ホロウェイは一番声が伸びて良かったですね。キャラ的に演技・風貌もフィットしていました。

【男性陣】弟オレストのL.ヴァサルは徹底徹尾抑えた歌唱と演技で、エレクトラの投影像の様です。
エギスト端役の偉そうな道化で、J.ダザックもそんな感じでしたね。まぁこのオペラでは男性陣は出番が少ない訳で。

音楽
全歌唱パートを通してそれまでの心地良い機能和声からの逸脱を感じますね。調性なのですが歌唱に心地良い旋律は皆無で、時にオケとはポリフォニカルな対位的関係が作られています。今の時代のオペラに通じる楽曲構成ですね。


一にも二にもチェルニアコフの"エレクトラ"でした。まぁ予想通りと言う奇抜なエンディングだったでしょうか。

本来父親を殺された母親と愛人に対する姉弟の復讐のはずが、最後は妹まで殺害して母親と姉妹家族全員へのオレストの復讐劇に書き換えられていた訳ですね。

ただチェルニアコフの演出もなんとなく類型化して、最後にオリジナルにはない殺害シーンを入れる訳ですが本作はそれ以外のストーリーの弄りは控え目だった様に思えます。



【出演】
  ・エレクトラ:アウシュリネ・ストゥンディーテ [Ausrine Stundyte]
  ・クリテムネストラ:ヴィオレッタ・ウルマーナ [Violeta Urmana]
  ・クリソテミス:ジェニファー・ホロウェイ [Jennifer Holloway]
  ・エギスト:ジョン・ダザック [John Daszak]
  ・オレスト:ラウリ・ヴァサル [Lauri Vasar]

【合唱】ハンブルク国立歌劇場合唱団
【管弦楽】ハンブルク国立歌劇場管弦楽団
【指揮】ケント・ナガノ [Kent Nagano]
【演出】ドミトリー・チェルニアコフ [Dmitri Tcherniakov]


収録:2021年12月11日 ハンブルク国立歌劇場(ドイツ)


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『マーラー 交響曲 第8番 "千人の交響曲"』 «web配信» オスモ・ヴァンスカ指揮/ミネソタ管弦楽団 2022年6月10, 11日


オスモ・ヴァンスカ | ミネソタ管弦楽団
(Osmo Vänskä | Minnesota Orchestra)
ミネソタ管の音楽監督を務めるヴァンスカ最後のシーズン、マーラー・サイクルの一環として公演されたマーラー8の映像付き録音がオフィシャルサイトから公開されています。(本動画は2022/6/10-12の公演の10, 11日のものを使っているそうです)
当然BISからCD化されるでしょうね。

ソリストは、Carolyn Sampson(sop1, 3) ここに問題が…、Jacquelyn Wagner (sop2)、Sasha Cooke (mez1)、Jess Dandy (mez2)、Barry Banks (ten)、Julian Orlishausen (bar)、Christian Immler (Bbar)になります。


▶️ Minnesota Orchestra (公開期間は短いと思われますのでお早めに)





«web配信»
Mahler Symphony No. 8
"Symphony of a Thousand"


June2022VänskäMinnesotaOrchestraMahler8
[Live at Orchestra Hall, 10 & 11 June 2022]


第一部 『来たれ、創造主たる精霊よ』
提示部:第一部タイトルの第一主題はもちろん派手で少しハジケ気味です。第二主題のソプラノ(sop1)は少し遠く聴こえますが、続く重唱の絡みは落ち着いていますね。
展開部:ここの多重唱はオケが抑え気味で上手くソリストを浮き立たせます。第一主題変奏の合唱は激しく、オケと対峙する様にこの曲らしく約束通りに荒々しさを見せ、山谷を越える様な抑揚ある流れを作ります。
再現部:流れを沈める様にナチュラルに、コーダではソリストが気持ちを込めた声に合唱とオケが絡んで大きくまとめます。処々で調性を逸脱する様な音色を強調している感じもイイですね。全体的には標準仕様的ではありますが。


第二部 『"ファウスト"から最終場』
【1. 序奏:山峡・森・岩・荒地】
5度下降(一楽章第一主題は4度)のスローなピチカートが印象的な主題を澄んだ空気の様に情景を表現。長いパートですがスローの神聖さが生かされています。

【2. 緩徐:聖なる隠者たち】
「合唱とこだま」は優しさで大きく自然をめで、「瞑想の神父」は力強く自らの苦しみと救済を歌い上げますが、ややパワー切れ気味?!

【3. スケルツォ (アレグロ):天使たちと子供たちと】
女声合唱と少年合唱はそつなく。「成熟した天使たち」ではvnのソロとアルト(mez1)が色濃く交換しますがやや平凡感が…

【4. フィナーレ:マリア崇拝の博士、懺悔する女たち、栄光の聖母】
「マリア崇拝の博士」のテノールは唐突に登場する感じです。そして喜び感が薄いでしょうか。もっと讃えて欲しい気がしますねw
■ここからが聴き処ですが…
「かつてのグレートヒェンの告白」(sop2)は優しく美しく願いを歌ってフィットですがsop1とアルト2人はボチボチ。"贖罪の女三人の合唱"はもっともっと際どく切れ上がる様に絡んで欲しいですね。
「懺悔する女 (グレートヒェン)」はここでも伸びやかに喜びを見せて上手く歌います。
一番の見せ場「栄光の聖母」はバンダから優しく迎え入れます。が…煌めきが足りません。と言うよりもsop1が兼ねているから場所を移したのでしょう。
sop1が「栄光の聖母」を二役で歌うのですがそもそもは"罪深き女"、これではこのストーリーが成立しませんねェ。
聖母登場の後の「マリア崇拝の博士」はもっと感激的で感情的に歌って欲しいです、やっぱり。

【5. コーダ:神秘の合唱】
「神秘の合唱」は勿論厳かに、ソリストが入り山場へ向かいますが、sop1の高音が途切れますね。エンディングのオケはオルガンを荘厳に響き渡らせました。勿論大喝采が待っています。そう言う曲ですから。


オケは標準仕様でソリスト陣がちょっと残念なマーラー8でしょうか。オケの安定した演奏とストーリーは安心して楽しめます。でもソリスト個々の印象が個人的にフィットしません。合唱団の音厚ももう少し欲しかったかも。

一番の気掛かりはsopが一人不足している事でしょう。本来3人ですが2人。極短い登場ながらその威光でストーリーを決する"栄光の聖母"を "罪深き女"のsopが兼ねると言うのは余りにも残念です。



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